IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置 図5
  • 特許-半導体装置 図6
  • 特許-半導体装置 図7
  • 特許-半導体装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20220224BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220224BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/06 301D
H01L29/06 301V
H01L29/78 652B
H01L29/78 652F
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652C
H01L29/78 658A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018154251
(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公開番号】P2020031088
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩明
(72)【発明者】
【氏名】小野 昇太郎
(72)【発明者】
【氏名】一條 尚生
(72)【発明者】
【氏名】菅原 秀人
(72)【発明者】
【氏名】大田 浩史
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-149736(JP,A)
【文献】特開平10-107283(JP,A)
【文献】特開2009-289988(JP,A)
【文献】特開2011-003609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、を含む半導体部と、
前記半導体部の表面上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の裏面上に設けられた第2電極と、
前記半導体部と前記第1電極との間に設けられ、前記半導体部の表面に第1絶縁膜を介して向き合い、前記第1電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁された制御電極と、
を備え、
前記第2半導体層は、前記半導体部の表面に沿った第1方向おいて前記第1半導体層の一部と前記第1半導体層の別の一部との間に位置し、
前記半導体部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層に接する第2導電形の第3半導体層と、前記第3半導体層中に選択的に設けられた第1導電形の第4半導体層と、をさらに含み、前記半導体部の表面は、前記第3半導体層の表面および前記第4半導体層の表面を含み、
前記第3半導体層は、前記第1半導体層の前記一部中に位置する第1端部と、前記第2半導体層中に位置する第2端部と、を有し、
前記第4半導体層は、前記第3半導体層の前記第2端部に設けられ、
前記第1電極は、前記第3半導体層および前記第4半導体層に電気的に接続され、
前記制御電極は、前記第4半導体層と第1半導体層の前記別の一部との間に位置する前記第3半導体層の一部および前記第2半導体層の一部、および、前記第1半導体層の前記別の一部に向き合う半導体装置。
【請求項2】
前記第1電極と前記第3半導体層の前記第1端部との間には、前記第4半導体層は設けられない請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体層および前記第2半導体層は、前記第1方向と交差し、前記半導体部の前記表面に沿った第2方向、および、前記半導体部の前記表面と交差する第3方向に延びる請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3半導体層、前記第4半導体層および前記制御電極は、前記第2方向に延びる請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体部は、第2導電形の第5半導体層と、第1導電形の第6半導体層と、をさらに含み、前記第5半導体層は、前記第1半導体層の前記別の一部および前記第2半導体層に接し、前記第6半導体層は、前記第5半導体層中に選択的に設けられ、
前記第1電極は、前記第5半導体層および前記第6半導体層に電気的に接続され、
前記半導体部は、前記第2方向に交互に配置された第1領域と第2領域とを含み、
前記第1領域は、前記第3半導体層と前記第4半導体層とを含み、
前記第2領域は、前記第5半導体層と、前記第6半導体層と、を含み、
前記半導体部の前記表面は、前記第5半導体層の表面および前記第6半導体層の表面を含み、
