(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】ロボット用エンドエフェクタの取付構造及びロボット側固定部材
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
B25J15/04 A
(21)【出願番号】P 2018017135
(22)【出願日】2018-02-02
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 尚吾
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-124485(JP,U)
【文献】実開平07-011289(JP,U)
【文献】特開平07-314368(JP,A)
【文献】特開昭61-236446(JP,A)
【文献】実開平05-088846(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0000050(US,A1)
【文献】特開平03-003788(JP,A)
【文献】特開昭49-057558(JP,A)
【文献】特開昭61-226236(JP,A)
【文献】特開平06-063889(JP,A)
【文献】特開平07-314369(JP,A)
【文献】特開平07-024755(JP,A)
【文献】特開平02-030483(JP,A)
【文献】実開平05-080691(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボディと該第1ボディ内に軸方向に移動可能に収容され、且つ中心軸周りに複数設けられるアダプタ駆動手段と該各アダプタ駆動手段に取り付けられるアダプタ部とを有し、産業用ロボットアームに取り付けられるロボット側固定部材と、
被アダプタ部を有
し、前記ロボット側固定部材に着脱可能なエンドエフェクタと、
を備え、
前記アダプタ部は、円環状の部材からなり、内周部から内向きに突出する複数の第1突起部を備え、
前記被アダプタ部は、円環状の部材からなり、外周部から外向きに突出する複数の第2突起部を備え、
前記ロボット側固定部材は、前記エンドエフェクタ側に動力を伝達する動力伝達手段を備え、
前記ロボット側固定部材は、中心部に軸方向に移動可能なピストンを備え、
前記エンドエフェクタは、プランジャーを備え、
前記動力伝達手段は、前記ピストンと前記プランジャーとを備え、
前記ピストンの先端の外周部は、外向きに突出する複数の第一突出部を備え、
前記プランジャーの後端面には、孔部が設けられ、該孔部の内周部は、内向きに突出する複数の第二突出部を備え、
前記ピストンの先端とプランジャの後端面は、前記プランジャと前記ピストンとが連動可能となるように係合可能な形状であり、
前記ロボット側固定部材の前記アダプタ部が前記エンドエフェクタの前記被アダプタ部と向き合い、
且つ前記アダプタ部の第1突起部が前記被アダプタ部の第2突起部に対して、中心軸に平行な方向において重ならず、
且つ前記ピストンの第一突出部が前記プランジャーの第二突出部に対して、中心軸に平行な方向において重なっていない状態で、
前記被アダプタ部の第2突起部が前記アダプタ部の第1突起部を通過するまで前記ロボット側固定部材を前記エンドエフェクタ側に向かって軸方向前側に移動させ、
且つ前記ピストンの第一突出部が前記プランジャーの孔部の第二突出部を通過するまで移動された状態において、
第1突起部が第2突起部に対して、中心軸に平行な方向において重なり、
且つ第一突出部が第二突出部に対して、中心軸に平行な方向において重なり、
且つ前記ピストンの先端とプランジャの後端面は、前記プランジャと前記ピストンとが連動可能となるように係合した状態となるように、
前記エンドエフェクタに対して前記ロボット側固定部材を中心軸周りに所定角度回転させ、
前記アダプタ駆動手段によって、アダプタ部を軸方向後側に移動させることで、第2突起部が第1突起部と第1ボディとで挟まれた状態となり、
これにより前記エンドエフェクタと前記ロボット側固定部材とが強固に結合され、
且つ前記プランジャーが前記ピストンと連動可能となることで、前記ロボット側固定部材から前記エンドエフェクタに動力を伝達可能となることを特徴とするロボット用エンドエフェクタの取付構造。
【請求項2】
第1ボディは、当該第1ボディの前端面にロケート板が固定され、
前記ロケート板は、前記エンドエフェクタと前記ロボット側固定部材との結合時における摩耗を抑制する、鋼材からなり、
第2突起部が第1突起部と前記ロケータとで強固に挟まれ、エンドエフェクタとロボット側固定部材が強固に結合状態を保つことを特徴とする請求項1に記載のロボット用エンドエフェクタの取付構造。
