(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】穀物混合茶飲料、透明容器詰め穀物混合茶飲料、透明容器詰め穀物混合茶飲料の陳列方法及び穀物混合茶飲料の光劣化臭の抑制方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/42 20060101AFI20220224BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20220224BHJP
【FI】
A23L2/00 N
A23L2/38 C
A23L2/38 K
A23L2/38 M
A23L2/42
(21)【出願番号】P 2017254785
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】池上 有希子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 遼
(72)【発明者】
【氏名】森田 孝平
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-008704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/42
A23L 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料であって、
黒豆及びケツメイシから選択される少なくとも一種の抽出物を含み、
前記穀物混合茶飲料に、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射した後に、前記穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計が、0.45以下である、穀物混合茶飲料。
【請求項2】
4℃以上40℃以下で積算照度500000lx・h以上の可視光が照射された、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料であって、
黒豆及びケツメイシから選択される少なくとも一種の抽出物を含み、
前記穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計が、0.45以下である、穀物混合茶飲料。
【請求項3】
2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料であって、
黒豆及びケツメイシから選択される少なくとも一種の抽出物を含み、
前記穀物混合茶飲料に、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射し、
該照射の前及び後のそれぞれにおいて、前記穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計を求め、
前記照射後における前記ピーク面積値の合計値から、前記照射前における前記ピーク面積値の合計値を引いた値が、0.38以下である、穀物混合茶飲料。
【請求項4】
前記2種以上の穀物の抽出物が、ハトムギ、麦類、米類及び豆類から選択される2種以上の抽出物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の穀物混合茶飲料。
【請求項5】
前記2種以上の穀物の抽出物が、ハトムギ、大麦、発芽大麦、玄米及び黒豆から選択される2種以上の抽出物である、請求項4に記載の穀物混合茶飲料。
【請求項6】
穀物以外の茶原料の抽出物をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の穀物混合茶飲料。
【請求項7】
前記穀物以外の茶原料の抽出物が、葉類、果実類及びケツメイシから選択される1種以上の抽出物である、請求項6に記載の穀物混合茶飲料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の穀物混合茶飲料を含む、透明容器詰め穀物混合茶飲料。
【請求項9】
請求項8に記載の透明容器詰め穀物混合茶飲料を、4℃以上40℃以下で積算照度500000lx・h以上の可視光を照射して陳列する、透明容器詰め穀物混合茶飲料の陳列方法。
【請求項10】
2種以上の穀物の抽出物を含
み且つ黒豆及びケツメイシから選択される少なくとも一種の抽出物を含む穀物混合茶飲料における、前記穀物混合茶飲料に可視光を照射した後の、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールの合計量を調整する、穀物混合茶飲料の光劣化臭の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料、透明容器詰め穀物混合茶飲料、透明容器詰め穀物混合茶飲料の陳列方法及び穀物混合茶飲料の光劣化臭の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2種類以上の穀物からの抽出物を含む茶飲料(以下、「穀物混合茶飲料」という。)は、そのおいしさ等の嗜好性により、消費者に幅広く受け入れられている。
【0003】
