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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】大環状ラクトンの調製
(51)【国際特許分類】
   C07D 313/00 20060101AFI20220224BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALN20220224BHJP
   A61K 8/49 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
C07D313/00
A61Q13/00
A61K8/49
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018547474
(86)(22)【出願日】2017-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2017055413
(87)【国際公開番号】W WO2017153455
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-02-17
(31)【優先権主張番号】1604110.5
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】デイビー,ポール ニコラス
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-524265(JP,A)
【文献】特表2014-524915(JP,A)
【文献】国際公開第2014/139679(WO,A2)
【文献】Jay C. Conrad, et al.,Oligomers as Intermediates in Ring-Closing Metathesis,Jounal of the American Chemical Society,2007年,Vol.129, No.5,p.1024-1025
【文献】Stephen D. Kamau, et al.,Cyclo-depolymerization of olefin-containing polymers to give macrocyclic oligomers by metathesis and the entropically-driven ROMP of the olefin-containing macrocyclic esters,Polymer,2007年,Vol.48, No.23,p.6808-6822
【文献】Yung-Son Hon, et al.,Tishchenko reaction of aldehydes promoted by diisobutylaluminum hydride and its application to the macrycyclic lactone formation,Tetrahedron,2007年,Vol.63,p.11325-11340
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応混合物において含有されるオレフィン含有ランダムポリエステルの環化解重合によって大環状ラクトンを調製し、および、単離するためのプロセスであって
i)オレフィン含有ランダムポリエステルを、1つの末端オレフィン基および1つの内部オレフィン基を含有するジエンエステルの非環式ジエンメタセシス重合によって調製すること、
ii)反応混合物においてオレフィン含有ランダムポリエステルを解重合させて、分子内環化が可能な断片を形成すること;
iii)所望の大環状ラクトンを形成するための当該断片の分子内環化;および
iv)大環状ラクトンの反応混合物からの同時分離
の工程を含む、
前記プロセス。
【請求項2】
オレフィン含有ポリエステルが、式
【化1】

式中、
Aは二価ラジカル-CHR-であり、ここで、Rは水素またはC1-4アルキル基であり;
Bは二価ラジカル-CHR’-であり、ここで、R’は水素またはC1-4アルキル基であり;
nおよびmの合計は11、12、13または14から選択される整数であり;および
当該単位における二価ラジカルAおよびBは同じかまたは異なるものであり得る、
で表わされる少なくとも1つの単位を含有する、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
オレフィン含有ポリエステルが、以下の単位
【化2】

式中、
Aは二価ラジカル-CHR-であり、ここで、Rは水素またはC1-4アルキル基であり;
Bは二価ラジカル-CHR’-であり、ここで、R’は水素またはC1-4アルキル基であり;
nおよびmの合計は11、12、13または14から選択される整数であり;および
当該単位における二価ラジカルAおよびBは同じかまたは異なるものであり得る、
の各々の少なくとも1つを含有する、
請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
ポリエステルが少なくとも5~50の単位を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
