(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用集電部材、それを用いたリチウムイオン二次電池用集電体及びリチウムイオン二次電池用強電タブ、並びに、リチウムイオン二次電池用集電部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2017176784
(22)【出願日】2017-09-14
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2016180716
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】大澤 康彦
(72)【発明者】
【氏名】草地 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一
(72)【発明者】
【氏名】赤間 弘
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-310261(JP,A)
【文献】特表2016-519399(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080853(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/103874(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/034758(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031688(WO,A1)
【文献】特開2010-067580(JP,A)
【文献】国際公開第2011/138920(WO,A1)
【文献】特開2014-053158(JP,A)
【文献】特開2011-233277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材料と高分子化合物とを含んでなる導電性フィルムからなり、
前記導電性フィルムの厚さ方向に対して直交する方向のうち、電気抵抗値が最小となる第1の方向における電気抵抗値(R
1)が、前記厚さ方向と前記第1の方向とに対して直交する第2の方向における電気抵抗値(R
2)よりも小さ
く、
前記導電材料のアスペクト比が2以上であり、前記導電性フィルム内で導電材料が第1の方向に沿った方向に配向していることを特徴とするリチウムイオン二次電池用集電部材。
【請求項2】
前記第1の方向に対する電気抵抗値(R
1)と前記第2の方向に対する電気抵抗値(R
2)との比率(R
1/R
2)が0.5以下である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用集電部材。
【請求項3】
前記第1の方向に対する電気抵抗値(R
1)が1×10
-10~1×10
1Ω・mである請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用集電部材。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用集電部材を用いたリチウムイオン二次電池用集電体。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用集電部材を用いたリチウムイオン二次電池用強電タブ。
【請求項6】
前記導電性フィルム上に、前記第1の方向に沿った方向に伸びたストライプ状の金属薄膜を設けてなる、請求項
5に記載のリチウムイオン二次電池用強電タブ。
【請求項7】
アスペクト比が2以上の導電材料と高分子化合物を混合した混合物をフィルム状に延伸し前記導電材料の配向を延伸方向に揃えることにより、導電性フィルムの厚さ方向に対して直交する第1の方向における電気抵抗値(R
1)が、前記厚さ方向と前記第1の方向とに対して直交する第2の方向における電気抵抗値(R
2)よりも小さい導電性フィルムを得ることを特徴とする、リチウムイオン二次電池用集電部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用集電部材、それを用いたリチウムイオン二次電池用集電体及びリチウムイオン二次電池用強電タブ、並びに、リチウムイオン二次電池用集電部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、ハイブリッド自動車、電気自動車、さらには家庭用電源設備の電源装置としては、リチウムイオン二次電池等の二次電池及び電気二重層キャパシタ等が利用される。特に、リチウムイオン二次電池はそのエネルギー密度の高さや繰り返し充放電に対する耐久性の高さから、電動車両に好適と考えられ、各種の開発が鋭意進められている。
【0003】
