(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】方向性結合器
(51)【国際特許分類】
H01P 5/18 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
H01P5/18 K
(21)【出願番号】P 2017167771
(22)【出願日】2017-08-31
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】安田 寿博
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-225037(JP,A)
【文献】米国特許第05689217(US,A)
【文献】特開2015-109630(JP,A)
【文献】特開2008-078853(JP,A)
【文献】特開2001-144513(JP,A)
【文献】特開平09-246818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
出力端子と、
結合端子と、
アイソレーション端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に電気的に接続され、第1線路と、前記第1線路と前記入力端子とを接続する第2線路と、前記第1線路と前記出力端子とを接続する第3線路と、を含む主線路と、
前記結合端子と前記アイソレーション端子との間に電気的に接続され、前記第1線路と電磁界結合する第4線路と、前記第2線路と電磁界結合し前記第4線路と前記結合端子とを接続する第5線路と、前記第3線路と電磁界結合し前記第4線路と前記アイソレーション端子とを接続する第6線路と、を含む副線路と、
前記第1線路との最短距離および前記第4線路との最短距離は、前記第2線路との最短距離、前記第3線路との最短距離、前記第5線路との最短距離および前記第6線路との最短距離より小さいグランド導体と、
積層された複数の誘電体層と、
を備え、
前記第1線路および前記第4線路は、前記複数の誘電体層のうち第1誘電体層の同じ表面に形成された第1導電体パターンであり、
前記第2線路、前記第3線路、前記第5線路および前記第6線路は、各々1または複数の誘電体層の表面に形成された導電体パターンであり、
前記第2線路
の少なくとも一部、前記第3線路
の少なくとも一部、前記第5線路
の少なくとも一部および前記第6線路
の少なくとも一部は、前記複数の誘電体層のうち前記第1誘電体層と異なる第2誘電体層の同じ表面に形成された第2導電体パターンである方向性結合器。
【請求項2】
入力端子と、
出力端子と、
結合端子と、
アイソレーション端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に電気的に接続され、第1線路と、前記第1線路と前記入力端子とを接続する第2線路と、前記第1線路と前記出力端子とを接続する第3線路と、を含む主線路と、
前記結合端子と前記アイソレーション端子との間に電気的に接続され、前記第1線路と電磁界結合する第4線路と、前記第2線路と電磁界結合し前記第4線路と前記結合端子とを接続する第5線路と、前記第3線路と電磁界結合し前記第4線路と前記アイソレーション端子とを接続する第6線路と、を含む副線路と、
前記第1線路との最短距離および前記第4線路との最短距離は、前記第2線路との最短距離、前記第3線路との最短距離、前記第5線路との最短距離および前記第6線路との最短距離より小さいグランド導体と、
積層された複数の誘電体層と、
を備え、
前記第1線路および前記第4線路は、前記複数の誘電体層のうち第1誘電体層表面に形成された第1導電体パターンであり、
前記第2線路、前記第3線路、前記第5線路および前記第6線路は、前記複数の誘電体層のうち前記第1誘電体層と異なる第2誘電体層表面に形成された第2導電体パターンであり、
前記グランド導体は、前記複数の誘電体層のうち前記第1誘電体層と前記第2誘電体層との間に位置する第3誘電体層表面に形成された第3導電体パターンである方向性結合器。
【請求項3】
前記第1線路および前記第4線路は平面視において前記グランド導体と重なり、
前記第2線路、前記第3線路、前記第5線路および前記第6線路は平面視において前記第3導電体パターンと重ならない請求項2記載の方向性結合器。
【請求項4】
入力端子と、
出力端子と、
結合端子と、
アイソレーション端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に電気的に接続され、第1線路と、前記第1線路と前記入力端子とを接続する第2線路と、前記第1線路と前記出力端子とを接続する第3線路と、を含む主線路と、
前記結合端子と前記アイソレーション端子との間に電気的に接続され、前記第1線路と電磁界結合する第4線路と、前記第2線路と電磁界結合し前記第4線路と前記結合端子とを接続する第5線路と、前記第3線路と電磁界結合し前記第4線路と前記アイソレーション端子とを接続する第6線路と、を含む副線路と、
前記第1線路との最短距離および前記第4線路との最短距離は、前記第2線路との最短距離、前記第3線路との最短距離、前記第5線路との最短距離および前記第6線路との最短距離より小さいグランド導体と、
を備え、
前記第1線路および前記第4線路の少なくとも一部は、前記第2線路、前記第3線路、前記第5線路および前記第6線路より厚い方向性結合器。
【請求項5】
入力端子と、
出力端子と、
結合端子と、
アイソレーション端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に電気的に接続され、第1線路と、前記第1線路と前記入力端子とを接続する第2線路と、前記第1線路と前記出力端子とを接続する第3線路と、を含む主線路と、
前記結合端子と前記アイソレーション端子との間に電気的に接続され、前記第1線路と電磁界結合する第4線路と、前記第2線路と電磁界結合し前記第4線路と前記結合端子とを接続する第5線路と、前記第3線路と電磁界結合し前記第4線路と前記アイソレーション端子とを接続する第6線路と、を含む副線路と、
前記第1線路との最短距離および前記第4線路との最短距離は、前記第2線路との最短距離、前記第3線路との最短距離、前記第5線路との最短距離および前記第6線路との最短距離より小さいグランド導体と、
を備え、
前記入力端子と前記第1線路との間に並列に複数の前記第2線路が接続され、