環化解重合反応が、エステル交換反応またはメタセシスによってもたらされる、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
メタセシス反応が、一般式
【化3】

M=MoまたはW;
XはO、またはN-R1であり、ここで、R1は、任意に置換されていてもよい、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはヘテロアルキルであり;
R2およびR3は、同じかまたは異なるものであり得、および、任意に置換されていてもよい、水素、アルキル、アルケニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、アリール、ヘテロアリールまたはアルコキシであり;
R5は、任意に置換されていてもよい、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、シリルアルキル、シリルオキシであり;および
R4は残基R6-X’-であり、ここで、X’=O、および、R6は、任意に置換されていてもよい、アリールまたはヘテロアリールであり;あるいはX’=S、および、R6は、任意に置換されていてもよい、アリールまたはヘテロアリールであり;あるいはX’=O、および、R6は(R7,R8,R9)Siであり;ここで、R7、R8、R9は、任意に置換されていてもよい、アルキルまたはフェニルであり;あるいはX’=O、および、R6は(R10,R11,R12)Cであり、ここでR10、R11、R12は、独立して、任意に置換されていてもよい、フェニル、アルキルから選択され;
またはR4およびR5は、それぞれ、共に結びつき、および、酸素を介してMに結合する
から選択される触媒で触媒される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
大環状ラクトンの反応混合物からの同時分離が蒸留によってもたらされる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
大環状ラクトンが、E/Z-7-アンブレットリド;E/Z-9-アンブレットリド;E/Z-ニルバノリド;およびE/Z-ハバノリドからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
大環状ラクトンが、水素付加されて、E/Z-7-アンブレットリド;E/Z-9-アンブレットリド;E/Z-ニルバノリド;またはE/Z-ハバノリドに対応する水素付加された大環状ラクトンを形成する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
ジエンエステルが、以下の式
【化4】

A、B、およびnおよびmの合計は、請求項2に定義されるとおりであり;ならびに
R1、R2、R3およびR4は、HまたはC1-10アルキルを表す残基であり、ここで、R1、R2、R3およびR4残基の1つのみがC1-10アルキルであり、残る残基はすべてHである、
を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
ジエンエステルが、
【化5】

からなる群から選択される、請求項10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、オレフィン含有ポリエステルの環化解重合による大環状ラクトンの合成、ならびに当該大環状ラクトンの調製に使用されるモノマーおよびポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
大環状ラクトンは、香料成分の化学における重要な構造モチーフである。特に、大環状ラクトンは、精巧かつ技術的な香料製造業におけるすべての種類の消費者製品に供給し得る、所望のムスクの匂いに価値がある。
ムスクの匂いは、香料においておそらく最も普遍的に高く評価された嗅覚シグナルである。合成ムスクは、芳香族ニトロムスク、多環ムスクおよび大環状ムスクの3つの主要なクラスに分類され得る。しかしながら、ヒトおよび環境試料中のニトロおよび多環化学基の検出は、これらの化合物の使用に関する公開討論を開始させ、いくつかの研究は、これらのムスク化合物が環境中で分解せず、人体に蓄積し得ることを示唆した。このように、大環状ムスクは近年香水製造者にとって重要性を増している。
【0003】
一般的な大環状ムスクは、アンブレットリド(AMBRETTOLIDE)(商標)(9-アンブレットリドおよび7-アンブレットリドを含む)、ニルバノリド(NIRVANOLIDE)(商標)、ハバノリド(HABANOLIDE)(商標)、コスモン(COSMONE)(商標)、ムセノン(MUSCENONE)(商標)、ベルビオン(VELVIONE)(商標)、シベトン(CIVETONE)(商標)およびグロバノン(GLOBANONE)(商標)を含む。
7-アンブレットリドは、ムスクアンブレットの種子油中に天然に生じ(M. Kerschbaum, Chem Ber. 1927, 60B, 902)、その所望の匂いのために貴重な香料基剤である。9-アンブレットリドも同様に非常に高く評価された香料成分であり、現在、天然源から同様に得られるアロイリチン酸から工業的に合成されている。