なかでも双極型電池の電池性能を向上させる方法として、特定の高分子材料を含む集電体を用いるという技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来の高分子材料を含む集電体はリチウムイオン二次電池の内部に一時的に微小短絡が発生した場合に集電体表面から微小短絡部に向けて電流が流れるため、短絡部が極めて小さな短絡であっても電池性能が劣化する等、電池性能の耐久性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、リチウムイオン二次電池内部に一時的に微小短絡が発生した場合であっても電池性能の劣化がなく、耐久性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることが出来るリチウムイオン二次電池用集電部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、導電材料と高分子化合物とを含んでなる導電性フィルムからなり、上記導電性フィルムの厚さ方向に対して直交する方向のうち、電気抵抗値が最小となる第1の方向における電気抵抗値(R1)が、上記厚さ方向と上記第1の方向とに対して直交する第2の方向における電気抵抗値(R2)よりも小さいことを特徴とするリチウムイオン二次電池用集電部材;本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材を用いたリチウムイオン二次電池用集電体;本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材を用いたリチウムイオン二次電池用強電タブ;導電材料と高分子化合物を混合した混合物をフィルム状に延伸し上記導電材料の配向を延伸方向に揃えることにより、導電性フィルムの厚さ方向に対して直交する第1の方向における電気抵抗値(R1)が、上記厚さ方向と上記第1の方向とに対して直交する第2の方向における電気抵抗値(R2)よりも小さい導電性フィルムを得ることを特徴とする、リチウムイオン二次電池用集電部材の製造方法;である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材を使用すると、リチウムイオン二次電池内部に一時的に微小短絡が発生した場合であっても電流が流れる方向に制限がかけられているため、短絡部に向かって流れる電流が小さくなり、電池性能の劣化がなく、耐久性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材を構成する導電性フィルムを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、リチウムイオン二次電池用強電タブとして用いることができるリチウムイオン二次電池用集電部材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、積層型電池において本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材をリチウムイオン二次電池用集電体及びリチウムイオン二次電池用強電タブとして使用した場合の構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、織物を加熱プレスすることにより導電性フィルムを製造する方法を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材は、導電材料と高分子化合物とを含んでなる導電性フィルムからなり、上記導電性フィルムの厚さ方向に対して直交する方向のうち、電気抵抗値が最小となる第1の方向における電気抵抗値(R1)が、上記厚さ方向と上記第1の方向とに対して直交する第2の方向における電気抵抗値(R2)よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
導電性フィルムを構成する導電材料としては、導電性を有する材料から選択されるが、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるリチウムイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが好ましい。
【0012】
導電材料の材質としては、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電材料は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、さらに好ましくはニッケル、銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、特に好ましくはニッケル及びカーボンである。またこれらの導電材料は、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電材料(上記した導電材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
導電材料の電気伝導度は1~1×1010mS/cmであることが好ましい。
なお、導電材料の電気伝導度は、内径が5mmであるガラス製円筒の内部に、導電材料を30mg入れ、50回タップし、さらに直径5mmのSUS316製円柱で両端を挟み、250kNの圧力をかけながら、電気化学測定装置(ソーラトロン社製1280C)の測定端子クリップで両端のSUS316製円柱を挟むことにより測定される値である。
【0013】
