(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】シリンジポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/145 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
A61M5/145 500
(21)【出願番号】P 2018014638
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 学
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-014492(JP,A)
【文献】特開2013-153863(JP,A)
【文献】特開平09-122237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードスクリューと、
前記リードスクリューと噛み合う噛み合い部と、
前記リードスクリューの回転に伴い第1方向にスライド移動して注射器の押し子を押圧するスライダーと、
前記スライダーに設けられ、前記噛み合い部が前記リードスクリューに連結される状態と前記リードスクリューから切断される状態とを切り替える切替レバーと、
前記切替レバーの少なくとも一部を収容し、外面が
前記押し子と当接するカバーと、
前記リードスクリューの軸方向と平行
な前記第1方向に
沿って前記スライダーに支持され
、前記第1方向、又は、前記第1方向とは反対方向の第2方向に沿って摺動可能なピンと、
前記ピンが前記押し子と当接して
前記第2方向に移動したことを検知するセンサと、
前記第2方向側から前記軸方向に対して傾斜し、前記切替レバーが操作された際に前記ピンを前記
第2方向に移動させるための傾斜部と、を備える
シリンジポンプ。
【請求項2】
前記傾斜部は、前記ピンに設けられ、
前記切替レバーは、前記傾斜部に当接するレバー当接部を有する
請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記レバー当接部は、丸みを有する
請求項2に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記切替レバーに設けられ、
前記ピンは、前記傾斜部に当接するピン当接部を有する
請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
前記ピン当接部は、丸みを有する
請求項4に記載のシリンジポンプ。
【請求項6】
前記ピンは、前記ピンが回転することを規制する回転規制部を有する
請求項1~5のいずれか一つに記載のシリンジポンプ。
【請求項7】
前記ピンには、前記カバーの内部に液体が浸入することを抑制する防水部が設けられる
請求項1~6のいずれか一つに記載のシリンジポンプ。
【請求項8】
前記傾斜部は、前記切替レバーの操作部に近づくにしたがい、前記
第2方向に進むようにも傾斜する
請求項1~7のいずれか一つに記載のシリンジポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液を低速注入する際に用いられるシリンジポンプが知られている。かかるシリンジポンプは、たとえば、リードスクリューとスライダーとを備え、スライダーが噛み合い部でリードスクリューと噛み合っている。そして、リードスクリューの回転によりスライダーが所定の進行方向にスライド移動して、薬液が入った注射器の押し子を押圧している。また、かかるスライダーには、注射器の押し子がセットされていることを検知する機構が備えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシリンジポンプでは、押し子がセットされていることを検知する機構がギヤなどで構成されており構造が複雑であることから、コスト抑制の観点からは好ましくない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、押し子がセットされていることを検知する機構の構成をシンプルにすることができるシリンジポンプを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るシリンジポンプは、リードスクリューと、噛み合い部と、スライダーと、切替レバーと、カバーと、ピンと、センサと、傾斜部とを備える。前記噛み合い部は、前記リードスクリューと噛み合う。前記スライダーは、前記リードスクリューの回転に伴い第1方向にスライド移動して注射器の押し子を押圧する。