前記第5半導体層は、前記第1半導体層の前記別の一部中に位置する第3端部と、前記第2半導体層中に位置する第4端部と、を有し、
前記第6半導体層は、前記第5半導体層の第4端部に設けられた請求項3記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力制御用の高耐圧半導体装置には、低オン抵抗と高いアバランシェ耐量を有することが求められる。しかしながら、オン抵抗の低減とアバランシェ耐量の向上はトレードオフ関係にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-103337号公報
【文献】特開2012-39082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、アバランシェ耐量を低下させないで、オン抵抗を低減できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、を含む半導体部と、前記半導体部の表面上に設けられた第1電極と、前記半導体部の裏面上に設けられた第2電極と、前記半導体部と前記第1電極との間に設けられ、前記半導体部の表面に第1絶縁膜を介して向き合い、前記第1電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁された制御電極と、を備える。前記第2半導体層は、前記半導体部の表面に沿った第1方向おいて前記第1半導体層の一部と前記第1半導体層の別の一部との間に位置する。前記半導体部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層に接する第2導電形の第3半導体層と、前記第3半導体層中に選択的に設けられた第1導電形の第4半導体層と、をさらに含む。前記半導体部の表面は、前記第3半導体層の表面および前記第4半導体層の表面を含む。前記第3半導体層は、前記第1半導体層の前記一部中に位置する第1端部と、前記第2半導体層中に位置する第2端部と、を有する。前記第4半導体層は、前記第3半導体層の前記第2端部に設けられ、前記第1電極は、前記第3半導体層および前記第4半導体層に電気的に接続され、前記制御電極は、前記第4半導体層と第1半導体層の前記別の一部との間に位置する前記第3半導体層の一部および前記第2半導体層の一部、および、前記第1半導体層の前記別の一部に向き合う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置を示す模式平面図である。
図3】第1実施形態に係る半導体装置の製造過程を示す模式断面図である。
図4図3に続く製造過程を示す模式断面図である。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の動作を示す模式断面図である。
図6】第1実施形態の変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図7】第2実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図8】第2実施形態に係る半導体装置の製造過程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置1を示す模式断面図である。半導体装置1は、例えば、スーパージャンクション構造を有するパワーMOSトランジスタである。
【0010】
図1に示すように、半導体装置1は、半導体部10と、ソース電極20と、ドレイン電極30と、ゲート電極40と、を備える。半導体装置1は、ソース電極20とドレイン電極30との間に半導体部10を配置した縦型構造を有する。ソース電極20は、半導体部10の表面上に設けられる。ドレイン電極30は、半導体部10の裏面上に設けられる。
【0011】
半導体部10は、n形ピラー層12と、p形ピラー層13と、p形拡散層15と、n形ソース層17と、を含む。
【0012】
n形ピラー層12およびp形ピラー層13は、例えば、半導体部10の表面に沿ったX方向に交互に配置される。n形ピラー層12およびp形ピラー層13は、例えば、半導体部10の表面と交差するZ方向に延びる。
【0013】
p形拡散層15は、半導体部10の表面側に選択的に設けられる。p形拡散層15は、X方向において隣接するn形ピラー層12およびp形ピラー層13の上に設けられる。また、p形拡散層15は、半導体部10の表面に露出されるように設けられる。さらに、p形拡散層は、n形ピラー層12中に位置する第1端部15aと、p形ピラー層13中に位置する第2端部15bと、を有する。
【0014】
n形ソース層17は、p形拡散層15中に選択的に設けられる。n形ソース層17は、p形拡散層15の第2端部15bにおいて、半導体部10の表面に露出するように設けられる。
【0015】
