(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/27 20060101AFI20220224BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220224BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220224BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
A61K31/27
A61K47/32
A61P25/28
A61K9/70 401
(21)【出願番号】P 2017149327
(22)【出願日】2017-08-01
【審査請求日】2020-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島 滝登
(72)【発明者】
【氏名】篠田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】大橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】石垣 賢二
(72)【発明者】
【氏名】道中 康也
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190309(JP,A)
【文献】欧州特許第02172194(EP,B1)
【文献】中国特許出願公開第105997951(CN,A)
【文献】特表2002-500178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0177606(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-33/44
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であって、
前記粘着剤層が、
リバスチグミン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物と、
カルボキシ基を有するアクリル系高分子からな
る少なくとも1種のアクリル系高分子(A)と、
官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)からな
る少なくとも1種のアクリル系高分子(B)と、
を含有しており、
前記粘着剤層の全質量に対するリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量がフリー体換算で6~18質量%であり、
前記粘着剤層の単位面積あたりにおけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量がフリー体換算で0.45~0.90mg/cm
2であり、かつ、
前記粘着剤層中における前記アクリル系高分子(A)と前記官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)との質量比(A:b2)が81:19~10:90である、
ことを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
前記カルボキシ基を有するアクリル系高分子の酸価が15~55mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
ヘアレスマウス皮膚に24時間接触させたときのリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の平均累積皮膚透過量が、フリー体換算で、200~560μg/cm
2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
前記粘着剤層の面積が5~40cm
2であることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付剤に関するものであり、より詳しくは、リバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬物を生体内に投与する製剤として経皮・経粘膜吸収製剤についての開発がなされており、中でも、取扱いが容易で薬物の有効血中濃度を長期間維持させ得る貼付剤が注目されている。例えば、アルツハイマー型認知症薬であるリバスチグミン(メチルエチルカルバミド酸3-[(S)-1-(ジメチルアミノ)エチル]フェニル)は、介護者の服薬管理負担の軽減や、継続投与が可能になるといった観点から、貼付剤による投与が好ましい。
【0003】
このようなリバスチグミンを含有する貼付剤としては、例えば、特表2009-517468号公報(特許文献1)において、裏打ち層、薬学的活性成分及びポリマーを含む貯蔵層、シリコーンポリマー及び粘着付与剤を含む接着層、を含む経皮吸収治療システムが記載されており、前記薬学的活性成分としてリバスチグミンが挙げられている。また、国際公開第2015/087926号(特許文献2)には、支持体層、特定量のリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩とヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(A)とを含有する薬物貯留層、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体及び/又はアクリル酸単独重合体である特定量のアクリル系高分子(B)とゴム系粘着基剤とを含有する粘着層、を備える積層型貼付剤が記載されている。しかしながら、これらの貼付剤のように薬物を含有する層(薬物貯留層)と皮膚に貼付剤を貼着せしめる粘着基剤を含有する層(粘着剤層)とが別々の層である積層型貼付剤では、貼付剤中のリバスチグミンの含有量を多くすることが可能となるものの、貼付剤の厚みが厚くなるため、保存中又は皮膚に貼付中に薬物貯留層又は粘着剤層が露出し、肌に触れて刺激を与えたり、包装材の内層に付着して取り出しにくくなったりする懸念があり、また、製造工程が煩雑になるという問題を有していた。
【0004】
また、薬物及び粘着基剤が同一の単層に含有される単層型貼付剤としては、例えば、支持体、カルボキシ基を有するアクリル系単量体成分を含有していない(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体とリバスチグミンとを含有する粘着剤層、を有する貼付剤が国際公開第2013/031992号(特許文献3)に記載されている。また、特表2002-542277号公報(特許文献4)には、塩基性又は中性として作用する薬学的作用剤と、アクリル酸又はメタクリル酸単位をそのポリマー鎖に備えた感圧接着性ポリマーとを含有する経皮治療システムが記載されており、米国特許第6316023号明細書(特許文献5)には、リバスチグミン、ポリメタクリレート、カルボキシ基を含有しているアクリレートコポリマー、及び抗酸化剤を含有する経皮吸収システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-517468号公報
【文献】国際公開第2015/087926号
【文献】国際公開第2013/031992号
【文献】特表2002-542277号公報
【文献】米国特許第6316023号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献3~4に記載されているようなリバスチグミン含有貼付剤においては、リバスチグミンを含有する層が皮膚に直接接触するため、十分な皮膚透過性を発揮させるためにリバスチグミンの含有量を単に多くすると、長期間の貼付等において、適用部位に与える皮膚刺激が増大する場合があり、かかる皮膚刺激の更なる低減が要求されることを見出した。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、適用部位に与える皮膚刺激が十分に小さい貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体層及び粘着剤層を備える単層型の貼付剤において、リバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩に、カルボキシ基を有するアクリル系高分子[アクリル系高分子(A)]と、ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子及び/又は官能基を実質的に有さないアクリル系高分子[アクリル系高分子(B)]と、の少なくとも2種のアクリル系高分子を特定の比率で組み合わせて前記粘着剤層に含有させ、かつ、前記粘着剤層の単位面積あたりにおけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量を特定の範囲内にすることにより、リバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する貼付剤としての薬効を維持しつつ、適用部位に与える皮膚刺激を十分に小さくすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の貼付剤は、