前記結合端子と前記第4線路との間に直列に、前記複数の第2線路とそれぞれ電磁界結合される複数の前記第5線路が接続され、
前記第1線路と前記出力端子との間に並列に複数の前記第3線路が接続され、
前記第4線路と前記アイソレーション端子との間に直列に、前記複数の第3線路とそれぞれ電磁界結合される複数の前記第6線路が接続される方向性結合器。
【請求項6】
複数の誘電体層を備え、
前記主線路および前記副線路は、前記複数の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層表面に形成された導電体パターンである請求項4または5に記載の方向性結合器。
【請求項7】
前記第2線路、前記第3線路、前記第5線路および前記第6線路は、各々平面視において巻回する線路を含む請求項1から6のいずれか一項記載の方向性結合器。
【請求項8】
第1誘電体層と、
前記第1誘電体層の表面に設けられた第1主線路パターンと、
前記第1誘電体層の表面に設けられ、少なくとも一部が前記第1主線路パターンの少なくとも一部に沿って設けられた第1副線路パターンと、
前記第1誘電体層と重なる第2誘電体層と、
前記第2誘電体層の表面に設けられ前記第1主線路パターンおよび前記第1副線路パターンと重なるグランドパターンと、
前記第1誘電体層との間に前記第2誘電体層を挟んで設けられた第3誘電体層と、
前記第3誘電体層の表面に設けられ、前記第1主線路パターンの一端に接続された第2主線路パターンと、
前記第3誘電体層の表面に設けられ、前記第1副線路パターンの一端に接続され、少なくとも一部が前記第2主線路パターンの少なくとも一部に沿って設けられた第2副線路パターンと、
前記第3誘電体層の表面に設けられ、前記第1主線路パターンの他端に接続された第3主線路パターンと、
前記第3誘電体層の表面に設けられ、前記第1副線路パターンの他端に接続され、少なくとも一部が前記第3主線路パターンの少なくとも一部に沿って設けられた第3副線路パターンと、
を備える方向性結合器。
【請求項9】
前記第1主線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離および前記第1副線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離は、前記第2主線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離、前記第2副線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離、前記第3主線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離および前記第3副線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離より小さい請求項8記載の方向性結合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向性結合器に関し、例えば主線路および副線路を有する方向性結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器に方向性結合器が用いられている。方向性結合器を誘電体層が積層された積層体を用い形成することが知られている(例えば特許文献1から4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-12323号公報
【文献】特開2015-109630号公報
【文献】米国特許第5689217号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0146394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
方向性結合器には、結合度が広帯域に平坦であることが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、結合度の平坦性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、入力端子と、出力端子と、結合端子と、アイソレーション端子と、前記入力端子と前記出力端子との間に電気的に接続され、第1線路と、前記第1線路と前記入力端子とを接続する第2線路と、前記第1線路と前記出力端子とを接続する第3線路と、を含む主線路と、前記結合端子と前記アイソレーション端子との間に電気的に接続され、前記第1線路と電磁界結合する第4線路と、前記第2線路と電磁界結合し前記第4線路と前記結合端子とを接続する第5線路と、前記第3線路と電磁界結合し前記第4線路と前記アイソレーション端子とを接続する第6線路と、を含む副線路と、前記第1線路との最短距離および前記第4線路との最短距離は、前記第2線路との最短距離、前記第3線路との最短距離、前記第5線路との最短距離および前記第6線路との最短距離より小さいグランド導体と、積層された複数の誘電体層と、を備え、前記第1線路および前記第4線路は、前記複数の誘電体層のうち第1誘電体層の同じ表面に形成された第1導電体パターンであり、前記第2線路、前記第3線路、前記第5線路および前記第6線路は、各々1または複数の誘電体層の表面に形成された導電体パターンであり、前記第2線路の少なくとも一部、前記第3線路の少なくとも一部、前記第5線路の少なくとも一部および前記第6線路の少なくとも一部は、前記複数の誘電体層のうち前記第1誘電体層と異なる第2誘電体層の同じ表面に形成された第2導電体パターンである方向性結合器である。
【0007】
本発明は、入力端子と、出力端子と、結合端子と、アイソレーション端子と、前記入力端子と前記出力端子との間に電気的に接続され、第1線路と、前記第1線路と前記入力端子とを接続する第2線路と、前記第1線路と前記出力端子とを接続する第3線路と、を含む主線路と、前記結合端子と前記アイソレーション端子との間に電気的に接続され、前記第1線路と電磁界結合する第4線路と、前記第2線路と電磁界結合し前記第4線路と前記結合端子とを接続する第5線路と、前記第3線路と電磁界結合し前記第4線路と前記アイソレーション端子とを接続する第6線路と、を含む副線路と、前記第1線路との最短距離および前記第4線路との最短距離は、前記第2線路との最短距離、前記第3線路との最短距離、前記第5線路との最短距離および前記第6線路との最短距離より小さいグランド導体と、を備え、前記第1線路および前記第4線路の少なくとも一部は、前記第2線路、前記第3線路、前記第5線路および前記第6線路より厚い方向性結合器である。
