(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】インデンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 5/333 20060101AFI20220224BHJP
C07C 13/465 20060101ALI20220224BHJP
B01J 23/62 20060101ALI20220224BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
C07C5/333
C07C13/465
B01J23/62 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018087332
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】木村 信啓
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 敦司
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-63298(JP,A)
【文献】特開昭50-33993(JP,A)
【文献】特開2017-210461(JP,A)
【文献】安井 博,改質用白金触媒について,東海女子短期大学紀要,1985年03月31日,Vol. 11,pp. 1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 5/333
C07C 13/465
B01J 23/62
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダン及び分子状水素を含む原料ガスを脱水素触媒に接触させて、インデンを含む反応生成物を得る脱水素工程を備え、
前記脱水素触媒が、アルミニウムを含有する担体と当該担体に担持された担持金属とを有し、
前記担持金属が
スズ及び白金を含み、
前記脱水素触媒における白金に対する
スズの原子比が、8.0以下である、インデンの製造方法。
【請求項2】
前記脱水素触媒における白金に対する
スズの原子比が、3.5以上7.0以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記
スズ及び前記白金が、塩素原子を含まない金属源を用いて前記担体に担持されたものである、請求項1
又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記原料ガスにおける前記インダンに対する前記分子状水素のモル比が、3.5以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
テトラヒドロインデンの脱水素反応により、インダンを得る原料合成工程を更に備える、請求項1~
4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インデンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インデンは、クマロン・インデン樹脂や光学樹脂の原料として工業的に有用な物質である。インデンの製造方法としては、コールタール留分からインデンを回収する方法が知られているが、コールタール留分にはベンゾニトリル、ベンゾフラン等の数多くの不純物が含まれており、蒸留による分離回収方法では、特に沸点の近似したベンゾニトリルを分離して高純度のインデンを得ることは困難である。高純度のインデンを製造する方法として、テトラヒドロインデンの直接脱水素化反応による方法が知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-63298号公報
【文献】特開2000-63299号公報
【文献】特開2013-133293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、インデンの新規製造方法として、インダンからインデンを効率良く製造可能なインダンの脱水素方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の脱水素触媒を用い、分子状水素の共存下で脱水素反応を行うことで、インダンからインデンを効率良く製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。一般的に、脱水素反応では、分子状水素を共存させると熱力学的平衡制約の観点から収率が低下することが知られている。しかし、本発明者らは、特定の脱水素触媒を用いた場合、敢えて分子状水素を共存させることで、インダンの脱水素反応における反応効率が向上し、インデンを収率良く得ることができることを見出した。
【0006】
本発明の一側面は、インダン及び分子状水素を含む原料ガスを脱水素触媒に接触させて、インデンを含む反応生成物を得る脱水素工程を備えるインデンの製造方法に関する。この製造方法において、上記脱水素触媒は、アルミニウムを含む担体と、当該担体に担持された担持金属とを有し、上記担持金属は第14属金属元素及び白金を含み、上記脱水素触媒における白金に対する第14属金属元素の原子比は、8.0以下である。
【0007】
一態様において、上記脱水素触媒における白金に対する第14属金属元素の原子比は、3.5以上7.0以下であってよい。