前記切替レバーは、前記スライダーに設けられ、前記噛み合い部が前記リードスクリューに連結される状態と前記リードスクリューから切断される状態とを切り替える。前記カバーは、前記切替レバーの少なくとも一部を収容し、外面が注射器の押し子と当接する。前記ピンは、前記リードスクリューの軸方向と平行な前記第1方向に沿って前記スライダーに支持され、前記第1方向、又は、前記第1方向とは反対方向の第2方向に沿って摺動可能である。前記センサは、前記ピンが前記押し子と当接して前記第2方向に移動したことを検知する。前記傾斜部は、前記第2方向側から前記軸方向に対して傾斜し、前記切替レバーが操作された際に前記ピンを前記第2方向に移動させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、押し子がセットされていることを検知する機構の構成をシンプルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、実施形態に係るシリンジポンプの概要を示す斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態に係るシリンジポンプに注射器をセットした状態を示す側面図である。
【
図1C】
図1Cは、実施形態に係るスライダーの外観を示す斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、リードスクリューと噛み合い部とが噛み合って連結される状態を示した図である。
【
図2B】
図2Bは、リードスクリューと噛み合い部とが離間して切断される状態を示した図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るピンの構造を示す斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、実施形態に係るスライダーの内部構造を示す斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態に係るスライダーの内部における各部材の動きを説明するための図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態の変形例に係るシリンジポンプの概要を示す斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態の変形例に係るスライダーの内部における動きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係るシリンジポンプについて図面を参照して説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0010】
<シリンジポンプの概要>
まずは、実施形態にかかるシリンジポンプ1の概要について、
図1A~
図1Cを参照しながら説明する。
図1Aは、実施形態に係るシリンジポンプ1の概要を示す斜視図であり、
図1Bは、実施形態に係るシリンジポンプ1に注射器100をセットした状態を示す側面図であり、
図1Cは、実施形態に係るスライダー20の外観を示す斜視図である。
【0011】
シリンジポンプ1は、
図1Bに示すように、リードスクリュー10と、スライダー20と、モータ30と、ギヤ群40と、ケース50と、を備える。詳細は後述するが、シリンジポンプ1では、モータ30が回転駆動することにより、スライダー20が進行方向Aに向かってスライド移動する。
【0012】
モータ30は、たとえば、HB(ハイブリッド)ステッピングモータやPM(パーマネントマグネット)ステッピングモータなどである。ギヤ群40は、モータ30により発生された駆動力をリードスクリュー10に伝達する。
【0013】
リードスクリュー10は、ケース50における所定の箇所に回転可能に軸支される。すなわち、リードスクリュー10は、回転軸Lを有する。そして、モータ30から、ギヤ群40を経由して駆動力が伝達されることにより、回転軸Lを軸に所定の回転方向に回転する。リードスクリュー10には、らせん溝が形成されている。リードスクリュー10の回転軸Lは、スライダー20の進行方向Aに沿って延びている。
【0014】
ケース50は、モータ30やギヤ群40などを収容可能である。ケース50には、所定の凹部が形成された置き台51と、かかる置き台51に隣接するクランプ52とが設けられる。スライダー20と置き台51とは、対向する位置に設けられる。スライダー20は、動かない置き台51に対して近づく方向である進行方向Aに動く。