支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であって、
前記粘着剤層が、
リバスチグミン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物と、
カルボキシ基を有するアクリル系高分子からなる少なくとも1種のアクリル系高分子(A)と、
官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)からなる少なくとも1種のアクリル系高分子(B)と、
を含有しており、
前記粘着剤層の全質量に対するリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量がフリー体換算で6~18質量%であり、
前記粘着剤層の単位面積あたりにおけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量がフリー体換算で0.45~0.90mg/cm2であり、かつ、
前記粘着剤層中における前記アクリル系高分子(A)と前記官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)との質量比(A:b2)が81:19~10:90である、
ことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の貼付剤としては、前記カルボキシ基を有するアクリル系高分子の酸価が15~55mgKOH/gであることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の貼付剤としては、ヘアレスマウス皮膚に24時間接触させたときのリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の平均累積皮膚透過量が、フリー体換算で、200~560μg/cm2であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の貼付剤としては、前記粘着剤層の面積が5~40cm2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、適用部位に与える皮膚刺激が十分に小さい貼付剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例4~7及び比較例2~3で得られた各貼付剤における平均累積皮膚透過量とカルボキシ基を有するアクリル系高分子の含有量との関係を示すグラフである。
【
図2】実施例10で得られた貼付剤における各時間毎の平均累積皮膚透過量を示すグラフである。
【
図3】実施例11~15及び比較例2、5で得られた各貼付剤における平均累積皮膚透過量とカルボキシ基を有するアクリル系高分子の含有量との関係を示すグラフである。
【
図4】実施例12で得られた貼付剤における各時間毎の平均累積皮膚透過量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい形態をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明の貼付剤は、
支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であって、
前記粘着剤層が、
リバスチグミン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物と、
カルボキシ基を有するアクリル系高分子からなる群から選択される少なくとも1種のアクリル系高分子(A)と、
ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)及び官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)からなる群から選択される少なくとも1種のアクリル系高分子(B)と、
を含有しており、
前記粘着剤層の単位面積あたりにおけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量がフリー体換算で0.45~0.90mg/cm2であり、かつ、
前記アクリル系高分子(B)として前記ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)を含有する場合、前記粘着剤層中における前記アクリル系高分子(A)と前記ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)との質量比(A:b1)が73:27~5:95であり、
前記アクリル系高分子(B)として前記官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)を含有する場合、前記粘着剤層中における前記アクリル系高分子(A)と前記官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)との質量比(A:b2)が81:19~10:90である、
ことを特徴とする貼付剤である。
【0016】
(支持体層)
本発明に係る支持体層としては、前記粘着剤層を支持し得るものであれば特に制限されず、貼付剤の支持体層として公知のものを適宜採用することができる。このような支持体層の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリウレタン;エチレン-酢酸ビニル共重合体といった合成樹脂や、アルミニウム等の金属及び紙が挙げられる。また、このような材質からなる支持体層の形態としては、例えば、フィルム;発泡シート、多孔シート、微多孔シート等のシート;織布、編布、不織布等の布帛;箔;及びこれらの積層体が挙げられる。本発明に係る支持体層としては、薬物を透過しないものであることが好ましく、中でも、薬物非透過性に優れるという観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。前記支持体層の厚さとしては特に制限されず、通常2~600μm程度である。
【0017】
(粘着剤層)
本発明に係る粘着剤層は、リバスチグミン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物と、カルボキシ基を有するアクリル系高分子からなる群から選択される少なくとも1種のアクリル系高分子(A)と、ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)及び官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)からなる群から選択される少なくとも1種のアクリル系高分子(B)と、を含有する。
【0018】
〔薬物〕
本発明に係る粘着剤層は、薬物としてリバスチグミン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。リバスチグミンは、メチルエチルカルバミド酸3-[(S)-1-(ジメチルアミノ)エチル]フェニルの一般名である。
【0019】
本発明において前記粘着剤層中に含有されるリバスチグミンの形態としては、フリー体(遊離体)であってもその薬学的に許容される塩であってもよく、製造中及び/又は製造された製剤中においてリバスチグミンの薬学的に許容される塩が脱塩されてフリー体となったものであってもよく、これらのうちの1種であっても2種以上の混合物であってもよい。リバスチグミンの薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、ベシル酸、コハク酸、タンニン酸等の酸の酸付加塩が挙げられる。本発明においては、これらの中でも、皮膚透過性がより向上する傾向にあるという観点から、リバスチグミンのフリー体(以下、単に「リバスチグミン」という。)であることがより好ましい。
【0020】
本発明において、前記粘着剤層中に含有されるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量(リバスチグミンの含有量又はリバスチグミンの薬学的に許容される塩の含有量、或いは、両者がいずれも含有されている場合にはその合計含有量、以下同じ)としては、フリー体換算で、前記粘着剤層の全質量に対して6~23質量%であることが好ましく、6~20質量%であることがより好ましく、6~18質量%であることが更に好ましい。前記粘着剤層の全質量に対する含有量が前記下限未満であると、十分なリバスチグミンの皮膚透過性を維持することが困難となる傾向にあり、また、貼付剤の面積が大きくなって貼付中の使用感が低下する傾向にある。他方、前記上限を超えると、リバスチグミンの皮膚透過性が高くなり過ぎて適用部位に与える皮膚刺激を十分に小さくすることが困難となる傾向にある。
