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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】照明用電源装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 45/31 20200101AFI20220224BHJP
【FI】
H05B45/31
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018103783
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019207833
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199864
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 良成
(72)【発明者】
【氏名】平岡 尚悟
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-521840(JP,A)
【文献】特開2011-211132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/31,45/3575
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流入力の任意の位相角で該交流入力を導通または遮断させるトライアックを有する位相制御方式の調光器と、
前記調光器により位相制御された交流入力電圧を整流する整流回路と、
前記トライアックの導通または遮断状態を維持させるための保持電流を流す保持電流制御部とを備えた照明用電源装置において、
前記保持電流制御部は、少なくとも互いに直列に接続された第1のスイッチング素子、第1の電流制御素子および第1の抵抗を含んで前記整流回路の出力側に接続して電流通路を形成し、前記第1のスイッチング素子をオンさせ、前記第1の電流制御素子に流れる電流を制御して前記保持電流を前記第1の抵抗を経由して流すように構成し、
前記トライアックにより前記交流入力が遮断される位相角が大きくなるにつれて前記第1の電流制御素子に流れる電流を増加させるように構成し、
前記保持電流制御部は、前記第1のスイッチング素子を有し、当該第1のスイッチング素子が前記整流回路の出力電圧に基づいてオン/オフ制御される保持電流回路と、
前記整流回路の出力電圧に基づいて矩形波状の出力波形を生成する矩形波生成回路と、
前記第1の電流制御素子を含み、前記矩形波生成回路の出力に基づき前記第1の電流制御素子に流れる電流を制御して前記保持電流を調整する保持電流調整回路で構成されたことを特徴とする照明用電源装置。
【請求項2】
前記保持電流回路は、前記整流回路の出力電圧が第1の閾値を超えると前記第1のスイッチング素子がオンして、前記電流通路に前記保持電流を流し、前記整流回路の出力電圧が前記第1の閾値以下に低下すると前記第1のスイッチング素子がオフして、前記保持電流を流さないように構成されたことを特徴とする請求項に記載の照明用電源装置。
【請求項3】
前記矩形波生成回路は、第2のスイッチング素子を含み、前記整流回路の出力電圧を検出し、該検出した電圧が第2の閾値を超えると前記第2のスイッチング素子をオフし、前記検出した電圧が前記第2の閾値以下に低下すると前記第2のスイッチング素子をオンして前記矩形波状の出力波形を生成するように構成されたことを特徴とする請求項またはに記載の照明用電源装置。
【請求項4】
前記保持電流調整回路は、前記矩形波状の出力波形のハイレベルの期間は、前記第1の電流制御素子をオフさせ、前記矩形波状の出力波形のローレベルの期間は、前記第1の電流制御素子をオンさせ、前記トライアックにより前記交流入力が遮断される位相角が大きくなるにつれて前記第1の電流制御素子に流れる電流を増加させることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の照明用電源装置。
【請求項5】
