(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】過リン酸化タウに特異的な抗体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20220224BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220224BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220224BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220224BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220224BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220224BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220224BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220224BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220224BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
A61K39/395 N
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/00
A61P25/16
A61P9/10
A61P35/00
A61P25/14
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2018566490
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2017067067
(87)【国際公開番号】W WO2018011073
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-29
(32)【優先日】2016-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ペデルセン,ヤン,トーレイフ
(72)【発明者】
【氏名】ケアゴー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ペデルセン,ラーズ,エステゴー
(72)【発明者】
【氏名】アスニ,アヨデジ アブドゥル-ラシード
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンクヴィスト,ニーナ,ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】デクセル,ユストゥス,クラウス,アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】ユール,カールステン
(72)【発明者】
【氏名】タグモセ,レナ
(72)【発明者】
【氏名】マリゴ,マウロ
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,セレン
(72)【発明者】
【氏名】ダビッド,ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルブラハ,クリスティアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルボ,ロネ
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502141(JP,A)
【文献】特表2014-531216(JP,A)
【文献】特表2004-516823(JP,A)
【文献】特表2018-531580(JP,A)
【文献】JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2014年12月24日,VOL:290, NR:7,PAGE(S):4059 - 4074
【文献】INTERNATIONAL JOURNAL OF PEPTIDE RESEARCH AND THERAPEUTICS,2005年12月,VOL:11, NR:4,PAGE(S):279 - 289
【文献】MOUSE ANTI-PHOSPHO-TAU 396,[ONLINE],2008年10月,https://tools.thermofisher.com/content/sfs/manuals/35-5300_Mouse anti-Phospho-Tau 396 Rev 1008.pdf
【文献】PRODUCT DATASHEET ANTI-TAU (PHOSPHO S396) ANTIBODY [EPR2731] AB109390,[ONLINE],2014年,PAGE(S):1 - 7,http://www.abcam.com/Tau-phospho-S396-antibody-EPR2731-ab109390.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
、
または
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;
および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む
、モノクローナル抗体
。
【請求項2】
(a)配列番号16のアミノ酸配列を有する軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
(a)配列番号16のアミノ酸配列を有する軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を有する重鎖
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体
と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項5】
アルツハイマー病、嗜銀顆粒
病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因する
アパシーまたはADの患者における
アパシー、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ピック病、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位型老年性認知症、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、脳卒中、脳卒中の回復、パーキンソン病に関連する神経変性、染色体に関連するパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病(グアムパーキンソン認知症複合)、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病およびリポフスチン沈着症からなる群から選択されるタウオパチーを治療す
るための、請求項1~
3のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体
を含む医薬組成物、または請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
アルツハイマー病の治療
のための、請求項
4または5に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理学的過リン酸化(PHF)タウにおけるリン酸化セリン396残基(pS396)に特異的に結合するモノクローナル抗体の新規な種類、ならびにアルツハイマー病およびタウオパチーの治療にこれらの分子およびそれらのタウ結合フラグメントを使用する方法に関する。
【0002】
配列表の参照
本出願は、米国特許法施行規則(37 C.F.R.)第1.821条に従う1つまたは複数の配列表(以下参照)を含み、これは、コンピュータ可読媒体(ファイル名:1049-WO-PCT FINAL ST25 1.txt、2017年6月13日に作成され、65kBのサイズを有する)で開示され、このファイルは、全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)および認知症などの加齢性神経変性疾患は、現在、最大の社会的課題の1つである。世界保健機関(World Health Organization)は、高齢者の介護のコストが、今後増加し続け、診断される認知症事例の数が2050年までに3倍になるであろうと推定している(World Health Organization and Alzheimer’s Disease International-Status Report(2012)DEMENTIA:A public health priority,WHO)。ADの最初の治療は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤およびNMDA調節剤などの神経伝達物質調節剤であった。これらの治療は、世紀の変わり目に利用可能になり、依然として、認知症およびADに関連する記憶障害の症状緩和のための基礎を成すものである。しかしながら、これらの薬剤は、ADの根本原因である、アミロイド-β(Aβ)ペプチドおよびタウタンパク質凝集体の蓄積ならびにそれに関連する、ニューロンシナプス、最終的にはニューロンの喪失を標的にしていない。
【0004】
高齢者の長期的なコミュニティ規模の研究(Weiner,M.W.et al.(2014)ADNI online:http://www.adni-info.org/;Breteler,M.M.et al.(1992)Neuroepidemiology 11 Suppl 1,23-28;Launer,L.J.(1992)Neuroepidemiology 11 Suppl 1,2-13)は、大規模なゲノムワイド関連解析(Lambert,J.C.et al.(2013)Nat.Genet.45,1452-1458)とともに、ADが認知症の多様な混合であり、進行したAD患者の最大で10パーセントに、アミロイド病変がないことを示した(Crary,J.F.et al.(2014)Acta Neuropathol.128,755-766)。さらに、BraakおよびBraakによる重要な病理学的研究(Braak,H.and Braak,E.(1996)Acta Neurol.Scand.Suppl 165,3-12)は、解剖前の神経原線維変化病変の程度と認識状態との間の明らかな相関関係を実証した。これらの観察は、幾人かの研究者(Nelson,P.T.et al.(2012)J.Neuropathol.Exp.Neurol.71,362-381)および最近の長期的なバイオマーカー研究によって裏付けられており、このバイオマーカー研究は、タウおよび過リン酸化タウの脳脊髄液(CSF)レベルが、疾患の初期および後期を通して増加することを示す(Jack,C.R.,Jr.et al.(2013)Lancet Neurol.12,207-216)。
【0005】
上に示されるように、微小管関連タンパク質タウ、およびその過リン酸化形態は、ADの主な特徴の1つである細胞内神経原線維変化の主な構成要素である。さらに、タウの特定の遺伝的変異体が、家族性の前頭側頭型認知症(FTD)に関連している。ADにおけるタウ病変の出現は、内嗅皮質から出発し、その後、海馬および皮質領域が続く明確な空間的パターンで起こる(Braak,H.and Braak,E.(1996)Acta Neurol.Scand.Suppl 165,3-12)。また、タウ病変の特定の段階が、認知能力と深く関係している(Nelson,P.T.et al.(2012)J.Neuropathol.Exp.Neurol.71,362-381;Braak,E.et al.(1999)Eur.Arch.Psychiatry Clin.Neurosci.249 Suppl 3,14-22)。総合すると、このエビデンスは、ADについてのタウに基づく仮説の基礎となる。それは、タウの細胞内蓄積が、微小管変性および脊柱崩壊をもたらすことを含む。結果として、ニューロン間の伝達の機能不全および細胞死が続く。最近、タウ自体が、1つの細胞から次の細胞へと神経変性を伝達し得る内因性病原性(endo-pathogenic)種となり得ることも示された(Clavaguera,F.et al.(2009)Nat.Cell Biol.11,909-913)。
【0006】
I.内因性病原体としてのタウ