【0004】
天然由来の出発材料の利用可能性および品質は、当然のことながら、気候条件、ならびに社会経済的要因に依存する。さらに、出発材料は天然源から抽出され得、時には控えめな収率で抽出され得るため、それらはそれらの使用を工業的規模でますます不経済なものとする可能性が高い価格で利用可能である。したがって、アンブレットリド(商標)などの大環状ムスクの商業的な工業的供給が合理的なコストで利用可能であり続ける場合、それらの製造、単離および精製のためのより費用対効果の高い工業的規模でのプロセスが必要である。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
第1の側面において、本発明は、
i)反応混合物においてオレフィン含有ランダムポリエステルを解重合して分子内環化が可能な断片を形成すること;
ii)所望の大環状ラクトンを形成するための当該断片の分子内環化;および
iii)大環状ラクトンの反応混合物からの同時分離
の工程を含む、反応混合物に含有されたオレフィン含有ランダムポリエステルの環化解重合による大環状ラクトンを調製し、単離するためのプロセスに関する。
【0006】
別の側面において、本発明は、大環状ラクトンの調製に有用なオレフィン含有ランダムポリエステルに関する。
さらに別の側面において、本発明は、当該オレフィン含有ランダムポリエステルの前駆体モノマーに関する。
さらに別の側面において、本発明は、大環状ラクトンの形成におけるオレフィン含有ランダムポリエステルの使用に関する。
【0007】
発明の詳細な説明
ポリエステルに関して使用される用語「ランダム」は、ポリエステル内のモノマー単位の配置、より具体的にはモノマー単位がポリマー鎖に沿って予め決定されていないパターンで配置される配置を指す。
本発明の特定の態様において、オレフィン含有ランダムポリエステルは、式
【化1】
式中
Aは二価ラジカル-CHR-であり、ここで、Rは水素またはC1-4アルキル基であり;
Bは二価ラジカル-CHR’-であり、ここで、R’は水素またはC1-4アルキル基であり;
nおよびmの合計は、11、12、13または14から選択される整数であり;および
当該単位において含有される二価ラジカルAおよびBは同じかまたは異なるものであり得る、
で表わされる少なくとも1つの単位を含有する。
【0008】
発明のより特定の態様において、オレフィン含有ランダムポリエステルは以下の単位
【化2】
ここで、A、B、mおよびnは上述のとおり定義される、
の各々の少なくとも1つを含有する。
本発明のオレフィン含有ランダムポリエステルは、非環式または環式であり得る。ポリマー鎖は任意の数のモノマー単位を含有し得る。特に、オレフィン含有ランダムポリエステルは、2~100、より特には10~50、さらにより特には10~25のモノマー単位の分布を有するポリマーの混合物からなり得る。
【0009】
オレフィン含有ランダムポリエステルは、ジエンメタセシスを使用してジエンエステルモノマーを重合させることにより調製され得る。好適なモノマーは、エステルのアルコール側に位置する第1反応性オレフィン基(アルコール性オレフィン)およびエステルのカルボン酸側にある第2反応性オレフィン基(カルボン酸オレフィン)を含有するエステルである。メタセシス反応が、2つのアルコール性オレフィンの間、2つのカルボン酸オレフィンの間、またはアルコール性オレフィンとカルボン酸オレフィンとの間で起こり得ることは当業者に明らかであろう。このように、モノマー単位は、ランダムな様式でポリエステル鎖に沿って配置されるであろう。したがって、ポリエステルはランダムポリエステルと呼ばれる。
【0010】
発明の好ましい態様において、オレフィン含有ランダムポリエステルの調製に使用されるジエンエステルモノマーは、少なくとも1つの末端オレフィン基を含有する。
発明の好ましい態様において、ジエンエステルモノマーは、1つの末端オレフィン基および1つの内部オレフィン基を含有する。
発明の好ましい態様において、ジエンエステルは、2つの末端オレフィン基を含有する。
【0011】
本発明の実施に有用な特定のジエンエステルモノマーは、以下の式
【化3】
式中
AおよびB、およびmおよびnは上述のとおり定義され、nおよびmの合計は11、12、13または14から選択される整数であり;
R1、R2、R3およびR4は、独立してHまたはC1-10アルキルを表す残基であり、ただし、R1、R2、R3およびR4残基の1つのみがC1-10アルキルであり、残る残基はすべてHであり得る、
によって表され得る。
【0012】
特定の態様において、R1およびR2の少なくとも1つまたはR3およびR4の少なくとも1つは、C1-10アルキルを表す。
特定のジエンエステルモノマーは、以下の下式(a)~(g):
【化4】
【化5】
を有する化合物を含むが、これらに限定されない。
【0013】
式a)、c)、d)、e)、f)およびg)で表わされるジエンエステルモノマーは、新規な化合物であると考えられる。したがって、これらの化合物の各々、オレフィン含有ランダムポリエステルの調製におけるそれらの使用、ならびに当該モノマーから形成されたランダムポリエステルは、本発明の独立した側面を形成する。