しかし、穀物混合茶飲料の保存中に光が照射されることによって、例えば店舗等に陳列された穀物混合茶飲料に蛍光灯やLED照明等からの光が照射されることによって、経時的に樹脂臭等の好ましくない臭気(以下、このような臭気を「光劣化臭」ともいう。)を生じ得る。このような光劣化臭が生じると、穀物混合茶飲料の香味(おいしさ、香ばしさ等)が劣化して、嗜好性が低下してしまうという問題が生じる。
【0004】
このような光照射により生じる光劣化臭の抑制に関する技術としては、例えば、アイスクリーム等の飲食品類の容器として、550nm~720nmの波長領域の光を実質的に遮光する透明容器を使用することにより、オフフレーバの発生を抑制する技術がある(特許文献1参照)。また、各種茶飲料が、光透過性容器等で流通、保存が行われる中で、該飲料成分の光劣化を防止するために、単位体積あたりのタンニン量に対するグリセロ糖脂質量の比率が0.001以上である容器詰め茶飲料において、茶飲料にカラメルを含有させることにより、茶飲料成分の光劣化を抑制する技術がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/115214号
【文献】特開2017-74014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1は、容器を改良する技術であり、使用可能な容器に制限が生じるという問題がある。また、特許文献2は、カラメルを含有させる必要があるという問題がある。したがって、内容物である穀物混合茶飲料自体を改良して光照射により生じる光劣化臭の発生を抑制することにより、嗜好性が維持できる穀物混合茶飲料が望まれる。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、光照射による光劣化臭の発生が抑制され嗜好性が維持できる穀物混合茶飲料、透明容器詰め穀物混合茶飲料、透明容器詰め穀物混合茶飲料の陳列方法及び穀物混合茶飲料の光劣化臭の抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料において、多種ある香気成分のうち特定の5つの香気成分が光劣化臭として大きく影響を与えていることを知見しこれに着目した。加えて、この特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が0.45以下であれば、光劣化臭が少なく、光が照射された後も光が照射される前の嗜好性を維持できていることを知見した。そして、さらに検討を重ねて、穀物混合茶飲料に光が照射された後の状態を想定又は規定し、この光照射後の穀物混合茶飲料において、特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が0.45以下となるようにすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料であって、前記穀物混合茶飲料に、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射した後に、前記穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計が、0.45以下である、穀物混合茶飲料。
【0010】
(2) 4℃以上40℃以下で積算照度500000lx・h以上の可視光が照射された、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料であって、前記穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計が、0.45以下である、穀物混合茶飲料。
【0011】
(3) 2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料であって、前記穀物混合茶飲料に、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射し、該照射の前及び後のそれぞれにおいて、前記穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計を求め、前記照射後における前記ピーク面積値の合計値から、前記照射前における前記ピーク面積値の合計値を引いた値が、0.38以下である、穀物混合茶飲料。
【0012】
(4) 前記2種以上の穀物の抽出物が、ハトムギ、麦類、米類及び豆類から選択される2種以上の抽出物である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の穀物混合茶飲料。
【0013】
(5) 前記2種以上の穀物の抽出物が、ハトムギ、大麦、発芽大麦、玄米及び黒豆から選択される2種以上の抽出物である、(4)に記載の穀物混合茶飲料。
【0014】
(6) 穀物以外の茶原料の抽出物をさらに含む、(1)~(5)のいずれか1つに記載の穀物混合茶飲料。
【0015】
(7) 前記穀物以外の茶原料の抽出物が、葉類、果実類及びケツメイシから選択される1種以上の抽出物である、(6)に記載の穀物混合茶飲料。
【0016】
(8) (1)~(7)のいずれか1つに記載の穀物混合茶飲料を含む、透明容器詰め穀物混合茶飲料。