Clavagueraおよび同僚は、タウ自体が内因性病原体(endo-pathogen)として働き得ることを実証した(Clavaguera,F.et al.(2009)Nat.Cell Biol.11,909-913)。低スピン(low spin)脳抽出物を、P301Sタウトランスジェニックマウスから単離し(Allen,B.et al.(2002)J.Neurosci.22,9340-9351)、希釈し、幼若ALZ17マウスの海馬および皮質領域に注入した。ALZ17マウスは、遅い病変(late pathology)のみを発現するタウトランスジェニックマウス株である(Probst,A.et al.(2000)Acta Neuropathol.99,469-481)。注入されたALZ17マウスは、固体線維状病変を直ぐに発現し、P301Sマウスに由来するタウ免疫枯渇された脳抽出物または野生型マウスに由来する抽出物の投与は、タウ病変を誘発しなかった。可溶性(S1)およびサルコシル不溶性タウ(P3)中の脳抽出物の分別(Sahara,N.et al.(2013)J.Alzheimer’s.Dis.33,249-263)およびALZ17マウスへのこれらの注入は、P3画分が、病変の誘発に最も有効であることを実証した。それは、細胞内の過リン酸化線維状タウの大部分を含有する。病変の大部分は、P301S抽出物を野生型マウスの脳内に注入した場合にも誘発され得るが、NFTは形成されなかった。その後の研究において、Clavagueraらは、他のタウオパチー(嗜銀顆粒病(AGD)、進行性核上性まひ(PSP)、および大脳皮質基底核変性症(CBD))の死後脳組織から抽出されたヒトタウも、ALZ17モデルにおいてタウ病変を誘発し得ることを示した(Clavaguera,F.et al.(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.110,9535-9540)。これらのデータの提示以来、いくつかの他のタウシーディングおよび拡散モデルが報告されている(Ahmed,Z.et al.(2014)Acta Neuropathol.127,667-683;Walker,L.C.et al.(2013)JAMA Neurol.70,304-310)。これらの研究からの主な結論は、細胞内封入体中の病原性タウが細胞から細胞周辺腔中へと分泌される機構を示す。次に、病理学的タウ材料は、順行および逆行方向の両方で、小胞の鞘に沿って輸送され、その後、バルクエンドサイトーシスによって、隣接する細胞によって取り込まれる。この機構は、ヒトの疾患において観察される病変の拡散が、明確な解剖学的パターンにしたがう理由を説明する。興味深いことに、病理学的タウの末梢投与は、ALZ17マウスにおけるタウ病変の形成を加速させ得る(Clavaguera,F.et al.(2014)Acta Neuropathol.127,299-301)。この拡散機構は、他のタンパク質症における疾患伝播を説明し得る(Goedert,M.et al.(2010)Trends
Neurosci.33,317-325;Sigurdsson,E.M.et al.(2002)Trends Mol.Med.8,411-413)。
【0007】
II.タウ種
タウタンパク質が、内因性病原体として働き得るという発見は、潜在的な介入治療において標的にされ得る「病原性種」への探求を引き起こした。
【0008】
微小管関連タンパク質タウ遺伝子(MAPT)は、ヒトゲノムの17番染色体に位置し、成人ヒト脳においてタウタンパク質の6つのアイソフォームを発現する。これらのアイソフォームは、MAPT遺伝子内の16のエクソンのうちのエクソン2、3および10の選択的スプライシングから生じる。エクソン2および3は、29のアミノ酸反復を発現し、エクソン10は、さらなる微小管結合領域を発現する。結果として、タウアイソフォームは、0、1または2つのN末端反復および3または4つのC末端微小管結合領域(3Rまたは4Rタウ)を含有する。一般的に、タウの6つのアイソフォームが発現される。最長(2N4R)および最短(0N3R)アイソフォームは、それぞれ441および352アミノ酸からなる(Kolarova,M.et al.(2012)Int.J.Alzheimers.Dis.2012,731526)。タウのN末端突出領域(2N4R)は、44のアミノ酸のグリシンに富むテイルからなり、残基45~102は、2つの強酸性領域を包含する(N1、N2ドメイン)。2つのプロリンに富む領域は、残基151~243(P1、P2ドメイン)において見られる。タンパク質の残りの部分は、4つの微小管結合領域(R1~R4)、続いて、短いC末端領域によって構成される。
【0009】
タウは、可溶性でかつ高リン酸化に不安定なタンパク質である。タウの最長アイソフォーム中のアミノ酸残基のうちの約20パーセントまたは85個が、潜在的な(Ser、ThrまたはTyr)リン酸化部位である。これらのほぼ半分が、実験的にリン酸化され観察され(Hanger,D.P.et al.(2009)Trends Mol.Med.15,112-119;Hasegawa,M.et al.(1992)J.Biol.Chem.267,17047-17054)、リン酸化部位が微小管結合領域の末端残基の周りに集まる。タウは、細胞周期中に動的にリン酸化および脱リン酸化される。タウは、減数分裂を起こさせるために微小管から解離しなければならない。有糸分裂後細胞(分化したニューロン)におけるその主な役割は、最適な軸索輸送を可能にするよう、微小管安定剤として働くことである。タウは、そのほぼ脱リン酸化された形態でのみ微小管と結合することができ、したがって、リン酸化は、ニューロン内の直接の微小管結合/解離スイッチとして働く。正常な条件下で、細胞質タウは、平均して2つのリン酸化部位を含有する。対らせん状線維状材料において、少なくとも7~8つの部位が、リン酸化されている(Hanger,D.P.et al.(2009)Trends Mol.Med.15,112-119;Hasegawa,M.et al.(1992)J.Biol.Chem.267,17047-17054)。過リン酸化、対らせん状線維状タウは、アルツハイマー病の主な特徴であり(Kosik et.al.(1986)PNAS,86,4044-4048)、過リン酸化タウの明確な移動度シフトが、ヒトAD脳材料の免疫細胞化学分析において観察される。
【0010】
X線結晶構造解析またはNMR分光法のような従来の構造法を用いてタウタンパク質を研究することは、その準安定性を反映して難しかった。このような研究は、主に、非リン酸化タンパク質のドメインフラグメントにおいて行われた。NMR分光法を用いた、完全長タウ(2N4R)に関するこれまでの構造研究のみが、タンパク質が、安定した二次構造のごくわずかな伸長を含むことを明らかにしている(Mukrasch,M.D.et al.(2009)PLoS.Biol.7,e34)。この分析は、ペプチド骨格の二次構造が、βシート構造を取る傾向が高いことを示す。骨格の最初の200残基は、微小管結合領域を包含するC末端よりかなり秩序化されている。溶液中のタンパク質内の多くの特定の長距離相互作用の存在は、それが非常に秩序化されたモルテングロビュール状態で存在することを示す(Ohgushi,M.and Wada,A.(1983)FEBS Lett.164,21-24)。
【0011】
特にカスパーゼおよびカルパイン(Asp13、Glu391およびAsp421)によって生成されるタウのプロテアーゼ産物は、もつれ材料(tangle material)中で同定された(Gamblin,T.C.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,10032-10037)。特に、Asp421における切断が、自由Asp421末端に結合するタウC3抗体を用いて詳細に研究された。この切断は、アポトーシスの誘発に関連するAD発症の初期事象として仮定された(deCalignon A.et al.(2010)Nature 464,1201-1204)。Asp13におけるN末端切断およびGlu391におけるC末端切断は、発症の後期事象とみなされる(deCalignon A.et al.(2010)Nature 464,1201-1204;Delobel,P.et al.(2008)Am.J.Pathol.172,123-131)。最近、さらなるN末端フラグメント(残基1~224)が、ADおよびPSP患者に由来するCSFにおいて同定され、疾患および特に病原の初期マーカーであることが仮定された(米国特許出願第14/092539号明細書;Bright,J.et al.(2014)Neurobiol.Ageing,1-17)。同様のカルパイン切断フラグメントが、他のグループによって報告された(Ferreira,A.and Bigio,E.H.(2011)Mol.Med.17,676-685;Reinecke,J.B.et al.(2011)PLoS.One.6,e23865)。
【0012】
過リン酸化およびタウの分画のほか、翻訳後アセチル化(Cohen,T.J.et al.(2011)Nat.Commun.2,252;Min,S.W.et al.(2010)Neuron 67,953-966)およびO-GlcNAc化(Zhu,Y.et al.(2014)J.Biol.Chem.)が、ADに関連するもつれ病変の形成における病変規定過程であることが提示された。
【0013】
III.タウ免疫療法
免疫療法は、従来、受動および能動ワクチン手法に分けられる。能動ワクチン手法では、病原因子または不活性化した病原因子が患者に注入され、免疫系が免疫応答を引き起こす。これは、投与された抗原に対する高親和性抗体または細胞応答を生成するB細胞の成熟を誘発する。受動ワクチン手法では、免疫系の誘発は、抗原に対して特異的な抗体を注入することによって回避される。次に、固有のクリアランス系が、抗体結合リガンドを除去する。
【0014】
AC免疫は、タウのリン酸化セリン409に対するマウスモノクローナル抗体を追跡する。抗体を、ヒトADおよび対照脳組織に対してプロファイリングし、もつれ病変を認識するそれらの能力に基づいて選択した。2つの抗体のヒト化形態、hACI-36-2B6-Ab1およびhACI-36-3A8-Ab1は両方とも、アミノ酸401~418内のタウエピトープに結合する(国際公開第2013/151762号パンフレット)。
【0015】
Roger Nitschのグループは、変性タウオパチーの兆候を有さない高齢の健常個体からタウ自己抗体を単離した。タウ特異的抗体を発見するために、いくつかの抗体を、完全長組み換えヒトタウ(2N4R)を用いて単離した。次に、これらを、疾患および健常個体に由来するタウ単離物を区別するそれらの能力についてスクリーニングした。3つの主要な抗体、4E4、4A3および24B2が、特許文献に記載されている(国際公開第2012049570号パンフレット;米国特許出願公開第2012087861号明細書)。それらのエピトープマッピングは、全てが、位置V339~K369の、微小管結合領域内およびそのC末端のアミノ酸を認識することを示す。これらの抗体は、リン酸化特異性を示さない。
【0016】
C2N Diagnosticsは、主に、神経変性疾患の早期発見のための診断手段の開発に重点を置いている。完全長ヒトおよびマウスタウタンパク質に対する抗体を生成した。ヒトタウおよびマウスタウをそれぞれ認識する、8つおよび5つの抗体を同定した(Yanamandra,K.et al.(2013)Neuron 80,402-414)。異なる結合反応速度を有する3つの抗体を、インビボの評価のために選択した。すなわち、タウ残基306~320、7~13および25~30をそれぞれ認識する、HJ9.3、HJ9.4およびHJ8.5であり、最後のものは、ヒトタウに特異的である。また、抗体を、タウの細胞間伝播の巧妙な機構的レポーターアッセイにおいて病変の転移を防ぐそれらの能力に基づいて選択した(Sanders,D.W.et al.(2014)Neuron 82,1271-1288;Kfoury,N.et al.(2012)J.Biol.Chem.287,19440-19451)。P301Sトランスジェニックマウスにおける長期の脳室内(i.c.v.)注入試験におけるそれらの評価は、処理されたマウスの免疫組織化学的分析によって測定した際の過リン酸化タウタンパク質のレベルを減少させるそれらの能力を実証した。
【0017】
Peter Daviesの抗体は、ADおよび対照脳材料における病理学的タウと正常なタウとを区別し得る診断手段として元々は開発された(Greenberg,S.G.and Davies,P.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87,5827-5831)。PHF1およびMC1抗体の治療的有用性の評価を、P301SおよびJPNL3において実証した(P301L)(Boutajangout,A.et al.(2011)J.Neurochem.118,658-667;Chai,X.et al.(2011)J.Biol.Chem.286,34457-34467;D’Abramo,C.et al.(2013)PLoS.One.8,e62402 mice)。PHF1が、線状リン酸化タウエピトープ(pS396、pS404)を認識する一方、MC1は、線状配列の2つの明確な部分を必要とする構造的タウエピトープ、残基46~202内のエピトープおよび残基312~342間のC末端エピトープを認識する立体配座依存性抗体である(Jicha,G.A.et al.(1997)J.Neurosci.Res.48,128-132)。長期の12~13週間の免疫化試験におけるこれらの2つの抗体の注入は、他の脳領域の中でも特に脊髄および脳幹病変のかなりの減少をもたらし、これは、これらのマウスにおいて観察される運動障害の軽減に置き換えられる(D’Abramo,C.et al.(2013)PLoS.One.8,e62402)。
【0018】
iPerian/Bristol Meyers Squibbは、誘導多能性幹細胞に基づく神経培養において活動亢進を促進した、タウのN末端フラグメント(etau:残基1~224)から構成される仮定された病理学的タウ種に対するタウ抗体を開発した。抗体のポートフォリオが開発されたが、特性決定は、残基9~18内のN末端エピトープを認識する抗体IPN001およびIPN002に重点を置いていた。したがって、これらの抗体は、疾患の初期兆候であり得る、段階的なADおよびPSP患者に由来するCSFにおける高いタウレベルを検出する。JPNL3(P301L)マウスにおける抗体のインビボ注入は、進行性運動障害の部分的な回復をもたらした(米国特許出願第14/092539号明細書)。
【0019】
Einar Sigurdssonは、タウに基づく免疫療法の有効性を実証する最初のプログラムについて報告した。Adju-Phos補助剤と一緒にタウペプチド379~408[pS396、pS404]からなる能動ワクチンを用いて、JPNL3(P301L)マウスを免疫した。この研究において、タウ病変の著しい減少が、対照動物と比較したときに、ワクチンで処理されたマウスにおいて観察された。タウオパチー関連運動表現型の軽減が、同様に検出された。その有効性が、突然変異体タウによって駆動されない異なるマウスモデル(htau/PS1)において確認された(Boutajangout,A.et al.(2011)AAIC 2011(7,issue 4,Supplement edn)p.s480-s431;Congdon,E.E.et al.(2013)J.Biol.Chem.288,35452-35465;Gu,J.et al.(2013)J.Biol.Chem.288,33081-33095)。