【0008】
上記構成において、複数の誘電体層を備え、前記主線路および前記副線路は、前記複数の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層表面に形成された導電体パターンである構成とすることができる。
【0010】
本発明は、入力端子と、出力端子と、結合端子と、アイソレーション端子と、前記入力端子と前記出力端子との間に電気的に接続され、第1線路と、前記第1線路と前記入力端子とを接続する第2線路と、前記第1線路と前記出力端子とを接続する第3線路と、を含む主線路と、前記結合端子と前記アイソレーション端子との間に電気的に接続され、前記第1線路と電磁界結合する第4線路と、前記第2線路と電磁界結合し前記第4線路と前記結合端子とを接続する第5線路と、前記第3線路と電磁界結合し前記第4線路と前記アイソレーション端子とを接続する第6線路と、を含む副線路と、前記第1線路との最短距離および前記第4線路との最短距離は、前記第2線路との最短距離、前記第3線路との最短距離、前記第5線路との最短距離および前記第6線路との最短距離より小さいグランド導体と、積層された複数の誘電体層と、を備え、前記第1線路および前記第4線路は、前記複数の誘電体層のうち第1誘電体層表面に形成された第1導電体パターンであり、前記第2線路、前記第3線路、前記第5線路および前記第6線路は、前記複数の誘電体層のうち前記第1誘電体層と異なる第2誘電体層表面に形成された第2導電体パターンであり、前記グランド導体は、前記複数の誘電体層のうち前記第1誘電体層と前記第2誘電体層との間に位置する第3誘電体層表面に形成された第3導電体パターンである方向性結合器である。
【0011】
上記構成において、前記第1線路および前記第4線路は平面視において前記グランド導体と重なり、前記第2線路、前記第3線路、前記第5線路および前記第6線路は平面視において前記第3導電体パターンと重ならない構成とすることができる。
【0012】
本発明は、入力端子と、出力端子と、結合端子と、アイソレーション端子と、前記入力端子と前記出力端子との間に電気的に接続され、第1線路と、前記第1線路と前記入力端子とを接続する第2線路と、前記第1線路と前記出力端子とを接続する第3線路と、を含む主線路と、前記結合端子と前記アイソレーション端子との間に電気的に接続され、前記第1線路と電磁界結合する第4線路と、前記第2線路と電磁界結合し前記第4線路と前記結合端子とを接続する第5線路と、前記第3線路と電磁界結合し前記第4線路と前記アイソレーション端子とを接続する第6線路と、を含む副線路と、前記第1線路との最短距離および前記第4線路との最短距離は、前記第2線路との最短距離、前記第3線路との最短距離、前記第5線路との最短距離および前記第6線路との最短距離より小さいグランド導体と、を備え、前記入力端子と前記第1線路との間に並列に複数の前記第2線路が接続され、前記結合端子と前記第4線路との間に直列に、前記複数の第2線路とそれぞれ電磁界結合される複数の前記第5線路が接続され、前記第1線路と前記出力端子との間に並列に複数の前記第3線路が接続され、前記第4線路と前記アイソレーション端子との間に直列に、前記複数の第3線路とそれぞれ電磁界結合される複数の前記第6線路が接続される方向性結合器である。
【0013】
上記構成において、前記第2線路、前記第3線路、前記第5線路および前記第6線路は、各々平面視において巻回する線路を含む構成とすることができる。
【0014】
本発明は、第1誘電体層と、前記第1誘電体層の表面に設けられた第1主線路パターンと、前記第1誘電体層の表面に設けられ、少なくとも一部が前記第1主線路パターンの少なくとも一部に沿って設けられた第1副線路パターンと、前記第1誘電体層と重なる第2誘電体層と、前記第2誘電体層の表面に設けられ前記第1主線路パターンおよび前記第1副線路パターンと重なるグランドパターンと、前記第1誘電体層との間に前記第2誘電体層を挟んで設けられた第3誘電体層と、前記第3誘電体層の表面に設けられ、前記第1主線路パターンの一端に接続された第2主線路パターンと、前記第3誘電体層の表面に設けられ、前記第1副線路パターンの一端に接続され、少なくとも一部が前記第2主線路パターンの少なくとも一部に沿って設けられた第2副線路パターンと、前記第3誘電体層の表面に設けられ、前記第1主線路パターンの他端に接続された第3主線路パターンと、前記第3誘電体層の表面に設けられ、前記第1副線路パターンの他端に接続され、少なくとも一部が前記第3主線路パターンの少なくとも一部に沿って設けられた第3副線路パターンと、を備える方向性結合器である。
【0015】
上記構成において、前記第1主線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離および前記第1副線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離は、前記第2主線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離、前記第2副線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離、前記第3主線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離および前記第3副線路パターンと前記グランドパターンとの最短距離より小さい構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、結合度の平坦性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施例1に係る方向性結合器の回路図である。
【
図2】
図2は、実施例2に係る方向性結合器の回路図である。
【
図3】
図3(a)から
図3(c)は、実施例2に係る方向性結合器の上面図、下面図および側面図である。
【
図4】
図4は、実施例2における方向性結合器の解体斜視図(その1)である。
【
図5】
図5は、実施例2における方向性結合器の解体斜視図(その2)である。
【
図6】
図6(a)から
図6(d)は、実施例2における各誘電体層の平面図(その1)である。
【
図7】
図7(a)から
図7(d)は、実施例2における各誘電体層の平面図(その2)である。
