(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】パーム系油脂の硬化抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23D 9/013 20060101AFI20220224BHJP
C11C 3/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
A23D9/013
C11C3/00
(21)【出願番号】P 2017099159
(22)【出願日】2017-05-18
【審査請求日】2020-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 剛大
(72)【発明者】
【氏名】山根 晋哉
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-289205(JP,A)
【文献】特開2007-097419(JP,A)
【文献】国際公開第2010/060714(WO,A1)
【文献】特開2007-124948(JP,A)
【文献】国際公開第2007/026466(WO,A1)
【文献】特開2015-145480(JP,A)
【文献】特開昭50-104206(JP,A)
【文献】特開2012-052048(JP,A)
【文献】特開2003-277787(JP,A)
【文献】特開2010-047634(JP,A)
【文献】GARBOLINO, C. et al.,The influence of emulsifiers on the crystallisation behaviour of a palm oil-based blend,Eur. J. Lipid Sci. Technol.,2005年,Vol.107, No.9,p.616-626
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C、A23D、A23L
CAplus/REGISTRY/BIOSIS/CABA/EMBASE/FSTA/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主構成脂肪酸がラウリン酸であるソルビタン脂肪酸エステル(但し、
(i)構成脂肪酸100質量%中、炭素数10~14の飽和脂肪酸、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び炭素数20~22の飽和脂肪酸の含有量がいずれも10質量%以上のもの
及び(ii)構成脂肪酸100質量%中、炭素数20以上の脂肪酸の含有量が10質量%以上のものを除く)を有効成分とするパーム系油脂の硬化抑制剤(但し、プロピレングリコールモノパルミテートを
含有するものを除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーム系油脂の硬化抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等の油脂製品は、従来製菓・製パン・調理用油脂等として広く用いられている。これら油脂製品には、求められる品質に応じて様々な油脂が配合されるが、とりわけパーム系油脂は比較的安価で手に入ることから広く使用されている。また、近年、健康に対する関心の高まりを受けて、トランス酸残基を有する油脂の使用が忌避される傾向があることから、トランス酸残基を実質的に有さないパーム系油脂の使用が好まれている。
【0003】
しかし、パーム系油脂は粗大結晶を生成し易く、パーム系油脂を配合した油脂製品の保存中に粗大結晶が生成すると、その商品価値が著しく損なわれることが従来問題となっていた。
【0004】
このような粗大結晶の生成を抑制する方法としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステルを含有する油脂の結晶成長抑制剤であって、該ソルビタン脂肪酸エステルの構成脂肪酸100%中、炭素数10~14の飽和脂肪酸、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び炭素数20~22の飽和脂肪酸の含有量がいずれも10%以上であることを特徴とする油脂の結晶成長抑制剤(特許文献1)、パーム油60~80質量部、パーム核油10~30質量部、及び液状油10~20質量部のエステル交換油であって、10℃でのSFCが25~40、20℃でのSFCが15~25、30℃でのSFCが5~15である可塑性油脂10~70質量%及びパーム油30~90質量%を配合した、融点が30~40℃である中融点油脂を用いる方法(特許文献2)、エステル化率が20%以上50%未満のソルビタン飽和脂肪酸エステルを添加することを特徴とする、パーム油そのものの粒状結晶生成抑制方法(特許文献3)等が提案されている。
【0005】
一方、パーム系油脂を配合した油脂製品は、保存中に次第に硬く変化し、製品のひび割れや伸展性の低下をもたらすといった問題もある。しかし、この問題の解決において、上記の技術は実用上必ずしも満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-052048号公報
【文献】特開2010-011799号公報
【文献】特開2007-124948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、パーム系油脂を配合した油脂組成物の経時的な硬化を抑制できる硬化抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、主構成脂肪酸がラウリン酸であるソルビタン脂肪酸エステルを使用することにより、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の(1)及び(2)からなっている。
(1)主構成脂肪酸がラウリン酸であるソルビタン脂肪酸エステルを有効成分とするパーム系油脂の硬化抑制剤。