【0015】
そして、置き台51に注射器100がセットされ、
図1Aに示すクランプ52で注射器100の注射筒101が固定される。なお、クランプ52は、置き台51から離れる方向に移動可能であるとともに、図示しない付勢部で置き台51に近づく方向に付勢されている。
【0016】
これにより、実施形態では、クランプ52で注射器100の注射筒101を固定することができる。また、注射器100がセットされる際、注射器100の押し子102の端部102aに当接するように、スライダー20が配置される。
【0017】
たとえば、
図1Cに示すように、スライダー20のカバー23には、進行方向A側の側面に押し子102の端部102aを収容可能であるスリット23aが形成される。そして、かかるスリット23aに円板状である押し子102の端部102aをはめ込むことにより、押し子102がスライダー20にセットされる。
【0018】
ここで、スライダー20には、スリット23aで露出し、進行方向Aに向かって突出するピン24が備えられる。かかるピン24は、スライダー20内で進行方向Aと平行に移動可能に支持される。そして、押し子102の端部102aがスリット23aに収容された際に、ピン24は端部102aにより進行方向Aとは反対方向である方向Bに押される。
【0019】
そして、スライダー20内には、ピン24が方向Bに移動したことを検知するセンサ25(
図4A参照)が設けられる。すなわち、かかるセンサ25により、押し子102の端部102aがスリット23aにはめ込まれ、押し子102がスライダー20にセットされたことを検知することができる。ピン24およびセンサ25の詳細については後述する。
【0020】
さらに、スリット23aには、かかるスリット23aの幅を調整するスペーサ26がピン24の周囲に設けられる。そしてかかるスペーサ26を回転させることにより、押し子102の端部102aの厚みが異なる注射器100であっても、問題なくスリット23aにはめ込むことができる。
【0021】
シリンジポンプ1全体の説明に戻る。
図1Bに示すように、モータ30からの駆動力によりリードスクリュー10が所定の回転方向に回転し、リードスクリュー10に連結される噛み合い部21が置き台51に近づく方向である進行方向Aにスライド移動する。これにより、押し子102が注射器100の注射筒101側に押圧され、かかる注射筒101に入った薬液が注射筒101の先端部101aから所定の箇所に注入される。
【0022】
一方で、押し子102の端部102aに当接するようにスライダー20を移動させて配置する場合、スライダー20とリードスクリュー10とが連結されていると、スライダー20を手動で迅速に移動させることができない。
【0023】
そこで、実施形態では、スライダー20に設けられる切替レバー22を操作して、噛み合い部21をスライダー20内で移動させることにより、リードスクリュー10に連結される状態(以下、「連結状態」とも呼称する。)とリードスクリュー10から切断される状態(以下、「切断状態」とも呼称する。)とを切り替えることができる。
【0024】
<噛み合い部および切替レバーの構成>
つづいて、連結状態と切断状態とを切り替え可能に構成される噛み合い部21および切替レバー22の具体的な構成について、
図2Aおよび
図2Bを参照しながら説明する。なお、
図2Aおよび
図2Bにおいては、理解を容易にするため、噛み合い部21を覆うカバー23については図示していない。
【0025】
図2Aは、リードスクリュー10と噛み合い部21とが噛み合って連結される状態を示した図である。噛み合い部21は、本体部21aと、ハーフナット21bと、付勢部21cとを含む。
【0026】
矩形状の本体部21aには、リードスクリュー10の回転軸Lに沿って挿通される貫通孔21aaが形成される。かかる貫通孔21aaには、リードスクリュー10が挿通する。また、貫通孔21aaの内壁面のうち切替レバー22とは反対側の一面には、ハーフナット21bが固定される。そして、かかるハーフナット21bにおける切替レバー22側の面には、歯形状が形成される。
【0027】
また、噛み合い部21には、バネなどで構成される付勢部21cが設けられる。付勢部21cは、たとえば、一端側が本体部21aに支持され、他端側がカバー23内の所定の位置に支持される。そして、かかる付勢部21cにより、噛み合い部21は、リードスクリュー10の回転軸Lに沿った方向とは異なる方向であり、切替レバー22に向かう方向である方向C(図では上方向)に付勢されている。
【0028】
