(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220224BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
H05K3/46 Z
H05K3/46 B
H01L23/14 R
(21)【出願番号】P 2017025351
(22)【出願日】2017-02-14
【審査請求日】2019-09-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 将毅
【合議体】
【審判長】酒井 朋広
【審判官】清水 稔
【審判官】棚田 一也
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層基板と、
前記内層基板に接合している高周波回路形成用絶縁層と
を備える高周波回路基板であって、
前記内層基板の誘電率をDk(A)とし、前記高周波回路形成用絶縁層の誘電率をDk(B)としたときに、Dk(A)及びDk(B)が下記式:
Dk(B)≦Dk(A)-0.8
を満たし、かつ、前記内層基板に対する前記高周波回路形成用絶縁層のピール強度が0.5kgf/cm以上であり、
前記高周波回路形成用絶縁層が、成分(A)エポキシ樹脂、および成分(B)硬化剤を含
み、不揮発成分を100質量%とした場合に成分(B)硬化剤の含有量が5質量%以上である樹脂組成物(ただし、シアネートエステル系硬化剤を含有する場合を除く。)を熱硬化した硬化体である、高周波回路基板。
【請求項2】
前記高周波回路形成用絶縁層が1層のみ設けられているか、又は前記高周波回路形成用絶縁層が前記内層基板の一方の主表面側に2層以上設けられている、請求項1に記載の高周波回路基板。
【請求項3】
前記高周波回路形成用絶縁層の厚さが、20~200μmである、請求項1又は2に記載の高周波回路基板。
【請求項4】
前記内層基板の厚さが、50~4000μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波回路基板。
【請求項5】
前記内層基板がガラスエポキシ基板を含み、前記高周波回路形成用絶縁層が、該ガラスエポキシ基板に接合している、請求項1~4のいずれか1項に記載の高周波回路基板。
【請求項6】
前記内層基板がエポキシ樹脂を含む材料を硬化した1層以上の絶縁層を含み、該絶縁層に前記高周波回路形成用絶縁層が接合している、請求項1~5のいずれか1項に記載の高周波回路基板。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、成分(C)無機充填材をさらに含む、請求項5又は6に記載の高周波回路基板。
【請求項8】
前記樹脂組成物が、成分(D)有機充填材をさらに含む、請求項7に記載の高周波回路基板。
【請求項9】
前記成分(D)有機充填材が、シクロオレフィンポリマー粒子、ポリフェニレンエーテル粒子、ポリスチレン粒子、及びフッ素系ポリマー粒子からなる群から選択される1種以上の有機充填材である、請求項8に記載の高周波回路基板。
【請求項10】
前記成分(D)有機充填材が、フッ素系ポリマー粒子である、請求項9に記載の高周波回路基板。
【請求項11】
前記樹脂組成物が、成分(E)ビニル基を有する樹脂をさらに含む、請求項9又は10に記載の高周波回路基板。
【請求項12】
前記樹脂組成物が、成分(F)インデンクマロン樹脂をさらに含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の高周波回路基板。
【請求項13】
前記樹脂組成物が、成分(H)シラン化合物をさらに含む、請求項12に記載の高周波回路基板。
【請求項14】
前記Dk(A)が4.0以上である、請求項1~13のいずれか1項に記載の高周波回路基板。
【請求項15】
前記Dk(B)が3.5以下である、請求項1~14のいずれか1項に記載の高周波回路基板。
【請求項16】
前記Dk(B)が3.0以下である、請求項15に記載の高周波回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、該回路基板の絶縁層の材料として用いられる樹脂組成物、及び該樹脂組成物を用いて形成される接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に広く使用されている回路基板は、電子機器の小型化、高機能化のために、配線の微細化、高密度化が求められている。回路基板、特に高周波デバイスが搭載される回路基板(高周波回路基板)の構造としては、コア基板(内層基板)の少なくとも一方の主表面に絶縁層が設けられ、かかる絶縁層に導体層(配線)が設けられている構造が挙げられる。また、コア基板の一方の主表面に絶縁層及び導体層がそれぞれ複数層設けられる多層配線構造を有する高周波回路基板も知られている。このような多層配線構造を有する高周波回路基板の製造方法としては、コア基板の主表面に絶縁層と導体層とを交互に形成してこれらを積み重ねることにより多層配線構造を形成するビルドアップ方式による製造方法が知られている。
【0003】
ビルドアップ方式による高周波回路基板の製造方法において、絶縁層は、例えば支持体と樹脂組成物層とを含む支持体付き樹脂組成物層(接着フィルム)を用いて、樹脂組成物層をコア基板に積層し、樹脂組成物層を熱硬化させることにより形成することができる。次いで、形成された絶縁層に穴あけ加工を行うことによりビアホールを形成することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
回路基板における電気信号の減衰の要因の1つとして、絶縁層の誘電率が大きいことが挙げられる。絶縁層の誘電率が大きいことに起因する電気信号の減衰を抑制するためには、誘電率をより小さくすることが求められる。
【0005】
高周波の電気信号が伝送される高周波回路基板においては、高周波回路形成用絶縁層の誘電率が大きいことによる伝送損失が顕著であり、サーバー向けなど高周波の電気信号の伝送が求められる高周波回路基板においては、特に高周波回路形成用絶縁層の誘電率をより小さくすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高周波回路基板は、特に電気的特性を確保しつつ、コストを削減するためにガラスエポキシ基板といった比較的安価で誘電率が比較的高い内層基板を用いて製造されている。
【0008】
しかしながら、このような従来の高周波回路基板において、求められる電気的特性に鑑みて高周波回路形成用絶縁層の誘電率をより小さくしようとすると、高周波回路形成用絶縁層の内層基板に対する密着性を確保することができず、内層基板から高周波回路形成用絶縁層が剥離してしまうなどの不具合が生じてしまう場合があった。
【0009】
結果として、かかる高周波回路基板を備えるデバイス(半導体装置)の信頼性が損なわれてしまう場合があった。
【0010】
したがって、比較的安価な内層基板を用いる高周波回路基板において、高周波回路形成用絶縁層の誘電率をより小さくすることができ、かつ高周波回路形成用絶縁層の内層基板に対する高い密着性を確保することで、信頼性が高められた高周波回路基板が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、所定の構成を採用した高周波回路基板により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記[1]~[16]を提供する。
[1] 内層基板と、
前記内層基板に接合している高周波回路形成用絶縁層と
を備える高周波回路基板であって、
前記内層基板の誘電率をDk(A)とし、前記高周波回路形成用絶縁層の誘電率をDk(B)としたときに、Dk(A)及びDk(B)が下記式:
Dk(B)≦Dk(A)-0.8
を満たし、かつ、前記内層基板に対する前記高周波回路形成用絶縁層のピール強度が0.5kgf/cm以上である、高周波回路基板。
[2] 前記高周波回路形成用絶縁層が1層のみ設けられているか、又は前記高周波回路形成用絶縁層が前記内層基板の一方の主表面側に2層以上設けられている、[1]に記載の高周波回路基板。
[3] 前記高周波回路形成用絶縁層の厚さが、20~200μmである、[1]又は[2]に記載の高周波回路基板。
[4] 前記内層基板の厚さが、50~4000μmである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の高周波回路基板。
[5] 前記内層基板がガラスエポキシ基板を含み、該ガラスエポキシ基板に接合している前記高周波回路形成用絶縁層が、成分(A)エポキシ樹脂を含む樹脂組成物を熱硬化した硬化体である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の高周波回路基板。
[6] 前記内層基板がエポキシ樹脂を含む材料を硬化した1層以上の絶縁層を含み、該絶縁層に前記高周波回路形成用絶縁層が接合しており、前記高周波回路形成用絶縁層が、成分(A)エポキシ樹脂を含む樹脂組成物を熱硬化した硬化体である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の高周波回路基板。
[7] 前記樹脂組成物が、成分(B)硬化剤と、成分(C)無機充填材とをさらに含む、[5]又は[6]に記載の高周波回路基板。
[8] 前記樹脂組成物が、成分(D)有機充填材をさらに含む、[7]に記載の高周波回路基板。
[9] 前記成分(D)有機充填材が、シクロオレフィンポリマー粒子、ポリフェニレンエーテル粒子、ポリスチレン粒子、及びフッ素系ポリマー粒子からなる群から選択される1種以上の有機充填材である、[8]に記載の高周波回路基板。
[10] 前記成分(D)有機充填材が、フッ素系ポリマー粒子である、[9]に記載の高周波回路基板。
[11] 前記樹脂組成物が、成分(E)ビニル基を有する樹脂をさらに含む、[9]又は[10]に記載の高周波回路基板。
[12] 前記樹脂組成物が、成分(F)インデンクマロン樹脂をさらに含む、[9]~[11]のいずれか1つに記載の高周波回路基板。
[13] 前記樹脂組成物が、成分(H)シラン化合物をさらに含む、[12]に記載の高周波回路基板。
[14] 前記Dk(A)が4.0以上である、[1]~[13]のいずれか1つに記載の高周波回路基板。
[15] 前記Dk(B)が3.5以下である、[1]~[14]のいずれか1つに記載の高周波回路基板。
[16] 前記Dk(B)が3.0以下である、[15]に記載の高周波回路基板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的安価な内層基板を用いる高周波回路基板において、かかる内層基板にさらに形成される高周波回路形成用絶縁層の誘電率をより小さくすることができ、かつ内層基板に対する高い密着性を有する高周波回路形成用絶縁層を備える、信頼性に優れた高周波回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態の高周波回路基板の構成を説明するための模式的な図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態の高周波回路基板の構成を説明するための模式的な図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態の高周波回路基板の構成を説明するための模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置で、製造されたり、使用されたりするわけではない。
【0016】
[高周波回路基板]
上記のとおり、本発明の高周波回路基板は、内層基板と、当該内層基板に接合している高周波回路形成用絶縁層とを備える高周波回路基板であって、内層基板の誘電率をDk(A)とし、高周波回路形成用絶縁層の誘電率をDk(B)としたときに、Dk(A)及びDk(B)が式:Dk(B)≦Dk(A)-0.8を満たし、かつ、内層基板に対する高周波回路形成用絶縁層のピール強度が0.5kgf/cm以上である、高周波回路基板である。
【0017】
ここで「高周波回路基板」とは、高周波帯域の電気信号であっても動作させることができる回路基板を意味する。ここで「高周波帯域」とは、1GHz以上の帯域を意味する。本発明の高周波回路基板では特に28GHz~80GHzの帯域の電気信号であっても有効に動作させることができる。
【0018】
まず、高周波回路基板が備えている、内層基板及びこの内層基板に設けられている高周波回路形成用絶縁層それぞれについて説明する。
【0019】
<内層基板>
