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特許7029202アンテナ、電子機器およびアンテナの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】アンテナ、電子機器およびアンテナの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/12 20060101AFI20220224BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
H01Q19/12
H01Q1/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021089062
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2021-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】瀬在 俊浩
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-120153(JP,A)
【文献】特表2011-505777(JP,A)
【文献】特表2020-536409(JP,A)
【文献】特開平03-179903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射する一次放射器と、
前記一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が前記電波の波長の1.7倍以下であるパラボラ反射鏡と開口径および高さが等しく、鏡面形状が非パラボラ面である反射鏡と
を具備し、
前記一次放射器は、前記反射鏡の開口面から内側の領域に配置され、
前記反射鏡は、前記電波が反射して放射される半球内のアンテナパターンにヌル点が発生しないパターン特性を有する
アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナであって、
前記非パラボラ面は、2以上の異なる形状の非パラボラ面を組み合わせた形状である
アンテナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナであって、
前記非パラボラ面は、前記反射鏡の鏡面底部からの高さが前記反射鏡の中心軸からの距離の2を除くべき乗に比例する形状、円錐台面、部分球面、円錐面若しくは円筒面、又はこれらのうち2以上を組み合わせた形状である
アンテナ。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1つに記載のアンテナであって、
前記反射鏡は、前記反射鏡の開口面から内側の領域に充填された誘電体層を有する
アンテナ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載のアンテナの被搭載側の表面、又は被搭載側の内部に設けられた空洞に、前記アンテナが埋め込まれた
電子機器。
【請求項6】
一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が前記電波の波長の1.7倍以下である鏡面がパラボラ面の反射鏡を設計し、
前記パラボラ面と開口径および高さが等しく、前記反射鏡の鏡面底部からの高さが前記反射鏡の中心軸からの距離の2を除くべき乗に比例する形状の非パラボラ面に前記鏡面を修正する
アンテナの製造方法であって、
前記一次放射器を前記反射鏡の開口面から内側の領域に配置し、
前記べき乗の値を変更することで、前記一次放射器の給電系とインピーダンス整合がとれる周波数帯域を前記パラボラ面の反射鏡よりも狭く又は広くする
アンテナの製造方法。
【請求項7】
一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が前記電波の波長の1.7倍以下である鏡面がパラボラ面の反射鏡を設計し、
前記パラボラ面と開口径および高さが等しい円錐台面形状の非パラボラ面に前記鏡面を修正する
アンテナの製造方法であって、
前記一次放射器を前記反射鏡の開口面から内側の領域に配置し、
前記鏡面の底面の開口径を変更することで、前記一次放射器の給電系とインピーダンス整合がとれる周波数帯域を前記パラボラ面の反射鏡よりも狭く又は広くする
アンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ロケット、航空機等の飛翔体に搭載されるアンテナの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロケット、航空機等の飛翔体に搭載されるアンテナには、電波を広範囲に均一に放射すること、飛行中に発生する空力荷重、空力加熱に耐えることが要求される。この要求を満足させるアンテナとして、本発明者は特許文献1に示すアンテナを提唱した。
【0003】
特許文献1のアンテナは、一次放射器とパラボラ反射鏡を具備するものである。特許文献1のアンテナでは、パラボラ反射鏡の開口径を波長の1.7倍以下とすることで、電波が放射される半球内のアンテナパターンにヌル点を発生させることなく、広範囲に均一に安定したパターン特性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-120153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のアンテナでは、パラボラ反射鏡の開口径は波長の1.7倍以下と小型であるため、一般的なパラボラアンテナと比較して、一次放射器はパラボラ反射鏡と非常に近接して設置される。このため、一次放射器のインピーダンス特性が反射鏡の影響を強く受けてしまい、一次放射器のインピーダンス特性を任意に変更することができなくなる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、広範囲に均一に安定したパターン特性を維持した状態で、一次放射器のインピーダンス特性を任意に変更することができるアンテナ、電子機器およびアンテナの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係るアンテナは、一次放射器と、反射鏡とを具備する。
前記一次放射器は、電波を放射する。
前記反射鏡は、前記一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が前記電波の波長の1.7倍以下であるパラボラ反射鏡と開口径および高さが等しく、鏡面形状が非パラボラ面である。
【0008】
本発明の一形態に係るアンテナにおいては、反射鏡が電波の波長の1.7倍以下の開口径を有するため、電波が放射される半球内のアンテナパターンにヌル点を発生させることなく、広範囲に均一に安定したパターン特性を得ることができる。
【0009】
また、特許文献1のアンテナの反射鏡はパラボラ反射鏡、すなわち回転放物面形状の反射鏡であるため、反射鏡形状は開口径と高さから決定される。これに対し、本発明の一形態に係るアンテナでは、回転放物面形ではない形状の非パラボラ面の反射鏡が採用される。すなわち、反射鏡の開口径と高さはパラボラ反射鏡と一致させるが、鏡面形状を回転放物面から変えるものである。このようにすることで、反射鏡がパラボラ形状である場合に得られる一次放射器のインピーダンス特性とは異なるインピーダンス特性を一次放射器に持たせることができるようになる。例えば、本発明の一形態に係るアンテナのインピーダンスは、特許文献1に記載のアンテナのインピーダンスよりも、給電系と整合がとれる周波数帯域を狭くすること、或いは広くすることができる。
【0010】
前記非パラボラ面は、前記反射鏡の鏡面底部からの高さが前記反射鏡の中心軸からの距離の2を除くべき乗に比例する形状であってもよい。
あるいは、前記非パラボラ面は、円錐台面、部分球面、円錐面、円筒面などであってもよい。
あるいは、前記非パラボラ面は、2以上の異なる形状の非パラボラ面を組み合わせた形状であってもよい。
【0011】
前記一次放射器は、前記反射鏡の開口面から内側の領域に配置されてもよい。
【0012】
前記反射鏡は、前記反射鏡の開口面から内側の領域に充填された誘電体層を有してもよい。
【0013】
本発明の一形態に係る電子機器は、前記アンテナの被搭載側の表面、又は被搭載側の内部に設けられた空洞に、前記アンテナが埋め込まれた構成を有する。
【0014】
被搭載側の表面、又は被搭載側の内部にパラポラ反射鏡と等しい形状、寸法の穴を開けることで、アンテナを被搭載側の表面から突き出さずに設置することができる。これにより、例えばロケットや航空機等の飛翔体の場合には、空力荷重・加熱が大幅に軽減される。本発明の一形態に係るアンテナは開口径が小さいため、穴を開けることによる飛翔体への影響は無視することが可能なレベルまで小さくなる。また、PC等の無線通信機能を有する電子機器や建物の内外に本発明の一形態に係るアンテナを搭載する場合には、例えば電子部品等を実装する基板、建物の外壁、室内の壁や天井の表面、又は被搭載側の内部にパラポラ反射鏡と等しい形状、寸法の穴を開けることで、アンテナを表面から突き出さずに設置することができ、また開口径が小さいためにフットプリントも小さくできる。従って、従来の棒状アンテナ等と比べて薄型軽量化が可能であり、パラボラアンテナを基本構成とする故、アンテナ利得も高い。開口面を壁や天井と同一の色や模様とすることで、アンテナを目立たなくすることが可能である。
