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特許7029228盛り付け冷凍食品の製造方法、トレイ、及び盛り付け食品の流通方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】盛り付け冷凍食品の製造方法、トレイ、及び盛り付け食品の流通方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20220224BHJP
   A23L 3/375 20060101ALI20220224BHJP
   B65D 81/18 20060101ALN20220224BHJP
   B65D 81/20 20060101ALN20220224BHJP
   B65D 85/50 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
A23L3/36 A
A23L3/375
B65D81/18 A
B65D81/20 D
B65D85/50 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017088341
(22)【出願日】2017-04-27
(65)【公開番号】P2018183113
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】391011825
【氏名又は名称】中央化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】堅田 照久
(72)【発明者】
【氏名】川口 博幸
(72)【発明者】
【氏名】長島 光正
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-249545(JP,A)
【文献】登録実用新案第3169684(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第1826272(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/36-3/375
B65D 81/18
B65D 81/20
B65D 85/50
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.3~0.6mmの厚さ、30W/m2・K以上の熱通過率を有する、ポリオレフィン系非発泡体の熱可塑性樹脂で形成されたトレイを供給する工程と、
前記供給されたトレイに食品を盛り付ける工程と、
前記食品を盛り付けたトレイを真空包装する工程と、
前記真空包装されたトレイを、液体を媒体とするリキッド方式で冷凍する工程とを含む、
盛り付け冷凍食品の製造方法。
【請求項2】
前記トレイは、底部と、当該底部の周縁から上方に連接される側壁部と、
当該側壁部の上端から外方に延出されるフランジ部とで構成される収容部を有し、
前記底部と側壁部との境界角度がR5以下の略直角形状である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記底部及び/又は側壁部が突起のない略平坦形状である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記トレイのフランジ部は側壁部から繋がる少なくとも2つの凹部を有する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記トレイは少なくとも2つの収容部を有する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
0.3~0.6mmの厚さ、30W/m2・K以上の熱通過率を有する、ポリオレフィン系非発泡体の熱可塑性樹脂で形成される、底部と、当該底部の周縁から上方に連接される側壁部と、当該側壁部の上端から外方に延出されるフランジ部とで構成された少なくとも2つの収容部を有するトレイに食品の複数部位が盛り付けられ、液体を媒体とするリキッド方式で冷凍されて流通される、盛り付け食品の流通方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイに盛り付けられた食品をそのまま冷凍して商取引の対象とする盛り付け冷凍食品の製造方法、トレイ、及び盛り付け食品の流通方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、長距離輸送や在庫管理に鑑み、食品の冷凍保存が活用されてきた。冷凍保存される食品としては、生鮮品から調理品まで幅広く存在し、それぞれの特性に合う保存方法が採用されてきた。例えば、外国で漁獲された輸入用のマグロでは、鱗や内臓等を除去し、腹腔内を洗浄し、頭部や尾を切断した後、フィレ、ロイン、ブロック、又はサク等の形状に切断し、冷凍処理していた。
【0003】
