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  • 特許-トライボロジー用途の繊維 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】トライボロジー用途の繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 1/10 20060101AFI20220224BHJP
   F16D 69/02 20060101ALI20220224BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20220224BHJP
   C10M 103/06 20060101ALI20220224BHJP
   C10M 103/00 20060101ALI20220224BHJP
   C10M 107/38 20060101ALI20220224BHJP
   D06M 11/53 20060101ALI20220224BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20220224BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20220224BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20220224BHJP
   C10N 10/06 20060101ALN20220224BHJP
   C10N 10/08 20060101ALN20220224BHJP
   C10N 10/10 20060101ALN20220224BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20220224BHJP
   C10N 10/14 20060101ALN20220224BHJP
   C10N 10/16 20060101ALN20220224BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220224BHJP
   C10N 50/08 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
D01F1/10
F16D69/02 G
C09K3/14 520M
C09K3/14 520G
C10M103/06 C
C10M103/00 A
C10M107/38
C10M103/06 D
C10M103/06 A
D06M11/53
C23C26/00 C
C10N10:02
C10N10:04
C10N10:06
C10N10:08
C10N10:10
C10N10:12
C10N10:14
C10N10:16
C10N30:06
C10N50:08
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018521286
(86)(22)【出願日】2016-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2016075122
(87)【国際公開番号】W WO2017068002
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-10-15
(31)【優先権主張番号】A682/2015
(32)【優先日】2015-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】518138893
【氏名又は名称】トリボテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】キーンレイトナー、ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】モーセル、カルメン
(72)【発明者】
【氏名】バルトルメ、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】セグレト、ロレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】シュリッテッセル、ルードルフ
(72)【発明者】
【氏名】ファオラン、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュミート、クリスティアン
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-006391(JP,A)
【文献】特開2001-302286(JP,A)
【文献】特開平01-295035(JP,A)
【文献】特開2009-013276(JP,A)
【文献】特開2009-209288(JP,A)
【文献】特開2009-132816(JP,A)
【文献】特開2003-313312(JP,A)
【文献】特開平08-291223(JP,A)
【文献】特開昭60-258494(JP,A)
【文献】特開昭61-042813(JP,A)
【文献】特開昭62-125078(JP,A)
