(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】天然ガス改良用高選択性ポリノルボルネンホモポリマー膜
(51)【国際特許分類】
C08G 77/442 20060101AFI20220224BHJP
B01D 71/44 20060101ALI20220224BHJP
B01D 71/70 20060101ALI20220224BHJP
C08F 132/08 20060101ALI20220224BHJP
C08F 4/80 20060101ALI20220224BHJP
C08F 4/70 20060101ALI20220224BHJP
C08G 77/50 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C08G77/442
B01D71/44
B01D71/70 500
C08F132/08
C08F4/80
C08F4/70
C08G77/50
(21)【出願番号】P 2018545602
(86)(22)【出願日】2017-02-21
(86)【国際出願番号】 US2017018695
(87)【国際公開番号】W WO2017151350
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-12
(32)【優先日】2016-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】スンデル,ベンジャミン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス,ジョン エー,ザ サード
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0052454(US,A1)
【文献】特表2005-539275(JP,A)
【文献】特開2005-105143(JP,A)
【文献】特開2003-048918(JP,A)
【文献】DRAGUTAN, V. et al.,Synthesis of Metal-containing Polymers via Ring Opening Metathesis Polymerization (ROMP). Part I. Polymers Containing Main Group Metals,J Inorg Organomet Polym,2008年,Vol. 18,p. 18-31
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
C08F132/00-132/08
B01D 71/00- 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーを作製する方法であって、
触媒の存在下で少なくとも1つのアルコキシシリル部分を含むノルボルネンモノマーを重合して、アルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーを生成するステップと、
周囲条件、酸-触媒条件、または塩基-触媒条件で、ゾルゲルで開始される前記アルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーの架橋を介して、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーを生成するステップと、
を含
み、
前記ゾルゲルで開始される架橋が、水中加水分解、または大気への曝露を伴い、
前記ゾルゲルで開始される架橋が、酸の触媒作用または塩基の触媒作用による、方法。
【請求項2】
前記重合ステップが、遷移金属触媒を利用する付加重合プロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属触媒が、パラジウムメタロセン誘導体の触媒、およびトリチルボレート、ホスフィン、またはそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記重合ステップが、第1世代グラブス触媒、または任意の後世代のグラブス触媒を利用する開環メタセシス重合(ROMP)プロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルコキシシリル部分が、1個~18個のアルコキシ基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーが、以下の構造のうちのいずれかを有し、
【化1】
式中、R1が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、R2が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、R3が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、nが、少なくとも1であり、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つが、アルコキシまたはアルコキシシロキサンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
R1、R2、及びR3のうちの少なくとも2つが、アルコキシまたはアルコキシシロキサンであり、少なくとも2つのアルコキシが同じまたは異なる部分である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ノルボルネンモノマーが、メチルジエトキシシリルノルボルネン、ジメチルエトキシシリルノルボルネン、またはトリエトキシシリルノルボルネンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記架橋の程度が、ゲル含有量によって測定され、10重量%~100重量%のゲル含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