【0021】
さらに、本発明において、前記粘着剤層中に含有されるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量としては、フリー体換算で、前記粘着剤層の単位面積あたりにおける含有量が0.45~0.90mg/cm2であることが必要である。本発明においては、リバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の単位面積あたりにおける含有量がかかる条件を満たすことにより、適用部位に与える皮膚刺激を十分に小さくしつつ、リバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過量を薬効が期待できる十分な範囲内に維持することが可能となる。前記粘着剤層の単位面積あたりにおける含有量が前記下限未満であるとリバスチグミンの皮膚透過量が低下し、他方、前記上限を超えると適用部位に与える皮膚刺激が増大する。前記粘着剤層の単位面積あたりにおける含有量としては、0.45~0.80mg/cm2であることがより好ましく、0.50~0.80mg/cm2であることが更に好ましい。
【0022】
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、リバスチグミン及びその薬学的に許容される塩以外の他の薬物を更に含有していてもよい。かかる他の薬物としては、特に限定はされないが、例えば、催眠・鎮静剤(塩酸フルラゼパム、塩酸リルマザホン、フェノバルビタール、アモバルビタール等)、解熱消炎鎮痛剤(酒石酸ブトルファノール、クエン酸ペリソキサール、アセトアミノフェン、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、アスピリン、アルクロフェナク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ペンタゾシン、インドメタシン、サリチル酸グリコール、アミノピリン、ロキソプロフェン等)、ステロイド系抗炎症剤(ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン等)、興奮・覚醒剤(塩酸メタンフェタミン、塩酸メチルフェニデート等)、精神神経用剤(塩酸イミプラミン、ジアゼパム、塩酸セルトラリン、マレイン酸フルボキサミン、塩酸パロキセチン、臭化水素酸シタロプラム、塩酸フルオキセチン、アルプラゾラム、ハロペリドール、クロミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、アモクサピン、マプロチリン、ミアンセリン、セチプチリン、トラゾドン、ロフェプラミン、ミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラファキシン、塩酸クロルプロマジン、チオリダジン、ジアゼパム、メプロバメート、エチゾラム、リスペリドン、ミルタザピン等)、ホルモン剤(エストラジオール、エストリオール、プロゲステロン、酢酸ノルエチステロン、酢酸メテノロン、テストステロン等)、局所麻酔剤(塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ジブカイン、塩酸プロピトカイン等)、泌尿器官用剤(塩酸オキシブチニン、塩酸タムスロシン、塩酸プロピベリン、酒石酸トルテロジン、フェソテロジン、イミダフェナシン等)、骨格筋弛緩剤(塩酸チザニジン、塩酸エペリゾン、メシル酸プリジノール、塩化スキサメトニウム等)、生殖器官用剤(塩酸リトドリン、酒石酸メルアドリン等)、抗てんかん剤(バルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム、カルバマゼピン等)、自律神経用剤(塩化カルプロニウム、臭化ネオスチグミン、塩化ベタネコール等)、抗パーキンソン病剤(メシル酸ペルゴリド、メシル酸ブロモクリプチン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン、塩酸ロピニロール、塩酸タリペキソール、カベルゴリン、ドロキシドパ、ビペリデン、塩酸セレギリン等)、利尿剤(ヒドロフルメチアジド、フロセミド等)、呼吸促進剤(塩酸ロベリン、ジモルホラミン、塩酸ナロキソン等)、抗片頭痛剤(メシル酸ジヒドロエルゴタミン、スマトリプタン、酒石酸エルゴタミン、塩酸フルナリジン、塩酸サイプロヘプタジン等)、抗ヒスタミン剤(フマル酸クレマスチン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェニルピラリン、プロメタジン等)、気管支拡張剤(塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、硫酸サルブタモール、塩酸クレンブテロール、臭化水素酸フェノテロ-ル、硫酸テルブタリン、硫酸イソプレナリン、フマル酸ホルモテロール等)、強心剤(塩酸イソプレナリン、塩酸ドパミン等)、冠血管拡張剤(塩酸ジルチアゼム、塩酸ベラパミル、硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、ニコランジル等)、末梢血管拡張剤(クエン酸ニカメタート、塩酸トラゾリン等)、禁煙補助薬(ニコチン等)、循環器官用剤(塩酸フルナリジン、塩酸ニカルジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、フェロジピン、ベシル酸アムロジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、塩酸マニジピン、塩酸ベニジピン、マレイン酸エナラプリル、塩酸テモカプリル、アラセプリル、塩酸イミダプリル、シラザプリル、リシノプリル、カプトプリル、トランドラプリル、ペリンドプリルエルブミン、アテノロール、ピンドロール、フマル酸ビソプロロール、酒石酸メトプロロール、塩酸ベタキソロール、マレイン酸チモロール、マロン酸ボピンドロール、ニプラジロール、塩酸アロチノロール、塩酸セリプロロール、カルベジロール、塩酸アモスラロール、塩酸カルテオロール、塩酸ベバントロール、塩酸テラゾシン、塩酸ブナゾシン、塩酸プラゾシン、メシル酸ドキサゾシン、バルサルタン、カンデサルタンシレキセチル、ロサルタンカリウム、塩酸クロニジン、塩酸グアンファシン、酢酸グアナベンズ等)、不整脈用剤(塩酸プロプラノロール、塩酸アルプレノロール、塩酸プロカインアミド、塩酸メキシレチン、ナドロール、ジソピラミド等)、抗悪性潰瘍剤(シクロフォスファミド、フルオロウラシル、テガフール、塩酸プロカルバジン、ラニムスチン、塩酸イリノテカン、フルリジン等)、抗脂血症剤(プラバスタチン、シンバスタチン、ベザフィブレート、プロブコール等)、血糖降下剤(グリベンクラミド、クロルプロパミド、トルブタミド、グリミジンナトリウム、グリブゾール、塩酸ブホルミン等)、消化性潰瘍治療剤(プログルミド、塩酸セトラキサート、スピゾフロン、シメチジン、臭化グリコピロニウム等)、利胆剤(ウルソデスオキシコール酸、オサルミド等)、消化管運動改善剤(ドンペリドン、シサプリド等)、肝臓疾患用剤(チオプロニン等)、抗アレルギー剤(フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン等)、抗ウイルス剤(アシクロビル等)、鎮暈剤(メシル酸ベタヒスチン、塩酸ジフェニドール等)、抗生剤(セファロリジン、セフジニル、セフポドキシムプロキセチル、セファクロル、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、メチルエリスロマイシン、硫酸カナマイシン、サイクロセリン、テトラサイクリン、ベンジルペニシリンカリウム、プロピシリンカリウム、クロキサシリンナトリウム、アンピシリンナトリウム、塩酸バカンピシリン、カルベニシリンナトリウム、クロラムフェニコール等)、習慣性中毒用剤(シアナミド等)、食欲抑制剤(マジンドール等)、化学療法剤(イソニアジド、エチオナミド、ピラジナミド等)、血液凝固促進剤(塩酸チクロピジン、ワルファリンカリウム等)、抗アルツハイマー剤(フィゾスチグミン、塩酸ドネペジル、タクリン、アレコリン、キサノメリン等)、セロトニン受容体拮抗制吐剤(塩酸オンダンセトロン、塩酸グラニセトロン、塩酸ラモセトロン、塩酸アザセトロン、パロノセトロン等)、痛風治療剤(コルヒチン、プロベネシド、スルフィンピラゾン等)、麻薬系の鎮痛剤(クエン酸フェンタニル、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、塩酸コカイン、塩酸ペチジン等)が挙げられる。前記粘着剤層がこのような他の薬物を更に含有する場合、その含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量)としては、同粘着剤層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0023】
