(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】電圧調整装置及び線間電圧検出方法
(51)【国際特許分類】
G05F 1/14 20060101AFI20220224BHJP
H02J 3/12 20060101ALI20220224BHJP
H02J 3/26 20060101ALI20220224BHJP
H02M 5/12 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G05F1/14 Z
H02J3/12
H02J3/26
H02M5/12 A
(21)【出願番号】P 2018146043
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】土井 康輔
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-220500(JP,A)
【文献】特開2014-23303(JP,A)
【文献】特開2000-267746(JP,A)
【文献】特開2012-80654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 5/12
H02J 3/12,3/26
H01F 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の送配電線の三相交流電圧を変圧して調整する電圧調整装置であって、
自装置の一次側の第1線間電圧及び該第1線間電圧と同相である二次側の第1線間電圧を各別に検出する第1検出部と、
該第1検出部が検出した前記二次側の第1線間電圧に対する前記一次側の第1線間電圧の比である変圧比を算出する第1算出部と、
前記一次側又は前記二次側の第2線間電圧を検出する第2検出部と、
該第2検出部が第2線間電圧を検出した前記一次側又は前記二次側について、前記第1検出部が検出した第1線間電圧及び前記第2検出部が検出した第2線間電圧に基づいて第3線間電圧を算出する第3算出部と、
前記第2検出部が検出した第2線間電圧、前記第3算出部が算出した第3線間電圧及び前記第1算出部が算出した変圧比に基づいて、前記第2検出部が第2線間電圧を検出した前記一次側又は前記二次側とは反対側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出する第4算出部と
を備える電圧調整装置。
【請求項2】
前記第3算出部は、前記第1検出部が検出した第1線間電圧の大きさと、前記第2検出部が検出した第2線間電圧の大きさと、前記第1検出部が検出した第1線間電圧のベクトル及び前記第2検出部が検出した第2線間電圧のベクトルの位相差とに基づいて第3線間電圧を算出する請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項3】
前記第4算出部は、
前記第2検出部が前記一次側の第2線間電圧を検出した場合、前記第2検出部が検出した第2線間電圧及び前記第3算出部が算出した第3線間電圧夫々を、前記第1算出部が算出した変圧比で除して前記二次側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出し、前記第2検出部が前記二次側の第2線間電圧を検出した場合、前記第2検出部が検出した第2線間電圧及び前記第3算出部が算出した第3線間電圧夫々に、前記第1算出部が算出した変圧比を乗じて前記一次側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出する
請求項1又は2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
電力系統の送配電線の三相交流電圧を変圧して調整する電圧調整装置の一次側及び二次側の線間電圧を検出する方法であって、
前記一次側の第1線間電圧及び該第1線間電圧と同相である前記二次側の第1線間電圧を各別に検出するステップと、
検出した前記二次側の第1線間電圧に対する前記一次側の第1線間電圧の比である変圧比を算出するステップと、
前記一次側又は前記二次側の第2線間電圧を検出するステップと、
第2線間電圧を検出した前記一次側又は前記二次側について、検出した第1線間電圧及び第2線間電圧に基づいて第3線間電圧を算出するステップと、
検出した第2線間電圧、算出した第3線間電圧及び算出した変圧比に基づいて、第2線間電圧を検出した前記一次側又は前記二次側とは反対側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出するステップと
