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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】多孔質ジルコニア焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/486 20060101AFI20220224BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20220224BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20220224BHJP
   B28B 1/24 20060101ALI20220224BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C04B35/486
C04B38/00 303Z
C04B38/00 304Z
C01G25/02
B28B1/24
B29C45/16
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017083162
(22)【出願日】2017-04-19
(65)【公開番号】P2018177609
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000173522
【氏名又は名称】一般財団法人ファインセラミックスセンター
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末廣 智
(72)【発明者】
【氏名】大川 元
(72)【発明者】
【氏名】木村 禎一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠治
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-191480(JP,A)
【文献】特開平07-082019(JP,A)
【文献】特開2017-165598(JP,A)
【文献】特開2014-198414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
C04B 38/00-38/10
C01G 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ジルコニア焼結体の製造方法であって、
ゲル状の水酸化ジルコニウムを含む第1の原料液に対して、酢酸、クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸からなる群から選択される1種又は2種以上のカルボン酸を加えて、ジルコニウム含有コロイドである第2の原料液を調製する原料液調製工程と、
前記第2の原料液の液滴を加熱して前記水酸化ジルコニウムの少なくとも一部を熱分解して多孔質ジルコニア粒子を得る粒子化工程と、
前記多孔質ジルコニア粒子を用いて、ジルコニア材料を含む成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成して前記多孔質ジルコニア粒子を焼結させて、多孔質ジルコニア焼結体を得る焼結工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
前記多孔質ジルコニア焼結体は、容積基準の細孔径分布におけるピーク細孔径が0.1μm以上0.5μm以下であり、前記ピーク細孔径を中心として含む0.1μmの範囲に容積基準で全細孔の80%以上を含む、焼結体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼結体の相対密度が50%以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記焼結体の比表面積が0.8m2/g以上である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記カルボン酸は、クエン酸である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2の原料液は透明である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記成形工程に先立って、前記粒子化工程で得られた前記多孔質ジルコニア粒子を加熱して前記粒子についての前記カルボン酸の消失程度、比表面積、収縮率及びジルコニアの結晶性からなる群から選択される1種又は2種以上の特性を調整する焼成工程を備える、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
多孔質ジルコニア焼結体を得るための材料の製造方法であって、
ゲル状の水酸化ジルコニウムを含む第1の原料液に対して、酢酸、クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸からなる群から選択される1種又は2種以上のカルボン酸を加えて、ジルコニウム含有コロイドである第2の原料液を調製する原料液調製工程と、
前記第2の原料液の液滴を加熱して前記水酸化ジルコニウムの少なくとも一部を熱分解して多孔質ジルコニア粒子を得る粒子化工程と、
前記粒子化工程で得られた前記多孔質ジルコニア粒子をさらに加熱して前記多孔質ジルコニア粒子についての前記カルボン酸の消失程度、比表面積、収縮率及びジルコニアの結晶性からなる群から選択される1種又は2種以上の特性を調整する焼成工程と、
を備える、方法。
【請求項9】
多孔質ジルコニア焼結体であって、
容積基準の細孔径分布におけるピーク細孔径が0.1μm以上0.5μm以下であって、前記ピーク細孔径を中心として含む0.1μmの範囲に容積基準で全細孔の80%以上を含み、開気孔率が15%以上である、焼結体。
【請求項10】
相対密度が50%以上である、請求項に記載の焼結体。
【請求項11】
比表面積が0.8m2/g以上である、請求項又は10に記載の焼結体。
【請求項12】
多孔質ジルコニア層と緻密質ジルコニア層との積層体の製造方法であって、
多孔質ジルコニア粒子を含む多孔質ジルコニア材料層と、緻密質ジルコニア材料層との積層体を焼成して一体化する工程、
を備え、
前記多孔質ジルコニア粒子を、以下の工程;
