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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】シール装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/02 20060101AFI20220224BHJP
   F16J 15/453 20060101ALI20220224BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20220224BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
F01D11/02
F16J15/453
F01D25/00 L
F02C7/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018072668
(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公開番号】P2019183690
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100199255
【氏名又は名称】伊藤 大幸
(72)【発明者】
【氏名】山路 達也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 徹
(72)【発明者】
【氏名】川口 善照
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025478(JP,A)
【文献】特開2011-089427(JP,A)
【文献】特開平01-247702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0058765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/02
F16J 15/453
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸流タービンの回転部材を取り囲む静止部材に設けられ、前記回転部材に対向して当該回転部材と前記静止部材との間における作動流体の漏洩を抑制するシール装置であって、 円環形状を成すように相互に接続される複数の弧状のシールセグメントと、
隣接する2つのシールセグメントの間に配置される少なくとも1つのカバーセグメントと、
前記カバーセグメントとこれに隣接する前記シールセグメントとの間に配置される少なくとも1つのシムと、を備えた、シール装置。
【請求項2】
前記カバーセグメントは、前記シムの側とは反対側の端面に、耐浸食層を有する、請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記カバーセグメントは、耐浸食性を有する材料で構成されている、請求項1に記載のシール装置。
【請求項4】
前記カバーセグメントは、隣接する前記2つのシールセグメントの間に2つずつ隣接して配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシール装置。
【請求項5】
前記カバーセグメントは、前記円環形状の周方向の2つの端面のうちの一方が、前記円環形状の中心を通る水平面上に位置する、請求項1~のいずれか一項に記載のシール装置。
【請求項6】
各シールセグメントは、前記円環形状の周方向の2つの端面のうちの少なくとも一方に、耐浸食層を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のシール装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのシムは、2つ以上のシムを含み、
各シムは、互いに異なる厚みを有する、請求項1~3及びのいずれか一項に記載のシール装置。
【請求項8】
前記カバーセグメント、前記少なくとも1つのシム及び前記シールセグメントをこの順序で固定する固定具を更に備えた、請求項1~4及びのいずれか一項に記載のシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、蒸気タービンなどの軸流タービンに利用されるシール装置に関する。あるいは、本発明の実施の形態は、そのようなシール装置を用いた軸流タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気タービンなどの軸流タービンの軸方向に作動流体が漏洩してしまうことを防止するため、軸流タービンのロータを取り囲む円環形状のシール装置が利用されている。このシール装置は、円環形状を成すように相互に連結される複数の弧状のシールセグメントに分割されている。そして、各セグメントを軸流タービンに設けられた取付溝に嵌め込むことにより、円環形状のシール装置が構成される。なお、シール装置の具体的な取り付け態様については、後述される。
