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特許7029213新規な化合物およびこれを含む肥満または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】新規な化合物およびこれを含む肥満または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 217/64 20060101AFI20220224BHJP
   C07C 217/66 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220224BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C07C217/64 CSP
C07C217/66
A61P3/04
A61P3/00
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P3/06
A61P9/12
A61P7/04
A61P1/16
A61P3/10
A61K31/137
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021502678
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 KR2019003514
(87)【国際公開番号】W WO2019190172
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】62/648,381
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520373796
【氏名又は名称】プロテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PROTECH INC.
【住所又は居所原語表記】#408, 103, DAEHAK‐RO, JONGNO‐GU, SEOUL 03080, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヨン・テ
(72)【発明者】
【氏名】ガニピセッティ,スリニヴァスラオ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ギ・ウン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ウィ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ペ,テ・ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ス・ラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,チャン・フン
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/022919(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/200827(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/030292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 217/64
C07C 217/66
A61P 3/04
A61P 3/00
A61P 9/10
A61P 3/06
A61P 9/12
A61P 7/04
A61P 1/16
A61P 3/10
A61K 31/137
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩:
【化1】
上記化学式1中、
は、-L-(フェニル)であり、
は、水素、または-L-(フェニル)であり、
は、C1-5アルキレンであり、
は、C1-5アルキレンであり、
但し、RおよびRが両方ともベンジルであることはない。
【請求項2】
は、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、または-CHCHCHCH-である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
は、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、または-CHCHCHCH-である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
は、-CH-(フェニル)であり、
は、水素、-CHCH-(フェニル)、-CHCHCH-(フェニル)、または-CHCHCHCH-(フェニル)である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
およびRは互いに同一である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
およびRは、-CHCH-(フェニル)、-CHCHCH-(フェニル)、または-CHCHCHCH-(フェニル)である、請求項5に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
前記化合物は、
1)2-(3,4-ジフェネトキシベンジルアミノ)エタノール、
2)2-(3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール、
3)2-(3,4-ビス(4-フェニルブトキシ)ベンジルアミノ)エタノール、
4)2-(ベンジルオキシ)-5-((2-ヒドロキシエチルアミノ)メチル)フェノール、
5)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンジルアミノ)エタノール、
6)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール、および、
7)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(4-フェニルブトキシ)ベンジルアミノ)エタノール、から構成される群より選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
請求項1~7のうちのいずれか一項の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、肥満または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
前記代謝症候群は、心筋梗塞、動脈硬化症、高脂血症、高血圧、脳梗塞、脳出血、脂肪肝、および2型糖尿病からなる群より選択されるいずれか一つである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満または代謝症候群の予防または治療に有用に使用することができる新規な化合物およびこれを含む薬学的組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単純疾患としてのみ見なされた肥満は最近、疾病に分類されており、2型糖尿病、心血管疾患のような代謝症候群および特定癌の発病と関連性があると報告されている[1]。肥満は、社会環境的、遺伝的、精神的、内分泌的原因など多様な原因が複合的に作用して発生する疾病である。世界保健機関(World Health Organization、WHO)によれば、全世界的に肥満人口が1980年代以後2倍に増加し[2]、米国の場合、2013年基準全体人口の約34%が肥満に分類された[3]。米国政府は肥満による社会経済的損失を減らすために毎年国家全体医療費の10%を肥満関連医療サービスおよびキャンペーンなどに使用しているのが実情である。最近はアジアおよびアフリカ国家の肥満率の増加も目立っており、英国医学専門紙‘Lancet’によれば、2014年中国内肥満人口は約9000万人に達すると調査された[4]。WHOはこのように漸進的に増加している肥満の深刻性を認識し2004年5月に‘ダイエット、運動、健康に対する世界戦略’を議題化して肥満の解決のための努力を傾けてきた。しかし、現在まで肥満が減少した国は全世界的にただ一ヶ所も報告されていない。
【0003】
マッキンゼー報告書によれば、2012年肥満によって発生する健康問題を管理するのに使用された経済的費用が一年約2兆ドルに達すると分析された[5]。これは韓国の年間GDPを大きく上回る数値であり、アルコールの摂取によって発生する社会経済的費用より高い数値である。このように肥満は全世界的に台頭している健康問題であるにもかかわらず、研究開発を通じて米国FDAから臨床的使用が許可された薬物は総5種類に止まっているのが実情である[6]。
【0004】
しかし、米国FDAから承認を受けて使用されている薬物の作用機序は、摂取された飲食物を通じて小腸から脂肪が吸収されることを阻害する方法と脳の中枢神経内摂食中枢の活性を変化させて虚構的満腹感を誘発することによって栄養分の摂取を減少させて体重減少を誘導する方法および体内流入したエネルギーを脂肪の形態に貯蔵せず熱エネルギーとして放出するようにする方法に分けられる。しかし、このような薬物は栄養不均衡のような代謝的問題点および無気力感あるいは憂鬱感のような感情の変化が伴われる副作用が発生する可能性がある[6]。