【0008】
一態様において、上記第14属金属元素はスズであってよい。
【0009】
一態様において、上記第14属金属元素及び上記白金は、塩素原子を含まない金属源を用いて上記担体に担持されたものであってよい。
【0010】
一態様において、上記原料ガスにおける上記インダンに対する上記分子状水素のモル比は、3.5以下であってよい。
【0011】
一態様に係る製造方法は、テトラヒドロインデンの脱水素反応により、インダンを得る原料合成工程を更に備えていてよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インデンの新規製造方法として、インダンからインデンを効率良く製造可能なインダンの脱水素方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な一実施形態について説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態に係るインデンの製造方法は、インダン及び分子状水素(以下、単に水素ともいう。)を含む原料ガスを脱水素触媒に接触させて、インデンを含む反応生成物を得る脱水素工程を備える。
【0015】
本実施形態において、脱水素触媒は、アルミニウム(Al)を含む担体と、当該担体に担持された担持金属とを有している。また、担持金属は、第14属金属元素及び白金(Pt)を含んでいる。また、脱水素触媒における白金に対する第14属金属元素の原子比は8.0以下である。
【0016】
本実施形態に係る製造方法によれば、効率良くインダンからインデンを製造することができる。なお、一般的に、脱水素反応では、分子状水素を共存させると熱力学的平衡制約の観点から収率が低下することが知られている。しかし、本発明者らは、特定の脱水素触媒を用いた場合、敢えて分子状水素を共存させることで、インダンの脱水素反応における反応効率が向上することを見出した。すなわち、本実施形態に係る製造方法によれば、特定の脱水素触媒を用い、且つ、水素を共存させることで、インデンを効率良く製造することができる。
【0017】
以下、本実施形態における脱水素触媒について詳述する。
【0018】
本実施形態で用いる脱水素触媒は、アルミニウムを含む担体と、担体に担持された担持金属とを含む触媒である。担持金属には、第14属金属元素及び白金が含まれる。ここで、第14属金属元素とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第14族に属する金属元素を意味する。第14族金属元素としては、例えば、スズ(Sn)及び鉛(Pb)が挙げられる。
【0019】
脱水素触媒の調製方法は特に限定されず、担体に第14属金属元素を担持させた後、白金を更に担持させる方法であってよく、担体に白金を担持させた後、第14属金属元素を更に担持させる方法であってもよく、担体に第14属金属元素及び白金を同時に担持させる方法であってもよい。
【0020】
担体は、アルミニウムを含む無機酸化物担体であることが好ましい。担体は、例えば、アルミナ(Al2O3)を含む担体であってよく、Alと他の金属との複合酸化物を含む担体であってもよい。より具体的には、例えば、金属酸化物担体は、アルミナ、AlとMgとの複合酸化物、AlとSnとの複合酸化物、AlとPbとの複合酸化物、AlとZn、Se、Fe、In等との複合酸化物などの金属酸化物を含む担体であってよい。担体におけるAlの含有量は、担体の全質量基準で25質量%以上であってよく、50質量%以上であることが好ましい。Alを含有する無機酸化物担体としては、例えば、アルミナ、アルミナマグネシア、シリカアルミナ、ジルコニアアルミナ、スピネル型構造物(マグネシウムスピネル)等の無機酸化物を含む担体が挙げられる。
【0021】
担体の調製方法は特に制限されず、例えば、ゾルゲル法、共沈法、水熱合成法等が挙げられる。
【0022】
担体の比表面積は、例えば30m2/g以上であってよく、50m2/g以上であることが好ましい。これにより、インダンの転化率がより向上する傾向がある。また、担体の比表面積は、例えば1000m2/g以下であってよく、500m2/g以下であることが好ましい。このような比表面積を有することで、工業的に好適に利用可能な十分な強度を有する担体とすることができる。なお、担体の比表面積は、窒素吸着法を用いたBET比表面積計で測定される。
【0023】
脱水素触媒において、第14属金属元素及び白金を含む担持金属は、それぞれが単一の酸化物として存在していてよく、他の金属との複合酸化物として存在していてもよく、金属塩又は金属単体として存在していてもよい。
【0024】
脱水素触媒は、担体に、金属源(担持金属を含有する化合物)を用いて担持金属を担持させたものであってよい。
【0025】
白金源としては、例えば、例えば、テトラアンミン白金(II)酸、テトラアンミン白金(II)酸塩(例えば、硝酸塩等)、テトラアンミン白金(II)酸水酸化物溶液、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸硝酸溶液、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸エタノールアミン溶液等が挙げられる。白金源は、白金(白金)を有し、塩素原子を有しない化合物であることが好ましい。