【0017】
(9) (8)に記載の透明容器詰め穀物混合茶飲料を、4℃以上40℃以下で積算照度500000lx・h以上の可視光を照射して陳列する、透明容器詰め穀物混合茶飲料の陳列方法。
【0018】
(10) 2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料における、前記穀物混合茶飲料に可視光を照射した後の、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールの合計量を調整する、穀物混合茶飲料の光劣化臭の抑制方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光照射による光劣化臭の発生が抑制され嗜好性が維持できる穀物混合茶飲料を提供することができる。このように本発明の穀物混合茶飲料は光劣化臭の発生が抑制されるため、光に暴露されやすい透明な容器に詰めた透明容器詰め穀物混合茶飲料にも適する。また、透明容器詰め穀物混合茶飲料の形態で、光照射しながら陳列することにも適している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0021】
(実施形態1)
<穀物混合茶飲料>
本発明の実施形態1に係る穀物混合茶飲料は、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料である。そして、実施形態1に係る穀物混合茶飲料においては、穀物混合茶飲料に、20℃で積算照度500000lx・h(ルクス時間)の可視光を照射した後に、穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計が、0.45以下である。
【0022】
なお、本明細書において、「1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナール」を、「特定の5つの香気成分」とも記載する。また、「穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計」を、「特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比」とも記載する。
【0023】
このように、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料について、穀物混合茶飲料に、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射した後に、穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計が、0.45以下であるようにすることで、後述する実施例に示すように、光照射による光劣化臭の発生が抑制され、香味劣化が抑制されるため、嗜好性の低下が抑制される。したがって、光照射されても光照射前の嗜好性を維持することができ、嗜好性に優れた穀物混合茶飲料を提供することができる。なお、本明細書における「光劣化臭」とは、光を原因とする成分変化の結果生じる臭気を意味し、樹脂やプラスチックのような異臭(樹脂臭)とも称される臭気である。光劣化臭の有無は樹脂臭の官能評価によって特定される。また、本発明において、可視光とは、波長360nm以上830nm以下の光である。
【0024】
実施形態1に係る穀物混合茶飲料は、20℃で積算照度500000lx・hの可視光が照射された後の状態で、特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が0.45以下である。すなわち、実施形態1に係る穀物混合茶飲料は、後に光が照射されることを想定した穀物混合茶飲料である。そして、実施形態1に係る穀物混合茶飲料は、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射した後も、特定の5つの香気成分のシクロヘキサノールに対する比が0.45以下であるので、光照射後も光劣化臭が少なく、光照射前の嗜好性が維持できているといえる。
【0025】
特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比は、0.45以下であれば特に限定されないが、光劣化臭の発生がより確実に抑制できる観点で、0.35以下であることが好ましい。また、下限値も特に限定されないが、特定の5つの香気成分は、穀物混合茶飲料の複雑な香味を有する観点で適度に含まれることが好ましく、0.001以上であることが好ましい。また、光照射前において、おいしさ等の嗜好性が向上する観点で、0.01以上であることが好ましく、0.03以上がより好ましい。
【0026】
特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比は、抽出物を得る穀物等の茶原料の種類及び配合割合や、焙煎、抽出、添加物の調合等の製造条件を適宜調整することにより、所望の値にすることができる。
【0027】
穀物混合茶飲料について、穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計をガスクロマトグラフィ定量分析する具体的な測定方法は以下である。
