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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】硬質ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20220224BHJP
   C08G 18/54 20060101ALI20220224BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20220224BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20220224BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20220224BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
C08G18/40 027
C08G18/54
C08G18/50 021
C08G18/48 041
C08G18/00 H
C08G101:00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018526124
(86)(22)【出願日】2016-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2016078183
(87)【国際公開番号】W WO2017085283
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2015226853
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 英紀
(72)【発明者】
【氏名】田邊 敬康
(72)【発明者】
【氏名】坂田 憲一
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/074642(WO,A1)
【文献】特開2015-004011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、(B)および(C)を含むポリオール化合物、発泡剤としての水、整泡剤、触媒および難燃剤を含んでなる連続気泡硬質ポリウレタンフォームを製造するためのポリオール組成物であって、
前記ポリオール(A)の含有量が10~40重量部であり、
前記ポリオール(B)の含有量が10~70重量部であり、
前記ポリオール(C)の含有量が10~70重量部であり、
前記ポリオール(A)がマンニッヒポリオールであるか、またはアルキレンオキシドを官能価が2~8の窒素原子含有開始剤で開環付加重合して得られるヒドロキシル価が100~600mgKOH/gの芳香族アミンポリオールであり、
前記ポリオール(B)がポリエーテルポリオール、すなわちプロピレンオキシドブロックと末端エチレンオキシドブロックとを含むブロックポリマーであって、プロピレンオキシドを官能価が2~4の窒素原子非含有開始剤で開環付加重合し、次いでエチレンオキシドを開環付加重合して得られる、アルキレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合が17~25質量%であり、ヒドロキシル価が10~80mgKOH/gのブロックポリマーであり、
前記ポリオール(C)が、アルキレンオキシドを官能基価が2~8の窒素原子非含有開始剤で開環付加重合して得られるヒドロキシル価が100~900mgKOH/gのポリエーテルポリオールであり、かつ、
前記水の含有量が、前記ポリオール化合物100重量部に対して15~28重量部である、前記ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリオール(A)であるマンニッヒポリオールが、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを、フェノール、アルデヒドおよびアルカノールアミンの反応により得られるマンニッヒ化合物で開環付加重合して得られる、アルキレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合が30~85質量%のポリエーテルポリオールである、請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記マンニッヒ化合物が、
1モルのフェノール、
1.5~2.0モルのアルデヒド、および
2.3~3.0モルのアルカノールアミン
から調製される、請求項2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(A)である芳香族アミンポリオールが、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを、芳香族アミン化合物で開環付加重合して得られるポリエーテルポリオールであり、該ポリエーテルポリオールが、アルキレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合が30~85質量%であり、ヒドロキシル価が200~500mgKOH/gである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリオール組成物。
【請求項5】
前記芳香族アミン化合物が、ジフェニルメタンジアミンおよびトリレンジアミンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項4に記載のポリオール組成物。
【請求項6】