すなわち、付勢部21cによる方向Cへの付勢により、噛み合い部21は方向Cに向かって付勢される。これにより、ハーフナット21bがリードスクリュー10に当接して、噛み合い部21とリードスクリュー10とが噛み合っている状態(すなわち連結状態)が実現される。
【0029】
また、噛み合い部21の方向C側には、切替レバー22が配置されている。切替レバー22は、噛み合い部21から離れて設けられる操作部22aと、噛み合い部21の近くに設けられる押圧部22bとを有する。また、切替レバー22には、操作部22aと押圧部22bとの間に軸支部22cが設けられる。そして、切替レバー22は、軸支部22cを軸にして回転可能に支持される。
【0030】
図2Aに示す連結状態では、切替レバー22が作業者などにより操作されていないので、押圧部22bは噛み合い部21から方向Cに向けて押圧される。そして、切替レバー22は、軸支部22cを軸にして、操作部22aと押圧部22bとが回転方向R1に回転する。
【0031】
図2Bは、リードスクリュー10と噛み合い部21とが離間して切断される状態を示した図である。上述の連結状態から切断状態に切り替えるには、たとえば作業者が切替レバー22の操作部22aを操作して、かかる操作部22aを回転方向R1とは反対の回転方向R2に向けて回転させる。すると、軸支部22cを軸にして、切替レバー22の押圧部22bも回転方向R2に向かって回転し、回転方向R2側に隣接する噛み合い部21を押圧する。
【0032】
そして、付勢部21cによる方向Cへの付勢力より大きな力が押圧部22bから加わると、噛み合い部21は、方向Cとは反対方向である方向Dにむけて移動する。これにより、ハーフナット21bとリードスクリュー10とが離間して、噛み合い部21とリードスクリュー10とが噛み合っていない状態(すなわち切断状態)が実現される。
【0033】
このように、実施形態によれば、かかる切断状態において、作業者は、スライダー20を手動で迅速に移動させて、押し子102の端部102aに当接するようにスライダー20を配置することができる。
【0034】
なお、上述の切断状態において、スライダー20の配置が完了し、作業者が操作部22aへの操作をやめると、噛み合い部21が方向Cに付勢されることにより、ハーフナット21bがリードスクリュー10に当接する。これにより、噛み合い部21とリードスクリュー10とがふたたび噛み合っている状態(すなわち連結状態)となる。
【0035】
<スライダーの内部構成>
つづいて、実施形態に係るスライダー20の内部構造について、
図3~
図4Bを参照しながら説明する。
図3は、実施形態に係るピン24の構造を示す斜視図である。
【0036】
図3に示すように、ピン24は、円筒部24aを有する。そして、円筒部24aの進行方向A側には、丸み(たとえば、半球形状)を有する先端部24bが設けられる。かかる先端部24bは、
図1Cに示したように、スリット23aで進行方向Aに向かって突出し、押し子102の端部102aと当接可能に配置される。
【0037】
また、円筒部24aには、進行方向Aとは反対方向の方向B側から進行方向Aとは垂直方向に立上がる傾斜部24cが設けられる。そして、傾斜部24cは傾斜面24caを有する。かかる傾斜面24caは、進行方向A(すなわち、リードスクリュー10の回転軸L)に対して傾斜する。具体的には、傾斜面24caは、進行方向Aに進むにしたがい、位置が円筒部24aに近づくように構成される。
【0038】
また、円筒部24aには、方向B側における傾斜部24cとは異なる箇所から進行方向Aとは垂直方向に立上がり、さらに立ち上がった部位の先から進行方向Aに沿って円筒部24aの半分程度の長さで延びるセンサ感知部24dが設けられる。かかるセンサ感知部24dは、後述するセンサ25に隣接して配置される。センサ感知部24dの具体的な配置については後述する。
【0039】
また、円筒部24aには、方向B側における傾斜部24cおよびセンサ感知部24dとは異なる箇所から壁状に立上がり、進行方向Aに沿って延びる回転規制部24eが設けられる。かかる回転規制部24eは、スライダー20内に進行方向Aに沿って形成される所定の溝部に摺動可能に配置され、ピン24が回転することを規制する。
【0040】
図4Aは、実施形態に係るスライダー20の内部構造を示す斜視図であり、カバー23のうち進行方向A側のカバーを外した様子を示した図である。なお、
図4Aは、切替レバー22が操作されておらず、かつ押し子102の端部102aがピン24の先端部24bに当接していない状態について示している。
【0041】
