(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】ミキサ車の作業状態判定システム
(51)【国際特許分類】
B60P 3/16 20060101AFI20220224BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20220224BHJP
G08G 1/127 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
B60P3/16 Z
G08G1/00 D
G08G1/127 B
(21)【出願番号】P 2018041657
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良光
(72)【発明者】
【氏名】小森 幸徳
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-272590(JP,A)
【文献】特開2003-242591(JP,A)
【文献】特開2003-346295(JP,A)
【文献】特開2006-240377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/16,
B28C 5/42,
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上に回転自在に搭載されたドラムに積載された積載物を運搬するミキサ車の作業状態を判定する作業状態判定システムであって、
前記ドラムの回転状態を検出するドラム回転検出器と、
前記ドラムを回転駆動させる駆動力を検出する駆動力検出器と、
前記ドラム回転検出器及び前記駆動力検出器の検出結果に基づいて、前記ミキサ車の作業状態を判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記ミキサ車が停車している状態において、所定の検出期間内における前記ドラム回転検出器の検出値
の変動幅及び前記駆動力検出器の検出値に基づいて、前記ドラム内に積載物が投入され前記ミキサ車が配送状態になったか否かを判定することを特徴とするミキサ車の作業状態判定システム。
【請求項2】
前記判定部は、所定の第1検出期間内における前記駆動力検出器の検出値の変動幅が予め設定された閾値以上であり、且つ、前記第1検出期間内における前記ドラム回転検出器の検出値の変動幅が予め設定された閾値以下であることが検出されたとき、前記ドラム内に積載物が投入され前記ミキサ車が前記配送状態になったと判定することを特徴とする請求項1に記載のミキサ車の作業状態判定システム。
【請求項3】
前記ミキサ車の車両位置を検出する車両位置検出器をさらに備え、
前記判定部は、
前記ドラム回転検出器により検出される前記ドラムの回転方向が正回転から逆回転に変化したとき、前記ミキサ車が打設状態にあると判定し、
前記車両位置検出器により検出される前記ミキサ車の検出位置が、前記打設状態と判定したときに前記車両位置検出器により検出された検出位置から、予め設定された所定の距離以上離れた場合に前記ミキサ車が帰路状態にあると判定することを特徴とする請求項1または2に記載のミキサ車の作業状態判定システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記ミキサ車が前記帰路状態にあると判定した後、前記車両位置検出器により検出される前記ミキサ車の検出位置が、前記配送状態になったと判定したときに前記車両位置検出器により検出された検出位置に対して、予め設定された所定の距離以内となった場合に待機状態にあると判定することを特徴とする請求項3に記載のミキサ車の作業状態判定システム。
【請求項5】
前記ミキサ車の車両位置を検出する車両位置検出器をさらに備え、
前記判定部は、前記配送状態になったと判定したときに前記車両位置検出器により検出された検出位置から前記ミキサ車に前記積載物を投入した投入施設を特定し、前記投入施設にのみ前記ミキサ車の作業状態を送信することを特徴とする請求項1または2に記載のミキサ車の作業状態判定システム。
【請求項6】
前記ミキサ車は、前記ドラムを回転駆動させる液圧モータを有し、
前記駆動力検出器は、前記液圧モータに供給される作動流体の圧力を検出する圧力検出器であることを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載のミキサ車の作業状態判定システム。
【請求項7】
車両上に回転自在に搭載されたドラムに積載された積載物を運搬するミキサ車の作業状態を判定する作業状態判定システムであって、
前記ドラムの回転状態を検出するドラム回転検出器と、
前記ドラムを回転駆動させる駆動力を検出する駆動力検出器と、
前記ドラム回転検出器及び前記駆動力検出器の検出結果に基づいて、前記ミキサ車の作
業状態を判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記ミキサ車が停車している状態において、所定の第2検出期間内における前記ドラム回転検出器の検出値が予め設定された閾値以下であり、且つ、前記第2検出期間内における前記駆動力検出器の検出値が予め設定された閾値以下であることが検出された後、所定の第3検出期間内における前記ドラム回転検出器の検出値が予め設定された閾値以下であり、且つ、前記第3検出期間内における前記駆動力検出器の検出値が予め設定された閾値以上であることが検出されたとき、前記ドラム内に積載物が投入され前記ミキサ車が配送状態になったと判定することを特徴とするミキサ車の作業状態判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサ車の作業状態を判定する作業状態判定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドラムの回転を検出する回転センサと、ミキサ車の荷重を検出する荷重センサと、運転手に操作される状態スイッチと、を備えたミキサ車の作業状態判定システムが開示されている。この作業状態判定システムは、回転センサ、荷重センサ及び状態スイッチの出力値に基づいて、ミキサ車の作業状態を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のミキサ車の作業状態判定システムでは、ドラム内に生コンクリート等の積載物が積載されたか否かが、ドラムの荷重を検出する荷重センサの検出値に基づいて判定される。一般的に荷重センサは振動の影響を受けやすいため、特許文献1に記載の荷重センサのように車両に搭載されているものにおいては、車両の振動等によって荷重センサの検出値が変動するおそれがある。このように荷重センサの検出値が変動すると、ドラム内に積載物が積載されたか否かを正確に判定することが困難となるため、結果としてミキサ車の作業状態を正確に判定することができなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ミキサ車の作業状態を正確に判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、ミキサ車の作業状態を判定する作業状態判定システムが、ドラムの回転状態を検出するドラム回転検出器と、ドラムを回転駆動させる駆動力を検出する駆動力検出器と、ドラム回転検出器及び駆動力検出器の検出結果に基づいて、ミキサ車の作業状態を判定する判定部と、を備え、判定部は、ミキサ車が停車している状態において、所定の検出期間内におけるドラム回転検出器の検出値の変動幅及び駆動力検出器の検出値に基づいて、ドラム内に積載物が投入されミキサ車が配送状態になったか否かを判定することを特徴とする。
