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特許7029248レジスト膜付マスクブランク、及びフォトマスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】レジスト膜付マスクブランク、及びフォトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/50 20120101AFI20220224BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20220224BHJP
   G03F 7/16 20060101ALI20220224BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20220224BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220224BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G03F1/50
H01L21/30 564Z
G03F7/16
B05D1/26 Z
B05D7/24 301Z
B05D3/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017159817
(22)【出願日】2017-08-22
(65)【公開番号】P2019039964
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506107689
【氏名又は名称】ホーヤ エレクトロニクス マレーシア センドリアン ベルハッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA ELECTRONICS MALAYSIA SENDIRIAN BERHAD
【住所又は居所原語表記】Lot28&29,Phasel,Jalan Hi-Tech 4,Kulim Hi-Tech Park,09000 Kulim,Kedah,Malaysia
(74)【代理人】
【識別番号】100103676
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 康夫
(72)【発明者】
【氏名】塚越 健太
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-210889(JP,A)
【文献】特開2003-112099(JP,A)
【文献】特開2010-227850(JP,A)
【文献】特開2011-103422(JP,A)
【文献】特開2015-196140(JP,A)
【文献】特開2011-159656(JP,A)
【文献】特開2007-271775(JP,A)
【文献】特開2007-048836(JP,A)
【文献】特開2005-286232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 1/00
G03F 7/16
B05D 1/00-7/00
B05C 5/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の透明基板上にパターン形成用薄膜と、レジスト膜がこの順に形成されたレジス
ト膜付マスクブランクにおいて、
前記レジスト膜の膜厚分布は異方性を有し、且つ、前記基板端面のうち一つの辺から対
向する辺に向かって延びる線状ムラを有しており、
前記線状ムラは、該線状ムラが延びる方向に対して垂直な方向に光干渉式のレジスト膜
厚測定機を用いて、5mmピッチで前記レジスト膜の膜厚を測定した時に、隣り合う測定
点での前記レジスト膜厚の差が0オングストローム超30オングストローム以下であるこ
とを特徴とするレジスト膜付マスクブランク。
【請求項2】
前記線状ムラは、光干渉式のレジスト膜厚測定機を用いて、5mmピッチでレジスト膜
の膜厚を測定した時に、隣り合う3つの測定点でのレジスト膜厚における最大値と最小値
との差が0オングストローム超30オングストローム以下であることを特徴とする請求項
記載のレジスト膜付マスクブランク。
【請求項3】
前記線状ムラは、前記線状ムラが生じる側の前記基板端面から100mm内側の位置で
測定されたものであることを特徴とする請求項またはに記載のレジスト膜付マスクブランク。
【請求項4】
前記レジスト膜の面内における膜厚の最大値と最小値の差が200オングストローム以
下であることを特徴とする請求項からのいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランク。
【請求項5】
前記パターン形成用薄膜は、レーザー描画波長における反射率が10%以下であること
を特徴とする請求項からのいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランク。
【請求項6】
前記矩形状の透明基板の短辺の長さは850mm以上であることを特徴とする請求項
からのいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランク。
【請求項7】
請求項からのいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランクを用いてフォトマス
クを製造することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト膜付マスクブランクの製造方法、フォトマスクの製造方法、及びレジスト膜付マスクブランク等に関する。
【背景技術】
【0002】
FPDデバイスを製造するためのマスクブランク(FPD用のマスクブランク)においては、遮光性膜、半透光性膜、位相シフト膜などの転写パターン形成用薄膜上に、レジスト膜が形成される。このレジスト膜は、前記薄膜のエッチング時にエッチングマスクとして使用される。しかし、FPD用のマスクブランクにおいては、レジスト膜を形成すべき前記薄膜表面の面積が大きいため、例えばLSI用のマスクブランク等と比べ、レジスト膜の塗布ムラや、面内膜厚均一性の悪化が生じやすい。
また、FPD用のフォトマスクなどにおいては、近年において、形成されるパターンが高精度化しているため、大型の基板の全面に亘って均一な厚さのレジスト膜を形成できる技術が望まれる。
【0003】
このような実情に鑑み、FPD用のマスクブランク及びフォトマスクの製造分野において、例えば、「CAPコーター」と通称される塗布装置が使用されている。この「CAPコーター」においては、液体状のレジスト剤が溜められた液槽に毛管状隙間を有する塗布ノズルを沈めておき、一方、被塗布面を下方に向けた姿勢で吸着板(サクションプレート:Suction plate)によって基板を保持しておき、次に、塗布ノズルをレジスト剤中より上昇させてこの塗布ノズルの上端部を基板の被塗布面に近接させる。すると、液槽に溜められた液体状のレジスト剤が塗布ノズルにおける毛細管現象により上昇され、このレジスト剤が塗布ノズルの上端部を介して基板の被塗布面に接液される。このようにレジスト剤が被塗布面に接液した状態において、液槽及び塗布ノズルを所定の「塗布高さ」の位置(塗布ギャップGの位置)まで下降させる。この状態で、塗布ノズル及び被塗布面を被塗布面の全面に亘って相対的に走査させることにより、被塗布面の全面に亘ってレジスト剤の塗布膜が形成される。
【0004】
ところで、上記のようなCAPコーターを用いた場合であっても、さらなる高精度パターンへの要求等に答えるためには、さらなる膜厚の均一性を追求する必要がある。そのために、塗布後の乾燥に際して面内の乾燥ムラの発生を防止することは、膜厚の均一性を向上させる上で重要な要素となる。
そこで、本願出願人は、クリーンルーム内のダウンフローの気流による乾燥ムラによるレジスト膜の膜厚ムラを防止するために、基板の被塗布面を下向き保持した状態で、基板を一定速度で移動させながら乾燥する際に、被塗布面の下方からレジスト膜に向かって清浄気体を供給することにより、ダウンフローが被塗布面に回り込むのを抑制するレジスト塗布方法(特許文献1)や、塗布されたレジスト剤の乾燥は、塗布されたレジスト剤の塗布面に対向して設置された整流板(ラミナプレート:Lamina plate)を設け、前記塗布面と前記整流板との間に清浄気体を供給し、乾燥させるレジスト塗布方法(特許文献2)を開発し、先に出願を行っている。
【文献】特開2003-112099号公報