図4Aに示すように、ピン24は、スライダー20内で進行方向Aに沿って配置される。そして、ピン24は、進行方向Aまたは方向Bに沿って摺動可能である。
【0042】
また、切替レバー22には、上述の回転方向R2に沿って延伸する延伸部22dが設けられる。また、かかる延伸部22dの回転方向R2側には、先端に丸み(たとえば、半球形状)を有するレバー当接部22daが設けられる。そして、かかるレバー当接部22daが、ピン24の傾斜部24cにおける傾斜面24caに向かい合うように配置される。
【0043】
センサ25は、ピン24に隣接して配置される。かかるセンサ25は、たとえば、略U字形状であり、U字の両端に発光部と光検知部とが設けられる。そして、センサ25は、発光部から発光された光が光検知部で検知されているか否かについての信号を出力する。なお、センサ25は略U字形状に限られず、たとえば、発光部と光検知部とが分割されていてもよい。
【0044】
そして、センサ25の発光部と光検知部との間に、ピン24のセンサ感知部24dが配置される。
図4Aに示すように、切替レバー22が操作されておらず、かつ押し子102の端部102aがピン24の先端部24bに当接していない状態では、センサ25の発光部と光検知部との間がピン24のセンサ感知部24dで遮られている。
【0045】
ここで、実施形態では、押し子102の端部102aがピン24の先端部24bに当接すると、ピン24は押し子102の端部102aに押されて方向Bに摺動する。これにより、センサ感知部24dは、センサ25の発光部と光検知部との間から外れ、発光部と光検知部との間が遮られていないことを示す信号がセンサ25から外部に発信される。
【0046】
したがって、実施形態によれば、センサ25から発信されるかかる遮られていないことを示す信号により、押し子102がスライダー20にセットされたことを検知することができる。
【0047】
また、ピン24は、付勢部24f(
図4B参照)により進行方向Aに付勢される。したがって、押し子102がスライダー20から外れると、ピン24は進行方向Aに向かって移動する。これにより、センサ感知部24dは、センサ25の発光部と光検知部との間を遮り、かかる遮られていることを示す信号がセンサ25から外部に発信される。
【0048】
したがって、実施形態によれば、センサ25から発信されるかかる遮られていることを示す信号により、押し子102がスライダー20から外れたことを検知することができる。
【0049】
一方で、実施形態では、
図1Cに示したように、ピン24の先端部24bがスリット23aで進行方向Aに向かって突出していることから、押し子102の端部102aをスライダー20のスリット23aにはめ込む際に、突出する先端部24bが邪魔になる場合がある。
【0050】
そこで、実施形態では、押し子102の端部102aをスライダー20のスリット23aにはめ込む際にも、ピン24の先端部24bがスリット23aで突出しないようにした。具体的な構成について、
図4Bを参照しながら説明する。
【0051】
図4Bは、実施形態に係るスライダー20の内部における各部材の動きを説明するための図である。上述したように、押し子102の端部102aをスライダー20のスリット23aにはめ込む際には、作業者が切替レバー22の操作部22aを操作して、かかる操作部22aを回転方向R2に向けて回転させる。
【0052】
すると、切替レバー22の延伸部22dも回転方向R2に向かって回転し、先端のレバー当接部22daが向かい合うピン24の傾斜部24cにおける傾斜面24caを押圧する。ここで、傾斜面24caは、進行方向Aに進むにしたがい、位置が円筒部24aに近づくように構成されることから、レバー当接部22daに押圧されることにより、ピン24は方向Bに向かって摺動する。
【0053】
すなわち、押し子102の端部102aをスライダー20のスリット23aにはめ込むため、作業者が切替レバー22の操作部22aを操作すると、ピン24が方向Bに向かって摺動する。これにより、操作部22aを操作した際に、ピン24の先端部24bがスリット23aで突出しないようにすることができる。したがって、押し子102の端部102aをスライダー20のスリット23aにはめ込む際に、突出する先端部24bが邪魔になることを抑制することができる。
【0054】
ここまで説明したように、実施形態によれば、押し子102の検出機能と、押し子102をスライダー20にはめ込む際の作業性を向上させる機能とを、ギヤなどを用いることなく
図3~
図4Bに示したシンプルな構成で実現することができる。
【0055】