半導体部10は、n形半導体層11と、n形ドレイン層19と、をさらに含む。n形半導体層11は、p形ピラー層13とドレイン電極30との間に位置し、n形ピラー層12につながるように設けられる。n形ドレイン層19は、n形半導体層11とドレイン電極30との間に位置する。n形ドレイン層19は、n形半導体層11のn形不純物よりも高濃度のn形不純物を含み、ドレイン電極30に接する。
【0016】
ゲート電極40は、半導体部10とソース電極20との間に配置され、ゲート絶縁膜43を介して半導体部10の表面に向き合うように設けられる。ゲート電極40は、n形ソース層17と、p形拡散層15の第2端部15bに近接したn形ピラー層12と、の間において、ゲート絶縁膜43を介して、p形ピラー層13の露出面、および、p形拡散層15の露出面の一部に向き合うように配置される。また、ゲート電極40は、ゲート絶縁膜43を介してn形ピラー層12の露出面に向き合うように配置される。
【0017】
ソース電極20は、半導体部10の表面およびゲート電極40を覆うように設けられる。ソース電極20は、p形拡散層15の露出面およびn形ソース層17の露出面に接する。また、ソース電極20は、絶縁膜45によりゲート電極40から電気的に絶縁される。
【0018】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置1を示す模式平面図である。図2は、n形ピラー層12、p形ピラー層13およびp形拡散層15の配置を示す模式図である。
【0019】
図2に示すように、n形ピラー層12およびp形ピラー層13は、Y方向に延びるように設けられる。n形ピラー層12およびp形ピラー層13は、X方向に交互に配置される。p形拡散層15、図示しないn形ソース層17およびゲート電極40も、例えば、半導体部10の表面に沿ってY方向に延びる。
【0020】
図3(a)~図4(b)は、第1実施形態に係る半導体装置1の製造過程を順に示す模式断面図である。半導体装置1は、n形半導体基板SSと、その上に形成されたn形半導体層11と、を含むウェーハを用いて製造される。n形半導体基板SSは、例えば、シリコン基板であり、n形半導体層11は、例えば、n形シリコン層である。
【0021】
図3(a)に示すように、n形半導体層11に複数の溝STを形成する。溝STは、例えば、Y方向に延在する。n形半導体層11における溝STにより分割された部分は、n形ピラー層12となる。
【0022】
図3(b)に示すように、溝STの内部を埋め込むようにp形半導体層23を形成する。p形半導体層23は、例えば、p形シリコン層である。p形半導体層23は、溝STを埋め込んだ部分に含まれるp形不純物の量が、n形ピラー層12に含まれるn形不純物の量とバランスするように形成される。
【0023】
図4(a)に示すように、溝STの内部にp形ピラー層13を残して、p形半導体層23をエッチバックする。これにより、n形ピラー層12とp形ピラー層13を交互に配置したスーパージャンクション構造が形成される。続いて、p形拡散層15およびn形ソース層17を選択的に形成する。
【0024】
p形拡散層15は、例えば、n形ピラー層12およびp形ピラー層13の上端にイオン注入法を用いてp形不純物を導入した後、ウェーハを熱処理してp形不純物を拡散させることにより形成される。
【0025】
n形ソース層17は、例えば、イオン注入法を用いてp形拡散層15中にn形不純物を導入することにより形成される。n形ソース層17は、p形拡散層15におけるp形ピラー層13の上に位置する部分に形成される。
【0026】
図4(b)に示すように、n形ピラー層12およびp形ピラー層13の上に、ゲート絶縁膜43を介してゲート電極40を形成する。さらに、ゲート電極40を覆う絶縁膜45を形成した後、ソース電極20を形成する(図1参照)。続いて、n形半導体基板SSの裏面を研磨もしくは研削することにより、n形ドレイン層19を形成する(図1参照)。さらに、n形ドレイン層19に接するドレイン電極30を形成することにより、半導体装置1を完成させる。
【0027】
上記のスーパージャンクション構造では、例えば、n形ピラー層12のX方向の幅Wおよびp形ピラー層13のX方向の幅Wを狭くし、n形ピラー層12およびp形ピラー層13の不純物濃度を高くすることにより、耐圧を保ちつつ単位面積あたりのオン抵抗を低減することができる。
【0028】
一方、p形拡散層15を形成する熱処理の過程において、n形ピラー層12中のn形不純物およびp形ピラー層13中のp形不純物も拡散する。このため、n形ピラー層12とp形ピラー層13との間で相互に拡散したn形不純物およびp形不純物によるp形キャリアおよびn形キャリアの補償効果が生じる。この結果、スーパージャンクション構造中のキャリア濃度が低下し、半導体装置1のオン抵抗を十分に低減できないことがある。