【0003】
このようなシール装置に関し、従来、シールフィンの形状や、シール装置の刃先とロータとの対向部の径方向の間隙を調整する構造について、多くの提案がなされている。あるいは、シール装置とロータとの間に生じる旋回流に起因するロータの振動を抑制するために、旋回防止機構を有するシール装置も提案されている。
【0004】
ところで、各シールセグメントの組み付けの際、軸流タービンの運転時に当該シールセグメントとその取り付け部位との間に生じる周方向の熱伸び差を考慮して、周方向の間隙を微調整することが必要である。
【0005】
一般的に、シール装置は、軸流タービンの外部ケーシング、内部ケーシング、パッキンケーシング、パッキンヘッド及び、ノズル翼列のダイアフラムに取り付けられる。この際、軸流タービンを新設する場合には、工場において複数のシールセグメントを組み付けて、各シールセグメント間の周方向の間隙を計測し、次いで、各シールセグメントの端面を削整することにより間隙を調整するのが一般的である。あるいは、既設の軸流タービンにおいてシール装置を更新する場合には、現地にて、あるいは、外部ケーシング、内部ケーシング、パッキンケーシング、パッキンヘッド及び、ノズル翼列のダイアフラムを工場に搬入した上で、シールセグメントの端面を削整する必要がある。この場合、シール装置の取り付けのための現地作業あるいは工場作業が多く、また工場への輸送期間の確保により工事期間を短縮することが困難であった。
【0006】
更に、シール装置が複数のシールセグメントによって構成されているため、各シールセグメントの端面が、湿り蒸気により経年的に浸食されてしまう。この場合、隣接する2つのシールセグメント間に一定以上の間隙が生じ、作動流体が漏洩するおそれがある。このような浸食は、とりわけ、ロータの回転中心軸を通る水平面に面する端面で顕著である。
【0007】
このようなシールセグメントの端面の浸食を効果的に抑制するため、例えばシールセグメントの材質を耐浸食性の高い材料に変更することが考えられる。しかしながら、この場合、シールセグメントの製造コストが大きく増加してしまうおそれがある。したがって、シールセグメントの製造コストを大きく上昇させることなく、耐浸食性に優れたシール装置が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5449976号公報
【文献】特許第2877827号公報
【文献】特開昭58-143104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の事情に基づいて創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、シールセグメントの端面を削整することなく、軸流タービンへの最適な取り付けを実現することができるシール装置を提供することである。
【0010】
あるいは、本発明の目的は、軸流タービンを長期にわたって運転させても、シールセグメントの端面が浸食することを効果的に抑制することができるシール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施の形態によるシール装置は、軸流タービンの回転部材を取り囲む静止部材に設けられ、前記回転部材に対向して当該回転部材と前記静止部材との間における作動流体の漏洩を抑制するものであって、円環形状を成すように相互に接続される複数の弧状のシールセグメントと、隣接する2つのシールセグメントの間に配置される少なくとも1つのカバーセグメントと、これに隣接する前記シールセグメントとの間に配置される少なくとも1つのシムと、を備えている。
【0012】
また、実施の形態によるシール装置は、軸流タービンの回転部材を取り囲む静止部材に設けられ、前記回転部材に対向して当該回転部材と前記静止部材との間における作動流体の漏洩を抑制するものであって、円環形状を成すように相互に接続される複数の弧状のシールセグメントと、隣接する2つのシールセグメントの間に配置される少なくとも1つのカバーセグメントと、を備えている。カバーセグメントは、隣接する2つのシールセグメントのうち少なくとも一方の側の端面に、耐浸食層を有している。
【0013】
また、実施の形態によるシール装置は、軸流タービンの回転部材を取り囲む静止部材に設けられ、前記回転部材に対向して当該回転部材と前記静止部材との間における作動流体の漏洩を抑制するものであって、円環形状を成すように相互に接続される複数の弧状のシールセグメントと、隣接する2つのシールセグメントの間に配置される少なくとも1つのカバーセグメントと、を備えている。カバーセグメントは、耐浸食性を有する材料で構成されている。
【0014】
更に、以上のようなシール装置を備えた、軸流タービンも、本発明の範囲内である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施の形態によれば、シールセグメントの端面を削整することなく、軸流タービンへの最適な取り付けを実現することができるシール装置を提供することができる。