また、実施形態では、ピン24に回転規制部24eが設けられることにより、切替レバー22で傾斜部24cが押圧される際に、ピン24が押圧される方向に回転することを抑制することができる。
【0056】
これにより、切替レバー22で傾斜部24cが押圧される際に、ピン24が回転してレバー当接部22daが傾斜面24caから外れることを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、切替レバー22で傾斜部24cが押圧される際に、ピン24をより確実に方向Bに向かって摺動させることができる。
【0057】
また、実施形態では、
図3および
図4Bに示すように、傾斜部24cの傾斜面24caが、切替レバー22の操作部22aに近づくにしたがい、方向Bに進むようにも構成されるとよい。これにより、切替レバー22の回転方向R2への円運動に伴って進むレバー当接部22daが傾斜面24caに当接する際に、方向Bに摺動するピン24の移動量を一定にすることができる。
【0058】
なお、実施形態では、進行方向Aとは垂直な面に対する傾斜面24caの角度を15(°)以下にするとよい。これにより、切替レバー22でピン24を円滑に押圧することができる。
【0059】
また、実施形態では、上述のように、レバー当接部22daが丸みを有するとよい。これにより、レバー当接部22daを傾斜面24caで円滑に滑らせながら、ピン24の傾斜部24cを押圧することができる。したがって、実施形態によれば、切替レバー22で傾斜部24cが押圧される際に、ピン24をよりスムーズに摺動させることができる。
【0060】
<変形例>
つづいて、実施形態の変形例に係るシリンジポンプ1Aについて、
図5Aおよび
図5Bを参照しながら説明する。
図5Aは、実施形態の変形例に係るシリンジポンプ1Aの概要を示す斜視図である。なお、かかる変形例についての図面では、実施形態と同じ機能を有する部位には同じ符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0061】
変形例のシリンジポンプ1Aは、実施形態と同様に、モータ30(
図1B参照)が回転駆動することにより、スライダー20が進行方向Aに向かってスライド移動する。ケース50には、所定の凹部が形成された置き台51と、かかる置き台51に隣接するクランプ52とが設けられる。
【0062】
そして、置き台51に注射器100がセットされ、クランプ52で注射器100の注射筒101が固定される。また、注射器100がセットされる際、注射器100の押し子102の端部102aに当接するように、スライダー20が配置される。
【0063】
さらに、変形例のシリンジポンプ1Aにはリードスクリュー10(
図1B参照)や噛み合い部21(
図1B参照)などが設けられる。そして、詳細については省略するが、スライダー20に設けられる切替レバー22を所定の回転方向R2に回転させることにより、リードスクリュー10および噛み合い部21を連結状態から切断状態に切り替えることができる。
【0064】
つづいて、変形例にかかるスライダー20内部における各部材の動きについて、
図5Bを参照しながら説明する。
図5Bは、実施形態の変形例に係るスライダー20の内部における動きを説明するための図である。なお、
図5Bは、切替レバー22が操作されておらず、かつ押し子102の端部102aがピン24の先端部24bに当接していない状態について示している。
【0065】
図5Bに示すように、変形例のスライダー20には、実施形態と同様に、切替レバー22と、ピン24と、センサ25とが設けられる。
【0066】
変形例の切替レバー22は、操作部22aと、軸支部22cとを有する。そして、切替レバー22は、軸支部22cを軸にして回転可能に支持される。また、変形例の切替レバー22には、軸支部22cからピン24に向かって延びる延伸部22eが設けられる。
【0067】
そして、かかる延伸部22eの端部には、傾斜部22fが設けられる。傾斜部22fは、傾斜面22faを有する。かかる傾斜面22faは、進行方向A(すなわち、リードスクリュー10の回転軸L)に対して傾斜する。具体的には、傾斜面22faは、進行方向Aに進むにしたがい、位置がピン24に近づくように構成される。
【0068】
ピン24は、円筒部24aを有する。そして、円筒部24aの進行方向A側には、丸み(たとえば、半球形状)を有する先端部24bが設けられる。かかる先端部24bは、押し子102の端部102aと当接可能に配置される。
【0069】