(2)前記(1)に記載の硬化抑制剤を含有するパーム系油脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパーム系油脂の硬化抑制剤を添加して得られるパーム系油脂組成物は、保存中の経時的な硬化が抑制されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール及び/又はその縮合物と脂肪酸との直接エステル化反応により製造されるものであって、ラウリン酸を主構成脂肪酸とするものである。該ソルビタン脂肪酸エステルのエステル化率に特に制限はないが、通常25~80%である。ここで、エステル化率(%)は下記式により算出される。尚、下記式中のエステル価及び水酸基価は、「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.3.3-1996 エステル価]及び[2.3.6-1996 ヒドロキシル価]に準じて測定される。
【0012】
【0013】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルのソルビタン型含有量に特に制限はないが、通常30質量%以上である。ソルビタン型含有量とは、ソルビタン脂肪酸エステルを構成するアルコール(例えば、ソルビトール、ソルビタン、ソルバイド等)100質量%中のソルビタンの含有量(質量%)を意味する。
【0014】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの原料として用いられるソルビトール及び/又はその縮合物としては、例えば、ソルビトールとしては、D-ソルビトールを50.0~70.0質量%含有するD-ソルビトール液或いは白色粉末又は粒状のD-ソルビトールが挙げられる。また、ソルビトールの縮合物としては、ソルビトールが分子内脱水により、水1分子の脱水したソルビタン、水2分子の脱水したソルバイド等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸は、ラウリン酸又はラウリン酸とラウリン酸以外の脂肪酸とを含有する脂肪酸混合物である。
【0016】
ここで、本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルにおいて「ラウリン酸を主構成脂肪酸とする」とは、該ソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸(構成脂肪酸)の大部分はラウリン酸であるが、本発明の目的及び効果が達成される範囲で、ラウリン酸以外の脂肪酸が一種類又は二種類以上含まれてもよいとの意味である。より具体的には、該ソルビタン脂肪酸エステルの構成脂肪酸100質量%中のラウリン酸の含有量は、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
【0017】
また、本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、本発明の硬化抑制剤を添加したパーム系油脂組成物の硬化抑制及びその食感に与える影響の観点から、炭素数20以上の脂肪酸を実質的に含まないことが好ましい。「炭素数20以上の脂肪酸を実質的に含まない」とは、該ソルビタン脂肪酸エステルの構成脂肪酸100質量%中の炭素数20以上の脂肪酸の含有量が10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満であることを指す。
【0018】
ここで、本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの構成脂肪酸100質量%中のラウリン酸及びラウリン酸以外の脂肪酸の含有量は、該ソルビタン脂肪酸エステルの製造の原料である脂肪酸100質量%中の含有量と同じであるが、この含有量は、製造されたソルビタン脂肪酸エステルについて下記工程(1)~(3)を実施して測定しても良い。
(1)試料の調製
「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.4.1.2-1996 メチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)]に準じて試料を調製する。
(2)測定方法
「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.4.2.2-1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)]に準じて測定する。
(3)定量
データ処理装置により記録されたピーク面積の総和に対する各ピーク面積の百分率をもって構成脂肪酸の含有量とする。
【0019】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの製造(エステル化反応)において、ソルビトールに対する脂肪酸の仕込み量は、ソルビトール1モルに対して1.2~3.0モル程度であるのが好ましい。
【0020】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの製造方法は特に限定されないが、例えばソルビトールと脂肪酸とのエステル化反応は無触媒で行って良く、又は酸触媒あるいはアルカリ触媒を用いて行っても良いが、アルカリ触媒の存在下で行われるのが好ましい。酸触媒としては、例えば、濃硫酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。アルカリ触媒としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。アルカリ触媒の使用量は、全仕込み量(乾燥物換算)の0.01~1.0質量%、好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0021】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの製造装置及び当該装置を用いた製造条件としては特に限定されないが、例えば上記エステル化反応は、例えば攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板、不活性ガス吹き込み管、温度計及び冷却器付き水分分離器等を備えた通常の反応容器に、ソルビトール、脂肪酸、及び触媒を供給して攪拌混合し、窒素又は二酸化炭素等の任意の不活性ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で一定時間加熱して行われる。反応温度は通常、180~260℃の範囲、好ましくは200~250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は0.5~15時間、好ましくは1~4時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、10以下を目安に決められる。