【文献】特開2008-257087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のような方法を適用した場合に、乾燥ムラは効果的に抑制できるものの、特に、基板の短辺の長さが850mm以上の8512サイズ(850mm×1200mm)、8514サイズ(850mm×1400mm)、1214サイズ(1220mm×1400mmサイズ)等といった比較的大きなサイズの基板を使用する場合には、CAPコーターに特有の塗布ムラ(スタートムラ、スモールラインムラ(Small line mura)、以下適宜スモールラインムラと称す)と呼ばれるムラが顕著に発生する。このスモールラインムラの写真を図1に示す。このスモールラインムラは、図2に示すように、基板の塗布開始位置近辺で発生し、具体的には、基板の一端(一辺)から塗布方向に向かって100mmから250mmの範囲に亘って発生する。このムラは、塗布方向(図中の矢印の方向)と同じ方向(平行な方向)に延びる細い線状のムラ(ライン状のムラ)である。このムラは、一方向に伸びるレジスト剤供給口を有する塗布ノズルの全域に亘って、複数(例えば数十本程度)連続して発生する。なお、図1は、図2中で黒色の丸で示した部分の写真である。
【0006】
スモールラインムラは、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターンにおいて、局所的にCD均一性(Local CD Uniformity)を悪化させ、その結果、フォトマスク全体のCD均一性(Global CD Uniformity)の要求値を満たさないという問題が発生した。この問題は、微細パターン、複雑なパターン配置が要求されるOLED製造用のフォトマスクの場合に顕著に問題が発生した。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板の短辺の長さが850mm以上の大きなサイズの基板を使用する場合であっても、CAPコーター等のスリット状の塗布ノズルから液状のレジスト剤を吐出し、被塗布面にレジスト剤を塗布してレジスト膜を形成する際に発生する特有の塗布ムラであるスモールラインムラを低減することにより、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下のフォトマスクが作製できるマスクブランク及びその製造方法の提供を目的とする。さらに、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性が30nm以下であって、フォトマスク全体のCD均一性(Global CD Uniformity)が60nm以下のフォトマスクが作製できるマスクブランク及びその製造方法等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究した結果、CAPコーター等のスリット状の塗布ノズルから液状のレジスト剤を吐出し、被塗布面にレジスト剤を塗布してレジスト膜を形成する際に発生する特有のスモールラインムラと呼ばれる塗布膜厚のバラつきは、接液工程における塗布ノズルの昇降速度を極限まで速くする(例えば10秒以下と昇降時間を極限まで短くする)ことで、低減できることを知見した(対策1)。具体的には、レジスト膜付マスクブランクを使用して得られたフォトマスクにおいて、フォトマスク全体のCD均一性が100nm以下という厳しい規格を満たすレベルまでスモールラインムラを低減するのに有効な手段であることを知見した。このとき、スモールラインムラの目視による濃さは、この対策を施さない場合に比べ、相対的に薄くできることを知見した。
本発明者はさらに研究を進めた結果、塗布ノズル(又はノズルタンクの上面部)と整流板との隙間を埋めることによって、下方からの上昇流が基板や塗布ノズルに当たること等を低減でき、スモールラインムラをさらに低減できることを知見した(対策2)。具体的には、上記の厳しい規格(フォトマスク全体のCD均一性が100nm以下)を満たすレベルまでスモールラインムラを低減するのに有効な手段であることを知見した。
さらに、本発明者は、上記の対策1、2の双方を適用した場合において、上記の厳しい規格を満たすようにスモールラインムラを低減できることを知見した。
【0009】
本発明者はさらに研究を進めた。その結果、上記の対策1、2の双方を適用した場合であっても、微細パターン、複雑なパターン配置が要求されるOLED製造用のフォトマスクを作製する場合における、例えば、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下、フォトマスク全体のCD均一性(Global CD Uniformity)が60nm以下という最も厳しい規格を満たすフォトマスクを得ようとする場合は問題となることを知見した。
【0010】
基板のサイズにかかわらず、特に、基板の短辺の長さが850mm以上の大きなサイズの基板において、CAPコーター等のスリット状の塗布ノズルから液状のレジスト剤を吐出し、被塗布面にレジスト剤を塗布してレジスト膜を形成する際に発生する特有の塗布ムラであるスモールラインムラが目視で観察(認識)されない基板は未だ得られていない。
【0011】
本発明者はさらに詳細に研究を進めた。その結果、以下のことを解明した。
(1)上記の対策1、2の双方を適用して作製されたレジスト膜付マスクブランクを使用し、フォトマスクを作製した場合において、基板の短辺の長さが850mm以上の大きなサイズの基板の場合においては、上記の最も厳しい規格(フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下、フォトマスク全体のCD均一性(Global CD Uniformity)が60nm以下)を満たすフォトマスクの取得率が低下することを知見した。特に、基板の短辺の長さが1200mm以上の大きなサイズの基板の場合は、最も厳しい規格を満たすフォトマスクを得ることができなかった。このため、各種の条件を変えて原因を追及した。その過程で、基板サイズが相対的に大きいほど、特に基板における塗布方向の長さ(図2の横方向の長さ)が長いほど、塗布方向の長さが相対的に短い場合に比べ、スモールラインムラは相対的に大きく(濃く)なり、上記の最も厳しい規格を満たすフォトマスクの取得率が低いことを知見した。
(2)基板における塗布ノズルの長さ方向(図2の縦方向)の長さの違いは、取得率にほとんど影響しないことを知見した。
【0012】
(3)基板の短辺の長さが850mm以上であって、相対的にサイズが大きい基板ほど(塗布方向の長さが相対的に長くなる基板ほど)、整流板の露出面積が増大し(図4はこの状態を示す)、クリーンルームやクリーンブースの天井からのダウンフローが整流板に当たり四方に散らばりその一部が塗布ノズルに流れ込む量が大きくなる(図5参照)。このためスモールラインムラが相対的に大きく(濃く)なり、上記の最も厳しい規格を満たすフォトマスクの取得率が低くなる、もしくは最も厳しい規格を持たすフォトマスクが得られないことを本発明者は解明した。
(4)クリーンルームやクリーンブースの天井からのダウンフローを制御し、天井からのダウンフローが整流板に当たり四方に散らばりその一部が塗布ノズルに流れ込む量を制御する(相対的に低減する)ことによって、スモールラインムラを相対的に低減できることを本発明者は解明した(図5参照)。
(5)後述する、所定のタイミングで、所定の気流制御を行うことによって、基板の短辺の長さが850mm以上であって、基板サイズが相対的に大きい場合(塗布方向の長さが相対的に長い場合)であっても、最も厳しい規格を満たすフォトマスクの取得率を90%以上に改善でき、取得率100%の実現も可能であることを知見した。特に、基板の短辺の長さが1200mm以上の大きなサイズの基板の場合、最も厳しい規格を満たすフォトマスクは取得困難な状況(取得率0%)から、取得率を90%以上に改善でき、取得率100%の実現も可能であることを知見した。
【0013】
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)
一方向に伸びるレジスト剤供給口を有する塗布ノズルから液体状のレジスト剤を吐出させつつ、前記一方向に交差する方向へ前記塗布ノズル及び基板の被塗布面を相対的に走査させて、前記被塗布面に前記レジスト剤を塗布するレジスト剤塗布工程を有するレジスト膜付マスクブランクの製造方法であって、
前記基板は、矩形状の透明基板上にパターン形成用薄膜が形成された基板であって、
少なくとも、前記塗布ノズルから吐出させた前記レジスト剤を前記パターン形成用薄膜が形成された側の前記基板の被塗布面に接液させる接液工程における一部の工程又は全部の工程において、
少なくとも、前記塗布ノズル周辺の気流を前記接液工程に適した状態に制御することを特徴とするレジスト膜付マスクブランクの製造方法。
(構成2)
前記接液工程、および前記レジスト剤塗布工程を行うレジスト塗布装置に設置された気流を遮る手段によって、前記塗布ノズル周辺の気流を前記接液工程に適した状態に制御することを特徴とする構成1に記載のレジスト膜付マスクブランクの製造方法。