【0020】
Prothenaは、K369I(K3)トランスジェニックタウマウスおよびP301Lマウスモデルにおいて3つのタウ抗体を評価した。様々な特性を有する抗体を、インビボの評価のために選択した。異なるアイソタイプ(IgG1/kおよびIgG2a/k)を有する2つのpS404特異的抗体または総(pan)抗タウ抗体(IgG1/k)を、長期のパラダイムで注入した。K369Iマウスを、3週齢から開始して21週間にわたって週に1回の注入で処理し、P301Lマウスを、4月齢から開始して7ヶ月間にわたって週に1回の注入で処理した。タウ陽性の神経原線維封入体の減少が、IgG2a/k pS404抗体を用いたK3マウスにおいて観察された。pS404特異的抗体の両方が、pS422陽性タウのレベルを減少させることができた一方、pan-タウ抗体で処理されたマウスにおいて減少は観察されなかった。これらの研究は、1)タウクリアランスは、抗体アイソタイプ依存性であり得ること、および;2)総-抗タウ抗体が過リン酸化タウを減少させることができなかったため、疾患に関連するタウ種を標的にすることが重要であり得ることを示唆している(PCT/US2014/025044号明細書)。
【0021】
本発明の発明者らは、病気モデルに有効であるためにリン酸化タウセリン残基396(pS396)に特異的な抗体を意外にも発見し;これは、先行技術と対照的に、主に、396および404残基の両方においてリン酸化されるか、404残基のみまたはタウにおける他の残基においてリン酸化されるタウタンパク質を認識する抗体である。
【0022】
本発明者らは、ヒト病理学的タウに対する著しい特異性および選択性をさらに有する抗体を開発した。本発明の抗体は、国際公開第2013/050567号パンフレットの抗体(国際公開第2013/050567号パンフレットの
図1を参照)と比較して、非病理学的タウよりヒト病理学的タウに対するはるかに高度な特異性および選択性を示す。特異的結合を有することが報告された、国際公開第2012/045882号パンフレットの抗体は、タウアミノ酸393~401、396~401、394~400および393~400の6~9つの残基アミノ酸配列から誘導された。病原性過リン酸化タウに対して誘導された、本発明の抗体からのこの構築物は、本明細書に記載されるより長いアミノ酸配列を含む。
【0023】
さらに、本発明の抗体、およびそのエピトープ結合フラグメントは、病理学的および非病理学的ヒトタウタンパク質を区別し、特に、アルツハイマー病(AD)病変に関連するタウに結合する能力などの多くの有利な特徴を示す。電気生理学的研究において、本発明の抗体、およびそのエピトープ結合フラグメントはさらに、減少した二発刺激促通および自発的な微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)を改善することができた。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、ヒト(2N4Rアイソフォーム)タウ(配列番号1)のリン酸化残基セリン396に特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、およびそのエピトープ結合フラグメントに関する。抗体は、それらがリン酸化404残基に実質的に結合しないように、リン酸化残基396および404を区別することができるそれらの能力によってさらに特徴付けられる。
【0025】
本発明の抗体は、非病理学的であるが、リン酸化されたタウの存在下で、病理学的タウに対して選択的である。本発明の抗体は、正常なタウの存在下で、病理学的タウのタウもつれ(tau tangle)を除去することができる。特定の理論によって制約されるものではないが、タウ位置396においてリン酸化されたタウタンパク質を含むタウのもつれを除去することは、タウもつれへの病理学的タウのシーディングを防ぐものと考えられる。したがって、本発明の一態様は、分子がタウ位置404においてリン酸化されたタウタンパク質の存在下にある場合でも、396-リン酸化タウに選択的に結合することが可能な抗体に関する。本発明の関連する態様は、分子が非病原性タウの存在下にある場合でも、396-リン酸化タウに選択的に結合することが可能な抗体に関する。さらに定義される、本発明は、病理学的タウに対して選択的な抗体に関し、前記病理学的タウは、タウのヒト2N4Rアイソフォームを過剰発現するトランスジェニックマウスにおいて(ウエスタンブロット分析によって)64kDaバンドとして現われる過リン酸化タウである。
【0026】
本発明の一態様は、トランスジェニックマウスに由来する免疫枯渇rTg4510抽出物とともに使用されるとき、過リン酸化タウ64kDaおよび70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%以下だけ減少させる抗タウ抗体に関する。本発明のさらなる態様は、過リン酸化タウ64および70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%以下だけ減少させる抗タウ抗体;または、本明細書に記載されるようにヒトAD死後脳に由来する抽出物とともに使用されるとき、pS396過リン酸化タウバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、非リン酸化タウバンドを10%超減少させない能力に関する。
【0027】
本発明の別の態様は、アルツハイマー病などのタウオパチーに罹患した患者を治療する方法であって、もつれを除去するか、または前記もつれの進行を軽減する工程を含む方法に関し、前記もつれは、過リン酸化タウを含み、前記方法は、もつれが除去され、過リン酸化タウのその含有量が減少され、またはもつれ形成の進行が軽減されるように、過リン酸化タウを本発明の抗体と接触させる工程を含む。
【0028】
別に定義される、本発明は、アルツハイマー病などのタウオパチーに罹患した患者を治療する方法に関し、前記方法は、もつれから過リン酸化タウが取り除かれるように、リン酸化残基396を有するタウに対して選択的な抗体ともつれを接触させる工程を含む。
【0029】
本発明の一態様は、
(a)配列番号3、配列番号31;配列番号32;配列番号33;配列番号34;配列番号35;配列番号36;配列番号37;配列番号38;配列番号40;および配列番号46からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(b)配列番号4;配列番号41;および配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
(c)配列番号5;配列番号42;および配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(d)配列番号6;配列番号43;配列番号49;配列番号52;および配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
(e)配列番号7;配列番号28;配列番号29;配列番号30;配列番号44;配列番号50;配列番号53;および配列番号56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;および
(f)配列番号8、配列番号39;配列番号45;配列番号51;配列番号54;および配列番号57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、過リン酸化ヒトタウに対するモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0030】
本発明の一態様は、
(a)配列番号12;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号19;配列番号20;配列番号21;配列番号22および配列番号23からなる群から選択される軽鎖;および
(b)配列番号11;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号24;配列番号25;配列番号26;および配列番号27からなる群から選択される重鎖
を含む、過リン酸化ヒトタウに対するモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、過リン酸化ヒトタウに対するモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0032】
本発明の興味深い態様は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、過リン酸化ヒトタウに対するモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0033】
本発明の興味深い態様は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、過リン酸化ヒトタウに対するモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0034】
本発明の抗体、およびそのエピトープ結合フラグメントは、アルツハイマー病(AD)、嗜銀顆粒病(AGD)、進行性核上性まひ(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、TBI(軽度、急性または慢性の外傷性脳損傷)、および慢性外傷性脳症(CTE)などのタウオパチーを治療するのに使用され得る。
【0035】
本発明の抗体、およびそのエピトープ結合フラグメントはさらに、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、の治療に使用することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】ヒト化C10-2および変異体(C10-2_N32SおよびC10-2_N32S_A101T)を用いたAD-P3捕捉についての流体相阻害アッセイ。実施例3Aに記載されるように、P396特異的抗体hC10-2(四角形)、hC10-2_N32S(黒丸)およびhC10-2_N332_A101T(白丸)によるAD-P3捕捉の濃度に応じた阻害を調べた。AD-P3画分を、96ウェルプレート上に固定化された200ng/mlのマウスC10-2抗体とともにインキュベートする前に、増加する濃度の抗体(0~1000nM)とともに、室温(r/t)で60分間インキュベートした。捕捉されたAD-P3抗原を、スルホタグ化抗総タウ抗体(MSD)を用いて検出した。 hC10-2_N32S(黒丸)およびhC10-2_N332_A101T(白丸)抗体のIC50を計算すると、それぞれ44nMおよび14nMである。これは、
図1の曲線を比較した際に分かるように、hC10-2と比べて著しい改善である。したがって、本発明の一態様において、AD-P3捕捉についての流体相阻害アッセイに基づいて、100nM以下の抗体の濃度で、シグナルが50%減少されるように、これらの抗体は、本明細書に記載される流体相阻害アッセイにおいてAD-P3を阻害する。
【
図2】hC10-2および関連する変異体の見かけの親和性を示すペプチド阻害アッセイ。実施例3Bに記載されるように、流体相溶液中で、Pタウ386~408(pS396)ペプチドに結合する抗体の濃度に応じた阻害を、抗体hC10-2(四角形)、hC10-2_N32S(黒丸)およびhC10-2_N32_A101T(白丸)を用いて調べた。抗体を、100ng/mlのPタウ386~408(pS396/pS404)で被覆されたウェルにおけるインキュベーションの前に、増加する濃度(0~10000nM)のPタウ386~408(pS396)とともに室温で60分間にわたって、1ng/mlでプレインキュベートした。十分に結合された抗体が、スルホタグ化抗ヒトIgG抗体(MSD)で検出された。
図2から分かるように、抗体hC-10.2(IC50=24nM)、抗体hC10.2_N32S(IC50=50nM)および抗体hC10.2_N32S、A101T(IC50=34nM)は、Pタウ(P396)386~408とともに流体相溶液を用いた見かけの親和性試験に基づいて、100nM未満、さらには60nM未満のIC50を有する。
【
図3】(パネルA~ZおよびAA~AG)。ADを有するドナーからの死後脳およびrTg4510マウス脳における病理学的タウの免疫組織化学的検出。実施例4に記載されるように、3つの異なるADドナーに由来する前頭前皮質において、hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tは、神経原線維変化、神経絨毛糸(neuropil thread)およびジストロフィー性神経突起を標識した。最も強い染色強度が、最も高い濃度の抗体で検出された。対照脳切片には、免疫活性がない。全ての3つの抗体が、進行した病変を有するrTg4510脳においてリン酸化タウを標識した。 染色は、hC10-2からhC10-2_N32Sへと、およびhC10-2_N32S_A101Tへと増加した。最も強い染色強度が、hC10-2_N32S_A101T、次に、hC10-2_N32S、次に、hC10-2で検出された。100ng/mL程度のhC10-2_N32S_A101TおよびhC10-2_N32Sの濃度で、アルツハイマー病の脳における病理学的タウの免疫組織化学的検出があった。
【
図4】(パネルA~F)。hC10-2で処理されたrTg4510マウスにおけるタウ構造の装飾。hC10.2を静脈内(i.v.)投与した(パネルA、C、EおよびFは、rTg4510を表し;パネルBおよびDは、tTAを表す)。マウスは、80mg/kgの濃度で、150μLの体積のhC10-2抗体の単回注射を受けた。脳切片を、実施例5に記載されるプロセスにしたがって3日後に採取した。hC10-2は、rTg4510脳の海馬および皮質においてインビボで標的構造を特異的に標識するが、対照tTA脳においては標識しない。AlexaFluor488およびHoechstシグナルについての対の画像が、海馬切片において示される。
