(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】高い熱安定性を有するポリイソシアヌレートプラスチック
(51)【国際特許分類】
C08G 18/02 20060101AFI20220224BHJP
C08G 18/09 20060101ALI20220224BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C08G18/02 020
C08G18/09 020
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2017554838
(86)(22)【出願日】2016-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2016058906
(87)【国際公開番号】W WO2016170061
(87)【国際公開日】2016-10-27
【審査請求日】2019-04-17
(32)【優先日】2015-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アクテン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】マートネル,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】カッセルマン,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】エーラース,ミヒャエル
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/166983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート組成物A)の触媒三量化によって得られるポリイソシアヌレートプラスチックであって、前記ポリイソシアネート組成物A)はオリゴマーポリイソシアネートを含有し、
イソシアヌレート基/アロファネート基のmol比が、99/1を超え、およびモノマージイソシアネートが少なく、ここで、「モノマージイソシアネートが少ない」は、前記ポリイソシアネート組成物A)が、
ポリイソシアネート組成物A)の重量基準で20重量%以下のモノマージイソシアネート含量を有することを意味し、該ポリイソシアネート組成物A)中のイソシアヌレート構造含量が、該ポリイソシアネート組成物A)中に存在するウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよびオキサジアジントリオン構造からなる群のオリゴマー構造の総和基準で少なくとも50mol%である、
前記ポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート組成物A)中に最初に存在するイソシアネート基の最大20%のみが、ポリイソシアネートプラスチック中に存在することを特徴とする、請求項1に記載のポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項3】
前記ポリイソシアヌレートプラスチックが、ポリイソシアネート組成物A)中に最初に存在するイソシアネート基の最大10%のみ
が含有するように選択されることを特徴とする、請求項2に記載のポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート組成物A)が、前記ポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、少なくとも80重量%の脂肪族および/または脂環式のヒドロカルビル基のみに結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネートからなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項5】
前記オリゴマーポリイソシアネートが1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、イソホロンジイソシアネートまたは4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンまたはこれらの混合物から形成される1つまたは複数のオリゴマーポリイソシアネートからなることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート組成物A)および/または前記オリゴマーポリイソシアネートが2.0~5.0の平均NCO官能度を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート組成物A)が、前記ポリイソシアネート組成物A)の重量基準で8.0重量%~28.0重量%のイソシアネート基含量を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項8】
「モノマージイソシアネートが少ない」が、前記ポリイソシアネート組成物A)が、前記ポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、5重量%以下のモノマージイソシアネート含量を有することを意味する、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項9】
前記得られるポリイソシアヌレートプラスチック中のイソシアヌレート構造の割合が、前記ポリイソシアヌレートプラスチックの重量基準で少なくとも20重量%であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項10】
120℃で1000時間の貯蔵後に20以下のΔb*値であって、該b*値はDIN 5033に準拠して決定される値を有し、ならびに120℃で1000時間の貯蔵後に、360nmおよび400nmでHunter UltraScanPro 1206により測定される30%以下の透過率
損失%を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項11】
触媒三量化が触媒としてのクラウンエーテルまたはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールから選択される錯化剤と組み合わせた、2~20個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸のナトリウム塩および/またはカリウム塩、あるいは脂肪族の基で置換されたスズ化合物を用いて達成されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレートプラスチック。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレートプラスチックを含むまたは請求項1から11のいずれか一項に記載のポリイソシアヌレートプラスチックからなる透明要素。
【請求項13】
光拡散器またはレンズであることを特徴とする、請求項12に記載の透明要素。
【請求項14】
ポリイソシアヌレートプラスチックを製造する方法であって、以下のステップ:
a)ポリイソシアネート組成物A)であって、オリゴマーポリイソシアネートを含有し、
イソシアヌレート基/アロファネート基のmol比が、99/1を超え、およびモノマージイソシアネートが少なく、ここで、「モノマージイソシアネートが少ない」は、前記ポリイソシアネート組成物A)が、
ポリイソシアネート組成物A)の重量基準で20重量%以下のモノマージイソシアネート含量を有することを意味し、該ポリイソシアネート組成物A)中のイソシアヌレート構造含量が該ポリイソシアネート組成物A)中に存在するウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよびオキサジアジントリオン構造からなる群のオリゴマー構造の総和基準で少なくとも50mol%であるポリイソシアネート組成物A)を用意するステップと;
b)前記ポリイソシアネート組成物A)を触媒三量化するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記オリゴマーポリイソシアネートが、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、イソホロンジイソシアネートまたは4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンまたはこれらの混合物から形成される1つまたは複数のオリゴマーポリイソシアネートからなることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリイソシアネート組成物A)が、以下のいずれかである、請求項14又は15に記載の方法;
・ ポリイソシアネート組成物A)が、前記ポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、少なくとも80重量%の脂肪族および/または脂環式のヒドロカルビル基のみに結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネートからなる、
・ ポリイソシアネート組成物A)が2.0~5.0の平均NCO官能度を有する、
・ ポリイソシアネート組成物A)が、前記ポリイソシアネート組成物A)の重量基準で8.0重量%~28.0重量%のイソシアネート基含量を有する、
・ ポリイソシアネート組成物A)が、前記ポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、5重量%以下のモノマージイソシアネート含量を有する。
【請求項17】
三量化触媒が、クラウンエーテルまたはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールから選択される錯化剤と組み合わせた、2~20個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸のナトリウム塩および/またはカリウム塩であるか、あるいは、脂肪族の基で置換されたスズ化合物であることを特徴とする、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物A)の触媒三量体化によって得られるポリイソシアヌレートプラスチック、およびポリイソシアヌレートプラスチックを含むまたはポリイソシアヌレートプラスチックからなる透明要素に関する。本発明は同様に、ポリイソシアヌレートプラスチックを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリアコート、フィルム、容器、包装材料、カプセル材料、光ファイバ、光拡散器またはレンズなどの透明要素の製造は、特に400~800nmのヒトに見えるスペクトル範囲内で、透明である、すなわち電磁波に対して最大透明度を有する材料を必要とする。化学、医学ならびに食品および飲料分野におけるいくつかの用途において、高い加熱歪および色安定性を有する透明要素が特に有利である。例えば、化学的過程の存在下でまたは食品および飲料製品および医療製品の滅菌において使用する場合に生じるような高い典型的な使用温度では、熱黄変が常に望ましくない老化過程および分解過程の最初の兆候であるので、UV-A範囲内でさえ良好な加熱歪および色安定性を有する高い安定性の透明な材料が望ましい。透明で熱-および色-安定性要素の必要性のさらなる例は、照明および太陽エネルギー生産の分野、例えば太陽電池ソーラーモジュールのコーティングおよびグレージング、ならびに頻繁にかつ長期間にわたって高温に曝され得る集光モジュールの反射ミラーフィルムおよびフレネルレンズにおいて遭遇する。白熱電球などの多くの光源の場合でさえも、また光の発生中にかなりの量の熱が発生するLEDの場合でも、透明要素およびその製造に使用される材料が、高い熱耐久性および機械的安定性を有することがかなり重要である。具体的には、これは、例えば、レンズの機能が失われ得るので、有意な加熱の場合でさえも、材料が変形してはならず、変色してもならないことを意味する。同時に、機械的応力に耐えるために、これらはまた常温で十分な硬度を有さなければならない。
