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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】車両空調用送風装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
B60H1/00 102F
B60H1/00 102P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018019883
(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公開番号】P2019137117
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伯方 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 武史
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸内 直人
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-076834(JP,A)
【文献】特開2005-088672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空気を導入する内気導入口と、車室外の空気を導入する外気導入口とが形成され、上記内気導入口及び上記外気導入口の両方に連通する第1空気通路及び第2空気通路が内部に形成されるとともに、上記内気導入口及び上記外気導入口を開閉する内外気切替ダンパが収容されたケーシングと、
上記第1空気通路に配設された第1送風用ファンと、
上記第2空気通路に配設された第2送風用ファンとを備え、
上記第1送風用ファンによって上記第1空気通路内の空気を空調用空気として送風し、上記第2送風用ファンによって上記第2空気通路内の空気を空調用空気として送風するように構成された車両空調用送風装置において、
上記ケーシングの上側に上記内気導入口及び上記外気導入口が形成され、
上記ケーシングの上記内気導入口及び上記外気導入口よりも下側に、上記第1送風用ファン及び上記第2送風用ファンが収容されるスクロールケーシングが設けられ、
上記スクロールケーシングは、上記第1送風用ファンが収容される上側スクロールケーシングと、上記第2送風用ファンが収容される下側スクロールケーシングとに分割され、上記上側スクロールケーシングの下部と上記下側スクロールケーシングの上部とが嵌合することによって上記上側スクロールケーシングと上記下側スクロールケーシングとが一体化され、
上記スクロールケーシングの内部には、該スクロールケーシングの内部を上下方向に仕切る仕切板が配設され、該仕切板よりも上方が上記第1空気通路とされ、該仕切板よりも下方が上記第2空気通路とされ、
上記仕切板の周縁部には、上方へ突出するとともに、上記上側スクロールケーシングの下部における上記下側スクロールケーシングとの嵌合部分よりも内側に嵌合する内側嵌合部が設けられていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両空調用送風装置において、
上記内側嵌合部は、上記仕切板の周縁部から上方へ突出する板状をなし、
上記内側嵌合部の上端面には、上記スクロールケーシングの内外方向一方向へ向かって下降傾斜する仕切板側傾斜面が設けられ、
上記上側スクロールケーシングの下部には、上記仕切板側傾斜面に沿うように延び、該仕切板側傾斜面に当接するスクロール側傾斜面が設けられていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両空調用送風装置において、
上記仕切板の下面には、上記下側スクロールケーシングの上部に当接する突起部が形成されていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両空調用送風装置において、
複数の上記突起部が上記下側スクロールケーシングの周方向に互いに間隔をあけて形成されていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の車両空調用送風装置において、
上記上側スクロールケーシングの下部の内周面と、上記内側嵌合部との間には、隙間が形成されていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の車両空調用送風装置において、
上記上側スクロールケーシングの下部には、上記内側嵌合部が嵌合する凹部が形成されていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の車両空調用送風装置において、
上記下側スクロールケーシングの上部には、上方へ突出する下側嵌合突出部が形成され、
上記上側スクロールケーシングの下部には、上記下側嵌合突出部が挿入された状態で嵌合する上側嵌合溝部が形成されていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の車両空調用送風装置において、
上記下側スクロールケーシングの上部には、上記仕切板の周縁部が嵌まる段部が形成されていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項9】
請求項2に記載の車両空調用送風装置において、
上記仕切板側傾斜面は、上記スクロールケーシングの内方へ向かって下降傾斜していることを特徴とする車両空調用送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に搭載されて空調用空気を送風する車両空調用送風装置に関し、特に、車室内の空気と車室外の空気とを同時に送風可能な構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に搭載される空調装置は、車室内の空気(内気)と車室外の空気(外気)の一方を選択して空調用空気として送風し、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器によって温度調節した後に、車室の各部に供給するように構成されている。
【0003】