(構成3)
前記レジスト塗布装置がクリーンブースまたはクリーンルームに設置されており、気流を吸引する手段、気流をクリーンブース外またはクリーンルーム外に排出する手段、または、気流をクリーンブース外またはクリーンルーム外に逃がす手段のうち少なくとも一つの手段によって、前記塗布ノズル周辺の気流を前記接液工程に適した状態に制御することを特徴とする構成1または2に記載のレジスト膜付マスクブランクの製造方法。
(構成4)
前記レジスト塗布装置がクリーンブースまたはクリーンルームに設置されており、クリーンブース内またはクリーンルーム内に供給する気流の供給量を変える手段によって、前記塗布ノズル周辺の気流を前記接液工程に適した状態に制御することを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランクの製造方法。
(構成5)
液槽に溜められた液体状のレジスト剤を塗布ノズルにおける毛細管現象により上昇させ、基板の被塗布面を下方に向けて前記塗布ノズルの上端部に近接させ、前記塗布ノズルにより上昇されたレジスト剤を前記塗布ノズルの上端部を介して前記被塗布面に接液させ、レジスト剤が基板の被塗布面に接液された状態で、前記液槽及び塗布ノズルを所定の塗布高さの位置まで下降させ、この状態で前記塗布ノズル及び前記被塗布面を相対的に走査させて、前記被塗布面に前記レジスト剤を塗布するレジスト剤塗布工程を有することを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランクの製造方法。
(構成6)
構成1から5のいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランクの製造方法によって得られたレジスト膜付マスクブランクを用いてフォトマスクを製造することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【0014】
(構成7)
矩形状の透明基板上にパターン形成用薄膜と、レジスト膜がこの順に形成されたレジスト膜付マスクブランクにおいて、
前記レジスト膜の膜厚分布は異方性を有し、且つ、前記基板端面のうち一つの辺から対向する辺に向かって延びる線状ムラを有しており、
前記線状ムラは、該線状ムラが延びる方向に対して垂直な方向に光干渉式のレジスト膜厚測定機を用いて、5mmピッチで前記レジスト膜の膜厚を測定した時に、隣り合う測定点での前記レジスト膜厚の差が0オングストローム超30オングストローム以下であることを特徴とするレジスト膜付マスクブランク。
(構成8)
前記線状ムラは、光干渉式のレジスト膜厚測定機を用いて、5mmピッチでレジスト膜の膜厚を測定した時に、隣り合う3つの測定点でのレジスト膜厚における最大値と最小値との差が0オングストローム超30オングストローム以下であることを特徴とする構成7記載のレジスト膜付マスクブランク。
(構成9)
前記線状ムラは、前記線状ムラが生じる側の前記基板端面から100mm内側の位置で測定されたものであることを特徴とする構成7または8に記載のレジスト膜付マスクブランク。
(構成10)
前記レジスト膜の面内における膜厚の最大値と最小値の差(面内膜厚均一性)が200オングストローム以下であることを特徴とする構成7から9のいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランク。
(構成11)
前記パターン形成用薄膜は、レーザー描画波長における反射率が10%以下であることを特徴とする構成7から10のいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランク。
(構成12)
前記矩形状の透明基板の短辺の長さは850mm以上であることを特徴とする構成7から11のいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランク。
(構成13)
構成7から12のいずれかに記載のレジスト膜付マスクブランクを用いてフォトマスクを製造することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記の対策1、2の双方を適用した場合に比べ、CAPコーター等に特有の塗布ムラであるスモールラインムラの低減効果がさらに得られるように、レジスト剤を塗布できる工程を有するマスクブランクの製造方法等を提供できる。
本発明によれば、CAPコーター等に特有の塗布ムラであるスモールラインムラに関し、スモールラインムラの程度の改善(低減)と、スモールラインムラの発生率の改善(低減)ができるように、レジスト剤を塗布できる工程を有するマスクブランクの製造方法等を提供できる。
本発明によれば、CAPコーター等に特有の塗布ムラであるスモールラインムラが目視で観察されないように、レジスト剤を塗布できる工程を有するマスクブランクの製造方法等を提供できる。
本発明によれば、CAPコーター等に特有の塗布ムラであるスモールラインムラが目視で観察されない程度まで低減されたレジスト膜付マスクブランクを提供できる。
本発明によれば、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下であるフォトマスクを作製できるレジスト膜付マスクブランクを提供できる。
本発明によれば、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下であって、フォトマスク全体のCD均一性(Global CD Uniformity)が60nm以下のフォトマスクを作製できるレジスト膜付マスクブランクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】CAPコーター等に特有の塗布ムラであるスモールラインムラを示す写真である。
図2】スモールラインムラを説明するための模式図である。
図3】接液工程およびその前後の工程におけるプロセスのフローを説明するための図である。
図4】本発明の一態様に係る内部にレジスト塗布装置が設置されたクリーンブース内の気流制御を説明するための模式図である。
図5】天井からのダウンフローが整流板に当たり四方に散らばりその一部が塗布ノズルに流れ込む様子を説明するための模式図である。
図6】本発明の一態様に係るレジスト塗布装置における塗布ノズル周辺および塗布ノズル近辺の気流を説明するための模式図である。
図7】本発明の一態様に係るレジスト塗布装置において、気流を遮る手段を説明するための模式図である。
図8】実施例3に係るスモールラインムラ(微小な線状ムラ)に対応する箇所の膜厚のバラつきを示す折れ線グラフである。
図9】比較例3に係るスモールラインムラに対応する箇所の膜厚のバラつきを示す折れ線グラフである。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のレジスト膜付マスクブランクの製造方法は、一方向に伸びるレジスト剤供給口を有する塗布ノズルから液体状のレジスト剤を吐出させつつ、前記一方向に交差する方向へ前記塗布ノズル及び基板の被塗布面を相対的に走査させて、前記被塗布面に前記レジスト剤を塗布するレジスト剤塗布工程を有するレジスト膜付マスクブランクの製造方法であって、
前記基板は、矩形状の透明基板上にパターン形成用薄膜が形成された基板であって、
少なくとも、塗布ノズルから吐出させたレジスト剤を前記パターン形成用薄膜が形成された側の前記基板の被塗布面に接液させる接液工程における一部の工程又は全部の工程において、
少なくとも、前記塗布ノズル周辺の気流を前記接液工程に適した状態に制御することを特徴とする(構成1)。
【0018】
本発明では、前記塗布ノズル周辺の気流を前記接液工程に適した状態に制御して(意図的に変化させて、意図的に低減して)接液を行うことによって、気流の制御を行わない場合に比べ、スモールラインムラを低減できる。
気流の制御は、スモールラインムラを効果的に低減できるように行う。
本発明では、所定の気流制御によって、スモールラインムラの程度の改善(低減)と、スモールラインムラの発生率の改善(低減)が達成できる。
また、本発明では、所定の気流制御によって、スモールラインムラの程度の改善(低減)とスモールラインムラの発生率の改善(低減)されることにより、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性が良好(具体的には、30nm以下)なフォトマスクが得られるレジスト膜付マスクブランクが提供できる。そしてさらに、局所的な領域におけるCD均一性が良好であることに起因して、フォトマスク全体のCD均一性が良好(具体的には、60nm以下)なフォトマスクが得られるレジスト膜付マスクブランクが提供できる。