導電材料は、導電性フィルムを構成する高分子化合物との親和性および導電性フィルムの電気抵抗値の異方性等の観点から、その径に対する長さの比率(長さ/径。以下、アスペクト比と記載する。)が大きいもの(好ましくは2以上)が好ましく、その形状がチューブ状又は繊維状であることがさらに好ましい。好ましいものとしてはカーボンナノチューブ又は導電性繊維等が挙げられ、導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電材料が2以上のアスペクト比を有する材料である場合、その平均長が0.2~10000μmであることが好ましく、その平均径が0.1~10μmであることが好ましい。この範囲であると、導電性フィルムを作製したときにフィルムの延伸方向や導電性フィルムを構成する高分子化合物の結晶方向に沿って導電材料が並びやすく、電気抵抗値によりハッキリした異方性が発現しやすくなり好ましい。
【0014】
導電性フィルムを構成する高分子化合物としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0015】
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材を構成する導電性フィルムを模式的に示す斜視図である。以下、この図面を参照して導電性フィルムの厚さ方向、第1の方向、第2の方向等について説明する。
図1に示す導電性フィルム10において、導電性フィルムの厚さ方向を両矢印Tで示す方向とする。そして、この方向に対して直交する方向のうち、電気抵抗値が最小となる1つの方向を第1の方向(
図1において両矢印Xで示す方向)とし、厚さ方向及び第1の方向に対して直交する方向(
図1において両矢印Yで示す方向)を第2の方向とする。
第1の方向及び第2の方向は導電性フィルムの主面に平行な方向である。
【0016】
本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材を構成する導電性フィルムでは、導電性フィルムの第1の方向における電気抵抗値(R1)が、第2の方向における電気抵抗値(R2)よりも小さい。すなわち、導電性フィルムの主面において導電性に異方性があるフィルムであるといえる。
集電部材を構成する導電性フィルムが導電性に異方性があるフィルムであるということは、導電性フィルムにおいて電流が流れにくい方向が存在しており、導電性フィルム内の電流の流れが自由ではなくある程度制限されていることを意味している。そのため、リチウムイオン二次電池内部に一時的に微小短絡が発生した場合であっても導電性フィルム内を電流が自由に流れることがある程度制限される。そして、電流の流れる方向がその異方性に従って特定の方向に偏る。そのため、導電性フィルムの主面において電流が集中して流れることが防止されるので、電池性能の劣化がなく、耐久性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
また、導電性フィルムの主面において電流が流れないわけではないので、導電性フィルムに接触する活物質の分布に偏りがあって電圧の分布がばらついた場合に、導電性フィルム主面に電流が流れることによって電圧の分布のバラツキを抑えることができる。
【0017】
図1に示す導電性フィルム10では、高分子化合物11のマトリックスに導電材料としての導電性繊維12が含まれており、導電性フィルム10内で導電性繊維12が第1の方向に沿った方向に配向している。
導電性繊維がこのように配向していると、第1の方向においては導電性が良く電気抵抗値(R
1)が最小になる。一方、第2の方向においては導電性が悪く電気抵抗値(R
2)は大きくなる。すなわち、R
1がR
2よりも小さくなっている。
【0018】
本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材では、第1の方向に対する電気抵抗値(R1)と第2の方向に対する電気抵抗値(R2)との比率(R1/R2)が0.5以下であることが好ましい。第1の方向に対する電気抵抗値(R1)と第2の方向に対する電気抵抗値(R2)との比率(R1/R2)が0.5以下であると、リチウムイオン二次電池内部に一時的に微小短絡が発生した場合であっても導電性フィルム内の電流は、より電気抵抗値の小さい第1の方向に優先的に流れ、その結果電流の流れが制限されるため、電池性能の劣化が少なくなり、より耐久性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
また、第1の方向に対する電気抵抗値(R1)が1×10-10~1×101Ω・mであることが好ましく、第2の方向に対する電気抵抗値(R2)が2×10-10~1×1010Ω・mであることが好ましく、2×10-4~5×100Ω・mであることが更に好ましい。電気抵抗値(R1)がこの範囲にあると、導電性フィルムに接触する活物質との接触抵抗を低減でき、サイクル特性が良好となり好ましく、また電気抵抗値(R2)がこの範囲にあると、導電性フィルムに接触する活物質の電圧の分布のバラツキを抑えることができ、サイクル特性が良好となり好ましい。
なお、電気抵抗値は以下の方法に従って算出される。
導電性フィルムから1cm幅×23cm長さで第1の方向に対して長手方向にカットされた第1の短冊と第2の方向に対して長手方向にカットされた第2の短冊をそれぞれ用意する。第1の短冊と第2の短冊のそれぞれについて短冊の端から1.5cmの点を起点(0cm測定点)にして、そこから5cm間隔でそれぞれ5cm測定点、10cm測定点、15cm測定点および20cm測定点とする。第1の短冊および第2の短冊のそれぞれについて起点を含めた5点それぞれの膜厚を測定し、その値を平均してそれぞれt1(μm)、t2(μm)とする。