ジエンエステルは、市販の出発材料を使用して、当該技術分野において周知の技術によって調製され得る。例として、デセン酸オクテニル(上記の化合物(a))は、酸(例えば硫酸などの強酸)の存在下、オクト-7エン-1-オールのデカ-9-エン酸アルキルとのエステル交換反応によって調製され得る。反応条件は当業者に周知であり、ここでさらに詳細に論ずる必要はない。
【0014】
オレフィン含有ランダムポリエステルを形成するためのジエンエステル重合は、好適なメタセシス触媒を使用してジエンメタセシス反応によって実施され得る。
反応モノマーの2つのオレフィン官能基を結合させるのに必要なメタセシス反応条件は、当該技術分野において一般的に周知である。反応は、室温、高温または低温で進行し得る。典型的には、反応は、0~120℃、より特に0~60℃の範囲、さらにより特に約50℃の温度で実施され得る。好ましくは、反応は、重合反応が迅速かつ実質的に同時の分解反応を伴わずに進行する温度で実施され、反応混合物の粘性は、混合、ポンピングおよび撹拌などの典型的な工業的操作が容易に実施されるものでなければならない。これらの検討を考慮に入れて適切な反応温度を選択することは当業者の理解の範囲内である。
【0015】
メタセシス重合反応は、無溶媒で(neat)または溶媒中で行われ得る。溶媒が用いられる場合、それは触媒と非反応性であるべきである。好適な溶媒は、塩素付加された溶媒またはトルエンなどの芳香族溶媒を含み得、工業的プロセスでの使用に許容し得る。好適な溶媒は、ドコサンおよびテトラエチレングリコールジメチルエーテルを含むが、これらに限定されない。代替的に、所望の大環状の産物の沸点付近またはそれを超える沸点を有する他の溶媒、例えばパラフィンワックス、フタラート(例えばジアルキルフタラート)などの長鎖エステル、エーテルなどは、反応の間の混合物の流動性を維持するために追加して加えられ得る。
【0016】
メタセシス触媒の反応性のために、反応は、好ましくは、水分および酸素を含まない、または少なくとも実質的にそのような不活性な雰囲気中で実施されるべきである。
さらに、メタセシス触媒と接触するであろう任意の材料は精製されるべきである。したがって、本発明によるプロセスにおいて、ジエンエステル、ならびにメタセシス反応に用いられる任意の溶媒または他の試薬は、触媒の導入前に精製されることが望ましい。精製は、メタセシス触媒の反応性に負の影響を与え得る汚染物質の除去を必要とする。かかる不純物は、水、アルコール、アルデヒド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、プロトン性材料、極性材料、ルイス塩基触媒毒、またはそれらの任意の混合物を含むであろう。メタセシス触媒を精製する方法は、例えば、US 2014/0275595およびWO 2015/136093に記載され、これらは、参照によりここに組み入れられる。
【0017】
メタセシス反応をもたらすための触媒は、当該技術分野において周知である。一般的に、オレフィンメタセシス触媒は、バナジウム、レニウム、チタン、タンタル、ルテニウム、モリブデンまたはタングステンなどの遷移金属原子を有する有機金属触媒である。すべての有効な触媒系は、金属原子に結合した配位子に関して著しく変化するものの、塩基性金属アルキリデンまたはアルキリジン配位子構造を共有する。本発明に有用なメタセシス触媒の総説は、Michrowska et al., Pure Appl. Chem., vol 80, No. 1, pp 31-43 2008;Schrock et al., Chem. Rev. 2009, 109, 3211-3226;およびGrubbs et al., J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 7490-7496に記載されている。好適な触媒は、特許文献、例えばUS 2013/0281706およびUS 6,306,988にも記載されている。
【0018】
触媒に用いられ得る種々の置換基または配位子は、今日、利用可能な多種多様な触媒が存在することを意味する。配位子または置換基は、(汚染物質または温度に対する)触媒安定性または選択性(化学、レジオおよびエナンチオ選択性)ならびにターンオーバー数(TON)、およびターンオーバー頻度(TOF)に影響を及ぼすように選択され得る。当該技術分野で周知のように、TONは触媒の活性度、すなわち触媒1分子当たり変換された基質分子の平均数を表すが、TOFは触媒効率(単位h-1)の表示である。
本発明のメタセシス反応において特に有用な触媒は、金属原子が、ルテニウム、モリブデンまたはタングステン原子のいずれかである、金属アルキリデン触媒である。最も好ましいのは、金属原子がモリブデンまたはタングステンである当該触媒である。
【0019】
好ましいモリブデンまたはタングステン触媒は、一般式
【化6】
式中
M=MoまたはW;
XはO、またはN-R1であり;ここで、R1は、任意に置換されていてもよい、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはヘテロアルキルであり;
R2およびR3は同じかまたは異なるものであり得、水素、アルキル、アルケニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、アリール、ヘテロアリールまたはアルコキシであり、それらは任意に置換されていてもよく;