前記保持電流調整回路は、第1のコンデンサと第2の抵抗を直列に接続し、前記第1のスイッチング素子に接続して前記電流通路とは別の他の電流通路を形成し、前記整流回路の出力電圧の立ち上がり時に、前記他の電流通路を介して前記保持電流が流れるようにしたことを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の照明用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相制御方式による調光器により調光を行う照明用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)を用いた照明装置(LEDランプ)は、消費電力が白熱灯に比較して少ないため普及が進んでおり、また、LEDランプ点灯用の電源装置においては、位相制御方式の調光器により調光を行うことができる照明用電源装置が提案されている。
【0003】
図7は、特許文献1で提案された従来技術の照明用電源装置の回路図である。以下、図7を参照して、この照明用電源装置を説明する。
照明用電源装置100は、調光器121、整流回路122、保持電流回路123、平滑回路124およびDC/DCコンバータ125を備え、交流電源110およびLEDモジュール130がその入力側および出力側に接続される。さらに、照明用電源装置100には、保持電流回路123に電圧検出・電流遮断回路126が付加される。
【0004】
調光器121は、交流電源110の交流電圧を位相制御するものであり、位相制御素子のトライアック(双方向サイリスタ)121a、トライアック121aのゲート端子にトリガ信号を出力する位相制御回路121bおよび可変抵抗からなる調光調節手段121cを備える。
位相制御回路121bは、例えば交流電圧のゼロクロスを基準にした所定のタイミング(位相角)で一定の周期毎にトリガ信号を出力する。整流回路122は、ダイオードブリッジからなるもので、調光器121で位相制御された交流電圧を全波整流する。
【0005】
保持電流回路123は、トライアック121aのオン状態を維持するための保持電流を流すためのものであり、MOSFETからなるスイッチング素子Q1、このスイッチング素子Q1をオンさせるための抵抗R1、スイッチング素子Q1のゲート電圧を保持するためのツェナーダイオードD2および保持電流を流すための抵抗R2からなる。ツェナーダイオードD2は、そのカソード側がスイッチング素子Q1のゲートに接続され、そのアノード側が接地される。
その保持電流回路123の抵抗R2には、電圧検出・電流遮断回路126のトランジスタQ4が接続される。
【0006】
平滑回路124は、平滑コンデンサC3により、整流回路122で全波整流された電圧を平滑化する。
【0007】
DC/DCコンバータ125は、スイッチング電源の一例として、平滑回路124で直流化された電圧を昇降圧して所定の直流電圧に変換するものであり、MOSFETからなるスイッチング素子Q2、インダクタL1、ダイオードD4、平滑コンデンサC4、抵抗R3~R7および制御回路125aから構成される。
【0008】
制御回路125aは、スイッチング制御用ICからなる。スイッチング制御用ICはダイオードD3を介して端子VCCに電源が供給されると共に、端子INの電圧を監視し、この監視電圧に基づいて、端子OUTから制御信号をスイッチング素子Q2のゲートに印加して当該スイッチング素子Q2を周期的にオンオフさせる。
【0009】
この制御回路125aの制御により、スイッチング素子Q2がオフからオンになると、平滑回路124内の平滑コンデンサC3により平滑化された直流電圧はインダクタL1に印加され、インダクタL1を介してスイッチング素子Q2に電流が流れる。スイッチング素子Q2のオン期間に、インダクタL1に流れる電流が一定の割合で増加し、インダクタL1に磁気エネルギーが蓄積される。
【0010】
次に、制御回路125aの制御によりスイッチング素子Q2がオンからオフになると、スイッチング素子Q2を流れていた電流が遮断されることで、インダクタL1に蓄積された磁気エネルギーにより逆起電力が発生し、インダクタL1、ダイオードD4の経路を介して、電流が平滑コンデンサC4を充電すると共に、照明用電源装置100の出力端子OUT1、OUT2に並列に接続されたLEDモジュール130に流れて、当該LEDモジュール130が点灯する。LEDモジュール130は複数の発光ダイオードLEDを直列に接続して構成される。
【0011】
以上のように構成された従来技術の照明用電源装置100は、調光器121の位相制御回路121bから出力されるトリガ信号をトライアック121aのゲート端子に印加し、これにより交流電源110の交流電圧を位相制御すると共に、この位相制御された交流電圧を整流回路122および平滑回路124により整流・平滑し、DC/DCコンバータ125において所望する直流電圧に変換し、この直流電圧をLEDモジュール130に印加することで、LEDモジュール130の発光ダイオードLEDを点灯しかつその点灯の明るさを調整する。