以下の構造のうちのいずれかを有するアルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーが架橋した架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーを含む配合物であって、
【化2】
式中、R1が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、R2が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、R3が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、nが、少なくとも1であり、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つが、アルコキシまたはアルコキシシロキサンであり、
前記架橋が、10重量%~100重量%のゲル含有量を特徴とする、配合物。
【請求項11】
前記架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーが、少なくとも第1の鎖パッキング領域、第2の鎖パッキング領域、第3の鎖パッキング領域、および第4の鎖パッキング領域を含み、前記第1の鎖パッキング領域が第1の鎖間距離によって画定され、前記第2の鎖パッキング領域が第2の鎖間距離によって画定され、前記第3の鎖パッキング領域が第3の鎖間距離によって画定され、前記第4の鎖パッキング領域が第4の鎖間距離によって画定され、前記第1の鎖間距離が前記第2の鎖間距離よりも短く、前記第3の鎖間距離が前記第1の鎖間距離及び第2の鎖間距離よりも長く、前記第4の鎖間距離が前記第1、第2、及び第3の鎖間距離よりも短く、前記第1の鎖間距離、前記第2の鎖間距離、前記第3の鎖間距離、および前記第4の鎖間距離が、広角X線回折測定(WAXRD)によって測定された角度ピークに関するブラッグの法則から計算される、請求項
10に記載の配合物。
【請求項12】
前記架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーが1~3の分子量分布(MWD)を含み、MWDがM
w/M
nとして定義され、M
wが重量平均分子量であり、M
nが数平均分子量である、請求項
10に記載の配合物。
【請求項13】
請求項
10に記載の配合物を含む、天然ガス分離膜。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年3月1日に出願の米国特許出願第15/057,894号に対する優先権を主張し、参照によりその全体が組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は、概して、ノルボルネンホモポリマー膜及びそれらの天然ガス分子の分離能に関する。
【背景技術】
【0003】
消費者によって使用される天然ガスは、ほぼ完全にメタンで構成される。しかしながら、ウェルヘッドで見出される天然ガスは、依然として主にメタンで構成されているが、決して純粋ではない。天然ガスは、典型的には、油井、ガス井、及びコンデンセート井の3つの異なる源から単離されるが、天然ガスの源が何であれ、一般的に、主にエタン、プロパン、ブタン、及びペンタンの他の炭化水素との混合物中に存在する。これらの炭化水素の各々は、類似したサイズ及び極性を有する。より大きい炭化水素であるペンタンは、より容易に分離されるが、より小さい炭化水素に関しては、分離は困難な試みである。
【0004】
ガス分離分野で使用される大半の膜は、ガラス状ポリマーに由来し、一般的に重炭化水素の分離には許容できない。大半のガラス状ポリマーは、プロパン、ブタン、及び他のガス類と比較して高いメタン透過性を有し、これらのガラス状ポリマーは、重炭化水素とメタンとを区別するには選択性が十分ではない。ガラス状ポリマー膜は、空気サンプル中の酸素及び窒素を効果的に分離するために使用されており、また、ブタノールを他のバイオ燃料から分離するためにも使用されているが、これらのガラス状ポリマー膜は、炭化水素の選択性の達成度が低く、したがって天然ガス改良用途に十分な分離を提供しない。対照的に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のゴム状ポリマーは、高い透過性を有するが、概して、より選択性が低更に、ガラス状ポリマー膜は、経年劣化による性能の低下を示す傾向がある。経年劣化は自由体積の崩壊によって生じ、この崩壊は、より低い透過性を引き起こす傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、好適な透過性及び長い膜寿命を維持しながら高い選択性を達成する、改善された天然ガス改良膜の継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態は、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー配合物、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー配合物の作製方法、及び膜がこれらの架橋アルコキシシリルノルボルネンホモポリマー配合物を組み込む方法を対象とし、これらのノルボルネンホモポリマー膜は、特に天然ガス改良用途において、高い選択性、好適な透過性、及び経年劣化及び可塑化に対するより高い耐性を示す。膜は、特質上、選択性を向上させると透過性の望ましくない低下を伴うという、トレードオフの関係に置かれている。しかしながら、本発明の架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー配合物のペンダントアルコキシルシリル部分は、より高い選択性を達成しながら、より高い透過性を維持するが、トリメチルシリル置換ポリマーは、このような選択性及び透過性を有しない。更に、天然ガス改良用途で利用されている従来技術のポリノルボルネンは、50psiの純粋なガス条件下で達成されるメタンに対するプロパンの最大選択性(C3H8/CH4)が3とより低い一方で、本発明の架橋アルコキシシリルノルボルネンホモポリマー膜は、同様の条件で少なくともその2倍の選択性性能をもたらすことができる。