ここで、マグロ等の赤身魚では、切断及び解凍によりドリップ(肉汁)が流出する問題があった。そこで、整形加工(上述したフィレ等への切断処理)済みの魚肉に対し、冷風乾燥して表面の水分を除去し、食塩を溶解した冷水に浸漬して表面をゲル化し、この状態で真空包装すると共に含気包装して負圧を回避し、ブライン法にて急速凍結して魚肉内部の氷の結晶を比較的小さくすることにより、ドリップ流出を軽減すると共に細胞の損傷を軽減する発想が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、冷凍処理された赤身魚の納品対象であるスーパーマーケット等の小売店によっては、魚肉の解凍、スライス加工、及び盛り付け処理を行う設備や人員が不十分であるという問題もあった。そこで、スライス加工済みの状態(刺し身)を発泡スチロール製の容器に盛り付け、内フィルムで真空包装して酸素との接触を遮断し、この状態で冷凍した後、外フィルムによりガス充填包装して酸素残量を制限することにより、小売店では一切の処理をせずに店頭販売が可能となるのみならず、刺し身の水分の昇華、脂質酸化、ミオグロビン色素のメト化、及び微生物による腐敗を防止すると共に、真空包装に伴う刺し身の変形を回避するために、盛り付けた状態で刺し身の表面を直接凍結する発想も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2009/019960号公報
【文献】特開2005-95095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1及び2では、赤身魚の品質を維持できていない恐れがある。特許文献1では、冷風乾燥により表面を脱水したり、食塩水への浸漬により表面をゲル化したりするため、魚肉本来のみずみずしさや食感を失いかねない。特許文献2では、真空包装による刺し身の変形予防として表面を凍結すると、魚肉の切り口から内部の水分が凍結して氷に変化しやすいため、その分体積が膨張して細胞が破壊されてしまう恐れがある。すなわち、赤身魚の品質の低下を回避するためには、魚肉への直接的な負荷を軽減すべきである。
【0007】
また、特許文献2では、刺し身の盛り付けについて小売店独自の要求に応じ難い。近年では、食品の調理や包装を行うバックヤードを保有する小売店が増えており、整形加工済みの魚肉を仕入れて各店舗にて魚肉の解凍等の処理を行い、店頭販売している。したがって、刺し身の飾り盛りのように最終包装されている冷凍食品では、日々変化する食品の仕入れ状況に応じて柔軟に商品の内容を変更する近年の小売店の業態には適していない恐れがある。したがって、小売店の状況に鑑み、消費者の満足度の向上に寄与する冷凍食品の提供が必要である。
【0008】
さらに、近年の飲食業界や小売業界では、鮮度の高い食品の需要が高まっている。インターネット網や物流網の発達に伴い、様々な地域の食品を手軽に発注し、かつ素早く入手することが可能になったことも、その要因の一つといえる。しかしながら、我が国の首都圏など人口の多い地域では、供給量が足りないことにより、取引価格が高騰している食品もある。例えば、赤身魚は、上述したとおり品質を損なわずに冷凍処理するのが難しいため、国産のマグロ等は生の状態で取引されることが慣習となっている。したがって、鮮度の高い食品の需要と供給の不一致を解消する保存方法が求められている。
【0009】
このような食品及び食品に関する業界における未解決の課題に対し、発明者等は創意工夫の末、従来技術とは全く異なる技術的思想に基づいた新たな冷凍食品の製造方法の開発に行き着いた。すなわち、食品の鮮度を維持するために冷凍処理を助長する包装技術を活用することが、小売店等との商取引の自由度を高めると共に、食品を取り巻く業界内での需要と供給のバランスをとるために不可欠な要素であることに、発明者等はたどり着いた。換言すれば、食品の品質を維持できる冷凍保存の実現には、従来にはない包装技術が必要不可欠なはずである。
【0010】
この点に鑑みれば、特許文献1及び2では、急速冷凍を促進させる包装技術に関する発想は開示されていない。特に、特許文献2では、食品を盛り付ける容器が、熱通過率に関する開示のない発泡スチロール製であると共に、商品販売を優先した外観重視の形状であるため、急速な冷凍保存を助長しないばかりか、商品の品質低下を招く要因にもなりかねない。また、一般的に、急速冷凍を促進させる容器には、アルミ等の金属素材が採用されており、上述した小売店など物流時に用いる熱可塑性樹脂製の包装用容器に対し、生鮮品の冷凍処理を助長する技術は提案されていない。
【0011】