【請求項3】
第1ボディと該第1ボディ内に軸方向に移動可能に収容される複数のアダプタ駆動手段と該各アダプタ駆動手段に取り付けられるアダプタ部とを有し、産業用ロボットアームに取り付けられ、
前記アダプタ部は、エンドエフェクタの被アダプタ部と係合可能に構成され、
前記アダプタ部は、円環状の部材からなり、内周部から内向きに突出する複数の第1突起部を備え、
前記被アダプタ部は、円環状の部材からなり、外周部から外向きに突出する複数の第2突起部を備え、
前記エンドエフェクタ側に動力を伝達する動力伝達手段を備え、
第1ボディは、中心部に軸方向に移動可能なピストンを備え、
前記エンドエフェクタは、プランジャーを備え、
前記動力伝達手段は、前記ピストンと前記プランジャーとを備え、
前記ピストンの先端の外周部は、外向きに突出する複数の第一突出部を備え、
前記プランジャーの後端面には、孔部が設けられ、該孔部の内周部は、内向きに突出する複数の第二突出部を備え、
前記ピストンの先端とプランジャの後端面は、前記プランジャと前記ピストンとが連動可能となるように係合可能な形状であり、
前記アダプタ部が前記被アダプタ部と向き合い、
且つ前記アダプタ部の第1突起部が前記被アダプタ部の第2突起部に対して、中心軸に平行な方向において重ならず、
且つ前記ピストンの第一突出部が前記プランジャーの第二突出部に対して、中心軸に平行な方向において重なっていない状態で、
前記被アダプタ部の第2突起部が前記アダプタ部の第1突起部を通過するまで前記エンドエフェクタ側に向かって軸方向前側に移動させ、
且つ前記ピストンの第一突出部が前記プランジャーの孔部の第二突出部を通過するまで移動された状態において、
第1突起部が第2突起部に対して、中心軸に平行な方向において重なり、
且つ第一突出部が第二突出部に対して、中心軸に平行な方向において重なり、
且つ前記ピストンの先端とプランジャの後端面は、前記プランジャと前記ピストンとが連動可能となるように係合した状態となるように、
前記エンドエフェクタに対して中心軸周りに所定角度回転させ、
前記アダプタ駆動手段によって、アダプタ部を軸方向後側に移動させることで、第2突起部が第1突起部と第1ボディとで挟まれた状態となり、
これにより前記エンドエフェクタと強固に結合され、
且つ前記プランジャーが前記ピストンと連動可能となることで、前記エンドエフェクタ側にピストンからの動力を伝達可能となることを特徴とするロボット側固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットのアーム等に取り付けられるロボット用エンドエフェクタの取付構造と、ロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いることができるロボット側固定部材とに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットには、物品を掴んで搬送等するために、多関節のアームの先端には、ワーク等の操作対象物に対して直接作用する部分である「エンドエフェクタ」という装置が取り付けられる。
ロボット用のエンドエフェクタとしては、操作対象物の形態又は性質や、操作対象物に行う操作の態様等に応じた各種のものがある。例えば、操作対象物を把持可能なグリッパー型のエンドエフェクタや操作対象物を吸着可能な吸引型のエンドエフェクタ等がある。
ロボット用のエンドエフェクタは、例えば、特許文献1の
図1のようなツールチェンジャーを用いて着脱可能な状態で取り付けられ、交換できるようになっているものが多い。
【0003】
また、近年、工場の生産ラインが多品種少量型となり、1台のロボットで複数の多様なワークを取り扱う必要性が生じている。そのために、例えば、特許文献2の
図1のように異なった形状のエンドエフェクタ(特許文献2ではハンドと表現している)をエンドエフェクタ置き場に複数用意しておき、産業用ロボットのアームの先端とエンドエフェクタとの間に、前述のツールチェンジャー等を用いることで、エンドエフェクタ全体を自動的に容易に着脱交換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-213847号公報
【文献】特開2017-177277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の
図1に示すエンドエフェクタ置き場は、ツールチェンジャーとエンドエフェクタ分のスペースが必要である。
また、多品種になればなるほど、ストックするエンドエフェクタが多数必要となる。その場合、それに応じた多大なストックスペースを確保すれば良いが、工場によっては、限られたスペースしか確保できない問題もある。