【0012】
そして、この照明用電源装置100では、調光器121のトライアック121aがトリガ信号の印加によりオン状態となった後に、トライアック121aにそのオン状態を維持する電流が完全に遮断されてしまうと、該トライアック121aが誤動作してしまう。そこで、トライアック121aが誤動作しないように、保持電流回路123および電圧検出・電流遮断回路126によりトライアック121aのオン状態を保持するための保持電流を整流回路122から引き込むことでトライアック121aに保持電流を流す。
【0013】
すなわち、保持電流回路123においては、スイッチング素子Q1の電流路(ドレイン-ソース間)と抵抗R2とを直列に接続し、スイッチング素子Q1のゲートに抵抗R1を介してゲート電圧を印加することでオンさせ、これにより、整流回路122からスイッチング素子Q1を介して抵抗R2に至る電流通路Pに保持電流を引き込む。
【0014】
そこで、調光器121のトライアック121aの誤動作を防止する一方で、スイッチング素子Q1の電力損失の増大と、温度上昇という問題を解消するために、保持電流を必要時にのみ流すようにする照明用電源装置が、特許文献1で提案された発明である。
【0015】
特許文献1に記載の照明用電源装置100の電圧検出・電流遮断回路126の電圧検出回路126aは、整流回路122の出力側A点の電圧が所定の電圧を超えると、ツェナーダイオードD5が導通すると共に、抵抗R8、R9同士の接続ノードBには、電流遮断回路126bのトランジスタQ3をオンにする高い電圧が発生する。トランジスタQ3がオンすると、抵抗R10、R11同士の接続ノードCには、トランジスタQ4をオンにする電圧が発生しないので、当該トランジスタQ4はオフする。これにより、保持電流回路123の抵抗R2を経由して接地ラインに至る電流通路Pが遮断されて、抵抗R2には保持電流が流れない。
【0016】
一方、交流電源110の交流電圧がゼロクロス付近へと低下していき、これに対応して、整流回路122の出力側A点の電圧が所定の電圧以下に低下すると、電圧検出回路126aにおいては、ツェナーダイオードD5が非導通となり、抵抗R8、R9同士の接続ノードBの電圧が低下し、トランジスタQ3がオフする。トランジスタQ3がオフすると、抵抗R10、R11には抵抗R12を介して電流が流れ、この電流により、抵抗R10、R11同士の接続ノードCには、トランジスタQ4をオンにする電圧が発生し、当該トランジスタQ4はオンする。これにより、保持電流回路123の抵抗R2を経由して接地ラインに至る電流通路Pが導通状態とされて、抵抗R2に保持電流が流れる。
【0017】
ここで、調光器121の位相制御(位相角制御)方式には、例えば、交流電圧のゼロクロスから交流電圧の半波の期間において導通する位相を制御するリーディングエッジ型(leading edge型、以下LE型という)方式と、交流電圧が立ち上がってゼロクロスするまでの期間において遮断する位相を制御するトレーリングエッジ型(trailing edge型、以下TE型という)方式とがある。
【0018】
LE型方式の調光器121は、回路構成が簡単であり、比較的大きな電力負荷を扱うことができる。しかし、トライアック121aが使用されている場合は、軽負荷動作が困難で、電源電圧が一時的に低下するいわゆる電源ディップが発生すると不安定動作に陥りやすい。また、容量性負荷を接続した場合は、突入電流が発生するため容量性負荷との相性が悪いなどの特徴がある。
【0019】
一方、TE型方式の調光器121は、軽負荷でも動作可能であり、容量性負荷を接続しても突入電流が発生せず、また電源ディップが発生しても動作が安定である。しかし、回路構成が複雑であり、温度が上昇し易いため、重負荷に向かない。また、誘導性負荷を接続した場合は、サージが発生するなどの特徴がある。
【0020】
特許文献1に記載の従来技術の回路は、調光器121を安定動作させるための保持電流を流す回路であるが、LE型方式の調光器121には対応するものの、TE型方式の調光器121と接続された場合、動作は不安定になり、LEDのチラツキなどの問題が発生することがあった。
そこで、特許文献1の従来技術として図2に記載されている保持電流回路のように、常時保持電流を流すことでTE型方式の調光器121の安定動作は可能となるが、スイッチング素子の損失が大きくなり、発熱などの問題が発生するため、実用的ではない。