R5は、任意に置換されていてもよい、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、シリルアルキル、シリルオキシであり;
R4は残基R6-X’-であり、ここで、X’=O、R6は、任意に置換されていてもよい、アリールまたはヘテロアリールであり;またはX’=S、R6は、任意に置換されていてもよい、アリールまたはヘテロアリールであり;またはX’=O、R6は、(R7,R8,R9)Siであり;ここで、R7、R8、R9は、任意に置換されていてもよい、アルキルまたはフェニルであり;またはX’=O、R6は(R10、R11、R12)Cであり、ここで、R10、R11、R12は、独立して、任意に置換されていてもよい、フェニル、アルキルから選択され;
またはR4およびR5は、それぞれ、共に結びつき、酸素を介してMに結合される、
によって表される。
【0020】
特に好ましい触媒は、[2,6-ビス(1-メチルエチル)ベンゼンアミナト(2-)](6’-ブロモ-4’,5’-ジフェニル[1,1’:2’,1’’-テルフェニル]-3’-オラト-κO)(2,5-ジメチル-1H-ピロール-1-イル)(2-メチル-2-フェニルプロピリデン)-モリブデン;および(6’-ブロモ-4’,5’-ジフェニル[1,1’:2’,1’’-テルフェニル]-3’-オラト)[2,6-ジクロロベンゼンアミナト(2-)-κN](2,5-ジメチル-1H-ピロール-1-イル)(2-メチル-2-フェニルプロピリデン)-タングステンである。
一般に、メタセシスを使用する環化解重合は、均一または不均一触媒を使用して行われ得る。好適な均一触媒は、例えば、EP 2 703 081、WO 2014/139679、およびUS 2012/0302710に開示されている。好適な不均一触媒は、例えば、WO 2015/003815、WO 2015/003814、およびWO 2015/049047に開示されている。この点に関するこれらの刊行物の開示は、参照によりここに組み込まれる。
【0021】
特に好ましい触媒は、
-以下の式
【化7】
で表わされるモリブデン触媒A、
-以下の式
【化8】
で表わされるモリブデン触媒B(CAS: 1445990-85-1)、
-以下の式
【化9】
で表わされるルテニウム触媒C(CAS: 934538-04-2)を含むが、これらに限定されない。
これらのうち、とりわけ触媒Aは、極めて高い熱安定性を有するため好ましい。
【0022】
ここで上述した重合反応に用いられる触媒のレベルは、mol基準で10~1000ppm、より特に50~200ppm、さらにより特に100~200ppmであり得る。
触媒は、固体支持体上に提供され得る。好適な固体触媒支持体は、当該技術分野において周知であり、シリカまたはアルミナ、またはフリーなヒドロキシル基の数を低減させるために任意にエンドキャップされていてもよいポリマーを含む。エンドキャップは、熱処理によって実施され得、任意にシリル化試薬などのエンドキャップ試薬を使用してもよい。支持体上への触媒の担持は、実施される特定の合成変換に依存して変化し得るが、触媒は、触媒および支持体の全重量に基づいて1~10重量%の量で固体支持体上に存在し得る。
【0023】
上述の方法に従って形成されたオレフィン含有ランダムポリエステルは、一般式
【化10】
式中、A、B、mおよびnは上記に定義されるとおりである、
を有する大環状ラクトンに、環化解重合のプロセスによって変換される。
ここで使用される用語「環化解重合」は、ポリエステルがそのエステルまたはオレフィン官能基の結合切断によって解重合され、続いて結合切断によって形成された断片の分子内環化によって所望の大環状ラクトンを形成するプロセスを指す。
【0024】
環化解重合のプロセスにおいて、オレフィン含有ランダムポリエステルは、用いられる特定の解重合化学に依存して、オレフィン官能基の切断またはエステル官能性の切断のいずれかによって開裂される。結合切断はランダムであり、異なる鎖長の環式および/または線状オリゴマーまたはポリマーの複雑な平衡混合物が形成されるであろう。連続したエステル官能性または連続したオレフィン官能基が反応すると、環化解重合中に得られるであろう最小の(かつ最も低い沸点の)断片が生成され、この開裂された断片は、分子内環化を受けて所望の大環状ラクトンを形成し得、次いで、反応混合物から、蒸留または濾過(ゼオライト膜濾過などの膜濾過など)などの好適な分離技術によって除去される。
【0025】
大環状ラクトンを蒸留によって反応混合物から除去する場合、圧力および温度の条件は、大環状ラクトンが形成されると、沸騰し、反応混合物から分離されるようなものであるべきである。このようにして大環状ラクトンを除去すると、反応混合物が再平衡化され、より多くの大環状ラクトンの形成が促進される。当業者は、膜濾過などの他の手段による大環状ラクトンの除去が、同様に、反応混合物を再平衡化し、大環状ラクトン形成を促進することを理解するであろう。
本発明の特定の態様において、環化解重合は、エステル交換反応のプロセスによってエステル官能性を開裂することによって実施される。
【0026】