【文献】特開昭56-128311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00-6/96、9/00-9/04、
F16D49/00-71/04、C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦ライニング用途の繊維であって、
少なくとも1種の固体潤滑剤で表面処理されており、
当該繊維が、金属繊維、セラミック繊維、ポリマー繊維、ガラス繊維または炭素繊維であり、かつ
該固体潤滑剤が、SnS、SnS2、MoS2、Bi2S3、ZnS、WS2、CuFeS2、FeS、CuS、Cu2S、MnS、Sb2S3、TiS2、Cr/Co/Niの硫化物、Sn2S3、MoS3、WS3、Fe1-xS、MnS2、Sb2S5、ZrS2、CaS、MgS、Laの硫化物、および多相金属硫化物、またはそれらの混合物から形成されており;
該固体潤滑剤が、硫化によって当該繊維に化学的に結合しており;
該少なくとも1種の固体潤滑剤の量が、少なくとも3重量%である
ことを特徴とする、繊維。
【請求項2】
前記ポリマー繊維が天然繊維または合成樹脂繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記天然繊維がセルロース繊維であることを特徴とする、請求項2に記載の繊維。
【請求項4】
前記合成樹脂繊維がアラミド繊維であることを特徴とする、請求項2に記載の繊維。
【請求項5】
前記繊維がナノ繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維。
【請求項6】
前記繊維が、天然起源の1つであるか、または合成的に製造されているか、あるいは天然および/または合成製品の再生利用によって得られることを特徴とする、請求項1に記載の繊維。
【請求項7】
前記繊維が金属硫化物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の繊維。
【請求項8】
固体潤滑剤を含む前記繊維が、レーザー焼結、溶融抽出、機械加工繊維製造、形材圧延または紡糸法によって製造されることを特徴とする、請求項1に記載の繊維の製造方法。
【請求項9】
少なくとも1種の固体潤滑剤の量が、少なくとも4重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維。
【請求項10】
少なくとも1種の固体潤滑剤の量が、少なくとも5重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維。
【請求項11】
少なくとも1種の固体潤滑剤の量が、少なくとも10重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維。
【請求項12】
1種以上の固体潤滑剤が多相金属硫化物の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維。
【請求項13】
前記請求項1~7および9~12のいずれか1項に記載の少なくとも1種の繊維を有する摩擦ライニング混合物。
【請求項14】
有機結合剤、無機結合剤をさらに含むか、または結合剤をさらに含まないことを特徴とする、請求項13に記載の摩擦ライニング混合物。
【請求項15】
前記請求項1~7および9~12のいずれか1項に記載の少なくとも1種の繊維を有し、有機結合剤、無機結合剤をさらに含むか、または結合剤をさらに含まない摩擦ライニング混合物の製造方法であって、結合が熱および/または圧縮方法によって得られることを特徴とする、製造方法
【請求項16】
1種以上の硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化鉄、シリカ、バーミキュライト、酸化マグネシウム、タルク、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、雲母、金属粉末、酸化モリブデン、アルミナ、他の金属酸化物、炭化ケイ素、珪灰石、チタン酸カリウム、亜クロム酸塩、硫酸カルシウム-ウィスカー、石油コークス、ゴムくず、ニトリルゴム、アクリルゴム、摩擦くずから形成される充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項13または14に記載の摩擦ライニング混合物。
【請求項17】
摩擦ライニング混合物が、1種以上の硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化鉄、シリカ、バーミキュライト、酸化マグネシウム、タルク、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、雲母、金属粉末、酸化モリブデン、アルミナ、他の金属酸化物、炭化ケイ素、珪灰石、チタン酸カリウム、亜クロム酸塩、硫酸カルシウム-ウィスカー、石油コークス、ゴムくず、ニトリルゴム、アクリルゴム、摩擦くずから形成される充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
摩擦ライニング混合物が、バルク量の銅または鉄を有する焼結性物質混合物であるマトリックスをさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の製造方法