さらに、発明者等は、従来から活用されている急速冷凍技術と生鮮品の冷凍保存に最適な包装技術とを組み合わせれば、例えば、需要の高い国産マグロの冷凍処理及び物流の一極集中が実現する点にも着目している。換言すれば、食品の加工、包装、及び冷凍処理の体系化が可能であり、特殊な知識や経験を有する熟練の作業員でなくても、全ての工程を比較的簡単に習得できる利点を見出している。したがって、発明者等は、上述した慣習を根底から覆す着想にたどり着いたといえる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、周知の急速冷凍技術を活かして生鮮品等の食品の高品質を維持する包装技術を採用した盛り付け冷凍食品の製造方法、トレイ、及び盛り付け食品の流通方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、食品の状態(例えば、冷凍状態や解凍後の状態)を適宜選択して迅速に提供することが盛り付け冷凍食品の製造方法、トレイ、及び盛り付け食品の流通方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明による盛り付け冷凍食品の製造方法は、トレイに食品を盛り付ける工程と、上記食品を盛り付けたトレイを真空包装する工程と、上記真空包装されたトレイを冷凍する工程とを含み、上記トレイは下記条件を満たす特性の素材で構成されることを特徴としてもよい。
条件1:熱可塑性樹脂
条件2:熱通過率が30W/m・K以上
【0014】
また、上記トレイは、底部と、上記底部の周縁から上方に連接される側壁部と、上記側壁部の上端から外方に延出されるフランジ部とで構成される収容部を有し、上記底部と上記側壁部との境界角度がR10以下の略直角形状であってもよい。
【0015】
また、上記底部及び/又は上記側壁部が突起のない略平坦形状であってもよい。
【0016】
また、上記トレイのフランジ部には上記側壁部から繋がる凹部が少なくとも2つ以上有していてもよい。
【0017】
また、上記トレイが上記収容部を少なくとも2つ以上有していてもよい。
【0018】
また、本発明によるトレイは、底部と、上記底部の周縁から上方に連接される側壁部と、上記側壁部の上端から外方に延出されるフランジ部とで構成される収容部を有し、上記底部と上記側壁部との境界角度がR10以下の略直角形状であることを特徴としてもよい。
【0019】
また、本発明による盛り付け食品の流通方法は、底部と、上記底部の周縁から上方に連接される側壁部と、上記側壁部の上端から外方に延出されるフランジ部とで構成される収容部を少なくとも2つ以上有するトレイに食品の複数部位が盛り付けられ、流通されることを特徴としてもよい。
【0020】
以下に、本発明を構成する各要件の定義又は意味について説明する。
【0021】
「トレイ」とは、一般的な包装用容器としては比較的平たい(浅め)ものが望ましく、さらに、例えば、食品から出る汁や油を貯水する溝及び/又は容器全体の剛性を高めたり食品の位置ずれを予防したりする突起(リブ)が必要以上かつ必要箇所以外に設けられていないものが望ましい。
【0022】
「トレイ」の素材としては、熱可塑性樹脂ならいずれでもよく、その中でもポリオレフィン系非発泡体が好ましく、ポリプロピレン系非発泡体がより好ましく、無機フィラー入りポリプロピレン系非発泡体でもよく、ポリプロピレン系又は無機フィラー入りポリプロピレン系の単層構造でも、ポリプロピレン系表層と無機フィラー入りポリプロピレン系中間層とポリプロピレン系表層との積層構造でもよい。「トレイ」の熱通過率としては、30W/m・K以上でもよく、好ましくは40W/m・K以上、より好ましくは50W/m・K以上である。すなわち、「トレイ」の熱通過率の値が小さいほど熱を通しにくく、大きいほど熱を通しやすいと定義してもよい。換言すれば、トレイの外側と内側との温度差が縮まる速度は、熱通過率の値が小さいほど遅く、大きいほど早いと定義してもよい。
【0023】
「食品」とは、いわゆる生鮮品が該当し、例えば、鮮魚(さばかれた状態を含む)、精肉、野菜、又は果物でもよく、所定の部分から複数の部位が採取可能なものでもよい。「食品」単体の大きさは、原寸大でも、現物を所定のサイズに切断したものでもよい。「食品」の状態としては、完全に冷凍された状態、又は上記状態から解凍された状態(チルド状態)が含まれてよい。「鮮魚」としては、例えば、赤身魚(マグロ、サバ、ブリ、カンパチ、カツオ等)のみならず、白身魚(タイ、スズキ、ヒラメ、サケ等)でもよく、スライスして刺し身にする前の状態(いわゆる「サク」)でも刺し身の状態でもよい。
【0024】
「トレイに食品を盛り付ける」とは、物流のために上記トレイに上記食品を収容することを意味してもよく、店頭販売のために上記トレイに上記食品を飾り盛ることは含まなくてもよい。
【0025】
「食品を盛り付けたトレイを真空包装する」とは、食品が盛られたトレイを覆う所定のフィルム内の空気が脱気された状態にすることを意味してもよく、フィルム内の食品の外観や細胞が損傷せず所望の形状を維持でき、かつトレイと食品との隙間に空気が滞留していない真空包装圧力の状態が望ましい。真空包装圧力は、完全真空が100%に対し80~99%でもよく、85~95%が好ましい。
【0026】