【
図8】
図8(a)から
図8(d)は、実施例2における各誘電体層の平面図(その3)である。
【
図9】
図9(a)から
図9(e)は、実施例2における各誘電体層の平面図(その4)である。
【
図13】
図13(a)は、サンプルAにおける周波数に対する位相を示す図、
図13(b)は、周波数に対する結合度およびアイソレーションを示す図である。
【
図14】
図14(a)は、サンプルBにおける周波数に対する位相を示す図、
図14(b)は、周波数に対する結合度およびアイソレーションを示す図である。
【
図15】
図15(a)は、サンプルCにおける周波数に対する位相を示す図、
図15(b)は、周波数に対する結合度およびアイソレーションを示す図である。
【
図16】
図16(a)は、サンプルDにおける周波数に対する位相を示す図、
図16(b)は、周波数に対する結合度およびアイソレーションを示す図である。
【
図17】
図17(a)は、サンプルEにおける周波数に対する位相を示す図、
図17(b)は、周波数に対する結合度およびアイソレーションを示す図である。
【
図18】
図18は、シミュレーション2における方向性結合器の回路図である。
【
図19】
図19は、シミュレーション2における位相差に対する結合度の差を示す図である。
【
図20】
図20は、シミュレーション3における周波数に対するアイソレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1に係る方向性結合器の回路図である。
図1に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に直列に主線路Lmが接続されている。主線路Lmは、中央部の線路L1と、入力端子Tinと線路L1とを電気的に接続する線路L2と、線路L1と出力端子Toutとを電気的に接続する線路L3と、を有している。結合端子Tcとアイソレーション端子Tisoとの間に副線路Lsが接続されている。副線路Lsは、中央部の線路L4と、結合端子Tcと線路L4とを電気的に接続する線路L5と、線路L4とアイソレーション端子Tisoとを電気的に接続する線路L6と、を有している。線路L1からL3と線路L4からL6とはそれぞれ電磁界結合する。
【0020】
入力端子Tinから入力した高周波信号Sinのほとんどは出力端子Toutから高周波信号Soutとして出力する。主線路Lmを伝搬する高周波信号は副線路Lsと結合する。これにより、高周波信号Sinの一部が結合端子Tcから高周波信号Scとして出力される。また、高周波信号Soutの一部がアイソレーション端子Tisoから高周波信号Sisoとして出力される。結合度(カップリング)は、信号Sinの電力に対する信号Scの電力である。アイソレーションは信号Sinの電力に対する信号Sisoの電力である。
【0021】
方向性結合器は、例えば移動体通信機器の送信回路に用いられる。方向性結合器はパワーアンプ等の増幅器が増幅した送信信号の一部を取り出し、パワーアンプにフィードバックするために用いられる。これにより、パワーアンプの制御がリアルタイムで行われる。
【0022】
方向性結合器では、周波数に対し結合度を平坦にすることが求められる。例えばGSM(登録商標)(Global System for Mobile communications)800/900では、送信帯域は824MHzから915MHzである。例えばこの送信帯域において結合度が20dB±2dBとなることが求められる。この例では、周波数帯域が91MHzのため、結合度の平坦化は比較的容易である。
【0023】
しかし、近年では、移動体通信機器に多数のバンドが用いられている。このため、方向性結合器が用いられる帯域が例えば698MHzから2690MHzのように広帯域化してきている。周波数が高くなると電磁界結合が強くなるため結合度が大きくなる。一例では698MHzで結合度が30dB、2700MHzで結合度が17dBとなる。
【0024】
このように、結合度の周波数依存性は小さいことが求められている。すなわち、結合度は周波数に対し平坦であることが好ましい。アイソレーション端子Tisoが終端抵抗により終端される。信号Sisoは終端抵抗により消費されてしまう。このため、アイソレーションは大きいことが好ましい。
【0025】
実施例1では、線路L1およびL4の特性インピーダンスを線路L2、L3、L5およびL6の特性インピーダンスより低くする。これにより、線路L1とL4との結合度が線路L2とL5の結合度および線路L3とL6の結合度に比べ小さくなる。これにより、主線路Lmと副線路Lsとの位相差が大きくなると考えられる。よって、結合度の周波数依存性が小さくなりかつアイソレーションが向上する。
【実施例2】
【0026】
実施例2は実施例1の具体例である。
図2は、実施例2に係る方向性結合器の回路図である。
図2に示すように、線路L2aおよびL2bは入力端子Tinと線路L1との間に並列に接続されている。線路L3aおよびL3bは線路L1と出力端子Toutとの間に並列に接続されている。線路L5aおよびL5bは結合端子Tcと線路L4との間に直列に接続されている。線路L6aおよびL6bは線路L4とアイソレーション端子Tisoとの間に直列に接続されている。線路L2a、L2b、L3aおよびL3bは、それぞれ線路L5a、L5b、L6aおよびL6bと電磁界結合する。
【0027】
高周波信号は主に主線路Lmを伝搬する。そこで、線路L2aとL2bとを並列に接続し、線路L3aとL3bとを並列に接続する。これにより、主線路Lmの導体損が減少し主線路Lmの挿入損失が小さくなる。副線路Lsの損失は方向性結合器の特性にあまり影響しない。そこで、線路L5aとL5bとを直列に接続し、線路L6aとL6bとを直列に接続する。これにより、結合度を高くすることができる。
【0028】
入力端子Tinの主線路Lmとの間に線路Linが接続され、主線路Lmと出力端子Toutとの間に線路Loutが接続されている。結合端子Tcの副線路Lsとの間に線路Lcが接続され、副線路Lsとアイソレーション端子Tisoとの間に線路Lisoが接続されている。線路Lin、Lout、LcおよびLisoは、引き出しパターンである。線路L4とL5bとの間のノードとグランドとの間にキャパシタC1が接続され、線路L4と線路L6aとの間のノードとグランドとの間にキャパシタC2が接続されている。キャパシタC1およびC2は、線路L4のインピーダンスの(微)調整のためのものである。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0029】