内層基板は、例えばガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板といったコア基板を含む。また、内層基板は、コア基板自体であってもよい。コア基板の互いに対向する第1主面及び第2主面の片面側又は両面側には、直接的に導体層(半導体層)が設けられていてもよく、また、かかる導体層は第1主面及び/又は第2主面に設けられている絶縁層に設けられていてもよい。内層基板は、絶縁層及び/又は導体層が2層以上積層された多層構造を有していてもよい。内層基板には、2層以上の導体層がビアホール、スルーホール内に設けられた配線などにより相互に電気的に接続されている多層基板含まれる。内層基板は、受動素子といった任意好適なさらなる構成要素を備えていてもよい。
【0020】
コア基板としては、電気的特性、入手性、コストなどの観点から、ガラスエポキシ基板、BTレジン基材、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基材が好ましく、特にガラスエポキシ基板が好ましい。高周波回路基板に好適に用いることができるガラスエポキシ基板の例としては、パナソニック電工(株)製「R-1766」が挙げられる。また、高周波回路基板に好適に用いることができる多層基板である内層基板の例としては、パナソニック電工(株)製「R-1661」が挙げられる。
【0021】
高周波回路基板に用いることができる内層基板の厚さは、通常、50μm~4000μmであり、高周波回路基板の機械的強度の向上及び低背化(厚さの低減)の観点から、好ましくは200μm~3200μmである。
【0022】
<高周波回路形成用絶縁層>
高周波回路基板にかかる高周波回路形成用絶縁層は、後述する樹脂組成物を熱硬化した硬化物の層である。かかる硬化物からなる高周波回路形成用絶縁層は、特に高周波回路基板用の絶縁層に好適に適用することができる。高周波回路形成用絶縁層には、既に説明した高周波帯域の電気信号を伝送する高周波回路を構成するための配線のみならず、より低周波帯域の電気信号を伝送するための配線を混在させて設けることもできる。
【0023】
高周波回路基板において、高周波回路形成用絶縁層は、内層基板に1層のみが設けられていてもよいし、2層以上が設けられていてもよい。なお、2層以上の絶縁層が設けられる場合には、導体層(配線層)と高周波回路形成用絶縁層とが交互に積層されたビルドアップ層として設けることができる。特にコア基板として、前記「R-1766」といったガラスエポキシ基板が用いられる場合には、コア基板の一方の主表面側に、2層以上の高周波回路用絶縁層が設けられていてもよい。
【0024】
上記のとおり、本発明の高周波回路基板が備え得る内層基板は多様な構成を備え得る。ここで、高周波回路形成用絶縁層と内層基板との具体的な配置関係について説明する。(i)内層基板がコア基板自体である場合には、高周波回路用絶縁層はコア基板の主面に直接的に接合する。(ii)内層基板がコア基板と、コア基板の主面に設けられた導体層とを備える場合には、高周波回路用絶縁層は、コア基板の主面及び導体層に接合する。(iii)内層基板がコア基板と、コア基板の主面に設けられた絶縁層とを備える場合には、高周波回路用絶縁層は、絶縁層に接合する。(iv)内層基板がコア基板とコア基板の主面に設けられた絶縁層と、絶縁層に設けられた導体層を備える場合には、高周波回路用絶縁層は、絶縁層及び導体層に接合する。
【0025】
高周波回路基板にかかる絶縁層の厚さは、通常、20μm~200μmであり、電気的特性の向上と高周波回路基板の低背化の観点から、好ましくは50μm~150μmである。
【0026】
絶縁層は、内層基板が備える導体層と絶縁層に設けられる導体層とを電気的に接続するための、又は2層以上の絶縁層に設けられる導体層同士を電気的に接続するための1個以上のビアホールを備えていてもよい。
【0027】
高周波回路基板にかかる絶縁層の誘電率Dk(B)は、より低いことが好ましい。Dk(B)は、高周波の電気信号の伝送損失より小さくする観点から、3.5以下であることが好ましく、3.3以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。誘電率は、通常、2以上とし得る。誘電率は、後述する<誘電率の評価>に記載の方法に従って測定することができる。
【0028】
上記のとおり、内層基板の誘電率をDk(A)としたときに、Dk(A)及びDk(B)が式:Dk(B)≦Dk(A)-0.8を満たすことが好ましい。ここで、内層基板の誘電率とは、内層基板の両面から内層基板が備えうる導体層(配線層)を除去した態様での測定値を意味する。
【0029】
上記の式を満たすように、内層基板の材料、すなわち高周波回路用絶縁層が接合するコア基板の材料、内層基板が備えうる絶縁層のうち高周波回路用絶縁層が接合する絶縁層の材料を選択し、高周波回路用絶縁層を形成するための樹脂組成物の材料を選択すれば、高周波の電気信号の伝送損失をより小さくすることができる。
【0030】
Dk(A)は、特に限定されない。Dk(A)は、コスト及び入手性の観点から、4.0以上であることが好ましい。
【0031】
高周波回路用絶縁層は、より低い誘電正接を示すことが好ましい。誘電正接は、高周波信号の伝送時の発熱防止、信号遅延及び信号ノイズの低減の観点から、0.010以下であることが好ましく、0.009以下であることがより好ましく、0.008以下、0.007以下、0.006以下、又は0.005以下であることがさらに好ましい。誘電正接は、通常、0.001以上とし得る。
【0032】
高周波回路用絶縁層は、内層基板、すなわちコア基板、内層基板が備える絶縁層に対する良好な密着性を示す。内層基板に対するピール強度は、好ましくは0.4kgf/cm以上であり、より好ましくは0.5kgf/cm以上であり、さらに好ましくは0.6kgf/cm以上である。内層基板に対するピール強度の評価は、後述する[ピール強度の測定]に記載の方法に従って測定することができる。
【0033】
高周波回路用絶縁層は、内層基板が備える導体層に対しても良好な密着性、すなわち導体層に対する優れたピール強度を示す。導体層に対するピール強度は、好ましくは0.4kgf/cm以上であり、より好ましくは0.5kgf/cm以上であり、さらに好ましくは0.6kgf/cm以上である。導体層に対するピール強度の評価は、後述する[ピール強度の測定]に記載の方法に従って測定することができる。
【0034】
ここで、本発明の高周波回路基板の構成例について
図1、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0035】
まず、
図1を参照して、第1の実施形態にかかる高周波回路基板の構成例について説明する。
図1は、第1の実施形態にかかる高周波回路基板の構成を説明するための模式的な図である。
【0036】
図1に示されるように、第1の実施形態の高周波回路基板10は、内層基板20であるコア基板22を備えている。コア基板22は互いに対向する第1主面22a(20a)及び第2主面22b(20b)を有している。
【0037】
第1主面22aには、コア基板22に接合してこれを覆うように高周波回路用絶縁層30が設けられている。高周波回路用絶縁層30の表面には、高周波回路用導体層(配線層)40が設けられている。なお、高周波回路用導体層40には、高周波帯域の電気信号を伝送する高周波回路を構成するための配線のみならず、より低周波帯域の電気信号を伝送するための配線が含まれていてもよい。
【0038】
第2主面22bには、これに接合するように絶縁層50が設けられている。絶縁層50の表面には、導体層(配線層)60が設けられている。
【0039】
また、この構成例では、内層基板20、すなわちコア基板22、高周波回路用絶縁層30及び絶縁層50を厚さ方向に貫通するスルーホール12が設けられている。スルーホール12内にはスルーホール内配線12aが設けられている。この構成例では高周波回路用導体層40のうちの一部と導体層60のうちの一部とが、スルーホール内配線12aにより電気的に接続されている。
【0040】
次に、
図2を参照して、第2の実施形態にかかる高周波回路基板の構成例について説明する。
図2は、第2の実施形態にかかる高周波回路基板の構成を説明するための模式的な図である。
【0041】
図2に示されるように、第2の実施形態の高周波回路基板10は、内層基板20を含んでいる。この構成例では、内層基板20は、コア基板22、第1導体層(配線層)24及び第2導体層(配線層)26を備えている。ここで、第1導体層24は、コア基板22の第1主面22a、すなわち内層基板20の第1主面20aに設けられている。第2導体層26は、コア基板22の第2主面22b、すなわち内層基板20の第2主面20bに設けられている。
【0042】
第1導体層24が設けられた第1主面22aには、コア基板22及び第1導体層24に接合してこれらを覆うように、すなわち内層基板20の第1主面20aに接合するように高周波回路用絶縁層30が設けられている。高周波回路用絶縁層30の表面には、高周波回路用導体層40が設けられている。
【0043】
高周波回路用絶縁層30には、高周波回路用絶縁層30を厚さ方向に貫通するビアホール32が設けられている。ビアホール32内にはビアホール内配線32aが設けられている。この構成例では高周波回路用配線40のうちの一部と第1導体層24の一部とが、ビアホール内配線32aにより電気的に接続されている。
【0044】
第2導体層26が設けられた第2主面22bには、コア基板22及び第2導体層26に、すなわち内層基板20の第2主面20bに接合してこれらを覆うように絶縁層50が設けられている。絶縁層50の表面には、導体層60が設けられている。
【0045】
低周波回路用絶縁層50には、低周波回路用絶縁層50を厚さ方向に貫通するビアホール52が設けられている。ビアホール52内にはビアホール内配線52aが設けられている。この構成例では低周波回路用導体層60のうちの一部と第2導体層26の一部とが、ビアホール内配線52aにより電気的に接続されている。
【0046】
また、この構成例では、コア基板22、高周波回路用絶縁層30及び絶縁層50を厚さ方向に貫通するスルーホール12が設けられている。スルーホール12内にはスルーホール内配線12aが設けられている。
【0047】
次いで、
図3を参照して、第3の実施形態にかかる高周波回路基板の構成例について説明する。
図3は、第3の実施形態にかかる高周波回路基板の構成を説明するための模式的な図である。
【0048】
図3に示されるように、第3の実施形態の高周波回路基板10は、内層基板20を含んでいる。この構成例では、内層基板20は、コア基板22、第1導体層24、第2導体層26、層間絶縁層27及び第3導体層(配線層)28を備えている。ここで、第1導体層24は、コア基板22の第1主面22aに設けられている。第2導体層26は、コア基板22の第2主面22bに設けられている。層間絶縁層27は、コア基板22及び第1導体層24に接合して、これらを覆うように設けられている。第3導体層28は、層間絶縁層27に接合するように設けられている。
【0049】
高周波回路用絶縁層30は、層間絶縁層27及び第3導体層28に接合して、これらを覆うように、すなわち内層基板20の第1主面20aに接合するように設けられている。高周波回路用絶縁層30の表面には、高周波回路用導体層40が設けられている。
【0050】
層間絶縁層27には、層間絶縁層27を厚さ方向に貫通するビアホール29が設けられている。ビアホール29内にはビアホール内配線29aが設けられている。この構成例では高周波回路用配線40のうちの一部と第3導体層28の一部とが、ビアホール内配線29aにより電気的に接続されている。
【0051】
第2導体層26が設けられた第2主面22b、すなわち内層基板20の第2主面20bには、これらに接合するように絶縁層50が設けられている。絶縁層50の表面には、導体層60が設けられている。
【0052】
絶縁層50には、絶縁層50を厚さ方向に貫通するビアホール52が設けられている。ビアホール52内にはビアホール内配線52aが設けられている。この構成例では導体層60のうちの一部と第2導体層26の一部とが、ビアホール内配線52aにより電気的に接続されている。
【0053】
また、この構成例では、コア基板22、層間絶縁層27、高周波回路用絶縁層30及び絶縁層50を厚さ方向に貫通するスルーホール12が設けられている。スルーホール12内にはスルーホール内配線12aが設けられている。
【0054】
[高周波回路基板の製造方法]
次に、高周波回路基板の製造方法について説明する。まず、かかる製造方法に用いられる接着フィルムについて説明する。
【0055】
<接着フィルム>
接着フィルムは、支持体と、該支持体に設けられた、後述する樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを備えている。
【0056】
支持体