続いて、第1の短冊および第2の短冊のそれぞれについて、電気化学測定装置(ソーラトロン社製1280C)の測定端子の一方を0cm測定点に接触させたまま、他方の測定端子を5cm測定点、10cm測定点、15cm測定点および20cm測定点にそれぞれ接触させて各測定点での抵抗値(Ω)を読み取る。測定した4つの抵抗値を、縦軸が抵抗値であり、横軸が測定点間距離(起点から測定点までの距離)であるグラフにプロットし、プロットした点を最小二乗法で直線近似して得た直線の傾きを求める。第1の短冊および第2の短冊のそれぞれの傾きをa1(Ω/cm)およびa2(Ω/cm)とし、第1の短冊および第2の短冊の電気抵抗値R1およびR2を次の式から求める。
R1=a1×(t1/10000×1)
R2=a2×(t2/10000×1)
【0019】
導電性フィルムは、その厚さが5~400μmであることが好ましい。また、厚さ方向における電気抵抗値(R3)は特に限定されるものではないが、積層型電池とした際に厚さ方向の導電性が高いことが好ましいため、1×10-3~1×10-1Ω・mであることが好ましい。
【0020】
導電性フィルム中の導電材料の含有量は、厚さ方向の導電性の観点から、導電性フィルム100重量部中5~90重量部であることが好ましく、より好ましくは15~80重量部である。
導電性フィルム中の高分子化合物の含有量は、フィルム強度の観点から、導電性フィルム100重量部中10~95重量部であることが好ましく、より好ましくは20~80重量部である。
【0021】
導電性フィルムには、導電材料及び高分子化合物の他に、さらに必要に応じ、その他の成分[分散剤、架橋促進剤(アルデヒド・アンモニア-アミン骨格含有化合物、チオウレア骨格含有化合物、グアニジン骨格含有化合物、チアゾール骨格含有化合物、スルフェンアミド骨格含有化合物、チウラム骨格含有化合物、ジチオカルバミン酸塩骨格含有化合物、キサントゲン酸塩骨格含有化合物及びジチオリン酸塩骨格含有化合物等)、架橋剤(イオウ等)、着色剤、紫外線吸収剤、汎用の可塑剤(フタル酸骨格含有化合物、トリメリット酸骨格含有化合物、リン酸基含有化合物及びエポキシ骨格含有化合物等)]等を適宜添加することができる。その他の成分の合計添加量は、電気的安定性の観点から、導電性フィルム100重量部中0.001~5重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.001~3重量部である。
【0022】
本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材は、リチウムイオン二次電池用集電体、又は、リチウムイオン二次電池用強電タブとして使用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材を使用すると、リチウムイオン二次電池内部に一時的に微小短絡が発生した場合であっても電流が流れる方向に制限がかけられているため、短絡部に向かって流れる電流を小さくすることができる。そのため、本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材は、特に電流値が大きくなる積層型電池の安全性を向上させることができる集電体及び強電タブとして好ましく使用することができる。
積層型電池では、正極側集電体、正極、セパレータ、負極及び負極側集電体を単セルとして、単セルが積層された構成を有している。
多く用いられている積層型電池では、集電体としてアルミニウム箔や銅箔等の金属箔が用いられるが、本発明のリチウムイオン二次電池用集電体は導電材料と高分子化合物を含んでなる導電性フィルムからなる樹脂集電体である。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用強電タブは、集電体から電池の外部への電流の取り出し、及び外部電源からの充電に用いる部材(端子)であり、導電材料と高分子化合物を含んでなる導電性フィルムからなる樹脂集電体である。
すなわち、積層型電池において、正極側集電体、負極側集電体、強電タブのいずれか又は全てが
図1に示す導電性フィルム10であってよい。
【0023】
積層型電池における正極活物質、負極活物質、セパレータ等の材料としては公知の材料を使用することができる。正極活物質及び負極活物質は、アクリル系樹脂等の樹脂で被覆された被覆活物質であってもよい。
【0024】
図2は、リチウムイオン二次電池用強電タブとして用いることができるリチウムイオン二次電池用集電部材の一例を模式的に示す斜視図である。
図2に示すリチウムイオン二次電池用強電タブ120は、
図1に示す導電性フィルム10上に、第1の方向に沿った方向に伸びたストライプ状の金属薄膜20を設けてなる。
このような金属薄膜20が設けられていると、第1の方向に沿って設けられた金属薄膜20を電流が流れることができ、電気抵抗値は小さくなる。一方、第2の方向に沿った電流の流れには金属薄膜は寄与しない。
そのため、リチウムイオン二次電池用集電部材の異方性を確保することができる。
そして、金属薄膜から電流を電池の外に取り出すことができるので強電タブとしての機能も好ましく発揮される。
【0025】