【0026】
白金の担持量は、脱水素触媒の全量基準で0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上である。また、白金の担持量は、脱水素触媒の全量基準で5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下である。このような担持量であると、触媒上で形成される白金粒子が脱水素反応に好適なサイズとなり、単位白金重量あたりの白金表面積が大きくなるため、より効率的な反応系が実現できる。
【0027】
第14族金属元素の一例としてスズが挙げられる。スズ源としては、例えば、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム等が挙げられる。スズ源は、スズ(Sn)を有し、塩素原子を有しない化合物であることが好ましい。
【0028】
脱水素触媒において、白金(Pt)に対する第14属金属元素(M)の原子比(M/Pt)は、8.0以下であり、好ましくは6.5以下であり、さらに好ましくは5.0以下である。また、白金(Pt)に対する第14属金属元素(M)の原子比(M/Pt)は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは3.5以上である。原子比が上記範囲であると、インデンの収率が一層向上する傾向がある。
【0029】
脱水素触媒は、第14属金属元素及び白金以外の他の金属元素を更に含有していてもよい。他の金属元素としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、インジウム(In)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)、ガリウム(Ga)等が挙げられる。
【0030】
担持金属の担持方法は特に限定されず、例えば、含浸法、沈着法、共沈法、混練法、イオン交換法、ポアフィリング法が挙げられる。
【0031】
担持方法の一態様を以下に示す。まず、担持金属の前駆体(金属源)を含む溶液に担体を加え、溶液を含んだ担体を混練する。その後、乾燥により溶媒を除去し、得られた固体を焼成することで、担持金属を担体上に担持させることができる。
【0032】
担持金属の前駆体は、塩素原子を含まない金属源であることが好ましい。塩素原子を含まない金属源を前駆体に用いることで、触媒調整時の装置の腐食を防止できる。
【0033】
焼成は、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行うことができる。焼成は一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。焼成温度は、担持金属の前駆体を分解可能な温度であればよく、例えば200~1000℃であってよく、400~800℃であってもよい。なお、多段階の焼成を行う場合、少なくともその一段階が上記焼成温度であればよい。他の段階での焼成温度は、例えば上記と同じ範囲であってよく、100~200℃であってもよい。
【0034】
脱水素触媒は、成形性を向上させる観点から、成形助剤を更に含有していてもよい。成形助剤は、例えば、増粘剤、界面活性剤、保水材、可塑剤、バインダー原料等であってよい。
【0035】
脱水素触媒の形状は特に限定されず、例えば、ペレット状、顆粒状、ハニカム状、スポンジ状等の形状であってよい。また、脱水素触媒は、押出成形法、打錠成型法等の方法で成形されたものであってよい。
【0036】
次いで、本実施形態における脱水素工程について詳述する。
【0037】
脱水素工程は、インダン及び分子状水素(以下、単に水素ともいう。)を含む原料ガスを脱水素触媒に接触させて、インデンを含む反応生成物を得る工程である。脱水素工程では、インダンの少なくとも一部が脱水素反応によりインデンに変換される。本実施形態では、原料ガスが水素を含むため、水素存在下で脱水素反応が進行する。
【0038】
原料ガスにおいて、インダンに対する分子状水素のモル比(分子状水素/インダン)は、5.0以下であることが好ましく、3.5以下であることより好ましい。これにより、熱力学的平衡制約の影響が小さくなり、脱水素反応がより効率良く進行する傾向がある。また、原料ガスにおけるインダンに対する分子状水素のモル比(分子状水素/インダン)は、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。これにより、分子状水素の存在によって奏される上述の効果がより顕著に得られ、インデンを高収率で得ることができる。
【0039】
原料ガスは、インダン及び分子状水素以外に、窒素、アルゴン等の不活性ガスを更に含有していてもよい。また、原料ガスは、スチームを更に含有していてもよい。また、原料ガスは、一酸化炭素、炭酸ガス、アルカン類、オレフィン類等を更に含有していてもよい。インダン及び分子状水素以外の他の成分の合計含有量は、例えば、インダンに対して10.0倍モル以下であってよく、インダンに対して5.0倍モル以下が好ましく、0であってもよい。
【0040】
脱水素工程では、例えば、脱水素触媒が充填された反応器を用い、当該反応器に原料ガスを流通させることにより脱水素反応を実施してよい。反応器としては、固体触媒による気相反応に用いられる種々の反応器を用いることができる。反応器としては、例えば、固定床断熱型反応器、ラジアルフロー型反応器、管型反応器等が挙げられる。