ゲル状の水酸化ジルコニウムを含む第1の原料液に対して、酢酸、クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸からなる群から選択される1種又は2種以上のカルボン酸を加えて、ジルコニウム含有コロイドである第2の原料液を調製する原料液調製工程と、
前記第2の原料液の液滴を加熱して前記水酸化ジルコニウムの少なくとも一部を熱分解して前記多孔質ジルコニア粒子を得る粒子化工程と、
前記粒子化工程で得られた前記多孔質ジルコニア粒子を加熱して、前記多孔質ジルコニア粒子についての前記カルボン酸の消失程度、比表面積、収縮率及びジルコニアの結晶性からなる群から選択される1種又は2種以上の特性を調整する焼成工程と、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、多孔質ジルコニア焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安定化元素添加ジルコニアの焼結体は、典型的な固体電解質として、燃料電池や酸素センサなどの構造体の要素として使用されている。こうした構造体は、概して、反応面積を確保するために多孔体として製造される。セラミックス多孔体は、一般的には、原料のセラミックス粒子と造孔剤と混合し、焼成時に造孔剤を焼失させることにより多孔体とする(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-227324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、造孔剤を用いて多孔体を製造する場合、得られる多孔体の孔径分布は、造孔剤の粒径分布に依存するが、高精度に孔径制御することは困難であった。理由は、通常、多孔質セラミックス焼結体においては、多孔化とともに焼結を意図するが、焼結を優先する必要があるため、原料組成や焼成条件を孔径制御等に最適化することが困難であるからである。また、造孔剤をセラミックス材料に対して均一に分布させることが困難であり、多孔質でない部分、すなわち、反応表面としては無効化されている部分も生じてしまうからである。
【0005】
本明細書は、より実用的な多孔質ジルコニア焼結体の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、焼結というプロセスにおいてジルコニア粒子の緻密化と造孔剤の焼失による多孔質化という2つの相反する事象を意図しているために、孔径制御が困難になるという推測に基づき、焼結体の製造に用いるジルコニア系粒子に多孔質性を付与することで、造孔剤を用いることなく、多孔質性や焼結性等が良好に制御された多孔質ジルコニア焼結体を得ることができるという知見を得た。
【0007】
また、本発明者らは、噴霧熱分解法における消失剤(焼失剤)及び分散剤としてカルボン酸を用いる原料液の調製について検討した。多孔質ジルコニア焼結体の製造に好適に用いることができる孔質ジルコニア粒子を含む焼結用材料を噴霧熱分解法で製造できるという知見を得た。本明細書は、こうした知見に基づき以下の手段を提供する。
【0008】
(1)多孔質ジルコニア焼結体の製造方法であって、
球状の多孔質ジルコニア粒子を含むジルコニア材料を含む成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成してジルコニアを焼結させて多孔質ジルコニア焼結体を得る工程と、
を備える、方法。
(2)前記多孔質ジルコニア焼結体は、平均細孔径が0.1μm以上0.5μm以下であって、前記平均細孔径を含む0.1μmの範囲に全細孔の80%以上を含む、焼結体である、(1)に記載の方法。
(3)前記焼結体の相対密度が50%以上である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記焼結体の比表面積が0.8m2/g以上である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)さらに、前記ジルコニア材料を得るための以下の工程;
不溶物として水酸化ジルコニウムを含む第1の原料液に対して、カルボン酸を加えて、ジルコニウム含有コロイドである第2の原料液を調製する原料液調製工程と、
前記第2の原料液の液滴を加熱して前記水酸化ジルコニアの少なくとも一部を熱分解して粒子化する粒子化工程と、
を、備える、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記水酸化ジルコニウムはゲル状の水酸化ジルコニウムである、(5)に記載の方法。
(7)前記カルボン酸は、酢酸、クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸からなる群から選択される1種又は2種以上である、(5)又は(6)に記載の方法。
(8)前記カルボン酸は、クエン酸である、(7)に記載の方法。
(9)前記第2の原料液はほぼ透明である、(5)~(7)のいずれかに記載の方法。
(10)前記粒子化工程で得られた前記粒子を加熱して前記粒子の特性を調整する焼成工程をさらに備える、(5)~(9)のいずれかに記載の方法。
(11)多孔質ジルコニア焼結体を得るための材料の製造方法であって、
不溶物として水酸化ジルコニウムを含む第1の原料液に対して、カルボン酸を加えて、ジルコニウム含有コロイドである第2の原料液を調製する原料液調製工程と、
前記第2の原料液の液滴を加熱して前記水酸化ジルコニアの少なくとも一部を熱分解して粒子化する粒子化工程と、
前記粒子化工程で得られた前記粒子を加熱して前記粒子の特性を調整する焼成工程と、
を備える、方法。
(12)多孔質ジルコニア焼結体を得るための材料であって、
球状の多孔質ジルコニア粒子と、
有機質材料である熱収縮調製剤と、
を含む、材料。
(13)前記有機質材料は、前記多孔質ジルコニア粒子の合成原料に由来する、(12)に記載の材料。
(14)前記合成原は、カルボン酸である、(13)に記載の材料。
(15)多孔質ジルコニア焼結体であって、
平均細孔径が0.1μm以上0.5μm以下であって、前記平均細孔径を含む0.1μmの範囲に全細孔の80%以上を含む、焼結体。
(16)相対密度が50%以上である、(15)に記載の焼結体。
(17)比表面積が0.8m2/g以上である、(15)又は(16)に記載の焼結体。
(18)多孔質ジルコニア層と緻密質ジルコニア層との積層体の製造方法であって、
球状の多孔質ジルコニア粒子を含む多孔質ジルコニア材料層と、緻密質ジルコニア材料層との積層体を焼成して一体化する工程、