ピン24には、切替レバー22の傾斜部22fに隣接する側面から壁状に立上がる立上り部24gが設けられる。また、かかる立上り部24gの進行方向A側には、丸みを有するピン当接部24gaが設けられる。そして、かかるピン当接部24gaが、切替レバー22の傾斜部22fにおける傾斜面22faに向かい合うように配置される。
【0070】
そして、実施形態と同様に、押し子102の端部102aをスライダー20のスリット23aにはめ込む際には、作業者が切替レバー22の操作部22aを操作して、かかる操作部22aを回転方向R2に向けて回転させる。
【0071】
すると、切替レバー22の延伸部22eも回転方向R2に向かって回転し、先端の傾斜部22fにおける傾斜面22faが向かい合うピン24のピン当接部24gaを押圧する。ここで、傾斜面22faは、進行方向Aに進むにしたがい、位置がピン24に近づくように構成されることから、傾斜部22fに押圧されることにより、ピン24は方向Bに向かって摺動する。
【0072】
すなわち、押し子102の端部102aをスライダー20のスリット23aにはめ込むため、作業者が切替レバー22の操作部22aを操作すると、ピン24が方向Bに向かって摺動する。これにより、操作部22aを操作した際に、ピン24の先端部24bがスリット23aで突出しないようにすることができる。したがって、変形例によれば、押し子102の端部102aをスライダー20のスリット23aにはめ込む際に、突出する先端部24bが邪魔になることを抑制することができる。
【0073】
さらに、ピン24には、ピン当接部24gaとは異なる箇所から壁状に立上がるセンサ感知部24dが設けられる。また、略U字形状のセンサ25が、ピン24に隣接して配置される。そして、センサ25の両端に設けられる発光部と光検知部との間に、ピン24のセンサ感知部24dが配置される。
【0074】
図5Bに示すように、切替レバー22が操作されておらず、かつ押し子102の端部102aがピン24の先端部24bに当接していない状態では、センサ25の発光部と光検知部との間がピン24のセンサ感知部24dで遮られている。
【0075】
一方で、押し子102の端部102aがピン24の先端部24bに当接すると、ピン24は押し子102の端部102aに押されて方向Bに摺動する。これにより、センサ感知部24dは、センサ25の発光部と光検知部との間から外れ、発光部と光検知部との間が遮られていないことを示す信号がセンサ25から外部に発信される。
【0076】
したがって、変形例によれば、センサ25から発信されるかかる遮られていないことを示す信号により、押し子102がスライダー20にセットされたことを検知することができる。
【0077】
また、ピン24は、方向B側に設けられる付勢部24fにより進行方向Aに付勢される。したがって、押し子102がスライダー20から外れると、ピン24は進行方向Aに向かって移動する。これにより、センサ感知部24dは、センサ25の発光部と光検知部との間を遮り、かかる遮られていることを示す信号がセンサ25から外部に発信される。
【0078】
したがって、変形例によれば、センサ25から発信されるかかる遮られていることを示す信号により、押し子102がスライダー20から外れたことを検知することができる。
【0079】
ここまで説明したように、変形例によれば、押し子102の検出機能と、押し子102をスライダー20にはめ込む際の作業性を向上させる機能とを、ギヤなどを用いることなく
図5Bに示したシンプルな構成で実現することができる。
【0080】
また、変形例では、立上り部24gが、実施形態における回転規制部24eとして用いられるとよい。これにより、切替レバー22の傾斜部22fでピン当接部24gaが押圧される際に、ピン24が押圧される方向に回転することを抑制することができる。
【0081】
これにより、切替レバー22の傾斜部22fでピン当接部24gaが押圧される際に、ピン24が回転することで傾斜部22fがピン当接部24gaから外れることを抑制することができる。したがって、変形例によれば、切替レバー22の傾斜部22fでピン当接部24gaが押圧される際に、ピン24を確実に方向Bに向かって摺動させることができる。
【0082】
なお、上述のように立上り部24gを回転規制部として用いる場合に限られず、ピン24に実施形態と同様の回転規制部24eを別途設けてもよい。
【0083】
また、変形例では、円筒部24aにおける先端部24b側に防水部24hが設けられる。かかる防水部24hは、たとえば、Oリングであり、先端部24bから円筒部24aに沿って薬液などの液体などがスライダー20の内部に浸入することを防止することができる。
【0084】