近年では、空調用空気を送風する車両空調用送風装置として、上記内気のみを送風する内気循環モードと、上記外気のみを送風する外気導入モードの他、内気と外気の両方を送風する内外気2層流モードにも切り替えられる装置が実用化されている。すなわち、特許文献1~4に開示されているように、車両空調用送風装置のケーシングには、内気導入口と外気導入口が形成されるとともに、上層空気通路と下層空気通路が形成されている。上層空気通路と下層空気通路の内部には、それぞれ送風用ファンが設けられており、これら2つの送風用ファンは共通のモーターによって駆動される。また、ケーシングには、内気導入口及び外気導入口を開閉する内外気切替ダンパが設けられ、この内外気切替ダンパによって内気導入口のみを開く内気循環モード、外気導入口のみを開く外気導入モード、内気導入口及び外気導入口を開く内外気2層流モードの切替が可能になっている。そして、上記2つの送風用ファンを回転させて内気循環モードにすると上層空気通路と下層空気通路に内気導入口から導入された内気が流れ、また、外気導入モードにすると上層空気通路と下層空気通路に外気導入口から導入された外気が流れ、さらに、内外気2層流モードにすると上層空気通路に外気導入口から導入された外気が流れる一方、下層空気通路に内気導入口から導入された内気が流れる。
【0004】
特許文献4の車両空調用送風装置の場合、送風用ファンを収容するスクロールケーシングが上スクロールケーシングと下スクロールケーシングとで構成されており、下スクロールケーシングの上部が下スクロールケーシングの下部に対して嵌合することによって上スクロールケーシング及び下スクロールケーシングが一体化されている。
【0005】
スクロールケーシングの内部には、上下方向の中間部に水平方向に延びる仕切板が配設されており、この仕切板により、スクロールケーシングの内部が上層空気通路と下層空気通路とに仕切られている。仕切板の周縁部は、上スクロールケーシングの下部と下スクロールケーシングの上部とで上下方向に挟まれた状態になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-296710号公報
【文献】特開2001-206044号公報
【文献】特開2011-201501号公報
【文献】特開2015-67260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、雨水や洗車時の水が外気導入口からスクロールケーシングの内部に浸入し、仕切板の上に溜まることがある。特許文献4では、仕切板に上スクロールケーシングと下スクロールケーシングとを連通させる連通孔を形成し、この連通孔を介して仕切板の上に溜まった水を下層空気通路に流し、エバポレータの凝縮水と一緒にドレン孔から車室外に排水するようにしている。
【0008】
しかしながら、仕切板の上に溜まった水は、当該仕切板の周縁部に向けて流れることがあり、こうなると仕切板の周縁部の水が、上スクロールケーシングと下スクロールケーシングとの嵌合部からスクロールケーシングの外部にしみ出てしまうことが考えられる。
【0009】
そこで、仕切板の上面に縦板を形成して仕切板の上に溜まった水が当該仕切板の周縁部に向けて流れ難くすることが考えられる。しかしながら、大風量時のようにスクルールケースの静圧が高くなると、水がファンで飛散して縦板を超えて仕切板の周縁部に向けて流れ、その結果、上スクロールケーシングと下スクロールケーシングとの嵌合部からスクロールケーシングの外部にしみ出てしまうおそれがある。
【0010】
縦板の仕切板上面からの高さを高くすれば、水がファンで飛散したとしても仕切板の周縁部に向けて流れ難くなるが、縦板を高くすると、スクロールケーシング内の容積が減少するとともに、通風の邪魔になり、送風能力の低下を招く。さらに、仕切板に高さの高い縦板を一体成形しようとすると、成形後の収縮等に起因して縦板が倒れるように変形し易く、スクロールケーシングへの組付作業性が悪化する懸念がある。さらにまた、高さの高い縦板を一体成形しようとすると、仕切板自体の成形が難しく、量産性も悪化する懸念がある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スクロールケーシングの内部に仕切板を配設することによって内外気2層流モードの選択を可能とする場合に、送風能力の低下や、組付作業性及び量産性の悪化を招くことなく、仕切板の上に溜まった水がスクロールケーシングの外部に漏れにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1の発明は、車室内の空気を導入する内気導入口と、車室外の空気を導入する外気導入口とが形成され、上記内気導入口及び上記外気導入口の両方に連通する第1空気通路及び第2空気通路が内部に形成されるとともに、上記内気導入口及び上記外気導入口を開閉する内外気切替ダンパが収容されたケーシングと、上記第1空気通路に配設された第1送風用ファンと、上記第2空気通路に配設された第2送風用ファンとを備え、上記第1送風用ファンによって上記第1空気通路内の空気を空調用空気として送風し、上記第2送風用ファンによって上記第2空気通路内の空気を空調用空気として送風するように構成された車両空調用送風装置において、上記ケーシングの上側に上記内気導入口及び上記外気導入口が形成され、上記ケーシングの上記内気導入口及び上記外気導入口よりも下側に、上記第1送風用ファン及び上記第2送風用ファンが収容されるスクロールケーシングが設けられ、上記スクロールケーシングは、上記第1送風用ファンが収容される上側スクロールケーシングと、上記第2送風用ファンが収容される下側スクロールケーシングとに分割され、上記上側スクロールケーシングの下部と上記下側スクロールケーシングの上部とが嵌合することによって上記上側スクロールケーシングと上記下側スクロールケーシングとが一体化され、上記スクロールケーシングの内部には、該スクロールケーシングの内部を上下方向に仕切る仕切板が配設され、該仕切板よりも上方が上記第1空気通路とされ、該仕切板よりも下方が上記第2空気通路とされ、上記仕切板の周縁部には、上方へ突出するとともに、上記上側スクロールケーシングの下部における上記下側スクロールケーシングとの嵌合部分よりも内側に嵌合する内側嵌合部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、内外気切替ダンパの動作によって内気導入口を開き、かつ、外気導入口を閉じると、内気導入口から内気が導入される内気循環モードになる。内気循環モードでは、第1送風用ファン及び第2送風用ファンが回転することで、内気導入口から導入された内気が第1空気通路及び第2空気通路を流れて空調用空気として送風される。また、内外気切替ダンパの動作によって内気導入口を閉じ、かつ、外気導入口を開くと、外気導入口から外気が導入される外気導入モードになる。外気導入モードでは、第1送風用ファン及び第2送風用ファンが回転することで、外気導入口から導入された外気が第1空気通路及び第2空気通路を流れて空調用空気として送風される。さらに、内外気切替ダンパの動作によって内気導入口及び外気導入口を開くと、内外気2層流モードになり、第1送風用ファン及び第2送風用ファンが回転することで、外気導入口から導入された外気が第1空気通路及び第2空気通路の一方を流れ、内気導入口から導入された内気が他方を流れ、空調用空気として送風される。つまり、外気導入モードと、内気循環モードと、内外気2層流モードとのうち、任意のモードに切り替えて送風することができる。