【0003】
光源としてのLEDの使用が増加するにつれて、第1に上記要求を満たし、第2にLEDのカプセル化またはポッティングに適した新規な材料に対するかなりの需要がさらに生じている。
【0004】
Theo Flipsenによる論文:「Design, synthesis and properties of new materials based on densely crosslinked polymers for polymer optical fiber and amplifier applications」, Rijksuniversiteit Groningen, 2000は、触媒としてネオジム/クラウンエーテル錯体を用いたモノマーHDIのポリ三量化(polytrimerization)を記載している。良好な光学、熱および機械特性を有すると言われている得られたポリイソシアヌレートは、光学用途、特にポリマー光ファイバとしての適合性に関する論文の文脈で研究された。
【0005】
しかしながら、モノマー脂肪族ジイソシアネートからポリイソシアヌレートプラスチックを製造するための先行技術から公知の方法は、三量体化反応の過程で体積のかなりの収縮が起こるという基本的な欠点を有している。さらに、それらが非常に時間を要し、複雑な温度制御下で閉鎖系で行われることが、モノマージイソシアネートから進行し、先行技術から知られているポリイソシアヌレートプラスチックの製造方法における共通の要因である。
【0006】
国際公開第2015/166983号パンフレットは、LEDをカプセル化するためのイソシアヌレートポリマーの使用を開示している。クラウンエーテルまたはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどの錯化剤と組み合わせた、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはジルコニウムのカルボキシレートおよびアルコキシド、ならびに有機スズ化合物の使用は開示されていない。
【0007】
米国特許第6133397号明細書は、オリゴマーポリイソシアネートを三量化することによって製造されたコーティングを開示しているにすぎない。この明細書は固形体の製造を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2015/166983号パンフレット
【文献】米国特許第6133397号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Theo Flipsenによる論文:「Design, synthesis and properties of new materials based on densely crosslinked polymers for polymer optical fiber and amplifier applications」,Rijksuniversiteit Groningen,2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、本発明が取り組む課題は、透明であり、高い熱耐久性および熱的色安定性を有する材料を提供するというものであった。さらに、材料は、同時に、低い体積収縮を有し、効率的なプロセスによって製造可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、オリゴマーポリイソシアネートを含有し、モノマージイソシアネートが少なく、ポリイソシアネート組成物A)中のイソシアヌレート構造含量がポリイソシアネート組成物A)中に存在するウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよびオキサジアジントリオン構造からなる群のオリゴマー構造の総和基準で少なくとも50mol%であるポリイソシアネート組成物A)の触媒三量化によって得られるポリイソシアヌレートプラスチックによって本発明により達成される。
【0012】
本発明はさらに、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックが得られる方法も提供する。これは以下のステップ:
a)オリゴマーポリイソシアネートを含有し、モノマージイソシアネートが少なく、ポリイソシアネート組成物A)中のイソシアヌレート構造含量がポリイソシアネート組成物A)中に存在するウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよびオキサジアジントリオン構造からなる群のオリゴマー構造の総和基準で少なくとも50mol%であるポリイソシアネート組成物A)を用意するステップと;
b)ポリイソシアネート組成物A)を触媒三量化するステップと
を含む。
【0013】
言及される好ましい実施形態および領域を、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックおよびその製造のための本発明の方法に等しく適用する。
【0014】
以下に詳細に記載される本発明は、低モノマーオリゴマーポリイソシアネート組成物の触媒三量化が、多くの有利な特性を有する新規なポリイソシアヌレートプラスチックを与えるという驚くべき知見に基づいている。
【0015】
したがって、得られるプラスチックは透明であり、高い熱耐久性および熱的色安定性を有するので、LEDなどの光源のカプセル化に特に適している。さらに、ポリイソシアヌレートプラスチックは、同時に低い体積収縮を有し、効率的なプロセスによって製造可能である。
【0016】
ポリイソシアヌレートプラスチックを製造するための出発材料としてモノマーポリイソシアネートよりも低モノマーオリゴマーポリイソシアネート組成物を使用することは、オリゴマー反応物質のイソシアネート含量が比較的低いために、硬化中に除去しなければならない反応熱がはるかに少ないという利点をさらに有する。さらに、三量化反応のためのオリゴマー反応物質としてオリゴマーポリイソシアネートを含有する低モノマーポリイソシアネート組成物を使用することにより、先行技術から公知の材料と構造的に区別される入手可能なポリイソシアヌレートプラスチック中の新規な架橋構造ももたらされる。
【0017】
本発明の文脈において、「透明」という用語は、ASTM-D1003に準拠して測定される厚さ4mmの透明体が70%以上の透過率を有することを意味すると理解される。しかしながら、この透過率値は、UV安定剤および染料の任意の追加使用の場合には、70%以上という上記の値から逸脱する場合がある。
【0018】
ここで使用される「ポリイソシアヌレートプラスチック」は、ポリイソシアヌレートを含有するポリマーである。これはまた、主としてまたは完全にポリイソシアヌレートからなることができる。ポリイソシアヌレートと他のプラスチックのブレンドも同様に、ここで使用される「ポリイソシアヌレートプラスチック」という用語によって網羅される。
【0019】
ここで「プラスチック」に言及する場合、これは、例えばゲルまたは液体とは対照的に、室温で極めて実質的に寸法的に安定な製品を意味する。ここで使用される「プラスチック」という用語は、全ての標準クラスのプラスチックを包含する、すなわち特に熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂およびエラストマーを含む。
【0020】
ここで使用される「ポリイソシアヌレート」は、複数のイソシアヌレート構造単位、例えば少なくとも10個のイソシアヌレート構造単位を有する任意の分子、好ましくはポリマーである。単一のイソシアヌレート構造単位を有する分子を「イソシアヌレート」と呼ぶことができる。
【0021】
特徴的な環状イソシアヌレート構造単位は、以下の構造式で示される:
【化1】
【0022】
イソシアヌレートおよびポリイソシアヌレートは、ポリイソシアネートの環化三量化によって得ることができる。モノマージイソシアネートから進行する慣用的に運用される環化三量化は、上記のように、強い発熱反応である。これは、工業的かつ効率的に達成可能な使用オプションおよび三量化のレベルをかなり制限し得る。
【0023】
ここで使用される「ポリイソシアネート」という用語は、分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物の総称である(これは、一般構造-N=C=Oの遊離イソシアネート基を意味すると当業者によって理解される)。これらのポリイソシアネートの最も単純で最も重要な代表物がジイソシアネートである。これらは、一般構造O=C=N-R-N=C=O(Rは、典型的には脂肪族、脂環式および/または芳香族基を表す)を有する。
【0024】
多官能性(2個以上のイソシアネート基)のために、ポリイソシアネートを使用して多数のポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリ尿素およびポリイソシアヌレート)および低分子量化合物(例えば、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有するもの)を調製することが可能である。
【0025】
ここで、「ポリイソシアネート」に一般的に言及する場合、これは、モノマーおよび/またはオリゴマーポリイソシアネートを同様に意味する。しかしながら、本発明の多くの態様を理解するために、モノマージイソシアネートとオリゴマーポリイソシアネートを区別することが重要である。ここで「オリゴマーポリイソシアネート」に言及する場合、これは、少なくとも2個のジイソシアネート分子から形成されたポリイソシアネート、すなわち少なくとも2個のジイソシアネート分子から形成された反応生成物を構成するまたは含有する化合物を意味する。
【0026】
モノマージイソシアネートからのオリゴマーポリイソシアネートの調製を、ここではモノマージイソシアネートの変性とも呼ぶ。ここで使用されるこの「変性」は、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有するオリゴマーポリイソシアネートを得るためのモノマージイソシアネートの反応を意味する。
【0027】
例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)は、2個のイソシアネート基を含有し、少なくとも2個のポリイソシアネート分子の反応生成物ではないので、「モノマージイソシアネート」である:
【化2】
【0028】