を含む線間電圧検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統の送配電線の三相交流電圧を変圧して調整する電圧調整装置及び該電圧調整装置による線間電圧検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動電圧調整器による電圧調整は、特定の2つの相の線間電圧を監視し、全ての線間について一律の制御方向及び制御量で電圧の昇降圧方向及び加減量を調整する方法が一般的である。この方法は配電系統の線間電圧が三相平衡であることを前提としているが、近年は太陽光発電やヒートポンプ式給湯器などの大容量単相機器が低圧配電線に接続されることが多くなっており、これらの機器が何れかの線間に偏って接続されることで高圧配電線が三相不平衡となる。この状態で、例えば自動電圧調整器が最小電圧の線間を監視して制御を行った場合、昇圧動作をするとその他の線間の電圧が上限値を逸脱する虞れがある。
【0003】
これに対し、非特許文献1に開示されているように、三相線間電圧の平均値を監視して電圧調整をする方法がある。この方法では、自動電圧調整器にて三相線間電圧を検出する必要があり、系統切替による逆送時の電圧調整を考慮すると、一次側及び二次側の三相線間電圧を検出しなければならない。このような電圧検出手段を追加することで自動電圧調整器を実現した場合、コストに対するメリットは小さい。
【0004】
また、特許文献1に開示されている方法で自動電圧調整器以外の機器を用いて三相不平衡を解消することも可能であるが、この方法についても自動電圧調整器で三相線間電圧を計測することが前提となっている。従来の自動電圧調整器は前述の通り三相線間電圧を監視していないため、三相不平衡の解消に活用することが難しい。その他には、特許文献2および非特許文献2に開示されているように、柱上変圧器の接続相を入れ替えて三相不平衡を解消する方法がある。この方法についても三相計測機能付開閉器にて系統の線間電圧における不平衡状態を把握する必要がある。
【0005】
上述のとおり、系統運用上、三相不平衡の解消のために各地点における三相線間電圧を計測するニーズがある。自動電圧調整器についても三相計測機能付開閉器と同様に遠方通信機能を有している場合があり、三相線間電圧を計測することが求められるが、コストアップや大型化を招くことなどから現状は三相線間電圧の計測機能が搭載されていないことが多い。このように計測機能が制限された機器にて一次側及び二次側の三相線間電圧を監視するために、特許文献3では、電圧検出手段により検出した二次側の線間電圧と現在タップ位置情報により、一次側の線間電圧を算出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-150694号公報
【文献】特開2017-005893号公報
【文献】特開2004-220500号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】上村 敏「配電線の三相不平衡時のSVRによる電圧制御の問題点と対策用制御方式の開発」電力中央研究所、2013年7月、研究報告:R12021
【文献】奥村 貴博「三相計測機能付開閉器データを活用した配電系統電圧不平衡を改善する柱上変圧器接続法」電力中央研究所、2015年7月、研究報告:R14003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に開示された方法を用いた場合であっても二次側の三相線間電圧を検出する必要があり、現在のタップ位置から一次側の線間電圧を算出した場合は、実際の変圧比に含まれる誤差のために算出の精度が落ちる。また、タップ切換器にタップ位置検出用の接点が搭載されていない場合は、接点を追加するのみならず、タップ切換器及び制御装置間の制御線を「タップ数+コモン端子数」だけ増設する必要があり、油密部や制御装置の構造変更も加わってコストアップになる可能性が高い。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電圧の検出手段の数が制約されている場合であっても、一次側及び二次側の線間電圧を検出することが可能な電圧調整装置及び線間電圧検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、電力系統の送配電線の三相交流電圧を変圧して調整する電圧調整装置であって、自装置の一次側の第1線間電圧及び該第1線間電圧と同相である二次側の第1線間電圧を各別に検出する第1検出部と、該第1検出部が検出した前記二次側の第1線間電圧に対する前記一次側の第1線間電圧の比である変圧比を算出する第1算出部と、前記一次側又は前記二次側の第2線間電圧を検出する第2検出部と、該第2検出部が第2線間電圧を検出した前記一次側又は前記二次側について、前記第1検出部が検出した第1線間電圧及び前記第2検出部が検出した第2線間電圧に基づいて第3線間電圧を算出する第3算出部と、前記第2検出部が検出した第2線間電圧、前記第3算出部が算出した第3線間電圧及び前記第1算出部が算出した変圧比に基づいて、前記第2検出部が第2線間電圧を検出した前記一次側又は前記二次側とは反対側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出する第4算出部とを備える。
【0011】