を備え、
前記多孔質ジルコニア粒子を、以下の工程;
不溶物として水酸化ジルコニウムを含む第1の原料液に対して、カルボン酸を加えて、ジルコニウム含有コロイドである第2の原料液を調製する原料液調製工程と、
前記第2の原料液の液滴を加熱して前記水酸化ジルコニアの少なくとも一部を熱分解して粒子化する粒子化工程と、
前記粒子化工程で得られた前記粒子を加熱して前記粒子の特性を、前記緻密質ジルコニア層との一体性を向上するように調整する焼成工程と、
を備える、方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本明細書における多孔質ジルコニア焼結体の製造プロセスの一例を示す図である。
図2】実施例3で合成した多孔質ジルコニア焼結体の相対密度を示す図である。
図3】実施例3で合成した多孔質ジルコニア焼結体の一部についての細孔分布と気孔率との評価結果を示す図である。
図4】実施例3で合成した多孔質ジルコニア焼結体の一部についての相対密度等に関する評価結果を示す図である。
図5】多孔質ジルコニア焼結体と8YSZ緻密質体との積層体の製造に関する評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書は、多孔質ジルコニア焼結体に関し、詳しくは、多孔質ジルコニア焼結体及びその製造方法、多孔質ジルコニア層と緻密質ジルコニア層との積層体の製造方法等に関する。
【0011】
本明細書に開示される多孔質ジルコニア焼結体の製造方法によれば、球状の多孔質ジルコニア粒子を含むジルコニア材料を焼結体材料として用いる。これにより、多孔質性に優れ、しかも、焼結性に優れる焼結体を得ることができる。また、こうした焼結体材料は、その結晶性や多孔質化のための消失材料の残存量を意図的に制御できる。制御された粒子特性により、焼結体の多孔質性や焼結性のほか、熱収縮率を容易に制御して、所望の特性の焼結体を得ることができる。すなわち、例えば、気孔率が高くまた比表面積の大きな多孔質ジルコニア焼結体を得ることができる。また、例えば、他のセラミックス材料と一体焼結する場合において、当該他のセラミックス材料の熱収縮に応じて、多孔質ジルコニア焼結体に生じる熱収縮率を調整することができる。
【0012】
また、本明細書に開示される多孔質ジルコニア粒子材料は、高い多孔質性や比表面積が求められる多孔質ジルコニア焼結体の原料粒子として好適に用いることができる。
【0013】
本明細書において、ジルコニアは、純粋なジルコニアのほか、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアを含んでいる。安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアは、概して、イットリウム、マグネシウム、カルシウム及びハフニウム等からなる群から選択される1種又は2種以上の酸化物で安定化されている。
【0014】
以下、本明細書に開示される多孔質ジルコニア焼結体の製造方法、多孔質ジルコニア焼結体、積層体の製造方法及び積層体並びに多孔質ジルコニア粒子材料の製造方法及び多孔ジルコニア粒子材料など本開示の種々の実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。図1は、多孔ジルコニア焼結体の製造方法の概要を示す図である。
【0015】
(多孔質ジルコニア焼結体の製造方法)
本明細書に開示される多孔質ジルコニア焼結体の製造方法は、球状の多孔質ジルコニア粒子を含む多孔質ジルコニア粒子材料(以下、単に、本粒子材料ともいう。)を含む成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成してジルコニアを焼結させて多孔質ジルコニア焼結体を得る工程と、を備えることができる。この製造方法によれば、多孔質ジルコニア粒子材料を焼結体原料として用いることで、多孔質性及び焼結性に優れる焼結体を得ることができる。また、焼結時の熱収縮を容易に調整することができる。
【0016】
(成形工程)
本焼結体は、本粒子材料を用いる以外は、通常の方法で成形体を得ることができる。成形工程において用いるバインダは公知の樹脂バインダなどを用いることができる。成形には、セラミックス成形体を得るのにあたって公知の成形方法を用いることができるが、例えば、一定以上の強度を備えた自立型成形体をえるには、加圧成形することが好ましい。加圧成形には、プレス成形、押出成形、射出成型、冷間等方圧加圧(CIP)等など、公知の成形方法を単独で又は組合せて用いることができる。なお、テープキャスト、ドクターブレードなどの方法も挙げられる。
【0017】
以下、図1に従い、本製造方法の成形工程において用いる多孔質ジルコニア粒子材料(以下、単に本粒子材料ともいう。)の製造方法及び得られるジルコニア粒子材料についてまず説明する。
【0018】
(本粒子材料の製造方法)
本粒子材料は、図1に例示するように、不溶物として水酸化ジルコニウムを含む第1の原料液に対して、カルボン酸を加えて、ジルコニウム含有コロイドである第2の原料液を調製する原料液調製工程と、前記第2の原料液の液滴を加熱して前記水酸化ジルコニアの少なくとも一部を熱分解して粒子化する粒子化工程と、により、製造することができる。また、図1に例示するように、本粒子材料は、さらに、前記粒子を加熱する焼成工程を備えることができる。
【0019】
(原料液調製工程)
原料液調製工程は、第1の原料液から第2の原料液を調製する工程である。第2の原料液を、噴霧熱分解法に供することができる。
【0020】
(第1の原料液)
第1の原料液は、不溶物としてジルコニウム化合物を含む液体とすることができる。かかる第1の原料液は、種々の方法によって準備することができる。ジルコニウム化合物は、特に限定するものではないが、例えば、水酸化ジルコニウムとすることができる。
【0021】
第1の原料液は、粉末状等の水酸化ジルコニウムを水に投入して分散させた分散液とすることができる。概して、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)4)は、水に不溶である。
【0022】