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられる。支持体としては、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0057】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という場合がある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」という場合がある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」という場合がある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリルポリマー、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価で入手性に優れるのでポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0058】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅のみからなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との銅合金からなる箔を用いてもよい。
【0059】
支持体は、樹脂組成物層と接合する側の面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0060】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用することができる離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体としては、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック(株)製「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ(株)製「ルミラーT6AM」等が挙げられる。
【0061】
支持体の厚さは、特に限定されない。支持体の厚さは、5μm~75μmの範囲であることが好ましく、10μm~60μmの範囲であることがより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0062】
樹脂組成物層
接着フィルムが備える樹脂組成物層は、樹脂ワニスの塗膜を半硬化した薄膜である。接着フィルムは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体に塗布し、樹脂ワニスの塗膜をある程度乾燥させて樹脂組成物層とすることにより製造することができる。
【0063】
樹脂組成物層の形成に用いられる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶媒を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
樹脂ワニスの塗膜の乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施することができる。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、樹脂ワニスの塗膜を、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0065】
接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の面のうちの支持体とは接合していない側の面(支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではない。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズがついてしまうことを抑制することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。接着フィルムが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がし、除去することによって使用可能となる。
【0066】
接着フィルムにおける樹脂組成物層(又は樹脂組成物)の最低溶融粘度は、樹脂組成物層が薄くともその厚さを安定して維持するという観点から、1000ポイズ(poise)以上であることが好ましく、1500ポイズ以上であることがより好ましく、2000ポイズ以上であることがさらに好ましい。樹脂組成物層の最低溶融粘度は、回路の埋め込み性を良好にする観点から、好ましくは12000ポイズ以下であり、より好ましくは10000ポイズ以下であり、さらに好ましくは8000ポイズ以下であり、特に好ましくは5000ポイズ以下である。
【0067】
「樹脂組成物層の最低溶融粘度」とは、樹脂組成物層が溶融した際に呈する最低の粘度をいう。詳細には、一定の昇温速度で樹脂組成物層を加熱して溶融させると、初期においては溶融粘度が温度上昇とともに低下し、その後、ある程度の時間の経過により温度上昇とともに溶融粘度が上昇する。最低溶融粘度とは、溶融粘度が最も低下した極小点の溶融粘度をいう。樹脂組成物層の最低溶融粘度は、動的粘弾性法により測定することができる。
【0068】
<プリプレグ>
高周波回路基板にかかる絶縁層は、既に説明した接着フィルムに代えて、プリプレグを用いて形成してもよい。プリプレグは、シート状繊維基材に後述する樹脂組成物を含浸させて形成することができる。
プリプレグは、1枚のシート状繊維基材のみを含んでいてもよく、2枚以上のシート状繊維基材を含んでいてもよい。
【0069】
プリプレグに用いられるシート状繊維基材の材料は特に限定されない。シート状繊維基材としては、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。高周波回路基板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは120μm以下であり、さらにより好ましくは100μm以下である。導体層の形成にかかるめっきのもぐり深さを小さく抑えることができるため、800μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。シート状繊維基材の厚さは、通常、4μm以上とすることができ、6μm以上とすることができ、8μm以上とすることができる。なお、プリプレグについて「不揮発成分」という場合には、かかる「不揮発成分」には上記「シート状繊維基材」は含まれない。
【0070】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0071】
プリプレグの厚さは、上述の接着フィルムにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0072】
高周波回路基板は、接着フィルムを用いて、下記工程(I)及び工程(II)を含む製造方法により製造することができる。
工程(I)内層基板に、接着フィルムを、該接着フィルムの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
工程(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0073】
内層基板への接着フィルムの積層は、例えば、支持体側から接着フィルムを内層基板に押圧しつつ加熱する加熱圧着工程により行うことができる。加熱圧着工程に用いられる部材(「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を接着フィルムの支持体に直接的に押し当ててプレスするのではなく、内層基板の主表面の凹凸に接着フィルムが十分に追随するように、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスすることが好ましい。
【0074】
内層基板と接着フィルムとの積層は、真空ラミネート法により実施することができる。真空ラミネート法において、加熱圧着の温度は、好ましくは60℃~160℃の範囲であり、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着の圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPaの範囲であり、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着の時間は、好ましくは20秒間~400秒間の範囲であり、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0075】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ(株)製のバキュームアップリケーターが挙げられる。
【0076】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材で支持体側からさらにプレスすることにより、積層された樹脂組成物層の平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着の条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層及び平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0077】
支持体は、工程(I)と工程(II)との間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0078】
工程(II)において、積層(及び平滑化処理)された樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
【0079】
樹脂組成物層の熱硬化の条件は特に限定されず、高周波回路基板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を採用することができる。
【0080】
樹脂組成物層の熱硬化条件は、例えば、硬化温度を120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)とし、硬化時間を5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)とすることができる。
【0081】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化するのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)予備加熱してもよい。
【0082】
高周波回路基板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、及び(V)導体層を形成する工程のうちのいずれかをさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至(V)は、高周波回路基板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施することができる。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)との間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施することができる。
【0083】
他の実施形態において、本発明の高周波回路基板にかかる絶縁層は、接着フィルムに代えて、既に説明したプリプレグを用いて形成してもよい。プリプレグを用いる絶縁層の形成は、基本的に接着フィルムを用いる場合と同様の工程により実施することができる。
【0084】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施すればよい。ホールの寸法や形状は、高周波回路基板のデザインに応じて適宜決定すればよい。
【0085】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、高周波回路基板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液は特に限定されない。膨潤液としては、例えばアルカリ溶液、界面活性剤溶液が挙げられる。膨潤液は、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されない。膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。酸化剤は、特に限定されない。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましい。中和液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた絶縁層の処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた絶縁層を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬することが好ましい。
【0086】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層の表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは280nm以下であり、より好ましくは250nm以下であり、さらに好ましくは200nm以下であり、140nm以下、130nm以下、120nm以下、110nm以下、100nm以下、95nm以下、又は90nm以下である。Ra値は0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましい。絶縁層の表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計の具体例としては、ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」が挙げられる。
【0087】
工程(V)は、導体層を形成する工程である。
【0088】
導体層に用いられる材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層の形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0089】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した多層構造であってもよい。導体層が多層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0090】
導体層の厚さは、通常、3μm~200μmであり、好ましくは10μm~100μmである。
【0091】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成することができる。例えば、セミアディティブ法、モディファイド‐セミアディティブ法、フルアディティブ法といった従来公知の方法により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。以下、導体層をモディファイド‐セミアディティブ法により形成する例について説明する。
【0092】
まず、絶縁層の表面に、銅箔の層を形成する。銅箔の層としては、例えば接着フィルムの支持体として用いた銅箔をそのまま用いてもよいし、銅箔を例えばエッチング工程などによってより厚さを薄くして用いてもよい。次いで、銅箔の層をシード層として、所望の配線パターンに対応するようにシード層の一部分を露出させるマスクパターンを形成する。露出したシード層に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0093】
高周波回路基板が2層以上の高周波回路用絶縁層及び配線層(ビルドアップ層)を備える場合には、既に説明した高周波回路用絶縁層の形成工程、導体層の形成工程をさらに1回以上繰り返して実施することにより高周波回路として機能し得る多層配線構造を備える高周波回路基板を製造することができる。
【0094】
[樹脂組成物]
以下、本発明の高周波回路基板を製造するための接着フィルム及びプリプレグの形成に好適に用いることができる樹脂組成物について説明する。
【0095】
高周波回路用絶縁層の形成のための樹脂組成物の成分は、樹脂組成物の硬化体である高周波回路用絶縁層の内層基板に対する密着性(ピール強度)を高める観点から、用いられる内層基板の材料を勘案して、内層基板の材料と同様の構造、同等の特性(例えば、極性の大きさ)を有する材料を選択することが好ましい。
【0096】
例えば、高周波回路用絶縁層と接合するコア基板がガラスエポキシ基板といったエポキシ樹脂を材料として含む場合及び/又は内層基板が備える絶縁層であって高周波回路用絶縁層と接合する絶縁層がエポキシ樹脂を含む場合には、樹脂組成物は成分(A)エポキシ樹脂を含むことが好ましく、また、例えば、高周波回路用絶縁層と接合するコア基板がBTレジン基板である場合及び/又は内層基板が備える絶縁層であって高周波回路用絶縁層と接合する絶縁層がカルボジイミド基を有する樹脂又はトリアジン骨格を有する樹脂を含む場合には、樹脂組成物はカルボジイミド基を有する樹脂又はトリアジン骨格を有する樹脂を含むことが好ましく、さらに、高周波回路用絶縁層と接合するコア基板がポリフェニレンエーテル基板である場合及び/又は内層基板が備える絶縁層であって高周波回路用絶縁層と接合する絶縁層がポリフェニレンエーテル骨格を有する樹脂を含む場合には、樹脂組成物はポリフェニレンエーテル骨格を有する樹脂を含むことが好ましい。
【0097】
このように樹脂組成物を選択すれば、安価で入手性に優れた内層基板を用いたとしても高周波回路用絶縁層の内層基板に対する密着性を確保することができる。
【0098】
<成分(A)エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、成分(A)エポキシ樹脂を含有しうる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
成分(A)は、平均線熱膨張率を低下させる観点から、芳香族骨格含有エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂から選択される1種以上であることがより好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がさらに好ましい。なお、芳香族骨格とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。
【0100】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。中でも、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」という。)を含むことが好ましい。エポキシ樹脂は、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(「液状エポキシ樹脂」という。)と、固体状エポキシ樹脂とを含んでいてもよい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物の硬化物の破断強度も向上する。
【0101】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、(株)ダイセル製「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0103】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製「PG-100」、「CG-500」、三菱化学(株)製「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1~1:15の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比をかかる範囲とすることにより、i)接着フィルムの形態で使用する場合に粘着性を好適にすることができ、ii)接着フィルムの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性を向上させることができ、かつiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)~iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.5~1:10の範囲がより好ましく、1:1~1:8の範囲がさらに好ましい。
【0105】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量は、本発明の効果を得ることができることを条件として、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0106】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50~5000であり、より好ましくは50~3000であり、さらに好ましくは80~2000であり、さらにより好ましくは110~1000である。この範囲とすることで、硬化物の架橋密度が十分であり、表面粗さの小さい絶縁層とすることができる。なお、エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定することができる。
【0107】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~5000であり、より好ましくは250~3000であり、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0108】
<成分(B)硬化剤>
樹脂組成物は、成分(B)硬化剤を含有する。硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されない。成分(B)硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。成分(B)は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましく、活性エステル系硬化剤であることが好ましい。
【0109】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
【0110】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、明和化成(株)製「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-7851H」、日本化薬(株)製「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金(株)製「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」、DIC(株)製「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」が挙げられる。
【0111】
導体層との密着性に優れる高周波回路用絶縁層を得る観点から、成分(B)としては、活性エステル系硬化剤が好ましい。活性エステル系硬化剤としては、特に制限はない。活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤としては、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られる化合物が好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0112】
用いられ得るカルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸が挙げられる。
【0113】
用いられ得るフェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラックが挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0114】
活性エステル系硬化剤としては、具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0115】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物であるDIC(株)製「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物であるDIC(株)製「EXB9416-70BK」、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物である三菱化学(株)製「DC808」、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物である三菱化学(株)製「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」が挙げられる。
【0116】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製「HFB2006M」、四国化成工業(株)製「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0117】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーが挙げられる。