【0005】
したがって、肥満の最も効果的な治療および予防法は、生体内システムを用いて原因物質である剰余体脂肪を根源的に除去することである。しかし、現在まで外科的処置以外には超過蓄積された脂肪のみを選択的に除去することができる効果的であり安定性の確保された方法は無いのが実情である。したがって、副作用が無く剰余脂肪の選択的除去という難題を解決することができれば、個人の健康問題を超えて肥満によって発生する社会的費用などを節減することができるはずである。また、肥満が主な原因であると知られた心血管および脳血管系疾患、第2型糖尿病および脂肪肝などのような代謝症候群の軽減にも効果があるはずである。
【0006】
組織および血中に過剰蓄積された脂肪は、体重の増加と共に多様な代謝症候群の主な原因である。高脂肪食餌によって増加された腹部脂肪は体内脂肪と糖代謝に影響を与えるようになって血中中性脂肪の濃度を増加させる。血液内中性脂肪の増加は、多様な組織で中性脂肪の蓄積を招く。組織内蓄積された脂肪が疾患の直接的な原因になる代表的な代謝症候群として肝疾患が挙げられる。肝細胞内に中性脂肪が5%以上蓄積された状態を脂肪肝と定義し、脂肪肝炎に発展することがある[7]。したがって、肝疾患を予防および治療するためには、組織内蓄積された脂肪を効果的に除去することが最も効果的な方法である。肥満を予防または治療することにおいて、薬物を使用する主目的は単純体重減量でなく蓄積された過剰体脂肪による代謝異常を是正することが目標にならなければならず、窮極的に肥満によって誘発することがある糖尿病、肝疾患のような代謝症候群の予後を良好にすることに焦点が合わせなければならない。したがって、抗-肥満薬物の場合、全体的な代謝作用の変化なく、剰余脂肪に対する選択的減少が行われることが優先目標にならなければならない。
【0007】
現在まで体内過度に蓄積された剰余脂肪のみを選択的に除去することができる技術は皆無な状態であり、これに対する研究も不在の状態である。標準体脂肪を維持しながら不必要な脂肪のみを除去するためには、細胞内恒常性維持のために存在するシステムを活用する方法が最も効果的である。細胞内には損傷するか不必要な細胞小器官および蛋白質などのような構成成分をリソソームという器官を活用して分解し再利用する自食作用機序が存在する。細胞がストレス状況に露出されるか栄養欠乏状況に置かれた時に活性化され、細胞はこのような機序を用いて細胞内環境を適切に維持する。分解される基質によってマイトファジー(Mitophagy)、ゼノファジー(Xenophagy)、リポファジー(Lipophagy)などに多様に分類される[8]。リポファジー(Lipophagy)システムは細胞内蓄積された脂肪滴を除去する機能を果たすと知られており、2009年ネイチャー(Nature)ジャーナルにMark J.CzajaとAna Maria Cuervo研究陣が共同研究を通じて細胞内蓄積された脂肪滴がリポファジー作用によって除去されるという研究結果を発表した後、その機序および活性方法に対する研究が活発に行われている。したがって、技術的な方法でリポファジー過程を調節することができれば、摂食形態およびエネルギー代謝の調整によって脂肪の蓄積を防止する既存の肥満治療剤を代替できる効果的な治療剤として使用できる。
【0008】
よって、本発明者らはこのような薬物を開発するために鋭意努力した結果、後述する新規な化合物が前記のような特性を充足するのを確認して本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Cummings DE, and Schwartz MW. Genetics and pathophysiology of human obesity. Annu Rev Med 2003;54:453-471[1]
【文献】World Health Organization: Regional for Europe. Obesity [Internet]. Geneva: World Health Organization, c2013 [cited 2013 Mar 30]. Available from: http://www.euro.who.int/en/what-we-do/healthtopics/noncommunicable-disease/obesity/facts-and-figures.[2]
【文献】Centers for Disease Control and Prevention. Overweight and Obesity: Adults Obesity Facts [Internet]. Centers for Disease Control and Prevention 2012 [updated 2012; cited 2013 Mar 6]. Available from http://www.cdc.gov/obesity/data/adult.html.[3]
【文献】Ng M, Fleming T, Robinson M, Graetz N, Margono C, Mullany EC et al. Global, regional, and national prevalence of overweight and obesity in children and adults during 1980-2013: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2013. The Lancet 2014;384:766-781[4]
【文献】Dobbs R. et al., Overcoming obesity: An initial economic analysis. McKinsey Global Institute, 2014[5]
【文献】Daneschvar HL, Smetana GW. FDA-approved anti-obesity drugs in the United States. The Am J Med 2016;129:879.e1-879.e6[6]
【文献】Kneeman JM, Misdraji J, Corey KE. Secondary cause of nonalcoholic fatty liver disease. Therap. Adv. Gastroenterol 2012;5:199-207[7]
【文献】Anding AL, Baehrecke EH. Cleaning House: Selective autophagy of organelles. Developmental cell 2017;10:41:10-22[8]
【文献】Kaushik S, Cuervo AM. Degradation of lipid droplet-associated proteins by chaperone-mediated autophagy facilitates lipolysis. Nat cell Biol 2015;17:759-770[9]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、肥満または代謝症候群の予防または治療に有用に使用することができる新規な化合物またはその薬学的に許容可能な塩、およびこれを含む薬学的組成物を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、下記化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0012】
【化1】
上記化学式1中、
は、-L-(フェニル)であり、
は、水素、または-L-(フェニル)であり、
は、C1-5アルキレンであり、
は、C1-5アルキレンであり、
但し、RおよびRが両方ともベンジルであることはない。
【0013】
好ましくは、Lは、直鎖C1-5アルキレンである。より好ましくは、Lは、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、または-CHCHCHCH-である。
【0014】
好ましくは、Lは、直鎖C1-5アルキレンである。より好ましくは、Lは、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、または-CHCHCHCH-である。
【0015】
好ましくは、Rは-CH-(フェニル)であり;Rは水素、-CHCH-(フェニル)、-CHCHCH-(フェニル)、または-CHCHCHCH-(フェニル)である。
【0016】
好ましくは、RおよびRは互いに同一である。より好ましくは、RおよびRは-CHCH-(フェニル)、-CHCHCH-(フェニル)、または-CHCHCHCH-(フェニル)である。
【0017】
前記化学式1で表される化合物の代表的な例は下記の通りである:
1)2-(3,4-ジフェネトキシベンジルアミノ)エタノール、
2)2-(3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール、
3)2-(3,4-ビス(4-フェニルブトキシ)ベンジルアミノ)エタノール、
4)2-(ベンジルオキシ)-5-((2-ヒドロキシエチルアミノ)メチル)フェノール、