本開示の一態様に係る線間電圧検出方法は、電力系統の送配電線の三相交流電圧を変圧して調整する電圧調整装置の一次側及び二次側の線間電圧を検出する方法であって、前記一次側の第1線間電圧及び該第1線間電圧と同相である前記二次側の第1線間電圧を各別に検出するステップと、検出した前記二次側の第1線間電圧に対する前記一次側の第1線間電圧の比である変圧比を算出するステップと、前記一次側又は前記二次側の第2線間電圧を検出するステップと、第2線間電圧を検出した前記一次側又は前記二次側について、検出した第1線間電圧及び第2線間電圧に基づいて第3線間電圧を算出するステップと、検出した第2線間電圧、算出した第3線間電圧及び算出した変圧比に基づいて、第2線間電圧を検出した前記一次側又は前記二次側とは反対側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出するステップとを含む。
【0012】
本態様にあっては、一次側と二次側とで同相と見なせる第1線間電圧を夫々検出し、検出した2つの第1線間電圧の比を変圧比として算出し、更に、一次側又は二次側の第2線間電圧を検出する。一次側の第2線間電圧を検出した場合は、一次側の第1線間電圧及び第2線間電圧に基づいて一次側の第3線間電圧を算出し、検出した一次側の第2線間電圧と、算出した一次側の第3線間電圧と、算出した変圧比とに基づいて二次側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出する。これに対し、二次側の第2線間電圧を検出した場合は、二次側の第1線間電圧及び第2線間電圧に基づいて二次側の第3線間電圧を算出し、検出した二次側の第2線間電圧と、算出した二次側の第3線間電圧と、算出した変圧比とに基づいて一次側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出する。これにより、一次側及び二次側にて計3つの線間電圧を検出して演算することで、残り3つの線間電圧が精度よく算出される。
【0013】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記第3算出部は、前記第1検出部が検出した第1線間電圧の大きさと、前記第2検出部が検出した第2線間電圧の大きさと、前記第1検出部が検出した第1線間電圧のベクトル及び前記第2検出部が検出した第2線間電圧のベクトルの位相差とに基づいて第3線間電圧を算出する。
【0014】
本態様にあっては、一次側又は二次側の何れかについて、検出した第1線間電圧及び第2線間電圧夫々の大きさと、検出した第1線間電圧及び第2線間電圧夫々のベクトルの位相差とに基づいてスカラー演算することにより、第3線間電圧を算出する。これにより、2つの線間電圧を検出して演算することで、残り1つの線間電圧が精度よく算出される。
【0015】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記第4算出部は、前記第2検出部が前記一次側の第2線間電圧を検出した場合、前記第2検出部が検出した第2線間電圧及び前記第3算出部が算出した第3線間電圧夫々を、前記第1算出部が算出した変圧比で除して前記二次側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出し、前記第2検出部が前記二次側の第2線間電圧を検出した場合、前記第2検出部が検出した第2線間電圧及び前記第3算出部が算出した第3線間電圧夫々に、前記第1算出部が算出した変圧比を乗じて前記一次側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出する。
【0016】
本態様にあっては、一次側の第2線間電圧を検出した場合、検出した第2線間電圧及び算出した第3線間電圧夫々を変圧比で除算することによって、二次側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出する。一方、二次側の第2線間電圧を検出した場合、検出した第2線間電圧及び算出した第3線間電圧夫々に変圧比を乗算することによって、一次側の第2線間電圧及び第3線間電圧を算出する。これにより、1つの線間電圧のみが検出された一次側又は二次側について、残りの2つの線間電圧が精度よく算出される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電圧の検出手段の数が制約されている場合であっても、一次側及び二次側の線間電圧を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】電圧調整装置の二次側における線間電圧の電圧ベクトルを示すベクトル図である。
【
図3】計測されない線間電圧を算出するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る電圧調整装置100の構成例を示すブロック図である。図中1u,1v,1wは、U相,V相,W相を含む三相の交流電圧を送配電する一次側の送配電線であり、2u,2v,2wは、二次側の送配電線である。送配電線1w,1u間には、計測用変圧器21wuの一次巻線が接続されている。送配電線2w,2u間には、計測用変圧器22wuの一次巻線が接続されている。送配電線2u,2v間には、計測用変圧器22uvの一次巻線が接続されている。