【0041】
脱水素反応の反応形式は、例えば、固定床式、移動床式又は流動床式であってよい。これらのうち、設備コストの観点から固定床式が好ましい。
【0042】
原料ガスを脱水素触媒に接触させる際の温度(脱水素反応の反応温度、又は、反応器内の温度ということもできる。)は、反応効率の観点から、例えば350~800℃であってよく、400~700℃であってよく、450℃~650℃であってよい。反応温度が350℃以上であれば、インダンの平衡転化率が低くなりすぎないため、インデンの収率が一層向上する傾向がある。反応温度が800℃以下であれば、コークの生成速度が抑制され、脱水素触媒の高い活性をより長期にわたって維持することができる。
【0043】
原料ガスを脱水素触媒に接触させる際の圧力(脱水素反応の反応圧力、又は、反応器内の圧力ということもできる。)は、例えば0.01~4.0MPaであってよく、0.03~0.5MPaであってよく、0.01~0.3MPaであってよい。反応圧力が上記範囲にあれば脱水素反応が進行し易くなり、一層優れた反応効率が得られる傾向がある。
【0044】
脱水素工程を、原料を連続的に供給する連続式の反応形式で行う場合、質量空間速度(以下、「WHSV」という。)は、0.01h-1以上であってよく、0.1h-1以上であってもよい。このようなWHSVであると、インダンの転化率をより高くすることができる。また、WHSVは100h-1以下であってよく、20h-1以下であってもよい。このようなWHSVであると、反応器サイズをより小さくできる。ここで、WHSVとは、連続式の反応装置における、脱水素触媒の質量Wに対する原料の供給速度(供給量/時間)Fの比(F/W)である。なお、原料及び触媒の使用量は、反応条件、触媒の活性等に応じて更に好ましい範囲を適宜選定してよく、WHSVは上記範囲に限定されるものではない。
【0045】
本実施形態に係る製造方法は、テトラヒドロインデンの脱水素反応により、インダンを得る原料合成工程を更に備えていてもよい。
【0046】
このような製造方法では、反応器の下流側に上述の脱水素触媒(以下、第二の脱水素触媒ともいう。)を充填し、反応器の上流側にテトラヒドロインデンをインダンに変換するための脱水素触媒(以下、第一の脱水素触媒ともいう。)を充填してもよい。上述の脱水素触媒(第二の脱水素触媒)は、インダンからインデンへの脱水素反応の反応活性に優れるため、第二の脱水素触媒の前段に第一の脱水素触媒を充填することで、テトラヒドロインデンからインデンを効率良く製造することができる。
【0047】
第一の脱水素触媒としては、テトラヒドロインデンの脱水素反応を触媒する固体触媒を特に制限なく用いることができる。例えば、第一の脱水素触媒としては、脱水素反応の触媒として用いられるクロム/Al2O3系触媒、白金/Al2O3系触媒、Fe-K系触媒、酸化的脱水素反応の触媒としてよく用いられるBi-Mo系触媒等を用いることができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る製造方法によれば、分子状水素の共存下、特定の脱水素触媒を用いることで、高いインデン収率を得ることができる。そのため、本実施形態に係る製造方法によれば、インダンからインデンを効率良く製造することができる。このため、本実施形態に係る製造方法は、インデンを工業的に製造する場合に、非常に有用である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0050】
[触媒合成例1]
<脱水素触媒Aの調製>
市販のγ-アルミナ(日揮触媒化成製)20.0gと、硝酸マグネシウム六水和物(和光純薬工業製、Mg(NO3)2・6H2O)25.1gを水(約150ml)に溶解した水溶液とを混合し、エバポレータにて約50℃で水を除去した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、続けて800℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物と、硝酸マグネシウム六水和物(和光純薬工業製、Mg(NO3)2・6H2O)25.1gを水(約150ml)に溶解した水溶液とを混合し、エバポレータにて約50℃で水を除去した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、続けて800℃で3時間焼成を行った。これにより、スピネル型構造を有するアルミナ-マグネシア担体を得た。なお、得られたアルミナ-マグネシア担体は、X線回折測定により、2θ=36.9、44.8、59.4、65.3degにMgスピネルに由来する回折ピークが確認された。
【0051】
上記アルミナ-マグネシア担体5.0gに対し、あらかじめスズ酸ナトリウム(キシダ化学製、Na2SnO3・3H2O)0.37gを10mlの水に溶解した水溶液を混合し、脱水素触媒が調製された後の最終的なスズ担持量が2.7質量%になるようスズを含浸担持した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行ったのち、繰り返し水で洗浄した。次いで、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液(田中貴金属工業製、[Pt(NH3)2(NO2)2]/HNO3)を用いて、白金の担持量が1.0質量%になるよう白金を含浸担持し、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、脱水素触媒Aを得た。