[ガスクロマトグラフィ定量分析条件]
分析方法:SPME-GC/MS
使用機器:Agilent Technologies 7890A GC System、5975C inert XL MSD with Triple-Axis Detector(Agilent社製)
全自動揮発性成分抽出導入装置:Multipurpose sampler MPS2(ゲステル社製)
カラム:DB-WAXUI30m*0.25mm*0.25μm
昇温:40℃,2min→8℃/min→240℃,10min (total 37min)
注入口:splitless、 注入口温度240℃、MSトランスファーライン温度250℃
前処理:incubation 70℃, 10min Extraction 5min Desorption 300s
ファイバー:fiber DVB/CAR/PDMS
MSイオン源:230℃
MS四重極:150℃
イオン化法:電子衝撃法(EI)、70eV
測定試料調製:サンプル(穀物混合茶飲料)10mLとNaCl 3.5gを20mLバイアル瓶に入れ、200ppmのシクロヘキサノール(内部標準物質)20μlをマイクロピペッターで添加(測定試料中のシクロヘキサノール濃度:0.4ppm)
内部標準:100ml容メスフラスコにシクロヘキサノール 20μLを採取し、エタノールで定容
SIMモードにて分析
定量イオン
1-Octen-3-one:70
(E)-2-Octenal:70
(E)-2-Nonenal:83
(E)-2-Decenal:70
(E)-2-Heptenal:83
【0028】
実施形態1に係る穀物混合茶飲料が含む抽出物を得る穀物としては、茶飲料の原料として通常用いられる穀物を使用でき、大麦、発芽大麦、小麦等の麦類、玄米、発芽玄米等の米類、大豆、小豆、黒豆等の豆類、ハトムギ、トウモロコシ、芋、あわ、キビ等が挙げられる。実施形態1においては、2種類以上の穀物を使用する。実施形態1に係る穀物混合茶飲料は、おいしさ、香ばしさの良さ及び香ばしさの強さの観点から、ハトムギ、麦類、米類及び豆類から選択される2種以上の抽出物を含むことが好ましく、ハトムギ、大麦、発芽大麦、玄米及び黒豆から選択される2種以上の抽出物を含むことがより好ましく、ハトムギ、大麦、発芽大麦及び玄米の全ての抽出物を含むことがさらに好ましい。
【0029】
実施形態1に係る穀物混合茶飲料は、2種以上の穀物の抽出物の他に、葉類及び果実類等の穀物以外の茶原料の抽出物を含んでいてもよい。すなわち、実施形態1に係る穀物混合茶飲料が含む抽出物を得るための茶原料は、2種以上の穀物に加えて、葉類及び果実類葉等の穀物以外の茶原料を含んでいてもよい。葉類としては、茶飲料の原料として通常用いられるものを使用でき、チャノキ由来の葉(緑茶葉等)、ビワの葉、クワの葉、エゴマの葉、クマザサの葉、柿の葉、アマチャヅルの葉、アシタバの葉、ドクダミの葉、クコの葉、シソの葉、ヨモギの葉、杜仲葉、グァバ葉等が挙げられる。果実類としては、茶飲料の原料として通常用いられるものを使用でき、ナツメ、ユズ、ミカン、レモン等が挙げられる。また、穀物以外の茶原料として、マメ科のエビスグサの種子(ケツメイシ)を乾燥させたものを用いてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
実施形態1に係る穀物混合茶飲料は、おいしさの観点から、ハトムギ、麦類、米類及び豆類から選択される2種以上の抽出物に加えてさらに葉類、果実類及びケツメイシから選択される1種以上の抽出物を含むことが好ましく、ハトムギ、大麦、発芽大麦、玄米及び黒豆を全て含みさらに葉類、果実類及びケツメイシから選択される1種以上の抽出物を含むことがより好ましい。
【0031】
このような茶原料の抽出物、具体的には、穀物、及び必要に応じて使用する穀物以外の茶原料の抽出物は、これら穀物等の茶原料から抽出物を得るために通常採用される抽出工程によって得られる。抽出物を得る抽出工程の詳細については、後述する。
【0032】
実施形態1に係る穀物混合茶飲料には、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的な茶飲料に通常用いられる他の添加剤等を適宜配合することができる。配合量は得ようとする効果に応じて適宜設定できる。
【0033】
実施形態1に係る穀物混合茶飲料に配合し得る添加剤としては、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、品質安定剤等が挙げられる。
【0034】
実施形態1に係る穀物混合茶飲料の可溶性固形分は、特に限定されないが、甘味やボディー感(飲みごたえ)を付与する点から、可溶性固形分の下限は、好ましくは0.20質量%以上、より好ましくは0.26質量%以上である。一方、可溶性固形分の上限は、飲みやすさを維持する観点から、好ましくは0.50質量%以下である。なお、本明細書において、可溶性固形分は、穀物混合茶飲料中の可溶性固形分全体の濃度を糖用屈折計で測定した値であり、「Brix」を指す。本明細書において、可溶性固形分は、デジタル示差濃度計DD-7(株式会社アタゴ製)を使用して30℃で測定したときの値である。