また、第1の原料液は、ジルコニウム塩を溶解した液体のpHを調整して水酸化ジルコニウムを析出させて調製してもよい。この態様の第1の原料液においては、水酸化ジルコニウムを、ゲル状の沈殿物として含むことになる。さらにまた、第1の原料液は、別途準備した水酸化ジルコニウムゲルを水等に投入して調製してもよいし、水等に投入するとゲル化するように予め調製された水酸化ジルコニウムゲル粉末(商業的に入手可能である。)を水に投入して調製してもよい。
【0023】
第1の原料液は、操作性やその後の第2の原料液の調製を考慮すると、ジルコニウム塩から生成させたゲル状の水酸化ジルコニウムを含むことが好ましい。こうした水酸化ジルコニウムを含むことで、カルボン酸の添加により、噴霧熱分解法による多孔質粒子化に適したジルコニウム含有コロイドを形成することができて、消失剤としてのカルボン酸含有量を多孔質化に好適に多様な形態で分散が可能となる。また、比較的大きなコロイド粒子を形成可能であるため、多孔質性及び/又は比表面積の制御が容易になる。
【0024】
第1の原料液において、水酸化ジルコニウムを保持又は分散する液体は、例えば、水又は水と相溶する有機溶媒との混液である。有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどの炭素数1~4程度の低級アルコール、アセトニトリル、DMSO等が挙げられる。なお、かかる混液は、水を主体とすることが好ましく、すなわち、水を体積%で50%超含み、例えば、60体積%以上、また例えば、70体積%以上、また例えば、80体積%以上、さらに例えば、90体積%以上、さらにまた例えば、95体積%以上とすることができる。
【0025】
第1の原料液に含まれる水酸化ジルコニウム(Zr(OH))の濃度は特に限定しないが、0.05M以上5M以下とすることができ、また例えば、0.05M以上2M以下とすることができる。さらに例えば、0.1M以上1.5M以下とすることができる。
【0026】
第1の原料液をジルコニウム塩から調製するとき、ジルコニウム塩としては、特に限定しないで、水溶性のジルコニウム塩を用いることができる。例えば、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム等のほか、ジルコニウムセカンダリーブチレート等、さらにはジルコニウムイソプロピレート等も挙げられる。こうした水溶性のジルコニウム塩は、水和物であってもよい。ジルコニウム塩の濃度は、既に説明した水酸化ジルコニウムのモル濃度が得られる濃度とすることができる。
【0027】
第1の原料液を、ジルコニウム塩から調製するとき、pHは、アンモニアなどのアルカリを用いて、ジルコニウム塩溶液のpHを4以上11以下程度に調整することができる。こうすることで、水酸化ジルコニウムのゲル状沈殿を析出させることができる。アンモニアなどのアルカリの添加量は、特に限定しない。例えば、ジルコニウム塩(ジルコニウム)に対してアンモニアを添加するとき、ジルコニウム1モルに対してアンモニアは2モル以上8モル以下程度とすることができる。また、例えば、同3モル以上6モル以下程度とすることもできる。
【0028】
第1の原料液の調製時において、後述するカルボン酸を予め含んでいてもよい。第1の原料液においてカルボン酸を含有していることで、後段で調製される第2の原料液において水酸化ジルコニウムコロイドを生成しやすい水酸化ジルコニウムのゲル状沈殿を第1の原料液に含むことができる。なお、こうした観点から、カルボン酸は、水酸化ジルコニウムゲルの生成に先だって第1の原料液に含まれている必要がある。第1の原料液におけるカルボン酸含有量は特に限定するものではないが、例えば、水酸化ジルコニウム0.4mol/lに対して0.08~0.8mol%含有することができる。この範囲であると粒子の分散性が良好であるからである。
【0029】
(第2の原料液)
第2の原料液は、第1の原料液に対して、カルボン酸を加えて、不溶物である水酸化ジルコニウムを、コロイド粒子として分散させたコロイド溶液として調製することができる。第2の原料液では、ゲル状の沈殿として生成した水酸化ジルコニウムに、カルボン酸が吸着して、その結果、粒子間に反発力を生じさせて、コロイド粒子として分散させることができるようになるほか、カルボン酸が水酸化物イオンを一部置換したジルコニウム含有化合物も含む多様な分散質(コロイド粒子)を含むことになる。
【0030】
また、カルボン酸は、加熱により消失して粒子に孔部を形成することができる。したがって、不溶物として生成させた水酸化ジルコニウム粒子に対してカルボン酸を用いてジルコニウム含有コロイドを調製することは、比較的な大きな水酸化ジルコニウムコロイド粒子を生成させることができることと、ジルコニウムイオンと消失剤との多様な形態で分散させうることから、多孔質ジルコニア粒子材料製造のための噴霧熱分解に好適な原料液を調製することができる。
【0031】
第2の原料液中には、こうした水酸化ジルコニウム含有コロイド粒子が多数形成される。このため、第2の原料液から形成する液滴が高濃度にかつ多様な形態でカルボン酸を含有することができることとなり、得られるジルコニア粒子の多孔質性や比表面積増大に寄与することができる。
【0032】
カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などのモノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸などのジカルボン酸、クエン酸、アコニット酸などのトリカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などのα-ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。あるいは、EDTA又はその塩であってもよい。好ましくは、α-ヒドロキシカルボン酸を用いることができる。より好ましくは、2価のα-ヒドロキシジカルボン酸又は、クエン酸などの3価のα-ヒドロキシトリカルボン酸が挙げられる。また、酢酸、クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸からなる群から選択される1種又は2種以上であってもよい。
【0033】
水酸化ジルコニウムコロイドの形成は、第1の原料液に対してカルボン酸を添加して、ゲル状の沈殿が消失していって液体が徐々に透明になることで確認できる。特に限定するものではないが、ゲル状沈殿がおおよそなくなり、液体がほとんど透明になるまでカルボン酸を添加することが好ましい。
【0034】