また、多品種になればなるほど、ストックするエンドエフェクタに応じて重量が重くなり、その分、エンドエフェクタ置き場の骨組みの強度も高める必要もある。
また、ストックするエンドエフェクタが多数になれば、その分、ツールチェンジャーの費用が発生しコストも嵩んでしまう。
さらに、ツールチェンジャーなどを介してエンドエフェクタを取り付ける場合、ツールチェンジャーを介さない場合と比べるとモーメントが大きくなり、それによるロボットの負荷も大きくなる。
【0006】
そこで本発明の目的は、エンドエフェクタ置き場のスペースを大きくすること無く、多数のエンドエフェクタをストックするとともに、様々な種類のエンドエフェクタを容易に自動交換することができるロボット用エンドエフェクタの取付構造及びロボット側固定部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、今までのエンドエフェクタをロボット側固定部材とエンドエフェクタとに分割し、エンドエフェクタがロボット側固定部材に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
具体的には、上記課題は、
第1突起部が設けられたアダプタ部を有するロボット側固定部材と、第2突起部が設けられた被アダプタ部を有するエンドエフェクタとを備え、
前記ロボット側固定部材は、前記エンドエフェクタ側に動力を伝達する動力伝達手段を備え、
前記アダプタ部は、前記第1突起部と前記第2突起部とを係合させて前記エンドエフェクタを前記ロボット側固定部材側に引き付けるアダプタ駆動手段を備え、
前記第1突起部と前記第2突起部とが係合していない状態でどちらか一方を他方に接近させ、前記第1突起部と前記第2突起部とが係合可能な所定角度まで回転させ、アダプタ駆動手段によってアダプタ部を駆動させ、被アダプタ部を引き付けることで、前記第1突起部と前記第2突起部とが係合するとともに、エンドエフェクタとロボット側固定部材が強固に結合状態を保つことを特徴とするロボット用エンドエフェクタの取付構造を提供することによって解決される。
【0009】
本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造においては、前記ロボット側固定部材は、中心部に軸方向に移動可能なピストンを備え、前記エンドエフェクタは、前記ピストンに嵌合可能なプランジャーと該プランジャーを前記ロボット側固定部材側に付勢する付勢手段とを備え、前記動力伝達手段は、前記ピストンと前記プランジャーとを備え、前記ピストンと前記プランジャーとが嵌合することで、ロボット側固定部材からの動力をエンドエフェクタ側に伝達することが好ましい。
【0010】
また、本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造においては、前記ロボット側固定部材は、位相決めピンを備え、前記エンドエフェクタは、前記位相決めピンに対応する位相決め孔を備え、前記被アダプタ部を前記アダプタ部が引き付けることで、位相決めピンを位相決め孔に挿入した状態となり、エンドエフェクタとロボット側固定部材とが互いに回転不能に強固に結合状態を保つことも好ましい。
【0011】
また、本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造においては、前記ロボット側固定部材は、ロケート板を備え、前記エンドエフェクタと前記ロボット側固定部材が結合時に前記第2突起部が前記第1突起部と前記ロケート板とで強固に挟むことも好ましい。
【0012】
また、上記課題は、エンドエフェクタに設けられた被アダプタ部に対して取付可能なアダプタ部を有し、前記被アダプタ部に設けられた第2突起部と前記アダプタ部に設けられた第1突起部とが係合した状態で、前記第2突起部を前記第1突起部が引き付けるアダプタ駆動手段を備え、前記エンドエフェクタ側に動力を伝達する動力伝達手段を備え、前記第1突起部と前記第2突起部とが係合していない状態でどちらか一方を他方に接近させ、前記第1突起部と前記第2突起部とか係合可能な所定角度まで回転させ、アダプタ駆動手段によってアダプタ部を駆動させ、被アダプタ部を引き付けることで、前記第1突起部と前記第2突起部とが係合するとともに、エンドエフェクタとロボット側固定部材が強固に結合状態を保つことを特徴とするロボット側固定部材を提供することによっても解決される。