【0118】
シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)が挙げられる。
【0119】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル(株)製「V-03」、「V-07」が挙げられる。
【0120】
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.1~1:1の範囲であることが好ましく、1:0.2~1:0.9であることがより好ましく、1:0.3~1:0.8であることがさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の不揮発成分の質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比をかかる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0121】
樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に限定されない。樹脂組成物中の含有量は、不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。また、樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。
【0122】
<成分(C)無機充填材>
樹脂組成物は、さらに成分(C)無機充填材を含有していてもよい。無機充填材の材料は特に限定されない。無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウムが挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
無機充填材の平均粒径は、導体層の埋め込み性を向上させ、表面粗度の低い高周波回路用絶縁層を得る観点から、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。平均粒径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、さらに好ましくは0.1μm以上である。このような平均粒径を有する無機充填材の市販品としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SP60-05」、「SP507-05」、(株)アドマテックス製「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、デンカ(株)製「UFP-30」、(株)トクヤマ製「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」、(株)アドマテックス製「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」が挙げられる。
【0124】
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルとしては、無機充填材を超音波により水中に分散させたサンプルを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA-500」等を使用することができる。
【0125】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業(株)製「KBM-103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)が挙げられる。
【0126】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上であることが好ましく、0.1mg/m2以上であることがより好ましく、0.2mg/m2以上であることが更に好ましい。他方、樹脂ワニスの溶融粘度や樹脂ワニスをシート形態としたときの溶融粘度の上昇を防止する観点から、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、1mg/m2以下であることが好ましく、0.8mg/m2以下であることがより好ましく、0.5mg/m2以下であることが更に好ましい。
【0127】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、まず、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。次いで、上澄液を除去して、不揮発成分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0128】
樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、誘電率が低い絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上、又は40質量%以上である。樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、絶縁層の機械強度、特に密着強度を良好にする観点から、好ましくは80質量%以下である、より好ましくは75質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0129】
<成分(D)有機充填材>
樹脂組成物は、成分(D)有機充填材を含有していてもよい。
【0130】
成分(D)の粒径は特に限定されない。成分(D)の平均粒径は、樹脂組成物中における分散性に優れるので、5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。成分(D)の平均粒径は、0.05μm以上であることが好ましく、0.08μm以上であることがより好ましく、0.10μm以上であることがさらに好ましい。よって、成分(D)は、平均粒径が0.05μm~5μmであることが好ましく、0.08μm~4μmであることがより好ましく、0.10μm~3μmであることがさらに好ましい。
【0131】
成分(D)としては高周波回路用絶縁層の誘電率を低減することができることを条件として特に限定されない。成分(D)としては、例えば、フッ素樹脂、フッ素ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂、オレフィン類との付加共重合型樹脂、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド・トリアジン・レジン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、及び液晶ポリマーから選ばれる材料を含む粒子が挙げられる。好適な成分(D)としては、例えば、フッ素系ポリマー粒子、シクロオレフィンポリマー粒子、ポリフェニレンエーテル粒子、ポリスチレン粒子が挙げられる。これらのうち、高周波回路用絶縁層の誘電率を低減する観点から、フッ素樹脂を含むフッ素系ポリマー粒子が好ましい。
【0132】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
高周波回路用絶縁層の誘電率をより低減する観点から、フッ素系樹脂としてはPTFEを用いることが好ましい。換言すると、成分(D)としては、フッ素系樹脂としてPTFEを含むフッ素系ポリマー粒子であるPTFE粒子を用いることが好ましい。
【0134】
PTFEの重量平均分子量は、5000000以下であることが好ましく、4000000以下であることがより好ましく、3000000以下であることがさらに好ましい。
【0135】
フッ素系ポリマー粒子としては、市販品を用いてもよい。市販のフッ素系ポリマー粒子であるPTFE粒子の具体例としては、ダイキン工業(株)製「ルブロンL-2」、ダイキン工業(株)製「ルブロンL-5」、ダイキン工業(株)製「ルブロンL-5F」、旭硝子(株)製「FluonPTFE L-170JE」、旭硝子(株)製「FluonPTFEL-172JE」、旭硝子(株)製「FluonPTFE L-173JE」、(株)喜多村製「KTL-500F」、(株)喜多村製「KTL-2N」、(株)喜多村製「KTL-1N」、三井・デュポン フロロケミカル(株)「TLP10F-1」が挙げられる。
【0136】
成分(D)は、例えば、表面処理された粒子を含んでいてもよい。表面処理としては例えば、表面処理剤での表面処理が挙げられる。表面処理剤は、特に限定されない。表面処理剤には、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等の界面活性剤の他、無機微粒子等も含まれる。成分(D)がフッ素樹脂を含むフッ素系ポリマー粒子である場合には、親和性の観点から、表面処理剤としては、フッ素系の界面活性剤を用いることが好ましい。フッ素系の界面活性剤の具体例としては、AGCセイミケミカル(株)製「サーフロンS-243」(パーフルオロアルキル エチレンオキシド付加物)、DIC(株)製「メガファックF-251」、DIC(株)製「メガファックF-477」、DIC(株)製「メガファックF-553」、DIC(株)製「メガファックR-40」、DIC(株)製「メガファックR-43」、DIC(株)製「メガファックR-94」、ネオス(株)製「FTX-218」、ネオス(株)製「フタージェント610FM」、ネオス(株)製「フタージェント730LM」が挙げられる。
【0137】
成分(D)の含有量は、高周波回路用絶縁層の誘電率を効果的に低減する観点から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。成分(D)の含有量は、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下、35質量%以下、30質量%以下であることがさらに好ましい。よって、成分(D)の含有量は5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~35質量%であることがより好ましく、15質量%~30質量%であることがさらに好ましい。
【0138】
<成分(E)不飽和炭化水素基を有する樹脂>
樹脂組成物は、成分(E)不飽和炭化水素基を有する樹脂を含有することが好ましい。成分(E)を含むことで樹脂組成物の相溶性を高め、溶融粘度の良好な樹脂組成物を得ることができる。成分(E)は1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0139】
成分(E)は、不飽和炭化水素基を有していれば特に限定されない。不飽和炭化水素基は、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、オレフィン基であることが好ましい。ここで、「オレフィン基」とは、分子中に炭素-炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素基をいう。オレフィン基としては、例えば、アリル基、ビニル基、プロペニル基が挙げられる。すなわち、成分(E)は、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、アリル基、ビニル基及びプロペニル基からなる群から選択される1以上の不飽和炭化水素基を有する樹脂であることが好ましい。成分(E)は、その構造中に芳香環を有することが好ましい。中でも、成分(E)は、保存時の安定性を高める観点から、下記式(1)又は(4)で表される化合物(樹脂)であることが好ましい。
【0140】
【0141】
式(1)中、R1~R6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。Aは、下記式(2)又は下記式(3)で表される基を表す。
【0142】
【0143】
式(2)中、Eは下記式(E-1)、(E-2)又は(E-3)で表される基を表す。
【0144】
【0145】
式(3)中、R7~R14はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数6以下のアルキル基又はフェニル基を表す。Eは下記式(E-1)、(E-2)又は(E-3)を表す。a及びbは、0~100の整数であって、a及びbのうちの少なくとも一方は0ではない整数を表す。
【0146】
【0147】
式(E-1)~(E-3)中、R15~R34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。Gは、炭素原子数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を表す。
【0148】