〔アクリル系高分子(A)〕
本発明に係る粘着剤層は、カルボキシ基を有するアクリル系高分子からなる群から選択される少なくとも1種のアクリル系高分子(「アクリル系高分子(A)」という。)を含有する。
【0024】
なお、本発明において、「アクリル系高分子」とは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸誘導体を含有するモノマーの重合体又は共重合体を示し、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。また、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を示し、「カルボキシ基」とは次式:-COOHで示される基又は-COO-で示される基を示す。
【0025】
さらに、本発明において、「カルボキシ基を有するアクリル系高分子」とは、カルボキシ基の含有量が3質量%以上であるアクリル系高分子を示す。また、本発明において、「カルボキシ基を有するアクリル系高分子」としては、ヒドロキシ基を実質的に有しないものであることが好ましい。本発明において、ヒドロキシ基を実質的に有しないとは、ヒドロキシ基の含有量が3質量%未満であることをいう。
【0026】
本発明に係るアクリル系高分子(A)としては、酸価が15~55mgKOH/gであることが好ましく、20~55mgKOH/gであることがより好ましく、25~55mgKOH/gであることが更に好ましい。酸価が前記下限未満であると、リバスチグミンの皮膚透過性が高くなって適用部位に与える皮膚刺激を十分に小さくすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、十分なリバスチグミンの皮膚透過性を維持することが困難となる傾向にある。なお、本発明において、「酸価」とは、高分子1g中に存在する遊離脂肪酸を中和するために必要な水酸化カリウム(KOH)の質量(mg)を示し、JIS K 0070(1992年)に準拠した方法で測定することができる。このようなアクリル系高分子(A)の重量平均分子量としては、特に制限されず、1,000~10,000,000であることができる。
【0027】
本発明に係るアクリル系高分子(A)としては、例えば、アクリル酸-2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・アクリル酸メチル・アクリル酸・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸・アクリル酸-2-エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル・アクリル酸-2-エチルヘキシル共重合体、アクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル酸-2-エチルヘキシル共重合体、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸・酢酸ビニル共重合体が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
また、これらのアクリル系高分子(A)としては、市販のものを用いてもよく、例えば、Duro-Tak(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)の87-2051(酸価:44mgKOH/g)、87-2194(酸価:51mgKOH/g)、87-2054(酸価:49mgKOH/g)、87-235A(酸価:41mgKOH/g、87-2852(酸価:29mgKOH/g)、87-2100(酸価:25mgKOH/g)、87-2677(酸価:17mgKOH/g)、87-2052、87-2196、87-2353、87-207A、87-200A、87-2677、87-2825;GELVA(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)のGMS 9073;MAS COS 10(コスメディ社製)等に含有されるアクリル系高分子を適宜用いることができる。
【0029】
本発明において、前記粘着剤層中に含有されるアクリル系高分子(A)の含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して5~84質量%であることが好ましく、10~79質量%であることがより好ましい。前記アクリル系高分子(A)の含有量が前記下限未満であると、リバスチグミンの皮膚透過性が高くなって適用部位に与える皮膚刺激を十分に小さくすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、十分なリバスチグミンの皮膚透過性を維持することが困難となる傾向にある。
【0030】
〔アクリル系高分子(B)〕
本発明に係る粘着剤層は、ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子からなる群から選択される少なくとも1種のアクリル系高分子(「ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)」という。)、及び、官能基を実質的に有さないアクリル系高分子からなる群から選択される少なくとも1種のアクリル系高分子(「官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)」という。)からなる群から選択される少なくとも1種のアクリル系高分子(「アクリル系高分子(B)」という。)を含有する。本発明においては、前記アクリル系高分子(A)と前記アクリル系高分子(B)とを組み合わせることにより、リバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する貼付剤としての薬効を維持しつつ、適用部位に与える皮膚刺激を十分に小さくすることが可能となる。
【0031】
・ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)
本発明において、「ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子」とは、ヒドロキシ基の含有量が3質量%以上であるアクリル系高分子を示す。なお、本発明において、「ヒドロキシ基」とは次式:-OH又は-O-で示される基を示す。また、本発明において、「ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子」としては、カルボキシ基を実質的に有しないものであることが好ましい。本発明において、カルボキシ基を実質的に有しないとは、カルボキシ基の含有量が3質量%未満であることをいう。
【0032】
本発明に係るヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)の重量平均分子量としては、特に制限されず、1,000~10,000,000であることができる。
【0033】
本発明に係るヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの単独重合体、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと重合性モノマーとの共重合体である(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル共重合体が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素原子数が2~18のヒドロキシ基含有アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。前記重合性モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ビニルピロリドン、酢酸ビニルが挙げられる。
【0034】
このようなヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)としては、より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル共重合体、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル共重合体、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