【0007】
第1の発明では、ミキサ車が配送状態になったか否かの判定が、所定の検出期間内におけるドラム回転検出器の検出値の変動幅及び駆動力検出器の検出値に基づいて行われる。このように、車両の振動等の影響を受けにくい駆動力が判定に用いられるため、ミキサ車が配送状態になったか否かを正確に判定することができる。
【0008】
第2の発明は、判定部が、所定の第1検出期間内における駆動力検出器の検出値の変動幅が予め設定された閾値以上であり、且つ、第1検出期間内におけるドラム回転検出器の検出値の変動幅が予め設定された閾値以下であることが検出されたとき、ドラム内に積載物が投入されミキサ車が配送状態になったと判定することを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、ミキサ車が配送状態になったか否かの判定が、ドラムの回転数の変動が小さいときのみ行われる。このように、ドラムの回転数が変動し駆動力が変動する可能性がある場合には、判定が行われない。このため、ドラムの回転数が変動した際にミキサ車が配送状態になったと誤判定されることが防止される。この結果、ミキサ車が配送状態になったか否かを正確に判定することができる。
【0010】
第3の発明は、作業状態判定システムが、ミキサ車の車両位置を検出する車両位置検出器をさらに備え、判定部は、ドラム回転検出器により検出されるドラムの回転方向が正回転から逆回転に変化したとき、ミキサ車が、打設状態にあると判定し、車両位置検出器により検出されるミキサ車の検出位置が、打設状態と判定したときに車両位置検出器により検出された検出位置から、予め設定された所定の距離以上離れた場合にミキサ車が帰路状態にあると判定することを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、ドラムの回転方向に基づいて、ミキサ車が打設状態にあるか否かが判定され、その後、車両の位置の変化に基づいて、ミキサ車が帰路状態にあるか否かが判定される。このため、ミキサ車が打設状態または帰路状態にあるかを正確に判定することができる。
【0012】
第4の発明は、判定部が、ミキサ車が帰路状態にあると判定した後、車両位置検出器により検出されるミキサ車の検出位置が、配送状態になったと判定したときに車両位置検出器により検出された検出位置に対して、予め設定された所定の距離以内となった場合に待機状態にあると判定することを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、車両の位置の変化に基づいて、ミキサ車が待機状態にあるか否かが判定される。このため、ミキサ車が待機状態にあるか否かを正確に判定することができる。
【0014】
第5の発明は、作業状態判定システムが、ミキサ車の車両位置を検出する車両位置検出器をさらに備え、判定部は、配送状態になったと判定したときに車両位置検出器により検出された検出位置からミキサ車に積載物を投入した投入施設を特定し、投入施設にのみミキサ車の作業状態を送信することを特徴とする。
【0015】
第5の発明では、ミキサ車の作業状態が、ミキサ車に積載物を投入した投入施設にのみ送信される。このため、ミキサ車が、一時的に投入施設に属して作業を行うような車両であっても、投入施設では、当該車両の作業状態を、運転手からの報告を受けずとも管理することができる。
【0016】
第6の発明は、ミキサ車が、ドラムを回転駆動させる液圧モータを有し、駆動力検出器が、液圧モータに供給される作動流体の圧力を検出する圧力検出器であることを特徴とする。
【0017】
第6の発明では、ドラムを回転駆動させる駆動力を検出する検出器として、液圧モータに供給される作動流体の圧力を検出する圧力検出器が用いられる。このように、液圧モータに供給される作動流体の圧力を検出する圧力検出器を設けることによってドラムを回転駆動させる駆動力に相当する値を容易に検出することができる。
【0018】
第7の発明は、ミキサ車の作業状態を判定する作業状態判定システムが、ドラムの回転状態を検出するドラム回転検出器と、ドラムを回転駆動させる駆動力を検出する駆動力検出器と、ドラム回転検出器及び駆動力検出器の検出結果に基づいて、ミキサ車の作業状態を判定する判定部と、を備え、判定部は、ミキサ車が停車している状態において、所定の第2検出期間内におけるドラム回転検出器の検出値が予め設定された閾値以下であり、且つ、第2検出期間内における駆動力検出器の検出値が予め設定された閾値以下であることが検出された後、所定の第3検出期間内におけるドラム回転検出器の検出値が予め設定された閾値以下であり、且つ、第3検出期間内における駆動力検出器の検出値が予め設定された閾値以上であることが検出されたとき、ドラム内に積載物が投入されミキサ車が配送状態になったと判定することを特徴とする。
【0019】
第7の発明では、ミキサ車が配送状態になったか否かの判定が、ドラム内に積載物が投入される前後において生じる駆動力の変化に基づいて行われる。このため、ドラム内に積載物を投入する際にドラムの回転数が変動したとしても、ミキサ車が配送状態になったか否かを正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ミキサ車の作業状態を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る作業状態判定システムにより作業状態が判定されるミキサ車の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る作業状態判定システムの概略構成を説明するための構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る作業状態判定システムのブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る作業状態判定システムによって実行される制御手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る作業状態判定システムにおいて、ミキサ車への積載物の投入を判定する方法について説明するためのグラフである。
【
