(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20220224BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20220224BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 W
H02M7/12 B
H02J7/00 L
H02J7/00 301E
(21)【出願番号】P 2017200936
(22)【出願日】2017-10-17
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴー・テックチャン
(72)【発明者】
【氏名】石垣 将紀
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆英
(72)【発明者】
【氏名】深田 雅一
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-065453(JP,A)
【文献】特開2013-034279(JP,A)
【文献】特開2016-092915(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0301303(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-15/42
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力をスイッチングによって調整する電力調整回路と、
負荷回路が接続されるスイッチング回路と、
前記電力調整回路および前記スイッチング回路を結合する磁気結合回路と、を備え、
前記スイッチング回路は、
バッテリから出力される電力に対するスイッチングによって、前記バッテリから前記負荷回路に電力を供給する電力変換モード、または、前記電力調整回路から前記磁気結合回路を介して供給される電力に対するスイッチングによって前記バッテリを充電する充電モードのいずれかで動作し、
前記スイッチング回路は、
並列接続された2つのハーフブリッジであって、直列接続された2つのスイッチング素子をそれぞれが含む、2つのハーフブリッジと、
並列接続された2つの前記ハーフブリッジに並列に接続され、前記負荷回路が接続されるコンデンサと、を備え、
前記磁気結合回路は、
一方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子の接続点に一端が接続された第1プライマリ巻線と、
他方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子の接続点に一端が接続された第2プライマリ巻線と、
前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線に磁気的に結合し、前記電力調整回路に接続されたセカンダリ巻線と、を備え、
前記第1プライマリ巻線の他端および前記第2プライマリ巻線の他端が共通に接続されており、前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線の接続点に前記バッテリが接続されており、
前記電力変換モードでは、一方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子と、他方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子とが、同一のデューティ比で、かつ同一のタイミングでオンオフ動作し、
前記充電モードでは、一方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子と、他方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子とが、同一のまたは異なるデューティ比で、かつ異なるタイミングでオンオフ動作することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
入力電力をスイッチングによって調整する電力調整回路と、
負荷回路が接続されるスイッチング回路と、
前記電力調整回路および前記スイッチング回路を結合する磁気結合回路と、を備え、
前記スイッチング回路は、
バッテリから出力される電力に対するスイッチングによって、前記バッテリから前記負荷回路に電力を供給する電力変換モード、または、前記電力調整回路から前記磁気結合回路を介して供給される電力に対するスイッチングによって前記バッテリを充電する充電モードのいずれかで動作し、
前記スイッチング回路は、
直列接続されたスイッチング素子S1およびスイッチング素子S2を含むハーフブリッジUと、
直列接続されたスイッチング素子S3およびスイッチング素子S4を含むハーフブリッジVと、
前記負荷回路が接続されるコンデンサと、を備え、
前記スイッチング素子S1の前記スイッチング素子S2側とは反対側の端子と、前記スイッチング素子S3のスイッチング素子S4側とは反対側の端子とが接続され、前記スイッチング素子S2の前記スイッチング素子S1側とは反対側の端子と、前記スイッチング素子S4のスイッチング素子S3側とは反対側の端子とが接続され、
前記コンデンサは、
前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S3の接続点と、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S4の接続点との間に接続され、
前記磁気結合回路は、
前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S2の接続点に一端が接続された第1プライマリ巻線と、
前記スイッチング素子S3および前記スイッチング素子S4の接続点に一端が接続された第2プライマリ巻線と、
前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線に磁気的に結合し、前記電力調整回路に接続されたセカンダリ巻線と、を備え、
前記第1プライマリ巻線の他端および前記第2プライマリ巻線の他端が共通に接続されており、前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線の接続点に前記バッテリが接続され、