【請求項19】
滑りまたは摩擦成分、あるいは滑りまたは摩擦要素を製造するための請求項1~7および9~12のいずれか1項に記載の繊維の使用。
【請求項20】
結合した摩擦ライニング混合物からなるブレーキまたはクラッチライニングを製造するための請求項1~7および9~12のいずれか1項に記載の繊維の使用。
【請求項21】
減摩コーティングおよび他のコーティングを製造するための請求項1~7および9~12のいずれか1項に記載の繊維の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トライボロジー用途の繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
この文脈において、繊維は、通常、その長さに関して薄い本体を有する構築物として理解される。
【0003】
金属、セラミック、天然繊維、ポリマー繊維などの繊維は、多くの成分、例えば摩擦ライニングにおける非常に重要な基本要素である。繊維の構造により、それらは機械強度および構造強度に実質的に寄与し、そして良好な熱伝導率によっていわゆる「ホットスポット」を防止する。一般に、繊維は、合成繊維、天然繊維、ならびに天然および/または合成製品からの再生繊維に分類され得る。
【0004】
ブレーキディスクとその摩擦ライニングとの間のトライボロジー接触は、主に使用した金属繊維の界面で生じる。接触プラトー理論によれば、接触プラトーは、ブレーキライニングの表面上に形成され、ライニング表面の残りの部分から突出する。摩擦ペアの間の実際の接触は、この接触プラトー内で起こり、これは、このようなプラトーの大きさおよび組成がライニングの摩擦性能に大きく影響する理由である。ここで、耐摩耗性のより硬い要素、例えば繊維または摩耗粒子によって形成される第1接触プラトーと、該第1プラトーの前に蓄積しそこで圧縮される摩耗圧縮粒子からなる第2プラトーとの間で区別がなされる。
【0005】
固体潤滑剤、例えば黒鉛および/または金属硫化物の使用は、多くの用途において最先端と考えられる。一般に固体潤滑剤および特に金属硫化物は、摩擦ライニング、トライボプラスチック、液体およびペースト様潤滑剤、減摩コーティング、研磨体、および焼結成分の用途を含むトライボロジー特性を改善するために使用される。金属硫化物は、摩擦相手の摩耗効果の低減を達成し得、摩擦係数を安定化および変更し得、そして望ましくない効果に対する簡便な添加剤として使用される。望ましくない効果は、ピッキング、スクラッチング、スティックスリップ現象、ならびに高周波および低周波トライボシステム振動を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、混合した固体潤滑剤が例えば摩擦ライニングにおける接触プラトーから離れていき、そして短い操作時間後に既に摩擦相手との間の実際の接触について低い程度でしか利用可能でなく、そしてそれゆえトライボロジー用途において低下した有効性しか示し得ないことを見出した。
【0007】
本発明の目的は、トライボロジー成分の特性の改善を可能とする繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、これは、鉱物繊維を除く繊維が、黒鉛を除く少なくとも1種の固体潤滑剤を含むか、または黒鉛を除く少なくとも1種の固体潤滑剤で表面処理、特に被覆、好ましくは硫化されていることで達成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】硫化鋼繊維の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
種々の硫化方法は、最先端に従う。
【0011】
その点に関して、固体潤滑剤は、繊維表面上のみに形成され得るか、または繊維表面上に配置され得るかのいずれか、あるいは繊維自体を部分的または全体的に含む。
【0012】
本発明の方法に従って表面的にまたは全体的に固体潤滑剤からなるかまたは固体潤滑剤で被覆された繊維を形成することによって、固体潤滑剤は直接または標的様式でトライボロジー接触プラトーに近接して提供され得、それは構造化繊維によって形成される第1接触プラトー内またはその周りに存在し、そしてトライボロジー接触プラトー領域内で維持され得る。なぜなら、繊維状固体潤滑剤は、複合繊維構造体中に存在しつつ、移動できないかまたは移動がかなり困難なだけであるからである。
【0013】
US 2015/0204403 A1は、熱伝導率を改善するための黒鉛被覆繊維を記載する。しかしながら、以下の理由のせいで、黒鉛は本発明のための固体潤滑剤として使用され得ない。
【0014】
広く信じられている考えに反し、黒鉛の潤滑効果は、固有の特性ではなく、上記または水などの小分子の存在に依存する。真空中または乾燥条件において、黒鉛はその潤滑効果を失う。160℃を超える温度での乾燥条件において、水分は蒸発し始め、そして黒鉛の潤滑効果は低下する。しかしながら、特にブレーキライニングの用途において、非常に広範な温度範囲にわたって一定の摩擦係数が必須である。ブレーキライニングとブレーキディスクとの間の接触領域内で、800℃を超える瞬間温度にも達し得る。従って、黒鉛以外の固体潤滑剤のみが本発明の範囲内でトライボロジー特性を改善するための繊維を製造するために使用され得る。トライボロジー特性を改善するための黒鉛を除く固体潤滑剤の使用は、本発明の決定的な局面である。