エステル交換反応の化学は、当該技術分野において周知である。典型的な反応条件はCollaud et al.によるUS 2,234,551に記載されている。エステル交換反応による環化解重合は、エステル交換反応触媒の存在下でオレフィン含有ランダムポリエステルを加熱することによって実施され得る。好適な触媒は、ルイス酸、およびブレンステッド酸および塩基を含むが、これらに限定されない。特に好ましいのはチタンテトラアルコキシド触媒である。
大環状ラクトンを除去する手段が蒸留である場合、大環状ラクトンが形成されれば大環状ラクトンを留去するのに十分な温度および圧力で反応は実施されるべきである。このようにして形成された大環状ラクトンが反応容器から除去されると、任意の残るホモ二量体残基は必要に応じて再利用され得る。
【0027】
反応を実施するのに好適な温度は、反応容器における圧力に依存するであろう。反応は、工業的規模で経済的に達成され得る減圧下、例えば0.1~100mbarの範囲で実施され得る。反応が実施される温度は、約50~250℃、より得に100~200℃の範囲であり得る。
本発明の別の好ましい態様において、環化解重合は、上記のように、オレフィンメタセシスによってオレフィン官能基を開裂することによって実施される。
開裂されるオレフィン官能基に依存して、すべての様式のオリゴマーまたはポリマー断片が形成され得る。しかしながら、連続したオレフィン官能基が反応するとき、形成された断片は環化して所望の大環状ラクトンを形成し得る。蒸留または上記の他の手段による反応混合物からのこの大環状ラクトンの除去は、より多くの大環状ムスクを生成するように反応を推進するであろう。これは、原則的には、所望の大環状ラクトンへのポリエステルの実質的に100%の変換をもたらし得る。
【0028】
当業者は、用いる特定の触媒の活性を含む多くの検討;環化解重合を促進し、二重結合異性化などの望ましくない反応を低減するという要望;および、反応混合物が低粘性の液体であるという要望に基づいて、反応条件(例えば、温度および圧力)を選択し得る。さらに、大環状ラクトンを蒸留により分離することが望ましいとき、温度および圧力は、好ましくは共留出物を持ち越さずにラクトンが蒸留し得るように選択されるべきである。
典型的には、反応は、大気圧または減圧下で、例えば1bar~1mbarの範囲、より特に10~100mbar、さらにより特に10~30mbarで行われ得る。典型的な温度は、周囲温度と250℃との間、より特に100℃と250℃との間、さらにより特に150~200℃であり得る。
【0029】
上記で言及された任意のメタセシス触媒が環化解重合反応に使用され得る。しかしながら、タングステンおよびモリブデンメタセシス触媒は、二重結合異性化反応などの起こり得る任意の副反応を低減することが望ましい場合に特に有用であり得る。
混合物を再平衡化させ、さらなる大環状ラクトン形成を促進するためには、大環状ラクトンの反応混合物からの分離が必須であることを考慮すると、ラクトンを留去するために混合物を加熱する必要があり得る。熱が反応混合物に加えられる場合、蒸留温度で熱安定なメタセシス触媒を用いることが望ましい。当然のことながら、大環状ラクトンが蒸留ではなく膜濾過によって分離される場合、この予防措置は必要ではないものであり得る。
【0030】
任意の所与の触媒の熱安定性に関する任意の検討にもかかわらず、環化解重合反応は、大環状ラクトンの蒸留温度に加熱される反応混合物から触媒が物理的に分離される条件下で実施され得る。
例えば、触媒は、大環状ラクトンの蒸留温度より低い第1温度で反応器の第1部分に含有され得、その温度において触媒は安定しているか、または実質的に安定している。反応器の第1部分は、大環状ラクトンが蒸留する温度以上の第2温度で反応器の第2部分と流体連通している。反応器は、大環状ラクトンを蒸留する手段を備えており、反応混合物が反応器の第1部分から反応器の第2部分に流れるとき、大環状ラクトンは蒸留によって反応混合物から分離される。大環状ラクトンを蒸留する手段は、従来の蒸留容器およびカラムからなるものであり得、または、分子蒸留装置(ワイプドフィルム(wiped-film)蒸留装置など)からなるものであり得る。反応混合物は、反応器の第1部分と第2部分との間を連続的に循環し得、反応器の第2部分と第1部分との間を通過する際に加熱かつ冷却される。
【0031】
上記のプロセスは、すべての様式の大環状ラクトンの調製に有用である。好ましい大環状ラクトンは、香料に有用なものである。特に好ましい大環状ラクトンは環内に14~17個の炭素原子を含有するものである。
好ましい大環状ラクトンの例は、アンブレットリド(商標)(9位または7位に二重結合を有する両性質)、ニルバノリド(商標)、ハバノリド(商標)またはグロバリド(GLOBALIDE)(商標)を含むが、これらに限定されない。これらの大環状ムスク化合物は、環に不飽和を含有し、したがってE/Z形態で存在し得る。本発明は、これらの大環状ムスクを純粋なE形態または純粋なZ形態で作製するプロセス、または任意の比率におけるE/Z混合物を作製するプロセスに関する。
これらのムスクに加えて、それらの飽和等価体は、それ自体既知の様式で炭素-炭素二重結合の水素付加によっても生成され得る。これらの水素付加された誘導体は、ヘキサデカノリドおよびシクロペンタデカノリドを含むが、これらに限定されない。