前記電力変換モードの動作では、
前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S3が共にオンになり、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S4が共にオフになる第1状態と、前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S3が共にオフになり、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S4が共にオンになる第2状態とが交互に生じ、
前記充電モードの動作では、
前記第1状
態、
前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S4が共にオフになり、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S3が共にオンになる第3状態、
前記第1状
態、
前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S4が共にオンになり、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S3
が共にオフになる第4状態、が順に生じる過程が繰り返されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
入力電力をスイッチングによって調整する電力調整回路と、
負荷回路が接続されるスイッチング回路と、
前記電力調整回路および前記スイッチング回路を結合する磁気結合回路と、を備え、
前記スイッチング回路は、
バッテリから出力される電力に対するスイッチングによって、前記バッテリから前記負荷回路に電力を供給する電力変換モード、または、前記電力調整回路から前記磁気結合回路を介して供給される電力に対するスイッチングによって前記バッテリを充電する充電モードのいずれかで動作し、
前記スイッチング回路は、
直列接続され、交互にオンオフするスイッチング素子S1およびスイッチング素子S2を含むハーフブリッジUと、
直列接続され、交互にオンオフするスイッチング素子S3およびスイッチング素子S4を含むハーフブリッジVと、
前記負荷回路が接続されるコンデンサと、を備え、
前記スイッチング素子S1の前記スイッチング素子S2側とは反対側の端子と、前記スイッチング素子S3のスイッチング素子S4側とは反対側の端子とが接続され、前記スイッチング素子S2の前記スイッチング素子S1側とは反対側の端子と、前記スイッチング素子S4のスイッチング素子S3側とは反対側の端子とが接続され、
前記コンデンサは、
前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S3の接続点と、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S4の接続点との間に接続され、
前記磁気結合回路は、
前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S2の接続点に一端が接続された第1プライマリ巻線と、
前記スイッチング素子S3および前記スイッチング素子S4の接続点に一端が接続された第2プライマリ巻線と、
前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線に磁気的に結合し、前記電力調整回路に接続されたセカンダリ巻線と、を備え、
前記第1プライマリ巻線の他端および前記第2プライマリ巻線の他端が共通に接続されており、前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線の接続点に前記バッテリが接続され、
前記電力変換モードの動作では、
前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S4は、デューティ比指令値と、キャリアとの比較に応じて求められた制御信号に応じて同一タイミングでオンオフし、
前記充電モードの動作では、
前記スイッチング素子S2は、制御値および基準デューティ比
の差異を示すデューティ比指令値と、キャリアとの比較に応じて求められた制御信号に応じてオンオフし、
前記スイッチング素子S3は、前記制御値および前記基準デューティ比
が加算されたデューティ比指令値と、前記スイッチング素子S2と共通のキャリアとの比較に応じて求められた制御信号に応じてオンオフすることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、バッテリを充電すると共に、バッテリから負荷回路に電力を供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両が広く用いられている。電動車両には、駆動用モータに電力を供給するためのバッテリが搭載されている。電気自動車では、プラグイン機能によって、サービスステーションにある充電スタンドや商用電源等の外部電源装置から供給される電力によってバッテリが充電される。ハイブリッド自動車では、エンジンの駆動力によって発電した電力でバッテリが充電される。ハイブリッド自動車には、電気自動車と同様のプラグイン機能を有しているものもある。また、電気自動車およびハイブリッド自動車のいずれにおいても、駆動用モータが回生制動によって発電した電力でバッテリが充電される。
【0003】
プラグイン機能を有する電動車両には、バッテリから駆動用モータに電力を供給する電力供給装置に加えて、外部電源装置から供給される電力によってバッテリを充電する充電装置が搭載されている。以下の特許文献1には、商用電源から供給される電力によってバッテリを充電する充電装置(特許文献1における充電器)と、バッテリから出力される電力をモータジェネレータに供給する電力供給装置(特許文献1における電力変換装置)とを備える電源システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力供給装置および充電装置を備える電動車両では、バッテリ充電時と走行時とで、これらの装置の接続状態を変更する必要があり、スイッチ回路が設けられる等、構造が複雑となってしまう場合がある。
【0006】