対照的に、少なくとも2個のHDI分子から形成され、なおも少なくとも2個のイソシアネート基を有する反応生成物は、本発明の文脈内の「オリゴマーポリイソシアネート」である。このような「オリゴマーポリイソシアネート」の代表物は、モノマーHDI、例えば、HDIイソシアヌレートおよびHDIビウレットから進行しており、これらの各々は、3個のモノマーHDI単位から形成される:
【化3】
【0029】
本発明の文脈における「ポリイソシアネート組成物A)」とは、最初の反応混合物中のイソシアネート成分を指す。換言すれば、これはイソシアネート基を有する最初の反応混合物中の全ての化合物の総和である。したがって、ポリイソシアネート組成物A)は、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックを製造するための反応物として使用される。ここで「ポリイソシアネート組成物A)」、特に「ポリイソシアネート組成物A)を用意する」に言及する場合、これはポリイソシアネート組成物A)が存在し、反応物質として使用されることを意味する。
【0030】
本発明によると、三量化に使用されるポリイソシアネート組成物A)は、モノマーが少なく(すなわち、モノマージイソシアネートが少ない)、オリゴマーポリイソシアネートを含有する。本発明の一実施形態では、ポリイソシアネート組成物A)が、完全に、または各場合でポリマーイソシアネート組成物A)の重量基準で、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%もしくは99.5重量%の程度のオリゴマーポリイソシアネートからなる。オリゴマーポリイソシアネートのこの含量は、ポリイソシアネート組成物A)に基づく。
【0031】
「モノマーが少ない」と「モノマージイソシアネートが少ない」は、ポリイソシアネート組成物A)に関してここで同義的に使用される。
【0032】
ポリイソシアネート組成物A)が、各場合でポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、20重量%以下、特に15重量%以下または10重量%以下のポリイソシアネート組成物A)中のモノマージイソシアネートの割合を有する場合、特に実際に有効な結果が確立される。好ましくは、ポリイソシアネート組成物A)が、各場合でポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、5重量%以下、特に2.0重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下のモノマージイソシアネート含量を有する。ポリマー組成物A)がモノマーポリイソシアネートを本質的に含まない場合に、特に良好な結果が確立される。「本質的に含まない」とは、モノマーポリイソシアネート含量がポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、0.5重量%以下であることを意味する。
【0033】
使用されるポリイソシアネート組成物A)が低モノマー組成物であることが本発明にとって必要である。実際には、これは特に、ポリイソシアネート組成物A)として、その調製が実際の変性反応後に、各場合で未転化の過剰モノマージイソシアネートを除去するための少なくとも1つのさらなるステップを含むオリゴマーポリイソシアネートを使用することによって達成することができる。特に実際に有効な方法では、このモノマーの除去を、それ自体公知の方法、好ましくは高真空下での薄膜蒸留、またはイソシアネート基に対して不活性な適当な溶媒、例えば脂肪族または脂環式炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンなど)による抽出によって行うことができる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のポリイソシアネート組成物A)が、モノマージイソシアネートを変性してその後未転化モノマーを除去することによって得られる。
【0035】
好ましくは、モノマージイソシアネートが本発明のポリイソシアヌレートプラスチックを製造するために使用される三量化反応に使用されない。しかしながら、本発明の特定の実施形態では、ポリイソシアネート組成物A)が、余分なモノマージイソシアネートを含有してもよい。これに関連して、「余分なモノマージイソシアネート」は、ポリイソシアネート組成物A)中に存在するオリゴマーポリイソシアネートの調製に使用されたモノマージイソシアネートとは異なることを意味する。余分なモノマージイソシアネートの添加は、特別な技術的効果、例えば例外的な硬度の達成に有利となり得る。ポリイソシアネート組成物A)が、各場合でポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、20重量%以下、特に15重量%以下または10重量%以下のポリイソシアネート組成物A)中の余分なモノマージイソシアネートの割合を有する場合、特に実際に有効な結果が確立される。好ましくは、ポリイソシアネート組成物A)が、各場合でポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、5重量%以下、特に2.0重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下の余分なモノマージイソシアネート含量を有する。
【0036】
本発明のさらなる特定の実施形態では、ポリイソシアネート組成物A)が、2を超えるイソシアネート官能度を有する、すなわち1分子あたり2個を超えるイソシアネート基を有するモノマーモノイソシアネートまたはモノマーイソシアネートを含有してもよい。2を超えるイソシアネート官能度を有するモノマーモノイソシアネートまたはモノマーイソシアネートの添加が、ポリイソシアヌレートプラスチックのネットワーク密度に影響を及ぼすために特に有利であることが分かった。ポリイソシアネート組成物A)が、各場合でポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、20重量%以下、特に15重量%以下または10重量%以下のポリイソシアネート組成物A)中の2を超えるイソシアネート官能度を有するモノマーモノイソシアネートまたはモノマーイソシアネートの割合を有する場合、特に実際に有効な結果が確立される。好ましくは、ポリイソシアネート組成物A)が、各場合でポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、5重量%以下、特に2.0重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下の2を超えるイソシアネート官能度を有するモノマーモノイソシアネートまたはモノマーイソシアネート含量を有する。好ましくは、本発明の三量化反応に、2を超えるイソシアネート官能度を有するモノマーモノイソシアネートまたはモノマーイソシアネートが使用されない。
【0037】
低モノマーポリイソシアネート組成物A)およびその中に存在するオリゴマーポリイソシアネートは、典型的には、単純脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族モノマージイソシアネートあるいはこのようなモノマージイソシアネートの混合物を変性することによって得られる。
【0038】
オリゴマーポリイソシアネートは、本発明によると、特にウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有することができる。本発明の一実施形態では、オリゴマーポリイソシアネートが、以下のオリゴマー構造型の少なくとも1つまたはその混合型を有する:
【化4】
【0039】
驚くべきことに、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックが、イソシアヌレート構造含量がポリイソシアネート組成物A)中に存在するウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよびオキサジアジントリオン構造からなる群のオリゴマー構造の総和基準で少なくとも50mol%であるポリイソシアネート組成物A)を使用することが有利となることが分かった。
【0040】
本発明の好ましい実施態様では、イソシアヌレート構造含量がポリイソシアネート組成物A)中のウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよびオキサジアジントリオン構造からなる群の存在するオリゴマー構造の総和基準で少なくとも60mol%、好ましくは70mol%、より好ましくは80mol%、特に好ましくは90mol%、特に95mol%であるポリマー組成物A)が使用される。
【0041】
追加のまたは代替実施形態では、本発明により、イソシアヌレート構造と同様に、ウレトジオン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンもしくはオキサジアジントリオン構造またはこれらの混合型を有する少なくとも1つのさらなるオリゴマーポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物A)が使用される。
【0042】
本発明の特に好ましい実施形態では、ポリイソシアネート組成物A)が、ウレトジオン、イソシアヌレート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオンからなる群から選択される少なくとも1つの構造を有するが、本質的にアロファネート構造を含まない。「本質的にアロファネート構造を含まない」という用語は、99:1を超えるイソシアヌレート基とアロファネート基の比を指す。アロファネート含量を除いて上記で与えられる他の全ての定義をこの実施形態にも適用する。
【0043】
本発明の基礎をなす研究は、驚くべきことに、国際公開第2015/166983号パンフレットの教示とは対照的に、満足できる技術的特性を有するポリイソシアヌレートプラスチックを、アロファネート基を含有しないポリイソシアネートから製造することができることを示した。
【0044】
ポリイソシアネートA)中のウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造の割合は、例えばNMR分光法によって測定することができる。言及されるオリゴマー構造は特徴的なシグナルを与えるので、ここでは好ましくはプロトン-デカップリング形態の13CNMR分光法を使用することが好ましくは可能である。
【0045】
基礎をなすオリゴマー構造(ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造)にかかわらず、ポリイソシアネート組成物A)および/またはその中に存在するオリゴマーポリイソシアネートは、好ましくは2.0~5.0、好ましくは2.3~4.5の(平均)NCO官能度を有する。
【0046】
本発明により使用するためのポリイソシアネート組成物A)が、各場合でポリイソシアネート組成物A)の重量基準で8.0重量%~28.0重量%、好ましくは14.0重量%~25.0重量%のイソシアネート基含量を有する場合、特に実際に有効な結果が確立される。
【0047】