【0032】
ムスクはその商標名で呼ばれるが、これは参照を容易にするためのものにすぎず、発明の教示は一般的なムスク分子の調製に適用されることを出願人が意図していることを、当業者は理解するであろう。上記の商標名で言及されたムスクの各々について、当業者は、ムスクを命名するためのより慣習的な化学命名法に精通しているか、または、Leffingwellまたはthegoodscentcompany.comウェブサイトなどの標準的な香料の参考資料において慣用名と化学命名法との間に対応を見つけ得ると理解するであろう。
本発明は、さらに、以下の非限定的な例によって説明される。
【0033】
例1:デセン酸オクテニルの調製
【化11】
温度計、蒸留器ヘッド(still head)、凝縮器、および受器を備え、冷却トラップを介してハウス真空(house vacuum)に接続した2Lのスルホン化フラスコに、9-デセン酸メチル(500g、2.70mol)、7-オクテノール(350g、2.70mol、1.01当量)を加え、撹拌しながら、濃硫酸(10g、2%)を加えた。
【0034】
真空を適用し、28mbarに維持した。次いで、混合物を100℃に加熱した。蒸留は約75℃で開始した。
反応記録:
【表1】
【0035】
反応混合物を室温に冷却した後、飽和重炭酸ナトリウム溶液(50ml)を加え、15分間撹拌した。混合物を分液漏斗に注ぎ、層を落ち着かせた。水層を分離し、有機層を水(2×200ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。
737.7gの粗生成物が得られた。
トコフェロール(0.2g)を混合物に加え、次いでそれを0.5mSulzer充填カラムを通す蒸留によって精製した。
デセン酸オクテニルの調製は、70℃~220℃で15℃/分でプログラムされた25m HP5(0.33m)カラムを使用するHP6890上で行ったGLC分析によって確認した。
【0036】
例2:デセン酸ポリオクテニルの調製
【化12】
1Lガラスジャケット付きオートクレーブ(Buchi)に、アンカースターラー、バッフル、温度プローブ、アルゴンガス注入口、真空ラインおよび液体添加ラインを取り付けた。この後者は、セプタム注入口を備えた単純なボールバルブであった。液体を加える際、アルゴン加圧下でステンレススチールカニュラーを通して反応器にそれらを加えた。カニュラーをバルブの上で抜去し、カニュラーを抜く前にバルブを閉じた。使用前に、反応器のガラス体を130℃で3時間加熱し、真空下で終夜冷却した。
【0037】
原液および供給物は、乾燥窒素(5つの0グレード(five 0s grade))下のグローブボックス中で調製した。それらを密封シュレンク管に入れ、グローブボックスから除去した。
反応および材料移動はアルゴン下で行ったが、これは5つの0グレードの乾燥窒素で容易に置き換え得るであろうと予想される。
反応器の定格は12barであったが、ドラフトの後部への通気ラインを備えた6barの破裂板が取り付けられていた。
【0038】
原液:
小さな実験室規模での取り扱いを容易にするために、トリエチルアルミニウム(トルエン中25%、受け取ったまま)および[2,6-ビス(1-メチルエチル)ベンゼンアミナト(2-)](6’-ブロモ-4’,5’-ジフェニル[1,1’:2’,1’’-テルフェニル]-3’-オラト-κO)(2,5-ジメチル-1H-ピロール-1-イル)(2-メチル-2-フェニルプロピリデン)-モリブデンメタセシス触媒(モリブデン触媒B;NMR分析の容易さのためにd6-ベンゼン中0.021M)の原液を使用した。
【0039】
供給物の前処理:
デカ-9-エン酸オクタ-7-エニル(H2O 53ppm、過酸化物価PV1.6meq/kg)をアルゴン充填反応器にカニュラーを通じて充填した。漏斗を介した添加およびパージ(purging)はあまり有効ではなかった(約50%の変換が観察されたにすぎなかった)。
デカ-9-エン酸オクタ-7-エニルに、原液としてトルエン中のトリエチルアルミニウム(1mol%)を、室温(約25℃)で、5つの0グレードの窒素のわずかな加圧下(1.3bar)で加えた。トリエチルアルミニウムは>10%濃度で自然発火性であるので、除去する前にカニュラーを乾燥トルエン(2ml)で洗い流した。混合物を室温で3時間撹拌した。この段階で混合物を50℃以上に加熱することは変換に有害であるようである。反応器を真空(7mbar)/アルゴン(1.3bar)パージサイクルに3回通して任意の不純物の蓄積を除去した。
【0040】
重合:
前処理したデカ-9-エン酸オクタ-7-エニルに、200ppmのモリブデン触媒Bの溶液を加えた。約15分後、粘性が増加し、反応器を50℃に加熱して反応を液体として維持した。これには約15分かかった。反応は発熱性ではなかった。モリブデン触媒Bの添加を最初から50℃で実施した場合、反応はあまり有効ではなかったことに留意されたい。
【0041】
上記の供給物の前処理後:
【表2】
【0042】
