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特許7029275距離判定のための受信デバイス、センサデバイス、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】距離判定のための受信デバイス、センサデバイス、及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/486 20200101AFI20220224BHJP
   H01L 31/08 20060101ALI20220224BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20220224BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20220224BHJP
【FI】
G01S7/486
H01L31/08
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G01S17/89
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017212985
(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公開番号】P2018109607
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】16197243.5
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515321108
【氏名又は名称】エスプロス フォトニックス アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ポップ
(72)【発明者】
【氏名】ビート デ コイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シモン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ホーバス
(72)【発明者】
【氏名】リン リン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュラー
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ ホフマン
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/128198(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0145281(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G01C 3/00-3/32
H01L 31/00-31/02
31/08-31/10
31/18
H01L 27/14-27/148
27/30
29/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(14)からの距離を判定するための受信デバイス(1)であって、
前記物体(14)によって反射された信号(16)を受信して光誘起電荷キャリアを生成するための受信機を備え、
前記受信機は、光子を検出するための半導体構造(2)を備え、
前記半導体構造(2)は、背面から照光するように設計され、
前記半導体構造(2)は、光誘起電荷キャリアを生成するための、背面(B)に面する感光性領域(4)を有する半導体基板(3)と、電荷キャリアを輸送するための、前面(F)に面する輸送領域(6)と、を有し、
前記感光性領域(4)及び前記輸送領域(6)は、前記感光性領域(4)と前記輸送領域(6)との間に通路(7)を有する分離層(5)によって互いに空間的に分離され、前記分離層(5)は、埋め込み層として具現化され、
前記輸送領域(6)は、少なくとも2つのゲート(8,8a,8b)が互いに隣接して位置し、そのうちのゲート(8a,8b)の少なくとも1つが前記通路(7)とのオーバーラップ領域(9)内に位置する構成を有し、
前記輸送領域(6)内にある前記ゲート(8,8a,8b)それぞれの下で電荷キャリアを動かすために、前記ゲート(8,8a,8b)のそれぞれに電圧を印加可能である、受信デバイス(1)において、
前記ゲート(8,8a,8b)のそれぞれの下で電荷キャリアを動かすことによって、それらを前記輸送領域(6)に沿って輸送するために、前記ゲート(8,8a,8b)に電圧を連続して交互に印加するためのクロック発振器(10)が設けられ、
時間解像度を空間解像度に変換するために、前記クロック発振器(10)は、電荷キャリアを、前記感光性領域(4)から時系列に予め定義された間隔で前記輸送領域(6)に動かし、そこから前記輸送領域(6)に沿って輸送するように設計され、