本発明は、バッテリを充電すると共に、バッテリから負荷回路に電力を供給する装置の構造を単純化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、入力電力をスイッチングによって調整する電力調整回路と、負荷回路が接続されるスイッチング回路と、前記電力調整回路および前記スイッチング回路を結合する磁気結合回路と、を備え、前記スイッチング回路は、バッテリから出力される電力に対するスイッチングによって、前記バッテリから前記負荷回路に電力を供給する電力変換モード、または、前記電力調整回路から前記磁気結合回路を介して供給される電力に対するスイッチングによって前記バッテリを充電する充電モードのいずれかで動作し、
前記スイッチング回路は、並列接続された2つのハーフブリッジであって、直列接続された2つのスイッチング素子をそれぞれが含む、2つのハーフブリッジと、並列接続された2つの前記ハーフブリッジに並列に接続され、前記負荷回路が接続されるコンデンサと、を備え、前記磁気結合回路は、一方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子の接続点に一端が接続された第1プライマリ巻線と、他方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子の接続点に一端が接続された第2プライマリ巻線と、前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線に磁気的に結合し、前記電力調整回路に接続されたセカンダリ巻線と、を備え、前記第1プライマリ巻線の他端および前記第2プライマリ巻線の他端が共通に接続されており、前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線の接続点に前記バッテリが接続されており、前記電力変換モードでは、一方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子と、他方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子とが、同一のデューティ比で、かつ同一のタイミングでオンオフ動作し、前記充電モードでは、一方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子と、他方の前記ハーフブリッジが備える2つのスイッチング素子とが、同一のまたは異なるデューティ比で、かつ異なるタイミングでオンオフ動作することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、入力電力をスイッチングによって調整する電力調整回路と、負荷回路が接続されるスイッチング回路と、前記電力調整回路および前記スイッチング回路を結合する磁気結合回路と、を備え、前記スイッチング回路は、バッテリから出力される電力に対するスイッチングによって、前記バッテリから前記負荷回路に電力を供給する電力変換モード、または、前記電力調整回路から前記磁気結合回路を介して供給される電力に対するスイッチングによって前記バッテリを充電する充電モードのいずれかで動作し、前記スイッチング回路は、直列接続されたスイッチング素子S1およびスイッチング素子S2を含むハーフブリッジUと、直列接続されたスイッチング素子S3およびスイッチング素子S4を含むハーフブリッジVと、前記負荷回路が接続されるコンデンサと、を備え、前記スイッチング素子S1の前記スイッチング素子S2側とは反対側の端子と、前記スイッチング素子S3のスイッチング素子S4側とは反対側の端子とが接続され、前記スイッチング素子S2の前記スイッチング素子S1側とは反対側の端子と、前記スイッチング素子S4のスイッチング素子S3側とは反対側の端子とが接続され、前記コンデンサは、前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S3の接続点と、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S4の接続点との間に接続され、前記磁気結合回路は、前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S2の接続点に一端が接続された第1プライマリ巻線と、前記スイッチング素子S3および前記スイッチング素子S4の接続点に一端が接続された第2プライマリ巻線と、前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線に磁気的に結合し、前記電力調整回路に接続されたセカンダリ巻線と、を備え、前記第1プライマリ巻線の他端および前記第2プライマリ巻線の他端が共通に接続されており、前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線の接続点に前記バッテリが接続され、前記電力変換モードの動作では、前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S3が共にオンになり、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S4が共にオフになる第1状態と、前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S3が共にオフになり、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S4が共にオンになる第2状態とが交互に生じ、前記充電モードの動作では、前記第1状態、前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S4が共にオフになり、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S3が共にオンになる第3状態、前記第1状態、前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S4が共にオンになり、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S3が共にオフになる第4状態、が順に生じる過程が繰り返されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、入力電力をスイッチングによって調整する電力調整回路と、負荷回路が接続されるスイッチング回路と、前記電力調整回路および