【0035】
また、実施形態1に係る穀物混合茶飲料のpHも特に限定されないが、例えば5.2~7.0である。
【0036】
実施形態1に係る穀物混合茶飲料は、上記抽出物そのもの、抽出物に必要に応じて水や上記添加剤等を添加したもの、及び、これらを容器に詰めたもののいずれでもよい。容器としては、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるペットボトル)、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、金属缶、ガラス瓶等の密封容器等が挙げられる。実施形態1に係る穀物混合茶飲料は、蛍光灯やLED照明等の可視光の照射によって生じる光劣化臭が抑制できる。したがって、容器に入れた穀物混合茶飲料に光劣化臭が生じやすく、実施形態1に係る発明の効果が特に奏されやすいという観点から、本発明の飲料を充填する容器は透明容器や、半透明な容器であることが好ましい。
【0037】
<穀物混合茶飲料の製造方法>
上記穀物混合茶飲料は、2種以上の穀物、及び必要に応じて使用する穀物以外の茶原料から抽出溶媒を用いて抽出物を得る抽出工程を有する製造方法によって製造することができる。例えば、抽出工程の他、必要に応じて、焙煎工程、調合工程、殺菌工程や、容器充填工程等を有する製造方法によって製造することができる。以下、各工程について説明する。
【0038】
[焙煎工程]
焙煎工程では、2種以上の穀物、及び必要に応じて使用する穀物以外の茶原料を焙煎する。焙煎工程では、一般的な焙煎方法を採用可能であり、例えば、熱風焙煎、直火焙煎、砂炒焙煎、遠赤外焙煎等が挙げられる。焙煎工程を有さなくてもよいが、香ばしさ等を付与できる観点から、焙煎工程を有することが好ましい。
【0039】
[抽出工程]
抽出工程では、2種以上の穀物、及び必要に応じて使用する穀物以外の茶原料から、抽出溶媒を用いて抽出物を得る。抽出工程に供する2種以上の穀物、及び必要に応じて使用する穀物以外の茶原料は、焙煎工程を経た後のものであることが好ましい。
【0040】
上記穀物等を抽出工程に供する方法は特に限定されず、例えば、穀物、必要に応じて使用する穀物以外の茶原料をそれぞれ単独で抽出工程に供してもよいし、穀物及び必要に応じて使用する穀物以外の茶原料を予め混合して抽出工程に供してもよい。製造効率の観点から、穀物、必要に応じて使用する穀物以外の茶原料の全てを予め混合して抽出工程に供することが好ましい。
【0041】
抽出工程では、一般的な抽出方法を採用可能であり、例えば、水蒸気蒸留、液化炭酸ガス抽出、アルコール抽出、熱水抽出等の従来公知の抽出方法を用いることができる。また、抽出に用いる抽出溶媒の種類は、特に限定されないが、水を抽出溶媒とする場合は、脱イオン交換処理精製したもの又は蒸留水を用いることが好ましい。これらは、安価、手軽であり、かつ安全に調製し抽出設備に供することができる。なお、水以外の抽出溶媒としては、エタノールやその他の親水性有機溶媒が挙げられる。また、抽出溶媒に対して、抽出効率化の目的で、食品添加物のいわゆる炭酸塩(炭酸水素ナトリウム(重曹)等)、リン酸塩、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸等を適宜添加してもよい。
【0042】
抽出温度は、特に限定されないが、例えば、80℃以上100℃以下であることが好ましい。上記温度範囲で抽出を行えば、抽出効率が高い。抽出時間も特に限定されないが、5分以上60分以下の範囲内で行うことが好ましい。上記抽出時間で抽出物を得れば、熱による風味変化や香気成分の散逸を抑えつつ、甘味、香ばしさの各成分を抽出しやすい傾向にある。これにより、より嗜好性に優れた穀物混合茶飲料が得やすくなる。
【0043】
[調合工程]
調合工程では、抽出物に水や添加物を添加する。抽出工程で得られた抽出物は、そのまま実施形態1の穀物混合茶飲料として提供することができるが、調合工程において、抽出工程で得られた抽出物に対して、水での希釈や、各種添加剤の配合をしてもよい。なお、抽出工程において複数の抽出物を得る場合は、調合工程で、該複数の抽出物を混合することができる。また、上記特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比の条件を満たすようにするために、調合工程において、特定の5つの香気成分である1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールの少なくとも1つについて、フィルターによる濾過等によって、部分的に又は全量を除去してもよい。逆に、調合工程において、上記特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比の条件を満たす範囲内であれば、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールの少なくとも1つ以上を添加するようにしてもよい。
【0044】
[殺菌工程及び容器充填工程]