前記輸送領域(6)は、CCDのコンベアベルト構造として具現化され、それにより、互いに隣接配置される前記ゲートに電位が印加され、それにより、電荷キャリアのパケットを、ゲートからゲートへ動かすために、その領域に位置する前記電荷キャリアが引き寄せられる、または、反発されることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項2】
請求項1記載の受信デバイス(1)であって、
前記通路(7)とのオーバーラップ領域(9)内に配置される前記少なくとも1つのゲート(8a,8b)は、対応する1つのゲート及び/または2つのゲート(8a,8b)に電圧を印加可能であることによって、前記電荷キャリアを、前記感光性領域(4)から前記輸送領域(6)に、前記通路(7)を通って動かすように設計されることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項3】
求項1または請求項2に記載の受信デバイス(1)であって、
前記ゲート(8,8a,8b)は、前記半導体基板(3)の前面(F)に配置される金属コンタクトとして具現化されていることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項4】
求項1~請求項3のいずれか1項に記載の受信デバイス(1)であって、
前記感光性領域(4)及び前記通路(7)は、第1のドーピングを有し、
前記分離層(5)は、第2のドーピングを有し、前記輸送領域(6)は、第3のドーピングを有し、
前記第2のドーピングは、第1及び/または第3のドーピングとは逆符号であることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項5】
請求項4記載の受信デバイス(1)であって、
前記第1のドーピングは、前記第2及び/または第3のドーピングよりも弱くされていることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の受信デバイス(1)であって、
前記第3のドーピングは、前記第1のドーピングよりも強くされていることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項7】
求項1~請求項6のいずれか1項に記載の受信デバイス(1)であって、
前記輸送領域(6)は、前記電荷キャリアの量を判定するための読み取りデバイス(11)を備えることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項8】
求項1~請求項7のいずれか1項に記載の受信デバイス(1)であって、
光信号、または光パルスの時系列強度プロファイルにおける最大値を判定するように設計される評価装置(A)が設けられていることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の受信デバイス(1)であって、
光パルスの時系列強度プロファイルにおける最大値を判定するように設計される評価装置(A)が設けられ、前記評価装置(A)が、最大値を判定する、平均値を形成する、または、パルスの立ち上がりエッジからパルスの立ち下がりエッジへの切り替わりの検出を行うように設計されていることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項10】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の受信デバイス(1)であって、
光パルスの時系列強度プロファイルにおける最大値を判定するように設計される評価装置(A)が設けられ、前記評価装置(A)が、最大値を判定する、平均値を形成する、または、パルスの立ち上がりエッジからパルスの立ち下がりエッジへの切り替わりの検出を行うように設計され、更には、光パルスの発光から反射された光パルスの受信までの期間を判定するための計時デバイスが設けられていることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項11】
求項1~請求項10のいずれか1項に記載の受信デバイス(1)であって、
前記受信機は、マトリックスとして具現化されていることを特徴とする受信デバイス(1)。
【請求項12】
物体(14)からの距離を判定するためのセンサデバイス(12)であって、光パルスを発光する送信機(13)と、前記物体(14)で反射された光パルスの信号を検出するため請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の受信デバイス(1)と、が設けられ、前記センサデバイス(12)が、TOFセンサデバイスとして具現化されていることを特徴とするセンサデバイス(12)。
【請求項13】