式(1)中、R1~R6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。R1~R6は水素原子であることが好ましい。炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0149】
式(3)中のR7~R14、及び式(E-1)~(E-3)中のR15~R34にかかる炭素原子数6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。R7~R14としては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0150】
a及びbは、0~100の整数であって、a及びbのうちの少なくとも一方が0ではない整数を表す。a及びbは0~50の整数であることが好ましく、0~10の整数であることがより好ましい。
【0151】
Gは、炭素原子数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~20のアルキレン基、炭素原子数2~20のアルケニレン基、炭素原子数2~20のアルキニレン基が挙げられる。炭素原子数1~20のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。炭素原子数2~20のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロぺニレン基、ブテニレン基が挙げられる。炭素原子数2~20のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基が挙げられる。
【0152】
ビニル基を有する樹脂におけるビニル基は、置換基を有していてもよい。また、前記アルキル基、フェニル基、及び2価の炭化水素基も置換基を有していてもよい。
【0153】
かかる置換基は、特に制限されない。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、-OHで表される基、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-6アルキル基)2、C1-6アルキル基、C6-10アリール基、-NH2で表される基、-CNで表される基、-C(O)O-C1-6アルキル基、-COOHで表される基、-C(O)Hで表される基、-NO2で表される基が挙げられる。
【0154】
前記置換基にかかる「C1-6」及び「C6-10」の意味を、これらの文言を「Cp-q」と一般化して説明する。「Cp-q」(ここで、p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)は、この文言の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。具体的には、例えば、「C1-6アルキル基」は、「炭素原子数1~6のアルキル基」を表している。
【0155】
置換基は、さらに置換基(以下、「2次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。2次置換基としては、例えば、既に説明した置換基と同じ基が挙げられる。
【0156】
成分(E)の具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。本発明はこれに限定されるものではない。
【0157】
【0158】
式中、R1~R6、E、a、bは、前記式(1)又は式(3)において定義されたとおりであり、これらの好ましい範囲も同様である。
【0159】
【0160】
成分(E)の具体例としては、三菱瓦斯化学(株)製「OPE-2St 2200(数平均分子量2200)」、「OPE-2St 1200(数平均分子量1200)」(スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、三菱化学(株)製「YL7776(数平均分子量331)」(ビキシレノールジアリルエーテル樹脂)が挙げられる。
【0161】
成分(E)の数平均分子量は、樹脂ワニスの乾燥時における揮発を防止し、樹脂組成物の溶融粘度が上昇しすぎるのを防止するという観点から、100~10000の範囲であることが好ましく、200~3000の範囲であることがより好ましい。
【0162】
なお数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製「LC-9A/RID-6A」を用い、カラムとして昭和電工(株)製「Shodex K-800P/K-804L/K-804L」を用い、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0163】
成分(E)の含有量は、相溶性の良好な樹脂組成物を得る観点から、不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下、又は15質量%以下である。成分(E)の含有量は、不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
【0164】
樹脂組成物は、成分(E)を含むことで、既に説明した成分(D)(特にフッ素系ポリマー粒子)を樹脂組成物中でより均一に分散させることができる。結果として、樹脂組成物の均一性が向上するため、コア基板に対する密着性をより向上させることができ、これにより形成される絶縁層の誘電率などの電気的特性を向上させ、デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0165】
<成分(F)インデンクマロン樹脂>
樹脂組成物は、成分(F)インデンクマロン樹脂を含有することが好ましい。成分(F)を含むことで相溶性が向上し、物性バランスの良好な樹脂組成物を得ることができる。成分(F)に含まれるクマロン骨格は極性の高いエポキシ樹脂や硬化剤との相溶性が高く、またインデン骨格及びクマロン骨格は極性の低いビニル樹脂との相溶性が高い。そのため、極性の高い樹脂と極性が低い樹脂との間で相溶化剤として機能し、樹脂組成物全体の相溶性が向上すると考えられる。
【0166】
成分(F)としては、例えば、インデン及びクマロンの共重合体、インデン、クマロン及びスチレンの共重合体を挙げることができる。
【0167】
インデンクマロン樹脂中のクマロン構造の含有比率は、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは8モル%以上であり、さらに好ましくは10モル%以上である。インデンクマロン樹脂中のクマロン構造の含有比率は、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは35モル%以下であり、さらに好ましくは30モル%以下である。
【0168】
インデンクマロン樹脂中のインデン構造の含有比率は、好ましくは30モル%以上であり、より好ましくは35モル%以上であり、さらに好ましくは40モル%以上である。インデンクマロン樹脂中のインデン構造の含有比率は、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは75モル%以下であり、さらに好ましくは70モル%以下である。
【0169】
インデンクマロン樹脂がインデン、クマロン及びスチレンの共重合体である場合、スチレン構造の含有比率は、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは25モル%以上であり、さらに好ましくは30モル%以上である。インデンクマロン樹脂がインデン、クマロン及びスチレンの共重合体である場合のスチレン構造の含有比率は、好ましくは70モル%以下であり、より好ましくは65モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以下である。
【0170】
インデンクマロン樹脂の具体例としては、日塗化学(株)製「H-100」、「V-120S」、「V-120」が挙げられる。
【0171】
成分(F)の含有量は、相溶性の良好な樹脂組成物を得る観点から、不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。成分(F)の含有量は、溶融粘度の良好な樹脂組成物を得る観点、下地密着性に優れる絶縁層を得る観点から、20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下又は8質量%以下である。
【0172】
本発明にかかる樹脂組成物は、成分(F)を含むことで相溶性が向上し、溶融粘度を良好にすることができる。結果として、樹脂組成物を用いて形成される高周波回路用絶縁層の誘電率をより低くすることができ、かつ内層基板に対する密着性、導体層に対する密着性を向上させることができ、これによりデバイスの信頼性を向上させることができる。
【0173】
樹脂組成物は、上記成分(E)及び成分(F)のうちのいずれか一方を含有していてもよく、両方を含有していてもよい。
【0174】
<成分(G)硬化促進剤>
樹脂組成物は、成分(G)硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤が挙げられる。硬化促進剤としては、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0175】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネートが挙げられる。リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0176】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0177】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ)、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0178】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよい。市販の用いられ得るイミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、三菱化学(株)製「P200-H50」が挙げられる。
【0179】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニドが挙げられる。グアニジン系硬化促進剤としては、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0180】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸錫、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0181】
過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0182】
過酸化物系硬化促進剤としては、市販品を用いることができる。過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、日油(株)製「パークミル D」が挙げられる。
【0183】
樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は特に限定されない。硬化促進剤の含有量は、不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%~1質量%であることが好ましい。
【0184】
<成分(H)シラン化合物>
樹脂組成物は、成分(H)シラン化合物を含有していてもよい。シラン化合物としては、フッ素系シラン化合物が好ましい。成分(H)シラン化合物としては、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシランが好ましく、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシランがより好ましい。市販のシラン化合物としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM-7103」が挙げられる。
【0185】
樹脂組成物に成分(H)シラン化合物を含有させることにより、既に説明した成分(C)及び成分(D)を樹脂組成物中でより均一に分散させることができる。結果として、樹脂組成物の均一性が向上し、形成される絶縁層の誘電率などの電気的特性、密着性といった物理的特性をより向上させることができる。
【0186】
<成分(I)熱可塑性樹脂>