本発明では、基板にレジスト剤を塗布する毎に、常に一定の安定した気流状態を確実に再現できるような気流制御手段を採用することが好ましい。
【0019】
本発明では、少なくとも、塗布ノズル周辺の気流について、所定の気流制御(調整)を行う。
塗布ノズル周辺およびその周辺とは、例えば、図6に示すように、「塗布ノズル周辺
」は、ノズルタンク1bの上面部、塗布ノズル1aの先端部、塗布ノズル1a先端部と前記基板10の被塗布面との間、塗布ノズル1a周辺6であり、「塗布ノズル周辺」の周辺は、前記「塗布ノズル周辺」のそれぞれの周辺、例えば周辺7である。
塗布ノズル近辺およびその周辺とは、例えば、図6に示すように、整流板2と吸着板3の吸着部3bとの間の空間が塗布ノズル近辺5であり、整流板2と吸着板3の羽3aとの間の空間が「塗布ノズル近辺」の周辺4である。
【0020】
本発明では、レジスト剤塗布工程中の下記(1)、(2)および(3)の各期間(以下適宜、所定の制御期間と称す)において、所定の気流制御を行う態様が含まれる。これらの場合、塗布ノズル周辺の気流を所定の制御期間に適した状態に制御する。
(1)本発明では、前記接液工程における一部の工程又は全部の工程において、所定の気流制御を行う態様が含まれる。
本発明では、「接液工程における一部の工程」を含む工程又は「接液工程における全部の工程」を含む工程において、所定の気流制御を行ってもよい。気流制御の際に、気流の変化に要する時間、および気流の安定に要する時間等を考慮し、気流制御を行う工程の前後に時間的な余裕を持たせる必要がある場合がある。
(2)本発明では、少なくとも塗布開始から一定の時間、所定の気流制御を行う態様が含まれる。
塗布開始から一定の時間は、塗布工程(塗布進行)の初期であって、スモールラインムラが生じる時間である。この時間より長い時間とすることで、時間的な余裕を持たせることも可能である。基板サイズなどによるので一概に言えないが、塗布開始から一定の時間は、例えば、塗布開始から180秒以内、好ましくは120秒以内、さらに好ましくは60秒以内、より好ましくは30秒以内である。
(3)本発明では、前記接液工程から、塗布開始後の前記一定の時間までの間、所定の気流制御を行う態様が含まれる。
【0021】
本発明では、接液工程の後に塗布工程(塗布進行工程)が開始される。被塗布面へのレジスト剤の塗布時および塗布後では、例えば乾燥に適した気流制御を行うことが好ましい。例えば、塗布開始(または塗布開始から一定の時間を経過した後)から塗布終了までは、レジスト剤をむらなく乾燥させるために適した気流制御を行うことが好ましい。
本発明では、待機時等は例えばクリーンブースまたはクリーンルームの作用機能の十分な発揮に適した気流制御を行うことが好ましい。
本発明では、所定の気流制御を行う所定の制御期間を除く工程、例えば、塗布開始(または塗布開始から一定の時間を経過した後)から塗布終了までの工程と、次の接液工程が行われるまでの工程(例えば待機時等の工程)と、において、同じ気流制御(例えば、乾燥に適した気流制御や、クリーンブースまたはクリーンルームの作用機能の十分な発揮に適した気流制御)を行うことができる。これによると、気流の制御が容易である。
【0022】
図3は、接液工程(その準備工程を含む)から塗布工程(塗布の開始、進行、終了を含む)までの塗布(コーティング)プロセスのフロー(工程)を示す。
図3に示すように、塗布プロセスは、転写パターン形成用薄膜が形成されたガラス基板の吸着(転写パターン形成用薄膜が形成されてない側のガラス基板を吸着する)、ノズルタンク上面のシャッターオープン、塗布ノズルを所定の高さ位置まで移動、塗布ノズルの先端部とガラス基板主表面までの距離測定、接液開始、塗布開始、塗布終了の順に進む。
このうち、ノズルタンク上面のシャッターオープンから塗布開始までが接液工程(全工程)である。所定の気流制御は、接液工程の一部で行う場合は、例えば、(1)「接液開始(特に接液の瞬間)」またはその前後に時間的な余裕を持たせた期間、(2)「接液開始から塗布開始まで」またはその前後に時間的な余裕を持たせた期間、で実施できる。
塗布開始(または塗布開始から一定の時間を経過した後)から塗布終了まで(または塗布終了から一定の時間を経過したときまで)はクリーンブースやクリーンルーム内のダウンフロー(通常は常時オンである。)の気流による乾燥ムラによるレジスト膜の膜厚ムラを防止するために、塗布面と整流板との間に清浄気体を導入するためのFFU(例えば水平フロー)はオン(作動状態)とするのが好ましい(図3)。塗布面と整流板との間に清浄気体を導入するためのFFU(例えば水平フロー)は、塗布終了後や、ガラス基板の吸着からノズルタンク上面のシャッターオープン直前まで、の期間において、オン(作動状態)としてもよい。これらの場合において、クリーンブースやクリーンルーム内のダウンフローは、通常は常時オンとする。
【0023】
本発明では、例えば、前記所定の制御期間を除く時間における塗布ノズル周辺の気流の状態である気流の動線、気流の流速、および気流の流量に対し、前記所定の制御期間における塗布ノズル周辺の気流の状態である気流の動線、気流の流速、および気流の流量を、変更、変化、または低減、して接液および塗布を行う態様が含まれる。
気流を変化させる手段は、気流の向きを変える手段、気流の供給量を変える手段、気流の動線(軌跡)を変える手段、気流を遮る手段(シャッター、カーテン等)、気流を吸引する手段、気流を排気する手段、気流を塗布装置から遠ざける手段、等がある。
気流を変化させる手段は、基板の移動、塗布ノズルの動作などの塗布装置の動作は除かれる。
【0024】
本発明では、 気流を遮る手段によって、前記塗布ノズル周辺の気流を前記接液工程に適した状態に制御する態様が含まれる(構成2)。この方法は、簡便な手段である。
上記構成によって、気流の制御を行わない場合に比べ、スモールラインムラを低減できる。
例えば、前記接液工程中に、塗布ノズル近辺に可動式のシャッターを設けることによって、塗布ノズル周辺の気流(状態、動線、流速、流量)を制御(変更、変化、低減)する。
より具体的には、例えば、天井FFU(Fun filter unit)からのダウンフローが整流板ぶつかり塗布ノズル方向に流れる風を、図7に示すように、塗布ノズル部1と整流板2との間(塗布ノズル1aに対し塗布進行方向の側の位置)に可動式のシャッター13を設置し風を遮る方法が例示される。シャッターの代わりに、カーテン等で気流を遮ることも可能である。
本発明では、構成2と、後述する構成3や構成4とを組み合わせて実施できる。本発明では、構成2、構成3、構成4は、任意に組み合わせて実施できる。
【0025】
本発明には、例えば、接液時に、整流板2の上方、または整流板2と吸着板3の双方の上方を、遮蔽手段で覆う態様が含まれる(図4参照)。
本発明には、例えば、接液時に、整流板2が、吸着板3にぶつからないように水平方向に移動しつつ上昇し、吸着板3を一部覆う位置、または吸着板3の羽3aと一部重なる位置に移動させ、塗布ノズル周辺の気流を制御する態様が含まれる。塗布のときは整流板2は元の位置に戻す(図4参照)。
【0026】
本発明では、内部にレジスト塗布装置が設置されたクリーンブース(Clean booth)またはクリーンルームにおいて、気流を吸引する手段、気流をクリーンブース外またはクリーンルーム外に排出する手段、または、気流をクリーンブース外またはクリーンルーム外に逃がす手段のうち少なくとも一つの手段によって、前記塗布ノズル周辺の気流を前記接液工程に適した状態に制御する態様が含まれる(構成3)。
上記構成によって、気流の制御を行わない場合に比べ、スモールラインムラを低減できる。
上記手法によれば、例えば、ダウンフローを利用しつつ、塗布ノズル周辺のみ「川の淀み」のような状態を作り出すことができる。この場合、クリーンブース内の陽圧(与圧)は保たれる。
【0027】
気流を吸引する手段は、例えば、気流を吸引する装置で実施できる。気流を吸引する装置の吸引口等は、クリーンブース内部またはクリーンルーム内部や、クリーンブースの外周カーテンまたは外壁パネルや、クリーンルームの壁面に設置できる。
【0028】
気流をクリーンブース外またはクリーンルーム外に排出する手段は、例えば、換気扇、排気ダクト、などの気流を排気する設置で実施できる。排気ダクトなどの排気口等は、クリーンブース内部またはクリーンルーム内部や、クリーンブースの外周カーテンまたは外壁パネルや、クリーンルームの壁面に設置できる。換気扇は、クリーンブースの外周カーテンまたは外壁パネルや、クリーンルームの壁面に設置できる。
【0029】
気流をクリーンブース外またはクリーンルーム外に逃がす手段は、例えば、クリーンブースの外周カーテンをまくり上げることで実施できる。