【0029】
例えば、熱処理により補償されるキャリア濃度を加味して不純物濃度を増加させることにより、オン抵抗を低減する方法があるが、その場合、製造工程におけるばらつきの影響が大きくなり、安定したオン抵抗を実現することは難しい。したがって、p形拡散層15を形成する際の熱処理温度を低くするか、もしくは、熱処理時間を短くして、n形不純物およびp形不純物の拡散を抑制することが好ましい。
【0030】
しかしながら、熱処理温度の低下もしくは熱処理時間の短縮によりp形不純物の拡散が抑制されると、p形拡散層15の深さT図4(a)参照)が浅くなる。このため、p形拡散層15の第1端部15aおよび第2端部15bにおける電界集中が生じ易くなる。本実施形態に係る半導体装置1では、n形ソース層17が設けられない第1端部15aをn形ピラー層12中に配置し、n形ソース層17が設けられる第2端部15bをp形ピラー層13中に配置することにより、電界集中によるアバランシェ耐量の低下を回避し、オン抵抗を低減することができる。
【0031】
図5(a)は、第1実施形態に係る半導体装置1の動作を示す模式断面図である。図5(b)は、比較例に係る半導体装置2の動作を示す模式断面図である。図5(a)および図5(b)には、半導体装置1および2がアバランシェ動作状態にある場合のホール電流の経路を示している。
【0032】
図5(a)に示すように、半導体装置1は、n形ピラー層12中に位置するp形拡散層15の第1端部15aを通過してソース電極20(図1参照)へ流れる経路HP1と、p形ピラー層13中に位置する第2端部15bを通過してソース電極20へ流れる経路HP2と、を有する。
【0033】
半導体装置1では、p形ピラー層13中に位置する第2端部15bの電界は、n形ピラー層12中に位置する第1端部15aの電界よりも低く抑えられる。このため、経路HP2を通過して流れるホール電流は、経路HP1を通過して流れるホール電流よりも少なくなる。このため、経路HP2では、例えば、n形ピラー層12、p形拡散層15およびn形ソース層17により構成される寄生トランジスタのターンオンを回避できる。
【0034】
一方、第1端部15aには、n形ソース層17が設けられていないため、経路HP1に寄生トランジスタは存在しない。また、p形拡散層15の空乏化によるパンチスルー現象も生じない。したがって、半導体装置1では、寄生トランジスタのターンオンおよびp形拡散層15におけるパンチスルーを抑制することにより、アバランシェ耐量を大きくすることができる。
【0035】
図5(b)に示す半導体装置2では、p形拡散層15の両側に位置する端部15cは、共にn形ピラー層12中に位置する。また、n形ソース層17は、p形拡散層15の両方の端部15cに設けられる。このため、ホール電流の経路HP3は、p形拡散層15の両側に形成される。
【0036】
半導体装置2では、p形拡散層15の両方の端部15cにおいて電界集中が生じ、経路HP3を介して同じレベルのホール電流が流れる。このため、寄生トランジスタのターンオンを回避することが難しく、アバランシェ耐量が低下する。
【0037】
また、ホール電流は、必ずしもp形拡散層15の両方の端部15cを介して均等に流れる訳ではなく、どちらか一方に流れることがある。このような場合、ホール電流の経路HP3は、p形拡散層15の2つの端部15cのいずれかに固定される訳ではなく、例えば、温度上昇による電気抵抗の変化に起因して、2つの端部15cのいずれか一方から他方に移動する。すなわち、半導体装置2では、アバランシェポイントが移動する。これに対し、半導体装置1では、ホール電流の流れが経路HP1に固定されるため、アバランシェポイントの移動により生じる発振現象を抑制することもできる。
【0038】
図6(a)~(c)は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置3を示す模式断面図である。図6(a)は、n形ピラー層12、p形ピラー層13およびp形拡散層15の配置を示す模式図である。図6(b)は、図6(a)中に示すA-A線に沿った断面を示す模式図である。図6(c)は、図6(a)中に示すB-B線に沿った断面を示す模式図である。
【0039】
図6(a)に示すように、この例でも、n形ピラー層12およびp形ピラー層13は、Y方向に延在する。これに対し、p形拡散層15は、Y方向に交互に配置されたp形拡散層15Aとp形拡散層15Bとを含む。
【0040】
図6(b)に示すように、p形拡散層15Aは、n形ピラー層12aおよびp形ピラー層13の上に設けられる。また、p形拡散層15Aは、n形ピラー層12a中に位置する第1端部15aと、p形ピラー層13中に位置する第2端部15bと、を有する。n形ソース層17は、第2端部15b中に設けられる。
【0041】