前記ポリオール(C)のための開環付加重合において用いられる前記アルキレンオキシドが、エチレンオキシドを含まないかまたはエチレンオキシドを含むプロピレンオキシドであり、かつ、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合が0~20重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリオール組成物。
【請求項7】
水が唯一存在する発泡剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリオール組成物。
【請求項8】
連続気泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物とを噴霧法により混合および反応させて前記連続気泡硬質ポリウレタンフォームを得ることを含む、製造方法。
【請求項9】
製造された前記連続気泡硬質ポリウレタンフォームのJIS K7222:2005に準拠したコア密度が10~17kg/mである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記連続気泡硬質ポリウレタンフォームが、前記ポリオール組成物と前記ポリイソシアネート化合物とを30~100のイソシアネートインデックスで混合することにより得られる、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ポリイソシアネート化合物がポリマーMDIである、請求項8~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の製造方法により製造された、連続気泡硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項13】
絶縁材料としての、請求項12に記載の連続気泡硬質ポリウレタンフォームの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡剤として水のみを使用して、噴霧法により気泡の相互接続、低密度、断熱効率、配合ポリオール原料(ポリオール組成物)の保存安定性等に優れた軽量硬質ポリウレタンフォームを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォーム(以下、単に硬質フォームともいう)等の発泡合成樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、整泡剤、触媒および発泡剤の混合物の存在下で該混合物を発泡させることにより広く製造されてきた。
【0003】
噴霧法は、例えば断熱材、特に建設現場で使用される硬質ポリウレタンフォームの製造において一般に使用される。
【0004】
噴霧法は、加圧下で原料液を供給し、該原料液をスプレーガンにより例えば被覆すべき壁に噴霧し、該壁上で液体を即座に発泡させることにより、断熱材等を形成する方法である。高品質な硬質フォームを製造するために、噴霧法に関する様々な研究がなされている(日本国特許第5504877号、再公表PCT国際出願公開第2013/058341号および日本国特許出願公開第2015-4011号)。
【0005】
特許文献1(特許第5504877号)においては、水のみを用いて発泡される配合ポリオール原料の保存安定性を向上させるために、ポリエーテルポリオールの末端オキシエチレンブロック鎖の含有量が、アルキレンオキシド全量において好ましくは5~15質量に調節されることが教示されている。
【0006】
特許文献2(再公表PCT国際出願公開第2013/058341号)においては、水のみを用いて発泡される配合ポリオール原料の保存安定性を向上させるために、ポリエーテルポリオールは、好ましくはオキシエチレン基とオキシプロピル基とのランダム重合鎖を有し、該オキシエチレン基の含有量が、アルキレンオキシド全量において好ましくは20~60質量%に調節されることが教示されている。
【0007】
特許文献3(日本国特許出願公開第2015-4011号)においては、高品質の硬質フォームを製造するために、マンニッヒポリオールの使用量を45~80重量部に調整することが教示されている。
【0008】
しかしながら、配合したポリオール原料の保存安定性は依然として不十分であり、さらなる改善が望まれている。特に、夏季に生じる可能性のある高温範囲(例えば、40~50℃)における保存安定性が望まれている。
【0009】
本発明者らは、水のみを使用して噴霧法により硬質ポリウレタンフォームを製造する場合に、エチレンオキシドを用いた末端開環付加重合により調製されるポリエーテルポリオールを用いることにより、配合ポリオール原料(ポリオール組成物)の保存安定性を向上させることができることを見出した。
【0010】
具体的には、本願は以下の発明に関する:
[1]
連続気泡(open-cell)ポリウレタンフォームの製造方法であって、ポリオール化合物、発泡剤としての水、整泡剤、触媒および難燃剤を含むポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを噴霧法により混合および反応させて連続気泡ポリウレタンフォームを得ることを含み、
前記ポリオール化合物がポリオール(A)、(B)および(C)を含み、
前記ポリオール(A)の含有量が10~40重量部(parts by weight)(以下、重量部(wt parts)ともいう)であり、
前記ポリオール(B)の含有量が10~70重量部であり、
前記ポリオール(C)の含有量が10~70重量部であり、