【0052】
[触媒合成例2]
<脱水素触媒Bの調製>
スズの担持量を8.3質量%、白金の担持量が3.0質量%になるように担持したこと以外は、触媒合成例1と同様にして、脱水素触媒Bを作製した。
【0053】
[触媒合成例3]
<脱水素触媒Cの調製>
スズの担持量が1.8質量%になるように担持したこと以外は、触媒合成例1と同様にして、脱水素触媒Cを作製した。
【0054】
[触媒合成例4]
<脱水素触媒Dの調製>
スズの担持量が5.5質量%になるように担持したこと以外は、触媒合成例1と同様にして、脱水素触媒Dを作製した。
【0055】
(実施例1)
2.0gの脱水素触媒Aを管型反応器に充填し、反応管を固定床流通式反応装置に接続した。反応管を515℃まで昇温した後、分子状水素を99mL/minで流通させながら、0.5時間保持した。その後、インダン(東京化成工業(株)製)及び水素をそれぞれ反応器に供給し、反応温度515℃、0.1MPaにてインダンの脱水素反応を行った。反応器に供給される組成を、インダン:水素(H2)=1.0:0.2(モル比)とした。WHSVは、3.0h-1とした。
【0056】
反応開始時から300分が経過した時点で、脱水素反応の生成物を管型反応器から採取した。なお、反応開始時とは、原料の供給が開始された時間である。採取された生成物を、水素炎検出器を備えたガスクロマトグラフ(FID-GC)を用いて分析した。前記ガスクロマトグラフに基づき、採取された生成物の各成分(単位:質量%)を定量した。結果を表1に示す。
【0057】
インダンの転化率、インデンの選択率及びインデンの収率は、下記式(1)、式(2)及び式(3)で定義される。
rC={1-(m1/m0)}×100 (1)
rS={m2/(m0-m1)}×100 (2)
rY=(m2/m0)×100 (3)
式(1)におけるrCはインダンの転化率(%)である。m0は、原料中に存在するインダンのモル数である。m1は、生成物中に残存するインダンのモル数である。式(2)におけるrSはインデンの選択率(%)である。m2は生成物に含まれるインデンのモル数である。式(3)におけるrYはインデンの収率(%)である。
【0058】
(実施例2)
脱水素触媒Aに代えて2.0gの脱水素触媒Bを管型反応器に充填したこと、及び、原料組成をインダン:水素(H2)=1.0:2.5(モル比)としたこと以外は、実施例1と同様にして脱水素反応を実施した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例3)
脱水素触媒Aに代えて2.0gの脱水素触媒Bを管型反応器に充填したこと、及び、原料組成をインダン:水素(H2)=1.0:0.6(モル比)としたこと以外は、実施例1と同様にして脱水素反応を実施した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例4)
脱水素触媒Aに代えて2.0gの脱水素触媒Bを管型反応器に充填したこと以外は、実施例1と同様にして脱水素反応を実施した。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例5)
脱水素触媒Aに代えて2.0gの脱水素触媒Cを管型反応器に充填したこと以外は、実施例1と同様にして脱水素反応を実施した。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
2.0gの脱水素触媒Bを管型反応器に充填し、反応管を固定床流通式反応装置に接続した。反応管を515℃まで昇温した後、分子状水素を99mL/minで流通させながら、0.5時間保持した。続いて、反応管を515℃に保持しながら、N2及びスチーム(水)の混合ガス(N2:スチーム=1.0:2.1(モル比))を154mL/minで30分間流通した。その後、インダン(東京化成工業(株)製)、N2及びスチーム(水)をそれぞれ反応器に供給し、反応温度515℃、0.1MPaにてインダンの脱水素反応を行った。反応器に供給される組成をインダン:N2:スチーム(水)=1.0:0.3:2.3(モル比)とした。WHSVは、3.0h-1とした。
【0063】
反応開始時から300分が経過した時点で、脱水素反応の生成物を管型反応器から採取した。なお、反応開始時とは、原料の供給が開始された時間である。採取された生成物を、水素炎検出器を備えたガスクロマトグラフ(FID-GC)を用いて分析した。前記ガスクロマトグラフに基づき、採取された生成物の各成分(単位:質量%)を定量した。結果を表2日に示す。
【0064】
(比較例2)
脱水素触媒Bに代えて脱水素触媒Cを用いたこと以外は、比較例1と同様にして脱水素反応を行った。結果を表2に示す。
【0065】
(比較例3)
脱水素触媒Bに代えて脱水素触媒Dを用いたこと以外は、比較例1と同様にして脱水素反応を行った。結果を表2に示す。
【0066】
(比較例4)
脱水素触媒Aに代えて脱水素触媒Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして脱水素反応を行った。結果を表2に示す。
【0067】
【0068】