ポリイソシアネート組成物A)において本発明により使用するための、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有するオリゴマーポリイソシアネートの調製方法は、例えば、J.Prakt.Chem.336(1994)185-200、ドイツ特許第1670666号明細書、ドイツ特許第1954093号明細書、ドイツ特許第2414413号明細書、ドイツ特許第2452532号明細書、ドイツ特許第2641380号明細書、ドイツ特許第3700209号明細書、ドイツ特許第3900053号明細書およびドイツ特許第3928503号明細書または欧州特許第0336205号明細書、欧州特許第0339396号明細書および欧州特許第0798299号明細書に記載されている。
【0048】
本発明の追加のまたは代替実施形態では、本発明のポリイソシアネート組成物A)が、使用される変性反応の性質にかかわらず、モノマージイソシアネートから得られたオリゴマーポリイソシアネートを含有し、オリゴマー化レベルが5%~45%、好ましくは10%~40%、より好ましくは15%~30%であることが認められると定義される。「オリゴマー化レベル」は、ここでは、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を形成するために調製工程中に消費される出発混合物中に最初に存在するイソシアネート基の割合を意味すると理解される。
【0049】
本発明の方法に使用するためのポリイソシアネート組成物A)およびその中に存在するオリゴマーポリイソシアネートを調製するのに適したポリイソシアネートは、種々の方法で、例えば液相もしくは気相中のホスゲン化またはホスゲンフリーの経路、例えば、熱ウレタン開裂によって得ることができる任意の所望のポリイソシアネートである。ポリイソシアネートがモノマージイソシアネートである場合に、特に良好な結果が確立される。好ましいモノマージイソシアネートは、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的および/または芳香族的に結合したイソシアネート基を有する分子量が140~400g/molの範囲のもの、例えば1,4-ジイソシアナトブタン(BDI)、1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-および1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナト-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-2-メチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-4-メチルシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4’-および4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’,5,5’-テトラメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-2,2’,5,5’-テトラメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、1,8-ジイソシアナト-p-メンタン、1,3-ジイソシアナトアダマンタン、1,3-ジメチル-5,7-ジイソシアナトアダマンタン、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート;XDI)、1,3-および1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)およびビス(4-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)フェニル)カーボネート、2,4-および2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4’-および4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレンならびにこのようなジイソシアネートの任意の所望の混合物である。同様に適したさらなるジイソシアネートは、例えばJustus Liebigs Annalen der Chemie,volume 562(1949)p.75-136中にさらに見出すことができる。
【0050】
ポリイソシアネート組成物A)に使用してもよい適当なモノマーモノイソシアネートは、例えば、n-ブチルイソシアネート、n-アミルイソシアネート、n-ヘキシルイソシアネート、n-ヘプチルイソシアネート、n-オクチルイソシアネート、ウンデシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、セチルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、シクロペンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、3-もしくは4-メチルシクロヘキシルイソシアネートまたはこのようなモノイソシアネートの任意の所望の混合物である。ポリイソシアネート組成物A)に添加してもよい2を超えるイソシアネート官能度を有するモノマーイソシアネートの例は、4-イソシアナトメチルオクタン1,8-ジイソシアネート(トリイソシアナトノナン;TIN)である。
【0051】
本発明の一実施形態では、ポリイソシアネート組成物A)が、各場合でポリイソシアネート組成物A)の重量基準で30重量%以下、特に20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下または1重量%以下の芳香族ポリイソシアネートを含有する。ここで使用される場合、「芳香族ポリイソシアネート」は、少なくとも1個の芳香族的に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネートを意味する。
【0052】
芳香族的に結合したイソシアネート基は、芳香族ヒドロカルビル基に結合したイソシアネート基を意味すると理解される。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、専ら脂肪族的および/または脂環式的に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネート組成物A)が使用される。
【0054】
脂肪族的および脂環式的に結合したイソシアネート基は、脂肪族および脂環式のヒドロカルビル基にそれぞれ結合したイソシアネート基を意味すると理解される。
【0055】
本発明の別の好ましい実施形態では、1つまたは複数のオリゴマーポリイソシアネートが専ら脂肪族的および/または脂環式結合したイソシアネート基を有する、1つまたは複数のオリゴマーポリイソシアネートからなるまたは該オリゴマーポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物A)が使用される。
【0056】
本発明のさらなる実施形態では、ポリイソシアネート組成物A)が、各場合でポリイソシアネート組成物A)の重量基準で、少なくとも70重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%または99重量%の程度の専ら脂肪族的および/または脂環式的に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネートからなる。実際の実験は、そこに存在するオリゴマーポリイソシアネートが専ら脂肪族的および/または脂環式的に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネート組成物A)で特に良好な結果を達成することができることを示した。
【0057】
特に好ましい実施形態では、1つまたは複数のオリゴマーポリイソシアネートが1,4-ジイソシアナトブタン(BDI)、1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)もしくは4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)またはこれらの混合物に基づく、1つまたは複数のオリゴマーポリイソシアネートからなるまたは該オリゴマーポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物A)が使用される。
【0058】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の方法によって得られるポリイソシアヌレートプラスチック中のイソシアヌレート構造の割合が、ポリイソシアヌレートプラスチックの重量基準で少なくとも20重量%である。得られたポリイソシアヌレートプラスチック中のイソシアヌレート構造の割合は、例えば、固体13C NMRによって測定することができる。
【0059】
本発明のさらなる実施形態では、21℃でDIN EN ISO 3219に準拠して測定される500mPas超500000mPas未満、好ましくは750mPas超300000mPas未満、特に好ましくは1000mPa超200000mPas未満の粘度を有するポリイソシアネート組成物A)が使用される。
【0060】
本発明のポリイソシアヌレートは、触媒三量体化によって得られる。ここで「触媒」とは、適切な触媒B)の存在下でのことを意味する。
【0061】
本発明による方法に適した触媒B)は、原則としてイソシアネート基のイソシアヌレート構造への三量化を促進する任意の化合物である。イソシアヌレート形成は、使用される触媒に応じて、しばしば、副反応、例えば、ウレトジオン構造を与える二量化またはイミノオキサジアジンジオン(非対称三量体と呼ばれる)を形成する三量化を伴い、出発ポリイソシアネート中のウレタン基の存在下では、アロファネート化(allophanatization)反応を伴い、本発明の文脈における「三量化」という用語は追加的に進行するこれらのオリゴマー化反応とも同義的に使用される。
【0062】
しかしながら、特定の実施形態では、三量化が、主に、イソシアヌレート構造単位を与えるためのポリイソシアネート組成物A)中に存在するイソシアネート基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%の環化三量化が触媒されることを意味する。しかしながら、副反応、特にウレトジオン、アロファネートおよび/またはイミノオキサジアジンジオン構造を与えるものが典型的に起こり、例えば、得られたポリイソシアヌレートプラスチックのTg値に有利に影響を及ぼすために制御された様式で使用することさえ可能である。
【0063】
本発明の方法に適した触媒B)は、例えば、単純な三級アミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルピペリジンまたはN,N’-ジメチルピペラジンである。適当な触媒はまた、英国特許第2221465号明細書に記載される三級ヒドロキシアルキルアミン、例えばトリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-イソプロピルジエタノールアミンおよび1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、または英国特許第2222161号明細書から公知で、三級二環式アミン、例えばDBUと単純な低分子量脂肪族アルコールの混合物からなる触媒系である。