【0016】
また、本発明の実施の形態によれば、軸流タービンを長期にわたって運転させても、シールセグメントの端面が浸食することを効果的に抑制することができるシール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明によるシール装置が設置される軸流タービンを示す概略的な縦断面図である。
図2図1のうちシール装置の設置部位を示す拡大図である。
図3】本発明の一実施の形態によるシール装置を示す概略正面図である。
図4図3に示す分割面Aから分割面Fまでの区画を示す概略斜視図である。
図5図4において一点鎖線で囲まれた領域の構成を示す分解図である。
図6】本発明の第2の実施の形態によるシール装置を示す概略正面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態によるシール装置を示す概略正面図である。
図8図7に示す分割面Aから分割面Fまでの区画を示す概略斜視図である。
図9図1図7の変形例によるシール装置のシールセグメントとカバーセグメントとの連結構造を示す分解斜視図である。
図10】本発明の変形例によるシール装置に採用されるカバーセグメントを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によるシール装置の実施の形態について説明するに先だち、図1及び図2を参照して、当該シール装置が用いられる軸流タービンの一例について概説する。
【0019】
図1は、本発明によるシール装置40が設置される軸流タービン1を示す概略的な縦断面図であり、図2は、図1のうちシール装置40の設置部位を示す拡大図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、軸流タービン1は、回転部材としてのタービンロータ3と、このタービンロータ3を取り囲む静止部材であるノズルダイアフラム12を支持するケーシング2と、を備えている。ケーシング2は、内部ケーシング2aと、内部ケーシング2aの外側に設けられた外部ケーシング2bと、を有しており、二重構造のケーシングとなっている。ノズルダイアフラム12については、後述される。
【0021】
外部ケーシング2bには、供給管4が連結されており、蒸気や燃焼ガスなどの作動流体が、軸流タービン1に供給されるようになっている。軸流タービン1に供給された作動流体は、ケーシング2内に設けられたインレットスリーブ5aおよびノズルボックス5bによって、後述する複数のタービン段落6のうちの最も上流側のタービン段落6に案内されるようになっている。タービンロータ3には、図示しない発電機が連結されている。
【0022】
ケーシング2(より詳細には、内部ケーシング2a)には、複数のノズル翼列7が支持されている。タービンロータ3には、複数の動翼翼列8が支持されている。これらのノズル翼列7と動翼翼列8とは、タービンロータ3の軸方向(回転軸線Xに沿って延びる方向)に交互に配置されている。そして、一のノズル翼列7と、当該一のノズル翼列7の下流側に隣り合って配置された一の動翼翼列8とにより、一のタービン段落6が構成されている。軸流タービン1は、このようなタービン段落6が、タービンロータ3の軸方向に複数設けられている。このようにして、供給管4を介して供給された作動流体が複数のタービン段落6を通過して、動翼に対して仕事を行い、タービンロータ3が回転駆動されるようになっている。
【0023】
最終段落の動翼翼列8を通過した作動流体は、排気流路9を通過して軸流タービン1の外部へと排出される。
【0024】
本発明におけるシール装置40は、タービンロータ3と、内部ケーシング2a、外部ケーシング2b、パッキンヘッド22、パッキンケーシング14、及び、ノズル翼列7のダイアフラム内輪11と、の各間隙をシールするために設けられる。それぞれの間隙に設けられるシール装置40は、設置位置や寸法が相違するものの実質的に同様の構成を有している。このため、以下の説明においては、タービンロータ3とダイアフラム内輪11との間隙に設けられるシール装置40(図2参照)を例にして、本発明によるシール装置40の説明を行う。
【0025】
図2に示すように、ノズル翼列7は、内部ケーシング2aに支持され、前述したノズルダイアフラム12(静止部材)を構成している。このノズルダイアフラム12には、タービンロータ3に対向するシール装置40が取り付けられるようになっている。ノズルダイアフラム12は、ダイアフラム外輪10と、ダイアフラム外輪10より内周側に設けられたダイアフラム内輪11と、を有している。ダイアフラム外輪10とダイアフラム内輪11との間に、複数のノズル(静翼)が設けられている。複数のノズルは、周方向に列状に配置されており、互いに隣り合うノズルの間の開口を作動流体が通過するようになっている。
【0026】