パルス光の伝播時間を測定して物体からの距離を判定するための方法であって、
系列強度プロファイル内で最大値を有する光パルス(15)を発光するステップと、
光誘起電荷キャリアを生成するために、前記物体で反射された信号(16)を、半導体構造(2)の半導体基板(3)の感光性領域(4)で受信するステップと、
輸送領域(6)を設けるステップであって、分離層(5)によって分離され、前記電荷キャリアを輸送する輸送経路と、前記感光性領域(4)と前記輸送領域(6)との間の通路(7)と、を有し、その結果、前記電荷キャリアが、前記通路(7)を通って輸送され得るが、前記分離層(5)を通っては輸送されない、埋め込み層が前記分離層(5)として用いられる輸送領域(6)を設けるステップと、
前記輸送経路の範囲内で互いに隣接する少なくとも2つのゲート(8,8a,8b)を設けるステップであって、それらゲート(8a,8b)のうちの少なくとも1つが前記通路(7)とのオーバーラップ領域(9)に位置し、その結果、電位の印加によって前記電荷キャリアが前記通路(7)を通って引き寄せられ得る、少なくとも2つのゲート(8,8a,8b)を設けるステップと、
光パルスの強度の時系列プロファイルを前記輸送経路全体にわたって空間的にマッピングするために、前記電荷キャリアを、別々の時間間隔で、前記通路(7)を通って前記輸送領域(6)内へと輸送するステップと、
クロック制御により前記電荷キャリアが前記輸送経路を通って移動するステップと、
が実行され、
求項1~請求項11のいずれか1項に記載の受信デバイス(1)または請求項12記載のセンサデバイス(12)が用いられ、
パルスの強度プロファイルの空間マッピングの焦点が、平均値の形成及び/またはエッジ検出によって判定され、
前記輸送領域(6)内にある前記ゲート(8,8a,8b)それぞれの下で電荷キャリアを動かすために、前記ゲート(8,8a,8b)のそれぞれに電圧が印加される
方法であって、
前記ゲート(8,8a,8b)それぞれの下で電荷キャリアを動かすことによって、それらを前記輸送領域(6)に沿って輸送するために、クロック発振器(10)によって前記ゲート(8,8a,8b)に電圧を交互に連続印加し、
時間解像度を空間解像度に変換するために、前記クロック発振器(10)によって、前記電荷キャリアを、前記感光性領域(4)から時系列に予め定義された間隔で前記輸送領域(6)に動かし、そこから前記輸送領域(6)に沿って輸送し、
コンベアベルト構造として具現化される前記輸送領域(6)によって、互いに隣接配置される前記ゲートに電位を印加することによって、電荷キャリアのパケットをゲートからゲートへ動かすために、その領域に位置する前記電荷キャリアが引き寄せられる、または、反発されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに係る物体からの距離を判定するための受信デバイス、請求項10のプリアンブルに係るセンサデバイス、及び、請求項11のプリアンブルに係る物体からの距離を判定する方法に関する。
【0002】
多数の距離センサが従来技術で知られており、特に、例えば、光信号の伝播時間を測定することによって距離を判定するTOF(time of flight:飛行時間)センサが知られている。国際公開第2016/128198号は、例えば、変調周波数を用いることによって、検出された電荷キャリアの量を、対応する時間間隔に分割し、それぞれをコンパイルするTOF距離センサを開示する。このために、対応する復調ピクセルが使用される。相関性によって、伝播時間または距離の差が得られる位相情報を、対応して受信することが可能である。
【0003】
本発明の目的は、距離を可能な限り正確に判定できるようにすることである。
【0004】
その目的は、冒頭部分で説明した形式の距離を判定するための受信デバイス、センサデバイス、及び方法を基礎に、それぞれ請求項1,10,及び11によって特徴付けられる特徴を用いて達成される。
【0005】
従属請求項で特定される手段により、本発明の有利な実施形態及び発展が可能になる。
【0006】
本発明に係る受信デバイスは、物体からの距離を判定するのに役立つ。受信デバイスは、例えば車庫や昇降機の扉やゲート、自動車分野でのセンサ、または駐車場等の監視システムの、監視デバイスという文脈において、例えば、光学センサデバイスの一構成要素として使用可能である。したがって、本発明に係る受信デバイスは、まず、距離を判定する対象の物体で反射された反射信号を受信するための受信機を備える。信号を受信すると、光誘起電荷キャリアが生成される。
【0007】
従って、本発明に係る受信デバイスは、以下に示す特徴やデザインによって特徴づけられる。受信機は、光子を検出するための半導体構造を備える。この受信された光子は、物体で反射した信号から発生する。
【0008】
