(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】反射プリズムおよび測量用ターゲット
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20220224BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20220224BHJP
G02B 5/122 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 104C
G02B5/122
(21)【出願番号】P 2018022707
(22)【出願日】2018-02-13
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187857(JP,A)
【文献】特開2009-236663(JP,A)
【文献】特開2002-310658(JP,A)
【文献】特開昭60-237402(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105301682(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00- 1/14
G01C 5/00-15/14
G02B 5/00- 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面が透過面で他の面の内側が反射面である三角錐形状を有したコーナーキューブを7個組み合わせた反射プリズムであって、
前記透過面を外側として、前記透過面の三角形状の上下を交互に組み合わせた状態で軸回りに配置された6個のコーナーキューブと、
前記6個のコーナーキューブの上部に形成された略三角錐形状の窪みに嵌め込まれたコーナーキューブと
を備えた反射プリズム。
【請求項2】
前記7個のコーナーキューブは、各頂点を一致させた状態で組み合わされている請求項1に記載の反射プリズム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の反射プリズムを上部に固定した測量用ターゲットであって、
前記反射プリズムは、最上部に前記略三角錐形状の窪みに嵌め込まれたコーナーキューブを備えていることを特徴とする測量用ターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量に用いる反射プリズムに関する。
【背景技術】
【0002】
TS(トータルステーション)等を用いた測量に利用される反射プリズムが知られている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)。特許文献1の反射プリズムは、複数のコーナーキューブを組み合わせることで、360°の方位からの入射光に対応している。ただし、360°といっても、仰角および俯角方向からの入射光の対応には限界がある。
【0003】
この問題に対応する技術として、8個のコーナーキューブを組み合わせた反射プリズムが知られている(特許文献3参照)。この技術では、4個のコーナーキューブを組み合わせたピラミッド形状(四角錐形状)の反射プリズムを2個作成し、更にこの2個のピラミッド形状の反射プリズムを、底面を対向させた状態で結合させる。この反射プリズムでは、原理上あらゆる方向からの入射光に対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-204557号公報
【文献】日本国特許登録第5031235号公報
【文献】特開2002-310658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3の技術を用いた場合、仰角および俯角も含めた広い角度に対応できる反射プリズムが得られる。しかしながら、プリズムを8個使用しなくてはならいこと、更に反射中心の位置に誤差が生じる問題がある。
【0006】
このような背景において、本発明は、広範囲な角度からの入射光に対応でき、使用するコーナーキューブの数を最低限に抑えられる反射プリズムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一面が透過面で他の面の内側が反射面である三角錐形状を有したコーナーキューブを7個組み合わせた反射プリズムであって、前記透過面を外側として、前記透過面の三角形状の上下を交互に組み合わせた状態で軸回りに配置された6個のコーナーキューブと、前記6個のコーナーキューブの上部に形成された略三角錐形状の窪みに嵌め込まれたコーナーキューブとを備えた反射プリズムである。本発明において、前記7個のコーナーキューブは、各頂点を一致させた状態で組み合わされている構造が挙げられる。
【0008】
また本発明は、上記の反射プリズムを上部に固定した測量用ターゲットであって、前記反射プリズムは、最上部に前記略三角錐形状の窪みに嵌め込まれたコーナーキューブを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、広範囲な角度からの入射光に対応でき、使用するコーナーキューブの数を最低限に抑えられる反射プリズムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の反射プリズムの分解斜視図(A)と斜視図(B)である。
【
図2】実施形態の反射プリズムの分解斜視図である。
【
図3】実施形態の反射プリズムの光学特性を示す図である。
【
図4】実施形態の反射プリズムの分解斜視図(A)と斜視図(B)である。
【
図5】TSでUAVの追尾および測位を行う状態を示す図である。
【
図6】TSで測量用ターゲットの反射プリズムの追尾および測位を行う状態を示す図である。
【