動翼翼列8は、複数の動翼を有しており、タービンロータ3に設けられたロータディスク3aに植設されて固定されている。複数の動翼は、周方向に配列されている。このような動翼が作動流体から仕事を受けることにより、回転エネルギーを得て、タービンロータ3が回転するようになっている。
【0027】
この例に限らず、図2に示すように、本実施の形態によるシール装置40は、ダイアフラム外輪10に、動翼翼列8の外周側端部に設けられたシュラウドに対向するように設けることもできる。
【0028】
また、図1に示すように、外部ケーシング2bのうちタービンロータ3が貫通する部分、つまり外部ケーシング2b、内部ケーシング2a、パッキンケーシング14、パッキンヘッド22とロータ3との間にグランド部20が設けられている。グランド部20は、複数のタービン段落の両側に配置されており、外部ケーシング2bの外側の雰囲気と内側の雰囲気とを区画している。本実施の形態によるシール装置40は、このグランド部20に、タービンロータ3に対向するように設けられても良い。
【0029】
このように、本実施の形態によるシール装置40は、軸流タービン1のノズルダイアフラムや、グランド部20等に用いることができる。
【0030】
(第1の実施の形態)
次に、図3~5を用いて、本発明の第1の実施の形態によるシール装置40について説明する。
【0031】
図3は、本発明の一実施の形態によるシール装置40を示す概略正面図である。また、図4は、図3に示す分割面Aから分割面Fまでの区画を示す概略斜視図であり、図5は、図4において一点鎖線で囲まれた領域の構成を示す分解図である。
【0032】
図3に示すように、シール装置40は、全体として円環形状を有している。図3~5に示すように、この円環形状は、分割面A~Fによって分割された6つの弧状のシールセグメント41A~41Fと、隣接する2つのシールセグメント41F、41Aの間に配置される少なくとも1つのカバーセグメント42と、このカバーセグメント42とこれに隣接するシールセグメント41Fとの間に配置される少なくとも1つのシム43と、を備えている。
【0033】
図3に示すように、本実施の形態のシール装置では、6つの弧状のシールセグメント41A~41Fが互いに実質的に同じ長さを有している。そして、6つの分割面A~Fのうち2つの分割面A及びDが、円環形状の中心Oを通る水平面H上に存在している。本明細書においては、図3に示すように、水平面H上の分割面のうち右側の分割面を分割面Aとし、この分割面Aから反時計回りに順次アルファベットを付してある。そして、各分割面から反時計回りに延在するシールセグメントを、符号41の末尾に当該分割面のアルファベットを付して表している。
【0034】
図3図5に示すように、シールセグメント41A~41Fは、軸流タービン1のタービンロータ3に面する内面に、周方向に伸びる複数列のシールフィン70を有している。このシールフィン70によって、作動流体の漏洩が防止されるようになっている。シールセグメント41A~41Fは、例えば、SUS400、SB480、A387Gr22、りん青銅、洋白などにより構成される。本実施の形態のシールセグメント41A~41Fは、互いに同一の周方向長さを有している。
【0035】
カバーセグメント42は、シールセグメント41Fの端面を覆い、当該シールセグメント41Fの端面が作動流体に浸食されることを回避ないし低減させるためのものである。したがって、本実施の形態のカバーセグメント42は、シールセグメント41Fよりも耐浸食性に優れた材料、例えば、SUS340、SUS316、SUS410、18Cr-6Coステンレス、15Cr-1.75Moステンレスなどにより構成されている。なお、これらのいずれの材料を用いるかは、シールセグメント41Fの材質に応じて決定されるが、一般に、シールセグメント41Fよりも硬度の高い材料を採用することが好ましい。
【0036】
図4及び図5に示すように、カバーセグメント42の断面形状は、このカバーセグメント42に隣接するシールセグメント41Fの端面の形状と同一である。したがって、カバーセグメント42は、シール装置40の内周側に、シールセグメント41Fと同数のシールフィン70aが設けられている。
【0037】
シム43は、各シールセグメント41A~41Fを円環形状に組み付ける際に、全周の長さを微調整するためのものである。したがって、図5において、シム43は、シールセグメント41Fとカバーセグメント42との間に3枚配置されているが、このような例には限定されない。すなわち、シールセグメント41Fとカバーセグメント42との間にシム43を何枚配置するかは、シール装置40の望ましい全周の長さに応じて決定されることになる。また、図5には詳細には図示されていないが、各シム43は、互いに異なる厚みを有している。このようなシム43は、例えばSUS304を用いて作製され得る。
【0038】
図4及び図5に示すように、以上のカバーセグメント42、シム43及びシールセグメント41Fは、固定具44によりこの順序で固定されている。図5に示すように、本実施の形態の固定具44は2本のボルトである。したがって、カバーセグメント42及びシム43には、固定具44が通過する2つの貫通孔が設けられており、シールセグメント41Fには、固定具44が螺合する2つのネジ溝が設けられている。