このロボット側固定部材は、上述した本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造におけるロボット側固定部材として好適に用いることができるものとなっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エンドエフェクタ置き場のスペースを大きくすること無く、多数のエンドエフェクタをストックするとともに、様々な種類のエンドエフェクタを一度で容易に自動交換することができるロボット用末端装置及びロボット側固定部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いて、ロボット側固定部材にエンドエフェクタを取り付けた状態を示した概略斜視図である。
【
図2】
図1における矢印X-X線での概略断面図である。
【
図3】本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるロボット側固定部材を示した概略斜視図である。
【
図4】
図3における矢印Y-Y線で切断した概略図である。
【
図5】本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるロボット側固定部材を、アダプタ部が設けられた側(
図3の紙面に向かって上側)から見た状態を示した図である。
【
図6】本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるエンドエフェクタを示した概略斜視図である。
【
図7】
図6における矢印Z-Z線で切断した概略図である。
【
図8】本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるエンドエフェクタを、被アダプタ部が設けられた側(
図6の紙面に向かって下側)から見た状態を示した図である。
【
図9】本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いて、ロボット側固定部材にエンドエフェクタを取り付けた後の動作を示した図であり、(a)は、ピストンが駆動していない状態、(b)はピストンが駆動している状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0016】
本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造(以下においては、「本発明の取付構造」に省略する)の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。
なお、説明で方向を表す際、特に言及しない限り、ロボット側固定部材(ロボット等に取り付ける)側を「後」とし、エンドエフェクタ側を「前」とする。また、中心軸L1、L2が延びる方向を「軸方向」とし、中心軸L1、L2に対して半径ないし直径の方向を「径方向」とする。また、「径方向内側」は、径方向のうち、ロボット側固定部材またはエンドエフェクタの中心側、つまり中心軸L1、L2が有る側を示し、「径方向外側」は、ロボット側固定部材またはエンドエフェクタの外周側を示す。
【0017】
図1は、本発明の取付構造に用いて、ロボット側固定部材にエンドエフェクタを取り付けた状態を示した概略斜視図であり、
図2は、
図1における矢印X-X線での概略断面図である。
【0018】
本実施形態の取付構造においては、図示しないロボットアームの先端部に、
図1または
図2に示すように、ロボット側固定部材10の後側の端面が固定されており、エンドエフェクタ20は、ロボット側固定部材10との互いの中心軸を一致させた状態でこのロボット側固定部材10を介して図示しないロボットアームに取り付けられるようになっている。ロボット側固定部材10を固定する対象(ロボットのパーツ)は、ロボットの構成部品であれば特に限定されず、ロボットアーム以外の構成部品とすることも可能である。
【0019】
〈ロボット側固定部材の構造〉
図3は、本発明の取付構造に用いるロボット側固定部材を示した概略斜視図であり、
図4は、
図3における矢印Y-Y線で切断した概略図であり、
図5は、本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるロボット側固定部材を、アダプタ部が設けられた側(
図3の紙面に向かって上側)から見た状態を示した図である。
【0020】
本発明の取付構造において、ロボット側固定部材10は、
図3または
図4に示すように厚みの大きな円盤状の外観を有し、第1ボディ11、エンドプレート12、ピストン13、アダプタ部14などで構成されている。
また、ロボット側固定部材10の内部は、第1ボディ11とエンドプレート12とピストン13とでシリンダ状に形成されている。
【0021】