また、気流をクリーンブース外またはクリーンルーム外に逃がす手段は、例えば、クリーンブースの外周カーテンまたは外壁パネルにおいて、整流板に近い部分に、適度な高さ位置に、適度な大きさで開閉可能な開口を設け、この開口を接液工程時等に開き、気流を外に逃がすことで実施できる。
外周カーテンをまくり上げる箇所、および、開閉可能な開口を設ける箇所は、例えば、図4中の外周カーテンまたは外壁パネルにおける整流板2に近い箇所であって、図4中の手前側、奧側、右側の3方の箇所で実施できる。この場合、3方の箇所のうちのいずれか1箇所または複数箇所で実施できる。例えば、手前側のみ、奧側のみ、右側のみ、で実施できる。
外周カーテンをまくり上げる高さ位置、および、開閉可能な開口を設ける高さ位置は、適度な高さ位置(例えば整流板2の高さ位置を含む位置から下方側に亘る位置)とする。また、開閉可能な開口は、適度な大きさとする。
【0030】
本発明では、レジスト塗布装置がクリーンブースまたはクリーンルームに設置されており、クリーンブース内またはクリーンルーム内に供給する気流の供給量を変える手段によって、前記塗布ノズル周辺の気流を前記接液工程に適した状態に制御する態様が含まれる(構成4)。
例えば、図4に示す内部にレジスト塗布装置が設置されたクリーンブース20において、整流板2の上方に位置するFFUユニット21の一部、または、FFUユニット21の全部を接液工程中に停止し気流を止めることにより、塗布ノズル周辺の気流を前記接液工程に適した状態に制御する。
上記構成によって、気流の制御を行わない場合に比べ、スモールラインムラを低減できる。
FFUユニットによる送風を停止するだけで無く、FFUユニットによる送風を弱くする方法も適用できる。この場合、クリーンブース内の陽圧は保たれる。
図4に示すクリーンブース20では、FFUユニット21は、クリーンブース20の天井の全面に設置されている。本発明ではこれに限らず、天井の一部にFFUユニットが設置されている場合であっても適用できる。本発明ではFFUユニットに限らず、公知の給気(サプライエア)手段を適用できる。
なお、本発明は、例えば、水平フロータイプ等のクリーンルーム等を採用する場合においても適用できなくはないが、気流の制御が複雑になる。
【0031】
本発明においては、クリーンブースやクリーンルーム内のダウンフローは、通常は常時オン(供給量も通常一定)とする。上記構成4において所定の気流制御を行う所定の期間中は例外である。本発明では、構成4と、前述する構成2や構成3とを組み合わせて実施できる。
【0032】
本発明では、クリーンブースは、装置周辺の気流を安定させる観点、装置周辺の気流を制御する観点、クリーンブース外部の影響受けないようにする観点、から使用することが好ましい。
本発明は、簡易クリーンブース、簡易クリーンルームや塗布装置専用の部屋を使用する場合についても適用可能である。
垂直層流(ダウンフロー)方式は、天井全面(例えばクリーンルームの天井30全面やクリーンブース20の天井23全面)にFFUを設置し、天井から床面へ垂直方向に清浄空気(例えば31や22)を流し、床面全面(例えば32)で吸込み循環する(図4参照)。室内で発生した塵埃・粒子は床面で回収・除塵して、再循環される。 温度・湿度・クリーン度が均一に分布しやすい。FFUでは、例えば、HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air filter)が使用される。
【0033】
本発明には、例えば、接液時に、整流板2を下方に下げ(例えば架台11の位置まで下げ)、塗布ノズル部1周辺の気流を制御する態様が含まれる。塗布工程のときは、整流板2は元の位置まで上昇させる(図4参照)。
本発明には、例えば、接液時に、整流板2における塗布ノズル部1とは反対側の辺(図4中右側の辺)を下降させ、整流板2を傾け(図4中右肩下がりとなるよう傾け)、塗布ノズル1部周辺の気流を制御する態様が含まれる。塗布工程のときは、整流板2は元の位置に戻す(図4参照)。
本発明においては、例えば、接液時に、整流板2が小さく畳める(面積を小さくできる)ような構成を有する態様が含まれる。塗布工程のときは、整流板は元の大きさに戻す(図4参照)。
本発明には、例えば、整流板2に開閉自在の開口を設け、接液工程中に、整流板2に開口が開き、風が抜けるようにする態様が含まれる。塗布工程のときは整流板2の開口は閉じられる(図4参照)。
【0034】
(1)本発明では気流制御することによって、スモールラインムラの程度(レベル)を低減できる。スモールラインムラは、濃い、薄い、極薄い、目視で観察されない、の各レベルがある。
(2)本発明では気流制御することによって、スモールラインムラの程度(スモールラインムラ発生位置における膜厚バラつき)を低減できる。これにより、所定の規格を満たすフォトマスクの取得率を向上できる。
(3)本発明では気流制御することによって、スモールラインムラが目視で観察されない基板が得られるという従来にない極めて顕著な効果が得られる。
(4)本発明では、気流制御することによって、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下であるフォトマスクを作製できるレジスト膜付マスクブランクが得られる。
(5)本発明では、気流を制御することによって、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下であって、フォトマスク全体のCD均一性(Global CD Uniformity)が60nm以下のフォトマスクを作製できるレジスト膜付マスクブランクが得られる。
なお、従来、大型基板のレジスト膜に埃がわずかに付着しても製品不良となるため、塗布装置上方からのダウンフローは必須と考えられていた。また、従来、接液には一定の時間が必要であり、接液時はレジスト剤が塗布ノズル先端に吐出(停滞)した状態で時間経過が避けがたい。このため、レジスト剤は時間経過で溶剤揮発により粘度ムラ(乾燥ムラ)生じることは避けがたいのでスモールラインムラを完全になくすことは困難であると考えられていた。
【0035】
本発明においては、塗布ノズル周辺およびその周辺の流速は、0.25m/秒以下であることが好ましく、より好ましくは、0.2m/秒以下、0.15m/秒以下、0.12m/秒以下、0.1m/秒以下、0.05m/秒以下、である。塗布ノズル周辺およびその周辺の意味に関しては、前述した内容と同様である。
本発明においては、塗布ノズル近辺およびその周辺の流速は、0.25m/秒以下であることが好ましく、より好ましくは、0.2m/秒以下、0.15m/秒以下、0.12m/秒以下、0.1m/秒以下、0.05m/秒以下、である。塗布ノズル近辺およびその周辺の意味に関しては、前述した内容と同様である。
本発明においては、架台と整流板および吸着板との間の流速は、0.25m/秒以下であることが好ましく、より好ましくは、0.2m/秒以下、0.15m/秒以下、0.12m/秒以下、0.1m/秒以下、0.05m/秒以下、である。
流速は、風量計、フローセンサ等で測定できる。
【0036】
本発明においては、例えば、所定の気流制御によって、塗布ノズル周辺を、無風状態とする、あるいは、微風状態とすることが好ましい。接液工程中、特に接液時(接液の瞬間)の気流の影響を最小限にできる。特に接液の瞬間は、気流の影響によって接液の状態(例えば接液の面積(幅)や位置など)に影響を与えると考えられる。塗布ノズル近辺についても同様に、無風状態とする、あるいは、微風状態とすることが好ましい。
塗布ノズル周辺を、無風状態とする、あるいは、微風状態とすることによって、例えば、スモールラインムラに関し、最も厳しい規格を超える規格を満たすことが可能となる。また、スモールラインムラが目視で観察されない基板の製造が可能となる。
無風状態や微風状態は、例えば、純水の噴霧煙等で確認できる。これについては後述する。また、無風状態は、風量計や、フローセンサの検出限界以下の状態が含まれる。
【0037】
気流の速度や方向は、液体窒素の昇華ガスや、純水の水蒸気、純水の噴霧煙、軽い繊維状の紐、などで可視化できる。これらは、クリーンブース等の環境に悪影響を与えない。液体窒素の昇華ガスは、(1)棒の先に布を付けて液体窒素に浸し昇華ガスを出させる方法や、(2)棒の先にドライアイスを布で包み固定させ昇華ガスを出させる方法で発生させる。上記の棒をクリーンブース内部の色々な箇所にかざして昇華ガスの流れの状態を見る。昇華ガスが上昇を続ける場合は無風状態である。昇華ガスが上昇しつついずれかの方向に流れる場合は微風状態である。昇華ガスが拡散して見えない場合は、微風状態を超える気流の速度がある状態である。軽い繊維状の紐は、紐がなびく方向で気流の方向がわかる。軽い繊維状の紐は、紐の動きの程度(違い)で気流の速度の程度(違い)がわかる。
【0038】