【0015】
本発明の一形態に係るアンテナの製造方法は、一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が前記電波の波長の1.7倍以下である鏡面がパラボラ面の反射鏡を設計し、
前記パラボラ面と開口径および高さが等しい非パラボラ面に前記鏡面を修正する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、広範囲に均一に安定したパターン特性を維持した状態で、一次放射器のインピーダンス特性を任意に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るアンテナの構成を示す斜視図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡面の鏡面底部からの高さが中心軸からの距離の2を除くべき乗に比例する形状の断面図である。
図4】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡が円錐台形状の断面図である。
図5】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡が部分球面形状の断面図である。
図6】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状が反射鏡面の鏡面底部からの高さが中心軸からの距離の2を除くべき乗に比例する場合のアンテナのパターン(右旋偏波)の解析値をxz面内表示したものである。
図7】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状が円錐台である場合のアンテナのパターン(右旋偏波)の解析値をxz面内表示したものである。
図8】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状が部分球面である場合のアンテナのパターン(右旋偏波)の解析値をxz面内表示したものである。
図9】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡面の鏡面底部からの高さが中心軸からの距離の2を除くべき乗に比例する形状の場合の一次放射器のインピーダンス特性を示す50Ωに対するVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)の解析値を周波数特性として表示したものである。
図10】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状が円錐台形状の場合の一次放射器のインピーダンス特性を示す50Ωに対するVSWRの解析値を周波数特性として表示したものである。
図11】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状が部分球面形状の場合の一次放射器のインピーダンス特性を示す50Ωに対するVSWRの解析値を周波数特性として表示したものである。
図12】本発明の一実施形態に係るアンテナを搭載した電子機器の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナ10の構成を示す斜視図であり、図2は、図1のA-A断面図である。各図において、x軸、y軸およびz軸は相互に直交する3軸方向を示しており、z軸はアンテナ10の反射鏡12の中心軸に相当する。
【0020】
[アンテナの全体構成]
図1及び図2に示すように、アンテナ10は、一次放射器11と、反射鏡12とを有する。アンテナ10はさらに、反射鏡12の開口面12aから内側の領域に充填された誘電体層13と、一次放射器11に接続される給電ケーブル14とを有する。本実施形態のアンテナ10は、例えば、ロケット、航空機等の飛翔体に搭載される。
【0021】
一次放射器11は、電波を放射するアンテナ素子である。一次放射器11は、所定のインピーダンスが得られるアンテナ素子であればいかなるアンテナ素子でも使用可能である。本実施形態では、クロスダイポールアンテナを使用した例を示しているが、ダイポールアンテナやホーンアンテナ等を用いることが可能である。
【0022】