前記ポリオール(A)がマンニッヒポリオールであるか、またはアルキレンオキシドを官能価が2~8の窒素原子含有開始剤で開環付加重合して得られるヒドロキシル価が100~600mgKOH/gの芳香族アミンポリオールであり、
前記ポリオール(B)がポリエーテルポリオール、すなわちプロピレンオキシドブロックと末端エチレンオキシドブロックとを含むブロックポリマーであって、プロピレンオキシドを官能価が2~4の窒素原子非含有開始剤で開環付加重合し、次いでエチレンオキシドを開環付加重合して得られる、アルキレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合が16~25質量%であり、ヒドロキシル価が10~80mgKOH/gのブロックポリマーであり、
前記ポリオール(C)が、アルキレンオキシドを官能基価が2~8の窒素原子非含有開始剤で開環付加重合して得られるヒドロキシル価が100~900mgKOH/gのポリエーテルポリオールであり、かつ、
前記水の含有量が、前記ポリオール化合物100重量部に対して15~28重量部である、前記ポリオール組成物。
【0011】
この文脈において、「連続気泡フォーム」または「連続気泡ポリウレタンフォーム」とは、独立気泡(closed cells)に対する連続気泡(open cells)の比が>1であるフォームを意味する。好ましくは、前記ポリウレタンフォームは80%、最も好ましくは>%の連続気泡かつ<10%の独立気泡(フォーム中の気泡の全量に対して)を含む。
【0012】
[2]
前記ポリオール(A)であるマンニッヒポリオールが、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを、フェノール、アルデヒドおよびアルカノールアミンの反応により得られるマンニッヒ化合物で開環付加重合して得られる、アルキレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合が30~85質量%のポリエーテルポリオールである、請求項1に記載の製造方法。
【0013】
[3]
前記ポリオール(A)であるマンニッヒ化合物が、
1モルのフェノール、
1.5~2.0モルのアルデヒド、および
2.3~3.0モルのアルカノールアミン
から調製される、[1]または[2]に記載の製造方法。
【0014】
[4]
前記ポリオール(A)である芳香族アミンポリオールが、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを、芳香族アミン化合物で開環付加重合して得られるポリエーテルポリオールであり、該ポリエーテルポリオールが、アルキレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合が30~85質量%であり、ヒドロキシル価が200~500mgKOH/gである、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
【0015】
[5]
前記ポリオール(A)である芳香族アミン化合物が、ジフェニルメタンジアミンおよびトリレンジアミンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
[6]
前記ポリオール(C)のための開環付加重合において用いられる前記アルキレンオキシドが、エチレンオキシドを含まないかまたはエチレンオキシドを含むプロピレンオキシドであり、かつ、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合が0~20重量%である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリオール組成物。
【0017】
[7]
製造された硬質発泡合成樹脂のコア密度が10~17kg/mである、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
【0018】
[8]
前記連続気泡硬質ポリウレタンフォームが、前記ポリオール組成物と前記ポリイソシアネート化合物とを30~100のイソシアネートインデックスで混合することにより得られる、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
【0019】
[9]
前記ポリイソシアネート化合物がポリマーMDIである、[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
【0020】
[10]
水が唯一存在する発泡剤である、[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
【0021】
[11]
本発明は、[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法のためのポリオール組成物、前記ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを混合することにより得られるフォーム形成混合物、および[1]~[10]のいずれかに記載の方法により得られる硬質フォームにも関する。
【0022】
また、本発明は、断熱用途におけるそのような硬質フォームの使用にも関する。
【0023】
本発明によれば、非常に大量の水のみを発泡剤として使用した場合であっても保存安定性に優れたポリオール組成物を調製することができ、従って噴霧発泡処理性に優れ、コア密度が10~17kg/mと軽量であり、断熱効率、難燃性等に優れている硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0024】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、硬質発泡合成樹脂は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、整泡剤、触媒および発泡剤の混合物の存在下で噴霧法により混合物を発泡させることにより製造される。以下、その詳細を記載する。