前記スイッチング回路を結合する磁気結合回路と、を備え、前記スイッチング回路は、バッテリから出力される電力に対するスイッチングによって、前記バッテリから前記負荷回路に電力を供給する電力変換モード、または、前記電力調整回路から前記磁気結合回路を介して供給される電力に対するスイッチングによって前記バッテリを充電する充電モードのいずれかで動作し、前記スイッチング回路は、直列接続され、交互にオンオフするスイッチング素子S1およびスイッチング素子S2を含むハーフブリッジUと、直列接続され、交互にオンオフするスイッチング素子S3およびスイッチング素子S4を含むハーフブリッジVと、前記負荷回路が接続されるコンデンサと、を備え、前記スイッチング素子S1の前記スイッチング素子S2側とは反対側の端子と、前記スイッチング素子S3のスイッチング素子S4側とは反対側の端子とが接続され、前記スイッチング素子S2の前記スイッチング素子S1側とは反対側の端子と、前記スイッチング素子S4のスイッチング素子S3側とは反対側の端子とが接続され、前記コンデンサは、前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S3の接続点と、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S4の接続点との間に接続され、前記磁気結合回路は、前記スイッチング素子S1および前記スイッチング素子S2の接続点に一端が接続された第1プライマリ巻線と、前記スイッチング素子S3および前記スイッチング素子S4の接続点に一端が接続された第2プライマリ巻線と、前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線に磁気的に結合し、前記電力調整回路に接続されたセカンダリ巻線と、を備え、前記第1プライマリ巻線の他端および前記第2プライマリ巻線の他端が共通に接続されており、前記第1プライマリ巻線および前記第2プライマリ巻線の接続点に前記バッテリが接続され、前記電力変換モードの動作では、前記スイッチング素子S2および前記スイッチング素子S4は、デューティ比指令値と、キャリアとの比較に応じて求められた制御信号に応じて同一タイミングでオンオフし、前記充電モードの動作では、前記スイッチング素子S2は、制御値および基準デューティ比の差異を示すデューティ比指令値と、キャリアとの比較に応じて求められた制御信号に応じてオンオフし、前記スイッチング素子S3は、前記制御値および前記基準デューティ比が加算されたデューティ比指令値と、前記スイッチング素子S2と共通のキャリアとの比較に応じて求められた制御信号に応じてオンオフすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バッテリを充電すると共に、バッテリから負荷回路に電力を供給する装置の構造を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】第1プライマリ巻線および第2プライマリ巻線に流れる電流を示す図である。
【
図4】キャリア信号、制御信号、各プライマリ巻線に流れる電流の時間波形を示す図である。
【
図5】第1プライマリ巻線および第2プライマリ巻線に流れる電流を示す図である。
【
図7】キャリア信号、制御信号、各プライマリ巻線に流れる電流の時間波形を示す図である。
【
図8】電力変換モードでの動作および充電モードでの動作を選択的に実行する制御部の構成を示す図である。
【
図9】AC/ACコンバータの構成例を示す図である。
【
図10】スイッチング電圧Vwx、およびリアクトルに流れる電流iqの時間波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、本発明の実施形態に係る電力変換装置の構成が示されている。電力変換装置は、トランス10、AC/ACコンバータ16、バッテリ20、スイッチング回路21、インバータ24および制御部28を備えている。電力変換装置は、モータジェネレータ26の駆動力によって走行する電動車両に搭載される。
【0014】
電力変換装置は、電力変換モードまたは充電モードで動作する。電力変換モードにおいて電力変換装置は、バッテリ20から出力される電力をモータジェネレータ26に供給してモータジェネレータ26を駆動し、モータジェネレータ26が回生制動によって発電した電力をバッテリ20に供給してバッテリ20を充電する。充電モードにおいて電力変換装置は、交流電源18から出力される電力をバッテリ20に供給してバッテリ20を充電する。交流電源18は、例えば商用電源であり、交流電源18としてのACアウトレットに差し込まれたプラグから電力変換装置に交流電力が供給される。
【0015】
電力変換モードでは、AC/ACコンバータ16が停止し、スイッチング回路21およびインバータ24が動作する。充電モードでは、インバータ24が停止し、AC/ACコンバータ16およびスイッチング回路21が動作する。AC/ACコンバータ16およびスイッチング回路21はトランス10で結合されており、電力変換モードおよび充電モードの両者においてトランス10が共用される。
【0016】
電力変換装置の構成について説明する。スイッチング回路21は、スイッチング素子S1およびS2によって構成されるハーフブリッジU、スイッチング素子S3およびS4によって構成されるハーフブリッジV、ならびにコンデンサ22を備えている。ハーフブリッジUは、スイッチング素子S1の一端と、スイッチング素子S2の一端とを接続したものである。スイッチング素子S1の両端には、スイッチング素子S2との接続点の側をアノードとして寄生ダイオードが接続されている。スイッチング素子S2の両端には、スイッチング素子S1との接続点の側をカソードとして寄生ダイオードが接続されている。スイッチング素子S1およびS2としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。この場合、スイッチング素子S1としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S2としてのIGBTのコレクタとが接続される。なお、一般に、IGBTには寄生ダイオードが含まれている。
【0017】