このような状況において、半導体構造は次に背面から照光するように設計される。背面照光は、一般的に、検出のために相対的に広い照光領域を使用可能であるという利点を有する。検出対象の発光光が、例えば前面側から別の半導体部品や電子部品が実装されている半導体構造上に衝突する場合、一般に、利用可能な検出領域はより狭くなる。前面側から照光する場合、その領域の少なくとも一部は、例えば、信号を評価したりさらに処理したりすることに供されるこれら別の電子部品で覆われている。背面照光は更に、半導体基板内で、光誘起電荷キャリアを生成する感光性領域として具現化される相対的に広い領域が利用可能になるという利点をもたらす。この感光性領域は、対応して背面に面する。
【0009】
しかし、感光性領域に加えて、半導体構造は、電荷キャリアを輸送する輸送領域も備える。まず、生成された電荷キャリアは、感光性領域からこの輸送領域を通って離れる方向に、または前方に輸送され得る。特に、輸送領域はまた、時系列シーケンスを空間的シーケンスへと変換することを可能にし、この空間的シーケンスを用いることによって、特には、時間測定を正確に行い、距離判定を向上させることができる。感光性領域と輸送領域とは分離層によって互いに分離されているが、感光性領域と輸送領域との間にある通路は例外である。この通路によって、電荷キャリアは、感光性領域から輸送領域へと移動することができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、分離層は埋め込み層として具現化され得る。埋め込み層は、バルク材料を用いて、例えばイオン注入を利用して形成可能である。分離層の遮蔽効果、つまり分離効果は、ドーピングによって得ることができる。しかし、この分離層は、基本的に、不導体層として具現化され得る。分離層をバルクに塗布することも可能であり、この場合、分離層の上方にある領域は、さらなる層を成長させることで形成され、その結果、ある種のサンドイッチ構造が形成される。
【0011】
通路は特に、電荷キャリアが、定義された位置で輸送領域の周囲へと移動することを可能にする。したがって、別々の量の電荷キャリアが、ある時間間隔で、通路の領域から輸送領域を通って前方に輸送され得る。したがって、これは、特定の時間に、または特定の時間間隔内で、半導体基板において生成された電荷キャリア量に、一つの位置を固定して割り当てる結果をもたらす。電荷キャリアを輸送するために、輸送領域は、少なくとも2つのゲートが互いに隣接して位置し、そのうちのゲートの少なくとも1つが通路とのオーバーラップ領域に位置する構成を有する。したがって、通路とのオーバーラップ領域内にあるこれらのゲートは、感光性領域内の電荷キャリアに直接作用することができ、例えば、通路を介して引き寄せることができる。
【0012】
半導体構造の感光性領域内に生成された電荷キャリアは、ゲートの電位の影響を受け得る。よって、輸送領域内にあるゲートそれぞれの下で電荷キャリアを動かすために、ゲートの各々に電圧を印加可能である。その結果、通路とのオーバーラップ領域内に配置されるゲートは、電荷キャリアを感光性領域の外側に動かし、電荷キャリアを、その周囲、つまり輸送領域内へと輸送することができる。
【0013】
通路とのオーバーラップ領域に位置するゲートに隣接して配置されている別のゲートは、電荷キャリア量を確実に前方に輸送することができる。この感光性領域から輸送領域への電荷キャリアの「吸い取り」、そして輸送領域内での前方輸送を通じて、電荷キャリアは、そのキャリアが生成された時間または時間間隔に応じて、感光性領域から取り出されて前方に輸送される。よって、受信デバイスを用いたこの時系列シーケンスから、信号の空間的シーケンスまたは空間的表示が取得される。予め定義された時系列シーケンスの、対応する空間座標への割り当ては、輸送領域の幾何学的な配置、つまり輸送領域内のゲートの空間的構成に起因する。ゲートを互いに隣接して配置した場合、時間的な座標は、ゲートのパス配置に沿って、それぞれ空間座標に割り当てられる。
【0014】
この時間的-空間的割り当てを簡素化するために、及び、それが定期的かつ連続的に行われるようにするために、ゲートに電圧を連続して交互に印加するためのクロック発振器が設けられる。よって、電荷キャリアはそれぞれのゲート下で動かされる、つまり輸送領域に沿って輸送される。その結果、連続検出が可能になり、クロックの仕様により、輸送経路上の各点に対して別々の時間的な座標が割り当てられる。クロック選択の結果として、特に、時間解像度を決定することも可能である。一般的に、輸送中に損失する電荷キャリアができる限り少なくなるように、クロック周波数を、ゲートからゲートへの電荷キャリア輸送に確実に適応させることが必要である。
【0015】
本発明の一実施形態において、感光性領域及び通路は第1ドーピングを、一方で、分離層は第2ドーピングを、輸送領域は第3ドーピングを有している。第2ドーピングは、したがって分離層に割り当てられるが、第1ドーピングまたは第3ドーピングとは逆符号であり、この結果、電荷キャリアを遮蔽することができる。