図7】TSで測量用ターゲットの反射プリズムの追尾および測位を行う状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1の実施形態
(概要)
図1には、実施形態の反射プリズム100が示されている。反射プリズム100は、7つのコーナーキューブ101~107を組み合わせた構造を有している。コーナーキューブ101~107は同じものである。
図2には、反射プリズム100を構成するコーナーキューブ101~107をバラバラにした分解斜視図が示されている。
【0012】
(コーナーキューブについて)
以下、コーナーキューブ101~107について説明する。ここでは、代表してコーナーキューブ107を例に挙げ説明する。コーナーキューブ107は、鏡面を有する3枚の平面を互いに直角に組み合わせ、入射した光をもとの光軸と同じ方向に反射させる機能を有する光学部材である。なお、
図1の構造では、立方体の頂点の部分が切り取られた構造となっている。
【0013】
コーナーキューブ107は、光学特性の良好なガラス製であり、一面が光線の入射面兼出斜面となる透過面107aであり、他の3面が非透過面である。3面の非透過面の内側は光反射面とされている。透過面107aから入射した光線は、他の各面の内側で反射し、入射した方向に透過面107aから出射する。コーナーキューブ107の構造および光学原理は、公知のコーナーキューブと同じである。コーナーキューブの光学原理については、例えば、特開2009-204557号公報に記載されている。
【0014】
(反射プリズムの構造)
反射プリズム100は、コーナーキューブ集合体110とコーナーキューブ107を組み合わせた構造を有している。コーナーキューブ集合体110は、垂直軸(Z軸)回りに6個のコーナーキューブ101~106を配置した構造を有している。コーナーキューブ集合体110は、日本国登録特許5031235号に記載されているものと同じである。
【0015】
以下、
図1のX-Y面を水平面、Z軸を垂直軸として説明を行う。コーナーキューブ集合体110では、透過面が仰角方向(水平より斜め上の方向)⇒俯角方向(水平より斜め下の方向)⇒仰角方向⇒俯角方向⇒仰角方向⇒俯角方向となるように6個のコーナーキューブ101~106が垂直軸の周りに配置されている。
図1の場合でいうと、透過面が水平方向に対して俯角方向となるようにコーナーキューブ101,103,105が配置され、透過面が水平面方向に対して仰角方向となるようにコーナーキューブ102,104,106が配置されている。見方を変えると、各コーナーキューブは、隣接する両隣のコーナーキューブと透過面の三角形状の上下が逆となり、また頂点の位置が少しずれるように非透過面同士を接触させた状態で結合されている。
【0016】
反射プリズム100では、コーナーキューブ集合体110の上部に透過面107aが上方(Z軸正方向)となるようにコーナーキューブ107を嵌め込んでいる。コーナーキューブ集合体110を構成するコーナーキューブ102,104,106は、三角錐の一辺が上方に位置し、コーナーキューブ101,103,105は三角錐の頂点が上方に位置している。このため、コーナーキューブ集合体110を上方(Z軸正の方向)から見ると、コーナーキューブ107が嵌り込む三角錐の窪み111が出来ている。この三角錐の窪み111に透過面107aが上になる状態でコーナーキューブ107が嵌め込まれている。
【0017】
図1(B)には、
図1(A)のコーナーキューブ集合体100の上部にコーナーキューブ107を嵌め込んだ状態の反射プリズム100が示されている。なお、コーナーキューブ101~107の結合は、接着剤を用いて行われている。また、一部隙間が生じる部分があるが、そこはシリコン材や枠部材により埋められている。
【0018】
図3に、
図1の水平方向(Z軸に垂直な方向)から見た反射プリズム100の光学特性を示す。
図3には、対応できる入射光の入射角の範囲が示されている。反射プリズム100は、コーナーキューブ107(
図1~3参照)があることで、上方からの入射光に対応できる。コーナーキューブ集合体110は、仰角45°~60°程度、俯角45°~60°程度の範囲の入射光に対応する。ここで、角度範囲の限界値に幅があるのは、仰角および俯角方向におけるコーナーキューブ101~106の向き(透過面の向き)が2通りあり(例えば、コーナーキューブ101と102では、透過面の向きが違う)、水平方向によって、対応可能な入射角の範囲が異なるからである。
【0019】
上記のコーナーキューブ集合体110の対応角度範囲に加えて、上向きに配置されたコーナーキューブ107は、仰角45°以上の範囲(実際には、更に余裕がある)からの入射光に対応できる。そのため、反射プリズム100は、
図3に示す範囲の仰角および俯角方向からの入射光に対応できる。
【0020】
図3の場合、下方に対応できない範囲が存在するが、反射プリズム100の上下を反転させれば、下方からの入射光に対応できる使い方ができる。ただし、この場合は、上方に対応できない角度範囲が発生する。
【0021】
2.第2の実施形態
図1の反射プリズムの構造において、コーナーキューブ101~107の頂点の位置を合わせ、隙間やズレが極力生じないようにコーナーキューブ101~107を組み合わせてもよい。この場合の例を
図4に示す。
図4には、頂点の位置を合わせた状態で6個のコーナーキューブを隙間なく組み合わせたコーナーキューブ集合体120が示されている。
【0022】
コーナーキューブ集合体120の上部には、三角錐形状の窪み122が形成され、そこに隙間が生じないようにコーナーキューブ121が嵌め込まれることで、7個のコーナーキューブを頂点の位置を合わせて隙間なく組み合わせた反射プリズム130が構成されている。反射プリズム130において、7個のコーナーキューブの位置関係は、第1の実施形態の場合と同じである。