【0021】
従来技術の回路で発生する問題について、図7ないし図9を参照して説明する。図7に示す特許文献1に記載の回路構成において、LE型およびTE型方式による保持電流波形を図8および図9に示す。
図8は、従来回路のLE型方式の保持電流を説明する図である。図8に示す入力電圧は、整流回路122の出力電圧波形であり、入力電圧が所定の電圧以下であれば、保持電流が流れる。すなわち、調光器121がオンする入力電圧の立ち上がり時と入力電圧が所定の電圧以下になった時に保持電流が流れる。この保持電流により調光器のトライアックの誤動作が防止される。
【0022】
一方、図9は、従来回路のTE型方式の保持電流を説明する図である。入力電圧の立ち上がり時、電圧波形の立ち上がりが緩やかであるため、所定の電圧になるまでの期間は保持電流が流れる。しかし、入力電圧の立ち下がり時、すなわち、調光器のトライアックがオフする時は、急峻な立ち下がり波形となるため、所定電圧以下になる期間はほとんどなく保持電流が流れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】特開2013-251057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
よって、特許文献1に記載の照用電源装置は、TE型方式と組合せた場合、保持電流を十分に流すことができないため、誤動作が発生しLEDのチラツキなどが発生するという問題があった。
【0025】
本発明は上記の事情を考慮してなされたもので、調光器の位相制御方式がLE型またはTE型のいずれであっても、トライアックに保持電流を適切に流すことでトライアックの誤動作を防止する照明用電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係わる照明用電源装置は、交流入力の任意の位相角で交流入力を導通または遮断させるトライアックを有する位相制御方式の調光器と、調光器により位相制御された交流入力電圧を整流する整流回路と、トライアックの導通または遮断状態を維持させるための保持電流を流す保持電流制御部とを備えた照明用電源装置において、保持電流制御部は、少なくとも互いに直列に接続された第1のスイッチング素子、第1の電流制御素子および第1の抵抗を含んで整流回路の出力側に接続して電流通路を形成し、第1のスイッチング素子をオンさせ、第1の電流制御素子に流れる電流を制御して保持電流を第1の抵抗を経由して流すように構成し、トライアックにより交流入力が遮断される位相角が大きくなるにつれて第1の電流制御素子に流れる電流を増加させるように構成されたことを特徴とする照明用電源装置である。
【0027】
この構成によれば、トライアックにより交流入力が遮断される位相角が大きくなるにつれて第1の電流制御素子に流れる電流が増加し、当該電流が保持電流として機能するので、TE型方式の調光器が接続された場合であっても、保持電流が必要なタイミング(位相角)で保持電流を流すことができる。よって、保持電流を、TE型方式またはLE型方式のいずれであっても適切に流すことができ、トライアックの誤動作を防止することができる。
【0028】
この場合、保持電流制御部は、第1のスイッチング素子を有し、当該第1のスイッチング素子が整流回路の出力電圧に基づいてオン/オフ制御される保持電流回路と、整流回路の出力電圧に基づいて矩形波状の出力波形を生成する矩形波生成回路と、第1の電流制御素子を含み、矩形波生成回路の出力に基づき第1の電流制御素子に流れる電流を制御して保持電流を調整する保持電流調整回路で構成することができる。
【0029】
この構成によれば、整流回路の出力電圧に基づいて生成された矩形波状の出力波形に基づいて第1の電流制御素子に流れる電流が制御されるので、交流入力の位相角にあわせて保持電流が調整されることで、トライアックの誤動作を防止することができる。
【0030】
また、本発明の保持電流回路は、整流回路の出力電圧が第1の閾値(所定の電圧)を超えると第1のスイッチング素子がオンし、電流通路に保持電流を流し、整流回路の出力電圧が第1の閾値以下に低下すると第1のスイッチング素子がオフして、保持電流を流さないように構成されたことを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、トライアックが導通しまたは遮断するときに、整流後の電圧が所定の電圧(第1の閾値)を超えていれば、適切に保持電流を流すことができる。
【0032】