殺菌工程では、加熱等により、抽出物を殺菌する。また、容器充填工程では、抽出物を容器に充填する。金属缶や瓶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合は、レトルト殺菌(加圧加熱処理:110~140℃、1~数十分間)により製造できる。ペットボトルや紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、予めレトルト殺菌と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換機等で超高温加熱処理(UHT殺菌:110~150℃、1~数十秒間)し、一定の温度まで冷却後、容器に充填する等の方法が選択できる。容器充填工程の方法としては、例えば、アセプティック(無菌)充填法、ホットパック充填法等が挙げられる。
【0045】
穀物混合茶飲料の製造方法の各工程に用いられる装置や条件は、通常飲料の製造工程に採用されるものを使用できる。
【0046】
<透明容器詰め飲料及びその陳列方法>
実施形態1に係る穀物混合茶飲料を充填する容器として透明なもの(透明容器)を用いることで、実施形態1に係る透明容器詰め穀物混合茶飲料を得ることができる。
【0047】
通常、透明容器に充填された穀物混合茶飲料は、光に暴露されやすいため、光劣化臭が生じやすい。しかし、実施形態1に係る透明容器詰め穀物混合茶飲料においては、穀物混合茶飲料に、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射した後の、特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が0.45以下になるようにしているため、光劣化臭が抑制されている。したがって、例えば、店舗や家庭の棚等において陳列された実施形態1にかかる透明容器詰め穀物混合茶飲料に対し、4℃以上40℃以下で積算照度500000lx・h以上の可視光を照射しても、光劣化臭の発生が抑制される。照射する可視光は、4℃以上40℃以下で、積算照度2000000lx・h以下であってもよい。実施形態1に係る透明容器詰め穀物混合茶飲料の陳列方法としては、本実施形態1に係る透明容器詰め穀物混合茶飲料における任意の部位に可視光を照射できる方法であれば特に限定されず、棚等に実施形態1に係る透明容器詰め穀物混合茶飲料を1本のみ置いてもよいし、複数本を並べて置いてもよい。
【0048】
<穀物混合茶飲料の光劣化臭の抑制方法>
実施形態1に係る穀物混合茶飲料の光劣化臭の抑制方法は、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料における、穀物混合茶飲料に可視光を照射した後の、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールの合計量を調整するものである。穀物としては、上述したとおりであり、大麦、発芽大麦、小麦等の麦類、玄米、発芽玄米等の米類、大豆、小豆、黒豆等の豆類、ハトムギ、トウモロコシ、芋、あわ、キビ等挙げられる。
【0049】
実施形態1に係る穀物混合茶飲料の光劣化臭の抑制方法によれば、上述したように、穀物混合茶飲料に可視光を照射した後の、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールの合計量を調整することで、例えば穀物混合茶飲料に、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射した後に、穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計が、0.45以下になるように調整することで、光劣化臭の発生を抑制することができる。
【0050】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る穀物混合茶飲料は、4℃以上40℃以下で積算照度500000lx・h以上の可視光が照射された、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料であって、穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計が、0.45以下である。以下に実施形態2に係る穀物混合茶飲料について説明するが、以下に記載した実施形態2に係る穀物混合茶飲料についての説明以外(例えば、特定の5つの香気成分、特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比、配合、製造方法、透明容器詰め穀物混合茶飲料、その陳列方法及び穀物混合茶飲料の光劣化臭の抑制方法等)は、実施形態1と同じであるため、その説明は省略する。
【0051】
このように、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料であって4℃以上40℃以下で積算照度500000lx・h以上の可視光が照射された穀物混合茶飲料であって、特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が0.45以下であるため、光劣化臭が低く、香味劣化が抑制されており、嗜好性の低下が抑制されている。したがって、光照射前の嗜好性を維持しており、嗜好性に優れた穀物混合茶飲料を提供することができる。