カルボン酸の量は、多孔質性及び比表面積にも影響する。本製造方法によれば、水酸化ジルコニウムをカルボン酸によりコロイドとするため、多量のカルボン酸とともに水酸化ジルコニウムを第2の原料液に分散させることができる。したがって、多孔質性や比表面積の設計自由度が向上している。
【0035】
カルボン酸の添加量は特に限定するものではなく、用いるカルボン酸の種類や意図する多孔質性及び/又は比表面積にもよるが、概して、第1の原料液中のジルコニウム(ジルコニウム塩)に対してモル比で、1以上4以下程度とすることができる。また、例えば、同1以上3以下程度とすることもできる。また、カルボン酸の濃度としては、例えば、0.1M以上1M以下程度、また例えば、0.1M以上0.8M以下程度とすることができる。
【0036】
こうして調製した第2の原料液は、上記したように、各種態様のコロイド粒子を含むジルコニウム含有コロイドとなっている。このため、第2の原料液は、ジルコニウムもカルボン酸も第2の原料液内において良好に分散して含まれている。
【0037】
ジルコニウム含有コロイドは、比較的大きな粒子径のコロイド粒子(分散質)を有するものと考えられる。また、このコロイドには、水酸化ジルコニウム(Zr(OH))に対してカルボン酸が吸着したコロイド粒子のほか、例えば、Zr(OH)(R(COOH)2/4、Zr(OH)(R(COOH)3/4、Zr(R(COOH)4/4など、Zr(OH)(RCOOH)~Zr(OH)(RCOOH)~Zr(RCOOH)など、カルボン酸の種類によっても多様な態様のジルコニウム含有化合物としての分散質を含んでいるものと考えられる。
【0038】
こうした態様のジルコニウム含有コロイドである第2の原料液を液滴として蒸発~熱分解することで、液滴表面や内部での焼結の進行が抑制されて液滴表面及び液滴内部においても空隙を形成されやすくなるものと考えられる。
【0039】
本粒子材料の製造においては、いわゆる噴霧熱分解法と称される粉末合成方法を利用する。すなわち、得ようとする粉末の原料を含む溶液又は分散液を、適切な手段で液滴とし、この液滴を加熱することで、液体を蒸発させて、少なくとも部分的に原料を熱分解するとともに粒子化する方法である。
【0040】
(粒子化工程)
粒子化工程は、第2の原料液の液滴を、加熱して粒子化することができる。粒子化工程は、第2の原料液を適当な液滴形成手段により液滴とし、当該液滴を加熱して液体を蒸発させるとともに第2の原料中の原料を熱分解して、ジルコニアを含む粒子を生成することができる。粒子化工程は、いわゆる噴霧熱分解法に準じて実施することができる。
【0041】
第2の原料液から得られる液滴は、比較的大きく、かつ各種態様のコロイド粒子を含むジルコニウム含有コロイドである。すなわち、第2の原料液のジルコニウム含有コロイドは、水溶性であるジルコニウム塩に対してカルボン酸を供給して得られるジルコニウム-カルボン酸キレートよりも大きな粒子となっている。このため、粒子化工程における温度、ガス流量、霧化などの各種条件や、その後の焼成工程における温度条件によって、所望の比表面積や相対密度の制御が可能となっている。
【0042】
粒子化工程で用いる液滴化手段は、特に限定しないで、公知の噴霧熱分解法に適用されている手段を用いることができる。したがって、特に限定しないで、スプレーノズル、超音波霧化手段、静電霧化手段等を適宜選択して用いることができる。
【0043】
また、粒子化工程では、各種熱源を利用した加熱炉を用いることができる。加熱炉についても特に限定しないで公知の噴霧熱分解法に適用される赤外線加熱炉、マイクロ波加熱炉、抵抗加熱炉などの各種の加熱炉を適宜用いることができる。
【0044】
粒子化工程における、第2の原料液における原料濃度のほか、温度、ガスの種類及びガス流量等については、粒径制御、組成制御、粒子構造制御及び生産性の観点から適宜設定することができる。例えば、温度は、一定温度であってもよいが、加熱炉の導入部から排出部までの間を、徐々に昇温する形態を採ることができる。典型的には、液滴の乾燥から熱分解を意図した温度設定とすることができる。液滴の乾燥のためには、おおよそ、200℃~600℃程度の温度を設定することができる。また、例えば、熱分解のためには、600℃~1600℃程度の温度を設定することができる。
【0045】
一例としては、加熱炉全体で、200℃~1000℃、また例えば、200℃~800℃の範囲で加熱するような加熱形態とし、これらの温度範囲を、2以上の、より好ましくは3以上の、さらに好ましくは4以上の異なる温度(例えば、200℃、400℃、600℃及び800℃など)に制御した熱源を配置して加熱することが好ましい。
【0046】
また、ガスについては、ジルコニア生成の観点から、酸素を含んだ酸化性ガス、典型的には空気を用いることができる。その流量は、公知の噴霧熱分解法に準じて設定することができるが、例えば、2L/分~10L/分、また、例えば、3L/分~7L/分の範囲で適宜設定することができる。
【0047】
粒子化工程における温度条件やガス流通条件によって、得られる粒子の特性を適宜制御することができる。すなわち、粒子におけるジルコニウム塩の熱分解程度(換言すれば、ジルコニアの生成程度)、ジルコニアの結晶性(単斜晶、正方晶、立方晶)、ジルコニアの焼結程度や熱収縮程度、カルボン酸の消失程度(換言すれば、粒子の多孔質の程度)を制御することができる。これらの粒子特定は、ジルコニア粒子材料を焼結体材料として用いた場合の焼結体の特性に寄与することができる。
【0048】
例えば、粒子化工程によって得られた粒子は、少なくとも一部にジルコニア粒子を含むことができる。また、少なくとも一部は、カルボン酸が消失したことによる多孔質あるいは中空状の粒子となっている。また、ジルコニアは、非晶質であってもよいし結晶質であってもよい。また、粒子は、熱分解していないジルコニウム塩を含む場合もあり、結晶化していないジルコニアや、消失していないカルボン酸を含有させることもできる。
【0049】
粒子化工程で得られた粒子は、公知の捕捉手段で適宜捕捉される。こうした捕捉手段も、噴霧熱分解法において一般的に用いられる捕捉手段を適宜採用することができる。
【0050】
(焼成工程)
粒子化工程で得られた粒子について、ジルコニアの結晶性や結晶型、多孔質性や比表面積などの粒子特性、さらには、それ自体の収縮率等を調整するには、追加の焼成工程を行うことができる。このような粒子特性の調整は、焼結体の特定に寄与することができる。
【0051】