【0016】
既に説明されているように、本発明の一実施形態において、通路とのオーバーラップ領域に配置されている少なくとも1つのゲートは、このゲートに対応する電圧を印加できることによって、電荷キャリアを、感光性領域から輸送領域へと通路を介して動かすように設計される。また、通路領域は、2つ以上のゲートで覆われることも考えられる。後に生成される別の電荷キャリアのために感光性領域を順にクリアするためには、電荷キャリアが感光性領域から離れる方向に輸送されることが必要である。さらに、既に感光性領域から移動した電荷キャリアを前方へと輸送している間には、これに対応する電荷キャリア量が、輸送経路上で前方に輸送可能でなければならず、その結果、この量に、検出時間または期間に相当する空間座標が割り当てられる。
【0017】
したがって、クロック発振器は、時間解像度を空間解像度に変換することに役立ち、ここで、クロック発振器は、電荷キャリアを、時系列に予め定義された間隔で、感光性領域から輸送領域へと動かして、電荷キャリアを、そこから輸送領域に沿って輸送するように設計される。クロック速度により、受信信号をその時系列プロファイル内でどれだけ精密にサンプリングするかを調整することもできる。
【0018】
本発明によれば、輸送領域は、CCD(charge-coupled device:電荷結合素子)のコンベアベルト構造として具現化されている。コンベアベルト構造では、複数の電極またはゲートが互いに隣接配置され、そこに電位が交互に印加され、その結果として、その領域にある電荷キャリアが引き寄せられたり、反発したりする。したがって、電荷キャリアの量またはパケットを、ゲートからゲートへ動かすことができる。CCDの場合もまた、ゲートには電位が相応して交互に印加され、その電位は、例えば周囲にある対応する電荷キャリアを引き寄せることができる。輸送のために、例えば、特定の量の電荷キャリアがゲート下に位置付けられ、そのゲートに電位が印加される。次に、同じ電位がそのゲートに隣接するゲートに印加される。これにより、電荷キャリアの一部が、隣接する2番目のゲートへと動く。次に第1ゲートの電位を変化させることによって、電荷キャリアの全体量が第2ゲートに引き寄せられ、その下に集まる。電荷キャリアの輸送はこのようにして実施可能である。
【0019】
本発明の一例示的実施形態において、ゲートは、半導体基板の前面側、つまり輸送領域に面する側に配置される金属コンタクトとして具現化され得る。金属コンタクトにより、電荷キャリアを比較的高電位にさらすことができる。その結果、輸送が向上し、輸送中の電荷キャリアの損失を低減することができる。
【0020】
光誘起電荷キャリア生成を促進させるために、一例示的実施形態において、感光性領域及び通路(第1ドーピング)は、比較的弱くドープされる。分離層(第2ドーピング)が良好な分離、つまり絶縁を形成するために、大幅に高くドープされていると効果的である。
【0021】
電荷キャリアの迅速な輸送を可能にするために、輸送領域内の第3ドーピングを、比較的強く実施することもできる。
【0022】
検出された信号をその時系列シーケンスで最後に読み取ることができるように、輸送領域は、電荷キャリアの量を判定するための読み取りデバイスを備える。この読み取りプロセスは、特に、電荷キャリア量が、輸送経路またはゲートを通って移動し、読み取りデバイスに入るシーケンスで行われる。電荷キャリア量の判定の際には、一般的に、時間プロファイルまたは空間的プロファイルでの判定された量の相対差分を検出できることのみが必要である。反対に、個々の絶対値を判定することは必要ではない。電荷キャリア量の相対的な大きさの比較のみを調べるようにして、信号のプロファイルを、信号の極値を非常に精度よく検出できる程度まで判定することが少なくとも可能である。これは、検出された信号の主要なプロファイルが既知である場合には、より当てはまる。信号が例えばガウシアンパルスである場合、このパルスは、極値、すなわち最大値のある、従前知られている定形形状であることが推測される。したがって、信号の時系列シーケンスでの形状は、重み付けによる平均値の形成で、または、信号の正の勾配またはエッジを判定することによって再構築可能であり、特に、(時系列シーケンスにおける)最大値の位置を非常に正確に判定することができる。その結果、信号が使用した伝播時間を精度よく判定することも相応じて可能なので、高精度な距離の測定も可能になる。
【0023】
したがって、本発明の実施形態の一変形例において、例えば光パルスの発光から反射された光パルスの受信までの間の期間を判定する計時デバイスを設けることが可能である。センサデバイスの種類によっては、伝播時間、位相シフト等を用いて明示的に動作可能である。特に、本発明の一実施形態において、光信号または光パルスの時系列強度プロファイル内での最大値を判定するように設計される評価装置を設けることが可能である。このために、平均値(相加平均、相乗平均)を求めることができる。