【0007】
一実施形態によれば、触媒の存在下でアルコキシシリル部分を有するノルボルネンモノマーを重合してアルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーを生成することと、アルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーのゾルゲルで開始される架橋を介して架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーを生成することと、を含む、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーの作製方法。別の実施形態によれば、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーを含む配合物は、以下の構造のうちのいずれかを有して提供される。
【0008】
【0009】
この場合、R1は、アルキル、アルコキシ、またはOSiR4R5であり、R2は、アルキル、アルコキシ、またはOSiR4R5であり、R3は、アルキル、アルコキシ、またはOSiR4R5であり、R4は、アルキルまたはアルコキシであり、R5は、アルキルまたはアルコキシであり、nは、少なくとも1であるが、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つは、アルコキシまたはOSiR4R5等のアルコキシシロキサンでなければならない。更に、架橋は、10重量%~100重量%のゲル含有量を特徴とする。
【0010】
実施形態の追加的な特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載されており、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む、本明細書に記載の実施形態を実施することにより、その記載の当業者に容易にある程度明らかになる、または認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】開環メタセシス重合(ROMP)によって生成された異なる架橋エトキシシリルポリノルボルネンホモポリマー[ROMP-SiMe
2OEt、ROMP-SiMe(OEt)
2、ROMP-Si(OEt)
3]によって得られた選択性を、ROMP(ROMP-SiMe
3)によって生成された非アルコキシル化ポリノルボルネンホモポリマーと比較した、グラフ的な説明図である。
【
図2】付加重合(APN)によって生成された異なる架橋エトキシシリルポリノルボルネンホモポリマー[APN-SiMe
2OEt、APN-SiMe(OEt)
2、APN-Si(OEt)
3]によって得られた選択性を、APN(APN-SiMe
3)によって生成された非アルコキシル化ポリノルボルネンホモポリマーと比較した、グラフ的な説明図である。
【
図3】開環メタセシス重合(ROMP)によって生成された異なる架橋エトキシシリルポリノルボルネンホモポリマー[ROMP-SiMe
2OEt、ROMP-SiMe(OEt)
2、ROMP-Si(OEt)
3]の広角X線回折測定(WAXRD)パターンを、ROMP(ROMP-SiMe
3)によって生成された非アルコキシル化ポリノルボルネンホモポリマーと比較した、グラフ的な説明図である。
【
図4】付加重合(APN)によって生成された異なる架橋エトキシシリルポリノルボルネンホモポリマー[APN-SiMe
2OEt、APN-SiMe(OEt)
2、APN-Si(OEt)
3]を、APN(APN-SiMe
3)によって生成された非アルコキシル化ポリノルボルネンホモポリマーと比較した、WAXRDパターンのグラフ的な説明図である。
【
図5】この場合、酢酸である酸触媒条件でのゾルゲルで開始される架橋を更に実施した場合の、APNまたはROMPのゲル分画(%)及び架橋の増加を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に記載される実施形態は、本質的に例示的なものであり、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。更に、図面の個別の特徴は、発明を実施するための形態を考慮することで完全に明白になり、理解されるであろう。
【0013】
本開示の実施形態は、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー配合物、及びこれらの架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー配合物を含む膜に関し、この膜は、メタン、エタン、プロパン、及びブタン等のより小さい炭化水素を重炭化水素流から分離する、改善された選択性を有する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「ホモポリマー」とは、ポリマー分子が、単一のモノマー、具体的には以下に考察されるノルボルネンモノマーから生成され、したがって追加のコモノマーを含むコポリマーを包含しないことを意味する。しかし、この作業は新規の共重合を利用して、自由体積を増加させることができ、したがって結果として生じる膜の性能を増大することができる。すなわち、いくつかの実施形態では、追加のポリマーまたは添加剤等の追加の成分を、膜の架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー配合物とブレンドすることが検討される。かかる添加剤は、ゾルゲル化学反応に更に影響を及ぼすシラン小分子誘導体を含むことができる。これに対して、カーボンナノチューブ、グラフェンまたは金属有機構造体を有する他の分子等の高度に設計された添加剤は、ホモポリマーの輸送特性の増大に有益であろう。