金属薄膜は、導電性フィルムの上にスパッタリング、蒸着、めっき等の公知の金属薄膜形成法により形成することができる。
ストライプ状の金属薄膜を形成する方法としては、金属薄膜を形成しない部位をマスキングしてスパッタリング等により薄膜を形成する方法や、導電性フィルム全体に薄膜を形成した後に、金属薄膜を形成する部位にマスキングをして、エッチングによりマスキングした部位以外の金属薄膜を除去する方法が挙げられる。
【0026】
上記リチウムイオン二次電池用集電部材を含む本発明のリチウムイオン二次電池用強電タブは、PTCサーミスタ及びヒューズ等の電流制限素子を更に有することが好ましい。電流制限素子としては、特許第5540588号等に記載された電流抑制手段又は電流遮断手段を用いることができる。
強電タブは電池内部にエネルギーを電流として出し入れするために用いる部材(端子)として用いるため、金属薄膜を相互に接続した接続部を設けることが好ましい。
電流制限素子を設けることで、一時的に微小短絡した場合に接続部を介して電流が微小短絡部に回り込み、結果として大きな電流が微小短絡部に流れることを防ぐことが出来る。
【0027】
本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材をリチウムイオン二次電池用集電体及びリチウムイオン二次電池用強電タブとして使用する場合、リチウムイオン二次電池用集電体としてのリチウムイオン二次電池用集電部材と強電タブとしてのリチウムイオン二次電池用集電部材とを積層して用いることができる。この場合、リチウムイオン二次電池用集電体及びリチウムイオン二次電池用強電タブの第1の方向が同じ向きになるように配置して積層してもよく、リチウムイオン二次電池用集電体及びリチウムイオン二次電池用強電タブの第1の方向が直行する向きに配置して積層してもよい。集電効率の観点等から、リチウムイオン二次電池用集電体及びリチウムイオン二次電池用強電タブの第1の方向が同じ向きになるように配置して積層することが好ましい。
【0028】
図3(a)及び
図3(b)は、積層型電池において本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材をリチウムイオン二次電池用集電体及びリチウムイオン二次電池用強電タブとして使用した場合の構成の一例を模式的に示す斜視図である。
積層型電池では、正極31、セパレータ32、負極33が集電体を介して繰り返し積層されており、強電タブは最も外側に配置される。
図3(a)ではリチウムイオン二次電池用強電タブ120の第1の方向とリチウムイオン二次電池用集電体10の第1の方向が同じ向きとなっている例を示している。
一方、
図3(b)ではリチウムイオン二次電池用強電タブ120の第1の方向とリチウムイオン二次電池用集電体10の第1の方向が直行する向きとなっている例を示している。
なお、
図3(a)及び
図3(b)では積層型電池における最も上端の単セルの周辺のみを図示しており、リチウムイオン二次電池用集電体10よりも下の構造については省略している。
【0029】
本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材は、例えば以下の方法で製造することができる。なお、以下の方法は、本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材の製造方法であり、導電材料と高分子化合物を混合した混合物をフィルム状に延伸し上記導電材料の配向を延伸方向に揃えることにより、導電性フィルムの厚さ方向に対して直交する第1の方向における電気抵抗値(R1)が、上記厚さ方向と上記第1の方向とに対して直交する第2の方向における電気抵抗値(R2)よりも小さい導電性フィルムを得ることを特徴とする、リチウムイオン二次電池用集電部材の製造方法である。
【0030】
まず、導電材料と高分子化合物、及び、必要に応じてその他の成分を混合する。混合の方法としては、公知のマスターバッチの製造方法、及び熱可塑性樹脂組成物(分散剤、フィラー及び熱可塑性樹脂からなる組成物、又はマスターバッチと熱可塑性樹脂からなる組成物)の製造方法等において公知の混合方法が用いられ、ペレット状又は粉体状の成分を適切な混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー、及びロール等を用いて加熱溶融混合して混合することができる。
【0031】
混合時の各成分の添加順序には特に限定はない。
得られた混合物は、さらにペレタイザーなどによりペレット化または粉末化してもよい。
【0032】
本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材は、上記混合によって得られた混合物に物理的な圧力をかけて一定の方向に延伸してフィルム状に成形することにより得られる。延伸してフィルム状に成形する成形方法としては、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の公知のフィルム成形法が挙げられる。一般にフィルムを形成する材料は、その構造が固定化される前に一定の方向に延伸することでフィルムを構成する樹脂の結晶構造やフィルムに含まれるフィラー等が延伸方向に並ぶ性質を有する。構成材料として導電材料を含む場合には、フィルムを延伸することで導電材料が延伸方向に配向し、その結果、リチウムイオン二次電池用集電部材の電気抵抗値が異方性[第1の方向における電気抵抗値(R1)が、第2の方向における電気抵抗値(R2)よりも小さいことを意味する]を発現する。