【0024】
受信デバイスまたは受信機に到達し、半導体基板またはその感光性領域内で検出された信号は、時間プロファイルを有している。よって、対応する時間間隔において、信号の一部は、電荷キャリア量の形で、感光性領域から離れる方向に輸送されて、輸送領域の輸送経路上へと移動する。次の検出時間間隔では、受信された光信号の新たな一部が電荷キャリアに変換されて、同様に輸送領域の輸送経路上へと動かされるが、先に輸送された電荷量に対する時系列のオフセットを有しており、よって、同じ時点において異なる空間座標を有している。これら対応するサンプリングされた信号の一部はそれぞれ、時系列プロファイル内において連続して、輸送経路上にある予め定義された空間点を通って移動するので、信号検出時間または信号発生時間と輸送領域上の輸送経路内の空間座標との間には別個の割り当てが存在する。特に信号が、既に予め定義された形状、効果的には極値を1つ有する単純な形状、例えばガウシアンパルスである場合には、電荷分布の空間焦点は、平均値の形成または勾配を用いたエッジの検出によって判定することができる。平均値形成やエッジ検出により、検出された信号の焦点を、ゲート構造によって予め定義された解像度よりもより高精度に、また、予め定義されたクロッキングよりもタイミングの観点でより正確に判定することが可能になる。したがって、所望の距離を非常に精密に測定できて効果的である。
【0025】
さらに、本発明はまた、時間プロファイル内で急速に変化する信号を「均等に」することによって、より良好に処理可能であり、これは、なぜなら、信号は比較的低い解像度だけで標本化されるが、空間焦点や時間的焦点に関する情報は保持したままであるからである。
【0026】
本発明の一発展形において、受信機は特にマトリックスとして具現化され得る、つまり、距離測定は、取得可能な空間情報のみでなく、むしろ、マトリックスによって、二次元構造も、対応してサンプリングされ得る。従って、特に3Dセンサを効果的に製造可能である。特に、深さ方向の解像度では、このような3Dセンサは、特に高いレベルの効率をもたらす。
【0027】
したがって、物体からの距離を判定するための本発明に係るセンサデバイスは、光パルスを発光するための送信機と、本発明に係る受信デバイスまたは本発明の一例示的実施形態に係る受信デバイスとが使用される点で特徴づけられる。センサデバイスは特に、TOFセンサデバイスとして具現化され得る。したがって、上述したように、本発明または本発明の対応する例示的実施形態の効果は、このようなセンサデバイスに対して利用可能である。
【0028】
さらに、本発明に係る、パルスの伝播時間を測定して物体からの距離を判定するための方法は、以下の方法ステップによって特徴づけられる。まず、光パルスを発光する、特には、時系列強度プロファイル内で最大値を有する光パルスを発光する。光パルスは物体で反射され、その反射信号を受信するが、この目的で、光誘起電荷キャリアを生成するために、半導体構造の半導体基板の感光性領域を用いる。輸送領域であって、分離層によって感光性領域とは分離されるが、通路を有し、このため、電荷キャリアが通路を通って輸送され得るが分離層を通ることはできない輸送領域が、半導体構造内に設けられる。
【0029】
一例示的実施形態において、通路は、感光性領域または輸送領域と比較して同符号のドーピングを有し得る。
【0030】
輸送領域内の輸送経路の領域には、互いに隣接する少なくとも2つのゲートが設けられ、ここで通路とのオーバーラップ領域に配置されているゲートが、感光性領域からの電荷キャリアが輸送領域へと移動することを確実にすることができる。輸送経路を介した電荷キャリアの移動は、クロック制御で行われる。全体的に見て、本方法を実行するために、本発明または本発明の例示的実施形態に係る受信デバイスまたはセンサデバイスが使用可能である。よって、検出された信号の時系列シーケンスは、空間的シーケンスへと変換される。ラスタライズされたパルスのシーケンスは、輸送経路を介して移動することで測定可能である。電荷分布の空間焦点、従って信号の時間的な焦点は、今度は平均値の形成またはエッジ検出によって判定可能である。この判定は、クロッキングによって予め定義された時系列のラスタライズよりも精密であり得る。信号評価に利用可能な時間は、信号そのものの時間を通じての変化よりも長い時間であってもよい。したがって、検出は、比較的コスト効率の良い方法で行うことができる。
【0031】
[例示的実施形態]
本発明の例示的実施形態は、図面に図示され、さらなる詳細や効果の明細と共に、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は本発明に係る受信デバイスの概略図を示す。