焼成工程は、例えば、粒子化工程で得られた粒子を加熱してジルコニアの結晶化を促進する結晶化工程として実施してもよいし、カルボン酸を完全に消失させて多孔質性を向上させる及び/又は比表面積を増大させる工程として実施してもよい。さらには、カルボン酸をある程度残留させたり、ジルコニアの結晶性や焼結程度を抑制して、焼結体取得時における収縮率を確保しておくなどの調整が可能となる。
【0052】
例えば、結晶化工程を実施する場合には、得ようとするジルコニアの結晶形態に合わせて焼成温度を設定することができる。例えば、正方晶ジルコニアを主要な結晶形とする場合には、400℃以上1000℃未満程度することができる。また、立方晶ジルコニアを主要な結晶形とする場合には、400℃以上1000℃以下程度、より好適には、600℃以上900℃以下程度とすることができる。また、焼成時間も適宜設定できるが、例えば、1時間から3、4時間以下程度、典型的には2、3時間以内とすることができる。
【0053】
多孔質性向上や比表面積の増大のためには、例えば、400℃以上800℃以下程度で必要な時間行えばよい。
【0054】
こうした本粒子材料の製造方法によれば、各種態様でジルコニウムを含有するジルコニウム含有コロイドである第2の原料液を調製することができる。第2の原料液から得られる液滴から多孔質性及び/又は比表面積に優れた粒子を得ることができる。したがって、後述する本明細書に開示される多孔質ジルコニア粒子材料のような多孔質性及び/又は比表面積、すなわち、所望の多孔質性及び/又は比表面積の多孔質ジルコニア粒子材料を製造することができる。
【0055】
なお、本製造方法においては、粒子化工程後のいずれかの段階で、得られた粒子の凝集状態を解除するための粒子の解砕工程を実施してもよい。こうした解砕工程は、通常の粉砕のほか、液相中での超音波破砕であってもよい。
【0056】
(多孔質ジルコニア粒子材料)
本粒子材料は、例えば、20m2/g以上90m2/g以下の比表面積を有し多孔質性を有することができる。ジルコニア粒子材料の製造方法によれば、水酸化ジルコニウム濃度やカルボン酸濃度を制御して多孔質性や比表面積を調整できるからである。かかる粒子材料は、従来のジルコニアの用途に好適である。特に、固体電解質や酸素センサなど、比表面積、多孔質性が求められる材料に有用である。
【0057】
また、本粒子材料は、噴霧熱分解法によって得られるため、球状である。本粒子材料は、ジルコニアを有している。ジルコニアは、X線回折スペクトルにより確認することができる。
【0058】
また、本粒子材料は、タップかさ密度が、0.8g/cm3以上2.5g/cm3以下であることが好ましい。より好ましくは、0.8g/cm3以上2.2g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.9g/cm3以上2.2g/cm3以下であり、なお好ましくは0.9g/cm3以上2.0g/cm3以下である。本明細書において、タップかさ密度は、JIS R1628 ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法により測定することができる。
【0059】
本粒子材料の比表面積は、40m/g以上であってもよく、50m/g以上とすることができ、また、例えば、60m/g以上とすることもでき、また例えば、80m/g以上とすることができる。非表面積が40m/g以上、または50m/g以上、または60m/g以上、または80m/g以上であると、触媒担体や固体酸化物形燃料電池等に用いるのに十分な表面積を有しているといえる。なお、比表面積の測定は、ガスとして窒素、装置として吸着等温線測定装置(ベルソープミニ、日本ベル製)を用い、測定条件を0.1~0.5kPaの範囲で5点測定して得ることができる。すなわち、これらの点に直線外挿し、傾きから比表面積の値を得ることができる。なお、その他の測定条件は、使用する装置のデフォルト設定で測定することができる。
【0060】
さらに、本焼結体を得るのに際して、本粒子材料の平均粒子径自体は、焼結体の特性に大きく影響するものではなく、特に限定するものではないが、平均粒子径を0.1μm以上10μm以下とすることができる。また、平均細孔径が0.5μm以上2μm以下であってもよい。平均粒子径は、光分散法によって測定することができる。また、平均細孔径は吸着等温線によって測定することができる。
【0061】
以上説明したように、本明細書によれば、ジルコニア焼結体を得るのに好適な、多孔質ジルコニア粒子材料の製造方法及び多孔質ジルコニア粒子材料が提供される。
【0062】
(焼成工程)
焼成工程は、成形工程で得た成形体を、ジルコニアが焼結する温度で焼成することにより実施することができる。例えば、1300℃以上とすることができ、また例えば、1350℃以上とすることができ、さらに例えば、1400℃以上とすることができる。概して、1300℃以上1400℃以下とすることができる。
【0063】
上記温度での加熱時間は、特に限定するものではないが、例えば、1時間以上6時間以下程度とすることができる。
【0064】
焼成工程を実施することで、最終的に意図した多孔質ジルコニア焼結体を得ることができる。すなわち、焼成工程においては、本粒子材料が多孔質であることから、焼結体における細孔径分布制御が容易になっている。すなわち、本粒子材料が用いるために、焼結体は、本粒子材料が備える細孔近傍を中心細孔径とする細孔分布を備えることができる。また、焼結体は本粒子材料の粒子自体が備える細孔と、粒子が相互に焼結した際にできる粒子間間隙に基づく孔とを備える、多孔質焼結体を得ることができる。こうした細孔径分布を備える焼結体によれば、焼結体全体における高い比表面積と高い気孔率を備えることができ、反応のための大きな比表面積や求められるとともに、ガス通過性なども同時に求められる電極や触媒に好適な焼結体を得ることができる。
【0065】
また、本粒子材料においては、ジルコニアの熱分解程度、結晶性、粒子の熱収縮程度、カルボン酸の残留程度が調整されている。このため、成形体の焼成によって生じる焼結、熱収縮を容易に制御することができる。すなわち、従来のように成形体における消失剤の消失によらなくても多孔質化できるため、焼結や熱収縮を制御するための焼成条件で焼成工程を実施することができる。
【0066】
(多孔質ジルコニア焼結体)