【
図5】(パネルA~F)。hC10-2_N32Sで処理されたrTg4510マウスにおけるタウ構造の装飾(パネルA、CおよびEは、rTg4510を表し;パネルB、DおよびFは、tTAを表す)。マウスは、80mg/kgの濃度で、150μLの体積のhC10-2_N32S抗体の単回注射を受けた。脳切片を、実施例5に記載されるプロセスにしたがって3日後に採取した。hC10-2_N32Sは、rTg4510脳の海馬および皮質においてインビボで標的構造を特異的に標識するが、対照tTA脳においては標識しない。AlexaFluor488およびHoechstシグナルについての対の画像が、海馬切片において示される。
【
図6】(パネルA~F)。hC10-2_N32S_A101Tの静脈内(i.v.)注射後のrTg4510マウスにおけるタウ構造の装飾(パネルA、CおよびEは、rTg4510を表し;パネルB、DおよびFは、tTAを表す)。マウスは、80mg/kgの濃度で、150μLの体積のhC10-2_N32S_A101T抗体の単回注射を受けた。脳切片を、実施例5に記載されるプロセスにしたがって3日後に採取した。hC10-2_N32S_A101Tは、rTg4510脳の海馬および皮質においてインビボで標的構造を特異的に標識するが、対照tTA脳においては標識しない。AlexaFluor488およびHoechstシグナルについての対の画像が、海馬切片において示される。
図4~6の比較により、hC10.2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tが、静脈注射後に血液脳関門を通過することが示される。この図は、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tが、hC10-2と比較して改善された結果を有して、海馬および皮質におけるタウ構造を標識する(タウもつれ(tau tangle)に対して免疫活性である)ことをさらに示す。
【
図7】(パネルA~D)。アルツハイマー病(AD)の脳においてpS396特異的抗体によって認識されるタウ種。実施例6に記載されるように、AD脳の切片において、タウもつれが、E1およびp396抗体によって共標識されるか(co-labelled)、またはpS396抗体のみに対して陽性であった(矢印)。切片を、蛍光顕微鏡によって分析した。多くのタウもつれが、hC10-2およびhC10-2_N32S_A101T抗体のいずれかのみによって標識された(矢印)。ゴーストもつれ(ghost tangle)が、N末端タウ抗体によって染色されないと仮定すると、hC10-2またはhC10-2_N32S_A101T抗体のみによって標識されるタウ種は、細胞外のゴーストもつれを表す可能性が高い。
【
図8A】ウエスタンブロットによる病理学的タウの検出。実施例6の「ウエスタンブロットによる病理学的タウの検出」の節に記載されるように、hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tを用いて病理学的タウを、ウエスタンブロットによって検出した。32週齢で安楽死させた3匹のrTg4510マウスおよび非トランスジェニック(非tg)対照同腹仔からプールされた前脳および4匹のADマウスおよび4匹の健常対照(HC)ドナーからプールされた皮質試験片をそれぞれ、可溶性(S1)、TBS可溶性ペレット(S1p)およびサルコシル不溶性(P3)画分へと分画し、1μg/mlのhC10.2(A)、hC10-2_N32S(B)、hC10-2_N32S_A101T(C)を用いて、pS396エピトープにおけるリン酸化タウについてウエスタンブロットによって分析した。rTg4510では、正常なヒト4R0Nタウが、55kDaにおいて示される一方、過リン酸化タウ種が、64kDaおよび70kDaにおいて示される。ADでは、可変量のADの典型的塗抹標本(smear)を用いて、過リン酸化タウ種が、54、64、69kDa、および74kDaの4つのバンドとして示される。 hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tのそれぞれは、非トランスジェニックマウスよりrTg4510マウスのタウタンパク質に対して、および健常対照ドナーよりADドナーに対して選択的である。さらに、可溶性(S1)、TBS可溶性ペレット(S1p)およびサルコシル不溶性(P3)画分において、hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tのそれぞれは、rTg4510マウスの正常タウ55kDaタンパク質よりrTg4510マウスの病原性タウ64kDaタンパク質に対して選択的である。
【
図8B】ウエスタンブロットによる病理学的タウの検出。実施例6の「ウエスタンブロットによる病理学的タウの検出」の節に記載されるように、hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tを用いて病理学的タウを、ウエスタンブロットによって検出した。32週齢で安楽死させた3匹のrTg4510マウスおよび非トランスジェニック(非tg)対照同腹仔からプールされた前脳および4匹のADマウスおよび4匹の健常対照(HC)ドナーからプールされた皮質試験片をそれぞれ、可溶性(S1)、TBS可溶性ペレット(S1p)およびサルコシル不溶性(P3)画分へと分画し、1μg/mlのhC10.2(A)、hC10-2_N32S(B)、hC10-2_N32S_A101T(C)を用いて、pS396エピトープにおけるリン酸化タウについてウエスタンブロットによって分析した。rTg4510では、正常なヒト4R0Nタウが、55kDaにおいて示される一方、過リン酸化タウ種が、64kDaおよび70kDaにおいて示される。ADでは、可変量のADの典型的塗抹標本(smear)を用いて、過リン酸化タウ種が、54、64、69kDa、および74kDaの4つのバンドとして示される。 hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tのそれぞれは、非トランスジェニックマウスよりrTg4510マウスのタウタンパク質に対して、および健常対照ドナーよりADドナーに対して選択的である。さらに、可溶性(S1)、TBS可溶性ペレット(S1p)およびサルコシル不溶性(P3)画分において、hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tのそれぞれは、rTg4510マウスの正常タウ55kDaタンパク質よりrTg4510マウスの病原性タウ64kDaタンパク質に対して選択的である。
【
図8C】ウエスタンブロットによる病理学的タウの検出。実施例6の「ウエスタンブロットによる病理学的タウの検出」の節に記載されるように、hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tを用いて病理学的タウを、ウエスタンブロットによって検出した。32週齢で安楽死させた3匹のrTg4510マウスおよび非トランスジェニック(非tg)対照同腹仔からプールされた前脳および4匹のADマウスおよび4匹の健常対照(HC)ドナーからプールされた皮質試験片をそれぞれ、可溶性(S1)、TBS可溶性ペレット(S1p)およびサルコシル不溶性(P3)画分へと分画し、1μg/mlのhC10.2(A)、hC10-2_N32S(B)、hC10-2_N32S_A101T(C)を用いて、pS396エピトープにおけるリン酸化タウについてウエスタンブロットによって分析した。rTg4510では、正常なヒト4R0Nタウが、55kDaにおいて示される一方、過リン酸化タウ種が、64kDaおよび70kDaにおいて示される。ADでは、可変量のADの典型的塗抹標本(smear)を用いて、過リン酸化タウ種が、54、64、69kDa、および74kDaの4つのバンドとして示される。 hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tのそれぞれは、非トランスジェニックマウスよりrTg4510マウスのタウタンパク質に対して、および健常対照ドナーよりADドナーに対して選択的である。さらに、可溶性(S1)、TBS可溶性ペレット(S1p)およびサルコシル不溶性(P3)画分において、hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tのそれぞれは、rTg4510マウスの正常タウ55kDaタンパク質よりrTg4510マウスの病原性タウ64kDaタンパク質に対して選択的である。
【
図9】AD脳に由来するタウの免疫沈降。実施例6の「病理学的タウの免疫沈降」の節に記載されるように、4つのADおよび健常対照(HC)ドナーからプールされた皮質脳ホモジネートの500μgのプレクリアされた溶解物からのヒトIgG1対照(hIgG1)を用いた、10μgのhC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tによるタウの免疫沈降を、ポリクローナルウサギ抗pS396タウ(pS396タウ)抗体を用いて、ウエスタンブロットによって分析した。ADでは、過リン酸化タウ種が、可変量のADの典型的塗抹標本を用いて、54、64、69kDa、および74kDaの4つのバンドとして示される。
【
図10-1】Cisbioアッセイによるタウ凝集の定量化。野生型(Wt)シーディング材料(WW)は、シーディングを示さず、バックグラウンドシグナルを、全ての播種された試料から差し引いた。Tg4510ホモジネートを効率的に播種し、シーディング効果は、B12による処理によって影響されなかったが、本発明のタウ抗体(hC10-2_N32S_A101T>hC10-2_N32S>hC10-2)による20μg/mLの濃度で行われたシーディング試験では処理によって様々な程度に影響された。グラフは、4つの独立した組の実験の結果を表し、相対タウ凝集としてプロットされ(総タンパク質に対して正規化されたバックグラウンドに対するシグナル倍数(fold signal))、相対不溶性p396タウを、triton-X不溶性画分のウエスタンブロットの濃度測定によって定量化した(正規化されたバックグラウンドに対するシグナル倍数)。全ての試料を、アイソタイプ対照抗体B12に対して正規化した。
図10B~Cは、Cisbioアッセイによるタウ凝集の定量化を示す。播種されたpcDNA HEK293細胞は、シグナルを示さず、これは、入力シーディング材料の検出がなかったことを確認する。Wt(野生型)シーディング材料(WW)は、シーディングを示さなかったが、対照的に、rTg4510ホモジネート(CC)は、非播種と比較して、効率的に播種された。このシーディング効果は、HELによる処理によって影響されなかったが、タウ抗体による処理によって部分的に改善された(C10-2>D1.2>hACI36-2B6-Ab1)。グラフは、3つの独立した組の試料を示し、相対タウ凝集としてプロットされる(総タンパク質に対して正規化されたバックグラウンドに対するシグナル倍数(fold signal))。実施例6、「細胞および凝集アッセイ」の節は、後続のプロトコルを説明する。
【
図10-2】Cisbioアッセイによるタウ凝集の定量化。野生型(Wt)シーディング材料(WW)は、シーディングを示さず、バックグラウンドシグナルを、全ての播種された試料から差し引いた。Tg4510ホモジネートを効率的に播種し、シーディング効果は、B12による処理によって影響されなかったが、本発明のタウ抗体(hC10-2_N32S_A101T>hC10-2_N32S>hC10-2)による20μg/mLの濃度で行われたシーディング試験では処理によって様々な程度に影響された。グラフは、4つの独立した組の実験の結果を表し、相対タウ凝集としてプロットされ(総タンパク質に対して正規化されたバックグラウンドに対するシグナル倍数(fold signal))、相対不溶性p396タウを、triton-X不溶性画分のウエスタンブロットの濃度測定によって定量化した(正規化されたバックグラウンドに対するシグナル倍数)。全ての試料を、アイソタイプ対照抗体B12に対して正規化した。
図10B~Cは、Cisbioアッセイによるタウ凝集の定量化を示す。播種されたpcDNA HEK293細胞は、シグナルを示さず、これは、入力シーディング材料の検出がなかったことを確認する。Wt(野生型)シーディング材料(WW)は、シーディングを示さなかったが、対照的に、rTg4510ホモジネート(CC)は、非播種と比較して、効率的に播種された。このシーディング効果は、HELによる処理によって影響されなかったが、タウ抗体による処理によって部分的に改善された(C10-2>D1.2>hACI36-2B6-Ab1)。グラフは、3つの独立した組の試料を示し、相対タウ凝集としてプロットされる(総タンパク質に対して正規化されたバックグラウンドに対するシグナル倍数(fold signal))。実施例6、「細胞および凝集アッセイ」の節は、後続のプロトコルを説明する。
【
図11】異なる量のhC10-2および2.10.3抗体を用いたAD脳抽出物の免疫枯渇後のタウ5ウエスタンブロットシグナルの定量化。実施例7に記載されるように、抗体は両方とも、アルツハイマー病の脳抽出物からの総タウのごく一部を除去した。
【
図12】異なる量のhC10-2(菱形)および2.10.3(三角形)抗体を用いたAD脳抽出物の免疫枯渇後のP-S422タウウエスタンブロットシグナルの定量化。この図は、実施例7からの結果を示す。セリン422においてリン酸化されるタウは、hC10-2または2.10.3のいずれかを用いた免疫枯渇によって、AD脳抽出物から効率的に除去され得る。抗体は両方とも、90%超のP-S422タウを除去したが、さらに多くの2.10.3抗体が、同じ効果に達するのに必要とされた。
【