5)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンジルアミノ)エタノール、
6)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール、および
7)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(4-フェニルブトキシ)ベンジルアミノ)エタノール。
【0018】
一方、前記化学式1で表される化合物は薬学的に許容可能な塩の形態で使用することができ、塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸、亜リン酸などのような無機酸類、脂肪族モノおよびジカルボキシレート、フェニル-置換されたアルカノエート、ヒドロキシアルカノエートおよびアルカンジオエート、芳香族酸類、脂肪族および芳香族スルホン酸類などのような無毒性有機酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、酒石酸、フマル酸などのような有機酸から得る。このような薬学的に無毒な塩の種類としては、スルフェート、ピロスルフェート、ビスルフェート、スルフィド、ビスルフィド、ニトレイト、ホスフェート、モノヒドロゲンホスフェート、ジヒドロゲンホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェートクロリド、ブロミド、ヨージド、フルオリド、アセテート、プロピオネート、デカノエート、カプリレート、アクリレート、ホルメート、イソブチレート、カプレート、ヘプタノエート、プロピオレート、オキサレート、マロネート、サクシネート、スベレート、セバケート、フマレート、マレエート、ブチン-1,4-ジオネート、ヘキサン-1,6-ジオエート、ベンゾエート、クロロベンゾエート、メチルベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシベンゾエート、フタレート、テレフタレート、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、クロロベンゼンスルホネート、キシレンスルホネート、フェニルアセテート、フェニルプロピオネート、フェニルブチレート、シトレート、ラクテート、β-ヒドロキシブチレート、グリコレート、マレエート、タルトレート、メタンスルホネート、プロパンスルホネート、ナフタレン-1-スルホネート、ナフタレン-2-スルホネート、マンデレートなどを含む。
【0019】
前記酸付加塩は通常の方法で製造することができ、例えば、化学式1の誘導体をメタノール、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、アセトニトリルなどのような有機溶媒に溶かし有機酸または無機酸を加えて生成された沈殿物をろ過、乾燥させて製造するか、溶媒と過量の酸を減圧蒸留した後に乾燥させて有機溶媒下で結晶化させて製造することができる。
【0020】
また、塩基を使用して薬学的に許容可能な金属塩を製造することができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解化合物塩をろ過し、濾液を蒸発、乾燥させて得る。この時、金属塩としては、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩を製造するのが製薬上適する。また、これに対応する塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例えば、硝酸銀)と反応させて得る。
【0021】
さらに、本発明は、前記化学式1で表される化合物およびその薬学的に許容可能な塩だけでなく、これから製造できる溶媒和物、光学異性体、水和物などを全て含む。
【0022】
また、本発明は、一例として、下記反応式1のような前記化学式1で表される化合物の製造方法を提供する。
【0023】
【化2】
【0024】
上記反応式1中、RおよびRは先に定義した通りである。
【0025】
前記反応は、前記化学式1-1で表される化合物と前記化学式1-2で表される化合物を反応させて前記化学式1で表される化合物を製造する反応であって、実質的に2段階からなる。具体的に、前記化学式1-1で表される化合物と前記化学式1-2で表される化合物を反応させてイミン化合物を製造した後、これを還元させて前記化学式1で表される化合物を製造する。
【0026】
前記反応で使用できる溶媒としては水、エタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、またはアセトニトリルを使用することができるが、これに制限されない。また、前記反応温度は特別な制約はないが、10℃~90℃、好ましくは10℃~30℃または60℃~80℃で行うことができる。また、前記還元剤(reducing agent)は特別な制限がなく、一例としてNaBHを使用することができる。また、前記反応後、必要によって精製段階が含まれる。
【0027】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、肥満または代謝症候群の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0028】
後述の実験例のように、本発明による化合物はOil red O染色法で確認した通り、脂肪細胞(adipocyte)で過剰蓄積された脂肪滴(lipid droplet)を選択的に分解して蓄積された脂肪滴の大きさが小さくなることを確認した。また、高脂肪飼料摂取マウスで本発明の化合物の体重減量効果を確認した通り、高脂肪飼料を通じて肥満を誘導したマウスに腹腔内投与方式で注入した時、対照群薬物投与マウスに比べて統計的に有意水準の体重減量効果を確認した。
【0029】
このような結果は本発明による化合物が過剰蓄積された脂肪細胞、即ち、疾病誘発の原因になることのある脂肪細胞のみ選択的に減少または除去することができるという証拠であり、したがって代謝過程の変化によるエネルギー消費量の増加や摂食形態の変化を誘導することによって副作用の発生の憂慮される既存の薬物に対する効果的な対案になり得る。
【0030】
前記代謝症候群の例としては、心筋梗塞、動脈硬化症、高脂血症、高血圧、脳梗塞、脳出血、脂肪肝、および2型糖尿病からなる群より選択されるいずれか一つが挙げられる。このような代謝症候群は、高脂肪食餌摂取と共に身体活動の減少による肥満が主な原因として作用し、体脂肪の増加、血圧上昇、血中脂質異常などの代謝機能異常が伴われる疾病である。したがって、過剰蓄積された体脂肪の除去による肥満の治療または予防は、代謝症候群の予後も向上させるのに効果的である。
【0031】
本発明の用語“予防”は本発明の薬学的組成物の投与で前述の疾患の発生、拡散および再発を抑制させるか遅延させる全ての行為を意味し、“治療”は本発明の薬学的組成物の投与で前記疾患の症状が好転するか良い方向に変更される全ての行為を意味する。
【0032】
本発明による薬学的組成物は、標準薬学的実施によって経口または非経口投与形態に剤形化することができる。これら剤形は、有効成分以外に薬学的に許容可能な担体、補助剤または希釈液などの添加物を含有することができる。適当な担体としては例えば、生理食塩水、ポリエチレングリコール、エタノール、植物性オイルおよびイソプロピルミリステートなどがあり、希釈液としては例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシンなどがあるが、これらに限定されるのではない。また、本発明の化合物は注射溶液の製造に通常使用されるオイル、プロピレングリコールまたは他の溶媒に溶解させることができる。また、局所作用のために本発明の化合物を軟膏やクリームに剤形化することができる。
【0033】
本発明による化学式1で表される化合物の好ましい投与量は患者の状態および体重、疾病の程度、薬物の形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適切に選択できる。しかし、好ましい効果のために、本発明による化学式1で表される化合物を1日0.0001~100mg/kg(体重)、好ましくは0.001~100mg/kg(体重)で投与することが良い。投与は1日1回または分割して経口または非経口的経路を通じて投与することができる。
【0034】
投与方法によって、本発明による薬学的組成物は、本発明による化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を0.001~99重量%、好ましくは0.01~60重量%含有することができる。
【0035】
本発明の薬学的組成物は、ラット、マウス、家畜および人間などをはじめとする哺乳動物に多様な経路で投与することができる。投与の全ての方式は予想することができ、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管注射によって投与することができる。
【発明の効果】
【0036】
前述のように、本発明による化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、肥満または代謝症候群の予防または治療に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】Oil Red O染色によって本発明の化合物が3T3L1脂肪細胞とHep G2肝細胞で脂肪滴の大きさを減少させる効能を確認した結果である。