【0022】
エステル化反応終了後、触媒を用いた場合は、反応混合物中に残存する触媒を中和しても良い。その際、エステル化反応の温度が200℃以上の場合は液温を180~200℃に冷却してから中和処理を行うのが好ましい。また反応温度が200℃以下の場合は、そのままの温度で中和処理を行って良い。中和後、その温度で好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1~10時間放置する。未反応のソルビトール又はソルビトール分子内縮合物が下層に分離した場合はそれを除去するのが好ましい。
【0023】
ラウリン酸を主構成脂肪酸とするソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、L-300(製品名;脂肪酸組成:ラウリン酸54.9質量%、ミリスチン酸質量18.1%、パルミチン酸11.3質量%、その他15.7質量%;エステル化率25%;ソルビタン型含有量41.5質量%;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0024】
本発明においてパーム系油脂とはパーム油及びこれを原料とし分別、硬化等の加工を施した油脂のことであり、パームオレインやスーパーパームオレイン、パームステアリン又はこれらを硬化したものを挙げることができる。
【0025】
本発明のパーム系油脂の硬化抑制剤(以下、単に「硬化抑制剤」ともいう)は、上記ソルビタン脂肪酸エステルを有効成分とするものである。本発明の硬化抑制剤は、上記ソルビタン脂肪酸エステルをそのままパーム系油脂組成物に添加して用いても良く、又は該ソルビタン脂肪酸エステルを含有する製剤を調製し、これを硬化抑制剤としてパーム系油脂組成物に添加して用いても良い。
【0026】
本発明のパーム系油脂組成物は、少なくともパーム系油脂を原料として製造される油脂組成物に本発明の硬化抑制剤を添加した食用油脂組成物である。このような食用油脂組成物の形態としては、例えば油中水型乳化物であるマーガリン、ファットスプレッド及び水分をほとんど含まないショートニング等の可塑性油脂組成物が挙げられる。ここで、マーガリンは、食用油脂含有率が80質量%以上のものをいい、ファットスプレッドは食用油脂含有率が80質量%未満のものをいう。
【0027】
本発明のパーム系油脂組成物の原料にパーム系油脂と共にパーム系油脂以外の食用油脂を用いる場合、その種類に特に制限はないが、例えばカカオ脂、ヤシ油、パーム核油、オリーブ油、キャノーラ油、米ぬか油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、大豆油、コーン油、なたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、綿実油及び落花生油等の植物油脂、乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物油脂、これらの動植物油脂を分別処理又は水素添加処理したもの、更にこれらの動植物油脂単独又は二種類以上を任意に組み合わせてエステル交換処理したもの等が挙げられる。
【0028】
本発明のパーム系油脂組成物中の硬化抑制剤の含有量は、パーム系油脂組成物の形態、パーム系油脂組成物中のパーム系油脂の含有量、目的とする硬化抑制の程度等により異なり一様ではないが、例えばパーム系油脂組成物に含有される食用油脂100質量部に対して、主構成脂肪酸がラウリン酸であるソルビタン脂肪酸エステルの含有量が通常0.05~5.0質量部、好ましくは0.1~3.0質量部、更に好ましくは0.2~1.0であるように調整することができる。
【0029】
また、本発明のパーム系油脂組成物中のパーム系油脂の含有量に特に制限はないが、例えばパーム系油脂組成物に含有される食用油脂100質量部に対して、パーム系油脂の含有量が通常30質量部以上、好ましくは60質量部以上であるように調整することができる。パーム系油脂の含有量がこのように高い値であっても、本発明の硬化抑制剤の効果が発揮されることにより、パーム系油脂組成物の保存中の硬化が抑制される。
【0030】
本発明のパーム系油脂組成物の製造方法は特に限定されず、自体公知の方法を用いることができる。以下に、マーガリン及びファットスプレッドの製造方法を例示する。例えば、油脂及び本発明の硬化抑制剤を混合し、50~80℃、好ましくは60~70℃に加熱して溶解し、所望により酸化防止剤(例えば抽出トコフェロール等)、着色料(例えばβ-カロテン等)、香料(例えばミルクフレーバー等)、乳化剤(例えばレシチン、グリセリン脂肪酸エステル等)等を添加して油相とする。一方、精製水に、所望により乳又は乳製品(例えば全粉乳、脱脂粉乳等)、食塩、砂糖類、酸味料(例えばクエン酸等)を加え、50~70℃に加熱して溶解し水相とする。次に、油相と水相を通常の攪拌・混合槽を用いて混合し、得られた混合液を送液ポンプで急冷捏和装置に送液し、油脂の結晶化と練捏を連続的に行いマーガリン又はファットスプレッドを得る。また乳化工程をとらず、油相と水相をそれぞれ定量ポンプで急冷捏和装置に送液し、以下同様に処理しマーガリン又はファットスプレッドを得ることもできる。得られたマーガリン又はファットスプレッドは、更に、25~30℃で12~72時間テンパリングされるのが好ましい。