図13】異なる量のhC10-2および2.10.3抗体を用いたAD脳抽出物の免疫枯渇後のpS396タウウエスタンブロットシグナルの定量化。この図は、実施例7からの結果を示す。hC10-2免疫枯渇は、セリン396においてリン酸化される88%のタウを除去した一方、2.10.3は、AD脳抽出物から55%のpS396タウを除去したに過ぎなかった。
【
図14】異なる量のhC10-2および2.10.3抗体を用いたAD脳抽出物の免疫枯渇後のP-S199/202タウウエスタンブロットシグナルの定量化。この図は、実施例7からの結果を示す。hC10-2免疫枯渇は、セリン199/202においてリン酸化される69%のタウを取り除いた。2.10.3抗体は、同じ用量依存的減少を示さなかった。
【
図15】免疫枯渇の前後のウエスタンブロットにおけるアルツハイマー病の脳抽出物。この図は、実施例7からの結果を示す。セリン396においてリン酸化される25kDaのタウフラグメントがある。hC10-2を用いた免疫枯渇により、25kDaのタウバンドの減少が生じた。2つの他のリン酸化特異的抗体2.10.3およびAT8は、この25kDa種を除去しなかった。
【
図16】異なる量のhC10-2変異体N32S、N32Q、N32S_A101T、N32Q_A101T、N32Q_D55EおよびN32S_D55Eを用いたAD脳抽出物の免疫枯渇後のpS396タウウエスタンブロットシグナルの定量化。実施例8から結論付けられ得るように、AD脳ホモジネートからのセリン396においてリン酸化されるタウを除去する本発明の抗体の能力は相当であった。0.1μg未満の抗体(75ngにおけるデータ点)において、変異体が、(16%であったN32Q、D55Eを除いて)少なくとも28%だけpS396シグナルを減少させた一方、C10.2は、pS396シグナルを6%未満減少させた。
【
図17】(パネルA~D)。AD脳抽出物を注射することによって引き起こされる、海馬におけるタウもつれのシーディング。実施例8aにおいて行われるように、15mg/kgの用量で、mC10-2処理は、播種された海馬におけるもつれ病変を、57%だけかなり減少させた(P<0.05)。hC10-2も病変を減少させたことを示す明白な傾向があった。比較によると、2.10.3は、同じ用量で効果を示すことができなかった。
【
図18】残基P-Ser396およびTyr394は、抗原結合部位の中心にある。 Ile(392)-Val(393)-Tyr(394)-Lys(395)-pSer(396)-Pro(397)-Val(398)の構造が示される。本発明の抗体との主な相互作用は、タウペプチドの疎水性ポケット、pSer396およびY394を必要とする。Y(394)側鎖および骨格の間に、形成された広範囲の水素結合ネットワークおよびpSer396のホスフェートとの電荷/極性相互作用がある。本発明の抗体のHC CDR1は、パリンドローム(palindromic)8-残基モチーフ極性AA-疎水性AA-極性AA-荷電AA-荷電AA-極性AA-疎水性AA-極性AA(Thr-Phe-Thr-Asp-Arg-Thr-Ile-His)を含む。荷電残基は、抗体およびタウタンパク質の間の、水素結合、電荷/電荷、および電荷/極性相互作用によって形成される広範囲の結合ネットワークを介して相互作用する。
【
図19】治療パラダイムにおける抗体の有効性 実施例8bにおいて行われるように、hタウ-P301Lを発現するHEK293細胞に、示される抗体とともにプレインキュベートされたTg4510ホモジネートを播種し、トリプシン処理し、24時間後に再度播種し(抗体を再度加え)、シーディングの48時間後に採取した。総細胞ホモジネートを、Cisbioタウ凝集を用いて、凝集タウについて調べた。データは、CC+B12(tg4510)に対して正規化された、4つの独立した生物学的反復(biological replicas)のプールされたデータ+/-S.E.M.である。 P301L-hタウ発現細胞に、6ウェル当たり抗体(20μg/ml≒約133nM)とともに4℃で一晩プレインキュベートされた40μgのTg4510脳ホモジネート(総タンパク質)を播種した。CC+B12のシーディングにより、大きなシーディング応答が得られた。hC10.2は、約40%の、凝集に対する影響を有していた。全ての他の抗体は、hC10.2と少なくとも同等の効果を示した。特に、hC10.2のN32SおよびN32S_A101T変異体は、凝集タウの45%および62%の減少というより強い効果を示した。N32S_A101T変異体は、hC10.2と比較して、凝集に対するかなり強い効果を示した。この図は、ヒト化C10.2が、タウ誘発シーディングを行うのに有効であるが、N32S、特に、N32SおよびA101T二重突然変異が加わると、mAbの中和活性を増大させることを示す。
【
図20】ストレス条件における変異体の脱アミド化試験 実施例8cにおいて行われるように、VL鎖の位置32または34におけるAsn残基の脱アミド化を、LC-MSによってトリプシンペプチドLC:T2[VTMTCQASQDTSIXLNWFQQKPGK;配列番号58]を分析することによって監視した。Xは、
図20に示されるそれぞれの変異体におけるAsn、GlnまたはSerのいずれかである。MS分析は、非脱アミド化ペプチドに対する脱アミド化ペプチドの相対含量の計算を可能にする。WT、A101TおよびD55E変異体において、LC:T2ペプチドにおける広範囲の脱アミド化が観察される。Asn32を、GlnまたはSerのいずれかに変更すると、他のAsn34残基におけるペプチドの脱アミド化を完全に防ぐことも明らかである。また、本発明者らは、Gln32変異体の脱アミド化を検出しない。同様の結果が、Asn34の変異体で観察された。
【
図21】タウ抗体による皮質ニューロンにおけるタウシーディングおよび凝集の減少 rTg4510マウス胚に由来する皮質神経細胞培養物におけるタウシーディングおよび凝集を、40週齢のrTg4510マウスに由来するP3またはS1p画分からの0.2ngの病理学的タウによって誘発し、Cisbioタウ凝集アッセイによって測定した。培養物中7日(DIV)の時点で、ニューロンを、P3またはS1pおよび10μgの抗体またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の混合物で処理した。完全な培地交換を、残りのP3およびS1pシードおよび抗体を除去するために、DIV11で行った。タウシーディングを、さらに4日間放置し、タウシーディングおよび凝集を測定するために、ニューロンをDIV15で溶解させた。PBSおよびヒト対照IgG抗体(IgG con ab)は、タウシーディングおよび凝集に影響を与えなかった。タウシーディングおよび凝集は、タウ抗体(hC10.2_A101T_N32S>hC10.2_N32S>hC10.2)による処理によって部分的に改善された。タウシーディングおよび凝集の以下の減少が測定された:hC10.2により23%、hC10.2_N32Sにより41~53%、およびhC10.2_A101T_N32Sにより48~60%。棒グラフは、神経タンパク質に対して正規化されたタウ凝集の2つの独立した実験からのデータを平均±SDとして表す。一元配置ANOVAニューマン・コイルス多重比較検定(PBS/IgG con ab対hC10.2、hC10.2_N32S、hC10.2_A101T_N32S
***p<0.001;hC10.2対hC10.2_N32S、hC10.2_A101T_N32S ###p<0.001)。
【
図22】hC10-2_N32Sの静脈内(i.v.)注射後のrTg4510マウスにおけるタウ構造の用量依存的装飾。 hC10-2_N32Sは、rTg4510脳の海馬および皮質においてインビボで標的構造を特異的に標識する。帯状皮質からの画像が示される。20および80mg/kgにおいて最も強いシグナル、8mg/kgにおいて弱いシグナル、0.8mg/kgにおいて可視のシグナルなし。
【
図23】海馬における播種されたタウ病変 播種された海馬におけるGallyasもつれ染色を有する細胞の数は、hC10-2(50%)、hC10-2_N32S(48%)およびhC10-2_N32S_A101T(47%)処理によって減少した。背側海馬を覆う6つ置きの切片で定量化を行い、動物につき合計8つの切片を使用した。細胞数は、8つの切片において特定された海馬の全てのサブ領域における陽性細胞の合計を反映する。一元配置anovaおよびダネットの多重比較検定を用いて、データを分析した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
参照により援用される配列
配列番号1:ヒトタウ(2N4R)
配列番号2:タウ残基386~408(pS396、pS404)
配列番号3:C10-2軽鎖CDR1
配列番号4:C10-2軽鎖CDR2
配列番号5:C10-2軽鎖CDR3
配列番号6:C10-2重鎖CDR1
配列番号7:C10-2重鎖CDR2
配列番号8:C10-2重鎖CDR3
配列番号9:マウスC10-2軽鎖
配列番号10:マウスC10-2重鎖
配列番号11:ヒト化C10-2重鎖
配列番号12:ヒト化C10-2軽鎖
配列番号13:ヒト化C10-2重鎖変異体D55E
配列番号14:ヒト化C10-2重鎖変異体D55Q
配列番号15:ヒト化C10-2重鎖変異体D55S
配列番号16:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32S
配列番号17:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32Q
配列番号18:ヒト化C10-2軽鎖変異体N34S
配列番号19:ヒト化C10-2軽鎖変異体N34Q
配列番号20:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32S、N34S
配列番号21:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32Q、N34S
配列番号22:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32Q、N34Q
配列番号23:ヒト化C10-2軽鎖変異体N32S、N34Q
配列番号24:ヒト化C10-2重鎖変異体A101T
配列番号25:ヒト化C10-2重鎖変異体D55E、A101T
配列番号26:ヒト化C10-2重鎖変異体D55Q、A101T
配列番号27:ヒト化C10-2重鎖変異体D55S、A101T
配列番号28:ヒト化C10-2重鎖CDR2変異体D55E
配列番号29:ヒト化C10-2重鎖CDR2変異体D55Q
配列番号30:ヒト化C10-2重鎖CDR2変異体D55S
配列番号31:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32S
配列番号32:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32Q
配列番号33:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N34S
配列番号34:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N34Q
配列番号35:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32S、N34S
配列番号36:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32Q、N34S
配列番号37:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32Q、N34Q
配列番号38:ヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32S、N34Q
配列番号39:ヒト化C10-2重鎖CDR3変異体A101T
配列番号40:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR1
配列番号41:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR2
配列番号42:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR3
配列番号43:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR1
配列番号44:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR2
配列番号45:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR3
配列番号46:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR1変異体N32S
配列番号47:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR2変異体N32S
配列番号48:IMGT番号付けヒト化C10-2軽鎖CDR3変異体N32S
配列番号49:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR1変異体A101T
配列番号50:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR2変異体A101T
配列番号51:IMGT番号付けヒト化C10-2重鎖CDR3変異体A101T
配列番号52:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR1
配列番号53:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR2
配列番号54:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR3
配列番号55:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR1変異体A101T