樹脂組成物は、成分(I)熱可塑性樹脂を含有していてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0187】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、8000~70000の範囲であることが好ましく、10000~60000の範囲であることがより好ましく、20000~60000の範囲であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製「LC-9A/RID-6A」を用い、カラムとして昭和電工(株)製「Shodex K-800P/K-804L/K-804L」を用いて、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃として測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0188】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7891BH30」及び「YL7482」が挙げられる。
【0189】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業(株)製「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズが挙げられる。
【0190】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシ基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0191】
ポリアミドイミド樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販の用いられ得るポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡(株)製「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0192】
ポリエーテルスルホン樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販の用いられ得るポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製「PES5003P」が挙げられる。
【0193】
ポリスルホン樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販の用いられ得るポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製「P1700」、「P3500」が挙げられる。
【0194】
中でも、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。好適な一実施形態において、熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。
【0195】
樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、熱可塑性樹脂の含有量は、不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは0.6質量%~12質量%、さらに好ましくは0.7質量%~10質量%である。
【0196】
<成分(J)難燃剤>
樹脂組成物は、成分(J)難燃剤を含有していてもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物が挙げられる。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0197】
難燃剤としては、市販品を用いてもよい。市販の用いられ得る難燃剤としては、例えば、三光(株)製「HCA-HQ」、大八化学工業(株)製「PX-200」が挙げられる。
【0198】
樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有量は特に限定されない。難燃剤の含有量は、不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%~20質量%であり、より好ましくは0.5質量%~15質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%~10質量%である。
【0199】
<成分(K)任意の添加剤>
樹脂組成物は、さらに必要に応じて、任意の添加剤を含んでいてもよい。かかる任意の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤が挙げられる。
【0200】
[半導体装置]
本発明の高周波回路基板にかかる半導体装置は、既に説明した高周波回路基板を含む。換言すると、本発明の半導体装置は、本発明の高周波回路基板を用いて製造することができる。
【0201】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0202】
半導体装置は、高周波回路基板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「高周波回路基板における電気信号を伝送することができる箇所」であって、その箇所は高周波回路基板の表面であっても、高周波回路基板の厚さ内に埋め込まれた箇所であっても構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0203】
本発明の半導体装置を製造するための半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されない。半導体チップの実装方法としては、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップを高周波回路基板に直接的に埋め込み、半導体チップと高周波回路基板の配線とを接続させる実装方法」を意味する。
【実施例】
【0204】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0205】
<測定方法及び評価方法>
まず、実施例にかかる測定方法及び評価方法について説明する。
【0206】
1.誘電率の測定
後述する実施例及び比較例において得られた樹脂ワニスを、支持体である、離型処理されたPETフィルム(リンテック(株)製、「PET501010」)の表面に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように、ダイコーターを用いて均一に塗布し、80℃~110℃(平均95℃)で6分間乾燥した。その後、200℃で90分間加熱処理し、支持体を剥離することで硬化物フィルムを得た。
【0207】
得られた硬化物フィルムを長さ80mm、幅2mmの短冊状に切り出して評価サンプルとした。
【0208】
この評価サンプルについてアジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製「HP8362B」を用い、空洞共振摂動法により測定周波数10GHz、測定温度23℃にて誘電率を測定した。
【0209】
2本の評価サンプルについてそれぞれ測定を行い、平均値を算出して、評価サンプル(樹脂組成物の硬化物)の誘電率Dk(B)の測定値とした。
【0210】
また、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック電工(株)製「R―1766」)について、塩化第二鉄水溶液により両面の銅箔を除去し、10GHzで測定温度23℃にてガラス布基材エポキシ樹脂基板(コア基板)の誘電率を測定した。結果として、コア基板の誘電率は4.3であった。
【0211】
2.高周波回路用絶縁層と導体層との引き剥がし強さ(ピール強度)の測定
(1)樹脂組成物層付き銅箔(接着フィルム)の形成
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を銅箔である三井金属工業(株)製「MT18Ex」箔の表面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるようにダイコーターを用いて均一に塗布し、80℃~110℃(平均95℃)で6分間乾燥し、樹脂組成物層付き銅箔を得た。
【0212】
(2)樹脂組成物層付き銅箔(接着フィルム)のラミネート
得られた樹脂組成物層付き銅箔(2枚)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ(株)製「2ステージビルドアップラミネーター CVP700」)を用いて、樹脂組成物層がガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック電工(株)製「R―1766」)の両面と接するように、両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、雰囲気の温度を100℃とし、圧力を0.74MPaとして30秒間圧着させることにより実施した。次いで、雰囲気の温度を100℃とし、圧力を0.5MPaとして60秒間熱プレスを行った。
【0213】
(3)銅箔付き硬化体の形成
ラミネートされた樹脂組成物層付き銅箔がコア基板にラミネートされた積層体を200℃、90分間の硬化条件で加熱処理を行って樹脂組成物層を硬化させることにより硬化体(高周波回路用絶縁層)とし、銅箔付き硬化体を形成した。
【0214】
(4)導体層(積層板)の形成(電気めっき)
上記工程(3)で得られた銅箔付き硬化体からキャリア銅箔を剥離した後、厚さが25μmとなるように、硫酸銅電解めっき(電気めっき)を行い、導体層を形成した。次に、180℃、30分間の加熱処理を行って、両面に導体層(銅層)を有する積層板を得た。この積層板を用いて導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定を行った。
【0215】
(5)高周波回路用絶縁層と導体層とのピール強度引き剥がし強さの測定
形成された導体層に、幅10mm、長さ100mmの短冊状の切込みをいれ、その長さ方向の一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー製「オートコム型試験機 AC-50CSL」)で掴み、常温にて、50mm/分の速度で垂直方向(長さ方向)に35mmを引き剥がした時の荷重であるピール強度(kgf/cm)を測定した。なお、いずれも剥離面は高周波回路用絶縁層と銅箔(三井金属工業(株)製「MT18Ex」箔)との界面であった。
結果を表2に示す。
【0216】
3.内層基板(コア基板)と高周波回路用絶縁層との引き剥がし強さ(ピール強度)の測定
(1)内層基板の準備
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック電工(株)製「R―1766」)の両面の銅箔を塩化第二鉄水溶液にて除去することにより、コア基板を得た。
【0217】
(2)樹脂組成物層付き銅箔(接着フィルム)の形成
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を銅箔である三井金属工業(株)製「MT18Ex」の表面に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるようにダイコーターを用いて均一に塗布し、80℃~110℃(平均95℃)で6分間乾燥し、樹脂組成物層付き銅箔を得た。
【0218】
(3)樹脂組成物層付き銅箔(接着フィルム)のラミネート
得られた樹脂組成物層付き銅箔(2枚)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ製「2ステージビルドアップラミネーターCVP700」)を用いて、樹脂組成物層がコア基板と接するように、コア基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした状態で、第1チャンバのラバープレス部の温度を100℃とし、圧力を0.74MPaとして30秒間圧着させることにより実施した。次いで、第2チャンバのメタルプレス部の温度を100℃とし、圧力を0.5MPaとして60秒間熱プレスを行った。
【0219】
(4)銅箔付き硬化体の形成
樹脂組成物層付き銅箔がコア基板にラミネートされた積層体を200℃、90分間の条件で加熱処理を行って樹脂組成物層を硬化させることにより硬化体(高周波回路用絶縁層)とし、銅箔付き硬化体を形成した。
【0220】
(5)導体層(積層板)の形成(電気めっき)
上記工程(4)で得られた銅箔付き硬化体からキャリア箔を剥離した後、厚さが25μmとなるように、硫酸銅電解めっき(電気めっき)を行って、導体層を形成した。次に、180℃、30分間の加熱処理を行って、両面に導体層(銅層)を有する積層板を得た。この積層板を用いて高周波回路用絶縁層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定を行った。