【0015】
本明細書で使用される場合、「選択性」とは、メタンと比較してより大きな炭化水素の分離を指す。以下の考察及び実施例は、メタンに対するプロパンの選択性について考察し、本明細書で使用される場合、「選択性」とは、ブタン等のメタンに対してより大きな他の炭化水素をも包含し得る。メタンに対するブタンの50psiでの純粋なガス選択性は53と高く、これはメタン選択性に対するプロパン選択性よりも実質的により高い。
【0016】
理論に束縛されるものではないが、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー配合物のアルコキシシリル基は、立体相互作用を増強することによってポリマー鎖間の自由体積を増加すること、ならびにそれらの高い移動性及び柔軟性によってガス拡散を促進することによって、膜に改善された性能を提供し得る。更に、ノルボルネンポリマーを含有するアルコキシシリルは架橋可能であり、これにより、膜の選択性も更に増大しながら、長期用途での劣化に対抗する安定した性能を提供する。
【0017】
更に、アルコキシ含有量の増加は、天然ガスの改良、具体的にはメタンから重炭化水素(エタン、プロパン、ブタン)を分離するために使用される膜に改善された選択性を提供している。更に以下に説明されるように、メタンに対するプロパンの膜選択性は、50psiの純粋なガス条件下で8以上であり得る。
【0018】
架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーは、触媒の存在下でアルコキシシリル部分を含むノルボルネンモノマーを重合してアルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーを生成することによって生成され得る。次いで、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーは、アルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーのゾルゲルで開始される架橋を介して生成され得る。ゾルゲルで開始される架橋には、種々の反応条件が検討される。1つ以上の実施形態では、ゾルゲルプロセスは、周囲条件、または酸触媒条件で開始され得る。例えば、ゾルゲルで開始される架橋は、水中加水分解または大気への曝露を伴う。更に、架橋の程度は、酸触媒条件で更に増加され得る。例えば、酢酸等の酸は、アルコキシ部分の架橋を大きく増加させ得る。アルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーのゾルゲル架橋は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)化合物のエトキシ部分の架橋に類似し得るが、エトキシに代わり複数のアルコキシ代替物が利用され得ることが検討される。
【0019】
本開示に従って、ノルボルネンモノマーは、1個~9個のアルコキシシリル基を含み得る。例えば、以下に示すように限定するものではないが、ノルボルネンモノマーは、メチルジエトキシシリルノルボルネン(構造1)、ジメチルエトキシシリルノルボルネン(構造2)、及びトリエトキシシリルノルボルネン(構造3)を含み得る。いくつかの実施形態では、より多くのアルコキシシリル置換基が存在し得る。例えば、シリカ原子に結合したメチルまたはアルコキシ基の代わりに、アルコキシシロキサン置換基がシリカ原子に結合され得る(すなわち、[OSi(OMe)3]3)(構造4)。更に、2つ以上の部分が、二環式環状構造に存在し得る(構造5)。
【0020】
【0021】
種々の重合技法が検討される。重合技法は、以下更に図示されるように開環メタセシス重合(ROMP)及び付加重合を含み得る。
【0022】
別の実施形態では、重合ステップは、ROMP触媒を含み得る。ROMP触媒は、遷移金属錯体であるグラブス触媒を含み得る。1つ以上の実施形態では、グラブス触媒は、第1世代グラブス触媒、または任意の後世代のグラブス触媒である。一実施形態では、触媒は、ルテニウム触媒である。任意選択的に、触媒は、トルエン等の担体または溶媒を備え得る。例えば、ROMP触媒は、第1世代グラブス触媒であり、下記の反応を受け得る。
【0023】
下記は、トリエトキシシリルノルボルネンモノマー(構造3に更に示される)及び第1世代グラブス触媒(ベンジリデン-ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム)を利用するサンプルROMPプロセスである。
【0024】
【0025】
前述の反応1で生成されたトリエトキシシリルポリノルボルネンホモポリマーに加えて、ROMPプロセスのポリノルボルネンホモポリマーは、以下のように構造6に示される以下の構造を有し得る。
【0026】
【0027】
構造6及び構造7のアルコキシシリル修飾シクロペンタン構造では、R1は、アルキル、アルコキシ、またはOSiR4R5であり、R2は、アルキル、アルコキシ、またはOSiR4R5であり、R3は、アルキル、アルコキシまたはOSiR4R5であり、R4は、アルキルまたはアルコキシであり、R5は、アルキルまたはアルコキシであり、nは、少なくとも1であるが、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つがアルコキシでなければならない。更なる実施形態では、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも2つ及び最大3つ全ては、アルコキシまたはアルコキシシロキサン置換基(すなわち、OSiR4R5)であり、少なくとも2つのアルコキシが、同じかまたは異なるアルキル部分を含む。