【0052】
実施形態2に係る穀物混合茶飲料は、4℃以上40℃以下で積算照度500000lx・h以上の可視光が照射された後の状態で、特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が0.45以下である。すなわち、実施形態2に係る穀物混合茶飲料は、既に光が照射された穀物混合茶飲料である。そして、実施形態2に係る穀物混合茶飲料は、特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が0.45以下であるので、光劣化臭が少なく、光照射前の嗜好性が維持できている。
【0053】
(実施形態3)
実施形態3に係る穀物混合茶飲料は、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料であって、穀物混合茶飲料に、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射し、該照射の前及び後のそれぞれにおいて、穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計を求め、照射後におけるピーク面積値の合計値から、照射前におけるピーク面積値の合計値を引いた値が、0.38以下である。以下に実施形態3に係る穀物混合茶飲料について説明するが、以下に記載した実施形態3に係る穀物混合茶飲料についての説明以外は、実施形態1と同じであるため、その説明は省略する。
【0054】
このように、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料について、20℃で積算照度500000lx・hの可視光の照射の前後で測定した特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比の、20℃で積算照度500000lx・hの可視光の照射による増加量が0.38以下であるようにすることで、光照射後も光劣化臭が低く、香味劣化が抑制されるため、光照射による嗜好性の低下が抑制される。したがって、光照射されても嗜好性を維持することができ、嗜好性に優れた穀物混合茶飲料を提供することができる。
【0055】
実施形態3に係る穀物混合茶飲料は、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射した後に測定した特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比と、照射前の特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比との差(光照射による増加量)が、0.38以下である。すなわち、実施形態3に係る穀物混合茶飲料は、後に光が照射されることを想定した穀物混合茶飲料であり、その光照射による特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比の増加量を規定している。そして、この光照射による特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比の増加量が0.38以下なので、光照射後も光劣化臭が少なく、光照射前の嗜好性が維持できている。なお、実施形態3に係る穀物混合茶飲料が、20℃で積算照度500000lx・hの光照射前の時点で特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が高すぎると、光照射による特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比の増加量が0.38以下と少なくても、光照射後の特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比は0.45を超えてしまう場合がある。したがって、実施形態3に係る穀物混合茶飲料は、特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が、0.07以下であることが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
[抽出液1~13の調製]
カラム型抽出器を用いて、それぞれ焙煎したハトムギ、大麦、玄米、発芽大麦、黒豆、あずき、ケツメイシ、びわの葉を、表1に示される量を混合し、水温90℃以上の水を加えて粗液を得て、さらにアスコルビン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム(重曹)とを加えて、抽出液1~13を得た。表1中の数字の単位は、[g/L]である。
【0058】
【0059】
[実施例1~9及び比較例1~4]
表1に示される抽出液1~13を適宜調合し、超高温加熱処理(UHT)法にて殺菌し、それぞれPETボトルにアセプティック(無菌)充填し、実施例1~9及び比較例1~4の穀物混合茶飲料を得て、下記の官能試験に供するまで遮光して冷蔵保管した。この実施例1~9及び比較例1~4の穀物混合飲料の遮光保管品中のBrix及びpHは、表2に示される通りである。
【0060】
[遮光保管品の測定]