【0014】
例えば、雨水や洗車時の水が外気導入口からスクロールケーシングの内部に浸入すると、仕切板の上に溜まる場合がある。スクロールケーシングの内部の気流等により、仕切板の上に溜まった水が仕切板の周縁部に向けて流れることが想定されるが、仕切板の周縁部には、上側スクロールケーシングの下部に嵌合する内側嵌合部が上方へ突出するように設けられているので、この内側嵌合部によって堰き止められる。また、大風量時でスクルールケースの静圧が高くなると、仕切板の上に溜まった水がファンの回転によって飛散して内側嵌合部を超えようとするが、この内側嵌合部は上側スクロールケーシングの下部に嵌合しているので、内側嵌合部と上側スクロールケーシングの下部との間から外部へ向けては流れ難く、外部へのしみ出しが抑制される。さらに、内側嵌合部の外側には、上側スクロールケーシングの下部と下側スクロールケーシングの上部との嵌合部分が存在しているので、仕切板の上に溜まった水が、仮に内側嵌合部を超えたとしても、上側スクロールケーシングの下部と下側スクロールケーシングの上部との嵌合部分によって外部へのしみ出しが抑制される。よって、多重の水漏れ防止構造を実現できるので、仕切板に高さの高い縦板を一体成形する必要はなくなり、送風能力の低下を回避できるとともに、スクロールケーシングへの組付作業性の悪化及び量産性の悪化も回避できる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、上記内側嵌合部は、上記仕切板の周縁部から上方へ突出する板状をなし、上記内側嵌合部の上端面には、上記スクロールケーシングの内外方向一方向へ向かって下降傾斜する仕切板側傾斜面が設けられ、上記上側スクロールケーシングの下部には、上記仕切板側傾斜面に沿うように延び、該仕切板側傾斜面に当接するスクロール側傾斜面が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、仕切板側傾斜面がスクロールケーシングの内外方向一方向へ向かって下降傾斜していて、スクロール側傾斜面も同様に傾斜しているので、仕切板の内側嵌合部を上側スクロールケーシングの下部に嵌合させる際に、仕切板の内側嵌合部を嵌合方向に移動させるだけで、仕切板と上側スクロールケーシングとの内外方向の位置合わせが行われる。
【0017】
第3の発明は、第1または2の発明において、上記仕切板の下面には、上記下側スクロールケーシングの上部に当接する突起部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、仕切板の下面の突起部が下側スクロールケーシングの上部に当接することで、仕切板の振動が抑制される。
【0019】
第4の発明は、第3の発明において、複数の上記突起部が上記下側スクロールケーシングの周方向に互いに間隔をあけて形成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、下側スクロールケーシングの上部と、仕切板の下面との間に隙間が形成されるので、例えば仕切板の上に溜まった水が内側嵌合部を超えた場合に、下側スクロールケーシングの上部と、仕切板の下面との間から下側スクロールケーシングの内部に導入することができる。
【0021】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、上記上側スクロールケーシングの下部の内周面と、上記内側嵌合部との間には、隙間が形成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、例えば仕切板の上に溜まった水が内側嵌合部を超えた場合に、上側スクロールケーシングの下部の内周面と、内側嵌合部との間の隙間に流れ込み、下側スクロールケーシングの上部と、仕切板の下面との間から下側スクロールケーシングの内部に導入することができる。
【0023】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、上記上側スクロールケーシングの下部には、上記内側嵌合部が嵌合する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、内側嵌合部が上側スクロールケーシングの凹部に嵌合することで、水が外部へより一層漏れにくくなる。
【0025】
第7の発明は、第1から6のいずれか1つの発明において、上記下側スクロールケーシングの上部には、上方へ突出する下側嵌合突出部が形成され、上記上側スクロールケーシングの下部には、上記下側嵌合突出部が挿入された状態で嵌合する上側嵌合溝部が形成されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、下側スクロールケーシングの下側嵌合突出部を上側スクロールケーシングの上側嵌合溝部に挿入して嵌合させることで、止水性が向上する。
【0027】
第8の発明は、第1から7のいずれか1つの発明において、上記下側スクロールケーシングの上部には、上記仕切板の周縁部が嵌まる段部が形成されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、組付時に仕切板が下側スクロールケーシングに位置決めされるので、仕切板の位置ずれが抑制される。
【0029】
第9の発明は、第2の発明において、上記仕切板側傾斜面は、上記スクロールケーシングの内方へ向かって下降傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
第1の発明によれば、上側スクロールケーシングの下部と下側スクロールケーシングの上部とを嵌合させ、仕切板の周縁部に、上方へ突出するとともに、上側スクロールケーシングの下部における下側スクロールケーシングとの嵌合部分よりも内側に嵌合する内側嵌合部を設けたので、内外気2層流モードの選択を可能としながら、送風能力の低下、組付作業性及び量産性の悪化を招くことなく、仕切板の上に溜まった水がスクロールケーシングの外部に漏れにくくすることができる。
【0031】
第2の発明によれば、仕切板の内側嵌合部の上端面に、スクロールケーシングの内外方向一方向へ向かって下降傾斜する仕切板側傾斜面を設け、上側スクロールケーシングの下部に、仕切板側傾斜面に沿うように延び、該仕切板側傾斜面に当接するスクロール側傾斜面を設けたので、仕切板と上側スクロールケーシングとの内外方向の位置合わせを容易に行うことができ、組付作業性をより一層向上させることができる。
【0032】