「真空包装されたトレイを冷凍する」とは、真空包装されたトレイのまま所定の冷凍機に所定の時間投入された食品を凍らせること意味してもよく、冷凍機の種類としては、短時間でトレイ越しからでも食品全体を均等に凍らせるものが望ましく、食品の最大氷結晶生成帯(-1℃~-5℃)を素早く通過して氷結晶の大きさ(直径)を30μm以下に制御可能なものがより望ましく、例えば、装置内に蓄えた-10℃~-50℃のアルコール等の液体を媒体とするリキッド方式が該当し、前述した条件を満たすものであれば、冷凍機内の温度を下げるエアーブラスト方式、低温の冷凍板に接触させるコンタクト方式、又は所定温度の液体窒素や液化炭酸ガスを吹き付ける液化ガス方式でもよい。
【0027】
「収容部」の形状及びサイズは、大きめの食品単体を位置ずれさせない程度に収容可能なものでも、小さめな食品単体を複数個並べて又は重ねて収容可能なものでもよい。「収容部」の数は、トレイに対して単数でも複数でもよく、複数の場合は所定の間隔毎に一体的に形成され、単体に分割容易に形成されていてもよい。
【0028】
底部と側壁部との「境界角度がR10以下の略直角形状」とは、底部と側壁部とで形成される角部分が半径10mm以下で面取されており、かつ底部に対して側壁部が略90度で立設している形状であることを意味してもよい。面取半径は、10mm以下でよく、7mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0029】
フランジ部に形成される「側壁部から繋がる凹部」とは、収容部が平面視で略長方形状の場合、収容部を構成する長手方向のフランジ部に対して略直交する方向及び/又は短手方向のフランジ部に対して略直交する方向から側壁部に繋がっていてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明による盛り付け冷凍食品の製造方法では、素材が熱可塑性樹脂かつ熱通過率が30W/m・K以上のトレイに食品を盛り付け、真空包装し、冷凍することにより、鮮度の高い食品に直接負荷をかけずに所望の状態へ素早く冷凍保存できるため、従来は生の状態でしか取引されていなかった食品を冷凍の状態で取引できる。すなわち、新鮮な食品の鮮度を維持したまま長期保存可能な冷凍状態で物流することができるため、冷凍食品の加工及び出荷の一極集中化、遠隔地へ配送、及び配送頻度の削減効果が期待できる。
【0031】
また、トレイが有する食品の収容部のうち、底部と側壁部との境界角度がR10以下の略直角形状であることにより、加工した食品の表面が底部及び側壁部の内側面に接触しやすい上、食品の角部分が底部と側壁部との境界に入り込みやすいため、食品の表面と収容部の内側面との間に空間を生じ難くすることができる。すなわち、食品が収容部の内側に接触していれば、トレイ越しからでも低温が食品に伝達しやすくなるため、急速冷凍を助長し食品を素早くかつ均等に凍らせる効果が期待できる。
【0032】
また、底部及び/又は側壁部が突起のない略平坦形状であることにより、収容部に接触している食品の表面が疵付かないばかりでなく、変形し難くすることができる。すなわち、本発明に不必要な突起がないことで、真空包装によりトレイ内の食品の表面を収容部の内面に略均等に密着させることができるため、食品の部分的な冷凍むらを回避し、全体的に良好な保存状態を形成する効果が期待できる。
【0033】
また、トレイのフランジ部に側壁部から繋がる凹部が少なくとも2つ以上設けられることにより、真空包装時に収容部内の空気が通過する経路を意図的に形成することができる。すなわち、トレイの向きと収容部の形状とフィルムの吸気孔との相関に影響を受けず、収容部内の隅々の空気が凹部を介して吸引されるため、食品の表面及びフィルムの内面と収容部の内面との密着度合いを高める効果が期待できる。
【0034】
また、トレイが収容部を少なくとも2つ以上有することにより、1種類の食品から採取できる2種類以上の部位を一括して包装することができる。すなわち、マグロのように1種類の食品から3種類の部位(赤身・大トロ・中トロ)が採取できる商品でも、3種類の部位を所定の数量まとめて1つのトレイに包装して配送することができるため、各部位を個別に包装したり発注したり開封したりする手間を解消する効果が期待できる。
【0035】
また、本発明によるトレイは、底部と、側壁部と、とフランジ部とで構成される収容部を有し、底部と側壁部との境界角度がR10以下の略直角形状であることにより、加工した食品の表面と収容部の内側面が接触しやすく隙間が生じ難いため、包装したまま生の食品を冷凍しやすいトレイを提供することができる。すなわち、食品が収容部の内側に接触していれば、トレイ越しから低温が食品に伝達しやすくなるため、食品を素早くかつ均等に冷凍する効果が期待できる。
【0036】