第1ボディ11は、内部に空圧空間Sを有する円筒状部材となっており、後側の開放部は、第1ボディ11と同径の略円板状の部材からなるエンドプレート12により閉塞されている。一方、前側の開放部はピストン13により閉塞されており、第1ボディ11の前側は、ピストン13を覆うようにドーナツ形状をしたロケート板18がボルトで固定されている。なお、このロケート板18は、鋼材(例えば、S45Cなど)からなっており、ロボット側固定部材にエンドエフェクタを取り付ける際に発生する摩耗を抑制することができる。
【0022】
空圧空間Sには、ピストン13が、中心軸L1の軸方向にスライド可能な状態で収容されている。ピストン13における、空圧空間Sから外部に露出する部分には、ピストンヘッド13aが固定されている。
また、空圧空間Sは、ピストン13によって、ピストン13の後側を空圧空間S1、反対側の前側を空圧空間S2とに区分けされている。
【0023】
したがって、空圧空間S1の空圧を高めると、ピストン13が前側にスライドし、ピストン13の先端が大きく突出した状態となる一方、空圧空間S2の空圧を高くすると、ピストン13が後側にスライドし、ピストンの先端の突出量が小さくなるようになっている。空圧空間S1、S2の空圧は、図示省略の空圧制御手段により制御される。
【0024】
ピストン13の先端には、互いの軸が一致するようにピストンヘッド13aがボルトで取り付けられている。
【0025】
ピストンヘッド13aは、円柱形状をしており、先端の外周部には外向きに突出する第一突出部13bが複数個(同図の例では3個)設けられている。このため、ピストンヘッド13aの先端は、花弁状の外周形状を有するようになっている。
【0026】
第1ボディ11は、位相決めピン16とアダプタ駆動手段15などを設けて構成されている。
【0027】
位相決めピン16は、エンドエフェクタ20を取り付ける際の位相決め用であり、第1ボディ11の前端面に複数個(同図の例では2個)の位相決めピン16が前端面から突出するように設けられている。また、好適には、その先端は略円錐状に形成されていることが好ましい。
【0028】
アダプタ駆動手段15は、第1ボディ11の厚み幅内に収納されたサブピストン17を空圧で中心軸L1の軸方向にスライド駆動するものである。
【0029】
具体的には、円筒状部材の第1ボディ11の厚み部分には円形状の貫通穴Hが複数個(同図の例では6個)第1ボディ11の中心軸周りに設けられている。各貫通穴Hは、径が後側にいくにつれて径大となるように段差状(同図の例では2段)に連続して設けられている。
【0030】
また、各貫通穴Hの後側の開放部はエンドプレート12により閉塞されており、一方前側の開放部はサブピストン17により閉塞されている。
それによって、第1ボディ11の厚み部分内に設けられた貫通穴Hは、エンドプレート12とサブピストン17とで密閉された密閉空間となっている。
【0031】
この密閉空間は、サブピストン17によって、サブピストン17の後側を空圧空間S3、反対側の前側を空圧空間S4とに区分けされている。
したがって、空圧空間S3の空圧を高めると、サブピストン17が前側にスライドし、サブピストン17の先端が大きく突出した状態となる一方、空圧空間S4の空圧を高くすると、サブピストン17が後側にスライドし、サブピストン17の突出量が小さくなるようになっている。空圧空間S3、S4の空圧は、図示省略の空圧制御手段により制御される。
【0032】
アダプタ部14は、
図3に示すように、円環状の部材となっており、第1ボディ11と互いの軸が一致するように、各サブピストン17にそれぞれボルトで固定されている。また、アダプタ部14は、その内周部には、複数個(同図の例では3個)の第一突起部14aが内向きに設けられている。このため、アダプタ部14は、花弁状の内周形状を有するようになっている。
【0033】
〈エンドエフェクタ〉
図6は、本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるエンドエフェクタを示した概略斜視図であり、
図7は、
図6における矢印Z-Z線で切断した概略図であり、
図8は、本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いるエンドエフェクタを、被アダプタ部が設けられた側(
図6の紙面に向かって下側)から見た状態を示した図である。
【0034】
本発明の取付構造において、エンドエフェクタ20は、
図6または
図7に示すように厚みのある円盤状の外観を有しており、第2ボディ21、被アダプタ部22、プランジャー23、操作部ベース24、操作部25などで構成されている。
【0035】
第2ボディ21は、円盤状部材からなり、位相決めピン16に対応する位置に円形状の貫通された複数個(同図の例では2個)の位相決め孔26が設けられている。また、第2ボディ21の前面には、等間隔で径方向に放射状に3方に延びるY状の規制溝21aが形成されている。