第3の発明によれば、仕切板の下面に、下側スクロールケーシングの上部に当接する突起部を形成したので、仕切板の振動を抑制することができ、異音の発生を防止できる。
【0033】
第4の発明によれば、仕切板の上に溜まった水が内側嵌合部を超えた場合に、下側スクロールケーシングの上部と、仕切板の下面との間から下側スクロールケーシングの内部に導入することができ、外部へのしみ出しを抑制できる。
【0034】
第5の発明によれば、上側スクロールケーシングの下部の内周面と、内側嵌合部との間に隙間を形成したので、仕切板の上に溜まった水が内側嵌合部を超えた場合に下側スクロールケーシングの内部に導入することができ、外部へのしみ出しを抑制できる。
【0035】
第6の発明によれば、上側スクロールケーシングの下部に、内側嵌合部が嵌合する凹部を形成したので、水が外部へより一層漏れにくくすることができる。
【0036】
第7の発明によれば、下側スクロールケーシングの下側嵌合突出部を上側スクロールケーシングの上側嵌合溝部に挿入して嵌合させることで、水が外部へより一層漏れにくくすることができる。
【0037】
第8の発明によれば、仕切板と下側スクロールケーシングとの位置合わせを行うことができ、組付作業性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る車両空調用送風装置の背面図である。
図2】車両空調用送風装置の左側面図である。
図3】車両空調用送風装置の底面図である。
図4図1におけるIV-IV線断面図である。
図5図4におけるA部拡大図である。
図6】スクロールケーシングの分解斜視図である。
図7】上側スクロールケーシングを上方から見た斜視図である。
図8】下側スクロールケーシングを上方から見た斜視図である。
図9】仕切板を上方から見た斜視図である。
図10】仕切板の平面図である。
図11】仕切板の背面図である。
図12】仕切板の底面図である。
図13図12におけるB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0040】
図1は本発明の実施形態に係る車両空調用送風装置1を車両後側から見た図であり、また図2は車両空調用送風装置1を左側から見た図であり、また図3は車両空調用送風装置1を下方から見た図である。この車両空調用送風装置1は、例えば自動車の車室内に配設されて空調用空気を送風するためのものであり、図示しない空調ユニット及び冷凍サイクル装置と共に車両用空調装置を構成している。
【0041】
空調ユニットは、例えば冷凍サイクルの蒸発器からなる冷却用熱交換器と、ヒータコアからなる加熱用熱交換器と、エアミックスダンパと、吹出方向切替ダンパと、これらを収容する空調ケーシングとを備えている。車両空調用送風装置1から送風された空調用空気は、空調ケーシングの内部に導入されて冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を通過して所望温度の空調風とされた後、吹出方向切替ダンパによって設定された吹出モードに応じて車室の各部に供給される。空調風の温度調整は、エアミックスダンパによって設定される加熱用熱交換器の空気通過量よって行われる。
【0042】
尚、この実施形態では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとするが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、実際の使用状態や設置状態、組付状態を限定するものではない。
【0043】
車両空調用送風装置1は、図示しないが車室内の前端部に設けられているインストルメントパネルの内部に空調ユニットと共に収容されている。空調ユニットは、インストルメントパネルの内部において左右方向の略中央部に配置される一方、車両空調用送風装置1は、インストルメントパネルの内部において空調ユニットの助手席側(右ハンドル車の場合は左側、左ハンドル車の場合は右側)に配置される。この実施形態では、車両空調用送風装置1が車両の右側に配置される場合について説明するが、車両の左側に配置される場合には、この実施形態の構造と左右対称にすればよいので、詳細な説明は省略する。
【0044】
(車両の構成)
この車両空調用送風装置1が配設される車両は、図示しないが、エンジンルームと、車室とを区画するためのダッシュパネル(区画部材)を備えている。エンジンルームは車両の前部に設けられていて、エンジンや変速機等が配設されるようになっている。ダッシュパネルは略上下方向に延びている。ダッシュパネルの上部には、左右方向に延びるカウルが配設されている。カウルには、車室外に連通する連通口が形成されている。カウルは車室外に配設されているものなので、カウルには、雨水や洗車時の水、雪等が入ることがある。
【0045】
(車両空調用送風装置の構成)
図4にも示すように、車両空調用送風装置1は、送風ケーシング2と、上層送風用ファン(第1送風用ファン)3と、下層送風用ファン(第2送風用ファン)4と、上層送風用ファン3及び下層送風用ファン4を回転駆動するためのモーター5と、第1内外気切替ダンパ6と、第2内外気切替ダンパ7と、エアフィルタ8と、内外気切替用アクチュエータ9(図1及び図2に示す)とを備えている。上層送風用ファン3及び下層送風用ファン4と、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7と、エアフィルタ8とは、送風ケーシング2に収容されている。
【0046】
送風ケーシング2の上側には、図2等に示す前部内気導入口2a及び後部内気導入口2bと、図4に示す外気導入口2cとが形成されている。図2に示すように、前部内気導入口2aは、送風ケーシング2の上側における前後方向中央部よりも前寄りの部位に形成されており、車室内に開口している。また、後部内気導入口2bは、送風ケーシング2の上側における前後方向中央部よりも後寄りの部位に形成されており、車室内に開口している。前部内気導入口2a及び後部内気導入口2から車室内の空気(内気)を送風ケーシング2の内部に導入することが可能になっている。
【0047】
図4に示すように、送風ケーシング2の上側には、外気導入ダクト部2dが前部内気導入口2a及び後部内気導入口2bの間の部分から上方へ膨出するように該送風ケーシング2に一体成形されている。外気導入ダクト部2dの上側は前に向けて延びている。この外気導入ダクト部2dの前端部に外気導入口2cが開口している。外気導入ダクト部2dは上記カウルと接続されており、外気導入口2cはカウルを介して車室外と連通している。外気導入口2cから車室外の空気(外気)を送風ケーシング2の内部に導入することが可能になっている。
【0048】