【0015】
本発明による繊維は、2つの異なるプロセスを用いて、特に繊維の表面処理、結合剤を用いたまたは用いない固体潤滑剤の化学的または物理的付与によって、および少なくとも1種の固体潤滑剤を含む繊維の製造によって製造され得る。
【0016】
鉱物繊維は本発明による用途に適しておらず、従って本明細書の範囲から除外されることが示されている。
【0017】
従って、適切な繊維は、例えば、セルロース繊維、アラミド繊維、合成樹脂繊維、金属繊維、ガラス繊維、ナノ繊維、炭素繊維を含むが、鉱物繊維を除く。本発明の他の実施態様において、固体潤滑剤から繊維を直接製造する方法は、レーザー焼結、溶融抽出、機械加工繊維製造、形材圧延、ならびに紡糸プロセスなどを含む。
【0018】
応用分野に依存して、本発明による繊維は、長さまたは直径が変化し得、限定されない。
【0019】
別の実施態様において、本発明による繊維を形成するかまたは繊維上に被覆される固体潤滑剤は、少なくとも1種の金属硫化物から形成され得る。
【0020】
本発明の別の実施態様によれば、当該繊維で効果的なトライボロジー効果を達成し得るために、少なくとも1種の固体潤滑剤の割合は、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも4重量%、特に少なくとも5重量%、および最も好ましくは少なくとも10重量%であることが見出された。
【0021】
本発明の実施態様によれば、繊維は硫化され得、その結果、例えば金属硫化物は繊維表面上に形成され、固体潤滑剤として作用する。
【0022】
本発明の実施態様の別の例は、硫化鉄繊維または硫化スズ-鉄繊維である繊維からなり得る。
【0023】
本発明のさらなる展開において、本発明による繊維を製造するための固体潤滑剤は、多相金属硫化物として提供され得る。
【0024】
本発明の別の実施態様によれば、本発明による繊維を製造するための固体潤滑剤は、SnS、SnS2、MoS2、Bi2S3、ZnS、WS2、CuFeS2、FeS、CuS、Cu2S、MnS、Sb2S3、TiS2、Cr/Co/Niの硫化物、Sn2S3、MoS3、WS3、Fe1-xS、MnS2、Sb2S5、ZrS2、CaS、MgS、La、Ceの硫化物、および種々の金属の多相硫化物、BN、PTFE、リン酸塩、酸化物、またはそれらの混合物から形成され得るが、上記に限定されない。
【0025】
限定されることなく、本発明による繊維の好ましい用途の1つは、摩擦ライニングの製造工業、特に種々の摩擦ライニングタイプ:ディスクおよびドラムブレーキ用のライニング、クラッチライニング、並びに他のブレーキライニング、特に工業ライニング、のみならず風力発電所ブレーキライニングにおける使用であり、これらは人工樹脂に結合され得、また焼結され得、あるいは取り付けられ得る。本発明の応用分野は、低溶融、NAO、焼結、半溶融、ハイブリッド、およびその他などの全ての処方タイプを含む。
【0026】
繊維が使用されるさらなる用途、およびトライボロジーが構造的局面と共に重要な役割をはたすさらなる用途もまた、本発明の範囲内で可能である。例えば、1つの他の応用分野は、プラスチック工業、特にトライボプラスチック部門であり得る。従って、これらは本発明による繊維を含み得る。
【0027】
さらに、本発明は、本発明による繊維を含む摩擦ライニング混合物に関する。
【0028】
本発明による摩擦ライニング混合物は、固体潤滑剤、例えば金属硫化物および繊維の用途特異的利益を組み合わせる。例えばブレーキライニングにおける銅を置換するために、摩擦ライニングに適用した場合に銅の特性を模倣するために種々の利益を組み合わせることが必須である。この場合に固体複合潤滑剤を用い、構造化し、そして同時に繊維を潤滑することによって、トライボロジー特性の持続的改善が達成される。
【0029】
「接触プラトー理論」によれば、それぞれ本発明による固体潤滑剤繊維または繊維状固体潤滑剤は、摩擦ライニングの全ての局面を改善するための非常に良好な特性を提供する。
【0030】
さらに、本発明による摩擦ライニング混合物の充填剤は、1種以上の硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化鉄、シリカ、バーミキュライト、酸化マグネシウム、タルク、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、雲母、金属粉末、酸化モリブデン、アルミナ、他の金属酸化物、炭化ケイ素、珪灰石、チタン酸カリウム、亜クロム酸塩、硫酸カルシウム-ウィスカー、石油コークス、ゴムくず、ニトリルゴム、アクリルゴム、摩擦くずから形成されることが想定され得る。
【0031】
さらに、本発明は、本発明による結合した摩擦ライニング混合物からなるブレーキまたはクラッチライニングに関する。
【実施例
【0032】
ここで、種々の硫化繊維の例示的な用途特異的結果を、ブレーキライニングにおいて各類似であるが硫化されていない繊維(ブランク)と比較して示す。