【0064】
本発明の方法に三量化触媒B)として同様に適しているのは、多数の異なる金属化合物である。適当な例は、ドイツ特許第3240613号明細書で触媒として記載されているマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、セリウムまたは鉛のオクトエートおよびナフテネート、またはそのリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはバリウムの酢酸塩との混合物、ドイツ特許第3219608号明細書から公知の最大10個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルカンカルボン酸、例えばプロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸およびウンデシル酸のナトリウムおよびカリウム塩、欧州特許第0100129号明細書から公知の2~20個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式または芳香族モノカルボン酸およびポリカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えば安息香酸ナトリウムまたは安息香酸カリウム、英国特許第1391066号明細書および英国特許第1386399号明細書から公知のアルカリ金属フェノキシド、例えばナトリウムまたはカリウムフェノキシド、英国特許第809809号明細書から公知のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、アルコキシドおよびフェノキシド、エノール化可能な化合物のアルカリ金属塩および弱い脂肪族または脂環式カルボン酸の金属塩、例えばナトリウムメトキシド、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アセト酢酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸鉛およびナフテン酸鉛、欧州特許第0056158号明細書および欧州特許第0056159号明細書から公知のクラウンエーテルまたはポリエーテルアルコールと錯化した塩基性アルカリ金属化合物、例えば錯化カルボン酸ナトリウムまたはカリウム、欧州特許第0033581号明細書から公知のピロリジノン-カリウム塩、出願欧州特許第13196508.9号明細書から公知のチタン、ジルコニウムおよび/またはハフニウムの単核または多核錯体、例えばジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-2-エチルヘキサノエートおよびジルコニウムテトラ-2-エチルヘキソキシド、ならびにEuropean Polymer Journal,vol.16,147-148(1979)に記載されている種類のスズ化合物、例えばジブチルスズジクロリド、ジフェニルスズジクロリド、トリフェニルスタンナノール、トリブチルスズアセテート、トリブチルスズオキシド、オクチル酸スズ、ジブチル(ジメトキシ)スタンナンおよびトリブチルスズイミダゾレートである。
【0065】
本発明の方法に適したさらなる三量化触媒B)は、例えば、ドイツ特許第1667309号明細書、欧州特許第0013880号明細書および欧州特許第0047452号明細書から公知の四級アンモニウムヒドロキシド、例えばテトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、N,N-ジメチル-N-ドデシル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-N-(2,2’-ジヒドロキシメチルブチル)アンモニウムヒドロキシドおよび1-(2-ヒドロキシエチル)-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンヒドロキシド(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンとエチレンオキシドおよび水のモノ付加物)、欧州特許第3765号明細書または欧州特許第10589号明細書から公知の四級ヒドロキシアルキルアンモニウムヒドロキシド、例えばN,N,N-トリメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ドイツ特許第2631733号明細書、欧州特許第0671426号明細書、欧州特許第1599526号明細書および米国特許第4789705号明細書から公知のトリアルキルヒドロキシルアルキルアンモニウムカルボキシレート、例えばN,N,N-トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウムp-tert-ブチルベンゾエートおよびN,N,N-トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム2-エチルヘキサノエート、欧州特許第1229016号明細書から公知の四級ベンジルアンモニウムカルボキシレート、例えばN-ベンジル-N,N-ジメチル-N-エチルアンモニウムピバレート、N-ベンジル-N,N-ジメチル-N-エチルアンモニウム2-エチルヘキサノエート、N-ベンジル-N,N,N-トリブチルアンモニウム2-エチルヘキサノエート、N,N-ジメチル-N-エチル-N-(4-メトキシベンジル)アンモニウム2-エチルヘキサノエートまたはN,N,N-トリブチル-N-(4-メトキシベンジル)アンモニウムピバレート、国際公開第2005/087828号パンフレットから公知の四置換アンモニウムα-ヒドロキシカルボキシレート、例えばテトラメチルアンモニウムラクテート、欧州特許第0339396号明細書、欧州特許第0379914号明細書および欧州特許第0443167号明細書から公知の四級アンモニウムまたはホスホニウムフルオリド、例えばC8~C10-アルキル基を有するN-メチル-N,N,N-トリアルキルアンモニウムフルオリド、N,N,N,N-テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド、N,N,N-トリメチル-N-ベンジルアンモニウムフルオリド、テトラメチルホスホニウムフルオリド、テトラエチルホスホニウムフルオリドまたはテトラ-n-ブチルホスホニウムフルオリド、欧州特許第0798299号明細書、欧州特許第0896009号明細書および欧州特許第0962455号明細書から公知の四級アンモニウムおよびホスホニウムポリフルオリド、例えばベンジルトリメチルアンモニウム水素ポリフルオリド、欧州特許第0668271号明細書から公知であり、三級アミンとジアルキルカーボネートまたはベタイン構造四級アンモニオアルキルカーボネートの反応によって得られるテトラアルキルアンモニウムアルキルカーボネート、国際公開第1999/023128号パンフレットから公知の四級アンモニウム水素カーボネート、例えばコリンビカーボネート、欧州特許第0102482号明細書から公知であり、三級アミンとリン酸のアルキル化エステルから得られる四級アンモニウ塩(このような塩の例はトリエチルアミン、DABCOまたはN-メチルモルホリンとジメチルメタンホスホネートの反応生成物である)、あるいは国際公開第2013/167404号パンフレットから公知のラクタムの四置換アンモニウム塩、例えばトリオクチルアンモニウムカプロラクタメートまたはドデシルトリメチルアンモニウムカプロラクタメートである。
【0066】
本発明の方法に適したさらなる三量化触媒は、例えばJ.H.Saunders and K.C.Frisch,Polyurethanes Chemistry and Technology,p.94 ff.(1962)およびそこに引用された文献中に見出すことができる。
【0067】
触媒B)は、本発明の方法において、個々にまたは互いの任意の所望の混合物の形態で使用することができる。
【0068】
好ましい触媒B)は、クラウンエーテルまたはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどの錯化剤と組み合わせた、前記種類の金属化合物、特にアルカリ金属、アルカリ土類金属またはジルコニウムのカルボキシレートおよびアルコキシド、ならびに前記種類の有機スズ化合物である。
【0069】
特に好ましい三量化触媒B)は、クラウンエーテルまたはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどの錯化剤と組み合わせた、2~20個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸のナトリウム塩およびカリウム塩、ならびに脂肪族的に置換されたスズ化合物である。
【0070】
本発明の方法のための極めて特に好ましい三量化触媒B)は、クラウンエーテルまたはポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどの錯化剤と組み合わせた酢酸カリウム、オクチル酸スズおよび/またはトリブチルスズオキシドである。
【0071】
本発明によると、三量化触媒B)は、一般的に0.0005重量%~5.0重量%、好ましくは0.0010重量%~2.0重量%、より好ましくは0.0015重量%~1.0重量%の、使用されるポリイソシアネート組成物A)の量基準の濃度で使用される。
【0072】
本発明により使用される三量化触媒B)は、一般的に、三量化反応の開始に必要な量のポリイソシアネート組成物A)への十分な溶解性を有する。そのため、触媒B)は、好ましくはポリイソシアネート組成物A)にニート形態で添加される。
【0073】
しかしながら、触媒B)を、それらの組込性(incorporability)を改善するために、適切な有機溶媒に溶解して使用してもよい。触媒溶液の希釈レベルは、極めて広範囲で自由に選択することができる。触媒活性触媒溶液は、典型的には、約0.01重量%を超える濃度の触媒溶液である。
【0074】
適切な触媒溶媒は、例えば、イソシアネート基に対して不活性な溶媒、例えばヘキサン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルおよびブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1-メトキシプロパ-2-イルアセテート、3-メトキシ-n-ブチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ラクトン(β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンおよびε-メチルカプロラクトンなど)であるが、N-メチルピロリドンおよびN-メチルカプロラクタム、1,2-プロピレンカーボネート、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、トリエチルホスフェートまたはこのような溶媒の任意の所望の混合物などの溶媒もである。
【0075】