【0025】
本発明において、個々の高分子量ポリオールはそれぞれポリオール(A)、ポリオール(B)、ポリオール(C)およびその他のポリオールと表し、これらのポリオールの混合物はポリオール化合物(polyol compound)と呼ぶ。さらに、ポリオール化合物と発泡剤(水)、触媒、整泡剤、難燃剤、および必要に応じて他の配合成分との混合物は「ポリオール組成物」と呼ぶ。
【0026】
ポリオール化合物の量は、ポリオール組成物中に好ましくは100重量部であるが、100重量部でなくてもよい。例えば、ポリオール(A)~(C)およびその他のポリオールの合計量は、具体的にはポリオール(A)~(C)のみの合計量であり、100重量部であってもよく、100重量部でなくてもよい。好ましい実施形態では、ポリオール化合物はポリオール(A)~(C)のみからなる。
【0027】
[ポリオール(A)]
ポリオール(A)のマンニッヒポリオールは、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを、フェノール、アルデヒドおよびアルカノールアミンの反応により得られるマンニッヒ化合物で開環付加重合して得られる、アルキレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合が35~85質量%、好ましくは35重量%~85重量%のポリエーテルポリオールである。
【0028】
マンニッヒ化合物は、フェノール、アルデヒドおよびアルカノールアミンの反応により得られる。フェノールの例としては、フェノール、ノニルフェノール、クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール等が挙げられる。上記フェノール類の中でも、ポリオールとイソシアネートとの相溶性が向上し、気泡の外観が良好になることから、ノニルフェノールが好ましい。アルデヒドの例としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられ、フォームの接着性が向上することから、ホルムアルデヒドが好ましい。アルカノールアミンの例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール、アミノエチルエタノールアミン等が挙げられる。上記アミン類の中でも、発泡体の強度の向上とポリオールの粘性の低下のバランスの観点から、ジエタノールアミンが好ましい。
【0029】
マンニッヒ化合物の調製において、原料の割合は好ましくは以下の通りである:1モルフェノール、1.5~2.0モルのアルデヒドおよび2.3~3.0モルのアルカノールアミン。フェノールに対するアルデヒドの比が上記範囲にある場合、硬質フォームを製造する場合に臭気が発生しない。あるいは、フェノールに対するアルデヒドの比が上記範囲にある場合、ポリオール(A)が良好な粘性を有し、得られる硬質フォームが良好な接着性を示す。アルデヒドに対するアルカノールアミンの比が上記範囲にある場合、得られる硬質フォームの収縮率が小さくなるので好ましい。あるいは、アルデヒドに対するアルカノールアミンの比が上記範囲にある場合、ポリオール(A)が良好な粘性を有し、フォームの製造において臭気が発生しない。
【0030】
ポリオール(A)の芳香族アミンポリオールは、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを、芳香族アミン化合物で開環付加重合して得られるポリエーテルポリオールであり、アルキレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合が30~85質量%であり、好ましくは35重量%~80重量%である。
【0031】
芳香族アミン化合物の例としては、ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。上記芳香族アミン化合物の中でも、ポリウレタンの燃焼性および熱伝導率を向上させることから、ジフェニルメタンジアミンおよびトリレンジアミンが好ましい。
【0032】
ポリオール(A)は、100~600mgKOH/g、好ましくは200~500mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0033】
ポリオール(A)の製造に使用されるアルキレンオキシドは、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物である。アルキレンオキシド全量中のエチレンオキシドの割合は30~85重量%であり、好ましくは35重量~80重量%である。エチレンオキシドを使用する場合、ポリオール(A)中のヒドロキシル基の大部分が第1級ヒドロキシル基となり、ポリオール(A)の反応性およびイソシアネートとの反応性が増大するため、噴霧用途により好適となる。得られる硬質フォームの接着性を向上させるのに同時に有効である。
【0034】
エチレンオキシドの割合が上記の割合よりも大きい場合は好ましくなく、得られる硬質フォームの圧縮強度が低下し、その結果、より圧縮強度を生じ、その結果、収縮に対してより脆弱になる。また、エチレンオキシドの割合が上記の割合よりも低い場合も好ましくなく、ポリオール(A)の粘性が増大し、得られる硬質フォームの接着性が低下する。エチレンオキシドの割合が上記範囲にある場合、ポリオール(A)と、発泡剤として使用される水との相溶性が向上し、イソシアネートを含む原料がより良く混合され、外観および機械的特性が向上した硬質フォームを効率的に得ることができる。