【0033】
上記の成形方法では、混合物に物理的な圧力をかけて延伸することで、溶融された上記混合物が一定の方向に流動する工程を経てからフィルム状に成形される。混合物が一定の方向に流動する際に上記混合物に含まれる導電材料が流動する方向に配向して、導電材料の配向を揃えることができるので、導電性フィルム内で導電材料が特定の方向に配向している導電性フィルムを製造することができる。
そして、導電材料が特定の方向に配向していることに起因して、導電性フィルムの厚さ方向に対して直交する第1の方向における電気抵抗値(R1)が、厚さ方向と第1の方向とに対して直交する第2の方向における電気抵抗値(R2)よりも小さい導電性フィルムを得ることができる。
【0034】
また、本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材の製造方法としては、導電性を有さない樹脂繊維を縦糸、導電性繊維を横糸とした織物を使用し、この織物を高分子化合物と共に加熱プレスする方法がある。
図4(a)及び
図4(b)は、織物を加熱プレスすることにより導電性フィルムを製造する方法を模式的に示す工程図である。
図4(a)には、導電性を有さない樹脂繊維を縦糸、導電性繊維を横糸とした織物を示している。例えば、織物50はポリプロピレン製の樹脂繊維51を縦糸、グラフェンを練りこんだポリプロピレン製の樹脂繊維からなる導電性繊維52を横糸とした織物である。そして、織物50をポリプロピレン樹脂のペレットと混ぜて型に入れて加熱プレスし、ポリプロピレン樹脂のペレット、縦糸としての樹脂繊維51を構成するポリプロピレン樹脂、横糸としての導電性繊維52を構成するポリプロピレン樹脂を溶融させてフィルムを成形する。
【0035】
図4(b)は
図4(a)に示す織物を加熱プレスして得られる導電性フィルムを模式的に示している。
得られた導電性フィルム60では、溶融した樹脂が高分子化合物61となり、導電性繊維52に含まれていたグラフェンが導電性繊維52が存在していた位置に従って線状に残っているので、これが導電材料62となる。
図4(b)には導電材料62としてのグラフェンが第1の方向に沿って残っている様子を示しており、このように導電材料が残っていることにより、導電性フィルムの第1の方向における電気抵抗値(R
1)は最小値となり、第1の方向における電気抵抗値(R
1)が第2の方向における電気抵抗値(R
2)よりも小さく、導電性フィルムの主面において導電性に異方性があるフィルムとなる。
【実施例】
【0036】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0037】
<製造例1>
<被覆用樹脂溶液の作製>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載)407.9部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸242.8部、メチルメタクリレート97.1部、2-エチルヘキシルメタクリレート242.8部及びDMF116.5部を配合したモノマー配合液と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.7部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)4.7部をDMF58.3部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。これにDMFを789.8部加えて、樹脂固形分濃度30重量%である樹脂溶液を得た。
【0038】
<製造例2>
<被覆正極活物質の作製>
正極活物質として、樹脂で被覆した被覆正極活物質を用いた。
LiCoO2粉末1578gを万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態で、製造例1で得た樹脂溶液(樹脂固形分濃度30重量%)146gを60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製]44gを3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、0.01MPaまで減圧し30分保持した。上記操作により被覆正極活物質1666gを得た。
【0039】
<製造例3>
<被覆負極活物質の作製>
負極活物質として、樹脂で被覆した被覆負極活物質を用いた。
黒鉛粉末[日本黒鉛工業(株)製]1578gを万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態で、製造例1で得た樹脂溶液(樹脂固形分濃度30重量%)292gを60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製]88gを3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、0.01MPaまで減圧し30分保持した。上記操作により被覆負極活物質1754gを得た。
【0040】
<実施例1>