また、本発明による盛り付け冷凍食品の流通方法は、収容部を少なくとも2つ以上有するトレイに食品の複数部位が盛り付けられ、流通されるため、1種類の食品から採取できる2種類以上の部位を一括して包装することができる。すなわち、マグロのように1種類の食品から3種類の部位(赤身・大トロ・中トロ)が採取できる商品でも、3種類の部位を所定の数量まとめて1つのトレイに包装して配送することができるため、各部位を個別に包装したり発注したり開封したりする手間を解消する効果が期待できる。さらに、流通時の食品は冷凍状態でも解凍後の状態(例えば、チルド状態)でもよく、食品の状態を包装したまま容易に変更することができるため、流通先の要望に迅速に対応できる効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】盛り付け冷凍食品の製造方法の一例を示すフロー図である。
図2】上記製造方法に用いるトレイの一例を示す斜視図である。
図3】上記トレイの平面図である。
図4】上記トレイの底面図である。
図5】上記トレイの正面図である。
図6】上記トレイの右側面図である。
図7】上記製造方法における食品の盛り付け工程の一例を示すフロー図である。
図8】上記製造方法における盛り付け済み食品の真空包装工程の一例を示すフロー図である。
図9】上記製造方法における真空包装済み食品の冷凍工程の一例を示すフロー図である。
図10】上記製造方法に用いる別のトレイの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図1及び図2を参照しつつ、本発明の一実施形態による盛り付け冷凍食品の製造方法(以下、「本盛り付け冷凍食品の製造方法」ともいう。)の概要を説明する。
【0039】
図示するように、本盛り付け冷凍食品の製造方法は、トレイTに食品(例えば、鮮魚)を盛り付ける工程S10と、この食品を盛り付けたトレイを真空包装する工程S20と、この真空包装されたトレイを冷凍する工程S30とを含み、このトレイは下記条件を満たす特性の素材で構成されることを特徴としてもよい。
条件1:熱可塑性樹脂
条件2:熱通過率が30W/m・K以上
【0040】
また、トレイTは、底部11と、この底部の周縁から上方に連接される側壁部12と、この側壁部の上端から外方に延出されるフランジ部13とで構成される収容部1を有し、この底部とこの側壁部との境界角度DがR10以下の略直角形状であってもよい。
【0041】
また、底部11及び/又は側壁部12が突起のない略平坦形状であってもよい。
【0042】
また、トレイTのフランジ部13には側壁部12から繋がる凹部13aが少なくとも2つ以上有していてもよい。
【0043】
また、トレイTが収容部1を少なくとも2つ以上有していてもよい。
【0044】
次に、図3図6を参照しつつ、本発明の一実施形態におけるトレイ(以下、「本トレイ」ともいう。)の詳細を説明する。これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番しているものもある。また、図面上では確認できず見えない部位については、その部位の該当箇所や引き出し線を破線で示しているものもある。また、背面図が正面図と、左側面図が右側面図と、それぞれ同一又は対称に表れる場合は、背面図及び左側面図を省略するものとする。
なお、本トレイの向きは、作業者が本トレイと向き合う通常の向きを基準としてもよく、この通常の向きを本トレイの正面としてもよく、この正面に位置する作業者にとって近い方を手前側、遠い方を奥側、左手方向を左側、右手方向を右側、上方向を上側、下方向を下側と表現してもよい。
【0045】
トレイTは、素材がポリオレフィン系非発泡体、熱通過率が30W/m・K以上であってもよく、平面視で長手辺と短手辺とを有する略長方形状で、この短手辺と略平行に(この長手辺と略直交して)、かつ等間隔に収容部1が6つ設けられていてもよい。
なお、トレイTの長手辺及び短手辺の寸法、並びに寸法比に限定はない。トレイTの通常の向きでの形状は、平面視で長手辺側又は短手辺側が作業員の正面となる向きでの形状でもよい。収容部1の数は、単数でも複数(2つ以上)でもよく、限定はない。収容部1の向きは、短手辺又は長手辺と略平行に(長手辺又は短手辺と略直交して)設けられていてもよい。トレイTの厚みは、0.1~1mmでもよく、0.2~0.8mmが好ましく、0.3~0.6mmがより好ましい。
【0046】
収容部1は、略長方形状かつ略平坦状の底部11と、この底面部の周縁から略直角に立設される略長方形状かつ略平坦状の側面部(符番しない)の各々で構成される側壁部12と、この側壁部の上端縁から略水平外方に延出される略平坦状のフランジ部13とで構成されてもよい。底部11と側壁部12とが連接している境界部分の面取半径は、3mm以下でもよい。底部11及び側壁部12には、収納される食品に対して部分的に圧力を加える突起(例えば、剛性を高めるリブ、食品からのドリップを貯水する凹凸、食品の位置ずれを防ぐエンボス等)はなくてもよい。この構成によれば、底部11及び側壁部12に対して、収納される食品が面する(又は密着する)と共に、この底部及び側壁部との境界部分に食品が入り込みやすいため、真空包装にてこの収納部と食品とが密着しやすいのみならず、この底部及びこの側壁部の外側に対して真空包装のフィルムが密着しやすいため、冷凍時の低温がこの底部及びこの側壁部を介して食品全体にむら無く伝わりやすくなる効果が期待できる。