同様に、ハーフブリッジVは、スイッチング素子S3の一端と、スイッチング素子S4の一端とを接続したものである。スイッチング素子S3の両端には、スイッチング素子S4との接続点の側をアノードとして寄生ダイオードが接続されている。スイッチング素子S4の両端には、スイッチング素子S3との接続点の側をカソードとして寄生ダイオードが接続されている。スイッチング素子S3およびS4としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S3としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S4としてのIGBTのコレクタとが接続される。
【0018】
ハーフブリッジUおよびVは並列接続され、フルブリッジを構成している。すなわち、スイッチング素子S1のスイッチング素子S2側とは反対側の端子(図の上側の端子)と、スイッチング素子S3のスイッチング素子S4側とは反対側の端子(図の上側の端子)とが接続されている。また、スイッチング素子S2のスイッチング素子S1側とは反対側の端子(図の下側の端子)と、スイッチング素子S4のスイッチング素子S3側とは反対側の端子(図の下側の端子)とが接続されている。
【0019】
スイッチング素子S1およびS3の接続点と、スイッチング素子S2およびS4の接続点との間には、コンデンサ22が接続されている。
【0020】
トランス10は、第1プライマリ巻線12-1、第2プライマリ巻線12-2およびセカンダリ巻線14を備えている。第1プライマリ巻線12-1の一端は、スイッチング素子S1およびS2の接続点に接続されている。また、第2プライマリ巻線12-2の一端は、スイッチング素子S3およびS4の接続点に接続されている。第1プライマリ巻線12-1の他端と第2プライマリ巻線12-2の他端は共通に接続され、これら2つの巻線の接続点は、バッテリ20の正極端子に接続されている。バッテリ20の負極端子は、負極導体23に接続されている。スイッチング素子S2およびS4の接続点もまた、負極導体23に接続されている。
【0021】
セカンダリ巻線14の両端はAC/ACコンバータ16に接続されている。第1プライマリ巻線12-1およびセカンダリ巻線14は磁気的に結合し、第2プライマリ巻線12-2およびセカンダリ巻線14は磁気的に結合する。これによって、第1プライマリ巻線12-1、第2プライマリ巻線12-2およびセカンダリ巻線14は磁気結合回路としてのトランス10を形成している。AC/ACコンバータ16には、交流電源18が接続されている。
【0022】
スイッチング素子S1、スイッチング素子S3およびコンデンサ22の接続点と、スイッチング素子S2、スイッチング素子S4およびコンデンサ22の接続点との間には、インバータ24が接続されている。インバータ24にはモータジェネレータ26が接続されている。インバータ24およびモータジェネレータ26は、スイッチング回路21に対する負荷回路である。
【0023】
スイッチング回路21には、コンデンサ22の端子間電圧を検出し、その検出値であるコンデンサ電圧検出値Vmを制御部28に出力する電圧センサ(図示せず。)が設けられている。また、バッテリ20の正極から第1プライマリ巻線12-1と第2プライマリ巻線12-2の接続点に流れる電流を検出し、その検出値である電流検出値iLmを制御部28に出力する電流センサ(図示せず。)が設けられている。後述するように、制御部28は、コンデンサ電圧検出値Vmおよび電流検出値iLmを用いて制御信号Cn1~Cn4を生成する。制御部28は、制御信号Cn1~Cn4をそれぞれスイッチング素子S1~S4に出力し、スイッチング素子S1~S4をオンオフ制御する。制御信号Cniがハイであるときは、スイッチング素子Siはオンとなり、制御信号Cniがローであるときは、スイッチング素子Siはオフとなる。ただし、iは1~4のうちいずれかの整数である。このように、各スイッチング素子は、制御部28によってオフからオンに、または、オンからオフに制御される。
【0024】
上述のように、電力変換装置は、電力変換モードまたは充電モードで動作する。ここでは、電力変換モードでの動作について説明する。制御部28の制御によって、スイッチング素子S1およびS2は交互にオンオフする。すなわち、スイッチング素子S1がオンからオフになったときは、スイッチング素子S2はオフからオンになり、スイッチング素子S1がオフからオンになったときは、スイッチング素子S2はオンからオフになる。同様に、制御部28の制御によって、スイッチング素子S3およびS4は交互にオンオフする。
【0025】
また、スイッチング素子S1がオンのときは、スイッチング素子S3もまたオンになり、スイッチング素子S1がオフのときは、スイッチング素子S3もまたオフになる。同様に、スイッチング素子S2がオンのときは、スイッチング素子S4もまたオンになり、スイッチング素子S2がオフのときは、スイッチング素子S4もまたオフになる。
【0026】
電力変換モードでは、制御部28は、AC/ACコンバータ16の動作を停止する。
【0027】
図2(a)には、スイッチング素子S2およびS4がオンであるときに第1プライマリ巻線12-1および第2プライマリ巻線12-2に流れる電流が示されている。バッテリ20の正極端子から第1プライマリ巻線12-1に電流iL1が流れ、バッテリ20の正極端子から第2プライマリ巻線12-2に電流iL2が流れる。電流iL1は第1プライマリ巻線12-1からスイッチング素子S2を流れてバッテリ20の負極端子に至る。電流iL2は第2プライマリ巻線12-2からスイッチング素子S4を流れてバッテリ20の負極端子に至る。
【0028】
スイッチング素子S2がオンからオフになることで、第1プライマリ巻線12-1に誘導起電力が発生する。それと共にスイッチング素子S1がオンになり、バッテリ20の出力電圧に誘導起電力が加えられた昇圧電圧がコンデンサ22に印加される。
【0029】
同様に、スイッチング素子S4がオンからオフになることで、第2プライマリ巻線12-2に誘導起電力が発生する。それと共にスイッチング素子S3がオンになり、バッテリ20の出力電圧に誘導起電力が加えられた昇圧電圧がコンデンサ22に印加される。
【0030】
図2(b)には、スイッチング素子S1およびS3がオンであるときに第1プライマリ巻線12-1および第2プライマリ巻線12-2に流れる電流が示されている。バッテリ20の正極端子から第1プライマリ巻線12-1に電流iL1が流れ、バッテリ20の正極端子から第2プライマリ巻線12-2に電流iL2が流れる。電流iL1は第1プライマリ巻線12-1からスイッチング素子S1およびコンデンサ22を流れてバッテリ20の負極端子に至る。電流iL2は第2プライマリ巻線12-2からスイッチング素子S3およびコンデンサ22を流れてバッテリ20の負極端子に至る。