これにより、変形例では、スライダー20の内部に薬液などの液体が侵入し、センサ25などに不具合が生じることを抑制することができる。なお、かかる防水部24hは、上述の実施形態にかかるピン24に設けられてもよい。
【0085】
また、変形例では、上述のように、ピン当接部24gaが丸みを有するとよい。これにより、ピン当接部24gaを傾斜面22faで円滑に滑らせながらピン24のピン当接部24gaを押圧することができる。したがって、変形例によれば、切替レバー22でピン24のピン当接部24gaを押圧する際に、ピン24をよりスムーズに摺動させることができる。
【0086】
なお、変形例では、進行方向Aとは垂直な面に対する傾斜面22faの角度を15(°)以下にするとよい。これにより、切替レバー22でピン24を円滑に押圧することができる。
【0087】
以上のように、実施形態に係るシリンジポンプ1(1A)は、リードスクリュー10と、噛み合い部21と、切替レバー22と、カバー23と、ピン24と、センサ25と、傾斜部24c(22f)とを備える。噛み合い部21は、リードスクリュー10と噛み合う。切替レバー22は、噛み合い部21がリードスクリュー10に連結される状態とリードスクリュー10から切断される状態とを切り替える。カバー23は、切替レバー22の少なくとも一部を収容し、外面が注射器100の押し子102と当接する。ピン24は、リードスクリュー10の軸方向と平行に往復可能に支持される。センサ25は、ピン24が押し子102と当接して所定の方向Bに移動したことを検知する。傾斜部24c(22f)は、軸方向に対して傾斜し、切替レバー22が操作された際にピン24を所定の方向Bに移動させる。これにより、押し子102がセットされていることを検知する機構の構成をシンプルにすることができる。
【0088】
また、実施形態に係るシリンジポンプ1において、傾斜部24cは、ピン24に設けられ、切替レバー22は、傾斜部24cに当接するレバー当接部22daを有する。これにより、押し子102がセットされていることを検知する機構の構成をシンプルにすることができる。
【0089】
また、実施形態に係るシリンジポンプ1において、レバー当接部22daは、丸みを有する。これにより、切替レバー22で傾斜部24cが押圧される際に、ピン24をよりスムーズに摺動させることができる。
【0090】
また、実施形態に係るシリンジポンプ1Aにおいて、傾斜部22fは、切替レバー22に設けられ、ピン24は、傾斜部22fに当接するピン当接部24gaを有する。これにより、押し子102がセットされていることを検知する機構の構成をシンプルにすることができる。
【0091】
また、実施形態に係るシリンジポンプ1において、ピン当接部24gaは、丸みを有する。これにより、切替レバー22でピン24のピン当接部24gaを押圧する際に、ピン24をよりスムーズに摺動させることができる。
【0092】
また、実施形態に係るシリンジポンプ1(1A)において、ピン24は、ピン24が回転することを規制する回転規制部24e(立上り部24g)を有する。これにより、切替レバー22でピン24が押圧される際に、ピン24が押圧される方向に回転することを抑制することができる。
【0093】
また、実施形態に係るシリンジポンプ1(1A)において、ピン24には、カバー23の内部に液体が浸入することを抑制する防水部24hが設けられる。これにより、スライダー20の内部に薬液などの液体が侵入し、センサ25などに不具合が生じることを抑制することができる。
【0094】
また、実施形態に係るシリンジポンプ1において、傾斜部24cは、切替レバー22の操作部22aに近づくにしたがい、所定の方向Bに進むようにも傾斜する。これにより、切替レバー22の回転方向R2への円運動に伴って進むレバー当接部22daが傾斜面24caに当接する際に、方向Bに摺動するピン24の移動量を一定にすることができる。
【0095】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 シリンジポンプ、10 リードスクリュー、20 スライダー、21 噛み合い部、22 切替レバー、22a 操作部、22da レバー当接部、22f 傾斜部、23 カバー、24 ピン、24a 円筒部、24b 先端部、24c 傾斜部、24d センサ感知部、24e 回転規制部、24f 付勢部、24g 立上り部、24ga ピン当接部、24h 防水部、25 センサ、30 モータ、40 ギヤ群、50 ケース、100 注射器、101 注射筒、102 押し子、102a 端部、A 進行方向、B 方向