【0035】
ポリオール(A)の含有量は10~40重量部、例えば15~35重量部である。ポリオール(A)の含有量が40重量部を超える場合、得られるフォームの表面が硬くなり、施工現場での適用時に例えばウェーブナイフ(wave knife)で切れにくくなり、施工期間の延長につながる。あるいは、ポリオール(A)の含有量が10重量部未満の場合、得られるフォームの燃焼性が低下する。
【0036】
[ポリオール(B)]
ポリオール(B)は、プロピレンオキシドを官能価が2~4の窒素原子非含有開始剤で開環付加重合し、次いでエチレンオキシドを開環付加重合して得られるポリエーテルポリオールである。ポリオール(B)は、ポリプロピレンオキシドブロックおよびエチレンオキシドブロックの両方を含むブロックポリマーポリエーテルポリオールである。エチレンオキシドの割合はアルキレンオキシド全量において(好ましくは、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの全量において)16~25質量%であり、例えば17~22重量部である。
【0037】
ポリオール(B)は、10~80mgKOH/g、好ましくは20~55mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0038】
ポリオール(B)の量は10~70重量部であり、好ましくは20~60重量部であり、より好ましくは30~50重量部である。ポリオール(B)の量が上記範囲にある場合、得られる硬質フォームが好適な連続気泡構造をとり、劣化を伴うことなく良好な他の耐燃特性が維持される。ポリオール(B)の量が上記範囲より小さい場合、硬質フォーム中の気泡の多くが独立し、収縮等の問題を生じる。あるいは、ポリオール(B)の量が上記範囲より大きい場合、得られるフォームの架橋度および反応率が低下し、気体を除去した後にフォーム体積が低下し(いわゆるバックショット(back shot))、高度の低下および気泡の荒れがより起こりやすくなり、燃焼性が低下する。
【0039】
[ポリオール(C)]
窒素原子非含有開始剤は、好ましくは多価アルコール、特に2~6価のアルコールである。多価アルコールの典型例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース等が挙げられる。開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
ポリオール(C)の調製に用いられるアルキレンオキシドの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、スチレンオキシド等が挙げられる。上記化合物の中でも、プロピレンオキシドを単独で用いることが好ましい。エチレンオキシドを使用すると、得られる硬質フォームの圧縮強度が低下するため、結果として得られる硬質フォームの収縮がより起こりやすくなり、好ましくない。
【0041】
ポリオール(C)は、ヒドロキシル価が100~900mgKOH/gであり、好ましくは200~500mgKOH/gであり、より好ましくは200~500mgKOH/g、さらにより好ましくは300~500mgKOH/gであり、特に好ましくは350~450mgKOH/gである。ポリオール(C)のヒドロキシル価が200~500mgKOH/gである場合、反応率が高く、気体を除去した後のフォーム体積の低下(いわゆるバックショット)が起こらず、好ましくは期待が除去され、得られるフォームが収縮に対して耐性となる。
【0042】
ポリオール(C)の量は10~70重量部であり、好ましくは15~60重量部であり、より好ましくは20~40重量部である。ポリオール(C)の含有量が40重量部以上である場合、得られる硬質フォームが良好な強度と良好なフォーム表面平滑性を有することとなる。ポリオール(C)の含有量が10重量部以下である場合、得られる硬質フォームが連続気泡となり、好ましくは良好な立体安定性を有することとなる。
【0043】
[その他のポリオール]
ポリオール(A)~(C)以外のポリオールを用いてもよい。また、多価フェノールやアミノ化ポリオールを用いてもよい。
【0044】
他のポリオールの量は20重量部以下であり、例えば0.1~15重量部である。
【0045】
[発泡剤]
本発明においては、水のみを発泡剤として使用する。発泡剤としての水の量は、ポリオール化合物100重量部に対して15~28重量部であり、好ましくは16~25重量部であり、特に好ましくは17~20である。水の含有量が15重量部未満である場合、得られる硬質フォームがより重くなり好ましくない。また、水の含有量が28重量部よりも大きい場合、ポリオール組成物の保存安定性が低下するのでもちろん好ましくない。
【0046】
[ポリイソシアネート]
本発明において用いられるポリイソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有する芳香族、脂環式、脂肪族または他のポリイソシアネートである。その典型的な例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(一般名:ポリメリックMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のポリイソシアネート;それらのプレポリマー型誘導体、イソシアヌレート変性誘導体、ウレア変性誘導体およびカルボジイミド変性誘導体等が挙げられる。これらのポリイソシアネートのいくつかを組み合わせて使用することができる。特に、ポリメリックMDIが好ましい。