各穀物混合飲料の遮光保管品について、上記[ガスクロマトグラフィ定量分析条件]の測定方法によって、穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計を求めた。シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、5つの香気成分ぞれぞれのピーク面積値、及び、これら5つの香気成分のピーク面積値の合計(表2において、「5成分合計」と記載)を、表2に示す。また、Brix及びpHも測定した結果も表2に示す。
【0061】
[遮光保管品の官能評価]
各穀物混合茶飲料について、専門パネル5名による官能評価を実施した。各評価は、穀物混合茶飲料の「おいしさ」、「香ばしい香りの良さ」、「香ばしい香りの強さ」について7段階評価で行った。評価基準は以下のとおりである。官能評価の結果を表2に示す。なお、各評価結果は、各パネルが付けた評価点数の平均値によって示した。
【0062】
「おいしさ」、「香ばしい香りの良さ」
7:とても良い
6:良い
5:やや良い
4:どちらともいえない
3:やや悪い
2:悪い
1:とても悪い
【0063】
「香ばしい香りの強さ」
7:とても強く感じる
6:強く感じる
5:やや強く感じる
4:どちらともいえない
3:やや弱く感じる
2:弱く感じる
1:感じない
【0064】
[遮光保管品への光照射]
各穀物混合茶飲料を回転試料テーブル(商品名「EYELA LST-7型」、東京理化器械株式会社製)に載せて回転させつつ、光照射試験機(商品名「EYELA LST-300型」、東京理化器械株式会社製)を用いて、下記の条件で光照射を行った。
「光源」
蛍光灯(商品名「三波長型蛍光ランプ 40W型 ラピッドスタート形 白昼色 FLR40SEX-N/M/36AS10」、日立アプライアンス株式会社製)
[光照射試験機の設定条件]
温度調節:20℃
湿度調節:設定なし
照度調節:10000Lux
積算照度:500000Lux・hr
【0065】
[光照射品の測定]
上記[遮光保管品への光照射]で得られた各穀物混合飲料(光照射品)について、上記[ガスクロマトグラフィ定量分析条件]の測定方法によって、穀物混合茶飲料に内部標準物質としてシクロヘキサノールを0.4ppmとなるように添加し、これをガスクロマトグラフィ定量分析し、シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、1-オクテン-3-オン、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E)-2-デセナール及び(E)-2-ヘプテナールのピーク面積値の合計を求めた。シクロヘキサノールのピーク面積値を1としたときの、5つの香気成分ぞれぞれのピーク面積値、及び、これら5つの香気成分のピーク面積の合計(表2において、「5成分合計」と記載)を、表2に示す。また、Brix及びpHも測定した結果も表2に示す。
【0066】
[光照射品の官能評価]
上記[遮光保管品への光照射]で得られた各穀物混合飲料(光照射品)について、専門パネル5名による官能評価を実施した。各評価は、穀物混合茶飲料の「香味劣化」、「樹脂臭」について7段階評価で行った。評価基準は以下のとおりであり、遮光保管品を「7」としたときの識別レベルである。官能評価の結果を表2に示す。なお、各評価結果は、各パネルが付けた評価点数の平均値によって示した。
【0067】
「香味劣化」、「樹脂臭」
7:全く認められない
6:全く認められないとは限らない
5:わずかに認められる
4:少し認められる
3:比較的認められる
2:割合認められる
1:非常に認められる
【0068】
表2に示すように、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料において、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射した後の、特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が0.45以下である実施例1~9では、該比が0.45超えの比較例1~4と比べて、香味劣化及び樹脂臭が認められなかった。したがって、光照射後の特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が0.45以下になるようにすることで、光照射後も光照射前の嗜好性を維持できると言える。また、このように光照射後も光照射前の嗜好性を維持できた実施例1~9では、光照射前後の特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比の変化量が0.38以下であった。
【0069】
一方、2種以上の穀物の抽出物を含む穀物混合茶飲料において、20℃で積算照度500000lx・hの可視光を照射した後の、特定の5つの香気成分の特定量のシクロヘキサノールに対する比が0.45超えである比較例1~4では、香味劣化や樹脂臭の程度が高く嗜好性が維持できておらず、特に比較例1及び比較例2では、遮光保管品のおいしさの評価が高いにも関わらず、光照射後においては香味劣化や樹脂臭が目立ち、嗜好性が低下した。
【0070】