図6】ミキサ車への積載物の投入の有無を判定する手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態に係る作業状態判定システムにおいて、ミキサ車への積載物の投入を判定する別の方法について説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るミキサ車の作業状態判定システムについて説明する。
【0023】
まず、
図1を参照して、作業状態判定システム100により作業状態が判定されるミキサ車10の構成について説明する。
【0024】
ミキサ車10は、ミキサドラム2内に投入されたモルタルやレディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリート(以下、「生コン」と称する。)を運搬する車両である。以下の説明では、ミキサ車10が積載物として生コンを積載する場合について説明する。
【0025】
図1に示すように、ミキサ車10は、車両の前後方向に延びる架台1と、架台1上に回転自在に搭載されるミキサドラム2と、ミキサドラム2を回転駆動するドラム駆動装置7と、外部から投入される生コンをミキサドラム2内へと導くホッパー4と、ミキサドラム2から排出される生コンを所定位置に誘導するシュート5と、を備える。
【0026】
ミキサドラム2は、回転軸C1を中心として回転する両端部の外径よりも中央部の外径が大きい樽状容器であり、車両後方側の後端部には生コンの投入と排出とが行われる開口部2aが設けられ、車両前方側の前端部には回転軸C1に沿って外部に向かって延在する駆動軸9が設けられる。ミキサドラム2は、開口部2aが設けられる後端部側が前端部側よりも上方に持ち上げられた状態で架台1に支持される。
【0027】
ミキサドラム2の駆動軸9は、ドラム駆動装置7内に設けられる液圧モータとしての油圧モータ13にギアボックス(図示省略)を介して連結される。このため、ミキサドラム2は、油圧モータ13によって正回転方向又は逆回転方向に回転駆動される。
【0028】
油圧モータ13には、油圧モータ13に供給される作動油の圧力を検出する駆動力検出器としての圧力センサ14が設けられる。油圧モータ13に供給される作動油の圧力は、ミキサドラム2を回転駆動させるために要する駆動トルクの大きさによって変化することから、圧力センサ14により検出される検出値からミキサドラム2の駆動力を推定することができる。なお、圧力センサ14は、油圧モータ13に供給される作動油の圧力、すなわち、図示しない油圧ポンプから図示しない配管を通じて油圧モータ13に供給される作動油の圧力を検出することができれば、何処に設けられていてもよい。
【0029】
また、駆動軸9の外周側には、駆動軸9の回転方向及び回転数を検出可能なドラム回転検出器としての回転センサ12が設けられる。なお、回転センサ12は、駆動軸9に連動して回転するギアボックス内の伝達軸や油圧モータ13の出力軸の回転方向及び回転数を検出するものであってもよい。
【0030】
ミキサドラム2内には、一対のブレード3a,3bがミキサドラム2の内壁面に沿って螺旋状に配設されている。一対のブレード3a,3bがミキサドラム2とともに回転することによって、ミキサドラム2内に投入された生コンの攪拌等が行われる。
【0031】
ミキサドラム2が車両後方から見て左回転である正回転方向に回転駆動されると、ブレード3a,3bは、ミキサドラム2内の生コンを攪拌しながらミキサドラム2の前方へと移動させる。一方、ミキサドラム2が逆回転方向に回転駆動されると、ブレード3a,3bは、生コンを攪拌しながらミキサドラム2の後方へと移動させる。このようにミキサドラム2を逆回転させることで、ミキサドラム2の開口部2aから生コンを排出させることができる。ミキサドラム2の開口部2aから排出された生コンは、シュート5を介して所定位置に誘導される。
【0032】
また、ミキサ車10は、車両位置を検出する車両位置検出器としてのGPS受信センサ11と、ミキサ車10で得られた情報を無線により外部へ送信する送信部15と、をさらに備える。GPS受信センサ11は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System)から現在の車両の位置情報を受信する測位センサである。送信部15は、Wi-Fi(登録商標)等の無線LANや第三世代移動通信(3G)等の携帯電話通信網を利用し、GPS受信センサ11で受信された車両の位置や回転センサ12の検出値、圧力センサ14の検出値等のデータを外部へ送信する送信機である。なお、車両位置検出器としては、GPSを利用するものに限定されず、他の測位システムを利用するものであってもよい。
【0033】
次に、
図2及び
図3を参照し、ミキサ車10の作業状態を判定する作業状態判定システム100の構成について説明する。
【0034】
作業状態判定システム100は、上述の構成を備えた複数のミキサ車10A~10Eと、ミキサ車10A~10Eから送信されたデータを受信する車両管理センター20と、から構成される。
【0035】
図2に示すように、ミキサ車10A~10Eは、投入施設としてのコンクリート工場30にてミキサドラム2内に生コンが投入されると、打設現場へと移動しミキサドラム2内の生コンを排出する。そして、生コンを排出した後、ミキサ車10A~10Eは、コンクリート工場30へと戻る。ミキサ車10A~10Eは、これらの作業の間、常時、車両で取得された情報を車両管理センター20へと送信する。
【0036】
車両管理センター20では、ミキサ車10A~10Eから送信されたデータに基づき、各ミキサ車10A~10Eがどのような作業状態にあるかが判定される。具体的には、車両管理センター20では、ミキサ車10A~10Eがコンクリート工場30にて生コンが投入され打設現場へ生コンを配送可能な配送状態となったか否か、打設現場で生コンを排出する打設状態であるか否か、生コンの排出が終わりコンクリート工場30等へ戻る帰路状態であるか否か、コンクリート工場30へ戻り待機している待機状態であるか否か、が判定される。車両管理センター20で判定された結果は、車両管理センター20からコンクリート工場30へと送信される。
【0037】
車両管理センター20において各ミキサ車10A~10Eの作業状態を判定させるために、各ミキサ車10A~10Eは、
図3に示すように、上述のGPS受信センサ11、回転センサ12、圧力センサ14及び送信部15を備える。そして、GPS受信センサ11で検出された車両の現在位置情報と、ミキサドラム2の回転状態を示す回転センサ12の検出値と、ミキサドラム2の駆動力を示す圧力センサ14の検出値と、は、送信部15を介して車両管理センター20へと送信される。
【0038】
一方、車両管理センター20は、各ミキサ車10A~10Eから送信されたデータを受信する受信部22と、受信部22で受信された各ミキサ車10A~10Eに関するデータに基づき各ミキサ車10A~10Eがどのような状態にあるかを判定する判定部21と、判定部21での判定に用いられるデータが蓄積されたデータベース24と、判定部21で判定された結果を外部へ送信する送信部23と、を備える。