また、本発明の矩形波生成回路は、第2のスイッチング素子を含み、整流回路の出力電圧を検出し、検出した電圧が第2の閾値を超えると第2のスイッチング素子をオフし、検出した電圧が第2の閾値以下に低下すると第2のスイッチング素子をオンして矩形波状の出力波形を生成するように構成されたことを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、整流後の電圧レベルをほぼ反転させた矩形波状の出力波形を生成することにより、当該矩形波状の出力波形に基づいてトライアックにより交流入力が遮断される位相角が大きくなるにつれて保持電流を増加させることができる。
【0034】
また、本発明の保持電流調整回路は、矩形波状の出力波形のハイレベルの期間は、第1の電流制御素子をオフさせ、矩形波状の出力波形のローレベルの期間は、第1の電流制御素子をオンさせ、トライアックにより前記交流入力が遮断される位相角が大きくなるにつれて第1の電流制御素子に流れる電流を増加させることを特徴とする。
【0035】
この構成により、TE型方式の調光器が接続される場合でも、トライアックにより交流入力が遮断されるタイミング(位相角)でも必要な保持電流を流すことができ、トライアックの誤動作を防止することができる。
【0036】
本発明の保持電流調整回路は、第1のコンデンサと第2の抵抗を直列に接続し、第1のスイッチング素子に接続して前記した電流通路とは別の他の電流通路を形成し、整流回路の出力電圧の立ち上がり時に、他の電流通路を介して保持電流が流れるようにしたことを特徴とする。
【0037】
この構成により、TE型方式またはLE型方式のいずれの調光器であっても、それらの方式を検出する回路を備えなくても保持電流を確実に流すことができ、トライアックの誤動作を防止することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上、本発明によれば、調光器の位相制御方式がLE型またはTE型方式のいずれであっても、それらの方式を検出する回路を備えなくても適切な保持電流を流すことができ、照明用電源装置の安定動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態に係わる照明用電源装置のブロック図である。
図2】本発明に係わる保持電流制御部の回路図である。
図3】矩形波生成回路の出力波形およびTE型方式の保持電流波形を示す図である。
図4】TE型方式の調光器に適用した場合のトータル保持電流波形である。
図5】LE型方式の調光器に適用した場合のトータル保持電流波形である。
図6】TE型方式の保持電流による消費電力を説明する図である。
図7】従来技術の照明用電源装置の回路図である。
図8】従来回路のLE型方式の保持電流を説明する図である。
図9】従来回路のTE型方式の保持電流を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施形態に係わる照明用電源装置について図面を参照して説明する。
【0041】
図1は、本発明の実施形態に係わる照明用電源装置のブロック図である。照明用電源装置1は、調光器21、フィルタ回路27、整流回路22、平滑回路24、DC/DCコンバータ25、保持電流制御部23から構成され、照明用電源装置1に交流電源10およびLEDモジュール30が接続される。調光器21は、交流入力の任意の位相角で該交流入力を導通または遮断させるトライアック21aを有し、整流回路22は調光器21により位相制御された交流入力電圧を整流する。平滑回路24は整流回路22の出力電圧を平滑化して直流電圧に変換する。DC/DCコンバータ25は、変換された直流電圧をさらに別の直流電圧に変換する。
保持電流制御部23を除く他の構成要素は、従来技術の回路をそのまま採用することができ、それらの構成要素の説明は、従来技術の回路の説明と重複するため省略する。
なお、フィルタ回路27は、従来技術の回路にはないが、調光後の交流電圧に重畳する高周波ノイズなどを除去する。
【0042】
図2は、本発明に係わる保持電流制御部23の回路図である。
保持電流制御部23は、トライアック21aの導通または遮断状態を維持させるための保持電流を流し、保持電流回路23a、矩形波生成回路23bおよび保持電流調整回路23cにより構成される。
【0043】
保持電流回路23aは、トライアック21aのオン状態を維持するため、MOSFETからなるスイッチング素子50(第1のスイッチング素子、Q1)、このスイッチング素子50をオンさせるための抵抗51およびスイッチング素子50のゲート電圧を保持するためのツェナーダイオード52から構成される。