【0039】
図3に戻って、本実施の形態によるシール装置40は、シールセグメント41Aの下端面、シールセグメント41Cの下端面、及び、シールセグメント41Dの上端面も、シム43を介してカバーセグメント42によって覆われている。これらの端面は、水平面Hと平行な面である。各シールセグメント41A、41C、41Dは、シールセグメント41Fと実質的に同様の構成によって端面がカバーセグメント42により覆われている。すなわち、図4に示す構成を水平面Hに関して対称移動させることにより、分割面Aから分割面Bまでの構成が理解される。更に、分割面Fから分割面Aを通り分割面Bまでの構成を円環形状の中心O周りに180°回転させることにより、分割面Cから分割面Dを通り分割面Eまでの構成が理解される。要するに、水平面H上において原点Oに関して対称の位置にある分割面A及び分割面Dは、それぞれ、2つのカバーセグメント42の突き合わせ面である。
【0040】
以上のようなシール装置40は、軸流タービン1に取り付けられる際に、最適なシール性を実現できるよう、シールセグメント41A、41C、41D、41Fとカバーセグメント42との間に最適な枚数のシム43を介在させながら組み付けが行われる。但し、上述したように、それぞれのシム43は、互いに厚みが異なっている。このため、シム43によってある厚みを実現する場合には、比較的薄いシムを複数枚用いて当該厚みを実現するよりも、比較的厚いシムを1枚用いて当該厚みを実現する方が、作業効率の観点から望ましい。
【0041】
そして、選択された1枚または複数枚のシム43がシールセグメント41A、41C、41D、41Fとカバーセグメント42との間に配置される。そして、固定具44を用いてカバーセグメント42及びシム43がそれぞれのシールセグメント41A、41C、41D、41Fに固定される。
【0042】
その後、各シールセグメント41A~41Fが円環形状を成すように組み付けられ、シール装置40が構成される。
【0043】
もっとも、作業効率の観点から、シム43は、各シールセグメント41A、41C、41D、41Fとカバーセグメント42との全ての間に配置される必要は無い。すなわち、3つのシールセグメント41A、41C、41Dにおいては対応するカバーセグメント42との間にシム43を介在させず、シールセグメント41Fのみにおいて、対応するカバーセグメント42との間にシム43を介在させても良い。
【0044】
以上のような本実施の形態によるシール装置40によれば、シールセグメント41A、41C、41D、41Fとこれらに隣接する各カバーセグメント42との間に少なくとも1つのシム43が配置されている。このことにより、シールセグメント41A~41Fの端面を削整することなく、軸流タービン1への最適な取り付けが可能なシール装置40を提供することができる。
【0045】
更に、シールセグメント41A、41C、41D、41Fの一方の端面を覆う各カバーセグメント42が、耐浸食性を有する材料で構成されている。このため、軸流タービン1を長期にわたって運転させても、シールセグメント41A、41C、41D、41Fの端面が浸食されることを効果的に抑制できるシール装置40を提供することができる。
【0046】
とりわけ、本実施の形態では、シールセグメント41A、41C、41D、41Fの水平面H上の端面が耐浸食性を有するカバーセグメント42によって覆われている。このため、作動流体による浸食が発現しやすい水平面H上の分割面A、Dにおいて、浸食を効果的に抑制することができる。
【0047】
また、カバーセグメント42の断面形状は、カバーセグメント42に隣接するシールセグメント41A、41C、41D、41Fの端面の形状と同一である。このため、良好なシール性とシールセグメント41A、41C、41D、41Fの端面への耐浸食性の付与とを、両立することができる。
【0048】
更に、各シールセグメント41A~41Fは、互いに同一の周方向長さを有しているため、軸流タービン1に組み付ける際の作業性が良い。
【0049】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0050】
図6は、本発明の第2の実施の形態によるシール装置240を示す概略正面図である。図6に示すように、本実施の形態によるシール装置240は、シールセグメント41Fの上端面及びシールセグメント41Cの下端面のみが、シム43を介してカバーセグメント42によって覆われている。これらの下端面は、いずれも水平面H上の端面である。一方、図3に示すシール装置40において、カバーセグメント42によって覆われていたシールセグメント41Aの下端面及びシールセグメント41Dの上端面は、カバーセグメントによって覆われてはいない。この他の構成は、図3~5に示すシール装置40と同様である。図6において、図3~5と共通する構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