本発明は、一方向に伸びるレジスト剤供給口を有する塗布ノズルから液体状のレジスト剤を吐出させつつ、前記一方向に交差する方向へ前記塗布ノズル及び基板の被塗布面を相対的に走査させて、前記被塗布面に前記レジスト剤を塗布するスリットコータと通称される塗布装置を用いる場合に適用できる。スリットコータにおける、塗布ノズルと基板の位置関係は、特に制限されず、床面に対し水平に保持された基板の上方に塗布ノズルが設けられた態様や、塗布ノズルと基板の双方が床面に対し垂直に保持された態様などが含まれる。
【0039】
本発明は、「CAPコーター」と通称される塗布装置を用いる場合に好適に適用できる(構成5)。
【0040】
図4に示す「CAPコーター」と通称される塗布装置は、吸着板3に基板10を吸着し、図中右方向に吸着板3及び基板10を移動させながら、塗布ノズル部1の塗布ノズル1a(図示略)によって基板10の被塗布面にレジスト剤の塗布を行ってレジスト剤の塗布膜を形成する。
「CAPコーター」装置では、まず、基板10におけるレジスト剤の塗布開始箇所と、塗布ノズル1aの上端部と、の位置合わせを行う(図4は位置合わせ後の状態を示す)。基板10におけるレジスト剤の塗布開始箇所は、この基板10の一側縁部である。
図4に示すレジスト塗布装置では、塗布されたレジスト剤の塗布面に対向して整流板2を設けている。整流板2は、塗布されたレジスト剤の塗布面に対して一定間隔で水平に設けている。また、整流板2は、図4および図5に示すように、基板10及び吸着板3の本体および吸着部3bを少なくとも覆うサイズにしてある。整流板2は、吸着板3の本体、吸着部3bおよび羽3a、3a’を覆うサイズにすることができる。整流板2は、塗布ノズル1aを収容するノズルタンク1bと隣接して隙間なく設けられている(図7参照)。これにより、下方からの上昇流が基板や塗布ノズルに当たることを低減できる。
【0041】
図4に示すクリーンブース20は、クリーンルーム内に設置できる。クリーンブース20の天井からのダウンフロー、および、クリーンルームの天井30からのダウンフロー31は、天井全面からの垂直層流(ダウンフロー)方式が好ましい。
本発明では、例えば、基板の移動エリアをカバーするサイズ、例えば、整流板2と吸着板3(羽3a、3a’を含む)を合わせたサイズ、の架台を設けることが好ましい(図5および図4参照)。架台が無い場合に比べ、下方からの上昇流が基板や塗布ノズルに当たることを低減できる。
尚、基板10と塗布ノズル1aとの相対走査速度は、予め設定されている塗布ノズル間隔、レジスト剤の粘度、液面高さ及び塗布ギャップGを前提として、塗布膜が所望の膜厚となるように、制御部によって制御される。
【0042】
本発明のフォトマスクの製造方法は、上記本発明に係るマスクブランクの製造方法によって得られたマスクブランクを用いてフォトマスクを製造することを特徴とする(構成6)。
【0043】
本発明において、マスクブランクとしては、バイナリーマスク、グレートーンマスク(階調マスク)、位相シフトマスク、反射型マスク、インプリント用転写プレート基板などの作製に用いるマスクブランクが挙げられる。
これらのマスクブランクに形成されるパターン形成用薄膜は、露光光を遮断(遮光)する遮光膜、露光光やマスク作製の描画工程で使用するレーザー等の描画光に対しての反射率を低減する反射率低減膜(反射防止膜)、露光光の透過率を調整する機能を有する透過膜や半透過膜、露光光の位相差を調整する機能を有する位相シフト膜、露光光を吸収する機能を有する吸収体膜、露光光を反射する機能を有する反射膜、透明基板や下層をエッチングしてパターニングする際にマスク機能を有するエッチングマスク膜が挙げられる。
【0044】
本発明では、FPD用のマスクブランク及びマスクが含まれる。
本発明において、FPD(フラットパネルディスプレイ)などの表示装置(表示デバイス)としては、液晶表示装置、プラズマ表示装置、EL表示装置、有機EL表示装置、LED表示装置、DMD表示装置、OLED表示装置が代表的なものである。
OLED(Organic Light Emitting Diode/有機発光ダイオード)は、発光ダイオードの一種で、発光材料に有機化合物を用いるものである。有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)と呼ばれる現象を応用した発光素子の一種である。最先端品の1つである。
【0045】
本発明のレジスト膜付マスクブランクは、矩形状の透明基板上にパターン形成用薄膜と、レジスト膜がこの順に形成されたレジスト膜付マスクブランクにおいて、前記レジスト膜の膜厚分布は異方性を有し、且つ、前記基板端面のうち一つの辺から対応する辺に向かって延びる線状ムラを有しており、前記線状ムラは、該線状ムラが延びる方向に対して垂直な方向に光干渉式のレジスト膜厚測定機を用いて、5mmピッチで前記レジスト膜の膜厚を測定した時に、隣り合う測定点での前記レジスト膜厚の差が0オングストローム超30オングストローム以下であることを特徴とする(構成7)。
線状ムラに関し、レジスト膜厚の測定は、例えば、基板の一端から他端までの全域、またはその一部の区域で行う。例えば、図2に示す測定点(測定ライン)に沿って基板の一端から他端までの全域、または一部の区域で行う。
なお、レジスト膜の膜厚分布の異方性は、基板面内のレジスト膜の膜厚を複数ポイントで測定した時に、複数ポイントで測定した複数の測定値から算出されるレジスト膜厚の平均値に対する各測定ポイントにおけるレジスト膜厚の差で示される膜厚分布が、異方性を有している状態をいう。異方性に関し、レジスト膜厚の測定は、例えば、基板面内の全域または一部の領域について行う。その際、基板面内で均等に複数ポイントで測定を行う。
レジスト膜の膜厚分布が、レジスト膜の面内方向と垂直な軸に回転した時に、その膜厚分布が変化しない、又は、ほぼ変化しない等方性を有する状態は、異方性の状態と区別される。すなわち、レジスト膜をスピンコーターのみの方法により塗布・形成されたレジスト膜の膜厚分布は等方性の状態となり、本発明が有する異方性の状態と区別される。
レジスト膜の膜厚分布の異方性は、例えば、基板の長辺方向、短辺方向、対角方向、基板の中心軸回りの回転方向に対して生じる。
上記構成によれば、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下であるフォトマスクを作製できるレジスト膜付マスクブランクが得られる。そして、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下であって、かつ、フォトマスク全体のCD均一性(Global CD Uniformity)も60nm以下のフォトマスクが作製できるレジスト膜付マスクブランクが得られる。そして、このレジスト膜付マスクブランクを使用して作製されたフォトマスクを用いて、表示パネルにパターン転写を行い、表示パネルを作製した場合には、微細なパターンが配列されたパネル上の目視検査で表示ムラとして認識されない。
【0046】
本発明のレジスト膜付マスクブランクは、線状ムラが延びる方向に対して垂直な方向に光干渉式のレジスト膜厚測定機を用いて、5mmピッチで前記レジスト膜の膜厚を測定した時に、隣り合う測定点での前記レジスト膜厚の差が0オングストローム超20オングストローム以下であることが好ましい。これにより、スモールラインムラが目視で観察されないレジスト膜付マスクブランクが得られる。スモールラインムラが目視で観察されない場合であっても、CAPコーター等に特有の塗布ムラである山と谷が連なる膜厚バラつきは存在している。スピンコーターでは、このような山と谷が連なる膜厚バラつきは生じない。
【0047】
本発明の透明基板は、露光光に対して透明(例えば、透過率が90%以上)であれば、材料は限定されない。透明基板の材料としては、ガラス基板、結晶化ガラス基板を使用することができる。これらの基板材料としては、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラスや、低熱膨張のSiO-TiOガラスなどが挙げられる。
透明基板のサイズは特に限定されないが、FPD用のマスクブランクの場合、短辺の長さが330mm以上の透明基板を使用することができる。なお、透明基板の短辺の長さが850mm以上の場合に本発明の効果を最大限に発揮することができる。
また、本発明の透明基板の形状は矩形形状であって、パターン形成用薄膜が形成される主表面と、該主表面に対して対向して設けられた裏面と、前記主表面及び前記裏面と直交し、互いに対向して設けられた二組の側面と、前記主表面及び前記裏面と、側面とによって挟まれた面取面によって透明基板は構成される。基板端面は、前記側面と前記面取面を含む面をいう。
【0048】
また、パターン形成用薄膜は、前述で説明したとおりである。