触媒溶媒を本発明による方法に使用する場合、イソシアネートに対して反応性の基を有し、ポリイソシアヌレートプラスチックに組み込むことができる触媒溶媒を使用することが好ましい。このような溶媒の例は、一価および多価単純アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、異性体ブタンジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオールまたはグリセロール;エーテルアルコール、例えば1-メトキシ-2-プロパノール、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールまたは他の液体の高分子量ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、混合ポリエチレン/ポリプロピレングリコールおよびそのモノアルキルエーテル;エステルアルコール、例えばエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノラウレート、グリセロールモノ-およびジアセテート、グリセロールモノブチレートまたは2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチレート;不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、1,1-ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール;芳香脂肪族アルコール、例えばベンジルアルコール;N-一置換アミド、例えばN-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、シアノアセトアミドまたは2-ピロリドン、あるいはこのような溶媒の任意の所望の混合物である。
【0076】
本発明のポリイソシアヌレートプラスチックは、それ自体でさえ、すなわち適当な助剤および添加剤C)を添加しなくても、非常に良好な光安定性を特徴とする。それにもかかわらず、標準的な助剤および/または添加剤C)、例えば標準的な充填剤、UV安定剤、抗酸化剤、離型剤、水捕捉剤、スリップ添加剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジー添加剤、可塑剤、難燃剤および/または顔料を同様にその製造に使用してもよい。充填剤および難燃剤を除くこれらの助剤および/または添加剤C)は、典型的には、ポリイソシアヌレートプラスチック中に、ポリイソシアネート組成物A)基準で10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは最大で3重量%の量で存在する。難燃剤は、典型的には、ポリイソシアヌレートプラスチック中に、ポリイソシアネート組成物A)基準で、使用される難燃剤の総量として計算される70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下の量で存在する。
【0077】
適切な充填剤Cw)は、例えばAlOH3、CaCO3、金属顔料(TiO2など)およびさらに公知の標準的な充填剤である。より具体的には、使用される充填剤は、ポリイソシアヌレートプラスチックの透明性を有意には損なわないもの、例えば、可視光の波長未満の粒径を有する充填剤である。同様に、固有の透明性を有する充填剤、例えば中空ガラスビーズまたはガラスビーズも同様に特に適している。適した充填剤Cw)は、好ましくはポリイソシアネート組成物A)基準で、使用される充填剤の総量として計算される70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下の量で使用される。
【0078】
適切なUV安定剤Cx)は、好ましくは、ピペリジン誘導体、例えば、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-1,4-ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スベレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ドデカンジオエート;ベンゾフェノン誘導体、例えば2,4-ジヒドロキシ-、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-、2-ヒドロキシ-4-オクトキシ-、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシ-または2,2’-ジヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン;ベンゾトリアゾール誘導体、例えば2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、イソオクチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオネート)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノール;オキサルアニリド、例えば2-エチル-2’-エトキシ-または4-メチル-4’-メトキシオキサルアニリド;サリチル酸エステル、例えばフェニルサリチレート、4-tert-ブチルフェニルサリチレート、4-tert-オクチルフェニルサリチレート;桂皮酸エステル誘導体、例えばメチルα-シアノ-β-メチル-4-メトキシシンナメート、ブチルα-シアノ-β-メチル-4-メトキシシンナメート、エチルα-シアノ-β-フェニルシンナメート、イソオクチルα-シアノ-β-フェニルシンナメート;およびマロン酸エステル誘導体、例えばジメチル4-メトキシベンジリデンマロネート、ジエチル4-メトキシベンジリデンマロネート、ジメチル4-ブトキシベンジリデンマロネートからなる群から選択され得る。これらの好ましい光安定剤は、単独で、または互いの任意の所望の組み合わせで使用することができる。
【0079】
本発明により製造可能なポリイソシアヌレートプラスチックのための特に好ましいUV安定剤Cx)は、400nm未満の波長の光を完全に吸収するものである。これらには、例えば、上記ベンゾトリアゾール誘導体が含まれる。特に好ましいUV安定剤は、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールおよび/または2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノールである。
【0080】
例として挙げたUV安定剤Cx)の1つまたは複数を、ポリイソシアネート組成物A)の総重量基準で、使用されるUV安定剤の総量として計算される好ましくは0.001~3.0質量%、より好ましくは0.01~2質量%の量でポリイソシアネート組成物A)に添加してもよい。
【0081】
適切な抗酸化剤Cy)は、好ましくは2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(イオノール)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)および2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]からなる群から選択され得る立体障害フェノールである。必要に応じて、これらを、単独で、または互いの任意の所望の組み合わせで使用することができる。
【0082】
これらの抗酸化剤Cy)は、好ましくは、ポリイソシアネート組成物A)基準で、使用される抗酸化剤の総量として計算される0.01~3.0重量%、より好ましくは0.02~2.0重量%の量で使用される。
【0083】
さらに使用するための少量の任意の触媒溶媒は別として、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックは溶媒を用いないで製造される。そうでなければ、適した溶媒は、例えば、イソシアネート基に対して不活性であり、既に上に記載された触媒溶媒であるだろう。
【0084】
本発明による使用の場合、転化されるさらなる助剤および添加剤C)が、最終的に、内部離型剤Cz)であってもよい。
【0085】
これらは、好ましくは、離型剤として知られているペルフルオロアルキルまたはポリシロキサン単位を含有する非イオン性界面活性剤、四級アルキルアンモニウム塩、例えばトリメチルエチルアンモニウムクロリド、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド、ジメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、トリエチルドデシルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドおよびジエチルシクロヘキシルドデシルアンモニウムクロリド、アルキル基中2~18個の炭素原子を有する酸性モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、例えばエチルホスフェート、ジエチルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、オクチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、イソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート、ドデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、トリデカノールホスフェート、ビス(トリデカノール)ホスフェート、ステアリルホスフェート、ジステアリルホスフェート、ならびにこのような離型剤の任意の所望の混合物である。
【0086】
特に好ましい離型剤Cz)は、言及される酸性モノ-およびジアルキルホスフェートであり、最も好ましくはアルキル基中に8~12個の炭素原子を有するものである。
【0087】
内部離型剤Cz)は、適宜、ポリイソシアネート組成物A)基準で、使用される内部離型剤の総量として計算される好ましくは0.01~3.0重量%、より好ましくは0.02~2.0重量%の量で本発明の方法に使用される。
【0088】
本発明の方法の一実施形態では、三量化触媒B)または異なる三量化触媒B)の混合物を、場合により不活性ガス、例えば窒素下で、場合により上記溶媒および助剤および添加剤C)をさらに使用して、記載されるポリイソシアネート組成物A)に添加し、適切な混合装置を用いて均質に混合する。触媒B)およびさらなる使用のための任意の溶媒および助剤および添加剤C)の添加は、上に指定される量および一般に0~150℃、好ましくは15~80℃、より好ましくは20~60℃の温度で、任意の順序で、連続的に、または混合物で行うことができる。本発明の特定の実施形態では、このようにして得られた反応混合物が、室温で10分超の、反応混合物の粘度が開始値の2倍になる時間までのポリイソシアネート組成物A)と三量化触媒B)との混合からの期間として定義されるポットライフを有する。これにより、有意な発熱を伴う制御できない様式で進行する反応のリスクなしに、信頼性の高い混和性および信頼性の高い単純な処理が保証される。
【0089】
不要な副反応およびブリスター形成を避けるために、混合前に供給原料を適切な方法で乾燥および脱気してもよい。
【0090】