【0047】
ポリイソシアネートは、25℃で50~400mPa・sの粘度を有することが好ましい。粘度が上記範囲内である場合、得られる硬質フォームが収縮し易くなるため好ましくない。粘度が400mPa・sより大きい場合、噴霧法による適用の際に原料が効率的に混合されず、得られる硬質フォームの外観不良をもたらすことがしばしばあるため好ましくない。
【0048】
使用されるポリイソシアネートの量は、イソシアネート指数(ポリオール組成物におけるイソシアネート基の割合と、ポリオール、水およびその他の活性水素化合物の活性水素原子の合計数とを掛け合わせ、100を掛けることにより得られる数)で表現して30~100であることが好ましい。イソシアネート指数は好ましくは45~65である。イソシアネート指数が30~100である場合、硬度の低さおよび収縮等の問題が生じず、従って、反応性が高く適切な密度となる。
【0049】
[触媒]
発泡剤として水だけを使用し、初期発泡効率(initial foaming efficiency)が低い硬質ポリウレタンフォームの製造方法では、アミン触媒または鉛オクタノエート等の鉛化合物を触媒として使用し、使用前よりも高い反応性を維持する。しかしながら、アミン触媒は一般的に高い揮発性を有し、製剤を噴霧した場合にレインボーアイ(rainbow eye)(眼のかすみ)等の健康障害を引き起こすことがあり、同様に、鉛化合物は高い毒性を有し、ハンドリング中に十分な注意を必要とする。したがって、作業環境の改善のためには、これらの触媒を使用することは好ましくない。
【0050】
アミン触媒によるレインボーアイ現象を抑制する既知の方法は、分子中にイソシアネート反応性活性水素基を有する反応性アミン触媒を使用することである。また、鉛化合物の代わりにビスマス化合物を使用する方法が提案されている。しかしながら、一般的な反応性アミン触媒およびビスマス化合物は初期発泡効率が十分でなく、成形性の低下等の問題を引き起こす。
【0051】
特徴的には、本発明のポリオール(A)は、窒素元素を含み、多くのエチレンオキシド成分も含み、樹脂製造のための反応性が本質的に高い。従って、使用する触媒の量を減らすことができ、好ましいことに触媒活性がわずかながら低い反応性アミン触媒を使用することができるという有利性が存在する。
【0052】
従って、本発明において好ましい触媒は、分子中に1つ以上のイソシアネート反応性活性水素基を有する反応性アミン触媒である。より好ましい触媒は、より高い発泡活性を有する反応性アミン触媒である。触媒を使用することにより、気泡の相互接続を改善し、密度を低下させ、噴霧発泡加工性(噴霧厚さ、ドローダウン(drawdown))を改善することが可能である。
【0053】
そのような例としては、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチル-ビスアミノエチルエーテル等が挙げられる。これらの触媒のいくつかを組み合わせて使用することができる。また、これらの触媒は、上述したもの以外の触媒と組み合わせて使用することができる。
【0054】
触媒の量は、好ましくはポリオール化合物100重量部に対して3~15重量部である。
【0055】
[整泡剤]
本発明においては、好ましい気泡を作るために整泡剤が用いられる。整泡剤の例としては、シリコーン系整泡剤およびフッ素含有化合物系整泡剤が挙げられる。気泡破壊整泡剤(bubble-breaking foam stabilizer)を使用することもできる。これらの整泡剤の量は任意に決定されるが、好ましくはポリオール化合物100重量部に対して0.1~10重量部である。
【0056】
市販の整泡剤としては、B8002、B4900(Evonik Degussa Japan製)等が挙げられる。整泡剤は、単独の化合物であってもよく、少なくとも2つの化合物の混合物であってもよい。
【0057】
[難燃剤]
本発明においては、難燃剤が使用される。難燃剤は、好ましくはリン系難燃剤であり、典型的な好適な化合物としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリス(β-クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)等が挙げられる。
【0058】
使用される難燃剤の量は、好ましくはポリオール化合物100重量部に対して、10~80重量部であり、より好ましくは20~60重量部である。
【0059】
難燃剤の量が上記範囲の下限値より大きい場合、得られるフォームの難燃性が良好に向上する。上記範囲の上限値以下である場合、ポリオール系液体は良好な貯蔵安定性を有する可能性がある。使用される難燃剤は、単独の化合物であってもよく、2つ以上の化合物を混合して使用してもよい。
【0060】
[その他の配合成分]
本発明においては、上述したポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤および難燃剤に加えて他の配合成分を使用することができる。配合成分の例としては、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウム等の充填剤;酸化防止剤および紫外線吸収剤等の劣化防止剤;可塑剤、着色剤、抗真菌剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0061】
[噴霧法]