本明細書に開示される多孔質ジルコニア焼結体(以下、単に、本焼結体ともいう。)は、ジルコニアを主成分とする多孔質焼結体である。本焼結体は、ジルコニアを50質量%以上含み、好ましくは60質量%以上含み、より好ましくは70質量%以上含み、さらに好ましくは80質量%以上含み、なお好ましくは90質量%以上含み、一層好ましくは95質量%以上含み、より一層好ましくは97質量%以上含み、さらに一層好ましくは98質量%以上含み、なお一層好ましくは99質量%以上含んでいる。
【0067】
本焼結体は、ジルコニア以外に例えば、適当な焼結助剤などを含むことができるほか、不可避的な成分を含んでいてもよい。
【0068】
本焼結体は、その多孔質性、造孔剤の焼失によらずに確保することができる。また、その多孔質性を用いる本粒子材料の粒径分布や細孔径分布等で制御されうる。このため、本焼結体の相対密度(気孔率)及び比表面積は、製造工程における焼結の調整によって容易に調整される。
【0069】
(細孔径分布)
本焼結体は、細孔径分布に関し、0.1μm以上0.5μm以下においてピーク細孔径を有し、当該ピーク細孔径(以下、第1のピーク細孔径という。)を中心として含む0.1μmの範囲に全細孔の70%以上が含まれる細孔径分布を備えるという第1の特徴を備えることができる。かかる細孔径分布を備える多孔質ジルコニア焼結体は、良好な比表面積や気孔率を備えることができる。かかる第1の特徴は、概して、細孔径分布の全体のうち、0.05μm以上10μm未満の細孔径範囲における特徴である。
【0070】
本焼結体における第1のピーク細孔径は、例えば、0.15μm以上、また例えば、0.2μm以上、また例えば、0.3μm以上であってもよい。また、第1のピーク細孔径は、例えば、0.9μm以下、また例えば、0.8μm以下、さらに例えば、0.7μm以下、また例えば、0.6μm以下、さらに例えば、0.5μm以下、さらにまた例えば、0.4μm以下である。また、第1のピーク細孔径は、0.1μm以上0.5μm以下である。
【0071】
本焼結体の細孔径分布では、第1のピーク細孔径を中心となるように含む0.1μm内(すなわち、第1のピーク細孔径±0.05μmの範囲)に、全細孔の70%以上が含まれることが好ましい。かかる分布を有することで、本焼結体はその全体において均一な反応性を備えることができる。例えば、当該細孔径範囲に、全細孔の80%以上が含まれていてもよいし、また例えば、85%以上が含まれていてもよいし、さらに例えば、90%以上であってもよいし、さらにまた例えば、95%以上であってもよい。一方、後述するように、当該範囲において全細孔の99%未満が含まれることが好ましい。99%以上の細孔が、当該範囲に含まれると、焼結体全体の通気性等が制限される場合があるからである。例えば、上限は、95%以下であってもよいし、また例えば、90%以下であってもよいし、さらに例えば、85%以下であってもよいし、さらにまた例えば、80%以下であってもよいし、また例えば、75%以下であってもよい。
【0072】
本焼結体は、その細孔径分布に関して、10μm以上1000μm以下に範囲に別の細孔群を備えるという第2の特徴を有することができる。このような細孔群を備えることで一層良好な気孔率を備えることができる。例えば、本焼結体は、10μm以上1000μm以下において、第1のピーク細孔径とは別に、もう一つの細孔径のピーク、すなわち、第2のピーク細孔径を備えることができる。例えば、本焼結体は、かかる第2のピーク細孔径を、概して50μm以上1000μm以下、また例えば、50μm以上800μm以下の範囲において備えることができる。
【0073】
本焼結体は、10μm以上1000μm以下の細孔を、全細孔の1%以上30%未満備えていることができる。1%未満であると、第2のピーク細孔径を備えていても得られる効果が少なく、30%以上であると、第1のピーク細孔径を含む分布による効果を低減する傾向が生じるからである。例えば、下限は5%以上であってもよいし、また例えば、10%以上であってもよいし、さらに例えば、15%以上であってもよい。例えば、上限は25%以下であってもよいし、また例えば、20%以下であってもよいし、さらに例えば、15%以下であってもよい。
【0074】
本焼結体の細孔径分布の第1の特徴は、本ジルコニア粒子を原料粒子として用いることにより得ることができる。本ジルコニア粒子は、それ自体、微小な多孔質粒子であるため、本焼結体の多孔質性に寄与することができる。
【0075】
また、本焼結体の細孔径分布の第2の特徴も、本ジルコニア粒子を原料粒子として用いることにより得ることができる。本ジルコニア粒子は、略真球状であるとともに高度に制御された粒径分布を有するために、本ジルコニア粒子を焼結する際、本ジルコニア粒子の間隙が、一定の分布の細孔を形成できるからである。
【0076】
本焼結体の細孔径分布は、例えば、水銀ポロシメーターによって測定することができる。得られた細孔径分布に基づいて、第1のピーク細孔径、第1のピーク細孔径を中心とする0.1μm範囲内における細孔含有率、及び第2のピーク細孔径を取得することができる。なお、水銀ポロシメーターによる測定においては、例えば、マイクロメリティックス社製の水銀ポロシメーターを用いて0.03気圧から4000気圧(0.5~60000psi)程度の圧力をかけて測定することができる。
【0077】
(相対密度)
本焼結体の相対密度は、例えば、50%以上であることが好ましい。また例えば、55%以上、さらに例えば、60%以上、さらにまた例えば、65%以上、また例えば、70%以上であってもよい。また、上限は、例えば、80%以下でもよく、また例えば、75%以下でもよく、さらに例えば、70%以下でもよい。本ジルコニア粒子材料を用い、焼結温度を適宜調節することで意図した相対密度の本焼結体を得ることができる。なお、相対密度は、アルキメデス法により測定することができる。
【0078】
(比表面積)
本焼結体の比表面積は、例えば、0.8m2/g以上であってもよい。また例えば、0.9m2/g以上、さらに例えば、1.0m2/g以上、さらにまた例えば、1.1m2/g以上、また例えば、1.2m2/g以上、さらに例えば、1.3m2/g以上である。上限は特に限定するものではないが、例えば、2.0m2/g以下である。比表面積が大きいほど、反応性に優れる材料として用いることができる。なお、比表面積は、窒素ガス吸着法により測定することができる。
【0079】
(開気孔率)