【0031】
バッテリ20の出力電圧に第1プライマリ巻線12-1における誘導起電力を加えた昇圧電圧が、コンデンサ22の端子間電圧よりも大きい場合にはコンデンサ22が充電される。一方、この昇圧電圧がコンデンサ22の端子間電圧より小さい場合には、インバータ24およびコンデンサ22からバッテリ20に電力が回収される。
【0032】
同様に、バッテリ20の出力電圧に第2プライマリ巻線12-2における誘導起電力を加えた昇圧電圧が、コンデンサ22の端子間電圧よりも大きい場合にはコンデンサ22が充電される。一方、この昇圧電圧がコンデンサ22の端子間電圧より小さい場合には、インバータ24およびコンデンサ22からバッテリ20に電力が回収される。
【0033】
図2(a)および(b)のいずれの状態においても、電流iL1および電流iL2によって、セカンダリ巻線14の端子間に現れる電圧は小さい。これは、第1プライマリ巻線12-1に流れる電流iL1によってトランス10のコア30に現れる磁束Φ1と、第2プライマリ巻線12-2に流れる電流iL2によってトランス10のコア30に現れる磁束Φ2とが打ち消し合うためである。このような動作によって、バッテリ20の出力電圧が昇圧され、インバータ24に出力される。
【0034】
図3には、電力変換モードにおける制御部28の構成が示されている。第1減算器32は、電圧指令値V
*からコンデンサ電圧検出値Vmを減算した第1誤差を求め、電圧制御器34に出力する。電圧制御器34は、第1誤差に対する比例積分によって第1制御値δ1を求め第2減算器36に出力する。第2減算器36は、第1制御値δ1から電流検出値iLmを減算した第2誤差を求め、電流制御器38に出力する。電流制御器38は、第2誤差に対する比例積分によって第2制御値δ2を求め加算器42に出力する。加算器42は、第2制御値δ2に基準デューティ比α0を加算したデューティ比指令値AをU相比較器44およびV相比較器46に出力する。
【0035】
U相比較器44およびV相比較器46にはキャリア信号が入力されている。基準デューティ比α0が0よりも大きく1未満の値である場合、キャリア信号には、例えば、時間波形が三角波であり波高値が1であるものが用いられる。
【0036】
U相比較器44は、キャリア信号がデューティ比指令値Aよりも小さいときにハイとなり、キャリア信号がデューティ比指令値A以上であるときにローとなる制御信号Cn2を出力する。また、反転器48は、制御信号Cn2のハイおよびローを反転した制御信号Cn1を出力する。
【0037】
V相比較器46は、キャリア信号がデューティ比指令値Aよりも小さいときにハイとなり、キャリア信号がデューティ比指令値A以上であるときにローとなる制御信号Cn4を出力する。また、反転器50は、制御信号Cn4のハイおよびローを反転した制御信号Cn3を出力する。
【0038】
図4(a)にはキャリア信号の時間波形が示されている。
図4(b)~(e)には、それぞれ、制御信号Cn1~Cn4の時間波形が示されている。さらに、
図4(f)および(g)には、それぞれ、第1プライマリ巻線12-1に流れる電流iL1および第2プライマリ巻線12-2に流れる電流iL2の時間波形が示されている。ただし、これらの時間波形は、デューティ比指令値Aが0.5であり、第2制御値δ2が0である場合のものである。
【0039】
制御信号Cn1は、キャリア信号がデューティ比指令値Aよりも小さいときにローとなり、キャリア信号がデューティ比指令値A以上であるときにハイとなる。制御信号Cn2は、制御信号Cn1のハイおよびローを反転したものである。制御信号Cn3およびCn4は、それぞれ、制御信号Cn1およびCn2と同一の時間波形を有する。
【0040】
制御信号Cn1がローであり制御信号Cn2がハイである間、電流iL1は時間経過と共に増加し、制御信号Cn1がハイであり制御信号Cn2がローである間、電流iL1は時間経過と共に減少する。これによって、電流iL1は、時間経過と共に三角波状に増減を繰り返す。電流iL1が増加している間、第1プライマリ巻線12-1に電流のエネルギーが蓄えられ、電流iL1が減少している間、第1プライマリ巻線12-1からコンデンサ22に電流のエネルギーが放出される。
【0041】
制御信号Cn3がローであり制御信号Cn4がハイである間、電流iL2は時間経過と共に増加し、制御信号Cn3がハイであり制御信号Cn4がローである間、電流iL2は時間経過と共に減少する。これによって、電流iL2は時間経過と共に三角波状に増減を繰り返す。電流iL2が増加している間、第2プライマリ巻線12-2に電流のエネルギーが蓄えられ、電流iL2が減少している間、第2プライマリ巻線12-2からコンデンサ22に電流のエネルギーが放出される。
【0042】
次に、充電モードでの動作について説明する。充電モードでは、交流電源18から供給される交流電力の力率をAC/ACコンバータ16が調整しながら、その交流電力に基づく電力をセカンダリ巻線14に出力する。充電モードでは、制御部28は、インバータ24の動作を停止する。
【0043】
充電モードにおいても、制御部28の制御によってスイッチング素子S1およびS2が交互にオンオフし、制御部28の制御によってスイッチング素子S3およびS4もまた交互にオンオフする。すなわち、制御信号Cn2は制御信号Cn1のハイおよびローを反転した信号であり、制御信号Cn4は制御信号Cn3のハイおよびローを反転した信号である。なお、制御信号Cn1~Cn4を生成する処理については後述する。
【0044】
充電モードでは、スイッチング素子S1およびS4がオフになりスイッチング素子S2およびS3がオンになるときがある。また、スイッチング素子S1およびS4がオンになりスイッチング素子S2およびS3がオフになるときがある。
図5(a)には、スイッチング素子S2およびS3がオンであるときに第1プライマリ巻線12-1および第2プライマリ巻線12-2に流れる電流が示されている。バッテリ20の正極端子から第1プライマリ巻線12-1に電流iL1が流れ、バッテリ20の正極端子から第2プライマリ巻線12-2に電流iL2が流れる。電流iL1は第1プライマリ巻線12-1からスイッチング素子S2を流れてバッテリ20の負極端子に至る。電流iL2は第2プライマリ巻線12-2からスイッチング素子S3およびコンデンサ22を流れてバッテリ20の負極端子に至る。