【0020】
電圧調整装置100は、U相,V相,W相夫々の交流電圧を一次側から二次側へ、又は二次側から一次側へ変圧するタップ付きの調整変圧器10u,10v,10wと、夫々のタップを切り換えるタップ切換器11u,11v,11wと、装置全体を制御する制御部20とを備える。
【0021】
調整変圧器10u,10v,10wは、巻線がスター(Y)結線された状態で各巻線の一端が送配電線2u,2v,2wに接続されている。調整変圧器10u,10v,10wの夫々は、タップt1からタップt9まで9つのタップを有するが、タップの数が9つに限定されるものではない。
【0022】
タップ切換器11u,11v,11w夫々は、調整変圧器10u,10v,10wのタップを切り換えるものであり、切り換えられたタップが送配電線1u,1v,1wに夫々接続される。タップの切り換えは、制御部20からの切換指令によって行われる。
【0023】
制御部20は、不図示のCPU(Central Processing Unit )を有し、該CPUがROM(Read Only Memory )に記憶された制御プログラムを実行することにより、入出力、演算、時間の計測等の処理を行う。制御部20には、計測用変圧器21wu,22wu,22uv夫々の二次巻線と、タップ切換器11u,11v,11w夫々に対する切換指令の入力部とが接続されている。計測用変圧器21wu,22wu,22uvが電圧調整装置100に含まれていてもよい。制御部20をマイクロコンピュータ又は専用のハードウェア回路で構成してもよい。
【0024】
制御部20のCPUは、計測用変圧器21wu,22wu,22uv夫々の二次巻線から電圧を取得して、一次側のWU相間の線間電圧(第1線間電圧に相当),二次側のWU相間の線間電圧(第1線間電圧に相当),二次側のUV相間の線間電圧(第2線間電圧に相当)を検出する。そして、CPUは、検出した各線間電圧に基づいてタップ切換器11u,11v,11wに切換指令を与える。計測用変圧器21wu,22wu,22uv夫々の二次巻線に電圧検出部が設けられている場合は、制御部20のCPUが、これらの電圧検出部から各線間電圧の検出結果を取得すればよい。
【0025】
次に、計測用変圧器が接続されていない二次側のVW相間の線間電圧を算出する方法について説明する。
図2は、電圧調整装置100の二次側における線間電圧の電圧ベクトルを示すベクトル図である。本明細書では、電圧ベクトルを表す文字列に対するドットの表記を省略する。図中V2wu及びV2uv夫々は、検出されたWU相間及びUV相間の線間電圧を表す電圧ベクトルである。V2vwは、VW相間の線間電圧を表す電圧ベクトルである。V2uv,V2vw,V2wu夫々の電圧ベクトルのベクトル和が0となるため、
図2に示す閉じた三角形が描かれる。
【0026】
ここで、V2wu,V2uv,V2vw夫々の電圧ベクトルの始点をA,B,Cで表し、点Bから線分ACに下ろした垂線の足を点Pとする。また、V2wuの電圧ベクトルに対するV2uvの電圧ベクトルの相対的な位相角(即ち位相差)をθとし、V2wuの電圧ベクトルを反転したベクトルに対するV2vwの電圧ベクトルの相対的な位相角をφとする。以下では、例えば線分APの長さを単にAPと表す。また例えばV2wuの電圧ベクトルの大きさを|V2wu|で表す。他の線分及び電圧ベクトルの大きさについても同様である。
【0027】
図2より、BPは以下の式(1)で表される。そしてAPは以下の式(2)で表されるから、PCは以下の式(3)で表される。
【0028】
BP=|V2uv|sin(π-θ)=|V2uv|sinθ・・・・・・・・(1)
AP=|V2uv|cos(π-θ)=-|V2uv|cosθ・・・・・・・(2)
PC=AC-AP=|V2wu|+|V2uv|cosθ・・・・・・・・・・(3)
【0029】
次いで、直角三角形BPCに三平方の定理を適用することにより、BC即ちV2vwの電圧ベクトルの大きさ|V2vw|は、以下の式(4)で表される。そして式(4)の右辺に式(1)及び(3)を代入することにより、式(4)が式(5)のとおり変形される。
【0030】
|V2vw|=√{(BP)2 +(PC)2 }・・・・・・・・・・・・・・・(4)
|V2vw|=√{(|V2uv|sinθ)2
+(|V2wu|+|V2uv|cosθ)2 }
=√{|V2uv|2 +|V2wu|2
+2|V2uv|×|V2wu|cosθ}・・・・・・・・(5)
【0031】
一方、V2vwの電圧ベクトルの相対的な位相角φは、
図2より以下の式(6)で表される。そして式(6)の右辺に式(1)及び(3)を代入することにより、式(6)が式(7)のとおり変形される。
【0032】
φ=arctan(BP/PC)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)
φ=arctan{(|V2uv|sinθ)
/(|V2wu|+|V2uv|cosθ)}・・・・・・(7)
【0033】