なお、底部11は、成形上僅かに膨出していてもよい。側壁部12は、成形上1~10°又は20~40°外側に傾斜していてもよい。側壁部12とフランジ部13とが連接している境界部分には段差がなく、この境界部分の面取半径は、2.5mm以下でもよい。底部11の長手辺及び短手辺の寸法、並びに寸法比に限定はない。側壁部12の高さは、10~50mmでもよく、20~40mmが好ましく、25~35mmがより好ましく、限定はない。フランジ部13の幅の寸法に限定はない。隣接する収容部1同士の間隔の寸法に限定はない。
【0047】
隣接する収容部1の各々の狭間に位置するフランジ部13には、側壁部12の各々から繋がる凹部13aが2つずつ設けてあってもよい。凹部13aは、短手辺と平行な側壁部12に対して略直交していてもよい。同一のフランジ部13上に配され隣り合う凹部13aの各々は、平行でもよい。この構成によれば、真空包装時にトレイTの短手辺側から脱気すると、凹部13aの各々を介してそれぞれの収容部1内に滞留している空気が漏れなく(又は均等に)回収されるため、底部11及び側壁部12と食品との密着度をさらに高める効果が期待できる。
また、隣接する収容部1の各々に挟まれるフランジ部13の真ん中には、各々の収容部を分裂可能にするミシン目が設けてあってもよい。この構成によれば、収容部1の各々に盛り付けられている食品を適時分割して必要な分だけ開封できるため、トレイTの包装を全て開封する手間が省けると共に、余った食品を未開封のまま長期保存してもよい。
なお、凹部13aの端面形状は、矩形状でも円弧状でもよい。凹部13aの各々は、トレイTを長手方向に二等分する領域に対して、対称な位置に配されていてもよく、各々の凹部の間隔に限定はない。所定の収容部1の両側に配される収容部13aの各々は、この収容部を挟んで一直線上に位置しても、ずれて位置していてもよく、限定はない。凹部13aは、トレイT全体の剛性を高める部位であってもよい。
【0048】
ここで、トレイTに採用される熱可塑性樹脂素材の熱通過率の測定方法及び測定結果の一例について補足する。
【0049】
熱通過率(W/m・K)は、「JIS A 1412-2(1999) 熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法)」より算出される熱流束(単位:W/m)の測定結果を用いて算出してもよい。
評価方法としては、下記1)~3)の手順でもよい。
1)試験片としてカットした熱可塑性樹脂素材を-30℃に設定したフリーザー面(熱源側)に触れるように設置し、このフリーザーに触れている面とは逆側の面(大気側)に温度センサーを取り付ける。
2)熱源側と大気側の温度差により電圧が発生し、その電圧をパソコンソフトにて解析し熱流束(W/m)を算出する。
3)熱流束の値に温度差を考慮して、熱通過率(W/m・K)を算出する。
【0050】
そこで、ポリオレフィン系非発泡樹脂(厚み:0.67mm)とポリスチレン系発泡体樹脂(厚み:2.02mm、発泡倍率:10倍)との熱通過率を算出したところ、ポリオレフィン系非発泡樹脂の熱通過率は58.2(W/m・K)、ポリスチレン系発泡体樹脂の熱通過率は14.6(W/m・K)であった。
この結果から、ポリオレフィン系非発泡体樹脂は、ポリスチレン系発泡体樹脂と比べて、迅速に温度が伝わるため、作業効率性が高く(ランニングコストが優れており)、食品の品質低下を回避しやすいのみならず、トレイの性能が劣化し難いため、長時間冷凍による食品の品質を担保しやすい
なお、熱通過率が30W/m・K以上を満たせば、素材に限定はなく、発泡の有無も問わない。
【0051】
次に、図1及び図7図9を参照しつつ、本盛り付け冷凍食品の製造方法の詳細について説明する。
【0052】
まず、図1及び図7に示すとおり、食品の盛り付け工程S10は、トレイTの収容部1に収容可能なサイズに切断する工程(以下、「食品の切断工程S101」ともいう。)と、切断済みの食品をこのトレイの収容部の各々に収納する工程(以下、「トレイへの収納工程S102」ともいう。)とを含んでもよい。
食品の切断工程S101では、所定の作業員がトレイTの収容部1のサイズに合うよう手作業で食品(例えば、マグロのサク)を切断するか、又は所定の切断装置がこの収容部のサイズに合うよう自動で食品を切断してもよい。
トレイへの収納工程S102では、所定の作業員がトレイTの収容部1に切断済みの食品を手作業で収納するか、又は所定の搬入装置がこの収容部に切断済みの食品を自動で収納してもよい。