配列番号56:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR2変異体A101T
配列番号57:Chotia番号付けヒト化C10-2重鎖CDR3変異体A101T
【0038】
発明の詳細な説明
本明細書において使用される際、「タウ」という用語は、「タウタンパク質」と同義であり、タウタンパク質アイソフォーム(例えば、P10636、1-9としてUniProtにおいて同定される)のいずれかを指す。本明細書において使用されるタウのアミノ酸の番号付けは、以下に示されるようにアイソフォーム2(配列番号1)に対して示され、メチオニン(M)は、アミノ酸残基1である:
【化1】
【0039】
本発明は、タウ、特に、ヒトタウに特異的に結合することが可能であり、一実施形態において、ヒトタウのリン酸化S396残基(pS396)に特異的に結合する能力を示す抗体およびそのエピトープ結合フラグメントに関する。本発明の抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、例えば抗体制限または非飽和条件下で、ヒトタウにおけるリン酸化セリン404(pS404)残基に特異的に結合することができないかまたは実質的にできないことによってさらに特徴付けられる。さらに、pS404におけるリン酸化は、エピトープを含むpS396への特異的結合を妨げない。本明細書において使用される際、「pS」および「{p}S」という表記は、アミノ酸残基ホスホセリンを示し、後続の番号は、配列番号1の配列に対する残基の位置を特定する。本明細書において使用される際、抗体は、別のエピトープと比べて、このような結合が、このような他のエピトープで観察される結合の20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、より好ましくは、1%未満である場合、エピトープに結合することが「実質的に」できない。
【0040】
本発明の文脈における「抗体」(Ab)という用語は、分子(「抗原」)のエピトープに特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、または本発明のある実施形態によれば、免疫グロブリン分子のフラグメントを指す。天然抗体は、典型的に、通常、少なくとも2つの重鎖(HC)および少なくとも2つの軽鎖(LC)から構成される四量体を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)および、3つの領域(CH1、CH2およびCH3)から構成される重鎖定常領域から構成される。ヒト重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4サブタイプ)を含む任意のアイソタイプのものであり得る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。ヒト軽鎖は、κ鎖およびλ鎖を含む。重鎖および軽鎖可変領域が、典型的に、抗原認識に関与する一方、重鎖および軽鎖定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む、宿主組織または宿主因子への免疫グロブリンの結合を仲介し得る。VHおよびVL領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存される配列の領域が散在する「相補性決定領域」と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4で配置される3つのCDR領域および4つのFR領域から構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含有する。特に関連があるのは、自然界に存在し得るものと異なる物理的環境中で存在するように「単離され」ているか、またはアミノ酸配列中の天然抗体またはそれらのエピトープ結合フラグメントと異なるように修飾された抗体およびそれらのエピトープ結合フラグメントである。
【0041】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的結合が可能な抗原決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面基(surface grouping)からなり、通常、特定の三次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープおよび線状エピトープは、後者ではなく、前者への結合が、変性溶媒の存在下で常に失われる点で区別される。エピトープは、特異的エピトープ結合ペプチドによって有効に遮断されるアミノ酸残基(言い換えると、アミノ酸残基は、特異的エピトープ結合ペプチドのフットプリント内にある)などの、結合に直接関与するアミノ酸残基および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含み得る。
【0042】
本明細書において使用される際、「抗体のエピトープ結合フラグメント」という用語は、エピトープに特異的に結合することが可能な抗体のフラグメント、部分、領域(region)または領域(domain)(それがどのように産生されるかにかかわらず(例えば、切断により、組み換えにより、合成的になど))を意味する。エピトープ結合フラグメントは、このような抗体のCDR領域の1、2、3、4、5または6つ全てを含有してもよく、このようなエピトープに特異的に結合することが可能であるが、このような抗体のものと異なるこのようなエピトープに対して特異性、親和性または選択性を示し得る。しかしながら、好ましくは、エピトープ結合フラグメントは、このような抗体のCDR領域の6つ全てを含有するであろう。抗体のエピトープ結合フラグメントは、単一のポリペプチド鎖(例えば、scFv)の一部であるか、もしくはそれを含んでもよく、またはアミノ末端およびカルボキシル末端(例えば、二重特異性抗体、Fabフラグメント、Fab2フラグメントなど)をそれぞれ有する2つ以上のポリペプチド鎖の一部であるか、もしくはそれを含んでもよい。エピトープ結合能力を示す抗体のフラグメントは、例えば、無傷の抗体のプロテアーゼ切断によって得られる。より好ましくは、Fvフラグメントの2つの領域、VLおよびVHが、別個の遺伝子によって天然にコードされるが、またはこのような遺伝子配列をコードするポリヌクレオチド(例えば、それらのコードcDNA)が、VLおよびVH領域が結合して一価エピトープ結合分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:5879-5883を参照)としてそれらが作製されるのを可能にするフレキシブルリンカーによって、組み換え方法を用いて結合され得る。あるいは、単一のポリペプチド鎖のVLおよびVH領域が一緒に結合するのを可能にするには短すぎるフレキシブルリンカー(例えば、約9個未満の残基)を用いることによって、二重特異性抗体(bispecific antibody)、二重特異性抗体(diabody)、または同様の分子(2つのこのようなポリペプチド鎖が一緒に結合して、二価エピトープ結合分子を形成する)を形成することができる(二重特異性抗体の説明については、例えばPNAS USA 90(14),6444-8(1993)を参照)。本発明の範囲内に包含されるエピトープ結合フラグメントの例としては、(i)Fab’またはFabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1領域からなる一価フラグメント、または国際公開第2007059782号パンフレットに記載されている一価抗体;(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1領域から本質的になるFdフラグメント;(iv)VLおよびVH領域から本質的になるFvフラグメント、(v)VH領域から本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov;2i(ll):484-90)とも呼ばれるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989));(vi)ラクダ科動物(camelid)またはナノボディ(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;5_(l):l ll-24)および(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つの領域、VLおよびVHが、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、VLおよびVH領域が組み合わされて、一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖抗体または単一鎖Fv(scFv)として知られている、例えばBird et al.,Science 242,423-426(1988)およびHuston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)を参照)としてそれらが作製されるのを可能にする合成リンカーによって、組み換え方法を用いて結合され得る。本発明の文脈におけるこれらのおよび他の有用な抗体フラグメントは、本明細書においてさらに説明される。抗体という用語は、特に規定されない限り、キメラ抗体およびヒト化抗体などの抗体様ポリペプチド、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組み換え技術などの任意の公知の技術によって提供される、抗原(エピトープ結合フラグメント)に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメントも含むことも理解されるべきである。生成される抗体は、任意のアイソタイプを有し得る。本明細書において使用される際、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)を指す。このような抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ;所望のエピトープに結合することが可能な好適なフラグメントは、無傷の抗体と同じように有用性について容易にスクリーニングされ得る。一実施形態において、本発明の抗体のFc領域は、エフェクター機能を調節する突然変異を含む。
【0043】
「二重特異性抗体」という用語は、それぞれ独立した標的を標的にする2つの独立したエピトープ結合フラグメントを含有する抗体を指す。これらの標的は、異なるタンパク質上に存在するエピトープ、または同じ標的上に存在する異なるエピトープであり得る。二重特異性抗体分子は、親単一特異性二価抗体分子のHCの定常領域における補償的アミノ酸改変を用いて作製され得る。得られるヘテロ二量体抗体は、2つの異なる親単一特異性抗体から与えられる1つのFabを含有する。Fc領域におけるアミノ酸改変は、時間を経ても安定した二重特異性を有するヘテロ二量体抗体の向上した安定性をもたらす(Ridgway et al.,Protein Engineering 9,617-621(1996)、Gunasekaran et al.,JBC 285,19637-1(2010)、Moore et al.,MAbs 3:6 546-557(2011)、Strop et al.,JMB 420,204-219(2012)、Metz et al.,Protein Engineering 25:10 571-580(2012)、Labrijn et al.,PNAS 110:113,5145-5150(2013)、Spreter Von Kreudenstein et al.,MAbs 5:5 646-654(2013))。二重特異性抗体は、ScFv融合を用いて生成される分子も含み得る。次に、2つの単一特異性scfvは、独立して、単一の二重特異性分子を生成するために安定したヘテロ二量体を形成することが可能なFc領域に結合される(Mabry et al.,PEDS 23:3 115-127(2010)。二重特異性分子は、二重の結合能を有する。例えば、CNS疾患を治療するために血液脳関門を横切って治療用抗体を送達するために、治療標的および経細胞輸送表面受容体の両方を標的にする。
【0044】
本明細書および図において使用される際のC10-2、ヒトC10-2、hC10-2、HC10-2、hC10.2、ヒト化C10-2およびヒト化C10-2という用語は、同義であることが意図され、抗体C10-2として定義される。この用語は、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(b)配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR4;および
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR5
を有する抗体軽鎖可変領域;
ならびに
(d)配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖CDR6;
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖CDR7;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR8
を有する抗体軽鎖可変ドメインを含むかまたはそれからなる抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを示すことが意図される。
【0045】
抗体C10-2は、配列番号11の重鎖、配列番号12の軽鎖、または両方を含むものとして定義され得るヒト化抗体である。本発明の一実施形態は、配列番号11の重鎖および配列番号12の軽鎖を含む抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0046】
本明細書および図において使用される際のmC10-2という用語は、マウス抗体C10-2を意味することが意図され、配列番号9および10によって定義される。マウス抗体C10.2は、対照抗体として使用され、本発明の一部でない。