反射鏡12は、開口面12aの直径(開口径)がD、鏡面底部12cから開口面12aまでの高さがHの回転放物面(パラボラ面)とは異なる形状(非パラボラ面)の導電性材質で作られた反射鏡であり、一次放射器11は反射鏡12の開口面12aから深さがFの位置に配置されている。
【0023】
また、反射鏡12は、一次放射器11より放射された電波を反射し、電波が反射して放射される半球内のアンテナパターンにヌル点が発生しない開口径以下に、開口径Dを小さくしている。本実施形態において、反射鏡12は、電波の波長の1.7倍以下の開口径Dを有する。開口径D、及び一次放射器11の寸法は、アンテナとして機能する範囲まで小さくことが可能である。
【0024】
アンテナとして機能する範囲とは、一次放射器11が所定のインピーダンスを得られる範囲であり、別言すると、一次放射器11のVSWRがアンテナを使用するシステムから要求される値以下となる範囲をいう。本実施形態に係るアンテナ10には、ヌル点は発生しないので、当然サイドローブも生じない。つまり、本実施形態に係るアンテナ10は、電波が放射される半球内に広範囲に均一の電波を放射することができる。
【0025】
誘電体層13は、反射鏡12の開口面12aから反射鏡12の内側表面である鏡面12bの範囲に充填される。誘電体層13を構成する誘電体は特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの合成樹脂材料が用いられる。誘電体の誘電率も特に限定されず、アンテナ10が設置される搭載物の種類や仕様等に応じて任意に設定可能である。
【0026】
一次放射器11は、誘電体層13内に配置されている。例えば、一次放射器11は、開口面12aの位置乃至その位置より内側の位置に配置される。また、給電ケーブル14は、一次放射器11に給電する同軸ケーブルである。図1および図2では、給電ケーブル14が鏡面底部12cより一次放射器11まで配線されている例を示したが、反射鏡12内であれば、給電ケーブル14をどのように配線してもよい。
【0027】
誘電体層13は、一次放射器11と給電ケーブル14を所定の位置に保持する機能を有する。加えて、誘電体層13は、ロケット等の飛行中に発生する空力荷重、空力加熱からこれらを保護する機能を有すると共に、誘電体の波長短縮効果により、アンテナ10の更なる小型化を可能にする。なお、誘電体層13は、空洞部(図示せず)を有していてもよい。これにより、アンテナ10の軽量化が可能である。
【0028】
ここでは、アンテナ10は、電波の周波数が2.28GHzで、一次放射器11と反射鏡12を銅で構成し、誘電体層13として高密度ポリエチレンを充填し、開口径Dを96mm、反射鏡12の高さHを28mm、開口面12aから一次放射器11までの深さFを7mmとした。なお、波長は約132mmであるので、開口径Dは約0.73波長である。
【0029】
[反射鏡の詳細]
反射鏡12は、パラボラ反射鏡と開口径および高さが等しく、鏡面12bの形状が非パラボラ面である。上記パラボラ反射鏡の開口径および高さは、それぞれ、反射鏡12の開口径Dおよび高さHに相当する。開口径Dは、上述のように一次放射器11から放射される電波の波長の1.7倍以下である。
【0030】
上述のように、本実施形態のアンテナ10における反射鏡12は、パラボラ反射鏡と開口径および高さが等しいが、鏡面12bの形状が非パラボラ面である点で相違する。非パラボラ面とは、例えば、(1)鏡面12bの鏡面底部12cからの高さが反射鏡12の中心軸(z軸)からの距離の2を除くべき乗に比例する形状、(2)円錐台面、(3)部分球面、(4)円錐面、(5)円筒面などをいう。非パラボラ面は、上記(1)~(5)のうち2つ以上を任意に組み合わせた形状であってもよい。また、上記(1)におけるべき乗の指数は、例えば、1~3(但し2を除く)の任意の値が適用可能である。
【0031】
例えば図3は、本発明の一実施形態に係るアンテナ10における反射鏡12の鏡面形状(図中実線)を、開口径Dおよび高さHが同一のパラボラ反射鏡Pの鏡面形状(図中点線)と比較して示すxz面における断面図である。ここでは、反射鏡12として、上記(1)に相当する鏡面形状が採用された反射鏡121を示している。反射鏡121は、D=96mm、H=28mm、鏡面12bの鏡面底部12cからの高さが中心軸(z軸)からの距離の3乗に比例する鏡面形状を有する。
【0032】
図4は、本発明の他の実施形態に係るアンテナ10における反射鏡12の鏡面形状(図中実線)を、開口径Dおよび高さHが同一のパラボラ反射鏡Pの鏡面形状(図中点線)と比較して示すxz面における断面図である。ここでは、反射鏡12として、上記(2)に相当する鏡面形状が採用された反射鏡122を示している。反射鏡122は、D=96mm、H=28mm、鏡面12bの底面の開口径が24mmの鏡面形状を有する。