【0028】
種々のアルコキシ基が検討される。一実施形態では、アルコキシ基は、C1~C6アルコキシ部分である。例えば、R1~R3のアルコキシまたはアルキオキシシロキサン(alkyoxysiloxane)部分は、エトキシ基、メトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、またはそれらの組み合わせを1個~9個含み得る。
【0029】
例えば、限定するものではないが、ROMPプロセスから生成されたポリノルボルネンホモポリマーは、以下のように示される特定の構造を含み得る。ROMP-SiMe2OEt(構造8)、ROMP-SiMe(OEt)2(構造9)、及びROMP-SiMe(OEt)3、(構造10)。
【0030】
【0031】
あるいは、重合ステップは、付加重合触媒を利用してアルコキシシリルノルボルネンモノマーを重合する、付加重合プロセスであり得る。付加重合触媒は、少なくとも1つの遷移金属触媒を含み得る。1つ以上の実施形態では、遷移金属触媒は、ニッケル、パラジウム、チタン、ジルコニウム、クロム、バナジウム、またはそれらの組み合わせを含み得る。更に別の実施形態では、遷移金属触媒は、後期遷移金属であり得る。一実施例では、付加重合触媒は、パラジウムメタロセン触媒であり得る。更なる実施形態では、付加重合触媒は、遷移金属触媒及び他の触媒成分を含む混合触媒であり得る。1つ以上の実施形態では、付加触媒は、パラジウムメタロセン触媒、トリチルボレート、及びホスフィンを含み得る。理論に限定されるものではないが、この混合触媒は、ノルボルネンモノマーの立体的な嵩の高さを克服することが可能なほど十分な活性を有するため、好適である。任意選択的に、付加触媒は、例えばトルエン等の溶媒溶液に混合され得る。
【0032】
以下は、トリエトキシシリルノルボルネンモノマー(構造3に更に示される)及びパラジウムメタロセン触媒、ホスフィン、及びトリチルボレートを含む混合触媒を利用するサンプル付加重合プロセスである。
【0033】
【0034】
前述の反応2で生成されたトリエトキシシリルポリノルボルネンホモポリマーに加えて、付加重合プロセスのポリノルボルネンホモポリマーは、以下のように構造6に示される以下の二環式構造を有し得る。
【0035】
【0036】
構造11及び構造12のアルコキシシリル修飾二環式構造では、R1は、アルキル、アルコキシ、またはOSiR4R5であり、R2は、アルキル、アルコキシ、またはOSiR4R5であり、R3は、アルキル、アルコキシまたはOSiR4R5であり、R4は、アルキルまたはアルコキシであり、R5は、アルキルまたはアルコキシであり、nは、少なくとも1であるが、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つがアルコキシまたはアルコキシシロキサンでなければならない。更なる実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも2つは、アルコキシまたはアルコキシシロキサン置換基(構造4の部分と同様)であり、少なくとも2つのアルコキシ基が同じかまたは異なるアルキル部分を含む。
【0037】
例えば、限定するものではないが、付加重合プロセスから生成されたアルコキシルシリルポリノルボルネンホモポリマーは、以下のように示される特定の構造を含み得る。APN-SiMe2OEt(構造13)、APN-SiMe(OEt)2(構造14)、及びAPN-Si(OEt)3(構造15)。
【0038】
【0039】
アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーの構造は、ROMPまたはAPNによって生成された場合とわずかに異なるが、アルコキシシリル部分は、両方に共通である。1つ以上の実施形態では、アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー鎖は、ケイ素に結合したアルコキシ部分の数に応じて、10重量%~80重量%のアルコキシ、または15~75重量%のアルコキシ、または20重量%~60重量のアルコキシを含み得る。
1つ以上の実施形態では、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーは、1~3の分子量分布(MWD)を含み得、MWDが、Mw/Mnとして定義され、Mwが重量平均分子量であり、Mnが数平均分子量である。更なる実施形態では、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーは、1~2のMWDを含み得る。
【0040】
前述のように、アルコキシルシリルポリノルボルネンホモポリマーのアルコキシシリル基は、制御可能な架橋性官能基を有する。理論に限定されるものではないが、架橋は、多くの場合、合成中に早期に生じて、膜形状に加工することができないポリマーを結果的に生じる場合がある。しかしながら、本発明のアルコキシルシリルポリノルボルネンホモポリマー実施形態の架橋は、アルコキシルシリルポリノルボルネンホモポリマーが合成され、沈殿し、架橋が生じる前にフィルム形状にキャストされるように、制御され得る。前述のように、架橋は、水への曝露、または場合によっては、周囲条件で長期間大気に曝露されることにより、最終的なフィルム状において生じる。
図5を参照すると、アルコキシルシリルポリノルボルネンホモポリマーが酢酸等の酸で処理される場合の架橋の程度。1つ以上の実施形態では、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーの架橋は、10重量%~100重量%のゲル含有量、または20~100重量%のゲル含有量を特徴とし得る。
【0041】