本焼結体の全体積に対する開気孔の割合(開気孔率(%))は、例えば、15%以上とすることができる。また例えば、20%以上であり、さら例えば、25%以上であり、さらにまた例えば、30%以上である。開気孔率は、例えば、アルキメデス法により測定することができる。
【0080】
(緻密質ジルコニア層と多孔質ジルコニア層との焼結積層体)
本明細書に開示される積層体は、本焼結体からなる第1の層と緻密質ジルコニア層である第2の層との積層焼結体が提供される。ここで緻密質ジルコニアとは、相対密度が90%以上であることをいうものとする。本積層体は、第1の層を得るための第1の材料層と、第2の層を得るための第2の材料層との一括焼成による焼結体であってもよい。
【0081】
第1の層は、本粒子材料を含むことができ、本粒子材料は、既述のように、粒子化工程及び焼成工程の制御により、粒径分布、細孔径分布及び比表面積等を制御することができる。こうした特性は、焼結時の熱収縮にも関連している。本粒子材料を本積層体の第1の層の原料粒子として用いることで緻密質ジルコニア層の焼結において生じうる熱収縮に適合させることができ、結果として、良好な一体性や意図した形状を備える一括焼成による焼結体を得ることができる。
【0082】
本積層体の製造方法は、例えば、本粒子材料を含む第1の材料層と第2の材料層との積層体前駆体を公知の方法により取得し、その後、この前駆体を焼成により一体化及び焼結させることで得ることができる。焼結のための温度等については、既に説明したジルコニアの焼結のための温度を適宜採用することができる。また、本積層体は、本粒子材料の製造方法に引き続いて実施することができる。すなわち、本粒子材料の製造方法を構成する工程のうち、少なくとも原料液調製工程及び粒子化工程を少なくとも実施して、積層体前駆体を取得し、その後焼結させることもできる。
【実施例
【0083】
以下の実施例は、本明細書の開示を具現化して説明するものであるが、本明細書の開示を限定するものではない。
【実施例1】
【0084】
(噴霧熱分解法による多孔質イットリウム安定化ジルコニア粒子材料の合成)
多孔質ジルコニア粒子材料を図1に示すスキームに準じて合成した。
【0085】
(1)原料溶液の調製
(実施例試料)
原料として、硝酸酸化ジルコニウム9水和物(ZrO(NO・9HO)及び硝酸イットリウムについてイットリア8モル%含有ジルコニア(8YSZ)となるようにあわせて以下の表1に示す濃度となるように試料液を調製し、その後、表1に示す量のクエン酸のうち一部のクエン酸を添加し、さらに、アンモニア水を添加し、さらに残部のクエン酸を添加し、透明コロイド状の水酸化ジルコニウム液とした(表1)。
【0086】
【表1】
【0087】
(2)噴霧熱分解
調製した実施例試料11種類について、超音波霧化装置を備える噴霧熱分解装置を用いて、入口から順に200℃、400℃、600℃及び800℃の熱源を備えるに全長120cmの加熱炉に、キャリアガスとして空気を5L/分で供給して、噴霧熱分解による粒子合成を行った。
【0088】
噴霧熱分解装置の捕集部にて各材料(ジルコニア前駆体)を捕集後、さらに、800℃、2時間、空気下で焼成して白色粉末を得た。
【実施例2】
【0089】
本実施例では、実施例1で合成した多孔質ジルコニア粒子材料について、タップかさ密度を、JIS R1628により測定して算出した。結果を、以下の表に示す。
【0090】
【表2】
【実施例3】
【0091】
(実施例1で作製した11種類の多孔質イットリア安定化ジルコニア粒子材料を用いた多孔質イットリア安定化ジルコニア焼結体の製造)
実施例1で作製した多孔質イットリア安定化ジルコニア粒子材料を用いて、バインダとしてPVAを2質量%となるように混合して、一軸プレス(49MPa)によりディスク(直径10mm×厚み1mm)に成形した。さらに、CIP(245MPa)にて成形した。このディスクを1300℃、1350℃及び1400℃の各温度で2時間焼成して焼結体を得た。
【0092】
これらについて、相対密度を、寸法およびアルキメデス法により測定した結果を、図2に示す。
【0093】
図2に示すように、用いる多孔質イットリア安定化ジルコニア粒子材料の種類や焼結体の焼成温度によって、相対密度を55%から83%まで調節できることがわかった。
【実施例4】
【0094】
実施例3で製造した4種類の多孔質イットリア安定化ジルコニア焼結体(焼成温度は1350℃)について、水銀ポロシメータによって細孔径分布を評価した。その結果を図3に示す。図3に示すように、細孔径のピークは、いずれも0.1μmから0.5μmに存在しており、それぞれの細孔径分布において、ピークの0.1μmの範囲内に、全細孔の80%以上が存在していた。また、100μm近傍に別のピークが存在していることもわかった。
【実施例5】
【0095】
実施例3で製造した1種類の多孔質イットリア安定化ジルコニア焼結体(焼成温度は1350℃)について、アルキメデス法によって相対密度(と気孔率と)を評価し、窒素ガス吸着法により比表面積を評価した。これらの結果を図4に示す。図4に示すように、相対密度は66%であり、良好な多孔質性を示し、比表面積も1.3m2/gと焼結体としては極めて大きかった。
【実施例6】
【0096】
実施例1で製造した1種類の多孔質イットリア安定化ジルコニア粒子材料(YSZ15)であって、粒子化工程後に800℃で2時間及び500℃で6時間の各焼成工程を行った多孔質イットリア安定化ジルコニア粒子材料(YSZ15、YSZ19)を、それぞれ市販のジルコニア粉末(8YSZ、緻密質ジルコニア用)の成形体上に、実施例3と同様の操作で層状に供給してディスク状に成形し、焼成した(ただし、焼成温度は1350℃)。このディスクを比較した。結果を図5に示す。
【0097】
図5に示すように、800℃の焼成工程を行った多孔質ジルコニア粒子材料(YSZ15)を用いると、緻密質ジルコニア層側の収縮が大きいために、積層体ディスクに反り(緻密質側が収縮し、多孔質側が伸長する形態)が生じた。これに対して、500℃の焼成工程を行った多孔質ジルコニア粒子材料(YSZ19)を用いた場合には、緻密質ジルコニア層側の収縮に多孔質ジルコニア層も追従することができ、反りのないフラットなディスクを得ることができた。これは、焼成温度を低くすることによって、収縮率を制御することができたものと考えられる。このように、本粒子材料によれば、焼結体における多孔質性や収縮率も容易に制御することができるようになることがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5