以上のとおり、V2vwの電圧ベクトルの大きさがスカラー量として式(5)により算出される。また、V2vwの電圧ベクトルの相対的な位相角φが式(7)によって算出される。なお、制御部20が、各タップの切り換えを制御する際に線間電圧の大きさを用いる場合は、位相角φを算出しなくてもよい。
【0034】
次に、計測用変圧器が接続されていない一次側のUV相間及びVW相間夫々の線間電圧を算出する方法について説明する。一次側のUV相間の線間電圧は、二次側のUV相間の線間電圧と同相であり、二次側のUV相間の線間電圧に変圧比を乗じたものであると見なせる。同様に、一次側のVW相間の線間電圧は、二次側のVW相間の線間電圧と同相であり、二次側のVW相間の線間電圧に変圧比を乗じたものであると見なせる。一方、電圧調整装置100による変圧比aは、以下の式(8)で表される。
【0035】
a=一次側のWU相間の線間電圧の大きさ/二次側のWU相間の線間電圧の大きさ
=|V1wu|/|V2wu|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(8)
【0036】
従って、一次側のUV相間の線間電圧V1uv及び一次側のVW相間の線間電圧V1vw夫々は、式(8)で算出した変圧比aを用いた以下の式(9)及び(10)により、V2uv及びV2vwと同相の電圧として算出される。
【0037】
V1uv=V2uv×a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9)
V1vw=V2vw×a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(10)
【0038】
以下では、上述した制御部20の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。
図3は、計測されない線間電圧を算出するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図3の処理は、例えば一定の周期で起動され、不図示のROMに予め格納されているコンピュータプログラムに従ってCPUにより実行される。
【0039】
図3の処理が起動された場合、CPUは、計測用変圧器21wuの二次巻線から電圧を取得して、一次側のWU相間の線間電圧V1wuを検出し(S11)、更に計測用変圧器22wuの二次巻線から電圧を取得して、二次側のWU相間の線間電圧V2wuを検出する(S12)。ステップS11及びS12が、第1検出部に相当する。ここで検出される電圧は、大きさ及び相対的な位相角で表される電圧ベクトルである。次いで、CPUは、検出したV1wu及びV2wu夫々の絶対値を式(8)の右辺に代入して、変圧比aを算出する(S13:第1算出部に相当)。ステップS11~S13と、ステップS14とで実行順序を逆にしてもよい。
【0040】
その後、CPUは、計測用変圧器22uvの二次巻線から電圧を取得して、二次側のUV相間の線間電圧V2uvを電圧ベクトルとして検出する(S14:第2検出部に相当)。次いで、CPUは、WU相間の線間電圧V2wu及びUV相間の線間電圧V2uvの位相差θを算出し(S15)、この算出値と、V2uv及びV2wuの絶対値とを式(5)及び(7)の右辺に代入して、VW相間の二次側の線間電圧V2vwの絶対値及び相対的な位相角φを算出する。これにより、線間電圧V2vwが電圧ベクトルとして算出される(S16:第3算出部に相当)。
【0041】
その後、CPUは、ステップS14で算出したV2uvを式(9)の右辺に代入して、一次側のUV相間の線間電圧V1uvを算出する(S17)。CPUは、更に、ステップS16で算出したV2vwを式(10)の右辺に代入して、一次側のVW相間の線間電圧V1vwを算出し(S18)、
図3の処理を終了する。ステップS17,S18が第4算出部に相当する。
【0042】
なお、
図3に示す処理では、線間電圧V2vw,V1uv,V1vwを電圧ベクトルとして算出したが、これらの線間電圧の大きさのみを用いる場合は、式(5),(9),(10)夫々によって線間電圧V2vw,V1uv,V1vwの絶対値のみを算出すればよい。
【0043】
本実施形態にあっては、一次側及び二次側で同相の線間電圧であるV1wu及びV2wuを検出して変圧比aを算出したが、V1uv及びV2uvを検出するか、又は、V1vw及びV2vwを検出しても、式(8)と同様の式によって変圧比aを算出することができる。V1uv及びV2uvを第1線間電圧として検出した場合は、二次側のV2vw(又はV2wu)を第2線間電圧として検出し、式(5)及び(7)と同様の式によって二次側のV2wu(又はV2vw)を第3線間電圧して算出すればよい。更にこの場合、V2vw(又はV2wu)に変圧比aを乗じて一次側のV1vw(又はV1wu)を第2線間電圧として算出し、二次側のV2wu(又はV2vw)に変圧比aを乗じて一次側のV1wu(又はV1vw)を第3線間電圧として算出すればよい。
【0044】