なお、切断前の食品がトレイTの収容部1のサイズに合う場合、食品の切断工程S101は省略してもよい。収納する食品の種類は、単数でも複数でもよく、限定はない。
【0053】
次に、図1及び図8に示すとおり、盛り付け済み食品の真空包装工程S20は、所定のフィルムで食品が盛り付けられたトレイTを包装する工程(以下、「フィルムの包装工程S201」ともいう。)と、このトレイを包装したフィルム内の空気を吸引(脱気)する工程(以下、「空気の吸引(脱気)工程S202」ともいう。)とを含んでいてもよい。
フィルムの包装工程S201では、所定の装置でトレイT全体をフィルムで覆ってもよい。このとき、フィルムがトレイTの少なくとも外側表面に密着するように引っ張られながら包装されてもよい。
空気の吸引(脱気)工程S202では、所定の装置でトレイTに対して任意の位置(例えば、短手辺側)から所定の真空包装圧力(例えば、完全真空が100%に対し、80~99%)で収容部1内に滞留している空気を吸引してもよい。このとき、盛り付け済みの食品が型崩れしない程度にフィルムを食品に密着させてもよい。
なお、フィルムの包装工程S201と空気の吸引(脱気)工程S202は、同一の装置で行っても別々の装置で行ってもいずれでもよい。真空状態としては、いわゆるスキンパックでも、食品の品質(形状等)の確保を優先してフィルム内には吸引しきれない空気が僅かに滞留していてもよい。フィルムの素材としては、例えば、ポリアミド樹脂層とシーラント樹脂層の積層体で構成されたものが好ましく、必要に応じてバリア性樹脂層が含まれていても良い。JIS K 7113に規定されるフィルムの引張伸び率としては、300%以上が好ましい。
【0054】
そして、図1及び図9に示すとおり、真空包装済み食品の冷凍工程S30では、真空包装状態の食品をトレイTのまま冷凍機に投入する工程(以下、「冷凍機への投入工程S301」ともいう。)と、食品が冷凍した後にこの冷凍機からトレイTのまま取り出す工程(以下、「冷凍機からの取り出し工程S302」ともいう。)とを含んでいてもよい。
冷凍機への投入工程S301では、所定の冷凍装置(例えば、特公平7-28710号公報に記載の冷凍装置)に貯水される超低温(例えば、-30℃~-50℃)の不凍液(例えば、アルコール)に、真空包装状態の食品をトレイTのまま所定の時間(例えば、30分)浸漬させてもよい。
冷凍機からの取り出し工程S302では、所定の時間経過後、上述した冷凍装置からトレイTを取り出してもよい。このとき、食品が所望の状態まで冷凍していなければ、冷凍装置内に再投入してもよい。
なお、上述した冷凍装置への真空包装済みの食品及びトレイの投入数は、単数でも複数でもよい。
【0055】
すべての工程を経て完成した盛り付け冷凍食品は、冷凍前の状態と比べて、部分的な型崩れ及び変色、並びに冷凍による細胞破壊も無く、良好な状態にて冷凍保存されていてもよい。収容部の各々に盛られた複数の食品は、トレイのまま容易に持ち運びできる上、複数のトレイをまとめて箱詰め等できるため、配送しやすくなってもよい。解凍時には、冷凍庫から冷蔵庫に入れ替えたり、常温水に浸したりする(水中の浸透圧を利用する)ことで、ドリップ(肉汁)も発生せず、冷凍前の状態とほぼ同等の状態に戻ってもよい。
【実施例
【0056】
ここで、実施例により、本盛り付け冷凍食品の製造方法を具体的に説明する。
【0057】
まず、本盛り付け冷凍食品の製造方法は、以下を基本条件とする。
≪トレイ≫
長手方向の長さ:480mm、短手方向の長さ:330mm、収容部の数:6つ、隣接する収容部同士の間隔:28.7mm、
≪収容部≫
長手方向の長さ:300mm、短手方向の長さ:50mm、高さ:28mm
≪食品≫
素材:マグロ、状態:生(冷凍前)、形状:サク(寸法:290mm×40mm×28mm)
≪真空包装機≫
TOSEI社製TOSPACK V-955L
≪冷凍機≫
テクニカン社製リキッドフリーザー(設定温度:-20~-50℃)
【0058】
(実施例)
次に、本盛り付け冷凍食品の製造方法は、以下を特有の条件とする。
≪トレイ≫
素材:ポリオレフィン系非発泡素材、厚み:0.45mm、熱通過:50W/m・K
≪収容部≫
底部と側壁部との境界の面取半径R:3mm、底部と側壁部とが成す角度:90度、底部及び側壁部の形状:平坦(突起及び段差なし)
≪真空包装用フィルム≫
素材:ポリアミド樹脂層とシーラント樹脂層の積層体、厚み:50μm、引張伸び率:400%
【0059】
(試験)
そして、上記実施例にて製造した盛り付け冷凍食品について、以下の試験を行い、結果が得られた。
【0060】
≪冷凍完了までの時間試験≫
冷凍機に投入後、所定の時間毎に食品の冷凍状態を視覚及び触覚にて確認した。
≪試験結果≫
トレイ内の全ての食品が、約20分後に完全に冷凍したことを確認できた。この結果は、実施例のトレイの素材、厚み、及び通過率により、冷凍機の低温がトレイの壁面を介して通過しやすいことを示している。また、実施例の収容部の底部と側壁部との境界面の面取半径R、底部と側壁部とが成す角度、並びに底部及び側壁部の形状により、食品が収容部の角部分及び内壁面に密着しやすいため、より一段と食品の冷凍を促進し、完了までの時間を短縮できたことを示している。