【0039】
判定部21は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。なお、判定部21は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0040】
データベース24には、地図データや、コンクリート工場30の所在地データ、判定部21において判定基準として用いられる閾値等が格納される。データベース24内のデータは適宜更新ないし変更可能である。
【0041】
判定部21で判定された結果は、送信部23を介して、各コンクリート工場30へと送信される。
図3に示すように、判定部21で判定された結果が送信されるのは、1つのコンクリート工場30だけでなく、複数のコンクリート工場30であってもよい。このように判定部21の判定結果は、複数のコンクリート工場30に対して送信可能であるため、判定部21は、後述のように、各ミキサ車10A~10Eが何れのコンクリート工場30に属して作業を行っているかの判定を行い、各ミキサ車10A~10Eが属するコンクリート工場30のみに判定結果を送信する。
【0042】
車両管理センター20からの情報を受け取るコンクリート工場30には、車両管理センター20から送信された情報を受信する受信部31と、受信部31で受信された情報を表示する表示部32と、が設けられる。コンクリート工場30の表示部32には、コンクリート工場30に属して作業を行うミキサ車10A~10Eの作業状態が表示される。コンクリート工場30では、各ミキサ車10A~10Eの作業状態を把握することで、効率的に打設現場へ生コンを配送することが可能となる。なお、送信部23から受信部31への情報の送信は、無線で行われてもよいし電話回線等を利用した有線で行われてもよい。
【0043】
次に、
図4のフローチャートを参照して、車両管理センター20の判定部21によってミキサ車10の作業状態が判定される手順について説明する。
図4に示される判定手順は、判定部21によって所定の時間毎(例えば数秒毎)に繰り返し実行される。
【0044】
判定部21は、ミキサ車10から送信されたデータに基づき、ミキサ車10が「配送状態」、「打設状態」、「帰路状態」及び「待機状態」の何れの作業状態にあるかを随時判定する。「配送状態」とは、コンクリート工場30にてミキサドラム2内に生コンが投入され、ミキサ車10が、打設現場へ生コンを配送可能な状態にあることを意味し、「打設状態」とは、ミキサ車10が、打設現場で生コンを排出している状態にあることを意味し、「帰路状態」とは、ミキサ車10が、打設現場での生コンの排出を終了し、コンクリート工場30または駐車場へ戻る帰路にあることを意味し、「待機状態」とは、ミキサ車10が、コンクリート工場30で生コンの投入を待っている状態にあることを意味する。
【0045】
まず、ステップS11において、判定対象となるミキサ車10(以下、「判定対象車両」という。)が、何れかのコンクリート工場30にてミキサドラム2内に生コンが投入され配送状態になったか否かが判定される。
【0046】
ここで、
図5に示されるグラフを参照し、ミキサドラム2内へ生コンが投入されたか否かを判定する方法について説明する。
図5には、ミキサドラム2内への生コン投入前後における圧力センサ14により検出される作動油の圧力の時間変化とミキサドラム2の回転数の時間変化とが示されている。
【0047】
ミキサドラム2内に生コンが投入されると、ミキサドラム2を回転駆動させるために要する駆動トルクは、ミキサドラム2内に生コンが積載されていない状態に比べて大きくなる。ミキサドラム2を回転駆動させる駆動トルクが上昇すると、油圧モータ13に供給される作動油の圧力も上昇するため、圧力センサ14により検出される値も、
図5に示されるように、ミキサドラム2内への生コンの投入とともに上昇する。このため、所定の第1検出期間T1内における圧力センサ14の検出油圧値の変動幅ΔPの大きさが、予め設定された第1閾値P1以上となったときに、判定対象車両のミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定することが可能である。
【0048】
ここで変動幅ΔPは、上昇幅であり、所定の第1検出期間T1内における最大値から、最大値よりも前に検出された最小値を差し引くことにより常時算出される。また、第1閾値P1は、ミキサドラム2内に生コンが投入されたときの駆動トルクの変化が小さい場合であっても、ミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定されるように設定される。具体的には、生コンの投入量が少量でありスランプ値が比較的柔らかい場合、駆動トルクの変化は最も小さくなると考えられる。このため、第1閾値P1は、スランプ値が日本工業規格(JIS)等で規定されるものであって一般的に流通する生コンの中で最も柔らかい値(例えば、21cm)であり、投入量が一般的に取引される生コン量の最小単位量(例えば、0.5m3)である場合であってもミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定されるように設定される。
【0049】
一方で、ミキサドラム2を回転駆動させるために要する駆動トルクは、ミキサドラム2内へ生コンを投入する時以外に、ミキサドラム2の回転速度を比較的大きく変化させた時にも変動する。つまり、圧力センサ14により検出される値は、ミキサドラム2内へ生コンが投入された時だけではなく、ミキサドラム2の回転速度を比較的大きく変化させた際にも変動するため、圧力センサ14の検出油圧値の変動幅ΔPの大きさのみに基づいて判定対象車両のミキサドラム2内へ生コンが投入されたか否かを判定すると、誤判定を招くおそれがある。
【0050】
このため、判定部21は、ミキサドラム2の回転速度の変化に起因する誤判定を防止するために、所定の第1検出期間T1内における回転センサ12の検出回転数の変動幅ΔNが、予め設定された第2閾値N1以下であることを条件として、変動幅ΔPの大きさが第1閾値P1以上となった場合に、ミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定する。ここで、変動幅ΔNは、所定の第1検出期間T1内における最大値から最小値を差し引くことにより常時算出される。これにより、判定部21が、ミキサドラム2の回転速度の変化による駆動トルクの変化によってミキサドラム2内へ生コンが投入されたと誤判定してしまうことが防止される。なお、第2閾値N1は、ミキサドラム2内へ生コンが通常投入される際のミキサドラム2の回転速度の変動幅よりも大きい値に設定される。
【0051】