図3(a)から
図3(c)は、実施例2に係る方向性結合器の上面図、下面図および側面図である。
図3(b)は、方向性結合器の下面を上から透視した下面図である。積層体10の積層方向をZ方向、積層体10の面方向における長手方向をX方向、短手方向をY方向とする。
【0030】
図3(a)から
図3(c)に示すように、方向性結合器は積層体10を有する。積層体10の上面には、方向識別マーク22が設けられている。積層体10の下面に端子電極20が設けられている。端子電極20は、入力端子Tin、出力端子Tout、結合端子Tc、アイソレーション端子Tisoおよびグランド端子Tgndに相当する。積層体10のX方向の長さLは例えば1mmであり、Y方向の幅Wは例えば0.5mmであり、Z方向の厚さTは例えば0.45mmである。
【0031】
図4および
図5は、実施例2における方向性結合器の解体斜視図である。
図6(a)から
図9(e)は、実施例2における各誘電体層の平面図である。
図6(a)、
図6(c)、
図7(a)、
図7(c)、
図8(a)、
図8(c)、
図9(a)および
図9(c)は、それぞれ誘電体層11bから11iの上面の導電体パターン12を示す図である。
図6(b)、
図6(d)、
図7(b)、
図7(d)、
図8(b)、
図8(d)、
図9(b)および
図9(d)は、それぞれ誘電体層11bから11iを貫通するビア配線13を示す図である。
図9(e)は、誘電体層11iの下面の端子電極20を示す図であり、上から誘電体層11iの下面を透視した図である。
【0032】
図4から
図9(e)に示すように、複数の誘電体層11aから11iが積層されている。各誘電体層11bから11iの上面には導電体パターン12が形成されている。誘電体層11iの下面には端子電極20が形成されている。誘電体層11bから11iには、誘電体層11bから11iを貫通するビア配線13が形成されている。ビア配線13は、上下の導電体パターン12を電気的に接続する。誘電体層11aから11iは、例えばAl、Siおよび/またはCa等の酸化物を含むセラミックス材料である。誘電体層11aから11iは、樹脂材料またはガラス材料でもよい。導電体パターン12およびビア配線13は、例えばAg、Pd、Pt、Cu、Ni、Au、Au-Pd合金またはAg-Pt合金等の金属層である。
【0033】
図4に示すように、誘電体層11aの上面には方向識別マーク22が形成されている。
図4および
図6(a)に示すように、誘電体層11bの導電体パターン12は線路L1およびL4を形成する。線路L1とL4とはX方向に延伸し略平行に設けられている。線路L1は略直線状である。線路L4の中央部は線路L4の両端部に対し+Y方向にシフトして設けられている。
図6(a)のように、線路L1と線路L4の中央部とが対向する領域において、線路L1およびL4の幅をW1およびW4、線路L1とL4との間の距離をS14、線路L1およびL4の長さをL14とする。
【0034】
図4および
図6(c)に示すように、誘電体層11cの上面の導電体パターン12はグランド電極G1を形成する。平面視において線路L1の一部および線路L4の一部(+Y方向にシフトした領域を含む領域)はグランド電極G1と重なっている。線路L1とグランド電極G1とは、および線路L4とグランド電極G1とは、マイクロストリップ線路を形成する。高さに制約がない場合は、線路L1およびL4は、ストリップ線路の信号線路でもよい。
【0035】
図4および
図7(a)に示すように、誘電体層11dの上面の導電体パターン12はキャパシタ電極14を形成する。誘電体層11cを挟み対向するキャパシタ電極14とグランド電極G1とはキャパシタC1およびC2を形成する。
【0036】
図4および
図7(c)に示すように、誘電体層11eの上面の導電体パターン12は線路L2b、L3b、L5bおよびL6bを形成する。線路L2b、L3b、L5bおよびL6bはU字形状またはC字形状を有する。また、線路L2b、L3b、L5bおよびL6bは、ミアンダ型形状でもよい。インピーダンスを低下させないため、平面視において線路L2b、L3b、L5bおよびL6bはグランド電極G1と重なっていない。
【0037】
図5および
図8(a)に示すように、誘電体層11fの上面の導電体パターン12は線路L2a、L3a、L5aおよびL6aを形成する。線路L2a、L3a、L5aおよびL6aはU字形状またはC字形状を有する。平面視において線路L2a、L3a、L5aおよびL6aは、グランド電極G1と重なっていない。平面視において線路L2a、L3a、L5aおよびL6aは、それぞれ線路L2b、L3b、L5bおよびL6bの少なくとも一部と重なっている。線路L5aとL5bは巻方向が同じであり、線路L6aとL6bは巻方向が同じである。
【0038】
図7(c)および
図8(a)のように、線路L2aおよびL2b、L3aおよびL3b、線路L5aおよびL5b、並びに線路L6aおよびL6bの幅をそれぞれW2、W3、W5およびW6とする。線路L2aとL5aとの間の距離および線路L2bとL5bとの間の距離をS25とする。線路L3aとL6aとの間の距離および線路L3bとL6bとの間の距離をS36とする。
【0039】
図5および
図8(c)に示すように、誘電体層11gの上面の導電体パターン12は、線路LcおよびLisoを形成する。
図5および
図9(a)に示すように、誘電体層11hの上面の導電体パターン12はグランド電極G2を形成する。
図5および
図9(c)に示すように、誘電体層11iの上面の導電体パターン12は、線路LinおよびLout並びにグランド電極G3を形成する。
図5および
図9(e)に示すように、誘電体層11iの下面には端子電極20が形成されている。
図6(b)、
図6(d)、
図7(b)、
図7(d)、
図8(b)、
図8(d)、
図9(b)および
図9(d)に示すように、誘電体層11bから11iにはビア配線13が形成されている。
【0040】
図4および
図5に示すように、線路L1およびL4とグランド電極G1との間の誘電体層11bの厚さをT1、グランド電極G1と線路L2b、L3b、L5bおよびL6bとの間の誘電体層11cおよび11dの合計の厚さをT2、線路L2b、L3b、L5bおよびL6bと線路L2a、L3a、L5aおよびL6aとの間の誘電体層11eの厚さをT3とする。また、線路L1およびL4の厚さをT4、線路L2a、L2b、L3a、L3b、L5a、L5b、L6aおよびL6bの厚さをT5とする。