図4に示すように、送風ケーシング2の内部における前部内気導入口2a及び後部内気導入口2bと外気導入口2cよりも下側には、上記フィルタ8が収容されている。フィルタ8は、板状に形成されており、水平方向に延びるように配置されている。フィルタ8の周縁部が送風ケーシング2の内部に設けられたフィルタ支持部2eによって支持されている。送風ケーシング2の後壁部には、上記フィルタ8を該送風ケーシング2に挿入するためのフィルタ挿入孔2fが形成されている。フィルタ挿入孔2fは、フィルタ8の後端部に設けられた蓋部8aによって閉塞されるようになっている。尚、フィルタ8は、例えば一般的な不織布等で構成することができる。
【0049】
送風ケーシング2の内部におけるフィルタ8よりも上側には、区画壁部2gが設けられている。区画壁部2gは、上下方向に延びており、下端部に近づけば近づくほど後に位置するように若干傾斜している。送風ケーシング2の内部の上側には、区画壁部2gよりも前側に第1空気通路R1が形成され、区画壁部2gよりも後側に第2空気通路R2が形成されている。第1空気通路R1の前後方向の幅は、第2空気通路R2の前後方向の幅よりも広く設定されており、第1空気通路R1の断面積が第2空気通路R2の断面積よりも広くなっている。
【0050】
第1空気通路R1の上流端部(上端部)は、前部内気導入口2aと外気導入口2cとに連通している。また、第2空気通路R2の上流端部(上端部)は、後部内気導入口2bと外気導入口2cとに連通している。第1空気通路R1及び第2空気通路R2は、共通の外気導入口2cに連通しているが、内気導入口については互いに別の内気導入口2a、2bに連通している。これにより、第1空気通路R1及び第2空気通路R2の両方に、内気と外気との導入が可能な構造になる。
【0051】
第1内外気切替ダンパ6は、送風ケーシング2の内部において区画壁部2gよりも前側に配設されており、閉塞板部6aと軸部6bと端板部6cとを備えている。閉塞板部6aは、左右方向に延びている。軸部6bも左右方向に延びており、送風ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。端板部6cは、軸部6bの左右方向の両端近傍に設けられている。端板部6cは、軸部6bから径方向に延び、閉塞板部6aの左右両端部に連なっている。閉塞板部6aと軸部6bと端板部6cは一体成形されている。第1内外気切替ダンパ6は、軸部6bの中心線周りに回動することにより、図4に示す前に向けて回動した状態と、図示しないが後に向けて回動した状態とに切り替えられる。第1内外気切替ダンパ6が前に向けて回動した状態になると、前部内気導入口2aを閉塞して外気導入口2cを開放するので、内気の流入が遮断されて外気が第1空気通路R1の上流部に導入される。一方、第1内外気切替ダンパ6が後に向けて回動した状態になると、前部内気導入口2aを開放して外気導入口2cを閉塞するので、外気の流入が遮断されて内気が第1空気通路R1の上流部に導入される。
【0052】
第2内外気切替ダンパ7は、送風ケーシング2の内部において区画壁部2gよりも後側に配設されており、第1内外気切替ダンパ6と同様に、閉塞板部7aと軸部7bと端板部7cとを備えている。第2内外気切替ダンパ7は、軸部7bの中心線周りに回動することにより、図4に示す後に向けて回動した状態と、図示しないが前に向けて回動した状態とに切り替えられる。第2内外気切替ダンパ7が後に向けて回動した状態になると、後部内気導入口2bを閉塞して外気導入口2cを開放するので、内気の流入が遮断されて外気が第2空気通路R2の上流部に導入される。一方、第2内外気切替ダンパ7が前に向けて回動した状態になると、後部内気導入口2bを開放して外気導入口2cを閉塞するので、外気の流入が遮断されて内気が第2空気通路R2の上流部に導入される。
【0053】
第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7は、図1及び図2等に示す内外気切替用アクチュエータ9によって駆動される。内外気切替用アクチュエータ9は、図示しないが、空調制御装置によって制御される。第1内外気切替ダンパ6の軸部6b及び第2内外気切替ダンパ7の軸部7bには、リンク部材9aが係合しており、このリンク部材9aを内外気切替用アクチュエータ9によって回動させることにより、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7を連動させることができるようになっている。リンク部材9aを用いた第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7の連動構造については従来から周知の手法を利用することができるので、詳細な説明は省略する。また、リンク部材9aを用いることなく、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7を別々に駆動するようにしてもよい。
【0054】
この実施形態では、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7を以下のように駆動する。すなわち、図4に示すように、第1内外気切替ダンパ6を前に向けて回動させるとともに第2内外気切替ダンパ7を後に向けて回動させる外気導入モードと、第1内外気切替ダンパ6を後に向けて回動させるとともに第2内外気切替ダンパ7を前に向けて回動させる内気循環モードと、第1内外気切替ダンパ6を前に向けて回動させるとともに第2内外気切替ダンパ7を前に向けて回動させる内外気2層流モードとの3つのモードのうち、任意のモードに切り替えることができるようになっている。
【0055】
外気導入モードでは、第1内外気切替ダンパ6が前に向けて回動するとともに第2内外気切替ダンパ7が後に向けて回動するので、第1空気通路R1及び第2空気通路R2には外気のみが導入される。内気循環モードでは、第1内外気切替ダンパ6が後に向けて回動するとともに第2内外気切替ダンパ7が前に向けて回動するので、第1空気通路R1及び第2空気通路R2には内気のみが導入される。内外気2層流モードでは、第1内外気切替ダンパ6が前に向けて回動するとともに第2内外気切替ダンパ7が前に向けて回動するので、第1空気通路R1には外気が導入され、第2空気通路R2には内気が導入される。内外気2層流モードは、暖房時に使用されるモードである。
【0056】
内気循環モード、外気導入モード及び内外気2層流モードの切替は、従来から周知のオートエアコン制御によって行われる。内外気2層流モードにすることで、冬季には比較的乾燥した外気をデフロスト吹出口に供給してフロントウインドガラスの曇りを良好に晴らしながら、比較的暖かい内気をヒート吹出口に供給して暖房効率を向上させることができる。
【0057】