【0036】
被アダプタ部22は、
図8に示すように、円環状部材からなっており、第2ボディ21と互いの軸が一致するように第2ボディ21の後側端面にボルトで固定されている。
また、被アダプタ部22の後端部近傍の外周部には、複数個(同図の例では3個)の第二突起部22aが外向きに突出するように設けられている。このため、被アダプタ部22は、花弁状の外周形状を有するようになっている。
ここで、第二突起部22aの個数は、通常、第一突起部14aの個数と同一とされる。
【0037】
第2ボディ21の前面(
図6の紙面に向かって上側の面)には、複数個(同図の例では3個)の操作部ベース24が第2ボディ21に支持されている。
【0038】
それぞれの操作部ベース24には、前側が操作部25とボルトで固定されており、径方向内側がプランジャー23と楔形状で係合されている。そして、各操作部ベース24は、プランジャー23によって、径方向に開閉することが可能となっている。
すなわち、操作部ベース24は、プランジャー23が中心軸L2の軸方向に移動すると径方向に開閉を行い、それに伴って、操作部25も開閉するようになっている。
【0039】
プランジャー23は、頭部23aと胴部23bとで構成されており、第2ボディ21の中央部に嵌め込まれている。
頭部23aは、中央から放射状に操作部ベース24に向かって張り出す複数個(同図の例では3個)の張出部23cを有している。各張出部23cの張出端側は、前側から後側に行くにつれて次第に中心軸から離れるように傾斜状に形成され、操作部ベース24と係合可能に設けられている。
【0040】
また、頭部23aの中心軸周りにはバネ孔23dが等角度間隔で3つ形成されており、この各バネ孔にはコイルバネBがそれぞれ挿入されている。
【0041】
胴部23bの後端面には後述のピストン13と嵌合する嵌合孔23eが設けられており、端面側の内周部には、第一突出部13bと嵌合可能な複数個(同図の例では3個)の第二突出部23fが内向きに設けられている。このため、嵌合孔23eは、花弁状の内周形状を有するようになっている。
【0042】
すなわち、ピストン13の第一突出部13bとプランジャー23の第二突出部23fとが、どちらか一方を所定角度回転(本実施形態では60°)させ、ピストン13とサブピストン17とを空圧制御することによって、ロボット側固定部材10側からエンドエフェクタ20側に動力が伝達され、操作部25の開閉を制御することが可能となっている。
【0043】
カバー27は、六角形の板状からなり、第2ボディ21の中央部分を覆うように、第2ボディ21に装着されている。
具体的には、コイルバネBの一端がカバー27に当接されており、他端がバネ孔23dの底部に当接されており、コイルバネBはプランジャー23を常時後側(ロボット側固定部材10側)に付勢している。
【0044】
続いて、本実施形態の取付構造における、ロボット側固定部材10に対するエンドエフェクタ20の取付方法について説明する
【0045】
本実施形態の取付構造において、産業用ロボットのアームの先端にはロボット側固定部材10が取り付けられており、エンドエフェクタ置き場に様々な種類のエンドエフェクタ20が置いてある状態で、ロボットアームが稼動してエンドエフェクタ20を交換または取付にいくようになっている。その手順の一例を以下に示す。
【0046】
[初期状態]
ロボット側固定部材10のピストン13とサブピストン17は空圧制御によって、前側(エンドエフェクタ20側)に駆動されている。
エンドエフェクタ20側のプランジャー23は、コイルバネBによって後側(ロボット側固定部材10側)に付勢されている。
【0047】
[手順1]
産業用ロボットアームの先端に取り付けられたロボット側固定部材10をエンドエフェクタ20との取付時の位相から60度回転させる。このとき、ロボット側固定部材10の中心軸L1とエンドエフェクタ20の中心軸L2は一致している。
[手順2]
手順1の状態で、ロボット側固定部材10を軸方向に移動させ、エンドエフェクタ20に近づけていくと、ロボット側固定部材10のピストンヘッド13aがプランジャー23の嵌合孔23eに入っていき、そして、嵌合孔23eの末端面に当接する。
[手順3]
手順2の状態からさらに、ロボット側固定部材10をエンドエフェクタ20側に近づけていき、ロボット側固定部材10のアダプタ部14の内側をエンドエフェクタ20の被アダプタ部22が通り抜けるまで近づけていく。すなわち、ピストンヘッド13とプランジャー23の嵌合孔23eの末端面は、当接したままプランジャー23が前側に移動していく。このとき、コイルバネBはプランジャー23の移動に伴って縮んでいっている。
[手順4]