【0031】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
[製造例1]
[ソルビタン脂肪酸エステルの製造]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコに、ソルビトール(商品名:ソルビトールS;物産フードサイエンス社製)を916.8g仕込み、次に脂肪酸混合物(商品名:ラウリン酸L-98;脂肪酸組成:ラウリン酸98質量%、ミリスチン酸2質量%;丸善薬品産業社製)1483.2gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム3.4gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで2.5時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、主構成脂肪酸がラウリン酸であるソルビタン脂肪酸エステル(試作品A;エステル化率50%;ソルビタン型含有量72.4質量%)約1920gを得た。
【0033】
[製造例2]
[ソルビタン脂肪酸エステルの製造]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコに、ソルビトール(商品名:ソルビトールS;物産フードサイエンス社製)を727.2g仕込み、次に脂肪酸混合物(商品名:ラウリン酸L-98;脂肪酸組成:ラウリン酸98質量%、ミリスチン酸2質量%;丸善薬品産業社製)1672.8gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.2gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで5.0時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、主構成脂肪酸がラウリン酸であるソルビタン脂肪酸エステル(試作品B;エステル化率75%;ソルビタン型含有量93.6質量%)約1960gを得た。
【0034】
[試験例]
[ファットスプレッドの製造及び評価]
(1)ファットスプレッドの原材料
1)精製パーム油(商品名:RPO;植田製油社製)
2)菜種白絞油(商品名:日清菜種サラダ油(S);日清オイリオグループ社製)
3)硬化抑制剤
3-1)ソルビタン脂肪酸エステル(試作品A;主構成脂肪酸:ラウリン酸)
3-2)ソルビタン脂肪酸エステル(試作品B;主構成脂肪酸:ラウリン酸)
3-3)ソルビタン脂肪酸エステル(市販品A;商品名:L-300;主構成脂肪酸:ラウリン酸;理研ビタミン社製)
3-4)ソルビタン脂肪酸エステル(市販品B;商品名:ポエムO-80V;主構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
3-5)ソルビタン脂肪酸エステル(市販品C;商品名:ポエムS-65V;主構成脂肪酸:ステアリン酸;理研ビタミン社製)
3-6)ソルビタン脂肪酸エステル(市販品D;商品名:ポエムS-320YN;主構成脂肪酸:ステアリン酸;理研ビタミン社製)
3-7)ソルビタン脂肪酸エステル(市販品E;商品名:製品名:ポエムB-150;主構成脂肪酸:ベヘニン酸;理研ビタミン社製)
4)グリセリン脂肪酸エステル(商品名:エマルジーMS;理研ビタミン社製)
5)レシチン(商品名:TOPCITHIN UB;カーギルジャパン社製)
6)イオン交換水
7)食塩(日本食塩製造社製)
【0035】
(2)ファットスプレッドの製造方法
表1に示した2倍量の原材料を用いて、下記1)~4)の工程に従いファットスプレッドを作製した。
1)イオン交換水に食塩を加えて溶解し、60℃に加温して水相とした。
2)精製パーム油及び菜種白絞油からなる配合油に硬化抑制剤、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチンを加えて溶解し、70℃に加温して油相とした。
3)2)の油相をTKホモミキサー(型式:MARK II;プライミクス社製)で3000rpmで攪拌しながら、1)の水相を徐々に加え、全て加えた後、同回転速度で2分間撹拌し、更に10000rpmで5分間撹拌し、W/O乳化させた。
4)得られた乳化液を常法により急冷捏和後、円柱型のプラスチック製容器(直径65mm、高さ40mm)に充填したものを25℃で24時間テンパリング処理をし、ファットスプレッド1~7を得た。
5)対照として、硬化抑制剤を使用せずに上記1)~4)を同様に実施し、硬化抑制剤を含有しないファットスプレッド8を得た。
【0036】
【0037】
(3)硬度の測定
プラスチック製容器に充填された10℃のファットスプレッド1~8について、10℃で8時間保存後及び10℃で1ヶ月間保存後のそれぞれの時点において、テクスチャーアナライザー(製品名:Ez Test;島津製作所社製)を用いて25℃の環境下で硬度を測定した。測定では、直径5mmの円柱プランジャーを使用し、該プランジャーをファットスプレッド表面より10mm押し込んだ際の最大応力(N)を硬度とした。1ヶ月間保存後の硬度及び硬度増加率(8時間保存後の硬度を基準として1ヶ月間保存後の硬度を百分率で表したもの)について、以下の評価基準に従いそれぞれ記号化した。結果を表2に示す。
<1ヶ月間保存後の硬度>
○:3.0N未満
△:3.0N以上、3.5N未満
×:3.5N以上
<硬度増加率>
○:150%未満
△:150%以上、170%未満
×:170%以上
【0038】
【0039】
表2の結果から、ラウリン酸を主構成脂肪酸とするソルビタン脂肪酸エステルを硬化抑制剤として添加して得られたファットスプレッド1~3は、いずれの評価項目においても「○」であった。これに対し、ラウリン酸以外の脂肪酸を主構成脂肪酸とするソルビタン脂肪酸エステルを硬化抑制剤として添加して得られたファットスプレッド4~7及び対照のファットスプレッド8では、いずれかの評価項目において「△」以下であり、本発明の実施例に比べて劣っていた。