図2】Oil Red O染色によって本発明の化合物が3T3L1脂肪細胞とHep G2肝細胞で脂肪滴の大きさを減少させる効能を確認した結果である。
図3】BODIPY染色によって3T3L1脂肪細胞で本発明の化合物が脂肪滴の大きさと数を減少させる効能を確認した結果である。
図4a】3T3L1脂肪細胞(図4a)とHep G2肝細胞(図4b)で免疫蛍光染色法によって本発明の化合物がリポファジー過程を活性化し、活性化されたリポファジー過程が細胞内蓄積された脂肪滴の大きさおよび数を減少させる現象を確認した結果である。
図4b】3T3L1脂肪細胞(図4a)とHep G2肝細胞(図4b)で免疫蛍光染色法によって本発明の化合物がリポファジー過程を活性化し、活性化されたリポファジー過程が細胞内蓄積された脂肪滴の大きさおよび数を減少させる現象を確認した結果である。
図5】本発明の化合物がリポファジー過程によって脂肪滴を除去したのを検証するために、本発明の化合物とリポファジー作用の抑制剤であるBafilomycinを共に処理して脂肪滴の除去が起こらないのを確認した結果である。
図6】本発明の化合物の抗肥満効果を生体水準で確認するために野生型マウスに高脂肪飼料の供給によって肥満を誘導し、偽薬と本発明による化合物を処理した後に体重および腹部脂肪組織の大きさが減少したのを確認した結果である。
図7】偽薬と本発明の化合物処理によるそれぞれの体重変化を週次別に記録して示した結果である。
図8】本発明の化合物の処理によって示された体重減少効果が脂肪組織重量の減少に起因したことであるのを確認するために各組織の重量を測定した結果を示したグラフである。
図9】本発明の化合物によって減少した脂肪組織の重量をグラフを通じて比較した結果である。
図10】脂肪組織のみの重量が減少したのを確認するために摘出した各組織の実際の様子を比較した写真である。各写真で、左側がvehicleを、右側が本発明の化合物を処理したものである。
図11】本発明の化合物によって減少した体重の比率を示すグラフである。また、投与期間中の発達程度を比較するために身長を測定した結果を示した。体重減少効果が飼料摂取の減少に起因したのかを判断するために飼料摂取量を調査した結果を示した。
図12】本発明の化合物による体重減少が血中脂質成分および血糖、組織の病的状態に対して効果があるのを把握するために偽薬群と化合物投与群マウスの血液を採取して検査した項目に対する結果である。
図13】本発明の化合物によって組織内蓄積された脂肪滴の除去効果を確認するためにHnE染色法によってマウスの肝組織を観察した結果である。黄色の矢印で表示された白い円形構造物が脂肪滴を示す。
図14】本発明の化合物によって脂肪細胞の大きさが減少したのを確認するためにHnE染色法によってマウスの脂肪組織を観察した結果である。青色の矢印と黒色および黄色の点で表示された構造物が脂肪組織内の脂肪細胞を示す。
図15】本発明の化合物によって示された体重減少および脂肪滴の減少効果がリポファジー作用によるものであるのを確認するために組織免疫化学染色法によってリポファジー活性の標識者であるLC3蛋白質の発現向上を確認した結果である。
図16】過度な脂肪滴の蓄積によって引き起こされる肝組織内の炎症症状において本発明の化合物の緩和効果を観察するために組織免疫化学染色法によって炎症細胞である大食細胞の発現様相を観察した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施例および実験例について詳しく説明する。これら実施例および実験例は本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例および実験例に限定されるのではない。
【実施例
【0039】
実施例1:2-(3,4-ジフェネトキシベンジルアミノ)エタノール塩酸塩の製造
【0040】
段階1)3,4-ジフェネトキシベンズアルデヒドおよび3-ヒドロキシ-4-フェネトキシベンズアルデヒドの製造
【化3】
【0041】
3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(0.50g、3.62mmol)溶液をDMF(10mL)で希釈しながら攪拌した。(2-ブロモエチル)ベンゼン(1.24mL、9.05mmol)を徐々に添加し、無水KCO(2.5g、18.1mmol)を添加した。前記混合物を室温で2時間攪拌し、KCO(2.4g、17.3mmol)をさらに添加し、70℃で30分間加熱した後に室温で冷却させた。混合物を水およびエーテル(それぞれ120mL)の間に分割した。有機層を分離し、水層をエーテル(3×50mL)で抽出した。抽出された有機層を水(2×50mL)で洗浄し、NaCl水溶液(50mL)で飽和させた。薄い淡黄色抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ヘキサン(75mL)で洗浄した後に濃縮した。生成された残留物をエチルアセテート:ヘキサン(1:4)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してクリーム色の固体の3,4-ジフェネトキシベンズアルデヒド(6.57g、95%)およびクリーム色の固体の3-ヒドロキシ-4-フェネトキシベンズアルデヒドをそれぞれ製造した。
【0042】
3-ヒドロキシ-4-フェネトキシベンズアルデヒド:H-NMR(CDCl、300MHz):δ9.78(s、1H)、7.22-7.40(m、12H)、6.91(d、1H、J=6.0Hz)、4.23(td、4H、J=3.0 and 6.0Hz)、3.15(td、4H、J=3.0 and 6.0Hz);ESI MS:m/z 243.17[M+H]
【0043】
3,4-ジフェネトキシベンズアルデヒド:H-NMR(CDCl、300MHz):δ9.84(s、1H)、7.26-7.43(m、7H)、6.96(d、1H、J=9.0Hz)、5.62(s、1H)、4.36(t、2H、J=6.0Hz)、3.17(t、2H、J=6.0Hz);ESI MS:m/z 347.33[M+H]
【0044】
段階2)2-(3,4-ジフェネトキシベンジルアミノ)エタノールの製造
【化4】
【0045】
エタノール(5mL)中の先に段階1で製造した3,4-ジフェネトキシベンズアルデヒド(100mg、0.3mmol)に2-アミノエタノール(27mg(27μL)、0.45mmol)を添加しながら攪拌した。80℃で12時間攪拌した後、室温で冷却した。NaBH(17mg、0.45mmol)を添加し、追加的に12時間攪拌した。溶媒を真空中で蒸発させ残留物を水に溶解させた後、エチルアセテートで抽出した。有機層を結合してNaSOで乾燥し、真空中で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムで精製して2-(3,4-ジフェネトキシベンジルアミノ)エタノール(96mg、85%)を製造した。
【0046】
ESI MS:m/z 392.92[M+H]
【0047】
段階3)2-(3,4-ジフェネトキシベンジルアミノ)エタノール塩酸塩の製造
先に段階2で製造した2-(3,4-ジフェネトキシベンジルアミノ)エタノール(1.0g、2.75mmol)をメタノール(25mL)に溶解させ、HClガスを1時間注入した。混合物を2時間さらに攪拌し約1mLに蒸発させた後、ヘキサンを添加して固体を製造し、ろ過し乾燥して最終化合物の2-(3,4-ジフェネトキシベンジルアミノ)エタノール塩酸塩(720mg、65%)を製造した。
【0048】
実施例2:2-(3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール塩酸塩の製造
【0049】
段階1)3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)ベンズアルデヒドの製造
【化5】
【0050】
3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(500mg、3.62mmol)をDMF(10mL)で希釈し、無水KCO(1.5g、10.86mmol)および(3-ブロモプロピル)ベンゼン(1.2mL、7.96mmol)を順次に徐々に添加した。混合物を80℃まで加熱し2時間攪拌した後、室温に冷却した。混合物を水およびエーテル(それぞれ50mL)の間に分割し、有機層を分離し、水をエーテル(3×50mL)で抽出した。抽出された有機層を水(2×50mL)で洗浄し、NaCl水溶液(50mL)で飽和させた。薄い淡黄色の抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ヘキサン(75mL)で洗浄した後に濃縮させた。残留物は酢酸エチル:ヘキサン(1:4)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してクリーム色固体の3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)ベンズアルデヒド(1.3g、96%)を製造した。
【0051】