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製]70部、カーボンナノチューブ[商品名:「FloTube9000」、CNano社製]25部(平均長さ10μm、平均直径15nm、アスペクト比約670)、及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部を200℃、200rpmの条件で溶融混練して樹脂混合物(Z-1)を得た。
得られた樹脂混合物(Z-1)を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、それを延伸することで、膜厚100μmの本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材[樹脂集電体(X-1)]を得た。樹脂集電体(X-1)について直交する2つの方向における電気抵抗値及びその比率を以下の方法で測定し、表1に記載した。
【0041】
<電気抵抗値の比率の測定>
樹脂集電体において、1cm幅×23cm長さでフィルム延伸方向(第1の方向とする)に対して長手方向にカットされた第1の短冊と、第1の方向に垂直の方向(第2の方向とする)に対して長手方向にカットされた第2の短冊をそれぞれ用意する。第1の短冊と第2の短冊のそれぞれについて短冊の端から1.5cmの点を起点(0cm測定点)にして、そこから5cm間隔でそれぞれ5cm測定点、10cm測定点、15cm測定点および20cm測定点とする。第1の短冊および第2の短冊のそれぞれについて起点を含めた5点それぞれの膜厚を測定し、その値を平均してそれぞれt1(μm)、t2(μm)とした。
続いて、第1の短冊および第2の短冊のそれぞれについて、電気化学測定装置(ソーラトロン社製1280C)の測定端子の一方を0cm測定点に接触させたまま、他方の測定端子を5cm測定点、10cm測定点、15cm測定点および20cm測定点にそれぞれ接触させて各測定点での抵抗値(Ω)を読み取った。測定し読み取った4つの抵抗値を縦軸が抵抗値、横軸が測定点間距離(起点から測定点までの距離)であるグラフにプロットし、プロットした点を最小二乗法で直線近似して得た直線の傾きを求めた。第1の短冊および第2の短冊のそれぞれについて、直線の傾きをa1(Ω/cm)およびa2(Ω/cm)として求め、第1の短冊および第2の短冊の電気抵抗値R1およびR2を次の式から求め、その比率を算出した。
R1=a1×(t1/10000×1)
R2=a2×(t2/10000×1)
【0042】
<実施例2>
国際公開第2015/125916号の実施例と同様にして得られたポリプロピレンとグラフェンの混練物を紡糸して得られた繊維からなる縦糸とポリプロピレン製繊維からなる横糸の布を180℃、50MPaで熱プレスすることにより、繊維同士が溶融一体化したフィルム状である本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材[樹脂集電体(X-2)]が得られた。このとき、縦糸の繊維はほぼ形状をとどめており、目視でも確認できる。実施例1と同様に樹脂集電体(X-2)について直交する2つの方向における電気抵抗値及びその比率を測定し、表1に記載した。
【0043】
<実施例3>
<実施例1>において、カーボンナノチューブ25部をニッケル粉(ヴァーレ製 Type255)71部に変え、ポリプロピレン70部を27部に変え、分散剤5部を2部に変えたこと以外は実施例1と同様にすることで、膜厚100μmの本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材[樹脂集電体(X-3)]を得た。実施例1と同様に樹脂集電体(X-3)について直交する2つの方向における電気抵抗値及びその比率を測定し、表1に記載した。
【0044】
<実施例4>
<実施例1>で得られたリチウムイオン二次電池用集電部材を基材として、さらに第1の方向に沿って、線幅5mm、 線間隔1mmのストライプ状に膜厚1μmでニッケル蒸着して、膜厚100μmの本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材[強電タブ(X-4)]を得た。実施例1と同様に強電タブ(X-4)について直交する2つの方向における電気抵抗値及びその比率を測定し、表1に記載した。
【0045】
<比較例1>
<実施例1>において、カーボンナノチューブ25部をニッケル粉(ヴァーレ製 Type255)71部に変え、ポリプロピレン70部を27部に変え、分散剤5部を2部に変えたこと以外は実施例1と同様に2軸押出機を用いて溶融混練して樹脂混合物(Z-2)を得た。さらに樹脂混合物(Z-2)を溶液流延法により成形することで、膜厚100μmの比較用のリチウムイオン二次電池用集電部材[樹脂集電体(H-1)]を得た。実施例1と同様に樹脂集電体(H-1)について直交する2つの方向における電気抵抗値及びその比率を測定し、表1に記載した。
【0046】
<比較例2>
<比較例1>で得られたリチウムイオン二次電池用集電部材を基材として、基材の全面に膜厚1μmでニッケル蒸着して、膜厚100μmの比較用のリチウムイオン二次電池用集電部材[強電タブ(H-2)]を得た。実施例1と同様に強電タブ(H-2)について直交する2つの方向における電気抵抗値及びその比率を測定し、表1に記載した。