本発明のレジスト膜付マスクブランクの線状ムラは、光干渉式のレジスト膜厚測定機を用いて、5mmピッチでレジスト膜の膜厚を測定した時に、隣り合う3つの測定点でのレジスト膜厚における最大値と最小値との差が0オングストローム超30オングストローム以下とすることが好ましい(構成8)。
これにより、Local CD Uniformity及びGlobal CD Uniformityが更に改善されたフォトマスクを作製できるレジスト膜付マスクブランクが得られる。
本発明の効果を発揮するレジスト膜付マスクブランクにおける線状ムラの状態を的確に把握するために、線状ムラは、前記線状ムラが生じる側の前記基板端面から100mm内側の位置で測定されたものとすることを特徴とする(構成9)。
また、本発明のレジスト膜付マスクブランクは、レジスト膜の膜厚の最大値と最小値の差(面内膜厚均一性)が200オングストローム以下であることを特徴とする(構成10)。これにより、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下であって、かつ、フォトマスク全体のCD均一性(Global CD Uniformity)も60nm以下のフォトマスクを高い収率で得ることができるレジスト膜付マスクブランクが提供できる。そして、このレジスト膜付マスクブランクを使用して作製されたフォトマスクを用いて、表示パネルにパターン転写を行い、表示パネルを作製した場合には、微細なパターンが配列されたパネル上の目視検査で表示ムラとして認識されない。
【0049】
また、本発明のレジスト膜付マスクブランクのパターン形成用薄膜は、レーザー描画波長における反射率が10%以下であることにより、フォトマスクの外周領域に配置される微細パターン(微細部)の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity)が30nm以下であって、かつ、フォトマスク全体のCD均一性(Global CD Uniformity)も60nm以下のフォトマスクをさらに、高い収率で得られるレジスト膜付マスクブランクが提供できる。
また、本発明のレジスト膜付マスクブランクは、矩形状の透明基板の短辺の長さが850mm以上であることを特徴とする(構成12)。本発明の効果は、透明基板の短辺の長さが850mm以上の場合に、最も効果が発揮できる。
なお、本発明のレジスト膜付マスクブランクは、本発明のレジスト膜付マスクブランクの製造方法によって製造することができる。
【0050】
本発明において、CAPコーター等に特有の塗布ムラであるスモールラインムラの測定は、例えば、光干渉式反射率測定機を用いて行う。例えば、FPD用自動膜厚測定装置(Nanospec6500:ナノメトリックス社製)が使用できる。
スモールラインムラの評価は、例えば、塗布方向に対し垂直方向に連続してレジスト膜厚を測定し、測定データから膜厚バラつきの評価を行う。
測定位置は、塗布開始側の基板の端から一定の位置(スモールラインムラの発生する位置、例えば基板の端から100mmの位置)である(図2参照)。
測定間隔は、1mmピッチ、5mmピッチ、10mmピッチなどである。
例えば、ある測定点でのレジスト膜厚からその隣の測定点でのレジスト膜厚を引いた値(差)の絶対値を算出する。これを2ポイントと称する。すなわち、測定点がx、x、x、x、x・・・xの場合、X=|x-x|、X=|x-x|、X=|x-x|、・・・Xn-1=|x-xn-1|を算出し、X、X、・・・、Xn-1を順次プロットしたのが2ポイントの図の折れ線グラフである。
また、互いに隣り合う3つの測定点でのレジスト膜厚における最大値と最小値の差を算出する。これを3ポイントと称する。すなわち、測定点がx、x、x、x、x・・・xの場合、X=|max(x、x、x)-min(x、x、x)|、X=|max(x、x、x)-min(x、x、x)|、・・・Xn-2=|max(xn-2、xn-1、x)-min(xn-2、xn-1、x)|を算出し、X、X、・・・、Xn-2を順次プロットしたのが3ポイントの折れ線グラフである。
さらに、上述の規則に従って、互いに隣り合うN個の測定点でのレジスト膜厚における最大値と最小値の差を算出する。これをNポイントと称する。これを順次プロットしたのがNポイントの折れ線グラフである。Nは自然数である。
ポイント数は、上述の2ポイント、3ポイントの他に、例えば、5ポイント、10ポイント、20ポイント、30ポイント、40ポイントなどである。ポイント数が多いほど、レジスト膜厚の最大値と最初値の差は大きくなり、厳しい規格となる。
【0051】
本発明のレジスト膜付ブランクは、最先端品の規格に対応可能である。例えば、最先端品(例えばOLEDなど)では、基板のサイド(外周部)(例えば図2の左端部分)に微細な回路が作り込まれる。この微細部(狭いエリア)のCD均一性は30nm以下と厳しい規格なので問題となる。本発明はこの規格をクリアできる。
【0052】
以下、実施例について説明する。
(実施例1および比較例1)
上述した図4図6に示す構成を有するレジスト塗布装置を使用し、マスクブランクのパターン形成用薄膜上にレジスト剤を塗布し、乾燥して、レジスト膜付マスクブランクを作製した。
その際、塗布ノズルの昇降時間(ノズルの昇降開始からノズル先端が接液高さに到達するまでの時間)は3秒とし極限まで短くした(対策1)。また、塗布ノズル1aを収容するノズルタンク1bと整流板2との隙間は埋めた(図7参照)(対策2)。
塗布の条件は、5300オングストロームのレジスト膜を形成するための、液面高さ、塗布ギャップ、搬送速度等を設定した。
また、乾燥の条件は、基板を一定速度で移動させ塗布を行いつつ、前記塗布面と整流板との間に塗布面と平行に清浄気体が流れ、乾燥ムラが生じないように調整した。
マスクブランクとしては、ガラス基板上に、転写パターン形成用薄膜であるクロムと窒素を含む遮光層と、クロムと酸素を含む反射防止層が積層された遮光膜を有する基板を使用した。なお、前記反射防止層は、レーザー描画波長における反射率が10%以下になるように膜厚と組成が調整されている。サイズは、大型ガラス基板(合成石英ガラス(QZ)13mm厚、サイズ1220mm×1400mm)と、大型ガラス基板(合成石英ガラス(QZ)10mm厚、850mm×1200mm)の2種類とした。
レジスト塗布装置は、クリーンルーム内に設置し、レジスト塗布装置を個別に囲うクリーンブースは設けなかった。
【0053】
(気流制御手段および気流制御のタイミング)
実施例1では、図7に示すように、塗布ノズル1aと整流板2との間(塗布ノズルに対し塗布進行方向の側の位置)に可動式のシャッター13を設置し風を遮る手段で気流制御した。気流制御のタイミングは、接液工程における全部の工程とした。
比較例1では、実施例1において、気流制御を実施しなかった。
【0054】
(効果)
上記で得られたレジスト膜付マスクブランクについて、塗布・乾燥されたレジスト膜のスモールラインムラ(微小の線状ムラ)を評価した。その結果、実施例1では、いずれのサイズの基板についても、図1および図2に示すようなスモールラインムラは、気流制御しない場合(比較例1)に比べ相対的に薄くなった。
スモールラインムラ(微小の線状ムラ)に対応する箇所(基板端面から100mm内側の位置)(基板端面(辺)から基板端面(辺)と平行に(基板端面(辺)に対し垂直方向に)100mm内側の位置)(図2参照)における測定ポイント(測定ライン)上で基板端面から20mmを除く範囲(図2参照)の膜厚バラツキをFPD用自動膜厚測定装置(Nanospc6500:ナノメトリックス社製)で測定した。その結果を図8に示す。図8(1)は、測定間隔5mmピッチ、3ポイント、図8(2)は、測定間隔5mmピッチ、2ポイントである。図8の横軸の数値は10分の1で、「120」は1200mmを示す。
スモールラインムラ(微小の線状ムラ)に対応する箇所(基板端面から100mm内側の位置)の膜厚バラツキは、測定間隔5mmピッチ、2ポイント、及び測定間隔5mmピッチ、3ポイントともに17オングストロームであった。
比較例1では、実施例1において、気流制御を実施しなかった。測定結果(比較例1)を図9に示す。図9(1)は測定間隔5mmピッチ、3ポイント、図9(2)は、測定間隔5mmピッチ、2ポイントである。
スモールラインムラに対応する箇所の膜厚バラツキは、測定間隔5mmピッチ、2ポイントでは48オングストローム、測定間隔5mmピッチ、3ポイントでは50オングストロームであった。
また、実施例1のレジスト膜付マスクブランクにおけるレジスト膜の面内膜厚均一性(基板端(各辺)から20mm内側の領域(図2の点線の内側の領域)、11×11=121点におけるレジスト膜の最大膜厚と最小膜厚の差)は、170オングストロームと良好であった。一方、比較例1のレジスト膜の面内膜厚均一性は、301オングストロームであった。
【0055】