本発明の方法では、少量の水分がブリスター形成をもたらし得るので、ポリイソシアネート組成物A)および場合によりさらなる成分を無水形態で混合するのが有利である。そのため、混合物中の残留水分含量は、欠陥が生じないように十分に低く保たれるべきである。好ましくは、混合物の水分含量は0.5重量%未満であり得る。
【0091】
このようにして得られた触媒反応混合物の適用は、最終使用によりそれ自体公知の種々の方法によって行うことができる。フィルムまたはコーティング、例えば塗料を製造するために、触媒B)およびポリイソシアネート組成物A)を含む反応混合物を、例えば、噴霧、拡散、浸漬、フローコーティングによってまたはブラシ、ローラーもしくはドクターブレードの助けを借りて、コーティング前に標準的なプライマーを提供してもよい任意の所望の基材、例えば金属、ガラス、セラミック材料、硬質および軟質プラスチックまたはシリコン処理紙に1つまたは複数の層で適用することができる。
【0092】
固形体、例えば半製品または成形品を製造するために、触媒B)およびポリイソシアネート組成物A)を含む反応混合物を、例えば単純な手動注入によって、または適切な機械、例えば、ポリウレタン技術の標準である低圧もしくは高圧機械を用いて、開放または閉鎖鋳型に導入することができる。
【0093】
その後、加熱することによって三量化反応を開始することができ、最適な反応温度は、選択された触媒に応じて、各場合で0~250℃、好ましくは40~200℃、より好ましくは100~190℃である。特に有利なことには、所望の製品のガラス転移点を超える温度で重合を実施することができる。本発明の特定の実施形態では、反応の過程の反応混合物の温度が80℃超に達するが、350℃未満、好ましくは300℃未満のままである。
【0094】
特に厚層成形物の場合、反応温度は、設定された反応温度(すなわち、周囲温度)と比較して+5~+200℃、好ましくは+10℃~100℃の反応材料中の温度スパイクをもたらし得る断熱成分を有する。断熱成分は、熱伝達によって環境に放出されないが、三量体混合物中の温度上昇および反応の加速をもたらす反応エンタルピーを意味すると理解される。
【0095】
選択された触媒B)および選択された反応温度に応じて、三量化反応は、数秒~最大数時間の期間の後に、以下に定義されるように、極めて実質的に完了する。実際には、80℃を超える反応温度での三量化反応が、典型的には、12時間未満で極めて実質的に完了することが分かっている。ここで「反応温度」を議論する場合、これは周囲温度を意味する。本発明の好ましい実施形態では、80℃を超える反応温度での三量化反応が、12時間未満、より好ましくは5時間未満、最も好ましくは1時間未満で完了する。反応の進行は、最初にNCO含量の滴定決定によってまだ決定することができるが、反応混合物のゲル化および固化は、進行する転化によって急速に設定され、これによって湿式化学分析方法が不可能になる。そのため、イソシアネート基のさらなる転化率は、分光法、例えば、約2270cm-1のイソシアネートバンドの強度を参照してIR分光法によってのみ監視することができる。
【0096】
本発明のポリイソシアヌレートプラスチックは、好ましくは高い転化率を有するポリイソシアヌレート、すなわちポリイソシアヌレート構造を与える三量化反応が極めて実質的に完了したものであることが好ましい。ポリイソシアヌレート構造を与える三量化反応は、本発明の文脈において、ポリイソシアネート組成物A)中に最初に存在する遊離イソシアネート基の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%が反応した場合に、「極めて実質的に完了した」とみなすことができる。換言すれば、ポリイソシアネート組成物A)中に最初に存在するイソシアネート基の好ましくは最大20%、最大10%、より好ましくは最大5%のみが本発明のポリイソシアネートプラスチック中に存在する。これは、本発明の方法における触媒三量化を、少なくとも例えば、ポリイソシアネート組成物A)中に最初に存在するイソシアネート基の最大20%のみが存在し、結果として高い転化率を有するポリイソシアヌレートが得られる転化率レベルまで実施することによって達成され得る。依然として存在するイソシアネート基の百分率は、例えば、IR分光法によって約2270cm-1におけるイソシアネートバンドの強度の上記比較により、当初のポリイソシアネート組成物A)中の重量%でのイソシアネート基の含量と、反応生成物中の重量%でのイソシアネート基の含量を比較することによって決定することができる。
【0097】
好ましい実施形態では、使用されるポリイソシアネート組成物A)基準での本発明のポリイソシアヌレートプラスチック中の抽出可能なイソシアネート含有化合物の総含量が1重量%未満である。抽出可能なイソシアネート含有化合物の総含量は、それ自体公知の方法、好ましくはイソシアネート基に対して不活性な適当な溶媒、例えば脂肪族または脂環式炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンなど)による抽出、およびその後の例えばIR分光法による抽出物中のイソシアネート基含量の測定によって、特に実用的な様式で測定することができる。
【0098】
本発明の方法は、有意な発熱がフォーム形成および変色をもたらし、透過率を大きく低下させる極めて発熱性の先行技術の方法とはこの点で異なる。多くの透明要素に使用するためには高い透過率および低い変色が必要である。
【0099】
本発明の方法により、非常に効率的な様式で均質でブリスターを含まないポリイソシアヌレートプラスチックを得ることが可能である。これらは、特に、DIN EN ISO 1183-1に準拠して測定される1g/cm3超の密度を特徴とする。
【0100】
本発明のポリイソシアヌレートプラスチックは、異常に高い熱安定性、特に熱的色安定性を有する。
【0101】
さらに好ましい実施形態では、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックが、ASTM D1003に準拠して測定される、70%を超える、好ましくは80%を超える、より好ましくは90%を超え2mmの層厚さでの透過率を有する。
【0102】
より具体的には、ポリイソシアヌレートプラスチックはまた、120℃のオーブンで1000時間貯蔵すると、30%以下、好ましくは20%以下の透過率損失(360nmおよび400nmでの測定)を有する。透過率損失を測定するために、360~840nmの波長範囲にわたってHunter UltraScanPro 1206を用いて、製造直後(T0)および120℃のオーブンで1000時間貯蔵した後(T1000)に透過率を測定する。透過率損失T%を、T%=T0-T1000として計算する。透過率損失を、360nmと400nmの波長で別々に計算する。より具体的には、120℃で1000時間後に360nmおよび400nmで測定される透過率損失は30%以下、好ましくは20%以下である。
【0103】
別の好ましい実施形態では、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックが15未満、好ましくは10未満のL*a*b*色空間でのDIN 5033に準拠して測定されるb*値を有する。より具体的には、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックはまた、L*a*b*色空間におけるDIN 5033(b*値の決定)に準拠して決定されるΔb*値が20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。L*a*b*色空間の各色は、デカルト座標{L*,a*,b*}を有する色位置によって定義される。L*軸は0~100の値を有する色の明るさ(輝度)を記載する。a*軸は色の緑色または赤色成分を記載し、負の値は緑色を表し、正の値は赤色を表す。b*軸は、色の青色または黄色成分を表し、負の値は青を表し、正の値は黄色を表す。そのため、比較的高い正のb*値は、多くの用途で望ましくない有意な黄変を示す。Δb*値は、製造直後に決定されたポリイソシアヌレートプラスチックのb*値(b0*)と、120℃のオーブンで1000時間貯蔵した後に決定されたb*値(b1000*)の差である(Δb*=b1000*-b0*)。よって、b*値の有意な増加、したがって高いΔb*値は、有意な熱黄変を表す。
【0104】
さらに、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックは、実験節に記載される方法により、DIN 53505に準拠して40、好ましくは50、より好ましくは60を超えるショアD硬さを有する。
【0105】
本発明はさらに、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックを含むまたは本発明のポリイソシアヌレートプラスチックからなる透明要素を提供する。
【0106】
本発明の文脈における透明要素は、例えば、クリアコート、フィルム、容器、包装材料、グレージング材料、カプセル材料、光ファイバ、光拡散器またはレンズ、および透明な任意の成形品または半製品を意味すると理解される。これらの要素は、特に良好な熱耐久性および熱的色安定性を必要とする多種多様な異なる分野および用途で使用することができる。
【0107】
本発明の透明要素は、様々な製造方法、例えば鋳造、滴下、急速射出成形(RIM)、コーティング、浸漬または他の適切な方法によって製造することができる。
【0108】
好ましくは、透明要素が光ファイバ、光拡散器またはレンズであり得る。
【0109】
本発明の特定の構成は光学要素を含む。
【0110】
透明な光学要素の例は、自動車のヘッドランプのレンズ、光学補正レンズ、光ファイバ、照明手段、特に蛍光材料(典型的には業界では「蛍光体」と呼ばれる)が組み込まれてもよいLEDのカプセル化、または他の透明成分であり得る。
【0111】
本発明は同様に、光伝導、光散乱および/または光誘導のための本発明のポリイソシアヌレートプラスチックの使用を包含する。
【0112】
本発明を実施例により以下で詳細に説明する。
【0113】
[実施例]
特に明言しない限り、全ての百分率は重量に基づく。
【0114】
適当なパラメータを決定するために以下に詳述される方法が、実施例の実施および評価のために使用され、これらは一般に本発明による関連するパラメータの決定方法でもある。
【0115】
NCO含量をDIN EN ISO 11909に準拠して滴定手段によって測定する。
【0116】
残留モノマー含量は、内部標準を用いてガスクロマトグラフィーによってDIN EN ISO 10283に準拠して測定する。
【0117】
全ての粘度測定をDIN EN ISO 3219に準拠してAnton Paar Germany GmbH(DE)製のPhysica MCR 51レオメーターで行う。
【0118】
出発ポリイソシアネートの密度はDIN EN ISO 2811に準拠して、また硬化ポリイソシアヌレートプラスチックの密度はDIN EN ISO 1183-1に準拠して測定する。
【0119】