以上のようなシール装置240によれば、シールセグメント41C、41Fとこれらに隣接する各カバーセグメント42との間に少なくとも1つのシム43が配置されている。このことにより、シールセグメント41A~41Fの端面を削整することなく、軸流タービン1への最適な取り付けが可能なシール装置40を提供することができる。
【0052】
更に、シールセグメント41C、41Fの水平面H上の端面が耐浸食性を有するカバーセグメント42によって覆われているため、以上のシール装置240によっても、作動流体による浸食が発現しやすい水平面H上の分割面A、Dにおいて、浸食を効果的に抑制することができる。
【0053】
これらの効果に加え、本実施の形態によるシール装置240によっても、上述した第1の実施の形態によるシール装置40と同様の効果が、実現され得る。
【0054】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0055】
図7は、本発明の第3の実施の形態によるシール装置340を示す概略正面図であり、図8は、図7に示す分割面Aから分割面Fまでの区画を示す概略斜視図である。図7に示すように、シール装置340は、隣接する各2つのシールセグメントの間に、カバーセグメント42が2つずつ隣接して配置されている。更に、各カバーセグメント42とこれに隣接するシールセグメント41A~41Fとの間には、少なくとも1つのシム43が配置されている。したがって、例えば分割面Aから分割面Fまでの区画について見ると、図8に示すように、シールセグメント41Fの両端に、シム43を介してカバーセグメント42が1つずつ固定されている。
【0056】
シールセグメント41の両端面へのシム43及びカバーセグメント42の固定態様は、第1の実施の形態と同様である(図5参照)。すなわち、シールセグメント41Fの両端面において、カバーセグメント42、シム43及びシールセグメント41Fが、固定具44によりこの順序で固定されている。このような構成は、残りのシールセグメント41A~41Eにおいても、同様である。したがって、シール装置340の分割面A~Fの全てが、隣接する2つのカバーセグメント42の突き合わせによって画定されることになる。
【0057】
その他の構成は、第1の実施の形態によるシール装置40と同様である。このため、図7及び図8において第1の実施の形態と共通する構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0058】
以上のような本実施の形態によれば、全てのシールセグメント41A~41Fの両端面、とこれらに隣接する各カバーセグメント42との間に少なくとも1つのシム43が配置されている。このことにより、シールセグメント41A~41Fの端面を削整することなく、軸流タービン1への最適な取り付けが可能なシール装置40を提供することができる。
【0059】
更に、本実施の形態によれば、全てのシールセグメント41A~41Fの両端面が、耐浸食性を有する材料で構成されたカバーセグメントによって覆われているため、軸流タービン1を長期にわたって運転させても、シールセグメント41A~41Fの端面が浸食されることをより効果的に抑制することができる。
【0060】
(第1の変形例)
以上の各実施の形態によるシール装置40、240、340の変形例として、シム43を有しない態様が想定され得る。図9は、本変形例におけるシールセグメント41Fとカバーセグメント42との連結態様を示す分解斜視図である。図9に示すように、本変形例では、シールセグメント41Fの端面にカバーセグメント42が直接的に固定具44によって固定されるようになっている。この連結態様は、カバーセグメント42が取り付けられる他のシールセグメントにおいても、同様である。
【0061】
このような変形例によっても、シールセグメント41A、41C、41D、41Fの一方の端面を覆う各カバーセグメント42が、耐浸食性を有する材料で構成されているため、軸流タービン1を長期にわたって運転させても、シールセグメント41A、41C、41D、41Fの端面が浸食されることを効果的に抑制することができる。
【0062】
本変形例においても、カバーセグメント42の断面形状がカバーセグメント42に隣接するシールセグメント41A、41C、41D、41Fの端面の形状と同一であることから、良好なシール性とシールセグメント41A、41C、41D、41Fの端面への耐浸食性の付与とを、両立することができる。
【0063】
更に、各シールセグメント41A~41Fは、互いに同一の周方向長さを有しているため、軸流タービン1に組み付ける際の作業性が良い。
【0064】
(第2の変形例)
あるいは、以上の各実施の形態によるシール装置40、240、340の更なる変形例として、カバーセグメントに耐浸食層を設けることも可能である。
【0065】