【0221】
(6)高周波回路用絶縁層のピール強度の測定
形成された導体層に、幅10mm、長さ100mmの短冊状の切込みをいれ、その長さ方向の一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー製「オートコム型試験機AC-50CSL」)で掴み、常温にて、50mm/分の速度で垂直方向(長さ方向)に35mmを引き剥がした時の荷重であるピール強度(kgf/cm)を測定した。
【0222】
ここで、剥離面が高周波回路用絶縁層と導体層との間となる場合、すなわち、積層板から導体層のみが引き剥がされた場合には、内層基板と高周波回路用絶縁層との間のピール強度はより高いと判断した。
【0223】
ピール強度が0.5kgf/cm以上であった場合を○(良)と判定し、ピール強度が0.5kgf/cm未満であった場合を×(不良)と判定した。
結果を表2に示す。
【0224】
[実施例1]
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量190)25部と液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER828US」、エポキシ当量187)15部とをソルベントナフサ25部に加熱しつつ撹拌することにより溶解させ、その後常温まで冷却した。
【0225】
得られた混合液にフェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)190部とPTFE粒子(ダイキン工業(株)製「ルブロンL-2」、平均粒子径3μm)120部とを混合し、3本ロールで混練することにより分散させた。
【0226】
得られた混合液に、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC-8000-65T」、活性基当量が約223であり、不揮発成分を65質量%含むトルエン溶液)61.5部、ビニル基を有する樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「OPE-2St 2200」、不揮発成分を60質量%含むトルエン溶液)25部、インデンクマロン樹脂(日塗化学(株)製「H-100」)15部、硬化促進剤である2-フェニル-4-メチルイミダゾール((四国化成(株)製「2P4MZ」)の2.5質量%のMEK溶液)8部を混合し、回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を調製し、既に説明したとおり、得られた樹脂ワニス1を用いて、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布し、樹脂組成物層を乾燥することにより、接着フィルム1を作製した。
【0227】
[実施例2]
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量190)を10部とし、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP6000」、エポキシ当量260)21部をさらに用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニス2を調製し、これを用いて接着フィルム2を作製した。
【0228】
[実施例3]
3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM-7103」)2部をさらに用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニス3を調製し、これを用いて接着フィルム3を作製した。
【0229】
[実施例4]
活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC-8000-65T」、活性基当量が約223であり、不揮発成分を65質量%含むトルエン溶液)を30.8部とし、さらに、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC(株)製「LA-3018-50P」、水酸基当量が約151であり、不揮発成分を50%含む2-メトキシプロパノール溶液)28部を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニス4を調製し、これを用いて接着フィルム4を作製した。
【0230】
[実施例5]
活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC-8000-65T」、活性基当量が約223であり、不揮発成分が65質量%であるトルエン溶液)30.8部を、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「EXB-9416-70BK」、活性基当量が約274であり、不揮発成分を70質量%含むメチルイソブチルケトン溶液)34.3部に変更した以外は実施例4と同様にして、樹脂ワニス5を調製し、これを用いて接着フィルム5を作製した。
【0231】
[実施例6]
活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC-8000-65T」)を、ナフタレン型硬化剤(新日鉄住金化学(株)製「SN485」、フェノール当量が215であり、不揮発成分を60質量%含むMEK溶液)33.3部及びトリアジン骨格含有フェノールノボラック型硬化剤(DIC(株)製「LA7054」、フェノール当量が125であり、不揮発成分を60質量%含むMEK溶液)18.3部に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニス6を調製し、これを用いて接着フィルム6を作製した。
【0232】
[実施例7]
フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO-C2」、平均粒子径0.5μm)を250部に、PTFE粒子(ダイキン工業(株)製「ルブロンL-2」、平均粒子径3μm)を50部にした以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニス7を調製し、これを用いて接着フィルム7を作製した。
【0233】
[実施例8]
フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO-C2」、平均粒子径0.5μm)を50部に、PTFE粒子(ダイキン工業(株)製「ルブロンL-2」、平均粒子径3μm)を200部にした以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニス8を調製し、これを用いて接着フィルム8を作製した。
【0234】
[実施例9]
硬化剤としてカルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V-03」、不揮発成分を50質量%含むトルエン溶液)5部を追加で用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニス9を調製し、これを用いて接着フィルム9を作製した。
【0235】
[実施例10]
硬化促進剤(四国化成(株)製「2P4MZ」、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、不揮発成分を2.5質量%含むMEK溶液)を、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、不揮発成分を10質量%含むMEK溶液)2部に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニス10を調製し、これを用いて接着フィルム10を作製した。
【0236】
[比較例1]
ビニル基を有する樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「OPE-2St 2200」、不揮発成分を60質量%含むトルエン溶液)40部、インデンクマロン樹脂(日塗化学(株)製「H-100」)15部、トルエン50部、及びメチルエチルケトン20部を混合し、加熱しつつ撹拌することにより溶解させ、その後、常温にまで冷却した。フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO-C2」、平均粒子径0.5μm)50部と、PTFE粒子(ダイキン工業(株)製「ルブロンL-2」、平均粒子径3μm)50部とを混合し、高速回転ミキサーで分散させた。
【0237】
得られた混合物に、ラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド(日油(株)製「パークミルD」)の5質量%のトルエン溶液6部を混合し、回転ミキサーで均一に混合することにより、樹脂ワニス11を調製し、これを用いて接着フィルム11を作製した。
【0238】
[比較例2]
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量250、DIC(株)製「HP6000」)35部と、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER828US」、エポキシ当量187)15部とをメチルエチルケトン30部に加熱しつつ撹拌することにより溶解させ、その後、常温にまで冷却した。
【0239】
得られた溶解液に、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、不揮発成分を30質量%含むMEK溶液)20部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された結晶シリカ(Unimin社製「IMSIL A-8」、平均粒子径1.38μm)180部を混合し、高速回転ミキサーで分散させた。その後、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「TD2090」、水酸基当量105)の不揮発成分50質量%のメチルエチルケトン溶液32部、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA-7054」、水酸基当量が125であり、不揮発成分を60質量%含むMEK溶液)10部、硬化促進剤である2-フェニル-4-メチルイミダゾール(四国化成(株)製「2P4MZ」)の2.5質量%のMEK溶液8部を加え、回転ミキサーで均一に混合して、樹脂ワニス12を調製し、これを用いて接着フィルム12を作製した。
【0240】
前記実施例及び比較例にかかる樹脂ワニスに用いた成分を表1に示す。また、前記実施例及び比較例にかかる測定値、評価(ピール強度の評価、並びに絶縁層の密着性及び電気的特性の両立の評価)を表2に示す。
【0241】
【0242】
【0243】
表2から明らかなとおり、実施例1~10にかかる絶縁層は、Dk(A)及びDk(B)が式:Dk(B)≦Dk(A)-0.8を満たし、かつ、内層基板に対する絶縁層(高周波回路用絶縁層)のピール強度が0.5kgf/cm以上である。すなわち、Dk(B)の2.5~3.1程度に至るまでの低減と、内層基板に対する絶縁層の優れた密着性とを両立させることができていた。
【0244】
よって、比較的安価な内層基板を用い、例えば28GHz~80GHzの帯域という高周波帯域で動作させたとしても、内層基板と絶縁層との安定した接合を確保することでき、使用環境下で高周波回路用絶縁層が内層基板から剥離してしまい、高周波回路基板として機能しなくなってしまう不具合を抑制することができ、電気的特性の経時的な劣化の抑制、寿命といったデバイスの信頼性をより向上させることが期待できる。
【0245】
他方、成分(A)を含有しない比較例1によれば、絶縁層に膨れが発生してしまい、密着性が不十分であり、絶縁層の誘電率の低減と、コア基板、すなわち内層基板に対する絶縁層の優れた密着性とを両立させることができなかった。
【0246】
また、成分(D)、(E)及び(F)を含有しない比較例2によれば、Dk(B)の低減が不十分であり、絶縁層の誘電率の低減と、コア基板、すなわち内層基板に対する絶縁層の優れた密着性とを両立させることができなかった。
【符号の説明】
【0247】
10 高周波回路基板
12 スルーホール
12a スルーホール内配線
20 内層基板
20a、22a 第1主面
20b、22b 第2主面
22 コア基板
24 第1導体層(配線層)
26 第2導体層(配線層)
27 層間絶縁層
28 第3導体層(配線層)
29、32、52 ビアホール
29a、32a、52a ビアホール内配線
30 高周波回路用絶縁層
40 高周波回路用導体層(配線層)
50 絶縁層
60 導体層(配線層)