また、配送中などに生コンが積載されたミキサドラム2を比較的ゆっくり回転させると、一対のブレード3a,3bによりミキサドラム2内の生コンが撹拌されるため、ミキサドラム2を1回転させる毎に2回の駆動トルクの変動が生じ得る。このトルク変動は、ブレード3a,3bによりミキサドラム2の内周面に沿って持ち上げられた生コンが、ミキサドラム2の内周面に沿って滑り落ちることで生じる。また、この時のトルク変動の大きさは、スランプ値が小さく、比較的固い生コンの方が大きくなる。
【0052】
このようなトルク変動に起因する誤判定を防止するために、第1検出期間T1の長さは、撹拌時に生じるトルク変動の周期よりも短く設定される。例えば、60秒間に2回の駆動トルクの変動があるとすると、第1検出期間T1の長さは、30秒よりも短くすることが好ましい。一方で、第1検出期間T1の長さを短くし過ぎると、ミキサドラム2内への生コンの投入がゆっくり行われた場合のように、生コンの投入による駆動トルクの変化が遅いと駆動トルクの上昇を捉えられないおそれがある。このため、第1検出期間T1の長さは、これらを勘案して設定される。このように第1検出期間T1の長さが適正な値に設定されることで、判定部21が、生コンの撹拌による駆動トルクの変化によってミキサドラム2内へ生コンが投入されたと誤判定してしまうことが防止される。
【0053】
なお、判定部21は、判定対象車両が停車している状態であること、例えば、車速センサの検出値がゼロになっていることやパーキングブレーキがオンになっていること、GPS受信センサ11で受信された車両位置に変化がないことが検知された場合に、ミキサドラム2内へ生コンが投入されたか否かの判定を行う。また、当然ながら、判定部21は、ミキサドラム2が打設状態にないこと、すなわち、回転センサ12の検出結果からミキサドラム2が車両後方から見て左回転である正回転方向に回転駆動されていると判定される場合に、ミキサドラム2内へ生コンが投入されたか否かの判定を行う。
【0054】
上述の判定方法では、所定の第1検出期間T1内における回転センサ12の検出回転数の変動幅ΔNが予め設定された第2閾値N1以下であることを条件としている。このため、例えば、生コンの投入と同時にミキサドラム2の回転数を上昇させる操作が行われた場合、ミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定されないおそれがある。このような判定ミスを防止し、生コンの投入の有無を確実に判定するために、上述の判定方法においてミキサドラム2内へ生コンが投入されていないと判定された場合には、後述の判定方法を引き続き行うことが好ましい。なお、ミキサドラム2内への生コンの投入の有無を判定する方法としては、上述の判定方法に代えて、後述の判定方法のみが行われてもよい。
【0055】
図6に示されるフローチャートと
図7に示されるグラフとを参照し、上述の判定方法と、ミキサドラム2内へ生コンが投入されたか否かを判定する別の判定方法と、を組み合わせた判定方法について説明する。
【0056】
図6に示されるように、ミキサドラム2内へ生コンの投入の判定が開始されると、まずステップS31において、上述の判定方法によってミキサドラム2内へ生コンが投入されたか否かが判定される。具体的には、判定対象車両が停車しており、且つ、所定の第1検出期間T1内における回転センサ12の検出回転数の変動幅ΔNが、第2閾値N1以下であり、且つ、圧力センサ14により検出された油圧の変動幅ΔPの大きさが第1閾値P1以上である場合に、ミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定する。一方、何れか一方または両方の条件が満たされない場合、ステップS32に進み、以下の判定方法によってさらにミキサドラム2内へ生コンが投入されたか否かが判定される。
【0057】
上述の判定方法とは別の判定方法について、
図7に示されるグラフを参照して説明する。
図7には、ミキサドラム2内への生コン投入前後における圧力センサ14により検出される作動油の圧力の時間変化とミキサドラム2の回転数の時間変化とが示されている。
【0058】
ミキサドラム2内に生コンを投入する際には、ミキサドラム2に投入された生コンがミキサドラム2の前方へ移動するように、ミキサドラム2の回転数は比較的高い回転数に設定される。これに対して、生コンを投入する前と投入した後のミキサドラム2の回転数は、1rpm程度の比較的低い回転数に設定される。
【0059】
ここで、ミキサドラム2の回転数が比較的低い回転数に設定された状態において、ミキサドラム2を回転駆動させるために要する駆動トルクは、ミキサドラム2内に生コンが投入される前に比べて、ミキサドラム2内に生コンが投入された後の方が生コンの撹拌に要する分だけ当然に大きくなる。
【0060】
このため、判定部21は、ミキサドラム2が比較的低い回転数で回転していることを条件として、圧力センサ14の検出油圧値が大きく変化した場合にミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定する。具体的には、
図6のステップS32以降に示すように、ミキサドラム2が生コン投入前の状態であることが確認された後に、ミキサドラム2が生コン投入後の状態であることが確認されると、判定部21は、ミキサドラム2内へ生コンが投入された、すなわち、判定対象車両のミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定する。
【0061】
具体的には、ステップS32において、判定部21は、まず、ミキサドラム2が生コン投入前の状態であるか否か、すなわち、所定の第2検出期間T2内における回転センサ12の検出回転数Nが予め設定された第3閾値N2以下であり、且つ、第2検出期間T2内における圧力センサ14の検出圧力Pが予め設定された第4閾値P2以下となっているか否かが判定される。
【0062】
ステップS32においてミキサドラム2が生コン投入前の状態であると判定されると、ステップS33に進み、判定部21は、ミキサドラム2が生コン投入後の状態であるか否か、すなわち、所定の第3検出期間T3内における回転センサ12の検出回転数が予め設定された第3閾値N2以下であり、且つ、第3検出期間T3内における圧力センサ14の検出油圧値が第4閾値P2よりも大きい予め設定された第5閾値P3以上となっているか否かが判定される。
【0063】
ステップS33において、両方の条件が満たされると、判定部21は、ミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定する。一方、ステップS32またはステップS33において、何れか一方または両方の条件が満たされない場合、判定部21は、ミキサドラム2内へ生コンが投入されていないと判定する。
【0064】