また、これらのヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)としては、市販のものを用いてもよく、例えば、Duro-Tak(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)の87-202A、87-2287、87-2516、87-2510、87-4287、87-2525、87-201A、87-202A、87-208A、87-502A、87-503A、87-504A;GELVA(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)のGMS 788、GMS 737等に含有されるアクリル系高分子を適宜用いることができる。
【0036】
本発明において、前記粘着剤層が前記アクリル系高分子(B)として前記ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)を含有する場合、前記アクリル系高分子(A)の含有量と前記ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)の含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量、以下同じ)との質量比(A:b1)としては、73:27~5:95であることが必要である。前記粘着剤層単位面積あたりにおけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量が上記範囲内にある本発明の貼付剤においては、更に前記アクリル系高分子(A)と前記ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)との質量比が前記範囲内にあることにより、リバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する貼付剤としての薬効を維持しつつ、適用部位に与える皮膚刺激を十分に小さくすることが可能となる。前記質量比としては、70:30~10:90であることがより好ましく、70:30~20:80であることが更に好ましい。
【0037】
・官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)
本発明において、「官能基を実質的に有さないアクリル系高分子」とは、高分子中の官能基の含有量が3質量%未満であるアクリル系高分子を示す。なお、前記官能基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、ニトロ基、スルホ基等が挙げられる。本発明に係る官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)の重量平均分子量としては、特に制限されず、1,000~10,000,000であることができる。
【0038】
前記官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)としては、例えば、アクリル酸-2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・メタクリル酸-2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・メタクリル酸メチル・アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・メタクリル酸共重合体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
また、これらの官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)としては、市販のものを用いてもよく、例えば、MAS 811、MAS 683(コスメディ社製);Duro-Tak(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)の87-900A、87-901A、87-9301、87-4098、87-9088、87-9085;GELVA(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)のGMS 3083、GMS 3253、GMS3235等に含有されるアクリル系高分子を適宜用いることができる。
【0040】
また、本発明において、前記粘着剤層が前記アクリル系高分子(B)として前記官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)を含有する場合、前記アクリル系高分子(A)の含有量と前記官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)の含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量、以下同じ)との質量比(A:b2)としては、81:19~10:90であることが必要である。前記粘着剤層単位面積あたりにおけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量が上記範囲内にある本発明の貼付剤においては、更に前記アクリル系高分子(A)と前記官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)との質量比が前記範囲内にあることにより、リバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する貼付剤としての薬効を維持しつつ、適用部位に与える皮膚刺激を十分に小さくすることが可能となる。前記質量比としては、80:20~15:85であることがより好ましく、80:20~20:80であることが更に好ましい。
【0041】
また、本発明において、前記アクリル系高分子(B)の含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して10~89質量%であることが好ましく、15~84質量%であることがより好ましい。前記アクリル系高分子(B)の含有量が前記下限未満であると、十分なリバスチグミンの皮膚透過性を維持することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、リバスチグミンの皮膚透過性が高くなって適用部位に与える皮膚刺激を十分に小さくすることが困難となる傾向にある。
【0042】
本発明に係るアクリル系高分子(B)としては、前記ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)と前記官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)との組み合わせであってもよく、前記粘着剤層中におけるヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(b1)の含有量と官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(b2)の含有量との質量比(b1:b2)が最大で1:1であってもよい。
【0043】
〔その他成分〕
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、リバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩、前記アクリル系高分子(A)、並びに、前記アクリル系高分子(B)の他に、他の粘着基剤や、粘着付与剤、軟化剤、抗酸化剤、溶解剤、充填剤、安定化剤等の添加剤を更に含有していてもよい。
【0044】
前記他の粘着基剤としては、ゴム系粘着基剤、前記アクリル系高分子(A)及び前記アクリル系高分子(B)以外のアクリル系粘着基剤、シリコーン系粘着基剤が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記粘着剤層がこのような他の粘着剤を更に含有する場合、その含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量)としては、同粘着剤層の全質量に対して30質量%以下であることが好ましい。
【0045】
前記粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、DCPD(ジシクロペンタジエン)系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂及びこれらに水素が添加されたものが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記粘着剤層がこのような粘着付与剤を更に含有する場合、その含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量)としては、同粘着剤層の全質量に対して30質量%以下であることが好ましい。