出発ポリイソシアネート中に存在するウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造の含量(mol%)を、プロトン-デカップリング13C NMRスペクトル(Bruker DPX-400装置で記録)の強度から計算し、これはそれぞれ存在するウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造の総和に基づく。HDIポリイソシアネートの場合、個々の構造要素は以下の化学シフト(ppm)を有する:ウレトジオン:157.1;イソシアヌレート:148.4;アロファネート:155.7および153.8、ビウレット:155.5;イミノオキサジアジンジオン:147.8、144.3および135.3;オキサジアジントリオン:147.8および143.9。
【0120】
b*値をL*a*b*色空間においてDIN 5033に準拠して決定する。Δb*値は、製造直後に決定されたポリイソシアヌレートプラスチックのb*値(b0*)と、120℃のオーブンで1000時間貯蔵した後に決定されたb*値(b1000*)の差である(Δb*=b1000*-b0*)。よって、b*値の有意な増加、したがって高いΔb*値は、有意な熱黄変、したがって低い熱的色安定性を表す。
【0121】
8°の視野角および拡散照明で光沢を持たない厚さ2mmの試験片を用いて、CM-5分光光度計でDIN5033パート7に準拠して変色を測定した。
【0122】
厚さ2mmの試験片についてASTM D1003に準拠したByk-Gardnerヘイズ-ガードプラス機器を用いて透過率を測定した。
【0123】
透過率損失を測定するために、360~840nmの波長範囲にわたってHunter UltraScanPro 1206を用いて、製造直後(T0)および120℃のオーブンで1000時間貯蔵した後(T1000)に透過率を測定する。透過率損失T%を、T%=T0-T1000として計算する。透過率損失を、360nmと400nmの波長で別々に計算する。
【0124】
ガラス転移温度TgをDIN EN 61006に準拠してMettler DSC 12E(Mettler Toledo GmbH、Giessen、ドイツ)を用いてDSC(示差走査熱量測定)によって測定した。インジウムと鉛の溶融開始温度を介して較正を行った。物質10mgを標準的なカプセルで秤量した。20K/分の加熱速度で-50℃から+200℃までの3回の加熱を行い、その後320K/分の冷却速度で冷却することによって測定を行った。液体窒素を用いて冷却を行った。使用したパージガスは窒素であった。以下の表で報告される値は、DSCの熱応力の結果として調査される反応系において高温での測定方法における試料の変化が可能であるので、それぞれ第1の加熱曲線の評価に基づく。測定したガラス転移温度Tgはガラス転移ステップの高さの半分の温度であった。
【0125】
ショア硬さは、23℃および50%空気湿度でZwick 3100 ショア硬さ試験機(Zwick、ドイツ製)を用いてDIN 53505に準拠して測定した。
【0126】
本発明の方法
出発ポリイソシアネート100gを、酢酸カリウム0.177g、[18]クラウン-6 0.475gおよびジエチレングリコール3.115gからなる触媒混合物と一緒にポリプロピレンカップに秤量し、Speed-Mixer DAC150FVZ(Hauschild、ドイツ製)を用いて2750rpmで1分間ホモジナイズする。各ポリプロピレンカップの内容物8gを、良好な脱型のために酢酸エチル溶液中の1%大豆レシチンW250であらかじめ擦り、乾燥させた直径6.3cmおよび深さ1cmのアルミニウム皿に秤量する。このように充填されたアルミニウム皿を180℃の乾燥キャビネット内で10分間加熱する。室温に冷却した後、試験片を脱型する。約2mmの厚さの試験片が得られる。
【0127】
本発明の方法を、本発明のポリイソシアヌレートプラスチックと本発明でないポリイソシアヌレートプラスチックの製造の両方に使用する。
【0128】
使用した全てのポリイソシアネートはBayerから供給され、商業的に入手可能である、または容易に入手可能なモノマーおよび触媒に基づいて特許文献に記載されている方法によって調製することができる。
【0129】
製造後、試験片を120℃のオーブンに1000時間にわたって貯蔵する。安定性を評価するために、試験片の透過率スペクトルを、貯蔵前および1000時間の貯蔵後に記録する。この目的のために、Hunter UltraScanPro 1206を使用して、360~840nmの波長範囲にわたる透過率を測定する。
【0130】
出発化合物
本発明の出発ポリイソシアネートA
イソシアヌレート基を含有するHDIポリイソシアネートを、使用する触媒を2-エチルヘキサン-1,3-ジオールではなく2-エチルヘキサノールにするという変更をして、欧州特許第330966号明細書の実施例11により調製した。ジブチルホスフェートを添加することによって、42%の粗混合物のNCO含量で反応を停止した。その後、温度130℃および圧力0.2mbarでの薄膜蒸留によって未転化HDIを除去した。
【0131】
NCO含量:23.0%
NCO官能度:3.2
モノマーHDI:0.1%
粘度(23℃):1200mPas
密度(20℃):1.17g/cm3
オリゴマー構造型の分布:
イソシアヌレート:89.7mol%
イミノオキサジアジンジオン:2.5mol%
ウレトジオン:2.7mol%
アロファネート:5.1mol%
本発明の出発ポリイソシアネートB
イソシアヌレート基を含有するHDIポリイソシアネートを、使用する触媒を2-エチルヘキサン-1,3-ジオールではなく2-エチルヘキサノールにするという変更をして、欧州特許第330966号明細書の実施例11により調製した。ジブチルホスフェートを添加することによって、45%の粗混合物のNCO含量で反応を停止した。その後、温度130℃および圧力0.2mbarでの薄膜蒸留によって未転化HDIを除去した。
【0132】
NCO含量:21.8%
NCO官能度:3.4
モノマーHDI:0.1%
粘度(23℃):3000mPas
密度(20℃):1.17g/cm3
オリゴマー構造型の分布:
イソシアヌレート:89.7mol%
イミノオキサジアジンジオン:2.5mol%
ウレトジオン:2.7mol%
アロファネート:5.1mol%
本発明の出発ポリイソシアネートC
欧州特許第0003765号明細書の実施例2によるイソホロンジイソシアネート(IPDI)を31.1%のNCO含量まで三量化し、170℃/0.1mbarでの薄膜蒸留によって過剰のIPDIを除去した。これにより、100~110℃の融点範囲を有する事実上無色の固体樹脂としてイソシアヌレートポリイソシアネートが得られた。
【0133】
NCO含量:16.4%
NCO官能度:3.3
モノマーIPDI:0.2%
70重量部の固体IPDIポリイソシアヌレートを粗く粉砕し、N2雰囲気下で30重量部の出発ポリイソシアネートAと一緒に室温で反応容器に最初に装入した。固体樹脂を溶解し、混合物を均質化するために、これを100~140℃に加熱し、事実上明澄な溶液が得られるまで撹拌した。その後、混合物を50℃に冷却し、200μフィルターを通して濾過した。
【0134】
NCO含量:21.2%
NCO官能度:3.2
モノマーIPDI:0.1%
モノマーHDI:0.1
オリゴマー構造型の分布:
イソシアヌレート:92.1mol%
イミノオキサジアジンジオン:1.8mol%
ウレトジオン:1.9mol%
アロファネート:4.2mol%
本発明の出発ポリイソシアネートD
使用した出発ポリイソシアネートDは、95重量%の出発ポリイソシアネートAと5重量%のイソホロンジイソシアネート(IPDI)の混合物であった。
【0135】
本発明の出発ポリイソシアネートE
使用する出発ポリイソシアネートAを蒸留して、13C NMR分光法により99%超のHDIのポリイソシアヌレート三量体を含む分画を得た。NCO含量:24.8%
NCO官能度:3.0
モノマーHDI:<0.1%
粘度(23℃):700mPas
密度(20℃):1.17g/cm3
オリゴマー構造型の分布:イソシアヌレート:99.2mol%
イミノオキサジアジンジオン+ウレトジオン+アロファネート:<1mol%
本発明でない出発ポリイソシアネートF*
ビウレット基を含有するHDIポリイソシアネートを、欧州特許第0150769号明細書の方法により、0.05molの無水ピバル酸の存在下、125℃で8.2molのHDIと1.0molの水を反応させることによって調製した。36.6%のNCO含量に達したら、温度130℃および圧力0.2mbarでの薄膜蒸留によって、未転化モノマーHDIを無水ピバル酸と一緒に除去した。
【0136】
NCO含量:23.0%
NCO官能度:3.2
モノマーHDI:0.4%
粘度(23℃):2500mPas
密度(20℃):1.13g/cm3
オリゴマー構造型の分布:
ビウレット:87.7mol%
ウレトジオン:12.3mol%
本発明でない出発ポリイソシアネートG*
イソシアヌレート基およびウレトジオン基を含有するHDIポリイソシアネートを、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールを使用しないという変更をして欧州特許第0377177号明細書の実施例1a)により、トリブチルホスフィン触媒オリゴマー化によって調製した。反応を42%のNCO含量で停止し、温度130℃および圧力0.2mbarでの薄膜蒸留によって未転化HDIを除去した。
【0137】
NCO含量:22.7%
NCO官能度:2.2
モノマーHDI:0.3%
粘度(23℃):90mPas
密度(20℃):1.13g/cm3
オリゴマー構造型の分布:
イソシアヌレート:15.6mol%
イミノオキサジアジンジオン:6.3mol%
ウレトジオン:78.1mol%
本発明でない出発ジイソシアネートH*
Desmodur H=HDI=モノマーヘキサメチレンジイソシアネートとしてBayer MaterialScience AGから供給
本発明でない出発ポリイソシアネートI*
Desmodur XP 2617としてBayer Material Scienceから購入HDIのポリウレタンプレポリマーに基づく主に直鎖のポリイソシアネート
NCO含量:12.5%
モノマーHDI:<0.5%
粘度(23℃):4250mPas
密度(20℃):1.09g/cm3
本発明でない出発ポリイソシアネートJ*
欧州特許第496208号明細書の実施例1による、アロファネート-およびイソシアヌレート基HDIポリイソシアネート。
【0138】
NCO含量:19.8%
NCO-官能度:2.5
モノマーHDI:0.3%
粘度(23℃):570mPas
密度(20℃):1.11g/cm3
オリゴマー構造の分布:
イソシアヌレート:33.1mol%
アロファネート:66.9mol%
*比較実験
本発明のポリイソシアネート出発材料に基づく実験は、本発明でないポリイソシアネート出発材料に基づく実験と比較して、熱応力後に得られるポリイソシアヌレートプラスチックの明らかに優れた熱老化および熱変色特性を示す。これは、ポリイソシアヌレートプラスチックの製造後の低い開始b*値(L*a*b*色測定から)、ならびに120℃で1000時間後の20未満のΔb*値と30%未満の360nmおよび400nmにおける透過率損失(T%)で証明される。
【0139】
したがって、本発明のポリイソシアネート出発材料に基づく本発明のポリイソシアヌレートプラスチックは、極めて良好な熱特性および熱変色特性が望まれる用途、例えば光散乱および光誘導のための光学部品、例えば高性能LEDのカプセル化のための透明要素として使用するためのはるかに優れた特性を示す。
【表1】