【0041】
[シミュレーション1]
厚さT1からT5を変えシミュレーションを行った。シミュレーションは、キーサイト・テクノロジーズ・インク(Keysight Technologies,Inc.)から入手可能なアドバンスト・デザイン・システム(ADS)を用いて、回路シミュレーションを行っている。
【0042】
シミュレーション条件は以下である。
誘電体層11aから11iの比誘電率:10
線路L1の幅W1:25μm
線路L4の幅W4:20μm
線路L1とL4の距離S14:230μm
線路L1とL4が対向する長さL14:785μm
線路L2a、L2bの幅W2:25μm
線路L3a、L3bの幅W3:25μm
線路L5a、L5bの幅W5:25μm
線路L6a、L6bの幅W6:25μm
線路L2aとL5aの距離S25:25μm
線路L3aとL6aの距離S36:25μm
【0043】
厚さT1からT5の異なるサンプルAからEの厚さT1からT5の厚さを表1に示す。
【表1】
【0044】
図10から
図12は、それぞれサンプルA、BおよびDの側面図であり、誘電体層を透過して導電体パターン12およびビア配線13を示す図である。
【0045】
図10および表1に示すように、サンプルAでは、線路L1およびL4とグランド電極G1との間の誘電体層11bの厚さT1と、グランド電極G1と線路L2b、L3b、L5bおよびL6bとの間の誘電体層11cおよび11dの合計の厚さT2と、は200μmであり、同じである。線路L1およびL4の厚さT4と、グランド電極G1の厚さT5と、は8μmであり同じである。
【0046】
図11および表1に示すように、サンプルBでは、厚さT1は15μmであり、厚さT2は200μmであり、厚さT1はT2より小さい。厚さT4と厚さT5とは8μmであり同じである。
【0047】
表1に示すように、サンプルCでは、厚さT1は200μmであり、厚さT2は15μmであり、厚さT1はT2より大きい。厚さT4と厚さT5とは8μmであり同じである。
【0048】
図12および表1に示すように、サンプルDでは、厚さT1は15μmであり、厚さT2は200μmであり、厚さT1はT2より小さい。厚さT4は15μmであり、厚さT5は8μmであり、厚さT4はT5より大きい。
【0049】
表1に示すように、サンプルEでは、厚さT1は15μmであり、厚さT2は200μmであり、厚さT1はT2より小さい。厚さT4は8μmであり、厚さT5は15μmであり、厚さT4はT5より小さい。
【0050】
図13(a)は、サンプルAにおける周波数に対する位相を示す図、
図13(b)は、周波数に対する結合度およびアイソレーションを示す図である。
図13(a)おいて、実線は主線路Lmにおける入力端子Tinに対する出力端子Toutの位相を示し、破線は副線路Lsにおける入力端子Tinに対する出力端子Toutの位相を示す。点線は主線路Lmと副線路Lsの位相差Lm-Lsを示す。
図13(b)において実線は結合度を示し、破線はアイソレーションを示す。
【0051】
表2は、サンプルAからEにおける位相差、結合度の差および最小アイソレーションを示す表である。
【表2】
【0052】
位相差は、5.85GHz(
図13(a)の三角マーカ)の主線路Lmと副線路Lsとの位相差Lm-Lsである。結合度の差は、3.4GHz(
図13(b)の下向き三角)と6GHz(
図13(b)の上向き三角)の結合度の差である。最小アイソレーションは、3.4GHzから6GHzの範囲内の最小(絶対値が小さい)のアイソレーションである。サンプルAでは、位相差が6.6°、結合度の差が3.85dBおよび最小アイソレーションが-31dBである。
【0053】
図14(a)は、サンプルBにおける周波数に対する位相を示す図、
図14(b)は、周波数に対する結合度およびアイソレーションを示す図である。
図14(a)に示すように、サンプルBでは主線路Lmの位相は
図13(a)のサンプルAの主線路Lmの位相より絶対値が小さくなる。これにより、サンプルBの位相差はサンプルAより大きくなる。表2のようにサンプルBの位相差は7.28°である。
【0054】
図14(b)に示すように、サンプルBのアイソレーションは
図13(b)のサンプルAのアイソレーションより大きくなる。表2のようにサンプルBの結合度の差は3.51dBでありサンプルAより小さい。サンプルBの最小アイソレーションは-43dBでありサンプルAより大きい。
【0055】
サンプルBのように、厚さT1をT2より小さくすると、位相差が大きくなる。結合度の差が小さくなり、アイソレーションが大きくなる。このように、結合度の差およびアイソレーションが改善する。
【0056】
図15(a)は、サンプルCにおける周波数に対する位相を示す図、
図15(b)は、周波数に対する結合度およびアイソレーションを示す図である。
図15(a)に示すように、サンプルCでは主線路Lmの位相は
図13(a)のサンプルAの主線路Lmの位相より絶対値が大きくなる。これにより、サンプルCの位相差はサンプルAより小さくなる。表2のようにサンプルCの位相差は2.79°である。
【0057】
図15(b)に示すように、サンプルCのアイソレーションは
図13(b)のサンプルAのアイソレーションより小さくなる。表2のようにサンプルCの結合度の差は3.98dBでありサンプルAより大きい。サンプルCの最小アイソレーションは-33dBでありサンプルAと同程度である。
【0058】
サンプルCのように、厚さT2をT1より小さくすると、位相差が小さくなる。結合度の差が大きくなり、アイソレーションは同程度である。このように、結合度の差が悪化する。
【0059】
図16(a)は、サンプルDにおける周波数に対する位相を示す図、
図16(b)は、周波数に対する結合度およびアイソレーションを示す図である。
図16(a)に示すように、サンプルDでは位相差はサンプルBより大きくなる。表2のようにサンプルDの位相差は7.34°である。
【0060】
図16(b)に示すように、サンプルDのアイソレーションは
図14(b)のサンプルBのアイソレーションと同程度である。表2のようにサンプルDの結合度の差は3.38dBでありサンプルBより小さい。サンプルDの最小アイソレーションは-43dBでありサンプルBと同程度である。
【0061】