前述のように、本発明の膜の重要な特徴のうちの1つは、重炭化水素とメタンとの間のより高い選択性である。小分子分離に膜が有効であるためには、膜の孔径も同様に制御されなければならない。ガス透過研究を使用して選択性を決定した。純粋なガス透過係数は、一定体積、可変圧力技法を使用して測定した。膜の上流側は、ステンレス鋼Swagelok(登録商標)管及び管継手を使用して構成した。下流側は、溶接されたSwagelok(登録商標)管及びVCR継手でほとんど構成した。ステンレス鋼、高圧フィルタホルダー(Millipore、Billerica、MA)を使用して膜を収容した。透過性測定値を、室温(23~25℃)で50~100psiの供給圧力を使用して取得した。下流、または透過圧を50トル未満に維持した。透過の定常状態の確立は、タイムラグ方法を使用して検証され、14×拡散時間ラグが有効な定常状態として採用された。Baratron絶対圧力変換器(MKS Instruments、Billerica MA)を使用して系の圧力を測定し、Labviewソフトウェアを使用して記録した。
【0042】
透過係数は、単位膜厚当たりの単位駆動力当たりの膜を通る物質の輸送フラックスとして定義する。膜厚は、50~150ミクロンの範囲であってもよい。膜厚は、大幅に低くてもよく、1ミクロン未満であってもよい。純粋なガスの透過係数は、一定体積/可変圧力技法を使用して計算される。透過係数は、以下の方程式を使用して計算される:
Pi=(ni*l)/Δf (方程式1)
nが分子流束である場合、lが膜厚であり、Δfが膜全体の逸散能の差異である。部分的な圧力差ではなく逸散能の差異を使用して、炭化水素ガスの透過性の値に顕著な影響を及ぼす場合のある、供給流におけるガス相の非理想性を説明する。逸散能係数は、Peng-Robinson状態方程式を使用して計算される。理想的な選択性は、以下の方程式によって計算した:
α=Pi/Pj (方程式2)
【0043】
図1に示されるように、付加重合されたアルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー[APN-SiMe
2OEt、APN-SiMe(OEt)
2、APN-Si(OEt)
3]は全て、50psiの純粋なガス条件下で約6~約9のプロパン/メタン選択性を達成し、大半のアルコキシシリルポリノルボルネンが、約7~約8の選択性を達成する。対照的に、アルコキシを含まない付加重合ポリノルボルネン(APN-SiMe
3)は、わずか約3の選択性しか達成しなかった。
図2を参照すると、ROMPアルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー[ROMP-SiMe
2OEt、ROMP-SiMe(OEt)
2、ROMP-Si(OEt)
3]は、
図1の付加重合アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマー[APN-SiMe
2OEt、APN-SiMe(OEt)2、APN-Si(OEt)
3]よりも低い選択性を達成する一方で、選択性は、アルコキシを含まないROMPポリノルボルネンホモポリマー(ROMP-SiMe
3)の選択性の少なくとも3倍である。
【0044】
前述したように、選択性は、鎖間パッキングと少なくとも部分的に相関関連である。広角X線回折測定(WAXRD)は、結晶小分子及び結晶性ポリマーの分析において最もよく使用される。ガス分離における最も有用な膜は、主として非晶質であり、したがって、WAXRDパターンで得られたデータを透過特性と関連付ける研究はほとんどない。しかしながら、ブラッグの法則を介して散乱角を鎖間距離に関連付けることによって、鎖間距離は、示されるWAXRDピーク(
図3及び4のピーク上部のアスタリスクによって示される)から計算され得る。
【0045】
鎖間距離は、(dB/dic)=(ブラッグの距離/鎖間補正距離)=([λ/2sinθ]/[1.22λ/2sinθ])として示される。
【0046】
図3及び4の実施形態の図解を参照すると、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーは、少なくとも第1の鎖パッキング領域及び第2の鎖パッキング領域(アスタリスクによって図示される)を含み、第1の鎖パッキング領域が第1の鎖間距離によって画定され、第2の鎖パッキング領域が第2の鎖間距離によって画定され、第1の鎖間距離が第2の鎖間距離よりも短く、第1の鎖間距離及び第2の鎖間距離が、WAXRDによって測定された角度ピークに関するブラッグの法則から計算される。別の実施形態では、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーは、第3の鎖間距離によって定義される第3のパッキング領域を更に含み得、第3の鎖間距離が、第1の鎖間距離及び第2の鎖間距離よりも長い。更に別の実施形態では、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーは、第4の鎖間距離によって定義される第4のパッキング領域を更に含み得、第4の鎖間距離が、第1、第2、及び第3の鎖間距離よりも短い。
【0047】
本実施形態の特徴は、以下の実施例に更に例証されるであろう。
【実施例】
【0048】
開環メタセシス重合トリエトキシシリルノルボルネン(ROMP-Si(OEt)3合成:
例示のため反応1を参照すると、グローブボックス内で、30ミリリットル(mL)バイアル瓶を、03.85gの入手したままのトリエトキシシリルノルボルネン(0.05モル(M)、1.51ミリモル(mmol))、及び乾燥脱酸素トルエン29mLで充填した。別個のバイアル瓶で、ルテニウム(.003mmol)を含有する第1世代グラブス触媒2.5ミリグラム(mg)を2mLの乾燥トルエンに溶解させて、触媒原液を作製した。最後に、1.0mLの触媒溶液を撹拌されているノルボルネン溶液に添加して、重合を開始した。24時間後、エチルビニルエーテル(0.431mL、4.51mmol)を添加して重合を終了し、溶液の撹拌を継続した。更に24時間後、サンプル体積がおよそ5mLになるまで、真空下のグローブボックス内で溶媒を除去したところ、サンプルが粘稠な液体になった。粘稠な溶液を、撹拌されているアルコール(500mL)に滴加して沈殿させた。沈殿すると、濁った上清中に繊維質ポリマーを得た。ポリマーを恒量まで乾燥し、オフホワイト色の固体として単離した。