【0045】
図5(b)には、スイッチング素子S1およびS4がオンであるときに第1プライマリ巻線12-1および第2プライマリ巻線12-2に流れる電流が示されている。バッテリ20の正極端子から第1プライマリ巻線12-1に電流iL1が流れ、バッテリ20の正極端子から第2プライマリ巻線12-2に電流iL2が流れる。電流iL1は第1プライマリ巻線12-1からスイッチング素子S1およびコンデンサ22を流れてバッテリ20の負極端子に至る。電流iL2は第2プライマリ巻線12-2からスイッチング素子S4を流れてバッテリ20の負極端子に至る。
【0046】
図5(a)および(b)のいずれの状態においても、AC/ACコンバータ16からセカンダリ巻線14に出力された交流電圧、スイッチング素子S1~S4のスイッチング状態、バッテリ20の出力電圧、およびコンデンサ22の充電電圧に応じた電流iL1および電流iL2が、第1プライマリ巻線12-1および第2プライマリ巻線12-2にそれぞれ流れる。
【0047】
充電モードでは、電流iL1および電流iL2の大きさに差異が生じる。これによって、電流iL1および電流iL2の大きさの差異に応じた電流がバッテリ20の正極端子に流入しバッテリ20が充電される。
【0048】
図6には、充電モードにおける制御部28の構成が示されている。
図3に示されている構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。第1減算器32、電圧制御器34、第2減算器36および電流制御器38の処理によって第2制御値δ2が生成され、電流制御器38からU相減算器52およびV相加算器54に第2制御値δ2が出力される。U相減算器52は、第2制御値δ2
を基準デューティ比β0
から減算したU相デューティ比指令値AUをU相比較器44に出力する。V相加算器54は、第2制御値δ2に基準デューティ比β0を加算したV相デューティ比指令値AVをV相比較器46に出力する。
【0049】
U相比較器44は、キャリア信号がU相デューティ比指令値AUよりも小さいときにハイとなり、キャリア信号がデューティ比指令値AU以上であるときにローとなる制御信号Cn2を出力する。また、反転器48は、制御信号Cn2のハイおよびローを反転した制御信号Cn1を出力する。
【0050】
V相比較器46は、キャリア信号がV相デューティ比指令値AVよりも小さいときにハイとなり、キャリア信号がV相デューティ比指令値AV以上であるときにローとなる制御信号Cn3を出力する。また、反転器50は、制御信号Cn3のハイおよびローを反転した制御信号Cn4を出力する。
【0051】
図7(a)にはキャリア信号の時間波形が示されている。
図7(b)~(e)には、それぞれ、制御信号Cn1~Cn4の時間波形が示されている。さらに、
図7(f)および(g)には、それぞれ、第1プライマリ巻線12-1に流れる電流iL1および第2プライマリ巻線12-2に流れる電流iL2の時間波形が示されている。
図7(h)にはセカンダリ巻線14の端子間電圧が示されている。
【0052】
制御信号Cn1は、キャリア信号がU相デューティ比指令値AUよりも小さいときにローとなり、キャリア信号がデューティ比指令値AU以上であるときにハイとなる。制御信号Cn2は、制御信号Cn1のハイおよびローを反転したものである。
図7(b)および(c)において実線で示された制御信号Cn1およびCn2の時間波形は、U相デューティ比指令値AUがβ0=0.5の場合の時間波形である。
図7(b)および(c)において破線で示された制御信号Cn1およびCn2の時間波形は、U相デューティ比指令値AUがβ0=0.5から第2制御値δ2を減算した値である場合の時間波形である。
【0053】
制御信号Cn3は、キャリア信号がV相デューティ比指令値AV以上であるときにローとなり、キャリア信号がデューティ比指令値AVよりも小さいときにハイとなる。制御信号Cn4は、制御信号Cn3のハイおよびローを反転したものである。
図7(d)および(e)において実線で示された制御信号Cn3およびCn4の時間波形は、V相デューティ比指令値AVがβ0=0.5の場合の時間波形である。
図7(d)および(e)において破線で示された制御信号Cn1およびCn2の時間波形は、V相デューティ比指令値AVがβ0=0.5に第2制御値δ2を加算した値である場合の時間波形である。
【0054】
制御信号Cn1がローであり制御信号Cn2がハイである間、電流iL1は時間経過と共に増加し、制御信号Cn1がハイであり制御信号Cn2がローである間、電流iL1は時間経過と共に減少する。これによって、電流iL1は、時間経過と共に三角波状に増減を繰り返す。
【0055】
制御信号Cn3がローであり制御信号Cn4がハイである間、電流iL2は時間経過と共に増加し、制御信号Cn3がハイであり制御信号Cn4がローである間、電流iL2は時間経過と共に減少する。これによって、電流iL2は時間経過と共に三角波状に増減を繰り返す。
【0056】
図7(a)に示されているように、U相デューティ比指令値AUがβ0=0.5から第2制御値δ2を減算した値を有し、V相デューティ比指令値AVがβ0=0.5に第2制御値δ2を加算した値を有している。これによって、制御信号Cn1~Cn4のそれぞれのパルス幅は、
図7(b)~(e)の破線で示されているように増減し、電流iL1およびiL2の大きさに相違が生じる。
【0057】
セカンダリ巻線14には、
図7(h)に示されているようなキャリア信号に同期した矩形波電圧がAC/ACコンバータ16から出力されている。スイッチング回路21のスイッチング状態に加えて、AC/ACコンバータ16からセカンダリ巻線14に出力される電圧に応じて、第1プライマリ巻線12-1に電流iL1が流れ、第2プライマリ巻線12-2に電流iL2が流れる。そして、電流iL1およびiL2の大きさの相違に応じてバッテリ20に流れる電流によってバッテリ20が充電される。
【0058】
図8には、電力変換モードでの動作および充電モードでの動作を選択的に実行する制御部28の構成が示されている。
図3および
図6に示されている構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
制御部28は、第1減算器32、電圧制御器34、第2減算器36および電流制御器38に加えて、モード設定部58、選択部59、電力変換モード・信号生成部60、充電モード・信号生成部62を備えている。電力変換モード・信号生成部60は、