H-NMR(CDCl、300MHz):δ9.86(s、1H)、7.45(dd、1H、J=3.0 and 9.0Hz)、7.41(d、1H、J=3.0Hz)、7.22-7.34(m、10H)6.95(d、1H、J=9.0Hz)、4.12(td、4H、J=3.0 and 9.0Hz)、2.87(td、4H、J=3.0 and 9.0Hz)、2.17-2.28(m、4H)。
【0052】
段階2)2-(3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノールの製造
【化6】
【0053】
エタノール(5mL)中の先に段階1で製造した3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)ベンズアルデヒド(100mg、0.27mmol)に2-アミノエタノール(25mg(25μL)、0.40mmol)を攪拌しながら添加し、60℃で12時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却し、NaBH(15.2mg、0.40mmol)を徐々に添加して12時間さらに攪拌した。溶媒を真空で蒸発させ、残留物を水に溶かしてエチルアセテートで抽出した。有機層を結合し、NaSOで乾燥させた後にろ過して真空で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムで精製して2-(3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール(96mg、86%)を製造した。
【0054】
ESI MS:m/z 421.0[M+2H]
【0055】
段階3)2-(3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)-ベンジルアミノ)エタノール塩酸塩の製造
先に段階2で製造した2-(3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール(1.0g、2.75mmol)をメタノール(25mL)に溶解させ、HClガスを1時間注入した。混合物を2時間追加的に攪拌し約1mLに蒸発させ、ヘキサンを添加して固体を得てろ過し乾燥して2-(3,4-ビス(3-フェニルプロポキシ)-ベンジルアミノ)エタノール塩酸塩(720mg、65%)を製造した。
【0056】
実施例3:2-(3,4-ビス(4-フェニルブトキシ)ベンジルアミノ)エタノールの製造
【0057】
段階1)3,4-ビス(4-フェニルブトキシ)ベンズアルデヒドの製造
【化7】
【0058】
3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(147mg、1.07mmol)をDMF(10mL)で希釈し、無水KCO(442mg、3.20mmol)および(4-ブロモブチル)ベンゼン(0.4mL、2.35mmol)を順次に徐々に添加した。混合物を80℃まで加熱し2時間攪拌した後、室温に冷却した。混合物を水およびエーテル(それぞれ50mL)の間に分割し、有機層を分離し、水をエーテル(3×50mL)で抽出した。抽出された有機層を水(2×50mL)で洗浄し、NaCl水溶液(50mL)で飽和させた。薄い淡黄色の抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ヘキサン(75mL)で洗浄した後に濃縮させた。残留物はメタノール(1% to 5% in DCM)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してクリーム色固体の3,4-ビス(4-フェニルブトキシ)ベンズアルデヒド(398mg、93%)を製造した。
【0059】
H-NMR(CDCl、300MHz):δ7.46-7.26(m、10H)、6.84(d、1H、J=9.0Hz)、6.59(d、1H、J=3.0Hz)、6.38(dd、1H、J=3.0 and 9.0Hz)、5.12(s、1H)、5.07(s、1H)、4.03(td、1H、J=3.6 and 5.1Hz)、3.93-3.86(m、2H)、3.25(s、2H)、2.92-2.86(m、2H)、2.72(dd、1H、J=8.1 and 12.0Hz)、1.12(d、6H、J=6.3Hz)
【0060】
ESI MS m/z:496[M+H]
【0061】
段階2)2-(3,4-ビス(4-フェニルブトキシ)ベンジルアミノ)エタノールの製造
【化8】
【0062】
エタノール(5mL)中の先に段階1で製造した3,4-ビス(4-フェニルブトキシ)ベンズアルデヒド(0.35g、0.87mmol)に2-アミノエタノール(106mg、1.74mmol)を攪拌しながら添加し、60℃で12時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却し、NaBH(33mg、0.87mmol)を徐々に添加して12時間さらに攪拌した。溶媒を真空で蒸発させ、残留物を水に溶かしエチルアセテートで抽出した。有機層を結合し、NaSOで乾燥させた後にろ過し真空で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムで精製して2-(3,4-ビス(4-フェニルブトキシ)ベンジルアミノ)エタノール(0.33g、85%)を製造した。
【0063】
ESI MS:m/z 449.0[M+2H]
【0064】
実施例4:2-(ベンジルオキシ)-5-((2-ヒドロキシエチルアミノ)メチル)フェノール塩酸塩の製造
【0065】
段階1)4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシベンズアルデヒドの製造
【化9】
【0066】
不活性ガス(N)雰囲気下の室温で無水アセトニトリル(30mL)中の3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(2.5g、18.1mmol)溶液に攪拌しながらKCO(2.5g、18.1mmol)を添加し、ベンジルブロミド(3.44mL、29.0mmol)を徐々に添加した。加熱しながら還流し2時間攪拌しながら反応を行った。反応溶媒を減圧蒸発させることによって除去し、結果物に冷たい10%NaOH溶液を添加して10分間攪拌した後、エチルアセテート(100mL)を添加した。生成された二相(biphasic)の混合物を分離して水性層を4N HClで酸性化させ、DCM(3×300mL)で抽出した。有機層を塩水、および水で洗浄し、NaSOで乾燥させ減圧濃縮して残留物を収得し、エチルアセテートで結晶化して精製することによって白い粉末の4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシベンズアルデヒド(2.90g、70%)を製造した。
【0067】
H NMR(300MHz、CDCl):δ9.83(s、1H、CHO)、7.39-7.46(m、7H、ArH)、7.03(d、1H、J=9.0Hz、ArH)、5.88(s、1H、OH)、5.20(s、2H、OCHPh)
【0068】
ESI MS:m/z 229.25[M+H]
【0069】
段階2)2-(ベンジルオキシ)-5-((2-ヒドロキシエチルアミノ)メチル)フェノールの製造
【化10】
【0070】
エタノール(5mL)中の先に段階1で製造した4-(ベンジルオキシ)-3-ヒドロキシベンズアルデヒド(200mg、0.88mmol)を攪拌しながら2-アミノエタノール(81mg(80μL)、1.32mmol)を添加し60℃で12時間攪拌した後に室温で冷却した。NaBH(50mg、1.32mmol)を徐々に添加して12時間さらに攪拌した。溶媒を真空状態で蒸発させ残留物を水に溶かしてエチルアセテートで抽出した。有機層を結合しNaSOで乾燥させた後にろ過し真空で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムで精製して2-(ベンジルオキシ)-5-((2-ヒドロキシエチルアミノ)メチル)フェノール(0.22g、92%)を製造した。
【0071】
ESI MS:m/z 274.75[M+H]
【0072】
段階3)2-(ベンジルオキシ)-5-((2-ヒドロキシエチルアミノ)メチル)フェノール塩酸塩の製造
先に段階2で製造した2-(ベンジルオキシ)-5-((2-ヒドロキシエチルアミノ)メチル)-フェノール(1.0g、2.75mmol)をメタノール(25mL)に溶解させ、1時間HClガスを注入した。混合物を2時間攪拌し、約1mLに蒸発させた後にヘキサンを添加して固体を収得し、ろ過し乾燥して2-(ベンジルオキシ)-5-((2-ヒドロキシエチルアミノ)メチル)フェノール塩酸塩(720mg、65%)を製造した。
【0073】
実施例5:2-(4-(ベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンジルアミノ)エタノール塩酸塩の製造
【0074】
段階1)4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンズアルデヒドの製造
【化11】
【0075】