サンプルDのように、厚さT4をT5より大きくすると、位相差が大きくなる。結合度の差が小さくなる。このように、結合度の差が改善する。
【0062】
図17(a)は、サンプルEにおける周波数に対する位相を示す図、
図17(b)は、周波数に対する結合度およびアイソレーションを示す図である。
図17(a)に示すように、サンプルEでは位相差はサンプルBより小さくなる。表2のようにサンプルEの位相差は6.70°である。
【0063】
図17(b)に示すように、サンプルEのアイソレーションは
図14(b)のサンプルBのアイソレーションより小さい。表2のようにサンプルEの結合度の差は3.64dBでありサンプルBより大きい。サンプルEの最小アイソレーションは-40dBでありサンプルBより小さい。
【0064】
サンプルEのように、厚さT5をT4より大きくすると、位相差が小さくなる。結合度の差が大きくなり、アイソレーションが小さくなる。このように、結合度の差およびアイソレーションが悪化する。
【0065】
シミュレーション1では、厚さT1をT2より小さくすると位相差が大きくなり、結合度の差およびアイソレーションが改善することがわかった。また、厚さT4をT5より大きくすると位相差が大きくなり、結合度の差およびアイソレーションが改善することがわかった。
【0066】
[シミュレーション2]
位相差が結合度の差に影響することを調べるためシミュレーション2を行った。
図18は、シミュレーション2における方向性結合器の回路図である。
図18に示すように、主線路LmおよびLsが設けられている。副線路Lsと結合端子Tcとの間に線路Laが接続されている。副線路Lsとアイソレーション端子Tisoとの間に線路Lbが接続されている。
【0067】
線路LaおよびLbの電気長を変え、主線路Lmと副線路Lsとの位相差を変化させた。各線路は誘電体層を挟みグランド電極が対向するマリクロストリップ線路である。
線路L1の幅:25μm
線路L4の幅:25μm
線路L1とL4の距離:50μm
線路L1とL4が対向する長さ:785μm
誘電体層の比誘電率:10
線路とグランド電極との距離:200μm
【0068】
図19は、シミュレーション2における位相差に対する結合度の差を示す図である。位相差は、主線路Lmと副線路Lsとの位相差である。結合度の差は3.4GHzと6GHzとの結合度の差である。
図19に示すように、位相差が大きくなると結合度の差が小さくなる。位相差が約70°において結合度の差が最小となる。これは、位相差が大きくなることで主線路Lmと副線路Lsとの電磁界結合が弱まるためと考えられる。
【0069】
シミュレーション2によれば、単純な方向性結合器においても位相差が大きくなると結合度の差が小さくなる。これにより、シミュレーション1において、サンプルBからEではサンプルAより結合度の差が小さくなるのは位相差が大きくなったためではないかと考えられる。
【0070】
[シミュレーション3]
シミュレーション1では、厚さT4がT5より大きいサンプルDではサンプルBとアイソレーションが同程度であった。そこで、サンプルB、DおよびEにおいて3次元構造に基づき電磁界シミュレーションを行った。
【0071】
図20は、シミュレーション3における周波数に対するアイソレーションを示す図である。
図20に示すように、サンプルBに対しサンプルDはアイソレーションが大きくなり、サンプルEはアイソレーションが小さくなる。
【0072】
表3は、シミュレーション3における結合度の差および最小アイソレーションを示す表である。
【表3】
【0073】
表3に示すように、厚さT4がT5より大きいサンプルDは、サンプルBに比べ結合度の差は小さくアイソレーションは大きい。厚さT4がT5より小さいサンプルEは、サンプルBに比べ結合度の差は大きくアイソレーションは小さい。
【0074】
シミュレーション1のように、厚さT1をT2より小さくすると結合度の差が小さくなり、アイソレーションが大きくなる。シミュレーション1および3のように、厚さT4をT5より大きくすると結合度の差が小さくなり、アイソレーションが大きくなる。
【0075】
この理由は明確ではないが、伝送線路の特性インピーダンスが関連していると考えられる。特性インピーダンスは容量成分が大きくなると低くなり、インダクタンス成分が小さくなると低くなる。厚さT1を小さくすると容量成分が大きくなるため特性インピーダンスが低くなる。厚さT4を大きくするとインダクタンス成分が小さくなるため特性インピーダンスが低くなる。
【0076】
シミュレーション1のように、中央部の線路L1およびL4の特性インピーダンスが低くなると、線路L1とL4との結合度は、線路L2aとL5aおよび線路L2bとL5bとの合計の結合度、線路L3aとL6aおよび線路L3bとL6bとの合計の結合度より小さくなる。これにより、主線路Lmと副線路Lsの位相差が大きくなったものと考えられるシミュレーション2のように、位相差が大きくなると、結合度の差が小さくなると考えられる。これにより、シミュレーション1および3のように、実施例2では、結合度の差が小さくかつアイソレーションが大きくなると考えられる。
【0077】
実施例2のサンプルBからEによれば、主線路Lmは、線路L1(第1線路)と、線路L1と入力端子Tinとを接続する線路L2aおよびL2b(第2線路)と、線路L1と出力端子Toutとを接続する線路L3aおよびL3b(第3線路)と、を含む。副線路Lsは、線路L4(第4線路)と、線路L4と結合端子Tcとを接続する線路L5aおよびL5b(第5線路)と、線路L4とアイソレーション端子Tisoとを接続する線路L6aおよびL6b(第6線路)と、を含む。線路L1とL4とは電磁界結合し、線路L2aおよびL2bと線路L5aおよびL5bとは電磁界結合し、線路L3aおよびL3bと線路L6aおよびL6bとは電磁界結合している。
【0078】
このような構造において、線路L1およびL4とグランド電極G1(グランド導体)との各々の最短距離(実施例1では厚さT1)を、線路L2a、L2b、L3a、L3b、L5a、L5b、L6aおよびL6bとグランド電極G1との各々の最短距離(厚さT2)より小さくする。これにより、線路L1およびL4の特性インピーダンスが低くなり、結合度の平坦性が小さくなりアイソレーションが大きくなる。
【0079】
厚さT1はT3の1/2以下が好ましく、1/5以下がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。