図6(c)に示すように、p形拡散層15Bは、n形ピラー層12bおよびp形ピラー層13の上に設けられる。n形ピラー層12bは、X方向においてn形ピラー層12aに隣接する。p形ピラー層13は、n形ピラー層12aとn形ピラー層12bとの間に位置する。すなわち、n形ピラー層12bは、X方向においてn形ピラー層12aとp形ピラー層13を介して対向する。
【0042】
p形拡散層15Bは、n形ピラー層12b中に位置する第1端部15aと、p形ピラー層13中に位置する第2端部15bと、を有する。n形ソース層17は、第2端部15b中に設けられる。
【0043】
半導体装置3は、p形ピラー層13の両側においてドレイン電流が流れるように構成される。半導体装置3がターンオンされた状態において、ドレイン電流は、ゲート電極40の下に位置するp形領域とゲート絶縁膜43との界面に形成される反転層を介してn形ピラー層12からn形ソース層17へ流れる。
【0044】
半導体装置3では、p形ピラー層13の両側に位置するn形ピラー層12に均等にドレイン電流を流す。これにより、p形拡散層15の片方の端部だけにn形ソース層17を形成することに起因したオン抵抗の上昇を緩和することができる。
【0045】
(第2実施形態)
図7(a)および(b)は、第2実施形態に係る半導体装置4および5を示す模式断面図である。図7(a)は、トレンチゲート型MOSトランジスタを示す模式図である。図7(b)は、スーパージャンクション構造を有するトレンチゲート型MOSトランジスタを示す模式図である。
【0046】
図7(a)に示すように、半導体装置4は、ソース電極20と、ドレイン電極30と、ゲート電極60と、半導体部50と、を備える。ソース電極20は、半導体部50の表面上に設けられ、ドレイン電極30は、半導体部50の裏面上に設けられる。ゲート電極60は、ソース電極20と半導体部50との間に位置し、半導体部50に設けられたゲートトレンチGTの内部にゲート絶縁膜63を介して配置される。
【0047】
半導体部50は、n形ドリフト層51と、p形拡散層53と、n形ソース層55と、p形コンタクト層57と、n形ドレイン層59と、を含む。p形拡散層53は、ソース電極20とn形ドリフト層51との間に位置し、例えば、n形ドリフト層51に接する。n形ソース層55は、ソース電極20とp形拡散層53との間に位置し、ソース電極20およびp形拡散層53に接するように設けられる。また、n形ソース層55は、ソース電極20とp形拡散層53との間に選択的に設けられ、ゲート絶縁膜63に接する位置に配置される。
【0048】
p形コンタクト層57は、ソース電極20とp形拡散層53との間に選択的に設けられ、ソース電極20およびp形拡散層53に接する。p形コンタクト層57は、p形拡散層53よりも高濃度のp形不純物を含む。n形ドレイン層59は、ドレイン電極30とn形ドリフト層51との間に位置し、ドレイン電極30およびn形ドリフト層51に接する。n形ドレイン層59は、n形ドリフト層51よりも高濃度のn形不純物を含む。
【0049】
ゲートトレンチGTは、半導体部50の表面からn形ドリフト層51の内部に至る深さを有し、例えば、Y方向に延びる。ゲート電極60は、ゲートトレンチGTの内部において、Y方向に延在する。また、ゲート電極60は、ゲートトレンチGTの内部に露出されたn形ドリフト層51、p形拡散層53およびn形ソース層55にゲート絶縁膜63を介して向き合うように設けられる。
【0050】
半導体部50は、p形拡散層54をさらに含む。p形拡散層54は、n形ドリフト層51とゲート電極60との間に設けられ、ゲート絶縁膜63に接する。p形拡散層54は、例えば、X方向におけるゲート電極60の一方の側面に沿って延在する。p形拡散層54は、p形拡散層53につながるように設けられる。
【0051】
p形拡散層54は、例えば、X方向におけるゲート電極60の両側の側面のうちのn形ソース層55に向き合う側面の側には設けられない。また、n形ソース層55は、例えば、X方向におけるゲート電極60の両側の側面のうちのp形拡散層54に向き合う側面の側には設けられない。
【0052】
p形拡散層54は、n形ドリフト層51中のゲート電極60の下端まで延在する。このため、例えば、半導体装置4がアバランシェ動作状態にある場合 、ゲート電極60の下端近傍の高電界領域で生じた正孔は、p形拡散層54を経由する排出経路HP1を介してソース電極20へ移動する。これに対し、ゲート電極60の反対側の側面に沿った領域にはp形拡散層54が設けられていない。このため、この領域を経由する経路HP2を介してソース電極20へ排出される正孔は低減される。
【0053】
これにより、n形ドリフト層51、p形拡散層53およびn形ソース層55で構成される寄生トランジスタのターンオンを抑制し、半導体装置4のアバランシェ耐量を向上させることができる。また、正孔の排出が経路HP1に固定されるため、アバランシェポイントの移動により生じる発振現象を抑制することもできる。