4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-ヒドロキシベンズアルデヒド(0.50g、2.19mmol)をDMF(10mL)で希薄させ、無水KCO(604mg、4.38mmol)および(2-ブロモエチル)ベンゼン(0.36mL、2.63mmol)を順次に徐々に添加した。混合物を70℃で2時間加熱し、室温まで冷却した。混合物を水およびエーテル(それぞれ20mL)の間に分割して有機層を分離し、水層をエーテル(3×20mL)で抽出した。抽出された有機層を水(2×20mL)で洗浄し、NaCl水溶液(20mL)で飽和させた。薄い淡黄色抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濃縮した。残留物をエチルアセテート:ヘキサン(1:9)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してクリーム色固体の4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンズアルデヒド(0.66g、90%)を製造した。
【0076】
H-NMR(CDCl、300MHz):δ9.80(s、1H)、7.21-7.39(m、12H)、6.98(d、1H、J=6.0Hz)、5.17(s、2H)、4.27(t、2H、J=6.0Hz)、3.14(t、2H、J=6.0Hz)
【0077】
段階2)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンジルアミノ)エタノールの製造
【化12】
【0078】
エタノール(5mL)中の先に段階1で製造した4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンズアルデヒド(100mg、0.30mmol)溶液に2-アミノエタノール(22mg(22μL)、0.36mmol)を添加して攪拌した。反応混合物を60℃で12時間攪拌し、室温まで冷却させ、NaBH(17.1mg、0.45mmol)を攪拌しながら徐々に添加し、12時間追加的に攪拌した。溶媒を真空で蒸発させ、残留物を水に溶解させ、エチルアセテートで抽出した。有機層を結合しNaSOで乾燥させた後にろ過し真空で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムで精製して2-(4-(ベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンジルアミノ)エタノール(0.10g、90%)を製造した。
【0079】
ESI MS:m/z 378.9[M+H]
【0080】
段階3)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンジルアミノ)エタノール塩酸塩の製造
先に段階2で製造した2-(4-(ベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンジルアミノ)エタノール(1.0g、2.75mmol)をメタノール(25mL)に溶解させ、HClガスを1時間注入した。2時間攪拌し、約1mLに蒸発させた後、ヘキサンを添加して固体を収得し、これをろ過し乾燥して2-(4-(ベンジルオキシ)-3-フェネトキシベンジルアミノ)エタノール塩酸塩(720mg、65%)を製造した。
【0081】
実施例6:2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール塩酸塩の製造
【0082】
段階1)4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンズアルデヒドの製造
【化13】
【0083】
4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-ヒドロキシベンズアルデヒド(0.50g、2.19mmol)をDMF(10mL)で希薄させ、無水KCO(604mg、4.38mmol)および(3-ブロモプロピル)ベンゼン(0.4mL、2.63mmol)を順次に徐々に添加した。混合物を70℃で2時間加熱し、室温まで冷却した。混合物を水およびエーテル(それぞれ20mL)の間に分割して有機層を分離し、水層をエーテル(3×20mL)で抽出した。抽出された有機層を水(2×20mL)で洗浄し、NaCl水溶液(20mL)で飽和させた。薄い淡黄色抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濃縮した。残留物をエチルアセテート:ヘキサン(1:9)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してクリーム色固体の4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンズアルデヒド(0.68g、90%)を製造した。
【0084】
H-NMR(CDCl、300MHz):δ9.81(s、1H)、7.18-7.38(m、12H)、7.00(d、1H、J=9.0Hz)、5.23(s、2H)、4.09(t、2H、J=6.0Hz)、3.14(t、2H、J=6.0Hz)、2.12-2.22(m、2H)
【0085】
段階2)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノールの製造
【化14】
【0086】
エタノール(5mL)中の先に段階1で製造した4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンズアルデヒド(100mg、0.29mmol)に2-アミノエタノール(22mg(22μL)、0.36mmol)を添加しながら攪拌した。60℃で12時間攪拌した後、室温に冷却した。NaBH(16.7mg、0.44mmol)を徐々に添加し、追加的に12時間攪拌した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物を水に溶解させた後、エチルアセテートで抽出した。有機層を結合しNaSOで乾燥させた後にろ過し、真空で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムで精製して2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール(93mg、82%)を製造した。
【0087】
ESI MS:m/z 392.92[M+H]
【0088】
段階3)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール塩酸塩の製造
先に段階2で製造した2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール(1.0g、2.75mmol)をメタノール(25mL)に溶解させ、HClガスを1時間注入した。混合物を2時間さらに攪拌し、約1mLに蒸発させた後、ヘキサンを添加して固体を収得し、ろ過し乾燥して2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(3-フェニルプロポキシ)ベンジルアミノ)エタノール塩酸塩(720mg、65%)を製造した。
【0089】
実施例7:2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(4-フェニルブトキシ)ベンジルアミノ)エタノールの製造
【0090】
段階1)4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-(4-フェニルブトキシ)ベンズアルデヒドの製造
【化15】
【0091】
4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-ヒドロキシベンズアルデヒド(0.50g、2.19mmol)をDMF(10mL)で希薄させ、無水KCO(604mg、4.38mmol)および(4-ブロモプロピル)ベンゼン(0.46mL、2.63mmol)を順次に徐々に添加した。混合物を70℃で2時間加熱し、室温まで冷却した。混合物を水およびエーテル(それぞれ20mL)の間に分割して有機層を分離し、水層をエーテル(3×20mL)で抽出した。抽出された有機層を水(2×20mL)で洗浄し、NaCl水溶液(20mL)で飽和させた。薄い淡黄色抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濃縮した。残留物をエチルアセテート:ヘキサン(1:9)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してクリーム色固体の4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-(4-フェニルブトキシ)ベンズアルデヒド(0.69g、88%)を製造した。
【0092】
H-NMR(CDCl、300MHz):δ9.86(s、1H)、7.29-7.48(m、8H)、7.22-7.24(m、3H)、7.03(d、1H、J=6.0Hz)、5.25(s、2H)、4.14(t、2H、J=6.0Hz)、2.74(t、2H、J=6.0Hz)、1.87-1.94(m、4H)
【0093】
段階2)2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(4-フェニルブトキシ)ベンジルアミノ)エタノールの製造
【化16】
【0094】