【0046】
前記軟化剤としては、石油系オイル(例:流動パラフィン等のパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例:オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等)、シリコーンオイル、二塩基酸エステル(例:ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例:液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等)、液状脂肪酸エステル類(例:ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシルが好ましく、流動パラフィンがより好ましい。前記粘着剤層がこのような軟化剤を更に含有する場合、その含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量)としては、同粘着剤層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0047】
前記抗酸化剤としては、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、パルミチン酸アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、2-メルカプトベンズイミダゾールが好ましい。前記粘着剤層がこのような抗酸化剤を更に含有する場合、その含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量)としては、同粘着剤層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0048】
前記溶解剤としては、溶解させる溶質の種類にも依存するが、例えば、脂肪酸(例:カプリン酸、オレイン酸、リノール酸等)、脂肪酸エステル類(例:ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等)、脂肪酸誘導体(例:モノラウリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸ジエタノールアミド等)、脂肪酸グリセリンエステル類(例:モノラウリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン等)、脂肪酸の多価アルコールエステル(例:モノラウリン酸ソルビタン等)、脂肪族アルコール(例:オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等)、多価アルコール類(例:プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、ピロリドン誘導体(例:N-メチル-2-ピロリドン等)、有機酸(例:酢酸、乳酸等)、有機酸塩(例:酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等)が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記粘着剤層がこのような溶解剤を更に含有する場合、その含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量)としては、同粘着剤層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0049】
前記充填剤としては、シリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、クレー、カオリン、硝子、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、セラミックス等の無機化合物類;セルロース、シルク、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、等の有機化合物が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記安定化剤としては、トコフェロール及びトコフェロールのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリルエステル、ノルジヒドログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、パルミチン酸アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、2-メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記粘着剤層がこのような充填材及び/又は前記安定化剤を更に含有する場合、その含有量(2種以上の混合物である場合には合計含有量)としては、同粘着剤層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0050】
本発明において、前記粘着剤層の厚さとしては、20~200g/m2となる厚さであることが好ましく、20~100g/m2となる厚さであることがより好ましい。前記粘着剤層の厚さが前記下限未満であると、皮膚への付着性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着剤層が露出し、包装材の内層に付着して取り出しにくくなったりする傾向にある。
【0051】
また、本発明の貼付剤は、治療目的や治療方法に応じて、適用部位に貼付する際に適宜裁断することによって投与する薬物の量、すなわち、粘着剤層全体におけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量(具体的には例えば、フリー体換算で、4.5mg、9mg、13.5、18mg等)を調整することができる。本発明の貼付剤において、前記粘着剤層の貼付面の面積としては、5~40cm2であることが好ましく、上記のように粘着剤層全体におけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量をフリー体換算で例えば18mgとするとき、20~40cm2であることがより好ましい。前記粘着剤層の面積が前記下限未満であると適用部位に与える皮膚刺激が増大する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとリバスチグミンの皮膚透過量が低下したり、貼付中の使用感が低下したりする傾向にある。粘着剤層全体におけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量をフリー体換算で例えば18mgとするときの前記粘着剤層の面積としては、22.5~40cm2であることが更に好ましく、22.5~36cm2であることが特に好ましい。
【0052】
(貼付剤及びその製造方法)
本発明の貼付剤としては、前記支持体層の一方の面上に前記粘着剤層が積層された構造であることが好ましい。また、本発明の貼付剤としては、前記粘着剤層の前記支持体層とは反対の面上に離型ライナーを更に備えるものであってもよい。かかる離型ライナーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタンなどの合成樹脂や、アルミ、紙などの材質からなるフィルムやシート及びこれらの積層体が挙げられる。これらの離型ライナーとしては、前記粘着剤層から容易に剥離できるように該粘着剤層と接触する側の面に含シリコーン化合物コートや含フッ素化合物コート等の離型処理が施されたものであることが好ましい。
【0053】
本発明の貼付剤によれば、ヘアレスマウス皮膚に24時間接触させたときのリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の平均累積皮膚透過量を、フリー体換算で、200~560μg/cm2とすることができる。前記平均累積皮膚透過量としては、200~530μg/cm2であることが好ましく、230~500μg/cm2であることがより好ましい。前記平均累積皮膚透過量が前記範囲内にあることにより、適用部位に与える皮膚刺激を十分に小さくすることができる。
【0054】