【0033】
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナ10における反射鏡12の鏡面形状(図中実線)を、開口径Dおよび高さHが同一のパラボラ反射鏡Pの鏡面形状(図中点線)と比較して示すxz面における断面図である。ここでは、反射鏡12として、上記(3)に相当する鏡面形状が採用された反射鏡123を示している。反射鏡123は、D=96mm、H=28mmの部分球面形状の鏡面形状を有する。
【0034】
図6は、D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、鏡面12bの鏡面底部12cからの高さが中心軸からの距離の2を除くべき乗に比例する形状である場合の本実施形態のアンテナ10のアンテナパターン(右旋偏波)の解析値をxz面内表示したものである。同図(1)、(2)はそれぞれ鏡面12bの鏡面底部12cからの高さが中心軸からの距離の1.5乗、3.0乗に比例する形状の場合を示している。なお、同図中の点線はD=96mm、H=28mm、F=7mmの反射鏡面がパラボラ形状、すなわち特許文献1のアンテナのアンテナパターン(右旋偏波)の解析値である。
図6に示すように、本実施形態に係るアンテナ10のアンテナパターンは、特許文献1のアンテナのアンテナパターンとアンテナ開口面よりも上方でほとんど一致することがわかる。
【0035】
図7は、D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、鏡面12bの形状が円錐台である場合の本実施形態のアンテナ10のアンテナパターン(右旋偏波)の解析値をxz面内表示したものである。同図(1)、(2)はそれぞれ鏡面12bの底面の開口径が24mm、48mmの場合を示している。なお、同図中の点線はD=96mm、H=28mm、F=7mmの反射鏡面がパラボラ形状、すなわち特許文献1のアンテナのアンテナパターン(右旋偏波)の解析値である。
図7に示すように、本実施形態に係るアンテナ10のアンテナパターンは、特許文献1のアンテナのアンテナパターンとアンテナ開口面よりも上方でほとんど一致することがわかる。
【0036】
図8は、D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、鏡面12bの形状が部分球面である場合の本実施形態のアンテナ10のアンテナパターン(右旋偏波)の解析値をxz面内表示したものである。なお、同図中の点線はD=96mm、H=28mm、F=7mmの反射鏡面がパラボラ形状、すなわち特許文献1のアンテナのアンテナパターン(右旋偏波)の解析値である。
図8に示すように、本実施形態に係るアンテナ10のアンテナパターンは、特許文献1のアンテナのアンテナパターンとアンテナ開口面よりも上方でほとんど一致することがわかる。
【0037】
図9は、D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、鏡面12bの鏡面底部12cからの高さが中心軸からの距離の2を除くべき乗に比例する形状の場合の本実施形態のアンテナ10における一次放射器11のインピーダンス特性を示す50Ωに対するVSWRの解析値を周波数特性として表示したものである。同図(1)、(2)はそれぞれ鏡面12bの鏡面底部12cからの高さが中心軸からの距離の1.5乗、3.0乗に比例する形状の場合を示している。なお、同図中の点線はD=96mm、H=28mm、F=7mmの反射鏡面がパラボラ形状、すなわち特許文献1のアンテナの一次放射器のインピーダンス特性を示すVSWRの解析値を周波数特性として表示したものである。
【0038】
図9でVSWRが1.5以下となる範囲を比較すると、同図(1)では特許文献1のアンテナの範囲よりも狭く、同図(2)では特許文献1のアンテナの範囲よりも広いことがわかる。すなわち、反射鏡の形状を変えることで、アンテナの一次放射器のインピーダンス特性を変えられることがわかる。
【0039】
図10は、D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、鏡面12bの形状が円錐台である場合の本実施形態のアンテナ10における一次放射器11のインピーダンス特性を示す50Ωに対するVSWRの解析値を周波数特性として表示したものである。同図(1)、(2)はそれぞれ鏡面12bの底面の開口径が24mm、48mmの場合を示している。なお、同図中の点線はD=96mm、H=28mm、F=7mmの反射鏡面がパラボラ形状、すなわち特許文献1のアンテナの一次放射器のインピーダンス特性を示すVSWRの解析値を周波数特性として表示したものである。