エタノール(5mL)中の先に段階1で製造した4-(ベンジルベンジルオキシ)-3-(4-フェニルブトキシ)ベンズアルデヒド(100mg、0.28mmol)に2-アミノエタノール(25.6mg(25μL)、0.42mmol)を添加しながら攪拌した。60℃で12時間攪拌した後、室温に冷却した。NaBH(16mg、0.42mmol)を徐々に添加し、追加的に12時間攪拌した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物を水に溶解させた後、エチルアセテートで抽出した。有機層を結合し、NaSOで乾燥させた後にろ過し、真空で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムで精製して2-(4-(ベンジルオキシ)-3-(4-フェニルブトキシ)ベンジルアミノ)エタノール(99mg、89%)を製造した。
【0095】
H NMR(CDOD、300MHz):δ7.44-7.41(m、2H)、7.32-7.14(m、8H)、7.05(d、1H、J=1.8Hz)、7.00(d、1H、J=8.1Hz)、6.90(dd、1H、J=1.8 & 8.1Hz)、5.10(s、2H)、4.09-4.05(m、2H)、3.90(s、2H)、3.72(t、2H、J=5.4Hz)、2.88(t、2H、J=5.4Hz)、2.70-2.65(m、2H)、1.85-1.81(m、4H)
【0096】
LC-MS(ESI):m/z 406(M+H) and 345(M-60)
【0097】
実験例1:Oil Red O染色法による3T3-L1脂肪前駆細胞で本化合物の脂肪滴除去効果分析
本発明の化合物が細胞内に蓄積された脂肪滴を減少させる効果を評価するために下記のように実験を行った。
【0098】
脂肪前駆細胞3T3-L1を韓国細胞株銀行から購入し、10%新生仔ウシ血清(NCS、Invitrogen Corporation、Auckland、New Zealand)と高グルコースDMEM(high glucose Dulbecco’s modified Eagle’s Medium、Sigma Co.、St. Louis、MO、USA)に培養して維持した。脂肪細胞に分化させるために10万個細胞/ml密度の3T3-L1を10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)と高グルコースDMEMで2日間細胞を密集(confluence)させた後、0.5mM IBMX(3-isobytyl-1-methyl xanthine)、0.5μMデキサメタゾン(dexamethasone)、5μg/mlインシュリン(MDI)を添加した10%FBS/高グルコースDMEMを入れて2日間培養し、5μg/mlインシュリン(I)のみ添加した10%FBS/高グルコースDMEMに4日さらに培養した後に、10%FBS/高グルコースDMEMのみを入れて再び6日をさらに培養して、総10日間培養して脂肪細胞に分化させた。細胞を密集させて培養させた後に培地を取り替えるたびに化合物を10μMの濃度で処理した。分化10日目培養細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定させた後、Oil Red O染色溶液で染色した。Oil Red O染色溶液は0.5g/200mlイソプロパノールの標準溶液(stock solution)を60%で蒸留水で希釈して染色し、400×倍率で顕微鏡観察を行って、結果は図1に示した。
【0099】
図1で、赤色円形の構造物が細胞内蓄積された脂肪滴を示す。図1に示されているように、本発明による化合物処理によって脂肪滴の大きさと数が減少するのを示し、したがって、本発明による化合物は、3T3-L1脂肪前駆細胞で脂肪滴除去効果があるのを確認することができた。
【0100】
実験例2:Oil Red O染色法によるHep G2肝細胞で本化合物の脂肪滴除去効果分析
本発明の化合物が肝細胞内に蓄積された脂肪滴を除去する効果を評価するために下記のように実験を行った。
【0101】
具体的に、Hep G2細胞を10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum、Hyclone、米国)、100U/mLペニシリン(penicillin)、100mg/mLストレプトマイシン(streptomycin、Hyclone、米国)が添加されたDMEM培地で培養し、細胞が50%程度密集した時、細胞内脂肪蓄積を誘導するために1mMのoleic acidと0.5mMのpalmitic acidが混合されたDMEM培地に交替して24時間を培養した後、本発明によって合成されたそれぞれの化合物が10μM含まれているDMEM培地に交替して24時間を追加的に培養した。終了後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで10分間固定させた後にPBSで三回洗浄した。その後、細胞を60%イソプロパノールで洗いおとした後、希釈されたオイルレッドО溶液(stock solution、3mg/mL in isopropanol;working solution、60% Oil Red O stock solution diluted in water)で1時間染色した。Oil Red O染色溶液は、0.5g/200mlイソプロパノールの標準溶液(stock solution)を60%で蒸留水で希釈して染色し、400×倍率で顕微鏡観察を行い、結果は図2に示した。
【0102】
図2で、赤色円形の構造物が細胞内蓄積された脂肪滴を示す。図2に示されているように、本発明による化合物処理によって脂肪滴の大きさと数が減少するのを示し、したがって、本発明による化合物はHep G2肝細胞で脂肪滴除去効果があるのを確認することができた。
【0103】
実験例3:BODIPY染色法による3T3-L1脂肪前駆細胞およびHep G2肝細胞で本化合物の脂肪滴除去効果分析
本発明の化合物が細胞内に蓄積された脂肪滴を減少させる効果を免疫蛍光染色法によって評価するために下記のように実験を行った。
【0104】
脂肪前駆細胞3T3-L1を韓国細胞株銀行から購入し、10%新生仔ウシ血清(NCS、Invitrogen Corporation、Auckland、New Zealand)と高グルコースDMEM(high glucose Dulbecco’s modified Eagle’s Medium、Sigma Co.、St.Louis、MO、USA)に培養して維持した。脂肪細胞に分化させるために10万個細胞/ml密度の3T3-L1を10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)と高グルコースDMEMで2日間細胞を密集(confluence)させた後、0.5mM IBMX(3-isobytyl-1-methyl xanthine)、0.5μMデキサメタゾン(dexamethasone)、5μg/mlインシュリン(MDI)を添加した10%FBS/高グルコースDMEMを入れて2日間培養し、5μg/mlインシュリン(I)のみ添加した10%FBS/高グルコースDMEMに4日さらに培養した後に、10%FBS/高グルコースDMEMのみを入れて再び6日をさらに培養して、総10日間培養して脂肪細胞に分化させた。細胞を密集させて培養させた後に培地を取り替えるたびに化合物を10μMの濃度で処理した。分化10日目培養細胞を4%ホルムアルデヒドで固定させた後、脂肪滴の標識者であるBODIPYを用いて脂肪滴を染色し、DAPI染色によって細胞の核を標識した。結果は図3に示した。
【0105】
図3で、緑色の円形構造物が細胞内蓄積された脂肪滴を示し、本発明による化合物処理によって大きさと数が減少するのを示す。したがって、本発明による化合物は脂肪前駆細胞で脂肪滴除去効果があるのを確認することができた。
【0106】
実験例4:本発明の化合物の3T3L1脂肪細胞およびHep G2肝細胞でリポファジー作用による脂肪滴除去効果分析
本発明の化合物によって除去された細胞内脂肪滴がリポファジー作用によって減少したのを確認するために以下の実験を行った。
【0107】
脂肪前駆細胞3T3-L1を韓国細胞株銀行から購入し、10%新生仔ウシ血清(NCS、Invitrogen Corporation、Auckland、New Zealand)と高グルコースDMEM(high glucose Dulbecco’s modified Eagle’s Medium、Sigma Co.、St.Louis、MO、USA)に培養して維持した。脂肪細胞に分化させるために10万個細胞/ml密度の3T3-L1を10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)と高グルコースDMEMで2日間細胞を密集(confluence)させた後、0.5mM IBMX(3-isobytyl-1-methyl xanthine)、0.5μMデキサメタゾン(dexamethasone)、5μg/mlインシュリン(MDI)を添加した10%FBS/高グルコースDMEMを入れて2日間培養し、5μg/mlインシュリン(I)のみ添加した10%FBS/高グルコースDMEMに4日さらに培養した後に、10%FBS/高グルコースDMEMのみを入れて再び6日をさらに培養して、総10日間培養して脂肪細胞に分化させた。細胞を密集させて培養させた後に培地を取り替えるたびに化合物を10μMの濃度で処理した。
【0108】