【0049】
付加重合トリエトキシシリルノルボルネン(APN-Si(OEt)3)合成:
例示のため反応2を参照すると、窒素下で、30mLのバイアル瓶を、1.541gの入手したままのトリエトキシシリルノルボルネン(6.01mmol)及び29.7mLの乾燥脱酸素トルエン(0.2M)で充填した。3つの別々のバイアル瓶で、0.35mgのシクロペンタジエニル-(1,2,3-n)-1-フェニル-2-プロペニルパラジウム(II)(0.0012mmol)を1mLのトルエンに溶解し、1.11mgのトリチルテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(0.0012mmol)を1mLのトルエンに溶解しながら、0.34mgのトリシクロヘキシルホスフィン(00012mmol)を1mLのトルエンに溶解した。パラジウム触媒を含有する0.2mLの溶液を0.2mLのホスフィン溶液と混合し、次いで0.2mLのトリチルボレート溶液を0.4mLのパラジウム及びホスフィンに添加した。その後、0.3mLの混合触媒溶液をノルボルネン溶液に添加した。反応容器を密封し、グローブボックスから取り出して加熱し、摂氏40度(C)で24時間撹拌したところ、黄色及び粘稠になった。24時間後、溶液を1000mLのアセトンに滴下し沈殿させると、アセトン中で撹拌する小さな白色のポリマービーズをすぐに形成した。白色ポリマーを濾過によって収集し、減圧下の室温で乾燥した。
【0050】
付加重合トリエトキシシリルノルボルネン(APN-Si(OEt)3)キャスティング:
0.5グラム(g)のトリエトキシポリマーのサンプルを10mLのトルエンに溶解し、完全に溶解するまで撹拌した。次いで、溶液を0.45マイクロリットル(μL)シリンジフィルタを用いて、グローブボックス内の乾燥した不活性条件下で濾過した。5重量体積%の濃度を有する10mLの濾過されたポリマー溶液を、水平面上の直径10センチメートル(cm)PFA鋳型に注ぎ入れた。PFA鋳型を覆って蒸発速度を遅らせ、フィルムを一晩乾燥した。ポリマーフィルムをPFA鋳型から除去し、真空下で恒量まで乾燥した。得られたフィルムは透明、延性、及び無色であった。
【0051】
【0052】
図4及び上記の表1を参照すると、ROMP-SiMe
3は、鎖パッキングを表す(5.7/7.0)Åの1つのみのピークを示し、この比較的な高さは、ポリスルホンまたはポリイミド等の多くの拡散制御されたガス分離膜と一致する。エトキシ置換にあたり、このピークは、ROMP-SiMe
2OEt内で広がり始めて、(7.2/8.8)Å及び(4.8/5.9)Åと等しい2つのピークを形成する。このより大きい鎖間ピークは、ポリマー鎖間の高い自由体積を示し、これにより、鎖パッキングが大きすぎてガス分子を効果的に区別できないため、溶解度制御された透過性を可能にする。より小さい鎖間ピークは、ポリマー鎖間のパッキングがより狭い機構である、エトキシ含有ポリマーの架橋に起因して生じ得る。
【0053】
この傾向はまた、ROMP-SiMe(OEt)2及びROMP-Si(OEt)3にも継続するが、これらの2つのポリマーでは、それぞれ(20.4/24.9)Å及び(32.4/39.5)Åの、非常に緩い鎖パッキングの第3の領域が出現し始める。これらの領域は、拡散制御された選択性の損失、及び溶解度を制御された選択性の出現を更に促進することが推定される。
【0054】
図3及び上記の表1を参照すると、メチル置換ポリノルボルネンAPN-SiMe
3は、文献において、溶解度選択性材料であることが既知である。このポリマーは、ブラッグの法則下では(12.0/14.6)Åであると計算された、(13.6/16.6)Åの鎖-パッキング領域の大きな距離を有する二峰性鎖パッキング分布を有する。この緩い鎖パッキングは、付加型ポリマーの拡散性選択性の欠如の原因である。低散乱角ピークは概して、エトキシ置換の増加の関数として更に低い角度までシフトされ、最終的には、APN-Si(OEt)3ポリマーでは(13.4/16.3)Åに到達する。この傾向における1つの注目すべき例外は、APN-SiMe(OEt)
2(12.4/15.1)は、APN-SiMe
2OEt(12.5/15.3)Åと比較して、実際に鎖パッキングを増加させたことである。この予想外の差異は、APN-SiMe
2OEtが、APN-SiMe(OEt)
2よりもより透過性の材料であることを示す、特有の輸送特性の原因となり得る。
【0055】
ポリマーのうちの2つ、APN-SiMe2OEt及びAPN-Si(OEt)3はまた、非常に遠位の鎖間パッキングに相当する、非常に低い散乱角の第3の領域を示した。これらのピークは、(40.9/49.9)Åほど大きな間隔を表し、高められた選択性での高透過性の保持において重要であり得る。ポリマーのうちの1つ、APN-Si(OEt)3はまた、非常に密な鎖間パッキング(4.2/5.1)Åの第4のピークを示し、これは最もエトキシを含有する付加ポリマーの架橋の根拠を提供する。唯一の付加型ポリマーは、ROMPポリマーのうちの3つと比較してこのシフトを示す。付加型ポリマーのより高いガラス転移は、鎖の移動性を制限し、より低いTgのROMPポリマーと比較して、架橋部位の共に反応する能力を制限する。
【0056】