【0080】
サンプルDのように、線路L1およびL4の少なくとも一部は、線路L2a、L2b、L3a、L3b、L5a、L5b、L6aおよびL6bより厚い。これにより、結合度の平坦性が小さくなりかつアイソレーションが大きくなる。
【0081】
厚さT4は厚さT5の1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。
【0082】
線路L1およびL4の特性インピーダンスを低くする観点から、線路L1およびL4の幅を線路L2a、L2b、L3a、L3b、L5a、L5b、L6aおよびL6bの幅より大きくしてもよい。
【0083】
主線路Lmおよび副線路Lsは、複数の誘電体層11aから11iのうち少なくとも1つの誘電体層表面に形成された導電体パターン12である。このように、主線路Lmおよび副線路Lsを積層体10に形成することで、方向性結合器を小型化できる。
【0084】
図4および
図6(a)のように、線路L1およびL4は、誘電体層11b表面に形成された導電体パターン12(第2導電体パターン)である。線路L2b、L3b、L5bおよびL6bは、誘電体層11e(誘電体層11bと異なる誘電体層)表面に形成された導電体パターン12である。このように、線路L1およびL4を他の線路と別の誘電体層に形成することで、方向性結合器を小型化できる。
【0085】
図4、
図6(c)および
図7(c)のように、グランド電極G1は、誘電体層11bと11eとの間に位置する誘電体層11c(第3誘電体層)表面に形成された導電体パターン12(第3導電体パターン)である。このように、グランド電極G1を線路L1およびL4と線路L2b、L3b、L5bおよびL6bとの間に設けることで、誘電体層の厚さを設定すれば、グランド電極G1と線路L1およびL4との最短距離を、グランド電極G1と線路L2b、L3b、L5bおよびL6bとの最短距離より小さくできる。
【0086】
図4、
図6(a)、
図6(c)および
図7(c)のように、線路L1およびL4は平面視においてグランド電極G1と重なる。一方、線路L2a、L2b、L3a、L3b、L5a、L5b、L6aおよびL6bは、平面視においてグランド電極G1と重ならない。これにより、線路L2a、L2b、L3a、L3b、L5a、L5b、L6aおよびL6bの特性インピーダンスを高くできる。よって、結合度の平坦性およびアイソレーションがより向上する。
【0087】
図2のように、複数の線路L2aおよびL2bは、入力端子Tinと線路L1との間に並列に接続されている。複数の線路L3aおよびL3bは、線路L1と出力端子Toutとの間に並列に接続されている。これにより、主線路Lmの挿入損失を小さくできる。
【0088】
複数の線路L5aおよびL5bは、結合端子Tcと線路L4との間に直列に接続され、複数の線路L2aおよびL2bとそれぞれ電磁界結合される。複数の線路L6aおよびL6bは、線路L4とアイソレーション端子Tisoとの間に直列に接続され、複数の線路L3aおよびL3bとそれぞれ電磁界結合される。これにより、結合度を大きくできる。
【0089】
線路L2aおよびL2b、線路L3aおよびL3b、線路L5aおよびL5b並びに線路L6aおよびL6bは、各々平面視において巻回する線路を含む。これにより、線路L2a、L2b、L3a、L3b、L5a、L5b、L6aおよびL6bの特性インピーダンスが高くなる。よって、結合度の平坦性およびアイソレーションがより向上する。
【0090】
線路L1(第1主線路パターン)および線路L4(第1副線路パターン)は誘電体層11bの表面に設けられている。線路L4の少なくとも一部は線路L1の少なくとも一部に沿って設けられている。グランド電極G1(グランドパターン)は、誘電体層11cの表面に設けられ、線路L1の少なくとも一部および線路L4の少なくとも一部と重なる。線路L2b、L3b、L5bおよびL6bは、誘電体層11eの表面に設けられている。線路L2bは線路L1の一端に接続されている。線路L3bは、線路L1の他端に接続されている。線路L5bは線路L4の一端に接続されている。線路L6bは線路L4の他端に接続されている。線路L5bの少なくとも一部は、線路L2bの少なくとも一部に沿って設けられ、線路L6bの少なくとも一部は、線路L3bの少なくとも一部に沿って設けられている。これにより、方向性結合器を小型化できる。
【0091】
実施例2では、第2線路、第3線路、第5線路および第6線路が複数の誘電体層に設けられている例を説明したが、第2線路、第3線路、第5線路および第6線路は単一の誘電体層に形成されていてもよい。第1線路および第4線路が単一の誘電体層に設けられている例を説明したが、第1線路および第4線路は複数の誘電体層に形成されていてもよい。
【0092】
第1線路および第4線路と、第2線路、第3線路、第5線路および第6線路との間にグランド電極G1が配置される例を説明したが、グランド電極G2と、第2線路、第3線路、第5線路および第6線路と、の間に第1線路および第6線路が設けられていてもよい。
【0093】
平面視において線路L1およびL4の少なくとも一部がグランド電極G1と重なる例を説明したが線路L1およびL4はグランド電極G1と重ならなくてもよい。線路L2a、L2b、L3a、L3b、L5a、L5b、L6aおよびL6bが、平面視においてグランド電極G1と重ならない例を説明したが、線路L2a、L2b、L3a、L3b、L5a、L5b、L6aおよびL6bの少なくとも一部はグランド電極G1と重なってもよい。
【0094】
複数の線路L2aおよびL2bが並列接続され、複数の線路L3aおよびL3bが並列接続されている例を説明したが、複数の線路L2aおよびL2bが直列接続され、複数の線路L3aおよびL3bが直列接続されていてもよい。複数の線路L5aおよびL5bが直列接続され、複数の線路L6aおよびL6bが直列接続されている例を説明したが、複数の線路L5aおよびL5bが並列接続され、線路L6aおよびL6bが並列接続されていてもよい。
【0095】
厚さT1を15μm、厚さT2を200μm、厚さT3からT5を8μmまたは15μmを例に説明したが、厚さT1、T2、T3からT5は適宜設定できる。例えば、厚さT1は8μmから100μmお間で適宜設定できる。
【0096】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 積層体
11a-11i 誘電体層
12 導電体パターン
20 端子電極