また、Hep G2肝細胞をcover slipが含まれている24 well cell culture plateに接種し、1mMのoleic acidと0.5mMのpalmitic acidが混合されたDMEM培地で24時間培養して脂肪の蓄積を誘導した後、それぞれの化合物を10μM処理して24時間を追加的に培養した。
その後、各細胞をPBS溶液で2回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド溶液を用いて15分間固定し、2%BSAが含まれているPBS溶液で1時間blockingした。Blockingが完了した後、1次抗体と反応させた。1次抗体反応は、LC3 rabbit polyclonal antibody(1:300、Sigma-aldrich、USA)を用いて4℃で一晩行った。1次抗体反応が終わったcover slipをPBSを用いて2回洗浄し、2次抗体(1:500、goat anti rabbit Alexa flour 555、Thermo Fisher、US)を常温で1時間反応させた。2次抗体反応終了後、PBSで2回洗浄した後、BODIPY493/503を常温で10分間反応させた後、マウンティング媒質を用いてslide glassにマウントした。染色された細胞は共焦点顕微鏡を用いてイメージを撮影し、その結果を図4に示した。
【0109】
図4aで、緑色の円形構造物は細胞内蓄積された脂肪滴を示し、3T3-L1脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化過程によって蓄積されたのを確認することができる。脂肪細胞への分化完了と共に本発明の化合物を処理する場合、偽薬を処理した細胞に比べてリポファジーの活性程度を追跡できる標識者である赤色で染色されたLC3が増加したのを確認することができる。また、脂肪滴とLC3の重畳された程度を比較してみれば、偽薬を処理した細胞に比べて本発明の化合物を処理する場合、重畳された程度が顕著に増加したのを確認することができる。したがって、3T3-L1脂肪細胞に生成された脂肪滴が本発明による化合物によって増加されたリポファジー作用を通じて大きさと数が減少したことが分かった。
【0110】
また、図4bで、緑色の円形構造物は細胞内蓄積された脂肪滴を示し、脂肪酸の一種であるoleic acidとpalmitic acidを処理することによってBSAを処理した統制群に比べて脂肪滴の蓄積が誘導されたのを確認することができる。Oleic acidとpalmitic acidを処理した後に本発明による化合物を処理する場合、リポファジーの活性程度を追跡できる標識者である赤色で染色されたLC3が増加したのを確認することができる。また、緑色で染色された脂肪滴のイメージと赤色で染色されたLC3のイメージを重畳して示したイメージを通じてリポファジーの標識者であるLC3が脂肪滴の表面に位置していることが分かる。したがって、本発明の化合物によって示された脂肪滴の数と大きさの減少効果はリポファジー作用によって媒介されたことが分かった。
【0111】
また、本発明による化合物の処置による脂肪滴の除去がリポファジー作用による結果であるのを確認するために、脂肪前駆細胞から分化して脂肪滴が蓄積された脂肪細胞に本発明による化合物と共にリポファジー作用の抑制剤であるBafilomycinを5nMの濃度で処理した後、脂肪滴の除去効果が示されないのを確認して、その結果を図5に示した。
【0112】
図5で、赤色円形構造物が脂肪滴を示し、本発明の化合物によって減少した脂肪滴がbafilomycinを処理することによって減少しないのを示す。したがって、本発明による化合物を処理した場合、脂肪滴の数と大きさの減少効果が示されないことから、本化合物の脂肪滴除去効果はリポファジー作用によって起こったことが分かった。
【0113】
実験例5:高脂肪飼料摂取マウスで本発明の化合物の体重減量効果分析
実験用マウスに肥満を誘導するために6週齢の野生型C57BL6マウスをソウル大学校実験動物資源研究センターから分譲を受けて、無作為割り当てによって一般飼料摂取グループ(LFD)と高熱量食餌摂取グループ(HFD)に分けた後、高脂肪摂取グループは再び偽薬処理群と本発明の化合物の処理群に分類して総3個のグループに分けて肥満誘導および化合物処理を同時に行った。これによって、本化合物が過度に流入される脂肪を効果的に除去して肥満を予防することができるか分析した。
【0114】
具体的に、分譲を受けたマウスは飼育ケージで1週間の適応期間を経た後、水分の摂取は自由に行われるようにし、飼料は総熱量(4.60kcal/g)の60%が脂肪から構成された高脂肪飼料(蛋白質:10%、炭水化物:30%)と総熱量(3.8kcal/g)の17.2%が脂肪から構成された一般飼料(蛋白質:18.8%、炭水化物:63.9%)をそれぞれ供給した。肥満の予防および治療効果などを評価するために、本発明の化合物をDMSOに1μL/mg(v/w)で溶かした後、PBSに希釈してマウスの体重1g当り20μgの濃度で週3回腹腔投与した。偽薬処理群は、同量のDMSOをPBSに希釈して投与した。高脂肪食餌摂取による体重の増加および本発明の化合物投与による体重増加阻害効果を評価するために週3回マウスの体重を測定し、マウスの体内脂肪除去効果を検証するために最終投与後、8時間の空腹時間を含んで24時間後にCO2の過多供給による安楽死を誘導し、開腹して体脂肪の変化を観察した。高脂肪飼料および本発明による化合物の投与による体脂肪除去効果に対する結果、体重変化、飼料摂取量の差および伸張の差は、それぞれ図6、7、8、9、10、11に示した。
【0115】
図6に示されているように、本発明による化合物を投与した場合、偽薬処理群に比べて蓄積された腹部脂肪の大きさが顕著に減少したのを確認することができる。体脂肪の顕著な減少は窮極的に体重減少を招き、これに対する結果は図7に示した。
【0116】
飼料の摂取量には有意差が示されないことから、図8~10に示されているように、白色脂肪組織の重量減量による体重の減少が脂肪の体内流入量の減少による現象ではない、体内で白色脂肪組織の消滅が直接発生していることが分かった。これによって、他の組織には影響を与えなく脂肪組織の重量のみを減少させたことが分かった。
【0117】
また、本発明による化合物によって減少した体重の比率、身長の変化、飼料摂取量の変化を図11に示した。このような結果は体重減少効果が飼料摂取の減少に起因したのかを判断するために飼料摂取量を調べた結果であり、有意差が示されなかったのを示した。
【0118】
また、本発明の化合物による体重減少効果が血中脂質成分および血糖、組織の病的状態を把握するために偽薬群と化合物投与群マウスの血液を採取して検査した項目に対する結果を図12に示した。これによって、血中中性脂肪の数値が有意に減少したのを確認した。
【0119】
実験例6:HnE染色法を用いて高脂肪飼料摂取マウスの組織で本発明の化合物の脂肪滴除去効果分析
本発明の化合物によって組織内蓄積された脂肪滴の除去効果を確認するためにHnE染色法によって先に実験例5のマウスの肝組織を観察してその結果を図13に示した。図13で黄色の矢印で表示された白色の円形構造物が脂肪滴を示し、本発明の化合物の処理によって肝細胞内に蓄積された脂肪滴の大きさと数が減少したことが分かる。
【0120】
本発明の化合物によって脂肪細胞の大きさが減少したのを確認するためにHnE染色法によって先に実験例5のマウスの脂肪組織を観察してその結果を図14に示した。図14で青色の矢印と黒色および黄色の点で表示された構造物が脂肪組織内の脂肪細胞を示し、化合物の処理によって脂肪細胞の大きさが減少したことが分かる。
【0121】
実験例7:免疫組織化学染色法を用いてリポファジー作用による脂肪滴除去効果分析
先に実験例5のマウスを解剖検査して肝で脂肪滴の大きさ減少または除去が起こるか免疫組織化学染色法によって分析した。免疫組織化学染色法のために使用された染色溶液はSigma-aldrichから購入した。全ての過程は室温でパラフィンに包埋させた肝組織の5μm切片上で行われた。抗原再生は免疫組織化学染色法に先立ちウォーターバスで100℃で15分間ホルマリン固定組織上で行われた。細胞内過酸化酵素活性(endogenous peroxidase activity)を水素過酸化酵素で遮断した。一次抗体をHRP-結合重合体で検出してDABで現像した。その後、スライドをヘマトキシリンで対比染色し、多段階アルコールで脱水させた後、マウンティング媒質でマウントした。その結果を図15に示した。図15で、黄色四角形で表示された地域で脂肪滴の表面に茶色で染色されたLC3蛋白質が位置していることが分かった。これによって、脂肪滴の表面で発生するリポファジー作用によって直接的に脂肪滴の除去が起こっていることが分かった。
【0122】
また、過度な脂肪滴の蓄積によって引き起こされる肝組織内の炎症症状において、本発明の化合物の緩和効果を観察するために組織免疫化学染色法によって炎症細胞である大食細胞の発現様相を観察してその結果を図16に示した。図16で、茶色で標識された細胞が大食細胞を示し、本発明による化合物の処理によって肝組織に蓄積された大食細胞が減少することが分かった。これによって、本発明の化合物の処理によって肝組織に蓄積された大食細胞が減少することが分かる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16