【0044】
スイッチング素子50のドレインは整流回路22のプラス側と接続され、抵抗51はスイッチング素子50のドレインとゲート間に接続される。ツェナーダイオード52のカソード側はスイッチング素子50のゲートに、ツェナーダイオード52のアノード側は整流回路22のマイナス側(GND側)に接続される。スイッチング素子50のソース(出力)は保持電流調整回路23cと接続される。
【0045】
保持電流回路23aは、整流回路22の出力電圧が所定の電圧値(第1の閾値)を超えるとスイッチング素子50がオンし、所定の電圧値以下になるとスイッチング素子50はオフする。スイッチング素子50がオンする期間に、保持電流調整回路23cにより調整される保持電流が流れる。すなわち、整流回路22の出力電圧が所定の電圧値以下に低下するとスイッチング素子50がオフして、保持電流を流さないように構成されている。
【0046】
矩形波生成回路23bは、整流回路22の出力電圧に基づいて矩形波状の出力波形を生成し、スイッチング素子70(第2のスイッチング素子、Q2)、電源71(電池のほか回路構成により所定の電圧を発生させるものでもよい)および抵抗72~75により構成される。
抵抗74の一端は、整流回路22のプラス側に接続され、その他端はスイッチング素子70のゲートに接続される。抵抗75の一端はスイッチング素子70のゲートに接続され、抵抗75の他端は整流回路22のマイナス側に接続される。スイッチング素子70のソースは整流回路22のマイナス側に接続される。
【0047】
抵抗72の一端は所定電圧の電源71のプラス側に接続され、抵抗72の他端はスイッチング素子70のドレインに接続される。
抵抗73の一端は、スイッチング素子70のドレインに、その他端はスイッチング素子70のソースに接続される。スイッチング素子70のドレイン(出力)は、保持電流調整回路23cと接続される。
【0048】
保持電流調整回路23cは、トランジスタ53(第2の電流制御素子、Q3)、トランジスタ54(第1の電流制御素子、Q4)、電源55(電池のほか回路構成により所定の電圧を発生させるものでもよい)、ダイオード56、コンデンサ57、コンデンサ58(第1のコンデンサ)、抵抗59~65、抵抗66(第1の抵抗)および抵抗67(第2の抵抗、R20)から構成され、矩形波生成回路23bの出力に基づきトランジスタ54に流れる電流を制御して保持電流を調整する。
ダイオード56のアノード側は、矩形波生成回路23bのスイッチング素子70(Q2)のドレインから出力される信号と接続され、ダイオード56のカソード側は、抵抗59の一端に接続される。
【0049】
抵抗59の他端は、コンデンサ57の一端、抵抗60の一端および抵抗61の一端と接続される。コンデンサ57の他端および抵抗60の他端は、GND側に接続される。抵抗61の他端はトランジスタ53(Q3)のベースと抵抗62の一端に接続される。抵抗62の他端はGND側と接続される。
【0050】
トランジスタ53のコレクタは、抵抗63の一端に接続され、その他端は電源55のプラス側に接続される。トランジスタ53のエミッタは抵抗64の一端に接続され、抵抗64の他端はGND側に接続される。
トランジスタ53のコレクタ(出力側)は、トランジスタ54(Q4)のベースに接続される。
【0051】
トランジスタ54のベースは、抵抗65の一端が接続され、抵抗65の他端はGND側に接続される。またトランジスタ54のエミッタには抵抗66が接続され、その他端はGND側に接続される。トランジスタ54のコレクタは、保持電流回路23aのスイッチング素子50(Q1)のソース(出力側)と接続される。
この構成により、トランジスタ54と抵抗66との直列回路はスイッチング素子50とともに電流経路P1を形成し、スイッチング素子50がオン状態では、トランジスタ54に流れる電流(コレクタ-エミッタ間の電流路に流れる電流)は、その制御端子(ベース)への印加電圧に基づき制御され、保持電流として抵抗66を経由して流れる。
また、トランジスタ54のコレクタにはコンデンサ58の一端が接続され、その他端は抵抗67の一端と接続され、抵抗67の他端はGND側に接続される。
【0052】
このコンデンサ58および抵抗67は直列に接続され、調光器21の制御方式がLE型の場合に、調光器21がオンしたときの保持電流を流す回路となる。コンデンサ58と抵抗67との直列回路は電流通路P1とは別の他の電流通路P2を形成し、後述するように、整流回路22の出力電圧の立ち上がり時に他の電流通路P2を介して保持電流が流れる。