【0047】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32SおよびC10-2_N32Sという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからSにアミノ酸残基32の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32Sとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32QおよびC10-2_N32Qという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからQにアミノ酸残基32の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32Qとして定義される。
【0048】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_N34SおよびC10-2_N34Sという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからSにアミノ酸残基34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N34Sとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_N34QおよびC10-2_N34Qという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからQにアミノ酸残基34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N34Qとして定義される。
【0049】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32S_N34SおよびC10-2_N32S_N34Sという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからSにアミノ酸残基32および34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32S、N34Sとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32Q_N34SおよびC10-2_N32Q_N34Sという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからQにおよびNからSにそれぞれアミノ酸残基32および34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32Q、N34Sとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32Q_N34QおよびC10-2_N32Q_N34Qという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからQにアミノ酸残基32および34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32Q、N34Qとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32S_N34QおよびC10-2_N32S_N34Qという用語は、同義であることが意図され、軽鎖がNからSにおよびNからQにそれぞれアミノ酸残基32および34の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32S、N34Qとして定義される。
【0050】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_D55EおよびC10-2_D55Eという用語は、同義であることが意図され、重鎖がDからEにアミノ酸残基55の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体D55Eとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_D55Q、C10-2_D55Qという用語は、同義であることが意図され、重鎖がDからQにアミノ酸残基55の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体D55Qとして定義される。本明細書および図において使用される際のhC10-2_D55S、C10-2_D55Sという用語は、同義であることが意図され、重鎖がDからSにアミノ酸残基55の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体D55Sとして定義される。
【0051】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_A101TおよびC10-2_A101Tという用語は、同義であることが意図され、重鎖がAからTにアミノ酸残基101の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体A101Tとして定義される。
【0052】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32S_A101T、C10-2_N32S_A101T、hC10-2_A101T_N32SおよびC10-2_A101T_N32Sという用語は、同義であることが意図され、重鎖がAからTにアミノ酸残基101の突然変異を少なくとも含むように変異されており、かつ軽鎖がNからSにアミノ酸残基32の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32S、A101Tとして定義される。
【0053】
本明細書および図において使用される際のhC10-2_N32Q_A101T、C10-2_N32Q_A101T、hC10-2_A101T_N32QおよびC10-2_A101T_N32Qという用語は、同義であることが意図され、重鎖がAからTにアミノ酸残基101の突然変異を少なくとも含むように変異されており、かつ軽鎖がNからQにアミノ酸残基32の突然変異を少なくとも含むように変異された、抗体C10-2の変異体であり、抗体N32Q、A101Tとして定義される。
【0054】
本明細書において使用される際の「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一の分子組成物の抗体分子の調製物を指す。従来のモノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、2つ以上のFab領域から構成され得、それによって、2つ以上の標的に対する特異性を高める。「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、任意の特定の産生方法(例えば、組み換え、トランスジェニック、ハイブリドーマなど)によって限定されることは意図されていない。
【0055】
本発明の抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、特に治療目的に用いられる場合、好ましくは、「ヒト化」される。「ヒト化」という用語は、一般に組み換え技術を用いて調製される、非ヒト種に由来する免疫グロブリンから得られるエピトープ結合部位、およびヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づいた残りの免疫グロブリン構造を有する分子を指す。エピトープ結合部位は、ヒト定常領域に融合された完全な非ヒト抗体可変領域、またはヒト可変領域の適切なヒトフレームワーク領域に移植されたこのような可変領域の相補性決定領域(CDR)またはその部分のみのいずれかを含み得る。このようなヒト化分子のフレームワーク残基は、野生型(例えば、完全ヒト)であってもよく、またはそれらは、配列がヒト化のための基盤として機能したヒト抗体に見られない1つまたは複数のアミノ酸置換を含むように修飾され得る。ヒト化は、分子の定常領域がヒト個体における免疫原として働く可能性を低下させるかまたはなくすが、外来(foreign)可変領域に対する免疫応答の可能性は残る(LoBuglio,A.F.et al.(1989)“Mouse/Human Chimeric Monoclonal Antibody In Man:Kinetics And Immune Response”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)86:4220-4224)。別の手法は、ヒト由来の定常領域を提供することだけでなく、可変領域を改変して、それらをヒト型にできる限り近くなるように再形成することにも焦点を当てている。重鎖および軽鎖の両方の可変領域が、該当する抗原に対する応答が異なり、結合能を決定する3つの相補性決定領域(CDR)を含み、これらの相補性決定領域(CDR)には、所与の種において比較的保存され、かつCDRの足場を提供すると考えられる4つのフレームワーク領域(FR)が隣接することが知られている。非ヒト抗体が、特定の抗原に対して調製される場合、可変領域は、非ヒト抗体に由来するCDRを、改変されるヒト抗体中に存在するFRに移植することによって、「再形成」または「ヒト化」され得る。様々な抗体に対するこの手法の適用は、Sato,K.et al.(1993)Cancer Res 53:851-856.Riechmann,L.et al.(1988)“Reshaping Human Antibodies for Therapy”,Nature 332:323-327;Verhoeyen,M.et al.(1988)“Reshaping Human Antibodies:Grafting An Antilysozyme Activity”,Science 239:1534-1536;Kettleborough,C.A.et al.(1991)“Humanization Of A Mouse Monoclonal Antibody By CDR-Grafting:The Importance Of Framework Residues On Loop Conformation”,Protein Engineering 4:773-3783;Maeda,H.et al.(1991)“Construction Of Reshaped Human Antibodies With HIV-Neutralizing Activity”,Human Antibodies Hybridoma 2:124-134;Gorman,S.D.et al.(1991)“Reshaping A Therapeutic CD4 Antibody”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:4181-4185;Tempest,P.R.et al.(1991)“Reshaping A Human Monoclonal Antibody To Inhibit Human Respiratory Syncytial Virus Infection in vivo”,Bio/Technology 9:266-271;Co,M.S.et al.(1991)“Humanized Antibodies For Antiviral Therapy”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:2869-2873;Carter,P.et al.(1992)“Humanization Of An Anti-p185her2 Antibody For Human Cancer Therapy”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)89:4285-4289;およびCo,M.S.et al.(1992)“Chimeric And Humanized Antibodies With Specificity For The CD33 Antigen”,J.Immunol.148:1149-1154によって報告されている。ある実施形態において、ヒト化抗体は、全てのCDR配列(例えば、マウス抗体に由来する全ての6つのCDRを含むヒト化マウス抗体)を保存する。他の実施形態において、ヒト化抗体は、元の抗体に対して改変された1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)を有し、これらは、元の抗体からの1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも呼ばれる。抗体をヒト化する能力は周知である(例えば、米国特許第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,859,205号明細書;同第6,407,213号明細書;同第6,881,557号明細書を参照)。
【0056】
抗体XXという用語は、(a)そのそれぞれの配列番号によって定義される軽鎖および重鎖、重鎖可変ドメイン、または重鎖可変ドメインCDR1~3のいずれか、または(b)そのそれぞれの配列番号によって定義される軽鎖可変ドメインおよび重鎖、重鎖可変ドメイン、または重鎖可変ドメインCDR1~3のいずれか、または(c)そのそれぞれの配列番号によって定義される軽鎖可変ドメインCDR1~3、およびそのそれぞれの配列番号によって定義される重鎖、重鎖可変ドメイン、または重鎖可変ドメインCDR1~3のいずれかを含むかまたはそれからなる抗体またはそのエピトープ結合フラグメント(例えば抗体「C10-2」)を示すことが意図される。特定の実施形態において、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、それらの配列番号によって定義されるように含むそれらの全重鎖可変ドメインおよびそれらの配列番号によって定義されるそれらの軽鎖可変ドメインによって定義される。