特許請求された主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に種々の変更及び変形がなされ得ることは、当業者には明らかであるはずである。したがって、本明細書は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内に入るそのような変更及び変形が提供される種々の記載された実施形態の変更及び変形を網羅することを意図する。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーを作製する方法であって、
触媒の存在下で少なくとも1つのアルコキシシリル部分を含むノルボルネンモノマーを重合して、アルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーを生成するステップと、
周囲条件、酸-触媒条件、または塩基-触媒条件で、ゾルゲルで開始される前記アルコキシシリル修飾ポリノルボルネンホモポリマーの架橋を介して、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーを生成するステップと、
を含む、方法。
実施形態2
前記重合ステップが、遷移金属触媒を利用する付加重合プロセスを含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記遷移金属触媒が、パラジウムメタロセン誘導体の触媒を含む、実施形態2に記載の方法。
実施形態4
トリチルボレート、ホスフィン、またはそれらの組み合わせを更に含む、実施形態3に記載の方法。
実施形態5
前記重合ステップが、第1世代グラブス触媒、または任意の後世代のグラブス触媒を利用する開環メタセシス重合(ROMP)プロセスを含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態6
前記アルコキシシリル部分が、1個~18個のアルコキシ基を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態7
前記架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーが、以下の構造のうちのいずれかを有し、
【化9】
式中、R1が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、R2が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、R3が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、nが、少なくとも1であり、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つが、アルコキシまたはアルコキシシロキサンである、実施形態1に記載の方法。
実施形態8
R1、R2、及びR3のうちの少なくとも2つが、アルコキシまたはアルコキシシロキサンであり、少なくとも2つのアルコキシが同じまたは異なる部分である、実施形態7に記載の方法。
実施形態9
前記ノルボルネンモノマーが、メチルジエトキシシリルノルボルネン、ジメチルエトキシシリルノルボルネン、またはトリエトキシシリルノルボルネンを含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態10
前記ゾルゲルで開始される架橋が、水中加水分解、または大気への曝露を伴う、実施形態1に記載の方法。
実施形態11
前記ゾルゲルで開始される架橋が、酸または塩基の触媒作用による、実施形態10に記載の方法。
実施形態12
前記架橋の程度が、ゲル含有量によって測定され、約10%~約100%のゲル含有量を有する、実施形態1に記載の方法。
実施形態13
以下の構造のうちのいずれかを有する、架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーを含む配合物であって、
【化10】
式中、R1が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、R2が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、R3が、アルキル、アルコキシ、またはアルコキシシロキサンであり、nが、少なくとも1であり、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つが、アルコキシまたはアルコキシシロキサンであり、
前記架橋が、10重量%~100重量%のゲル含有量を特徴とする、配合物。
実施形態14
前記架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーが、少なくとも第1の鎖パッキング領域及び第2の鎖パッキング領域を含み、前記第1の鎖パッキング領域が第1の鎖間距離によって画定され、前記第2の鎖パッキング領域が第2の鎖間距離によって画定され、前記第1の鎖間距離が前記第2の鎖間距離よりも短く、前記第1の鎖間距離及び第2の鎖間距離が、広角X線回折測定(WAXRD)によって測定された角度ピークに関するブラッグの法則から計算される、実施形態13に記載の配合物。
実施形態15
第3の鎖間距離によって画定される第3のパッキング領域を更に含み、前記第3の鎖間距離が前記第1の鎖間距離及び第2の鎖間距離よりも長く、前記第3の鎖間距離がWAXRDによって測定された角度ピークに関するブラッグの法則から計算される、実施形態14に記載の配合物。
実施形態16
第4の鎖間距離によって画定される第4のパッキング領域を更に含み、前記第4の鎖間距離が前記第1、第2、及び第3の鎖間距離よりも短く、前記第4の鎖間距離がWAXRDによって測定された角度ピークに関するブラッグの法則から計算される、実施形態15に記載の配合物。
実施形態17
前記架橋アルコキシシリルポリノルボルネンホモポリマーが1~3の分子量分布(MWD)を含み、MWDがM
w/M
nとして定義され、M
wが重量平均分子量であり、M
nが数平均分子量である、実施形態13に記載の配合物。
実施形態18
実施形態13に記載の配合物を含む、天然ガス分離膜。