なお、このコンデンサ58および抵抗67は、本発明では保持電流調整回路23cの一部として説明しているが、保持電流回路23aのスイッチング素子50のソースに直接接続し、保持電流回路23aの回路の一部としてもよい。
【0053】
コンデンサ58および抵抗67は、トライアック21aがオンすると、整流回路22の整流後の電圧が急峻に立ち上がってスイッチング素子50がオンし、コンデンサ58を充電するパルス状の電流が流れる。この電流は、トライアック21aがオンするときの保持電流となる。すなわち、この回路はLE型方式の場合の保持電流回路として機能する。
【0054】
次に、保持電流制御部23の矩形波生成回路23bおよび保持電流調整回路23cの動作について、図3を参照して説明する。
図3は、矩形波生成回路23bの出力波形とTE型方式の保持電流波形を示す図である。
図3の横軸は時間であり、縦軸は電圧値または電流値である。図3には5つの波形が示されている。上から順に、整流回路22により整流された電圧(整流後電圧)、矩形波生成回路23bの出力波形(スイッチング素子70のドレイン電圧)、保持電流調整回路23cのトランジスタ53(Q3)のベース電圧(Q3Vbe)、トランジスタ53のコレクタ電圧(Q3Vce)、トランジスタ54のコレクタ電流(Q4Ic)である。
なお、整流後電圧波形は、TE型方式の場合で位相角が大の場合の一例である。
【0055】
矩形波生成回路23bは、整流回路22による整流後電圧が、抵抗74および75により分圧され、2つの抵抗の接続点がスイッチング素子70のゲート信号として使用される。
【0056】
スイッチング素子70のドレイン-ソース間の電圧は、整流後電圧を反転させたような矩形波となり、矩形波を発生させる第2の閾値となる電圧値は、電源71と抵抗74および抵抗75の分圧比により設定される。
すなわち、整流後電圧が第2の閾値以下の場合、スイッチング素子70がオンして矩形波はハイレベル、整流後電圧が第2の閾値を超える場合はスイッチング素子70がオフして矩形波はローレベルとなる。
図3に示す整流後電圧波形の下側の波形が、整流後電圧に対応した矩形波生成回路の出力波形である。
【0057】
次に、TE型方式の保持電流調整回路23cの動作を説明する。
矩形波生成回路23bで生成した矩形波状の出力電圧が立ち上がるかまたは立ち下がると、コンデンサ57および抵抗59~62を組合せた時定数により、トランジスタ53のベース電圧が上昇しまたは下降する。ここでダイオード56は逆流防止用のダイオードである。
複数の抵抗59~62とコンデンサ57の時定数により、矩形波状の出力電圧波形から変形された電圧波形が、トランジスタ53のベース電圧として入力される。ここで、抵抗61は電流制限抵抗、抵抗62は誤動作防止用抵抗である。
【0058】
トランジスタ53のコレクタ電圧は、抵抗63と抵抗64の定数比、電源55の電圧およびトランジスタ53の動作状態により決定される。トランジスタ53のベース電圧(Vbe)が高いほど、トランジスタ53のコレクタ電圧が下がり、それによりトランジスタ54のベース電流が減少する。逆に、トランジスタ53のベース電圧(Vbe)が低いほど、トランジスタ53のコレクタ電圧が上り、トランジスタ54のベース電流が増加する。
【0059】
トランジスタ54のコレクタ電流は、トランジスタ54のベース電流とほぼ比例するため、トランジスタ54のコレクタ電流は、トランジスタ53のベース電圧(Vbe)に反比例して流れる。
すなわち、矩形波がHIGH(ハイレベル)の期間は、トランジスタ54がオフし、トランジスタ54のコレクタ電流が流れない。一方で、矩形波がLOW(ローレベル)の期間は、トランジスタ54がオンし、トライアック21aにより交流入力が遮断される位相角が大きくなるにつれてトランジスタ54のコレクタ電流が増加する。トランジスタ54のコレクタ電流は調光器21のTE型方式の保持電流である。
図3の上から3~5番目に、それらの波形の関係を示す。
【0060】
ここで、トランジスタ54のコレクタ電流の増加の割合は、複数の抵抗59~62とコンデンサ57の時定数により決定される。また、保持電流調整回路23cの抵抗63および64の定数比を調整することで、トランジスタ53のベース電圧とトランジスタ54のベース電流の比を任意に設定することができる。
【0061】
なお、トランジスタ54のコレクタは、保持電流回路23aのスイッチング素子50のソースと接続されているが、整流回路22の整流後電圧のプラス側に直接接続することもできる。