【0033】
硫化した繊維を、一般的な低溶融処方に組み込み、そしてブレーキライニングを圧着した。用途特異的ライニング特性を、動力計上でSAE J2522に従ってAK-Master試験を用いて試験した。使用した慣性を、以下に挙げる結果に列挙する。使用したブレーキシステムは、Golf Iタイプシステムであった。
【0034】
表1:
銅含有低溶融処方におけるAK-Master試験結果。ブレーキシステム:Golf 1、慣性:60 kg m2
【0035】
【表1】
【0036】
表1において、ライニング摩耗および平均摩擦係数などの領域についての改善、ならびにAK-Masterブロック「フェード2」からの最小摩擦係数についての改善を示す。例示の試験シリーズにわたって、対応するブランクと比較してライニング摩耗の49 %までの改善が達成され得、AK-Master試験による平均摩擦係数について、9 %までの改善が達成され得、そして最少摩擦係数について、43 %までの改善が見られ得た。
【0037】
試験を銅非含有ベース混合物において繰り返した。この処方において、ライニング摩耗の29 %までの改善、13 %までの摩擦係数の増加、および43 %までのフェード2の改善が達成され得た。
【0038】
結果を以下の表に示す。
【0039】
表2:
銅非含有低溶融処方におけるAK-Master試験結果。ブレーキシステム:Golf 1、慣性:40.6 kg m2
【0040】
【表2】
【0041】
機能性繊維の利益を試験するための摩擦ライニング処方を以下に示す。用途特異的比較において、鋼繊維およびステンレス鋼繊維ならびにロックウールまたはアラミド繊維はそれぞれ、対応する硫化タイプによってそれぞれ置き換えた。
【0042】
処方、Cu-含有[重量%]
結合剤 6
有機充填剤 7
アラミド繊維 3
ロックウール 7
鋼繊維/ステンレス鋼繊維 11
銅/真鍮 16
無機充填剤 27
研磨剤 10
黒鉛/コークス 13
処方、Cu-非含有[重量%]
結合剤 6
有機充填剤 8
アラミド繊維 4
ロックウール 8
鋼繊維/ステンレス鋼繊維 13
無機充填剤 32
研磨剤 12
黒鉛/コークス 17
【0043】
図1は硫化鋼繊維の例を示す。
【0044】
-使用した鋼繊維は、以下の特性を有する:
繊維長:最少100 μm;最大2000 μm;平均900 μm
繊維直径:最少20 μm;最大100 μm;平均50 μm
【0045】
-硫化鋼繊維中の硫化物濃度:
【0046】
【表3】
【0047】
-摩擦ライニング処方において使用できた可能性がある種々の材料の要約(個々のグループの要約):
【0048】
結合剤の例:熱硬化性ポリマー、典型的にはフェノール樹脂またはメラミン樹脂、エポキシ樹脂、変性フェノール樹脂、合成ゴム。
【0049】
充填剤の例:硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化鉄、シリカ、バーミキュライト、酸化マグネシウム、タルク、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、雲母、金属粉末、酸化モリブデン、アルミナ、他の金属酸化物、炭化ケイ素、珪灰石、チタン酸カリウム、亜クロム酸塩、硫酸カルシウム-ウィスカー、石油コークス、ゴムくず、ニトリルゴム、アクリルゴム、摩擦くず。
【0050】
-摩擦ライニングの例示的な使用:
【0051】
摩擦ライニング、例、ディスクブレーキライニング、動く物体、例えば車両(自動車)を遅くするよう働く。これを達成するため、摩擦ライニングを、できる限り多くのその表面積で動く対向物体に押し付け、そして摩擦を発生させることによって対向物体を摩擦ライニングに関して減速/制動させる。典型的には、このプロセスは摩滅(摩耗)および摩擦熱を引き起こす。
【0052】
本発明の繊維のさらなる例を以下に提供する:
-被覆した鋼繊維の固体潤滑剤表面濃度:
【0053】
【表4】
【0054】
-金属硫化物繊維に含まれる硫化物の要約:
【0055】
【表5】
【0056】
-固体潤滑剤繊維:
【0057】
溶融物からの固体潤滑剤、例えば金属硫化物または多相金属硫化物の、例えば溶融紡糸プロセスによる直接製造、該溶融物はこの目的のために特別に製造された。この1つの例は、SnS繊維である。摩擦ライニングのために、それぞれ製造した繊維の全繊維含有量または一部が使用される。
【0058】
実施の間、繊維に結合した固体潤滑剤または繊維を含む固体潤滑剤は、それぞれ、摩擦ライニング内に異なって分布し、このことは、固体潤滑剤が必要とされる別の部位で配置され得、従ってトライボロジー接触を支持し、そして摩耗を最小限にしかつ摩擦係数を安定化するその利益を示すことを意味することが示された。さらに、摩擦ライニング混合物内の繊維が結合した固体潤滑剤は、圧縮前および予備混合後にもはや堆積することができず、そして完成した複合体内でさえ均一な分布で存在し続ける。
【0059】
本発明はまた、摩擦ライニング中の非鉄金属、特に銅の含有量が低減されるという生態学的利益を提供し、これはそうでなければライニングの生じる摩耗によって環境中に広がり、そして環境に対して生態毒性効果を有することを示した。
図1