【0061】
≪冷凍後の外観試験≫
冷凍機から取り出した直後のフィルム及びトレイ、並びに食品の形状及び色合いを観察した。
≪試験結果≫
フィルムがトレイの外側及び食品の表面に適度に密着しており、フィルムとトレイの外側との間に空気溜まりがないのみならず、フィルムからの圧迫による食品の型崩れ及び変色(黒ずみ等)がないことを確認できた。この結果は、実施例の真空包装用フィルムの素材、厚み、伸縮率、及び引張強さにより、適度な真空圧力でフィルムとトレイ及び食品との密着度を高めることができるため、食品の所望の状態で冷凍できたことを示している。
【0062】
≪解凍直後の食品の品質試験≫
解凍された状態で、食品の形状、色合い、及びドリップの有無を確認した。
≪試験結果≫
解凍後の食品は、冷凍前と比べて、全体的又は部分的な型崩れ及び変色、並びに冷凍による過度なドリップも無いことを確認できた。この結果は、内部の氷結により細胞が破壊されずに食品が良好な状態で冷凍でき、かつ所望の状態に解凍できたことを示している。
【0063】
このように、本盛り付け冷凍食品の製造方法では、素材が熱可塑性樹脂かつ熱通過率が30W/m・K以上のトレイに食品を盛り付け、真空包装し、冷凍することにより、鮮度の高い食品に直接負荷をかけずに所望の状態へ素早く冷凍保存できるため、従来は生の状態でしか取引されていなかった食品を冷凍の状態で取引できる。すなわち、新鮮な食品の鮮度を維持したまま長期保存可能な冷凍状態で物流することができるため、冷凍食品の加工及び出荷の一極集中化、遠隔地へ配送、及び配送頻度の削減効果が期待できる。
【0064】
また、図2に示すトレイTが有する食品の収容部1のうち、底部11と側壁部12との境界角度DがR10以下の略直角形状であることにより、加工した食品の表面がこの底部及び側壁部の内側面に接触しやすい上、食品の角部分がこの底部と側壁部との境界部分に入り込みやすいため、食品の表面とこの収容部の内側面との間に空間を生じ難くすることができる。すなわち、食品が収容部1の内側に接触していれば、トレイT越しからでも低温が食品に伝達しやすくなるため、急速冷凍を助長し食品を素早くかつ均等に凍らせる効果が期待できる。
【0065】
また、底部11及び/又は側壁部12が突起のない略平坦形状であることにより、収容部1に接触している食品の表面が疵付かないばかりでなく、変形し難くすることができる。すなわち、本トレイには不必要な突起がないことで、真空包装によりトレイ内の食品の表面を収容部1の内面に略均等に密着させることができるため、食品の部分的な冷凍むらを回避し、全体的に良好な保存状態を形成する効果が期待できる。
【0066】
また、トレイTのフランジ部13に側壁部12から繋がる凹部13aが少なくとも2つ以上設けられることにより、真空包装時に収容部1内の空気が通過する経路を意図的に形成することができる。すなわち、トレイTの向きと収容部1の形状とフィルムの吸気孔との相関に影響を受けず、この収容部内の隅々の空気が凹部13aを介して吸引されるため、食品の表面及びフィルムの内面と収容部の内面との密着度合いを高める効果が期待できる。
【0067】
また、トレイTが収容部1を少なくとも2つ以上有することにより、1種類の食品から採取できる2種類以上の部位を一括して包装することができる。すなわち、マグロのように1種類の食品から3種類の部位(赤身・大トロ・中トロ)が採取できる商品でも、3種類の部位を所定の数量まとめて1つのトレイに包装して配送することができるため、各部位を個別に包装したり発注したり開封したりする手間を解消する効果が期待できる。
【0068】
なお、本トレイは、例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、熱板成形等のシート成形で、合成樹脂シートを熱成形することにより形成されてもよい。合成樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂で、単層や多層のシートを使用してもよい。樹脂としては、例えば、発泡樹脂を使用すれば、軽量であり好ましい。さらに、シートの表面または裏面を合成樹脂フィルムで覆ってもよく、表面を覆った場合は印刷を施してもよい。合成樹脂シートの厚みは特に制限はないが、0.15~1.0mmであればよく、好ましくは0.2~0.8mm、より好ましくは0.25~0.6mmである。
【0069】
また、図10に示す薄型状のトレイに食品を収容、包装、及び冷凍若しくは冷凍後に解凍して流通してもよい。
【符号の説明】
【0070】
T トレイ
1 収容部
11 底部
12 側壁部
13 フランジ部
13a 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10