さらに、上記で得られた実施例1のレジスト膜付マスクブランクを使用し、パターン線幅が1.8μmのラインアンドスペースパターンを有するフォトマスクを作製した。フォトマスクの作製は、上記レジスト膜付マスクブランクに対してレーザー描画装置による描画と現像処理して、レジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクにして、クロム・エッチング液でウェットエッチングすることにより遮光膜パターンを形成した。最後にレジストパターンをレジスト剥離液により剥離して、フォトマスクを得た。この得られたフォトマスクについてCD均一性を評価した。
フォトマスク全体のCD均一性(Global CD Uniformity=GCDU)は、基板端(各辺)から50mm内側の領域について、15×16=240ポイントを測定して評価した。また、基板外周領域の局所的な領域におけるCD均一性(Local CD Uniformity=LCDU)は、基板端より100mm内側の位置における測定ポイント(測定ライン)(図2参照)上の領域の50mm×50mm領域(例えば基板端より50mmから100mmまでの領域)について、18箇所を測定して評価した。
その結果、GCDUは60nm、LCDUは30nmとなり、CD均一性が良好なフォトマスクが得られた。目視によるムラを観察したが異常は確認できなかった。
この得られたフォトマスクを用いてOLED用の表示パネルを作製したが、レジスト膜付マスクブランクのスモールラインムラに起因する表示ムラ等の異常は確認できなかった。
一方、比較例1のレジスト膜付マスクブランクを使用して得られたフォトマスクについては、GCDUは100nmを超え、LCDUも50nmを超える結果となった。目視によるムラを観察したが、外周領域に形成された微細パターン(微細部)において、ムラが数か所確認された。このため、比較例1のフォトマスクを使用してOLED用表示パネルを作製した場合、レジスト膜付マスクブランクのスモールラインムラに起因する表示ムラ等の異常が発生する。
【0056】
(実施例2および比較例2)
実施例2では、実施例1において、気流制御手段および気流制御のタイミングを変更した。実施例2では、実施例1の可動式のシャッター13は設置しなかった。実施例2では、レジスト塗布装置は、クリーンルーム内に設置し、さらに、レジスト塗布装置を個別に囲うクリーンブースを設けた。クリーンブースの天井全面にFFU(Fun filter unit)を設置した。実施例2では、クリーンブースの天井からのダウンフローを接液時にクリーンブースの外に逃がすことによって、天井からのダウンフローが整流板に極力当たらないようにする手段で気流制御した。詳しくは、図4中の右半分側であって手前側、奧側、右側の3方の外周カーテンにおける整流板2に近接する箇所のカーテンについて、図4中で整流板より100cm程度上方までまくり上げる(手前側、奧側、右側の3方同時)条件とした。
気流制御のタイミングは接液工程における全部の工程および塗布開始から10秒の間とした。
その他の条件は、実施例1と同様とした。
比較例2では、実施例2において、気流制御を実施しなかった。
【0057】
(効果)
上記で得られたレジスト膜付マスクブランクについて、塗布・乾燥されたレジスト膜のスモールラインムラ(微小な線状ムラ)を評価した。その結果、実施例2では、いずれのサイズの基板についても、図1および図2に示すようなスモールラインムラは、気流制御しない場合(比較例2)に比べ、相対的に薄くなった。
実施例1と同様に、実施例2のレジスト膜付マスクブランクについて、スモールラインムラ(微小の線状ムラ)に対応する箇所の膜厚バラツキを測定したところ、測定間隔5mmピッチ、2ポイント、及び測定間隔5mmピッチ、3ポイントともに15オングストロームであった。
一方、比較例2の場合は、比較例1と同等の結果となった。
また、実施例2のレジスト膜付マスクブランクにおけるレジスト膜の面内膜厚均一性は、165オングストロームと良好であった。一方、比較例2のレジスト膜の面内膜厚均一性は、比較例1と同様の結果となった。
【0058】
上記得られた実施例2のレジスト膜付マスクブランクを使用して、実施例1と同様にフォトマスクを作製し、GCDU、LCDUを評価した。その結果、GCDUは58nm、LCDUは28nmとなり、実施例1と比べてCD均一性が良好となった。目視によるムラを観察したが異常は確認できなかった。
さらに、得られたフォトマスクを用いてOLED用の表示パネルを作製したが、レジスト膜付マスクブランクのスモールラインムラに起因する表示ムラ等の異常は確認できなかった。
一方、比較例2のレジスト膜付マスクブランクを使用して得られたフォトマスクについては、GCDUは100nmを超え、LCDUも50nmを超える結果となった。目視によるムラを観察したが、外周領域に形成された微細パターン(微細部)において、ムラが数か所確認された。このため、比較例1のフォトマスクを使用してOLED用表示パネルを作製した場合、レジスト膜付マスクブランクのスモールラインムラに起因する表示ムラ等の異常が発生する。
なお、カーテンに替えて、外壁パネルに設けた開口を開閉させる手段とし上記と同様の条件とした場合について、上記と同様であることを確認した。
【0059】
(実施例3および比較例3)
実施例3では、実施例2において、気流制御手段に関し、クリーンブースの天井からのダウンフローを接液時にクリーンブースの外に逃がすことに替えて、クリーンブースの天井からのダウンフローを接液時に止めること等によって、クリーンブースの天井からのダウンフローが整流板に当たらないようにする手段で気流制御した。詳しくは、クリーンブースにおいて、(1)FFUユニットの全部について送風を弱くする、(2)FFUユニットの全部を停止する、(3)整流板上方に位置するFFUユニットを停止する、の3条件とした。気流制御のタイミングは、実施例2と同様とした。
その他の条件は、実施例2と同様とした。
比較例3では、実施例3において、気流制御を実施しなかった。
【0060】
気流制御の条件が(1)、(3)の場合、図6に示す塗布ノズル近辺5およびその周辺4における気流の流速はいずれも0.1m/秒以下であった。気流制御の条件が(2)の場合は、0.01m/秒以下(無風状態)であることを確認した。
比較例3では、図6に示す塗布ノズル近辺5およびその周辺4における気流の流速は0.29m/秒であった。
【0061】
(効果)
上記で得られたレジスト膜付マスクブランクについて、塗布・乾燥されたレジスト膜のスモールラインムラ(微小な線状ムラ)を評価した。その結果、実施例3では、いずれのサイズの基板についても、図1および図2に示すようなスモールラインムラは、気流制御しない場合(比較例3)に比べ、いずれの気流制御の条件(1)、(2)および(3)においても相対的に薄くなった。
実施例1と同様に、実施例3のレジスト膜付マスクブランクについて、スモールラインムラ(微小の線状ムラ)に対応する箇所の膜厚バラツキを測定したところ、測定間隔5mmピッチ、2ポイント、及び測定間隔5mmピッチ、3ポイントともに14オングストロームであった。
一方、比較例3の場合は比較例1と同等の結果となった。
また、実施例3のレジスト膜付マスクブランクにおけるレジスト膜の面内膜厚均一性は、164オングストロームと良好であった。一方、比較例3のレジスト膜の面内膜厚均一性は、比較例1と同様の結果となった。
【0062】
上記得られた実施例3のレジスト膜付マスクブランクを使用して、実施例1と同様にフォトマスクを作製し、GCDU、LCDUを評価した。その結果、GCDUは57nm、LCDUは26nmとなり、実施例1と比べてCD均一性が良好となった。目視によるムラを観察したが異常は確認できなかった。
さらに、得られたフォトマスクを用いてOLED用の表示パネルを作製したが、レジスト膜付マスクブランクのスモールラインムラに起因する表示ムラ等の異常は確認できなかった。
一方、比較例3のレジスト膜付マスクブランクを使用して得られたフォトマスクについては、GCDUは100nmを超え、LCDUも50nmを超える結果となった。目視によるムラを観察したが、外周領域に形成された微細パターン(微細部)において、ムラが数か所確認された。このため、比較例3のフォトマスクを使用してOLED用表示パネルを作製した場合、レジスト膜付マスクブランクのスモールラインムラに起因する表示ムラ等の異常が発生する。
【0063】
尚、本発明は、前述した実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1 塗布ノズル部
1a 塗布ノズル
1bノズルタンク
2 整流板
3 吸着板
10基板
13可動式のシャッター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9