【0062】
図4は、本発明の保持電流制御部23をTE型方式の調光器に適用した場合のトータル電流波形である。横軸は時間であり、縦軸は電圧値または電流値である。
上から順に、整流後電圧、抵抗67に流れるLE型方式の保持電流(IR20)、トランジスタ54のコレクタ電流(Q4Ic)およびトータル保持電流である。
【0063】
なお、TE型方式の調光器にも関わらず、本発明の保持電流制御部23にLE型方式の保持電流が流れるのは、保持電流制御部23がいずれの制御方式にも対応できる回路構成となっているためである。よって、トータル保持電流は、両方式の保持電流、すなわち、図4に示す抵抗67に流れるLE型方式の保持電流(IR20)とトランジスタ54のコレクタ電流(Q4Ic)の合計値がトータル保持電流となる。
【0064】
次に、LE型方式の保持電流について図5を参照して説明する。
図5は、本発明をLE型方式の調光器に適用した場合のトータル保持電流波形である。図5の横軸は時間であり、縦軸は電圧値または電流値である。上から順に、整流後電圧波形、抵抗67に流れる電流(IR20、LE型方式の保持電流)、トランジスタ54のコレクタ電流(Q4Ic)およびトータル保持電流である。
図5に示すコンデンサ58および抵抗67によるCR直列回路に流れる電流とトランジスタ54のコレクタ電流のトータル保持電流により、LE型方式の調光器におけるトライアックのオン時に必要な保持電流を流すことができる。
【0065】
図6は、TE型方式の保持電流による消費電力を説明する図である。横軸は時間、縦軸は電圧値、電流値および電力値を示す。図6は、TE型方式の位相角が大の場合の整流後電圧、その時の保持電流調整回路23cのトータル保持電流、すなわちスイッチング素子50(第1のスイッチング素子Q1)を流れる電流を示す。よって、整流後電圧とトータル保持電流の積がスイッチング素子50の消費電力となる。このときのシミュレーション結果では電力値は470mWであった。
【0066】
以上説明したように、本発明の保持電流制御部23は、従来の回路では動作が不安定であったTE型方式の調光器に適用して適切な保持電流を流すことができるため、調光器の動作が安定し、LEDのチラツキなどが解消する。本発明では、調光方式がいずれの方式であるか判定する必要がないため、その判定に要する回路などを設ける必要がない。
【0067】
また、本発明はTE型またはLE型方式の保持電流に関するものであるが、TE型方式の場合は、任意の位相角でトライアックをオフさせる方式であり、この場合の保持電流はトライアックの誤動作を防止するためである。
一方、トライアックを任意の位相角でオフさせても、整流後の回路の負荷状態によって整流後の電圧波形が急峻に立ち下がらない場合がある。整流後の電圧波形によりトライアックのオン期間を判定し、そのオン期間にあわせ出力電圧を制御する場合、急峻に下がらず緩やかに電圧が立ち下がると、オン期間の判定がトライアックのオン時間より長くなってしまうことがある。
【0068】
その場合、整流後の回路に蓄えられた電力を消費することで、整流後の出力電圧を急峻に立ち下げることになり、オン期間の誤判定を防止することができる。このとき、保持電流は一定ではなく、整流後の回路の負荷状態からトライアックの位相角にあわせ変化させることができる。
【0069】
なお、本発明の矩形波生成回路23bは、図7で説明した従来の回路のようにスイッチング制御用ICに矩形波を生成する機能があれば、そのICの機能を使用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1、100・・・照明用電源装置、10、110・・・交流電源、21、121・・・調光器、21a、121a・・・トライアック、22、122・・・整流回路、23・・・保持電流制御部、23a・・・保持電流回路、23b・・・矩形波生成回路、23c・・・保持電流調整回路、24、124・・平滑回路、25、125・・・DC/DCコンバータ、30、130・・・LEDモジュール、50・・・スイッチング素子(第1のスイッチング素子)、53・・・トランジスタ(第2の電流制御素子)、54・・・トランジスタ(第1の電流制御素子)、58・・・コンデンサ(第1のコンデンサ)、66・・・抵抗(第1の抵抗)、67・・・抵抗(第2の抵抗)、70・・・スイッチング素子(第2のスイッチング素子)、123・・・保持電流回路。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9