【0040】
図10でVSWRが1.5以下となる範囲を比較すると、同図(1)では特許文献1のアンテナの範囲よりも狭く、同図(2)では特許文献1のアンテナの範囲よりも広いことがわかる。すなわち、反射鏡の形状を変えることで、アンテナの一次放射器のインピーダンス特性を変えられることがわかる。
【0041】
図11は、D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、鏡面12bの形状が部分球面である場合の本実施形態のアンテナ10における一次放射器のインピーダンス特性を示す50Ωに対するVSWRの解析値を周波数特性として表示したものである。なお、同図中の点線はD=96mm、H=28mm、F=7mmの反射鏡面がパラボラ形状、すなわち特許文献1のアンテナの一次放射器のインピーダンス特性を示すVSWRの解析値を周波数特性として表示したものである
【0042】
図11でVSWRが1.5以下となる範囲を比較すると、本実施形態に係るアンテナ10では特許文献1のアンテナの範囲よりも広いことがわかる。すなわち、反射鏡の形状を変えることで、アンテナの一次放射器のインピーダンス特性を変えられることがわかる。
【0043】
[アンテナの製造方法]
以上のように構成される本実施形態のアンテナ10は、開口径が電波の波長の1.7倍以下である鏡面がパラボラ面の反射鏡を設計し、上記パラボラ面と開口径および高さが等しい非パラボラ面に鏡面を修正することで製造される。
【0044】
非パラボラ面としては、上述のように、反射鏡の鏡面底部からの高さが反射鏡の中心軸からの距離の2を除くべき乗に比例する形状のほか、円錐台面、部分球面、円錐面、円筒面など、一次放射器11の給電系のインピーダンス特性等に応じて任意の形状が採用可能である。
【0045】
鏡面の非パラボラ面への修正は、給電系と整合がとれる周波数帯域を狭くし、あるいは広くするために、機械加工等によりパラボラ面に形成された鏡面を非パラボラ面へ形状変更したり、設計の過程でパラボラ面を非パラボラ面へ変更したりするなど、任意の方法が採用可能である。
【0046】
[本実施形態の作用]
以上のように本実施形態に係るアンテナ10によれば、反射鏡12が電波の波長の1.7倍以下の開口径Dを有するため、電波が放射される半球内のアンテナパターンにヌル点を発生させることなく、広範囲に均一に安定したパターン特性を得ることができる(特許文献1の図4参照)。より具体的には、以下の作用を得ることができる。
【0047】
・アンテナビームが広がり、広範囲に電波が放射される。アンテナ開口面より下方への放射もある。
・アンテナ開口面より上方の半球内にヌル点や落ち込みが存在しない。
・反射鏡アンテナであるため、アンテナパターンはアンテナを搭載する被搭載側の形状やアンテナ取付部の影響をほとんど受けない。
【0048】
したがって、本実施形態のアンテナ10によれば、
・広範囲に均一に安定したパターン特性を有し、現在飛翔体に搭載されているアンテナと比較すると利得も高くなる。
・アンテナ10が飛翔体に搭載される場合に、飛翔体である被搭載側でパターン特性からの運用制約を受けることがなくなる。
・アンテナ10を飛翔体に搭載する場合に、アンテナ10に発生する空力荷重・加熱が大幅に軽減される。
・従来のアンテナと比べて薄型軽量化でき、より目立たなくなる。
【0049】
また本実施形態によれば、被搭載側の表面、又は被搭載側の内部にパラポラ反射鏡と等しい形状、寸法の穴を開けることで、アンテナを被搭載側の表面から突き出さずに設置することができる。これにより、例えばロケットや航空機等の飛翔体の場合には、空力荷重・加熱が大幅に軽減される。本実施形態に係るアンテナは開口径が小さいため、穴を開けることによる飛翔体への影響は無視することが可能なレベルまで小さくなる。また、PC等の無線通信機能を有する電子機器や建物の内外に本発明の一形態に係るアンテナを搭載する場合には、例えば電子部品等を実装する基板、建物の外壁、室内の壁や天井の表面、又は被搭載側の内部にパラポラ反射鏡と等しい形状、寸法の穴を開けることで、アンテナを表面から突き出さずに設置することができ、また開口径が小さいためにフットプリントも小さくできる。従って、従来の棒状アンテナ等と比べて薄型軽量化が可能であり、パラボラアンテナを基本構成とする故、アンテナ利得も高い。開口面を壁や天井と同一の色や模様とすることで、アンテナを目立たなくすることが可能である。
【0050】