反応混合物を終夜冷却し、固化させた。それを融解させ(50℃のジャケット)、NMRおよびGPC(以下参照)のためにサンプリングして、238gを得た。追加の材料を反応器およびオーバーヘッドからトルエンで洗浄し、これを真空下で除去してさらに37gを得た。合計:275g。純粋な材料の100%の変換での理論上の最大値は270gである。粗ポリマーは残留触媒およびアルミナートを含有する。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析を使用してポリマーの形成を確認した。分析は自己構築型GPCで行った。2つのカラムを、ガードカラム(Phenomen 5mm 100オングストローム、続いてPhenomen 5mm, 1000オングストローム、両方ともPhenomenexから得た)と直列に使用し、THFで溶離し、屈折率検出器を使用した。
【0043】
例3:エステル交換反応を使用する環化解重合によるアンブレットリドの調製
【化13】
クライゼンヘッド、磁気スターラーおよび温度計を備えた丸底フラスコを蠕動ポンプに取り付け、反応中にポリエチレングリコール(PEG200)を加えた。
【0044】
フラスコにポリマー(100g、これは50℃で液体として取り扱い得る)を充填した。PEG200(130g)をチタンテトラ-イソ-プロポキシド(5g、17mmol)と共に加えた。最初、混合物は非混和性であった。真空を10mbarに設定し、撹拌した混合物を加熱した。混合物が約40~50℃に達したときに脱気を観察した。真空を一時的に30~50mbarに低下させ、次いで徐々に温めた。混合物が110~120℃に達したとき、脱気が起こり、混合物は粘性になり、ポリマーはPEGに溶解し始めた。160℃で、混合物は粘性が低くなり、再び容易に撹拌し得るものとなった。加熱を190~200℃の反応温度まで続けた。
【0045】
材料が約170℃のヘッド温度、10mbarで留出し始めたことから、PEGを標準液位を維持するためにフラスコ中にポンプで注入した(合計添加量:885g)。
約40時間の全蒸留時間を5実施日にわたって使用した。E-およびZ-アンブレットリドの分画の分析を相対ピーク面積GLCによって実施した。分画を合わせ、次いで後処理した:
合わせた分画(707g)に水(700ml)を加え、これをヘキサン(700ml)で抽出した。3つの相を観察した。ヘキサン(2×200ml)で抽出することによって中間のものを水相で処理した。合わせた有機物を水(2×200ml)で2回洗浄した。有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去して粗アンブレットリド(43.0g、171mmol)を得た。GLCはrpaにより87%の純度を示した。これは75%の化学収率を表す。
【0046】
例4:メタセシスおよび蒸留を使用する環化解重合によるアンブレットリドの調製
本反応は、取り扱いを容易にするために、乾燥した低酸素雰囲気(窒素またはアルゴン)を含有するグローブボックス中で実施した。
デセン酸ポリオクテニル(上記のように調製;0.25g)をクーゲルロールバルブに入れた。モリブデン触媒A(上記参照)をトルエン(250mol.ppm)中に溶液として加え、当該系を真空(0.2mbar)下に置いた。トルエンの除去後、クーゲルロールオーブンを130~150℃に加熱し、アンブレットリドを留出させた。アンブレットリドの蒸留速度が遅くなったとき、さらなる分量の触媒を加え、蒸留を続けた。この技術の反復は、ポリマーから60%超のアンブレットリドの収率を達成することができた。
【0047】
例5:メタセシスおよび蒸留を使用する環化解重合によるアンブレットリドの調製
本反応は、取り扱いを容易にするために、乾燥した低酸素雰囲気(窒素またはアルゴン)を含有するグローブボックス中で実施した。
デセン酸ポリオクテニル(上記のように調製;0.25g)をドコサン(2.5ml)に溶解し、クーゲルロールバルブに入れた。モリブデン触媒A(上記参照)を加え(400mol.ppm)、当該系を真空(0.5mbar)下に置いた。クーゲルロールオーブンを130~150℃に加熱し、アンブレットリドおよびドコサンの混合物を留出させた。新たな分量の触媒および溶媒を定期的に加え、蒸留を続けてより多くのアンブレットリドを得た。
【0048】
例6:メタセシスを使用する環化解重合によるアンブレットリドの調製
本反応は、取り扱いを容易にするために、乾燥した低酸素雰囲気(窒素またはアルゴン)を含有するグローブボックス中で実施した。
デセン酸ポリオクテニル(上記のように調製;0.25g)をテトラエチレングリコールジメチルエーテルに溶解した。モリブデン触媒A(上記参照;400ppm)を加え、混合物を160℃で6時間加熱した。内部標準glc分析は、13.8%のアンブレットリドが形成されたことを示した。
【0049】
例7:メタセシスおよび濾過を使用する環化解重合によるアンブレットリドの調製
デセン酸ポリオクテニル(上記のように調製;50g)を酢酸エチル(700ml)に加え、60℃で溶解した。1nm C8修飾したTiO2膜による流束測定を5barの膜交換圧力で実施した。ルテニウム触媒C(上記参照;0.6mol%)を加えた。当該ユニットを圧力(5bar)下に置いた。定容透析濾過を酢酸エチルを用いて約2時間行った。透過物および残留物を分析し、アンブレットリド(20%の総収率)を含有することが示された。この反応を継続してより多くのアンブレットリドを生成し、分離し得る。