【0047】
<実施例5~10、比較例3>
<サイクル充放電試験>
作製した集電部材を正極側集電体、負極側集電体及び強電タブとして用いてラミネートセルを下記の方法で作製し、下記の方法でサイクル充放電試験を行い、結果を表2に記載した。
【0048】
<評価用セルの作製>
外形が幅105mm×長さ205mmの長方形のガラスエポキシ基板(日光化成製 ニコライト NL-EG-23N)を2枚準備し、それぞれその内側を15mm幅の外周部を残してくりぬき、その両面にガラスエポキシ基板の外周部と同じ形状のヒートシール用フィルム(三井化学製 アドマー QE-060)を固定した。次いで幅95mm×長さ195mmの長方形のPE製セパレータ(セルガード製)をガラスエポキシ基板の一方の面にヒートシールすることで固定し、セパレータの片面に枠状のガラスエポキシ基板を固定した単セル用枠部材を作製した。
実施例1~2及び比較例1で作製したリチウムイオン二次電池用集電部材をそれぞれ外形が幅105mm×長さ205mmの長方形に切断し、その上に、製造例2で得た被覆正極活物質粒子をN-メチルピロリドン(以下、NMP)と混合して得られた正極活物質組成物(被覆正極活物質濃度:95%)をスキージにて幅66mm×長さ166mmの長方形状に外周部を残して塗布し、その後NMPを蒸発させて正極活物質層を形成した。この時の正極被覆活物質相当の目付量は130mg/cm2である。
実施例3及び比較例1で作製したリチウムイオン二次電池用集電部材をそれぞれ外形が幅105mm×長さ205mmの長方形に切断し、その上に製造例3で得た被覆負極活物質粒子をNMPと混合して得られた負極活物質組成物(被覆負極活物質濃度:95%)をスキージにて幅70mm×長さ170mmの長方形状に外周部を残して塗布し、その後NMPを蒸発させて負極活物質層を形成した。この時の負極被覆活物質相当の目付量は53mg/cm2である。
正極集電体及び負極集電体が表2に記載されたリチウムイオン二次電池用集電部材の組み合わせとなるように、正極活物質層を前記単セル用枠部材が有する枠状ガラスエポキシ基板の内側にセパレータと活物質層が接触する向きで収め、負極活物質層を、セパレータを介して活物質層同士が対向する向きに配置した。なお、正極活物質層を収める前の単セル用枠部材の枠状ガラスエポキシ基板の内側には、事前にそれぞれに電解液[エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートの混合溶液(EC/DEC=3/7(体積比))のLiPF61M溶液]を注液しておいた。その後、正極側集電体/ガラスエポキシ基板/負極側集電体が重なった部分をヒートシールして単セルを作製し、この単セルを正極側集電体と負極側集電体とが接する向きに8積層して積層セルを作製した。さらに最外層にある正極側集電体と負極側集電体のそれぞれに実施例4又は比較例2で作製した強電タブ(X-4又はH-2)をそれぞれ表2に記載された組み合わせとなるように貼り付けた。さらに、強電タブ(X-4)にはストライプ状のNi層に直交する一辺に集電用の帯状のニッケル箔を導電性接着剤で貼り付け、強電タブ(H-2)にはいずれかの一辺に集電用の帯状のニッケル箔を導電性接着剤で貼り付けた。次いで、貼り付けたニッケル箔が外部に出る様に配置しながら積層セルをラミネート容器に収容し密閉し評価用セルを作製した。
次いで、以下のサイクル充放電試験を行った。
【0049】
<サイクル充放電試験>
作製した評価用セルを45℃の環境で定電流定電圧方式(電流値:4mA/cm2)により33Vまで充電した後、定電流方式(電流値4mA/cm2)で22Vまで放電した。前記の充電操作及び放電操作をもう一度行い、これを1サイクル目の充放電とし、更に50サイクル目の充放電操作が完了するまでの前記の操作を繰り返した。
評価用セルの50サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で割った値(容量維持率)を算出した。同じ構成の評価用セルを3個ずつ用意し、各組み合わせにおいて容量維持率の平均値を表2に記載した。50サイクル後容量維持率が高い方が、劣化による性能低下がないことを意味する。
【0050】
【表1】
表1中、PPはポリプロピレン、CNTはカーボンナノチューブ、Niはニッケルをそれぞれ表す。
【0051】
【0052】
実施例5~10においては、50サイクル後容量維持率が80%以上と高かったのに対し、比較例3においては、50サイクル後容量維持率が本発明のリチウムイオン二次電池用集電部材を用いた場合よりも低く、充放電による評価用セルの劣化が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により得られるリチウムイオン二次電池用集電部材は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター及びハイブリッド自動車、電気自動車用に用いられるリチウムイオン二次電池用の集電体等として有用である。
【符号の説明】
【0054】
10、60 導電性フィルム(リチウムイオン二次電池用集電体)
11、61 高分子化合物
12、52 導電性繊維
20 金属薄膜
31 正極
32 セパレータ
33 負極
50 織物
51 樹脂繊維
62 導電材料
120 リチウムイオン二次電池用強電タブ