図3に示された基準デューティ比発生部40、加算器42、U相比較器44、V相比較器46、反転器48および50を備えている。充電モード・信号生成部62は、
図6に示された基準デューティ比発生部56、U相減算器52、V相加算器54、U相比較器44、V相比較器46、反転器48および50を備えている。
【0060】
選択部59は、モード設定部58の制御に応じて、電流制御器38が出力する第2制御値δ2を電力変換モード・信号生成部60、または、充電モード・信号生成部62に出力する。電力変換モードにおいてモード設定部58は、電流制御器38が出力する第2制御値δ2を電力変換モード・信号生成部60に出力するよう選択部59を制御する。充電モードにおいてモード設定部58は、電流制御器38が出力する第2制御値δ2を充電モード・信号生成部62に出力するよう選択部59を制御する。電力変換モードにおいて、電力変換モード・信号生成部60は、キャリア信号および第2制御値δ2に基づいて制御信号Cn1~Cn4を出力する。充電モードにおいて、充電モード・信号生成部62は、キャリア信号および第2制御値δ2に基づいて制御信号Cn1~Cn4を出力する。
【0061】
図9には、AC/ACコンバータ16の構成例が示されている。AC/ACコンバータ16は、交流電源18から電力変換装置に供給される電力の力率を調整する電力調整回路としての機能を有している。AC/ACコンバータ16は、スイッチング素子S5およびS6によって構成されるハーフブリッジW、スイッチング素子S7およびS8によって構成されるハーフブリッジX、ならびにリアクトル64を備えている。ハーフブリッジWは、スイッチング素子S5の一端と、スイッチング素子S6の一端とを接続したものである。スイッチング素子S5およびS6には、オンのときに双方向に電流が流れる双方向スイッチング素子が用いられる。同様に、ハーフブリッジXは、スイッチング素子S7の一端と、スイッチング素子S8の一端とを接続したものである。スイッチング素子S7およびS8には、オンのときに双方向に電流が流れる双方向スイッチング素子が用いられる。
【0062】
ハーフブリッジWおよびXは並列接続され、フルブリッジを構成している。すなわち、スイッチング素子S5の上側の端子とスイッチング素子S7の上側の端子とが接続されている。また、スイッチング素子S6の下側の端子とスイッチング素子S8の下側の端子とが接続されている。
【0063】
スイッチング素子S5およびS6の接続点にはリアクトル64の一端が接続されている。リアクトル64の他端とスイッチング素子S7およびS8の接続点との間には、交流電源18が接続されている。
【0064】
制御部28から出力される制御信号Cn5およびCn6によって、スイッチング素子S5およびS6は交互にオンオフする。同様に制御部28から出力される制御信号Cn7およびCn8によって、スイッチング素子S7およびS8は交互にオンオフする。
【0065】
制御部28によって、スイッチング素子S5~S8は、交流電源18が出力する交流電圧の時間波形と同様の時間波形を有する電流がリアクトル64に流れるようにスイッチングされる。これによって、交流電源18からトランス10に供給される電力の力率が適切な値に調整される。
【0066】
図10には、スイッチング素子S5およびS6の接続点と、スイッチング素子S7およびS8の接続点との間に現れるスイッチング電圧Vwxの時間波形が示されている。また、リアクトル64に流れる電流iqの時間波形がスイッチング電圧Vwxの時間波形と共に示されている。
【0067】
スイッチング電圧Vwxは、交流電源18が出力する電圧に応じて極性およびパルス幅が変化する。すなわち、交流電源18の出力電圧の極性と同一の極性を有し、出力電圧が大きいとき程パルス幅が長くなり、出力電圧が小さいとき程パルス幅が短くなる。
【0068】
スイッチング電圧Vwxに応じて流れる電流は、スイッチング電圧Vwxの時間波形を平滑化した時間波形となり、正弦波に近似された時間波形となる。これによって、交流電源18からAC/ACコンバータ16およびトランス10を介してスイッチング回路21に供給される電力の力率が適切に調整され、交流電源18からバッテリ20に十分な電力が供給される。
【0069】
ここでは、交流電源18が単相交流電源である場合について説明した。交流電源18が多相交流電源である場合には、相数に応じた数のハーフブリッジを備える構成が採用される。すなわち、複数のハーフブリッジのそれぞれが備える2つのスイッチング素子の接続点に、多相交流電源の対応する相が接続され、各相にリアクタンスが設けられる。
【0070】
本実施形態に係る電力変換装置によれば、AC/ACコンバータ16およびスイッチング回路21がトランス10によって結合されている。スイッチング回路21が備えるスイッチング素子S1~S4のスイッチングの状態を異ならせることで、電力変換モードでの動作と充電モードでの動作とが切り換えられる。したがって、電力変換モードと充電モードとの切り換えにスイッチ回路等のハードウエアが用いられなくてもよく、構成が単純化される。
【0071】
また、ユーザが触れる側のAC/ACコンバータとバッテリ20側の回路とが、トランス10によって絶縁されるため、AC/ACコンバータ側の絶縁設計が容易となる。
【0072】
なお、上記では、負荷回路をインバータ24およびモータジェネレータ26として、電力変換装置が電動車両に搭載される実施形態について説明した。負荷回路は、一般的な産業用機械であってもよいし、家庭用の電源供給装置であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 トランス、12-1 第1プライマリ巻線、12-2 第2プライマリ巻線、14 セカンダリ巻線、16 AC/ACコンバータ、18 交流電源、20 バッテリ、21 スイッチング回路、22 コンデンサ、23 負極導体、24 インバータ、26 モータジェネレータ、28 制御部、30 コア、32 第1減算器、34 電圧制御器、36 第2減算器、38 電流制御器、40,56 基準デューティ比発生部、42 加算器、44 U相比較器、46 V相比較器、48,50 反転器、52 U相減算器、54 V相加算器、58 モード設定部、59 選択部、60 電力変換モード・信号生成部、62 充電モード・信号生成部。