送風ケーシング2の内気導入口2a、2b及び外気導入口2cよりも下側には、上層送風用ファン3及び下層送風用ファン4が収容されるスクロールケーシング20が設けられている。図1及び図2に示すように、スクロールケーシング20は、上層送風用ファン3が収容される上側スクロールケーシング21と、下層送風用ファン4が収容される下側スクロールケーシング22とに分割されている。また、スクロールケーシング20の下部には、底壁部材23が設けられている。底壁部材23は、スクロールケーシング20を構成する部材である。上側スクロールケーシング21、下側スクロールケーシング22及び底壁部材23によってスクロールケーシング20が構成されている。さらに、スクロールケーシング20の内部には、該スクロールケーシング20の内部を上下方向に仕切る仕切板24が配設されており、この仕切板24もスクロールケーシング20を構成する部材である。
【0058】
上側スクロールケーシング21の上壁部には、送風ケーシング2の内部で開口するように、略円形の第1ベルマウス開口部21aが形成されている。第1ベルマウス開口部21aは、フィルタ8の下面と対向するように配置されており、第1空気通路R1と連通している。さらに、上側スクロールケーシング21の上壁部には、上方へ突出する突出壁部21bが設けられている。この突出壁部21bは、第1ベルマウス開口部21aの開口縁部よりも後に位置付けられており、左右方向に延びている。突出壁部21bの上端部は、区画壁部2gの下端部近傍に達している。突出壁部21b及び区画壁部2gにより、送風ケーシング2の内部における上側スクロールケーシング21よりも上側が、前後方向に仕切られて、突出壁部21b及び区画壁部2gよりも前側に第1空気通路R1が形成され、突出壁部21b及び区画壁部2gよりも後側に第2空気通路R2が形成されることになる。
【0059】
第1空気通路R1は、第1ベルマウス開口部21aを介して上側スクロールケーシング21の内部と連通しており、この上側スクロールケーシング21の内部は第1空気通路R1の一部となっている。仕切板24よりも上方が第1空気通路R1とされている。上層送風用ファン3は、上側スクロールケーシング21の内部において第1空気通路R1に配設されている。第1送風用ファン3が上側スクロールケーシング21の内部で回転すると、第1送風用ファン3によって第1空気通路R1内の空気が空調用空気として送風される。
【0060】
図2に示すように、上側スクロールケーシング21の左側壁部の前側には、上記空調ユニットに接続される上側空気吹出口21cが形成されている。上側空気吹出口21cには、第1空気通路R1の下流端が連通しており、第1空気通路R1内の空気は上側空気吹出口21cから上側スクロールケーシング21の外部に吹き出すようになっている。
【0061】
図4に示すように、第2空気通路R2は、上側スクロールケーシング21の内部の後側を下方へ向けて延びており、第2空気通路R2の下端部は底壁部材23に達している。下側スクロールケーシング22の下壁部は底壁部材23から上方に離れており、下側スクロールケーシング22の下壁部と底壁部材23との間に、第2空気通路R2の下端部が位置している。下側スクロールケーシング22の下壁部には、略円形の第2ベルマウス開口部22aが形成されたベルマウス構成部材22bが設けられている。第2ベルマウス開口部22aは底壁部材23と対向するように配置されており、第2空気通路R2の下端部と連通している。第2ベルマウス開口部22aと第1ベルマウス開口部21aとは同心上に位置している。ベルマウス構成部材22bは、下側スクロールケーシング22の下壁部に形成された開口部22cの周縁部に嵌合するようになっている。
【0062】
第2空気通路R2の下端部は、第2ベルマウス開口部22aを介して下側スクロールケーシング22の内部と連通しており、この下側スクロールケーシング22の内部は第2空気通路R2の一部となっている。仕切板24よりも下方が第2空気通路R2とされている。下層送風用ファン4は、下側スクロールケーシング22の内部において第2空気通路R2に配設されている。第2送風用ファン4が下側スクロールケーシング22の内部で回転すると、第2送風用ファン4によって第2空気通路R2内の空気が空調用空気として送風される。
【0063】
図2に示すように、下側スクロールケーシング22の左側壁部の前側には、上記空調ユニットに接続される下側空気吹出口22cが形成されている。下側空気吹出口22cは、上側空気吹出口21cの真下に位置している。下側空気吹出口22cには、第2空気通路R2の下流端が連通しており、第2空気通路R2内の空気は下側空気吹出口22cから下側スクロールケーシング22の外部に吹き出すようになっている。
【0064】
底壁部材23は、下側スクロールケーシング22の下端部を覆うように形成され、該下端部を覆うカバー状の部材である。底壁部材23の周縁部は、下側スクロールケーシング22の下端部の周縁部に嵌合するように形成されており、底壁部材23の周縁部と、下側スクロールケーシング22の下端部の周縁部との間から空気が漏れないようになっている。
【0065】
底壁部材23には、モーター5がモーター取付部材5aを介して取り付けられている。モーター取付部材5aは、底壁部材23に固定されている。このモーター取付部材5aにモーター5が取り付けられている。モーター5は、ローター等を内蔵した本体部5bと、回転軸5cとを有している。回転軸5cは、本体部5bから上方へ突出するように設けられており、第1ベルマウス開口部21a及び第2ベルマウス開口部22aと同心上に配置されている。回転軸5cの上端部は、第2ベルマウス開口部22aよりも上方に位置している。
【0066】
回転軸5cには、第1送風用ファン3及び第2送風用ファン4が固定されており、第1送風用ファン3及び第2送風用ファン4と回転軸5cとは一体に回転するようになっている。したがって、モーター5の本体部5bに電圧が印加されると、回転軸5cの回転力が第1送風用ファン3及び第2送風用ファン4に伝達されて該第1送風用ファン3及び第2送風用ファン4が第1空気通路R1及び第2空気通路R2内でそれぞれ回転する。モーター5の本体部5bには、図示しない空調制御装置が接続されており、空調制御装置によって所望の回転数となるように電圧が印加される。
【0067】
(上側スクロールケーシングと下側スクロールケーシングの嵌合構造)
例えば図5に示すように、上側スクロールケーシング21の下部と下側スクロールケーシング22の上部とが嵌合することによって上側スクロールケーシング21と下側スクロールケーシング22とが一体化するようになっている。
【0068】