なお、第3閾値N2は、ミキサドラム2内に生コンを投入しているときのミキサドラム2の回転数より明らかに低い回転数であり、具体的には1.5rpm程度に設定される。また、第4閾値P2は、ミキサドラム2が生コン投入前の状態において第3閾値N2以下の回転でミキサドラム2が回転しているときに油圧モータ13に供給される作動油の圧力をある程度上回る大きさであり、具体的な大きさは適宜設定される。第5閾値P3は、ミキサドラム2が生コン投入後の状態において第3閾値N2以下の回転でミキサドラム2が回転しているときに油圧モータ13に供給される作動油の圧力をある程度下回る大きさであって、第4閾値P2よりも大きい値であり、具体的な大きさは適宜設定される。
【0065】
このように、判定部21は、ミキサドラム2に生コンが投入される前後において生じる油圧モータ13に供給される作動油の圧力の変化から生コンの投入の有無を判定することで、生コンの投入と同時にミキサドラム2の回転数を上昇させる操作が行われた場合であっても生コンの投入の有無を確実に判定することが可能である。
【0066】
ステップS11において、判定対象車両のミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定された場合には、ステップS12に進み、生コンが投入されたと判定されなかった場合には、ステップS11において再び判定が行われる。ステップS11における判定は、判定対象車両のミキサドラム2内へ生コンが投入されたと判定されるまで継続される。
【0067】
ステップS12では、判定対象車両のGPS受信センサ11で受信された車両位置情報が取り込まれる。そして、現在の車両位置情報から判定対象車両に生コンを投入した投入施設としてのコンクリート工場30が特定される。なお、ステップS11において、判定対象車両が停車しているか否かが、GPS受信センサ11で受信された車両位置に基づいて判定された場合には、停車判定が行われる際に取り込まれた車両位置情報から判定対象車両に生コンを投入したコンクリート工場30が特定されてもよい。
【0068】
続くステップS13では、判定対象車両に生コンを投入しているコンクリート工場30へ判定対象車両が「配送状態」であることが送信される。これにより、コンクリート工場30では、判定対象車両が自工場に属して作業を行う車両であることが認識されるとともに、判定対象車両のミキサドラム2内に生コンが投入され、打設現場へ生コンを配送可能な「配送状態」にあることを確認することができる。これ以降、判定対象車両の作業状態は、別のコンクリート工場30で判定対象車両に生コンが投入されない限り、このコンクリート工場30にのみ送信される。なお、判定対象車両に生コンを投入したコンクリート工場30に判定対象車両の作業状態を送信することに代えて、判定対象車両の作業状態へのアクセス権限を当該コンクリート工場30に持たせるようにしてもよい。
【0069】
次にステップS14では、判定対象車両が、打設現場で生コンを排出している「打設状態」にあるか否かが判定される。具体的には、判定部21は、判定対象車両から送信される回転センサ12の検出結果からミキサドラム2が車両後方から見て右回転である逆回転方向に回転駆動されていると検知されると、判定対象車両が生コンを排出していると判定する。なお、ノイズ等によって瞬間的に回転センサ12の検出値が、ミキサドラム2が逆回転方向に回転駆動されているかのような値を示す場合にも生コンを排出していると判定されることを避けるため、所定の時間、例えば3秒以上継続してミキサドラム2が逆回転方向に回転駆動されていると検知された場合にのみ生コンを排出していると判定することが好ましい。
【0070】
ステップS14において、判定対象車両のミキサドラム2から生コンが排出されたと判定された場合には、ステップS15に進み、生コンが排出されたと判定されなかった場合には、ステップS14において再び判定が行われる。ステップS14における判定は、判定対象車両のミキサドラム2から生コンが排出されたと判定されるまで継続される。
【0071】
ステップS15では、判定対象車両のGPS受信センサ11で受信された車両位置情報が取り込まれる。そして、続くステップS16では、判定対象車両に生コンを投入したコンクリート工場30へ判定対象車両が「打設状態」であるという作業状態が送信されるとともに、判定対象車両のGPS受信センサ11で受信された車両位置情報が送信される。これにより、コンクリート工場30では、判定対象車両が何れの打設現場において現在「打設状態」であるかを容易に確認することができる。また、例えば、判定対象車両の位置を地図上に表示させることによって、判定対象車両が排出作業を行っている打設現場の位置を容易に把握することができる。
【0072】
次に、ステップS17では、「打設状態」と判定された車両の作業状態が、「帰路状態」に移行したか否かが判定される。具体的には、判定対象車両のGPS受信センサ11で受信された車両位置情報が、判定対象車両から車両管理センター20に送信され、車両管理センター20の判定部21において、判定対象車両の現在の車両位置が車両位置情報に基づいて判定される。そして、判定部21では、判定対象車両の現在の車両位置が、「打設状態」と判定されたときに取り込まれた車両位置、すなわち、打設現場の位置からどの程度離れたかが算出される。そして、算出された車両の移動距離が所定の距離D2(例えば、200m)以上離れた場合、判定部21は、車両が打設現場を離れたと判定し、ステップS18へと進む。
【0073】
一方、車両の移動距離が所定の距離D2未満である場合には、判定部21は、車両がまだ生コンを排出中であるか、生コンの排出が完了した後も打設現場に留まり車両の洗浄等を行っていると判定し、車両の作業状態を「打設状態」に維持する。ステップS17における判定は、判定対象車両が打設現場から離れたと判定されるまで継続される。
【0074】
ステップS18では、判定対象車両に生コンを投入したコンクリート工場30へ判定対象車両が「帰路状態」であることが送信される。これにより、コンクリート工場30では、判定対象車両が、現在「帰路状態」であることが認識される。なお、この場合、判定対象車両のGPS受信センサ11で受信された車両位置情報もコンクリート工場30へ送信し、判定対象車両の走行軌跡を地図上に表示させてもよい。また、コンクリート工場30への帰路における渋滞情報を基にコンクリート工場30への到着予測時間を表示してもよい。
【0075】
続く、ステップS19では、「帰路状態」と判定された車両の作業状態が、「待機状態」に移行したか否かが判定される。具体的には、判定部21では、判定対象車両のGPS受信センサ11で受信された車両位置情報から判定される現在の車両位置が、「配送状態」と判定されたときに取り込まれた車両位置、すなわち、判定対象車両に生コンを投入したコンクリート工場30の位置にどの程度近づいたかが算出される。そして、算出された車両とコンクリート工場30との間の距離が所定の距離D3(例えば、200m)以内となった場合、判定部21は、車両がコンクリート工場30に到着したと判定し、ステップS20へと進む。
【0076】
一方、車両とコンクリート工場30との間の距離が所定の距離D3より離れている場合には、判定部21は、車両がまだ帰路にあると判定し、車両の作業状態を「帰路状態」に維持する。ステップS19における判定は、判定対象車両がコンクリート工場30に到着したと判定されるまで継続される。