図2図2は本発明に係るセンサデバイスの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明に係る受信デバイス1の概略図を示す。受信デバイスまたは受信機は、半導体基板3を有する半導体構造2を備える。さらに、半導体構造2は、前面F及び背面Bを有し、検出対象の光信号Sは、背面Bに衝突する。背面Bの領域には、感光性領域4が存在する。検出対象の光子がこの感光性領域を透過すると、電子-正孔対の分離が起こる、つまり光誘起電荷キャリアが生成される。
【0034】
感光性領域4は、初め、感光性領域4と同じ符号のドーピングを有する分離層5によって、別の領域、つまり輸送領域6から分離されている。しかし、分離層5は、連続的になるように具現されているのではなく、感光性領域4及び輸送領域6と同じ符号のドーピングを有する通路7を有している。電荷キャリアは、感光性領域から輸送領域6へ、この通路7を介して通過することができる。輸送領域6は、感光性領域4と比較して大幅に強いドーピングを有する。
【0035】
前面Fに面する輸送領域6の上部領域には、個別のゲート8が、輸送領域6の輸送経路に沿って配置されている。ゲート8a,8bが配置される場所には、通路7とのオーバーラップ領域9が位置付けられる。これらのゲート8a,8bへの電位または電圧の印加の結果として、電荷キャリアは、感光性領域4から輸送領域6へ、通路7を介して通過することができる。クロック発振器10を用いることにより、電圧がゲート8に、ゲート8a,8bから始まって図1の輸送経路の右手側の端の範囲まで連続印加される。
【0036】
ゲートに電圧が印加されたことを受けて電子が当該ゲート下で移動した場合、次のクロックパルスにおいて、当該ゲートに隣接するゲートにも、同じ符号の電圧が印加され、その結果、電荷キャリアもまた、そのゲートへと移動できる。したがって、元のゲートは、その電位を変化させ、その結果、電荷キャリア量は、隣接するゲート等に完全に移動できる。輸送経路6の端部には、電荷キャリア量を読み取る読み取りデバイス11が存在する。これに続いて、ピクセルつまり図1に図示されている受信デバイス1の部分から離れた位置に、さらなる構成要素、例えば、測定された電荷キャリア量を示すアナログ信号をデジタル信号に変換するためにA/Dコンバータを設けることも可能である。続いて、さらなる評価用電子回路、例えば、平均値の形成やエッジ検出を実行し、また、これより輸送領域6の経路上での電荷分布の空間焦点を判定する電子回路を設けることもできる。このために、信号は、評価装置Aへと中継され得る。評価装置A内での処理前に、A/Dコンバータを用いて信号をアナログからデジタルに変換することも考えられる。
【0037】
クロック発振器10で予め定義されるクロッキングを用いて、検出された光信号がサンプリングされる、対応する積分時間もまた、予め定義される。電荷キャリアは、クロッキングで予め定義されるこれら個々の時間間隔にて、ゲート8のうちの一つの下で積分され得る。
【0038】
本発明は特に、所望の距離を判定するプロセスへの周辺光の影響をできる限り低く保つことができ、かつ、出力信号によって生じたものではない極端な値を誤って測定することを避けるという効果がある。特に、周辺光の結果として予想される光の変動は、発光された光のパルスに対して周波数が非常に低い。したがって、発光パルスの平均伝播時間は、周辺光の変動の影響も受けない。平均値の形成もエッジ検出も、これらの変動を相殺する。
【0039】
さらに、絶対電荷量の正確な値を判定可能かどうかは重要ではないことが有益である。その結果、実際の光検出器構造のコストを効果的に削減することができる。この点において、相対的に弱い光の信号を用いて、このようなセンサデバイスの強度を低減することも可能である。
【0040】
ある限度の範囲内で露光過多が(意図せず)起こったとしても、生成された電荷キャリアは、隣接するゲートが「開放されている」、すなわち、電荷キャリアをその領域に引き込み可能な電位を有している場合、これらの隣接するゲート上へと分配可能である。この場合であっても、平均化を用いて、信号品質が影響を受けること、または著しく影響を受けることを防ぐことができる。
【0041】
図2は、本発明に係る、送信機13と受信機1を有するセンサデバイス12の概略図を示しており、ここでは、送信機13が光信号15を発し、この信号は物体14で反射され、反射信号16は、受信デバイス1によってピックアップされる。受信デバイス1は、マトリックスとして具体化される。
【符号の説明】
【0042】
1 受信デバイス、2 半導体構造、3 半導体基板、4 感光性領域、5 分離層、6 輸送領域、7 通路、8 ゲート、8a 通路とのオーバーラップ領域内にあるゲート、8b 通路とのオーバーラップ領域内にあるゲート、9 オーバーラップ領域、10 クロック発振器、11 読み取りデバイス、12 センサデバイス、13 送信機、14 物体、15 発光信号、16 反射信号、A 評価装置、B 背面、F 前面、S 検出光信号
図1
図2