図10は、本変形例によるシール装置において使用されるカバーセグメント42aを示す概略斜視図である。図10に示すように、カバーセグメント42aは、シールセグメント41A~41Fの端面の形状と同一の断面形状を有するカバーセグメント本体42bと、カバーセグメント本体42bの少なくとも一方の端面に設けられた耐浸食層42cと、を有している。本変形例では、カバーセグメント本体42bの材質は、シールセグメント41A~41Fの材質と同一であって良い。また、耐浸食層42cは、例えば、18Cr-8Niステンレスのコーティング層、クロムメッキ層などが採用され得る。あるいは、耐浸食層42cとして、カバーセグメント本体42bとは異なる材料(例えばSUS材)の肉盛りを施しても良い。
【0066】
このようなカバーセグメント42aは、耐浸食層42cが隣接する他のシールセグメントを向いた状態で、特定のシールセグメントに取り付けられる。このため、例えば図3~5に示すシール装置40のカバーセグメント42を、上述したカバーセグメント42aに置換した場合、分割面A及び分割面Dにおいて、2つのカバーセグメント42aの互いの耐浸食層42cが突き当たることになる。
【0067】
この他の構成は各実施の形態におけるシール装置40、240、340と同様であるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0068】
以上のような本変形例によれば、各カバーセグメント42aが、耐浸食層42cを有していることにより、軸流タービン1を長期にわたって運転させても、当該カバーセグメント42で覆われたシールセグメント41A~41Fの端面が浸食されることを効果的に抑制することができる。
【0069】
とりわけ、本変形例では、シールセグメント41A~41Fの各端面のうち水平面H上の端面が耐浸食性を有するカバーセグメント42によって覆われている。このため、作動流体による浸食が発現しやすい水平面H上の端面において、浸食を効果的に抑制することができる。
【0070】
なお、本変形例によるカバーセグメント42aは、上述した第1の変形例による各シール装置にも採用することができる。この場合も、軸流タービン1を長期にわたって運転させても、当該カバーセグメント42で覆われたシールセグメント41A~41Fの端面が浸食されることを効果的に抑制することができる。
【0071】
(第3の変形例)
更に、上述した第1及び第2の実施の形態によるシール装置40、240(図3図6参照)において、シールセグメント41A~41Fの各端面のうち、カバーセグメント42で覆われていない端面に、第2の変形例で説明した耐浸食層を設けることも効果的である。すなわち、第1の実施の形態によるシール装置40(図3図5参照)においては、シールセグメント41A~41Fの各端面のうち、分割面B、C、E及びFに面する端面に耐浸食層が設けられる。また、第2の実施の形態によるシール装置240(図6参照)においては、シールセグメント41A~41Fの各端面のうち、分割面B、C、E及びFに面する端面に加え、シールセグメント41Aの下端面及びシールセグメント41Dの上端面に、耐浸食層が設けられる。ここでの耐浸食層は、第2の変形例における耐浸食層と同じ組成を有している。
【0072】
このような変形例によれば、シールセグメント41A~41Fの端面の全てがカバーセグメント42または耐浸食層によって覆われるため、軸流タービン1を長期にわたって運転させても、シールセグメント41A~41Fの全ての端面に関し、作動流体による浸食を効果的に抑制することができる。
【0073】
この他、本変形例によれば、各実施の形態において説明した作用効果をも奏することができる。
【0074】
更には、本変形例は、上述した第1及び第2の変形例に対しても採用が可能である。この場合、第1及び第2の変形例において、シールセグメント41A~41Fの端面のうち、カバーセグメント42、42aによって覆われていない端面が耐浸食層によって覆われることになる。この場合にも、軸流タービン1を長期にわたって運転させても、シールセグメント41A~41Fの全ての端面に関し、作動流体による浸食を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0075】
1:軸流タービン 2:ケーシング 2a:内部ケーシング 2b:外部ケーシング 3:タービンロータ 3a:ロータディスク 4:供給管 5a:インレットスリーブ 5b:ノズルボックス 6:タービン段落 7:ノズル翼列 8:動翼翼列 9:排気流路 10:ダイアフラム外輪 11:ダイアフラム内輪 12:ノズルダイアフラム 20:グランド部 22:パッキンヘッド 40:シール装置 41A~41F:シールセグメント 42:カバーセグメント 42a:カバーセグメント 42b:カバーセグメント本体 42c:耐浸食層 43:シム 44:固定具 70:シールフィン 70a:シールフィン 240:シール装置 340:シール装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10