【0054】
図7(b)に示すように、半導体装置5は、ソース電極20と、ゲート電極60と、半導体部70と、を備える。ソース電極20は、半導体部70の表面上に設けられ、ゲート電極60は、ゲートトレンチGTの内部にゲート絶縁膜63を介して配置される。なお、図7(b)では、ドレイン電極30およびn形ドレイン層19(図1参照)を省略している。
【0055】
半導体部70は、n形半導体層11と、n形ピラー層12と、p形ピラー層13と、p形拡散層53と、n形ソース層55と、p形コンタクト層57と、を含む。n形ピラー層12とp形ピラー層13は、例えば、X方向に交互に配置される。n形半導体層11は、p形ピラー層13の下方に位置し、n形ピラー層12につながるように配置される。
【0056】
p形拡散層53は、ソース電極20とn形ピラー層12との間、および、ソース電極20とp形ピラー層13との間、に位置する。n形ソース層55は、ソース電極20とp形拡散層53との間に選択的に設けられ、ゲート絶縁膜63に接する位置に配置される。p形コンタクト層57は、ソース電極20とp形拡散層53との間に選択的に設けられ、ソース電極20およびp形拡散層53に接する。
【0057】
ゲートトレンチGTは、n形ピラー層12中に設けられ、半導体部70の表面からn形ピラー層12に至る深さを有する。ゲート電極60は、ゲートトレンチGTの内部に配置され、ゲート電極60の下端は、n形ピラー層12の内部に位置する。
【0058】
半導体部50は、p形拡散層54をさらに含む。p形拡散層54は、n形ピラー層12中に設けられ、例えば、X方向におけるゲート電極60の一方の側面に沿って延在する。p形拡散層54は、p形拡散層53につながるように設けられる。p形拡散層54は、例えば、X方向におけるゲート電極60の両側の側面のうちのn形ソース層55に向き合う側面の側には設けられない。また、n形ソース層55は、例えば、X方向におけるゲート電極60の両側の側面のうちのp形拡散層54に向き合う側面の側には設けられない。
【0059】
半導体装置5では、n形ピラー層12、p形拡散層53およびn形ソース層55で構成される寄生トランジスタのターンオンを抑制し、アバランシェ耐量を向上させることができる。また、アバランシェポイントの移動により生じる発振現象を抑制することもできる。
【0060】
次に、図8(a)~(c)を参照して、半導体装置4の製造方法を説明する。図8(a)~(c)は、半導体装置4の製造過程を順に示す模式断面図である。
【0061】
図8(a)に示すように、n形ドリフト層51にゲートトレンチGTを形成した後、例えば、p形不純物であるボロン(B)をイオン注入する。p形不純物は、注入角を大きくした斜めイオン注入によりn形ドリフト層51に導入される。このため、p形不純物は、ゲートトレンチGTの片方の内壁を通して導入される。
【0062】
図8(b)に示すように、イオン注入されたp形不純物を活性化してp形拡散層54を形成した後、ゲートトレンチGT内にゲート絶縁膜63およびゲート電極60を形成する。ゲート絶縁膜63は、例えば、シリコン酸化膜であり、ゲートトレンチGTの内面を熱酸化することにより形成される。
【0063】
図8(c)に示すように、n形ドリフト層51の表面側に、p形拡散層53、n形ソース層55およびp形コンタクト層57を形成する。p形拡散層53、n形ソース層55およびp形コンタクト層57は、例えば、イオン注入法を用いて形成される。
【0064】
続いて、ソース電極20を形成した後、n形半導体基板SSを薄層化し、n形ドレイン層とする。さらに、ドレイン電極30を形成し、半導体装置4を完成させる。
【0065】
半導体装置5も同様の方法を用いて製造することができる。例えば、n形ピラー層12およびp形ピラー層13を形成した後(図3(b)および図4(a)参照)、n形ピラー層12にゲートトレンチGTを形成する。続いて、図8(a)~(c)に示す工程にしたがって半導体装置5を完成させる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1、2、3、4、5…半導体装置、 10、50、70…半導体部、 11…n形半導体層、 12、12a、12b…n形ピラー層、 13…p形ピラー層、 15、15A、15B、53、54…p形拡散層、 15a、15b、15c…端部、 17、55…n形ソース層、 19、59…n形ドレイン層、 20…ソース電極、 23…p形半導体層、 30…ドレイン電極、 40、60…ゲート電極、 43、63…ゲート絶縁膜、 45…絶縁膜、 51…n形ドリフト層、 57…p形コンタクト層、 GT…ゲートトレンチ、 SS…n形半導体基板、 ST…溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8