さらに本実施形態のアンテナ10によれば、パラボラ反射鏡と開口径および高さは等しいが鏡面形状が非パラボラ面であるため、特許文献1に記載のアンテナのパターン特性を維持しながら、アンテナの一次放射器のインピーダンス特性を変えることが可能である。より具体的には、一次放射器11の給電系とインピーダンス整合がとれる周波数帯域を特許文献1に記載のアンテナよりも狭くする、あるいは、広くすることができる。
【0051】
例えば、一次放射器11の給電系とインピーダンス整合がとれる周波数帯域を狭くした場合、除去したい周波数の電波を遮断するフィルタを準備することが不要となる。
【0052】
一方、一次放射器11の給電系とインピーダンス整合がとれる周波数帯域を広くした場合、本実施形態のアンテナ10のみで複数の周波数帯を使用することができるため、複数のアンテナを準備することが不要となる。また、本実施形態のアンテナ10を通信に使用する場合は、通信容量を増大させることができる。
【0053】
<第2の実施形態>
図12は本発明の他の実施形態に係る電子機器100の要部断面図である。電子機器100は、基板91と、基板91の表面に埋め込まれたアンテナ90とを備える。
【0054】
図12に示すように、基板91上には、反射鏡の形状に一致する穴92が設けられ、穴92の表面に導電性薄膜96が形成されている。導電性薄膜96は、アンテナ90の反射鏡として機能する。穴92の開口面より内側の領域には、高密度ポリエチレンなどの誘電体で構成された誘電体層93が充填されている。アンテナ90の一次放射器94は、穴92の開口面上に配置され、誘電体層93により保持されている。
【0055】
穴92は、アンテナ90の被搭載側の表面又は被搭載側の内部に設けられた空洞に相当し、アンテナ90はこの空洞に埋め込まれる。穴92は、パラボラ反射鏡と開口径および高さが等しいが、形状は非パラボラ面で形成される。したがって、穴92の表面に形成された導電性薄膜96は、非パラボラ面の鏡面を形成する。
【0056】
穴92(導電性薄膜96)の開口径は、一次放射器94より放射された電波が前記反射鏡部で反射して放射される半球内のアンテナパターンにヌル点が発生しない大きさ(波長の1.7倍以下)に形成されている。給電ケーブル95は、誘電体層93により保持されて一次放射器94に接続されている。
【0057】
本実施形態では、導電性薄膜96が形成された穴92と誘電体層93と一次放射器94とによってアンテナ90が構成される。このようなアンテナ90を搭載する電子機器100では、アンテナ90を基板91の表面から突き出さずに設置することができ、また、アンテナ90の開口径が小さいためにフットプリントも小さくできる。従って、従来の棒状アンテナ等と比べて薄型軽量化が可能であり、反射鏡アンテナを基本構成とする故、アンテナ利得も高い。
【0058】
また、アンテナ90の鏡面を形成する導電性薄膜96が非パラボラ形状を有するため、特許文献1に記載のパラボラ反射鏡を有するアンテナのインピーダンスよりも、給電系と整合がとれる周波数帯域を狭くする、或いは広くするなど任意に調整することができる。




【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0060】
例えば以上の実施形態では、ロケット、航空機等の飛翔体に搭載されるアンテナに本発明を適用したが、これ以外にも、列車や自動車、潜水艦などの移動体、更に携帯端末やPC等の電子機器、建物にも適用できる。本発明に係るアンテナを建物の外側や内側に設置する場合には、アンテナの開口面を建物の壁や天井と同一の色や模様とすることで、アンテナを目立たなくすることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10,90…アンテナ
11,94…一次放射器
12,121,122,123…反射鏡
12a…開口面
12b…鏡面
12c…鏡面底部
13,93…誘電体層
92…穴(空洞)
100…電子機器
【要約】
【課題】広範囲に均一に安定したパターン特性を維持した状態で、一次放射器のインピーダンス特性を任意に変更することができるアンテナ、電子機器およびアンテナの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係るアンテナは、一次放射器と、反射鏡とを具備する。前記一次放射器は、電波を放射する。前記反射鏡は、前記一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が前記電波の波長の1.7倍以下であるパラボラ反射鏡と開口径および高さが等しく、鏡面形状が非パラボラ面である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12