なお、本発明において、「ヘアレスマウス皮膚に24時間接触させたときのリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の平均累積皮膚透過量」は、次の方法で測定することができる。すなわち、先ず、貼付剤3試料を、それぞれ3cm2の大きさに裁断し、ヘアレスマウス胴体部の皮膚を剥離して脂肪を除去した表皮側に貼付する。次いで、これを真皮側がレセプター液に接するようにフロースルータイプのレセプター溶液(PBS)を満たしたフランツ型透過試験セルにセットし、約4mL/hrの流速で前記レセプター溶液を送液し、2時間毎に24時間までレセプター溶液を採取する。採取したレセプター溶液中のリバスチグミン及び/又はその塩の濃度(フリー体換算)を高速液体クロマトグラフ法により測定し、各試料について、粘着剤層単位面積あたりにおける貼付開始から24時間のリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過量(フリー体換算)を算出し、その平均値を前記平均累積皮膚透過量[μg/cm2/24hr]とすることができる。
【0055】
このような本発明の貼付剤は、特に制限されず、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、先ず、リバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩、前記アクリル系高分子(A)、前記アクリル系高分子(B)、及び必要に応じて溶剤や前記その他成分を含有する粘着剤層組成物を調製し、これを前記支持体層の一方の面上に目的の厚さとなるように塗布した後に必要に応じて前記溶剤を除去し、前記支持体層の一方の面上に前記薬物貯留層を形成せしめることにより製造することができる。また、本発明の貼付剤が前記離型ライナーを更に備える場合には、先に前記離型ライナーの一方の面上に前記粘着剤層組成物を塗布して前記粘着剤層を形成せしめた後、前記離型ライナーとは反対の面上に前記支持体層を積層してもよい。
【0056】
なお、前記溶剤としては、特に制限されず、用いる薬物や各基剤の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、トルエン、キシレン、ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピルが挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、皮膚刺激性評価試験、薬物移行量測定、ヘアレスマウス皮膚透過試験、及びヒト皮膚透過試験は、それぞれ以下に示す方法により行った。
<皮膚刺激性評価試験>
皮膚刺激性評価試験は、Buehler法を改変した以下の2つの方法で行った。
【0058】
(皮膚刺激性評価試験1)
先ず、モルモットの背部肩甲骨上を4cm×6cmの広さに刈・剃毛し、刈・剃毛部を区画A、B、Cに分け(各2cm×4cm)、それらの4隅に、生理食塩液とFCA(Freund’s Complete Adjuvant)との体積比が1:1のW/O型エマルジョンを0.1mLづつ皮内投与した。次いで、感作処置として、各区画に1.5cm×1.5cmの大きさに裁断して離型ライナーを除去した貼付剤を貼付し、24時間閉塞適用を3回(1回/週)繰り返した。次いで、惹起処置として、区画B又は区画Cに、1.5cm×1.5cmの大きさに裁断して離型ライナーを除去した貼付剤を貼付し、それぞれ24時間閉塞適用した後、貼付剤を剥離した。剥離から24時間後及び48時間後の皮膚反応をDraizeの評価基準:
〔紅斑及び痂皮の形成スコア〕
0:紅斑なし
1:軽微な紅斑(わずかに認識できる)
2:明らかな紅斑(淡い赤色)
3:中等度~重度の紅斑(明確な赤色)
4:反応が深く、わずかに痂皮形成がみられる重度の紅斑(燃えるような又は深赤色)
〔浮腫の形成スコア〕
0:浮腫なし
1:軽微な浮腫(わずかに認識できる)
2:軽度の浮腫(対象領域の端に皮膚隆起が明確である)
3:中等度の浮腫(対象領域が明確であり約1mmの隆起がみられる)
4:重度の浮腫(1mm以上の隆起であり、投与範囲を超えるような隆起)
に従って評価し、紅斑及び痂皮の形成スコアと浮腫の形成スコアとの合計スコアを算出して評価値とした。試験はモルモット6匹に対して行い、その平均評価値を平均皮膚刺激スコアとした。
【0059】
(皮膚刺激評価試験2)
先ず、ヘアレスラットの背部肩甲骨上を4cm×6cmの広さに刈・剃毛し、刈・剃毛部に1.0cm×1.0cmの大きさに裁断して離型ライナーを除去した貼付剤を貼付し、24時間閉塞適用した後、貼付剤を剥離した。剥離から0.5時間後の皮膚反応を上記Draizeの評価基準に従って評価し、紅斑及び痂皮の形成スコアと浮腫の形成スコアとの合計スコアを算出して評価値とした。この評価を同一部位に続けて4回(1回/一日)繰り返し、それぞれの評価値を算出した。また、試験はヘアレスラット6匹に対して行い、その平均評価値を各回における平均皮膚刺激スコアとした。
【0060】
<薬物移行量測定>
上記皮膚刺激性評価試験1に用いた24時間貼付後の貼付剤をガラス製の遠沈管に入れ、テトラヒドロフラン10mLを加えて振とうして粘着剤層を溶解させた後、これに0.2%リン酸水溶液/メタノール混液(50/50)を40mL加えて更に振とうし、薬物の抽出液を得た。得られた抽出液について、高速液体クロマトグラフィー装置((株)島津製作所製、カラム:ODSカラム、溶媒:7mMSDSを含む0.2%リン酸水溶液/メタノール混液(40/60)、検出波長:UV215nm)を用いて、粘着剤層中に残存するリバスチグミン及び/又はその塩の量を測定し、貼付剤の製造時に加えたリバスチグミンの質量と24時間貼付後のリバスチグミン及び/又はその塩の質量(フリー体換算)との差を算出した。試験はモルモット6匹に対して行い、得られた算出値(差)の平均を平均薬物移行量[mg/cm2]とした。
【0061】
<ヘアレスマウス皮膚透過試験>
先ず、ヘアレスマウス胴体部の皮膚を剥離して脂肪を除去し、表皮側に3cm2の大きさに裁断して離型ライナーを除去した貼付剤を貼付した。これを真皮側がレセプター液に接するようにフロースルータイプのフランツ型透過試験セルにセットし、前記セルにレセプター溶液(PBS)を満たした。次いで、レセプター溶液が32℃に保温されるように、暖めた循環水を外周部に循環させながら約4mL/hrの流速でレセプター溶液を送液し、2時間毎に24時間までレセプター溶液を採取した。採取したレセプター溶液中のリバスチグミン及び/又はその塩の濃度(フリー体換算)を高速液体クロマトグラフ法により測定し、貼付開始から24時間の、粘着剤層単位面積あたりにおけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の累積皮膚透過量(フリー体換算、単位:μg/cm2/24hr)を算出した。試験は3試料以上について行い、得られた累積皮膚透過量の平均を平均累積皮膚透過量[μg/cm2/24hr]とした。
【0062】
<ヒト皮膚透過試験>
先ず、凍結ヒト皮膚切片を室温にて解凍して皮下脂肪を除去し、ダーマトームを用いて約500μmの厚みになるように処理した。次いで、前記皮膚切片の角質側に3cm2の大きさに裁断して離型ライナーを除去した貼付剤を貼付し、これを真皮側がレセプター液に接するようにフロースルータイプのフランツ型透過試験セルにセットし、前記セルにレセプター溶液(PBS)を満たした。次いで、レセプター溶液が32℃に保温されるように、暖めた循環水を外周部に循環させながら約4mL/hrの流速でレセプター溶液を送液し、2時間毎に24時間までレセプター溶液を採取した。採取したレセプター溶液中のリバスチグミン及び/又はその塩の濃度(フリー体換算)を高速液体クロマトグラフ法により測定し、各時間あたり、粘着剤層単位面積あたりにおけるリバスチグミン及び/又はその薬学的に許容される塩の累積皮膚透過量(フリー体換算、単位:μg/cm2)を算出した。試験は4試料以上について行い、得られた累積皮膚透過量の平均を平均累積皮膚透過量[μg/cm2]とした。
【0063】
(皮膚刺激スコア-平均累積皮膚透過量換算試験)
(比較例1、実施例1~3)
先ず、カルボキシ基を有するアクリル系高分子の酢酸エチル溶液(アクリル系高分子(A)、酸価:51mgKOH/g、Duro-Tak(登録商標)87-2194(ヘンケル社製)、アクリル系高分子:37質量部)、及び官能基を実質的に有さないアクリル系高分子の酢酸エチル溶液(アクリル系高分子(B)、酸価:0mgKOH/g、MAS811(コスメディ社製)、アクリル系高分子:37質量部)に、リバスチグミン25質量部、及びその他成分(抗酸化剤)1質量部を添加して粘着剤層組成物を得た。
【0064】
次いで、得られた粘着剤層組成物を離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(離型ライナー)の一方の面上に塗布した後、酢酸エチルを乾燥除去して厚みが50μmの粘着剤層を得た。次いで、得られた粘着剤層と離型処理が施されていないポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体層)とを貼り合わせ、支持体層/粘着剤層/離型ライナーの順に積層され、粘着剤層中のリバスチグミンの含有量が単位面積あたりにおいて1.25mg/cm2である貼付剤(試験貼付剤1(比較例1))を得た。
【0065】