以下、上側スクロールケーシング21と下側スクロールケーシング22との嵌合構造について詳細に説明する。下側スクロールケーシング22の上部は、スクロールケーシング20の径方向外方へ張り出すように形成された下側張り出し部22dとされている。この下側張り出し部22dは、下側スクロールケーシング22の上部の周方向全周に亘って設けられている。尚、図4では、A部(図4における左側)にのみ、上側スクロールケーシング21と下側スクロールケーシング22との嵌合構造の詳細を記載しており、図における右側には上側スクロールケーシング21と下側スクロールケーシング22との嵌合構造を省略しているが、上側スクロールケーシング21と下側スクロールケーシング22との嵌合構造は全周に亘って形成されている。
【0069】
下側張り出し部22dにおけるスクロールケーシング20の径方向外側部分には、上方へ突出する下側嵌合突出部22eが形成されている。下側嵌合突出部22eは、下側スクロールケーシング22の周方向に連続する突条をなしている。下側嵌合突出部22eの突出方向先端側は先端に近づけば近づくほどスクロールケーシング20の径方向の寸法が短くなるように形成されており、先細形状となっている。
【0070】
下側張り出し部22dにおけるスクロールケーシング20の径方向内側部分には、仕切板24の周縁部が嵌まる段部22fが形成されている。段部22fと、下側嵌合突出部22eとは、スクロールケーシング20の径方向に間隔をあけて設けられている。
【0071】
上側スクロールケーシング21の下部は、スクロールケーシング20の径方向外方へ張り出すように形成された上側張り出し部21dとされている。この上側張り出し部21dは、上側スクロールケーシング21の上部の周方向全周に亘って設けられている。上側張り出し部21dにおけるスクロールケーシング20の径方向外側部分には、上記下側嵌合突出部22eが挿入された状態で嵌合する上側嵌合溝部21eが下方に開口するように形成されている。上側嵌合溝部21eは、上側スクロールケーシング21の周方向に連続する凹条をなしている。上側嵌合溝部21eは底部(上部)に近づけば近づくほどスクロールケーシング20の径方向の寸法が短くなるように形成されている。下側嵌合突出部22eが上側嵌合溝部21eに挿入された状態で、下側嵌合突出部22eの側面が上側嵌合溝部21eの内面に接触するようになっている。
【0072】
上側張り出し部21dにおけるスクロールケーシング20の径方向内側部分には、後述する仕切板24の内側嵌合部が嵌合する凹部21fが形成されている。凹部21fと、上側嵌合溝部21eとは、スクロールケーシング20の径方向に間隔をあけて設けられている。凹部21fは、上側嵌合溝部21eと同様に下方に開口するように形成されており、上側スクロールケーシング21の周方向に連続する凹条をなしている。凹部21fの底部(上部)と、上側嵌合溝部21eの底部とは略同じ高さに位置している。
【0073】
凹部21fの内面には、後述する仕切板24の仕切板側傾斜面24cに沿うように延び、該仕切板側傾斜面24cに当接するスクロール側傾斜面21gが設けられている。スクロール側傾斜面21gは、スクロールケーシング20の内方へ向かって下降傾斜している。
【0074】
また、上側スクロールケーシング21と下側スクロールケーシング22は、下側嵌合突出部22eが上側嵌合溝部21eに嵌合した状態で、外部がビス等の締結部材によって締結されている。
【0075】
(仕切板の構成)
図4に示すように、仕切板24は、スクロールケーシング20の内部において上下方向の中間部に配設されており、左右方向及び前後方向に延びている。この仕切板24は、上側スクロールケーシング21及び下側スクロールケーシング22と同様な樹脂材で構成することができる。図9等にも示すように、仕切板24には、貫通孔24aが形成されている。貫通孔24aは、略円形であり、第1ベルマウス開口部21a及び第2ベルマウス開口部22aと同心上に位置している。貫通孔24aの内径は、第1ベルマウス開口部21a及び第2ベルマウス開口部22aの内径よりも大きく、かつ、下側スクロールケーシング22の下壁部の開口部22cよりも小さく設定されている。
【0076】
仕切板24の周縁部には、上方へ突出するとともに、上側スクロールケーシング21の下部における下側スクロールケーシング22との嵌合部分、即ち、上側スクロールケーシング21の上側嵌合溝部21eよりも内側に形成されている凹部21fに嵌合する内側嵌合部24bが設けられている。内側嵌合部24bは、仕切板24の周縁部から上方へ突出する板状をなしている。図5に示すように、内側嵌合部24bの上端面には、スクロールケーシング2の内外方向一方向へ向かって下降傾斜する仕切板側傾斜面24cが設けられている。この実施形態では、仕切板側傾斜面24cがスクロールケーシング2の内方へ向かって下降傾斜している。仕切板側傾斜面24cは、上側スクロールケーシング21のスクロール側傾斜面21gに沿うように延びており、内側嵌合部24bが上側スクロールケーシング21の凹部21fに嵌合した状態で、仕切板側傾斜面24cとスクロール側傾斜面21gとが接触するようになっている。
【0077】
また、内側嵌合部24bの上下方向の寸法は、内側嵌合部24bが上側スクロールケーシング21の凹部21fに嵌合した状態で凹部21fの内面と下側スクロールケーシング22の段部22fとによって上下方向に挟持されるように設定されている。これにより、仕切板24が、上側スクロールケーシング21及び下側スクロールケーシング22に対して上下方向に動かなくなるとともに、左右方向及び前後方向にも動かなくなる。
【0078】
図12及び図13に示すように、仕切板24の下面の周縁部には、下側スクロールケーシング22の上部に当接する複数の小さな突起部24gが周方向に互いに間隔をあけて形成されている。図5に示すように、仕切板24の周縁部は、下側スクロールケーシング22の段部22fに嵌まるように形成されており、この周縁部の下面の一部にのみ、上記突起部24gが下方へ突出するように設けられている。突起部24gは、スクロールケーシング20の径方向に長い形状となっている。突起部24gは小さなものなので、下側スクロールケーシング22の段部22fに接触した際、仕切板24の下面における突起部24gが形成されている部分の近傍だけが段部22fから浮き上がるようになって隙間ができるが、仕切板24の下面における突起部24gから離れた部分は図5に示すように段部22fに接触するようになる。このように小さな突起部24bを下側スクロールケーシング22の段部22fに接触させることで、仕切板24のがたつきが抑制されて異音が発生しにくくなる。
【0079】
図4に示すように、仕切板24の下面には、突出板部24dが下方へ突出するように形成されている。突出板部24dは、仕切板24の周縁部近傍に位置しており、内側嵌合部24bよりもスクロールケーシング20の径方向内側に位置している。また、突出板部24dは下側スクロールケーシング22の内面からスクロールケーシング20の径方向内側に離れており、突出板部24dと下側スクロールケーシング22の内面との間には隙間ができている。
【0080】