一方、V1vw及びV2vwを第1線間電圧として検出した場合は、二次側のV2wu(又はV2uv)を第2線間電圧として検出し、式(5)及び(7)と同様の式によって二次側のV2uv(又はV2wu)を第3線間電圧して算出すればよい。更にこの場合、V2wu(又はV2uv)に変圧比aを乗じて一次側のV1wu(又はV1uv)を第2線間電圧として算出し、二次側のV2uv(又はV2wu)に変圧比aを乗じて一次側のV1uv(又はV1wu)を第3線間電圧として算出すればよい。
【0045】
また、本実施形態にあっては、一次側のV1wu及び二次側のV2wuの他に、二次側のV2uvを検出し、検出したこれらの電圧に基づいて変圧比a及び二次側のV2vwを算出すると共に、一次側のV1uv及びV1vwを算出したが、このような方法に限定されない。具体的には、検出する線間電圧と算出する線間電圧との関係を一次側と二次側とで逆転させてもよい。
【0046】
より具体的には、例えば一次側のV1wu及び二次側のV2wuの他に、一次側のV1uvを検出し、検出したこれらの電圧に基づいて変圧比a及び一次側のV1vwを算出すると共に、二次側のV2uv及びV2vwを算出してもよい。この場合、一次側のV1uvは第2線間電圧として検出され、一次側のV1vwは、式(5)及び(7)と同様の式によって第3線間電圧として算出される。また、二次側のV2uvは、一次側のV1uvを変圧比aで除して算出され、二次側のV2vwは、一次側のV1vwを変圧比aで除して算出される。
【0047】
以上のように本実施形態によれば、一次側と二次側とで同相と見なせるV1wu及びV2wuを夫々検出し、検出したV2wuに対するV1wuの比の絶対値を変圧比として算出し、更に、二次側のV2uv又は一次側のV1uvを検出する。二次側のV2uvを検出した場合は、二次側のV2wu及びV2uvに基づいて二次側のV2vwを算出し、検出した二次側のV2uvと、算出した二次側のV2vwと、算出した変圧比aとに基づいて一次側のV1uv及びV1vwを算出する。これに対し、一次側のV1uvを検出した場合は、一次側のV1wu及びV1uvに基づいて一次側のV1vwを算出し、検出した一次側のV1uvと、算出した一次側のV1vwと、算出した変圧比aとに基づいて二次側のV2uv及びV2vwを算出する。これにより、一次側及び二次側にて計3つの線間電圧を検出して演算することで、残り3つの線間電圧が精度よく算出される。従って、電圧の検出手段の数が制約されている場合であっても、一次側及び二次側の線間電圧を検出することが可能が可能となる。
【0048】
また、実施形態によれば、二次側のV2uvを検出した場合は、検出したV2wu及びV2uv夫々の大きさと、検出したV2wu及びV2uv夫々の電圧ベクトルの位相差とに基づいてスカラー演算することにより、V2vwを算出する。また、一次側のV1uvを検出した場合は、検出したV1wu及びV1uv夫々の大きさと、検出したV1wu及びV1uv夫々の電圧ベクトルの位相差とに基づいてスカラー演算することにより、V1vwを算出する。従って、2つの線間電圧を検出して演算することで、残り1つの線間電圧を精度よく算出することができる。
【0049】
更に、実施形態によれば、二次側のV2uvを検出した場合、検出したV2uv及び算出したV2vw夫々に変圧比aを乗算することによって、一次側のV1uv及びV1vwを算出する。一方、一次側のV1uvを検出した場合、検出したV1uv及び算出したV1vw夫々を変圧比aで除算することによって、二次側のV2uv及びV2vwを算出する。従って、1つの線間電圧のみが検出された一次側又は二次側について、残りの2つの線間電圧を精度よく算出することができる。
【0050】
なお、本実施形態にあっては、一次側及び二次側で計3つの線間電圧を検出して残り3つの線間電圧を算出したが、一次側及び二次側で計3つの相電圧を検出して残り3つの相電圧を算出してもよい。具体的に、U相,V相,W相夫々の相電圧をEu,Ev,Ewで表す場合、例えば二次側のEw及びEuと一次側のEwとを検出し、検出した各相電圧に基づいて、二次側のEvと一次側のEu及びEvとを算出することができる。
【0051】
より具体的には、Eu,Ev,Ew夫々の電圧ベクトルのベクトル和が0となるため、Eu,Ev,Ewの電圧ベクトルについて、
図2に示す三角形と同様の閉じた三角形が描かれる。従って、式(5)及び(7)と同様の式によって、二次側のEvの絶対値及び相対的な位相角が算出される。また、一次側と二次側とで夫々検出したEwが同相であると見なせるため、式(8)と同様の式によって変圧比aが算出される。そして、二次側のEu及びEvに算出した変圧比aを乗じて一次側のEu及びEvが算出される。
【0052】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
100 電圧調整装置
1u、1v、1w (一次側の)送配電線
2u、2v、2w (二次側の)送配電線
10u、10v、10w 調整変圧器
11u、11v、11w タップ切換器
t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7、t8、t9 タップ
20 制御部
21wu (一次側の)計測用変圧器
22wu、22uv (二次側の)計測用変圧器