本発明の硬質フォームの製造方法は噴霧法である。噴霧法による使用可能な公知のフォーム製造方法が多く存在するが、好ましい方法は限定されないが、ミキシングヘッド(mixing head)内で配合液を混合し発泡するエアレス噴霧発泡法が好ましい。噴霧発泡法は、噴霧によりポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを反応させる発泡方法であり、前記反応が、例えば触媒のような適切な選択により短時間で停止され得ることを特徴とする。噴霧発泡法は、建設現場において、壁、天井等の硬質フォーム断熱材を形成するためによく使用される。作業現場で直接的に硬質フォームを製造する噴霧発泡法は、適用コストを削減することができ、表面が平滑でない適用平面に対してでも連続的に硬質フォームを形成することができるという利点を有する。
【0062】
本発明の製造方法により製造された硬質フォームの密度は10~17kg/mである。発泡剤として多量の水を使用することにより密度を低下させることができるが、多量の発泡剤を使用するため得られる硬質フォームが収縮しやすくなる。
【0063】
本発明によれば、発泡剤として水のみを使用する噴霧法によって連続気泡硬質フォームを製造することが可能である。大量の水が含まれているものの、ポリオール配合組成物は好ましい保存安定性を示し、イソシアネート化合物と好ましい相溶性を示し、その結果、多量の水を使用することにより硬質フォームの重量を低減することができる。得られる硬質フォームは微小で平滑な気泡を有し、そのため好ましい立体安定性および強度を有する。噴霧法により、成形性(噴霧厚さ、ドローダウン等)に優れた低密度硬質発泡層を形成することが可能となる。
【0064】
[試験方法]
ヒドロキシル価は、JIS K1557-1:2007(ISO14900:2001に対応する)に準じて決定される。
【0065】
粘度は、JIS K1557-5:2007(ISO2555:1989に対応する)に準じて決定される。
【0066】
フォーム密度は、JIS K7222:2005(ISO845:1988に対応する)に準じて決定される。
【0067】
熱伝導率(単位:mW/mK(23℃))は、JIS A 1412-2:1999(ISO8301:1999に対応する)に準じて決定される。
【実施例
【0068】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特に断りのない限り、使用した数値は重量部で示す。
【0069】
ヒドロキシル価は、JIS K1557-1(2007)に準じて決定された。
【0070】
粘度は、JIS K1557-5(2007)に準じて決定された。
【0071】
実施例1~4および比較例1
ポリオール化合物、発泡剤としての水、整泡剤、触媒および難燃剤を含むポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物とを、ハンドフォーミングまたは噴霧発泡法により混合し、互いに反応させ、ポリウレタンフォームを得た。硬質フォーム(ポリウレタンフォーム)を、表1に示す組成で調製した。[0048]
【0072】
実施例および比較例で使用した原料は以下の通りである。
【0073】
[ポリオール]
ポリオールA1:ノニルフェノール1mol、ホルムアルデヒド1.6mol、およびジエタノールアミン2.4molを互いに反応させ、マンニッヒ化合物1を得た。プロピレンオキシド(PO)とエチレンオキシド(EO)とを、開環付加重合によりこの順番でマンニッヒ化合物1に結合させ、25℃における粘度800mPa・s、ヒドロキシル価300mgKOH/gのマンニッヒポリオールを得た。POおよびEOの合計量中におけるEOの割合は61重量%であった。
【0074】
ポリオールB1:グリセロールを開始剤として用いた;プロピレンオキシド(PO)とエチレンオキシド(EO)とを、開環付加重合によりこの順番で結合させ、25℃における粘度830mPa・s、ヒドロキシル価35mgKOH/gのポリエーテルポリオールを得た。POおよびEOの合計量中におけるEOの割合は13重量%であった。
【0075】
ポリオールB2:グリセロールを開始剤として使用した;プロピレンオキシド(PO)とエチレンオキシド(EO)とを、開環付加重合によりこの順番で結合させ、25℃における粘度1200mPa・s、ヒドロキシル価28mgKOH/gのポリエーテルポリオールを得た。POおよびEOの合計量中におけるEOの割合は17重量%であった。
【0076】
ポリオールB3:グリセロールを開始剤として使用した:プロピレンオキシド(PO)とエチレンオキシド(EO)とを、開環付加重合によりこの順番で結合させ、25℃における粘度1150mPa・s、ヒドロキシル価28mgKOH/gのポリエーテルポリオールを得た。POおよびEOの合計量中におけるEOの割合は22重量%であった。
【0077】
ポリオールC1:グリセロールを開始剤として用いた;プロピレンオキシドのみを開環付加重合により結合させ、25℃における粘度250mPa・s、ヒドロキシル価235mgKOH/gのポリエーテルポリオールを得た。
【0078】
ポリオールC2:スクロース、プロピレングリコールおよび水の混合物(重量比90:5.7:4.3)を開始剤として使用した;プロピレンオキシドのみを開環付加重合により結合させ、25℃における粘度12000mPa・s、ヒドロキシル価380mgKOH/gのポリエーテルポリオールを得た。
【0079】
[発泡剤]
水を使用した。
【0080】
[触媒]
触媒1:2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール
触媒2:N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール
触媒3:N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチル-ビスアミノエチルエーテル