【0023】
(応用例1)
以下、反射プリズム100および反射プリズム130の応用例について説明する。反射プリズム100を選択するか、反射プリズム130を選択するかは自由であり、どちらを選択してもよい。
【0024】
図5には、UAV(Unmanned aerial vehicle:無人航空機)200の下部に反射プリズム100を固定し、それをTS(トータルステーション)300で追尾および測位する場合が示されている。この場合、反射プリズム100は、
図1または
図4の状態の上下を反転させた状態でUAV200の下部に固定される。
【0025】
この場合、
図3の上下を反転させた入射範囲に対して反射プリズム100は対応できる。したがって、TS300から見て、俯角45°~60°より上の範囲でUAV200を追尾および測位できる。
【0026】
(応用例2)
図6には、測量用ターゲット160が示されている。測量用ターゲット160は、棒状の支持部材150の上部に反射プリズム100を固定した構造を有している。反射プリズム100は、
図1の状態で支持部材150の上部に固定されている。この場合、測距光に対して、
図3に示す範囲で対応が可能となる。
【0027】
測量用ターゲット160は、例えば杭打ち作業に用いられる。杭打ち作業は、土木建築工事等において、地面や基礎となる躯体に杭を打つ(あるいは目印を付ける)ことで、図面の内容を工事対象の地面や躯体に移す作業である。
【0028】
杭打ち作業では、杭打ちを行う位置に測量用ターゲット160を立て、その際に反射プリズム100の位置をTS300によりレーザー測位し、杭打ちの位置を精密に決める作業が行なわれる。この際、作業者は、測量用ターゲット160の位置を微妙に調整し、予め定められた(図面上で定められた)杭打ち点を特定する。
【0029】
通常、杭打ち点が多数あり、各点において上記の作業が繰り返して行なわれる。ところで、TS300の機能として、反射プリズム100を自動追尾するものがある。この機能では、作業者が測量用ターゲット160を持って移動する際に、反射プリズム100をTS300が追跡する。この場合、TS300が測位した反射プリズム100の位置情報を作業者が手にする端末(スマートフォンやタブレット等)に送ることで、次に杭打ちを行う位置を作業者が把握し易くなり、杭打ちの作業効率を高めることができる。
【0030】
上記のTS300による反射プリズム100の追跡の際、作業者によって運ばれる測量用ターゲット160が
図6に示すように傾く場合がある。また、作業者も追尾が途切れないように注意して運搬する必要があった。このような場合でも反射プリズム100は、上方からの入射光に対しても対応が可能であるので、TS300による追尾および測位が途切れることなく行われる。
【0031】
仮に、
図1のコーナーキューブ107(あるいは
図4のコーナーキューブ121)がない場合、上方向からの入射光に対応できない範囲が生じるので、
図6のような状況でTSによる反射プリズムの追尾および測位ができなくなる場合がある。
【0032】
(応用例3)
図7には、TS300から見て、俯角の方向にある反射プリズム100の測位をTS300により行う場合が示されている。例えば、高い場所から見下ろす形で測量を行う場合に
図7の状態となる。この場合、
図1に示す向きで使用される反射プリズム100は、コーナーキューブ107があることで、上方からの追尾光および測位光に対応できる。したがって、
図7に示すようなTS300から見て俯角の方向における測量にも対応できる。
【0033】
(その他)
反射プリズム100または130をカメラに固定した態様や地面に配置された反射ターゲットに適用した態様も可能である。
【0034】
隙間を有した状態で7つのコーナーキューブを組み合わせ、反射プリズム100や130を構成することも可能である。この場合、コーナープリズム間の隙間は充填剤で埋める。また、枠を用意し、そこにコーナーキューブを嵌め込んで反射プリズムを構成することもできる。
【0035】
(むすび)
反射プリズム100は、一面が透過面で他の面の内側が反射面である三角錐形状を有したコーナーキューブ101~107を7個組み合わせた構造を有し、前記透過面を外側として、前記透過面の三角形状の上下を交互に組み合わせた状態で軸回りに配置された6個のコーナーキューブ101~106と、前記6個のコーナーキューブ101~106の上部に形成された略三角錐形状の窪み111に嵌め込まれたコーナーキューブ107とを備えている。
【0036】
この構造によれば、軸方向の一方に向いたコーナーキューブ107があるので、7個という最小限の数のコーナーキューブの使用で、軸方向に垂直な全周方向(360°)の範囲に加えて、軸方向の一方からの入射光にも対応できる。このため、最小限の数のコーナーキューブを使用で、広範囲な方向からの入射光に対応できる測量用の反射プリズムが得られる。
【0037】
また上記の構造は、反射中心の位置を揃え易く、入射方向の違いによる反射中心位置のズレを最小限に抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、測量に利用される反射プリズムに適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
100…反射プリズム、101…コーナーキューブ、102…コーナーキューブ、103…コーナーキューブ、104…コーナーキューブ、105…コーナーキューブ、106…コーナーキューブ、107…コーナーキューブ、107a…透過面、110…コーナーキューブ集合体、120…コーナーキューブ集合体、121…コーナーキューブ、130…反射プリズム、200…UAV、300…TS(トータルステーション)、150…棒状の支持部材、160…測量用ターゲット。