内側嵌合部24bは、上側スクロールケーシング21の上側張り出し部21dから径方向外方に離れるように形成されている。これにより、上側スクロールケーシング21の上側張り出し部21dの内周面と、内側嵌合部24bとの間には、隙間S(図5にのみ示す)が形成されることになる。この隙間Sは、仕切板24の下面における突起部24gが形成されている部分近傍と、下側スクロールケーシング22の段部22fとの間の隙間に連通している。
【0081】
(スクロールケーシングの組立要領)
この実施形態に係る車両空調用送風装置1では、スクロールケーシング20を組み立てる際に、まず、上側スクロールケーシング21に対して仕切板24を組み付けていく。このとき、仕切板24の内側嵌合部24bを上側スクロールケーシング21の凹部21fに挿入するのであるが、仕切板24の仕切板側傾斜面24cがスクロールケーシング20の内方へ向かって下降傾斜しているので、凹部21fのスクロール側傾斜面21gに接触することによって内側嵌合部24bが凹部21fの底部に導かれていき、挿入が容易になる。
【0082】
その後、上側スクロールケーシング21に対して下側スクロールケーシング22を組み付ける。このとき、下側スクロールケーシング22の下側嵌合突出部22eを上側スクロールケーシング21の上側嵌合溝部21eに挿入して嵌合させる。すると、内側嵌合部24bが上側スクロールケーシング21の凹部21fの内面と下側スクロールケーシング22の段部22fとによって上下方向に挟持される。そして、スクロールケーシング20の外部をビスによって締結することで上側スクロールケーシング21、下側スクロールケーシング22及び仕切板24が一体化する。尚、底壁部材23やモーター5等も組み付ける。
【0083】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る車両空調用送風装置1によれば、内外気切替ダンパ6、7の動作によって内気導入口2a、2bを開き、かつ、外気導入口2cを閉じると、内気導入口2a、2bから内気が導入される内気循環モードになる。内気循環モードでは、上層送風用ファン3及び下層送風用ファン4が回転することで、内気導入口2a、2bから導入された内気が第1空気通路R1及び第2空気通路R2を流れて空調用空気として送風される。
【0084】
また、内外気切替ダンパ6、7の動作によって内気導入口2a、2bを閉じ、かつ、外気導入口2cを開くと、外気導入口2cから外気が導入される外気導入モードになる。外気導入モードでは、上層送風用ファン3及び下層送風用ファン4が回転することで、外気導入口2cから導入された外気が第1空気通路R1及び第2空気通路R2を流れて空調用空気として送風される。
【0085】
さらに、内外気切替ダンパ6、7の動作によって内気導入口2a、2b及び外気導入口2cを開くと、内外気2層流モードになり、上層送風用ファン3及び下層送風用ファン4が回転することで、外気導入口2cから導入された外気が第1空気通路R1を流れ、内気導入口2a、2bから導入された内気が第2空気通路R2を流れ、空調用空気として送風される。つまり、この実施形態に係る車両空調用送風装置1によれば、外気導入モードと、内気循環モードと、内外気2層流モードとのうち、任意のモードに切り替えて送風することができる。
【0086】
例えば、雨水や洗車時の水が外気導入口2cからスクロールケーシング20の内部に浸入することがある。水がスクロールケーシング20の内部に浸入すると、スクロールケーシング20の仕切板24の上に溜まる場合がある。スクロールケーシング20の内部の気流等により、仕切板24の上に溜まった水が仕切板24の周縁部に向けて流れることが想定されるが、仕切板24の周縁部には、上側スクロールケーシング21の下部に嵌合する内側嵌合部24bが上方へ突出するように設けられているので、この内側嵌合部24bによって堰き止められる。
【0087】
また、大風量時でスクルールケーシング20の静圧が高くなると、仕切板24の上に溜まった水が上層送風用ファン3の回転によって飛散して内側嵌合部24bを超えようとするが、この内側嵌合部24bは上側スクロールケーシング21の下部に嵌合しているので、内側嵌合部24bと上側スクロールケーシング21の下部との間から外部へ向けては流れ難く、外部へのしみ出しが抑制される。さらに、内側嵌合部24bの外側には、上側スクロールケーシング21の下部と下側スクロールケーシング22の上部との嵌合部分が存在しているので、仕切板24の上に溜まった水が、仮に内側嵌合部24bを超えたとしても、上側スクロールケーシング21の下部と下側スクロールケーシング22の上部との嵌合部分によって外部へのしみ出しが抑制される。よって、多重の水漏れ防止構造を実現できるので、仕切板24に高さの高い縦板を一体成形する必要はなくなり、送風能力の低下を回避できるとともに、スクロールケーシング2への組付作業性の悪化及び量産性の悪化も回避できる。
【0088】
また、下側スクロールケーシング22の上部と、仕切板24の下面との間に隙間が形成されるので、例えば仕切板24の上に溜まった水が内側嵌合部24bを超えた場合に、下側スクロールケーシング22の上部と、仕切板24の下面との間から下側スクロールケーシング22の内部に導入することができる。
【0089】
また、仕切板24の仕切板側傾斜面24cがスクロールケーシング20の内方へ向かって下降傾斜していて、上側スクロールケーシング21のスクロール側傾斜面21fも同様に傾斜しているので、仕切板24の内側嵌合部24bを上側スクロールケーシング21の下部に嵌合させる際に、仕切板24の内側嵌合部24bを嵌合方向に移動させるだけで、仕切板24と上側スクロールケーシング21との内外方向の位置合わせを行うことができ、組付作業性をより一層向上させることができる。
【0090】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本発明に係る車両空調用送風装置は、例えば、車両用空調装置の送風ユニットとして使用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 車両空調用送風装置
2 送風ケーシング
2a、2b 内気導入口
2c 外気導入口
3 上層送風用ファン(第1送風用ファン)
4 下層送風用ファン(第2送風用ファン)
6 第1内外気切替ダンパ
7 第2内外気切替ダンパ
20 スクロールケーシング
21 上側スクロールケーシング
21e 上側嵌合溝部
21f 凹部
21g スクロール側傾斜面
22 下側スクロールケーシング
22e 下側嵌合突出部
24 仕切板
24b 内側嵌合部
24c 仕切板側傾斜面
R1 第1空気通路
R2 第2空気通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13