【0077】
ステップS20では、判定対象車両に生コンを投入したコンクリート工場30へ判定対象車両が「待機状態」であることが送信される。これにより、コンクリート工場30では、判定対象車両が、コンクリート工場30内において、現在「待機状態」、すなわち、生コンを積載可能な状態にあることが認識される。
【0078】
ステップS20での処理が終了すると判定部21は、判定対象車両の作業状態の判定を一端終了する。
【0079】
このように、判定部21では、運転手による状態スイッチ等の操作に基づくことなく、各ミキサ車10から送信される情報のみに基づき、各ミキサ車10がどのような作業状態にあるかが常に正確に判定され、更新される。
【0080】
なお、例えば判定対象車両が「帰路状態」であるときに、別のコンクリート工場30において判定対象車両に生コンが投入されたことが判定されると、それまで判定対象車両の作業状態が送信されていたコンクリート工場30への送信リストから当該車両が除外され、それ以降は、別のコンクリート工場30に判定対象車両の作業状態の送信が行われることとなる。つまり、各コンクリート工場30では、庸車のように一時的にコンクリート工場30に属して作業を行う車両の作業状態について、運転手からの報告を受けずとも適切に管理することができる。
【0081】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0082】
作業状態判定システム100では、コンクリート工場30にてミキサドラム2内に生コンが投入され、ミキサ車10が、打設現場へ生コンを配送可能な配送状態になったか否かの判定が、ミキサ車10が停車している状態において、ミキサドラム2の回転数と、ミキサドラム2を回転駆動させる駆動力と、に基づいて行われる。このように、ミキサドラム2の重量のように車両の振動によって変動する値ではなく、車両の振動等の影響を受けにくい駆動力が判定に用いられるため、ミキサ車10に生コンが投入されたか否かを正確に判定することができる。
【0083】
また、作業状態判定システム100では、GPS受信センサ11、回転センサ12及び圧力センサ14の検出結果に基づいて、ミキサ車10が、生コンを配送可能な配送状態にあるか否か、及び、ミキサドラム2から生コンを排出する打設状態にあるか否かが判定される。このように、作業状態判定システム100では、運転手によって操作される状態スイッチ等の出力を参照せずとも、ミキサ車10が一連の作業のうちのどの作業状態にあるかを正確に判定することができる。
【0084】
また、作業状態判定システム100では、ミキサ車10の作業状態が、ミキサ車10に生コンを投入したコンクリート工場30にのみ送信される。このため、ミキサ車10が、一時的にコンクリート工場30に属して作業を行うような車両であっても、コンクリート工場30では、車両及び車両に積載された生コンの状態を、運転手からの報告を受けずとも適切に管理することができる。また、車両及び車両に積載された生コンの情報が、運転手を介することなく、コンクリート工場30において一括管理されるため、情報セキュリティを向上させることができる。
【0085】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0086】
上記実施形態では、ミキサ車10の作業状態は、車両管理センター20に設けられた判定部21によって判定される。これに代えて、各ミキサ車10に判定部21を設け、ミキサ車10自体において作業状態を判定し、判定された作業状態を車両管理センター20またはコンクリート工場30に送信する構成としてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、ミキサ車10の作業状態は、コンクリート工場30にのみ送信される。これに代えて、ミキサ車10の運転席にも判定された作業状態を表示してもよい。このように運転手に作業状態を認識させることで、運転手によって操作される状態スイッチ等がある場合は、その操作忘れを防止することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、ミキサ車10が、「配送状態」、「打設状態」、「帰路状態」及び「待機状態」の何れの作業状態にあるかが判定される。作業状態としては、これらに限定されず、ミキサドラム2を洗浄している状態である「洗浄中」や生コンを排出する前に混練している状態である「混練中」、休憩等のために停車している状態である「停車中」などが判定されてもよい。例えば「洗浄中」は、洗浄のために比較的短い周期でミキサドラム2を正転と逆転とを繰り返した場合に判定され、「混練中」は、ミキサドラム2を正転方向に一時的に高速回転した場合に判定され、「停車中」は、比較的長時間にわたってパーキングブレーキがオンに維持された場合に判定される。
【0089】
また、上記実施形態では、「配送状態」と判定されてから「打設状態」と判定されるまでの間、車両の状態は判定されないが、例えば、
図4のステップ13とステップ14との間において、「配送状態」と判定された車両の作業状態が、打設現場へ移動する「移動状態」に移行したか否かが判定されてもよい。
【0090】
具体的には、「配送状態」と判定された判定対象車両のGPS受信センサ11で受信された車両位置情報が、判定対象車両から車両管理センター20へと随時送信され、車両管理センター20の判定部21において、判定対象車両の現在の車両位置が、「配送状態」と判定されたときに取り込まれた車両位置、すなわち、判定対象車両に生コンを投入したコンクリート工場30の位置からどの程度離れたかが算出される。
【0091】
そして、算出された車両の移動距離が所定の距離D1(例えば、200m)以上離れた場合、判定部21は、車両が打設現場へ向かっていると判定し、車両の移動距離が所定の距離D1未満である場合には、車両がまだ生コンを投入中であるか、生コンの投入が完了した後もコンクリート工場30内に留まっていると判定する。なお、この場合、判定対象車両のGPS受信センサ11で受信された車両位置情報をコンクリート工場30へ送信し、判定対象車両の位置を地図上に表示させてもよい。また、コンクリート工場30から打設現場へ向かう道路の渋滞情報を基に打設現場への到着予測時間を表示してもよい。
【0092】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0093】
作業状態判定システム100は、ミキサ車10のミキサドラム2の回転状態を検出する回転センサ12と、ミキサ車10のミキサドラム2を回転駆動させる駆動力を検出する圧力センサ14と、回転センサ12及び圧力センサ14の検出結果に基づいて、ミキサ車10の作業状態を判定する判定部21と、を備え、判定部21は、ミキサ車10が停車している状態において、所定の検出期間内における回転センサ12の検出値及び圧力センサ14の検出値に基づいて、ミキサドラム2内に生コンが投入されミキサ車10が配送状態になったか否かを判定する。