また、リバスチグミンの含有量を変え、リバスチグミンの含有量減少分をアクリル系高分子(A)及びアクリル系高分子(B)でこれらの質量比が1:1となるように補ったこと以外は同様にして貼付剤をそれぞれ作製し、試験貼付剤2(実施例1)(リバスチグミン含有量:0.90mg/cm2)、試験貼付剤3(実施例2)(リバスチグミン含有量:0.60mg/cm2)、試験貼付剤4(実施例3)(リバスチグミン含有量:0.45mg/cm2)とした。得られた試験貼付剤1~4についてそれぞれ皮膚刺激性評価試験1及び2、薬物移行量測定、並びに、ヘアレスマウス皮膚透過試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0066】
【0067】
表1に示した結果から明らかなように、試験貼付剤1~4においては、粘着剤層単位面積あたりにおけるリバスチグミン含有量が0.45~0.90mg/cm2であると平均薬物移行量が0.2~0.39mg/cm2の範囲内になり、平均薬物移行量が当該範囲内にあると貼付剤の適用部位に与える皮膚刺激を有意に減弱できることが確認された。ここで、平均薬物移行量と平均累積皮膚透過量とは対応関係にあるため、平均累積皮膚透過量(ヘアレスマウス皮膚に24時間接触時)が200~560μg/cm2の範囲内にあれば、適用部位に与える皮膚刺激を有意に減弱できるといえる。
【0068】
(実施例4)
先ず、カルボキシ基を有するアクリル系高分子の酢酸エチル溶液(アクリル系高分子(A)、酸価:51mgKOH/g、Duro-Tak(登録商標)87-2194(ヘンケル社製)、アクリル系高分子:26.1質量部)、及びヒドロキシ基を有するアクリル系高分子の酢酸エチル溶液(アクリル系高分子(B)、酸価:0mgKOH/g、Duro-Tak(登録商標)87-4287(ヘンケル社製)、アクリル系高分子:60.9質量部)に、リバスチグミン12質量部、及びその他成分(抗酸化剤)1質量部を添加して粘着剤層組成物を得た。
【0069】
次いで、得られた粘着剤層組成物を離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(離型ライナー)の一方の面上に塗布した後、酢酸エチルを乾燥除去して厚みが50g/m2(リバスチグミン含有量:0.6mg/cm2)の粘着剤層を得た。次いで、得られた粘着剤層と離型処理が施されていないポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体層)とを貼り合わせ、支持体層/粘着剤層/離型ライナーの順に積層された貼付剤を得た。得られた貼付剤を前記粘着剤層の面積が3cm2となるように裁断し、前記粘着剤層全体におけるリバスチグミンの含有量が1.8mgである貼付剤とした。粘着剤層の構成(組成、粘着剤層面積、単位面積あたり及び粘着剤層全体におけるリバスチグミンの含有量、並びに、アクリル系高分子(A)とアクリル系高分子(B)との質量比(A:B))を、表2に示す。
【0070】
(実施例5~7、比較例2~3)
前記粘着剤層の構成を表2に示す構成となるようにしたこと以外は実施例4と同様にして各貼付剤をそれぞれ得た。なお、表2中、「Duro-Tak 87-2054」は、カルボキシ基を有するアクリル系高分子の酢酸エチル溶液(アクリル系高分子(A)、酸価:49mgKOH/g、ヘンケル社製)であり、「Duro-Tak 87-2516」は、ヒドロキシ基を有するアクリル系高分子の酢酸エチル溶液(アクリル系高分子(B)、酸価:0mgKOH/g、ヘンケル社製)であり、組成中の質量部は、それぞれ、各アクリル系高分子の質量部を示す。
【0071】
(比較例4)
先ず、リバスチグミン12質量部、ゴム系粘着基剤組成物88質量部を、適量の溶媒(無水エタノール及びトルエン)に加えて混合し、粘着剤層組成物を得た。前記ゴム系粘着基剤組成物としては、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体20質量部、ポリイソブチレン5質量部、粘着付与剤15質量部、及び軟化剤48質量部の混合物を用いた。次いで、この粘着剤層組成物を用いたこと以外は実施例4と同様にして貼付剤を得た。
【0072】
(実施例8~9)
前記粘着剤層の構成を表2に示す構成となるようにし、前記粘着剤層全体におけるリバスチグミンの含有量が2.7mg又は1.35mgとなるようにしたこと以外は実施例4と同様にして各貼付剤をそれぞれ得た。
【0073】
実施例4~9及び比較例2~4で得られた各貼付剤についてヘアレスマウス皮膚透過試験を行った結果を各粘着剤層の構成と併せて表2に示す。また、実施例4~7及び比較例2~3で得られた各貼付剤における平均累積皮膚透過量をy、全アクリル系高分子(A+B)中のカルボキシ基を有するアクリル系高分子(A)の含有量[質量%]をxとして得られた近似直線を
図1に示す。
図1において、得られた近似直線は、次式:y=-5.229x+584.06(R
2=0.9447)で示された。
【0074】
【0075】
(実施例10)
先ず、カルボキシ基を有するアクリル系高分子の酢酸エチル溶液(アクリル系高分子(A)、酸価:51mgKOH/g、Duro-Tak(登録商標)87-2194(ヘンケル社製)、アクリル系高分子:34.8質量部)、及びヒドロキシ基を有するアクリル系高分子の酢酸エチル溶液(アクリル系高分子(B)、酸価:0mgKOH/g、Duro-Tak(登録商標)87-4287(ヘンケル社製)、アクリル系高分子:52.2質量部)に、リバスチグミン12質量部、及びその他成分(抗酸化剤)1質量部を添加して粘着剤層組成物を得た。次いで、この粘着剤層組成物を用いたこと以外は実施例4と同様にして貼付剤を得た(リバスチグミン含有量:0.6mg/cm
2)。実施例10で得られた貼付剤についてヒト皮膚透過試験を行った結果を
図2に示す。
【0076】
表2及び
図1に示した結果より、粘着剤層単位面積あたりにおけるリバスチグミン含有量が0.45~0.90mg/cm
2であり、かつ、全アクリル系高分子(A+B)中のカルボキシ基を有するアクリル系高分子(A)の含有量が73~5質量%、すなわち、カルボキシ基を有するアクリル系高分子(アクリル系高分子(A))とヒドロキシ基を有するアクリル系高分子(アクリル系高分子(b1))との質量比(A:b1)が73:27~5:95であると、平均累積皮膚透過量(ヘアレスマウス皮膚に24時間接触時)が上記の200~560μg/cm
2の範囲内となることが確認された。そのため、本発明の貼付剤においては、適用部位に与える皮膚刺激が十分に小さくなるといえる。
【0077】
(実施例11~15、比較例5)
前記粘着剤層の構成を表3に示す構成となるようにしたこと以外は実施例4と同様にして各貼付剤をそれぞれ得た。なお、表3中、「Duro-Tak 87-2051」は、カルボキシ基を有するアクリル系高分子の酢酸エチル溶液(アクリル系高分子(A)、酸価:44mgKOH/g、ヘンケル社製)であり、「MAS 811」は、官能基を実質的に有さないアクリル系高分子の酢酸エチル溶液(アクリル系高分子(B)、酸価:0mgKOH/g、コスメディ社製)であり、組成中の質量部は、それぞれ、各アクリル系高分子の質量部を示す。
【0078】
実施例11~15及び比較例5で得られた各貼付剤についてヘアレスマウス皮膚透過試験を行った結果を各粘着剤層の構成と併せて表3に示す。なお、表3には、比較例2、4で得られた各貼付剤についてヘアレスマウス皮膚透過試験を行った結果及び粘着剤層の構成も併せて示す。また、実施例11~15及び比較例2、5で得られた各貼付剤における平均累積皮膚透過量をy、全アクリル系高分子(A+B)中のカルボキシ基を有するアクリル系高分子(A)の含有量[質量%]をxとして得られた近似直線を
図3に示す。
図3において、得られた近似直線は、次式:y=-5.0923x+616.35(R
2=0.9636)で示された。さらに、実施例12で得られた貼付剤についてヒト皮膚透過試験を行った結果を
図4に示す。
【0079】
【0080】
表3及び
図3に示した結果より、粘着剤層単位面積あたりにおけるリバスチグミン含有量が0.45~0.90mg/cm
2であり、かつ、全アクリル系高分子(A+B)中のカルボキシ基を有するアクリル系高分子(A)の含有量が81~10質量%、すなわち、カルボキシ基を有するアクリル系高分子(アクリル系高分子(A))と官能基を実質的に有さないアクリル系高分子(アクリル系高分子(b2))との質量比(A:b2)が81:19~10:90であると、平均累積皮膚透過量(ヘアレスマウス皮膚に24時間接触時)が上記の200~560μg/cm
2の範囲内となることが確認された。そのため、本発明の貼付剤においては、適用部位に与える皮膚刺激が十分に小さくなるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明によれば、適用部位に与える皮膚刺激が十分に小さい貼付剤を提供することが可能となる。