【0081】
[整泡剤]
整泡剤1:製品名B8002、Evonik Degussa Japan製
【0082】
[難燃剤]
トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート(製品名:TMCPP、大八化学(株)製)
【0083】
[イソシアネート化合物]
ポリマーMDI、製品名:Sumidur 44V20L(住化コベストロウレタン(株)製)、粘度(25℃):180mPa・s、NCO含有率:31.5%
【0084】
【表1】
【0085】
試験は下記の方法により行った。結果を表1に要約する。
【0086】
<ポリオール組成物の保存安定性の評価>
ポリオール組成物の1つを試験管に入れ、各試験管を40℃、50℃および70℃の温度条件下で保存し、試験開始からポリオール組成物が分離するまでの時間を決定した。40℃で2ヶ月以上保存しても分離しなかったポリオール組成物を○(良好)で示し、分離したものを×(不良)で示す。
【0087】
<ハンドフォーミングによる調製および評価>
表1に示す組成のポリオール化合物に水、泡安定剤、触媒、難燃剤を加えてポリオール組成物を得た。体積比1:1のポリオー組成物およびポリイソシアネート化合物から調製したポリオール組成物55g(計算値、密度1.09g/cmと推定)と、ポリイソシアネート化合物62(計算値、密度1.23g/cmと推定)とを、液温15℃で300cmのカップに入れ、混合物を、反応のために撹拌装置、撹拌羽を備えたせん断装置(drilling machine)を用いて5000rpmの回転数で2秒間撹拌し、得られた混合物を、上部が開いた長さ150mm、幅200mmおよび高さ150mmの木箱に注ぎ、硬質フォームを得た。ポリオール組成物のヒドロキシル価(水を除く)およびイソシアネート指数は表1に示す通りである。
【0088】
<クリームタイム、ゲルタイムおよびライズタイム>
反応性の評価のために、目視により以下の項目を決定した:
クリームタイム:ポリオール系液とポリイソシアネート化合物とを最初に混合してから(0秒)、混合物の色調が変化し始めて発泡するまでの時間;
ゲルタイム:混合開始から、反応混合物に木製の箸を挿入し引き抜いた場合に箸に付着した反応混合物が糸を引くように見えるまでの時間。挿入の頻度は1秒あたり~1回。
ライズタイム:発泡が停止しフォームの膨張が停止する時間(単位:秒)。
【0089】
<密度>
100mm四方の立方体サンプルを、得られたフォームのコア領域から切り出し、その密度をJIS K 7222:2005に準じて決定した。収縮による形状変化が大きく、密度を測定できなかったサンプルについては、表中「n.d.」で示す。
【0090】
<噴霧法による調製および評価>
上述したハンドフォーミングによる調製と同様にして、ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを、液温40℃、室温20℃、体積比1:1で、噴霧発泡装置を用いて延伸合板(壁とする)に噴霧することにより、JIS-A-9526に準じて硬質フォームを調製した。
【0091】
使用した噴霧発泡装置はGraco Inc.製のReactor E-20であり、使用したスプレーガンはGraco Inc.製のFusion Gun(チャンバーサイズ4242)である。
【0092】
下記の試験では、収縮による形状変化により測定することができなかったフォームを、表中で「n.d.」と示す。さらに、<ハンドフォーミングによる調製および評価>において十分な結果が得られなかった組成物は、<噴霧法による調製および評価>に供さなかった。
【0093】
<密度>
200mm×200mm×25mmのサイズの矩形のフォームサンプルをコア領域から切り出し、その密度をJIS K7222:2005に準じて決定した。
【0094】
<熱伝導率(断熱効率)>
熱伝導率(単位:mW/mK(23℃))を、熱伝導率分析器(製品名:AutoΛ HC-074 (200) model、EKO Instruments Co., Ltd.製)を用いて、JIS A 1412-2に準じて決定した。
【0095】
<燃焼試験(難燃性)>
得られた硬質フォームを、JIS-A-9511の試験法Bに準じた自己消化試験(self-extinguishing test)に供し、燃焼時間2分以下、かつ燃焼長(combustion length)60mm以下のものを○で示し、その要件を満たさないものを×で示す。
【0096】
<収縮>
収縮の評価では、スプレー直後のフォームに竹串を挿入し、フォームの膨張が停止した位置をマークした。20℃で1日保存した後、フォームの位置をマークし、前日のマークとの差を測定した。11mm以上の差があるサンプルを×(不良)と示し、10mm以下の差である試料を○(良好)と示す。11mm以上の収縮を示すものは、噴霧適用部位において剥離する可能性がある。
【0097】
表1に示す結果から、本発明の実施例1、2、3および4のポリオール組成物は、保存安定性に優れ、燃焼性および収縮の点で優れていることが分かる。
【0098】
これに対して、ポリオールB1が本発明の要件を満たさず、エチレンオキシドの量が少ない比較例1では、ポリオール組成物が好ましくない保存安定性の問題を引き起こした。
【0099】
本発明におけるポリオール組成物は、多量の水を含み、水のみを発泡剤として用いた噴霧法により連続気泡硬質フォームを製造を可能とし、その上で好ましい保存安定性を示す。得られた硬質フォームは軽量であり、断熱材に求められる性能を満たす。また、発泡加工性、および噴霧法による作業環境の衛生面でも優れており、そのため建築用途や建材用途に好適に使用される。