次に、ロボット側固定部材10の中心軸L1とエンドエフェクタ20の中心軸L2とを一致させた状態のまま、手順1の回転方向と逆方向にロボット側固定部材10を60度回転させる。このとき、ロボット側固定部材10の位相決めピン16とエンドエフェクタ20の位相決め孔26は対向した状態となっている。
また、ピストンヘッド13の第一突出部13bとプランジャー23の第二突出部23fとが嵌合しており、さらに、アダプタ部14の第一突起部14aと被アダプタ部22の第二突起部22aとが係合している。
[手順5]
次に、サブピストン17を空圧制御によって、後側に下げていく。
このとき、上述の第一突出部13bと第二突出部23fとが嵌合しており、第一突起部14aと第二突起部22aとが係合しているため、エンドエフェクタ20がロボット側固定部材10側に引き付けられる。
そして、被アダプタ部22の後端面が、第1ボディ11に取り付けられているロケート板18の前端面に当接すると、被アダプタ部22の第二突起部22aはアダプタ部14の第一突起部14aとロケート板18とで挟まれる状態となる。
また、同時に、エンドエフェクタ20の位相決め孔26にロボット側固定部材10の位相決めピン16が挿入されることで位置決めがなされ、取付が完了となる。
【0048】
〈取付後の動作〉
次に、エンドエフェクタがロボット側固定部材に取り付けられた後の動作について
図9を用いて説明する。
図9は、本発明のロボット用エンドエフェクタの取付構造に用いて、ロボット側固定部材にエンドエフェクタを取り付けた後の動作を示した図であり、(a)はピストンが駆動していない状態、(b)はピストンが駆動している状態を示している。
【0049】
エンドエフェクタ20がロボット側固定部材10に取り付けられた状態(
図9(a))から動力をエンドエフェクタ20に伝達する場合、空圧空間S1にエアを供給することでピストン13は中心軸L1の軸方向前側へスライドする。
このとき、ピストン13とプランジャー23は嵌合しているため、プランジャー23も中心軸L2の軸方向前側へスライドする。プランジャー23のスライドに伴って、プランジャー23と操作部ベース24は楔形状に係合されており、且つ、操作部ベース24は第2ボディ21の径方向の規制溝21aに支持されているため、操作部ベース24は、プランジャー23の伝達力を径方向の力に変換し径方向外側へスライドする(
図9(b))。
逆に、操作部ベース24を径方向内側へスライドする場合は、先ほどの手順と反対に空圧空間S2にエアを供給することで実現可能となる。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、従来型のエンドエフェクタを、ロボット側固定部材と本発明のエンドエフェクタに分割し、分割したとしても、取付した際は、ロボット側固定部材からの動力がエンドエフェクタ側に確実に伝達できる構造としている。また、取付も自動で容易に、且つ、素早くできるような構造としている。
【0051】
このように、従来のエンドエフェクタを分割したことにより、エンドエフェクタ置き場は、従来と同じスペースの場合、より多くの種類のエンドエフェクタを保管することができる。
【0052】
また、ロボット側固定部材をツールチェンジャー(エンドエフェクタを容易に交換するための機能を有する)相当とすることで、ツールチェンジャーは不要となり、その分コストを削減することができる。
また、ツールチェンジャーの不要により、モーメントが小さくなり、それによるロボットの負荷も小さくできる。
さらに、可搬重量が小さい無人搬送台車などでも多くのエンドエフェクタを搭載することができる。
【0053】
なお、本発明にかかる取付構造及びロボット側固定部材は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0054】
例えば、本発明のエンドエフェクタは、上記のように、爪状を為す複数個の操作部25が開閉を行うグリッパ型のものとなっているが、これに限らず、吸着型のエンドエフェクタ等、他の種類のエンドエフェクタを用いる場合においても、好適に採用することができる。
また、ピストンヘッドは、ピストンと一体形成されていても良い。
さらに、プランジャーは軸方向の力を径方向の力に変換する構造としているが、これに限らず、単に軸方向の力に変換しても良いし、ピストンからの動力を受けるエンドプレート側は種々の機構にしても構わない。
【符号の説明】
【0055】
10 ロボット側固定部材
13 ピストン(動力伝達手段の一例)
13b 第一突出部
14 アダプタ部
14a 第一突起部
15 アダプタ駆動手段
18 ロケート板
20 エンドエフェクタ
22 被アダプタ部
22a 第二突起部
23 プランジャー(動力伝達手段の一例)
23f 第二突出部