【0094】
この構成では、ミキサ車10が配送状態になったか否かの判定が、ミキサドラム2の回転数と、ミキサドラム2を回転駆動させる駆動力と、に基づいて行われる。このように、ミキサドラム2の重量のように車両の振動によって変動する値ではなく、車両の振動等の影響を受けにくい駆動力が判定に用いられるため、ミキサ車10が配送状態になったか否かを正確に判定することができる。
【0095】
また、判定部21は、所定の第1検出期間T1内における圧力センサ14の検出値の変動幅ΔPが予め設定された第1閾値P1以上であり、且つ、第1検出期間T1内における回転センサ12の検出値の変動幅ΔNが予め設定された第2閾値N1以下であることが検出されたとき、ミキサドラム2内に生コンが投入されミキサ車10が配送状態になったと判定する。
【0096】
この構成では、ミキサ車10が配送状態になったか否かの判定が、ミキサドラム2の回転数の変動が小さいときのみ行われる。このように、ミキサドラム2の回転数が変動しミキサドラム2を回転駆動させる駆動力が変動する可能性がある場合には、判定が行われない。このため、ミキサドラム2の回転数が変動した際にミキサ車10が配送状態になったと誤判定されることが防止される。この結果、ミキサ車10が配送状態になったか否かを正確に判定することができる。
【0097】
また、作業状態判定システム100は、車両位置を検出するGPS受信センサ11をさらに備え、判定部21は、回転センサ12により検出されるミキサドラム2の回転方向が正回転から逆回転に変化したとき、ミキサ車10が打設状態にあると判定し、GPS受信センサ11により検出されるミキサ車10の検出位置が、打設状態と判定したときにGPS受信センサ11により検出された検出位置から、予め設定された所定の距離D2以上離れた場合にミキサ車10が帰路状態にあると判定する。
【0098】
この構成では、ミキサドラム2の回転方向に基づいて、ミキサ車10が打設状態にあるか否かが判定され、その後、車両の位置の変化に基づいて、ミキサ車10が帰路状態にあるか否かが判定される。このため、運転手が状態スイッチ等の操作を忘れてしまっても、ミキサ車10が打設状態または帰路状態にあるかを正確に判定することができる。
【0099】
また、判定部21は、ミキサ車10が帰路状態にあると判定した後、GPS受信センサ11により検出されるミキサ車10の検出位置が、配送状態になったと判定したときにGPS受信センサ11により検出された検出位置に対して、予め設定された所定の距離D3以内となった場合に待機状態にあると判定する。
【0100】
この構成では、車両の位置の変化に基づいて、ミキサ車10が待機状態にあるか否かが判定される。このため、運転手が状態スイッチ等の操作を忘れてしまっても、ミキサ車10が待機状態にあるか否かを正確に判定することができる。
【0101】
また、作業状態判定システム100は、車両位置を検出するGPS受信センサ11をさらに備え、判定部21は、配送状態になったと判定したときにGPS受信センサ11により検出された検出位置からミキサ車10に生コンを投入したコンクリート工場30を特定し、このコンクリート工場30にのみミキサ車10の作業状態を送信する。
【0102】
この構成では、ミキサ車10の作業状態が、ミキサ車10に生コンを投入したコンクリート工場30にのみ送信される。このため、ミキサ車10が、一時的にコンクリート工場30に属して作業を行うような車両であっても、コンクリート工場30では、車両及び車両に積載された生コンの状態を、運転手からの報告を受けずとも適切に管理することができる。また、車両及び車両に積載された生コンの情報が、運転手を介することなく、コンクリート工場30において一括管理されるため、情報セキュリティを向上させることができる。
【0103】
また、ミキサ車10は、ミキサドラム2を回転駆動させる油圧モータ13を有し、駆動力検出器は、油圧モータ13に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ14である。
【0104】
この構成では、ミキサドラム2を回転駆動させる駆動力を検出するセンサとして、油圧モータ13に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ14が用いられる。このように、油圧モータ13に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ14を設けることによってミキサドラム2を回転駆動させる駆動力に相当する値を容易に検出することができる。
【0105】
また、作業状態判定システム100は、ミキサ車10のミキサドラム2の回転状態を検出する回転センサ12と、ミキサ車10のミキサドラム2を回転駆動させる駆動力を検出する圧力センサ14と、回転センサ12及び圧力センサ14の検出結果に基づいて、ミキサ車10の作業状態を判定する判定部21と、を備え、判定部21は、ミキサ車10が停車している状態において、所定の第2検出期間T2内における回転センサ12の検出値が予め設定された第3閾値N2以下であり、且つ、第2検出期間T2内における圧力センサ14の検出値が予め設定された第4閾値P2以下であることが検出された後、所定の第3検出期間T3内における回転センサ12の検出値が予め設定された第3閾値N2以下であり、且つ、第3検出期間T3内における圧力センサ14の検出値が予め設定された第5閾値P3以上であることが検出されたとき、ミキサドラム2内に生コンが投入されミキサ車10が配送状態になったと判定する。
【0106】
この構成では、ミキサ車10が配送状態になったか否かの判定が、ミキサドラム2の回転数と、ミキサドラム2を回転駆動させる駆動力と、に基づいて行われる。このように、ミキサドラム2の重量のように車両の振動によって変動する値ではなく、車両の振動等の影響を受けにくい駆動力が判定に用いられるため、ミキサ車10が配送状態になったか否かを正確に判定することができる。また、この構成では、ミキサ車10が配送状態になったか否かの判定が、ミキサドラム2内に生コンが投入される前後において生じるミキサドラム2を回転駆動させる駆動力の変化に基づいて行われる。このため、ミキサドラム2内に生コンを投入する際にミキサドラム2の回転数が変動したとしても、ミキサ車10が配送状態になったか否かを正確に判定することができる。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0108】
100・・・作業状態判定システム、10,10A~10E・・・ミキサ車、2・・・ミキサドラム(ドラム)、11・・・GPS受信センサ(車両位置検出器)、12・・・回転センサ(ドラム回転検出器)、13・・・油圧モータ(液圧モータ)、14・・・圧力センサ(駆動力検出器)、20・・・車両管理センター、21・・・判定部、30・・・コンクリート工場(投入施設)