【0057】
本明細書において特に規定されない限り、抗体のFc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.米国保健福祉省の国立衛生研究所(Public Health Service,National Institutes of Health)、Bethesda,MD,1991に記載されているように、EU indexとも呼ばれるEU番号付与体系にしたがって行われる。
【0058】
いくつかの抗体において、CDRのごく一部、すなわち、SDRと呼ばれる、結合に必要とされるCDR残基のサブセットが、ヒト化抗体において結合を保持するのに必要とされる。関連するエピトープに接触せず、SDR中にないCDR残基が、過去の研究に基づいて(例えば、配列番号11のHCの残基60~65に対応する残基Tyr Ser Gln Lys Phe Glnは、必要とされないことが多い)、Chothia超可変ループの外側にあるKabat CDRの領域から(これらは、HC CDR2(配列番号7)にも見られる(Kabat et al.(1992)SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST,National Institutes of Health Publication No.91-3242;Chothia,C.et al.(1987)“Canonical Structures For The Hypervariable Regions Of Immunoglobulins”,J.Mol.Biol.196:901-917を参照)、分子モデリングによっておよび/または実験により、またはGonzales,N.R.et al.(2004)“SDR Grafting Of A Murine Antibody Using Multiple Human Germline Templates To Minimize Its Immunogenicity”,Mol.Immunol.41:863-872に記載されるように特定され得る。1つまたは複数のドナーCDR残基が存在しないかまたは全ドナーCDRが省略される位置におけるこのようなヒト化抗体において、この位置を占めるアミノ酸は、受容体抗体配列において(Kabat番号付けによって)対応する位置を占めるアミノ酸であり得る。含まれるCDR中のドナーアミノ酸に対する受容体のこのような置換の数は、競合する考慮事項のバランスを反映する。このような置換は、ヒト化抗体中のマウスアミノ酸の数を減少させ、結果として、潜在的な免疫原性を低下させるのに潜在的に有利である。しかしながら、置換は、親和性の変化も引き起こすことがあり、親和性の著しい低下は回避されるのが好ましい。CDR内の置換の位置および置換するアミノ酸も、実験により選択され得る。
【0059】
抗体はまた、当該技術分野において明確に定義されたIMGT番号付けシステムにしたがって特性評価される。(アミノ酸の数、すなわち、示される位置の数における)長さは、IMGT-オントロジーの重要な本来の概念である(http://www.imgt.org)。CDR-IMGT長さは、生殖系列遺伝子のIGおよびTR V-領域ならびに再編成遺伝子、cDNAおよびタンパク質のV-ドメインを特性評価する。
【0060】
抗体は、例えばChothia番号付けスキーム(http://www.bioinf.org.uk/abs/)にしたがって特性評価され得る。Chothia番号付けスキームは、Kabatスキームと同一であるが、構造的に明確な位置におけるCDR-L1およびCDR-H1への挿入を設置する。Chothia番号付けスキームは、構造的ループ領域の位置に基づいている。これは、(Kabatスキームと異なり)これらのループにおける位相同形の残基が同じ標識を得ることを意味する。
【0061】
CDR残基の単一のアミノ酸改変が、機能的結合の喪失をもたらし得るということ(Rudikoff,S.etc.(1982)“Single Amino Acid Substitution Altering Antigen-Binding Specificity”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79(6):1979-1983)は、別の機能的CDR配列を系統的に同定するための手段を提供する。このような変異体CDRを得るための1つの好ましい方法において、CDRをコードするポリヌクレオチドが突然変異を起こされて(例えばランダム突然変異によって、または部位特異的方法(例えば、突然変異遺伝子座をコードするプライマーによるポリメラーゼ連鎖媒介性増幅)によって)、置換アミノ酸残基を有するCDRを生成する。元の(機能的)CDR配列中の関連する残基の同一性を、置換される(非機能的)変異体CDR配列の同一性と比較することによって、その置換についてのBLOSUM62.iij置換スコアが特定され得る。BLOSUMシステムは、信頼できるアラインメントについて配列のデータベースを分析することによって作成されるアミノ酸置換のマトリックスを提供する(Eddy,S.R.(2004)“Where Did The BLOSUM62 Alignment Score Matrix Come From?”,Nature Biotech.22(8):1035-1036;Henikoff,J.G.(1992)“Amino acid substitution matrices from protein blocks”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:10915-10919;Karlin,S.et al.(1990)“Methods For Assessing The Statistical Significance Of Molecular Sequence Features By Using General Scoring Schemes”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:2264-2268;Altschul,S.F.(1991)“Amino Acid Substitution Matrices From An Information Theoretic Perspective”,J.Mol.Biol.219,555-565。現在、最先端のBLOSUMデータベースは、BLOSUM62データベース(BLOSUM62.iij)である。表1は、BLOSUM62.iij置換スコアを示す(スコアが高くなるほど、置換がより保存的になり、ひいては置換が機能に影響を与えない可能性が高くなる)。得られるCDRを含むエピトープ結合フラグメントが、タウに結合できない場合、例えば、BLOSUM62.iij置換スコアは、不十分に保存的であると見なされ、より高い置換スコアを有する新たな置換候補が選択され、生成される。したがって、例えば、元の残基がグルタメート(E)であり、非機能的置換残基がヒスチジン(H)である場合、BLOSUM62.iij置換スコアは0であり、より保存的な変化(アスパラギン酸塩、アスパラギン、グルタミン、またはリジンなどへの)が好ましい。
【0062】
【0063】
したがって、本発明は、改良されたCDRを同定するためのランダム突然変異の使用を想定している。本発明の文脈において、保存的置換は、表2、3、または4の1つまたは複数に反映されているアミノ酸の種類の範囲内の置換によって定義され得る。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
より保存的な置換基(substitutions grouping)としては、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンが挙げられる。
【0068】
アミノ酸のさらなる基はまた、例えば、Creighton(1984)Proteins:Structure and Molecular Properties(2d Ed.1993),W.H.Freeman and Companyに記載されている原理を用いて配合され得る。
【0069】
ファージディスプレイ技術が、CDR親和性を増加させる(または低下させる)のに代わりに使用され得る。親和性成熟と呼ばれるこの技術は、突然変異または「CDRウォーキング(walking)」を用い、再選択(re-selection)は、標的抗原またはその抗原性のエピトープ結合フラグメントを使用して、初期抗体または親抗体と比較した際に、抗原に対するより高い(またはより低い)親和性で結合するCDRを有する抗体を同定する(例えばGlaser et al.(1992)J.Immunology 149:3903を参照)。単一のヌクレオチドではなくコドン全体の突然変異誘発は、アミノ酸突然変異の半ランダム化レパートリーをもたらす。変異体クローンのプールからなるライブラリーが構築され得、変異体クローンのそれぞれが、単一のCDR中の単一のアミノ酸改変により異なり、各CDR残基に対して各可能なアミノ置換を提示する変異体を含む。抗原に対する増加した(または低下した)結合親和性を有する突然変異体は、固定化突然変異体を標識抗原と接触させることによってスクリーニングされ得る。当該技術分野において公知の任意のスクリーニング方法が、抗原に対する増加したまたは低下した親和性を有する突然変異体抗体を同定するのに使用され得る(例えば、ELISA)(Wu et al.1998,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)95:6037;Yelton et al.,1995,J.Immunology 155:1994を参照)。軽鎖をランダム化するCDRウォーキングが、使用可能であり得る(Schier et al.,1996,J.Mol.Bio.263:551を参照)。
【0070】
このような親和性成熟を達成するための方法は、例えば:Krause,J.C.et al.(2011)“An Insertion Mutation That Distorts Antibody Binding Site Architecture Enhances Function Of A Human Antibody”,MBio.2(1)pii:e00345-10.doi:10.1128/mBio.00345-10;Kuan,C.T.et al.(2010)“Affinity-Matured Anti-Glycoprotein NMB Recombinant Immunotoxins Targeting Malignant Gliomas And Melanomas”,Int.J.Cancer 10.1002/ijc.25645;Hackel,B.J.et al.(2010)“Stability And CDR Composition Biases Enrich Binder Functionality Landscapes”,J.Mol.Biol.401(1):84-96;Montgomery,D.L.et al.(2009)“Affinity Maturation and Characterization Of A Human Monoclonal Antibody Against HIV-1 gp41”,MAbs 1(5):462-474;Gustchina,E.et al.(2009)“Affinity Maturation By Targeted Diversification Of The CDR-H2 Loop Of A Monoclonal Fab Derived From A Synthetic Naive Human Antibody Library And Directed Against The Internal Trimeric Coiled-Coil Of Gp41 Yields A Set Of Fabs With Improved HIV-1 Neutralization Potency And Breadth”,Virology 393(1):112-119;Finlay,W.J.et al.(2009)“Affinity Maturation Of A Humanized Rat Antibody For Anti-RAGE Therapy:Comprehensive Mutagenesis Reveals A High Level Of Mutational Plasticity Both Inside And Outside The Complementarity-Determining Regions”,J.Mol.Biol.388(3):541-558;Bostrom,J.et al.(2009)“Improving Antibody Binding Affinity And Specificity For Therapeutic Development”,Methods Mol.Biol.525:353-376;Steidl,S.et al.(2008)“In Vitro Affinity Maturation Of Human GM-CSF Antibodies By Targeted CDR-Diversification”,Mol.Immunol.46(1):135-144;およびBarderas,R.et al.(2008)“Affinity Maturation Of Antibodies Assisted By In Silico Modeling”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)105(26):9029-9034に記載されている。
【0071】
したがって、包含される抗体またはそれらのエピトープ結合フラグメントのCDR変異体の配列は、置換によって;例えば置換される4つのアミノ酸残基、3つのアミノ酸残基、2つのアミノ酸残基または1つのアミノ酸残基によって、親抗体、C10-2およびC10.2変異体のCDRの配列と異なり得る。本発明の一実施形態によれば、CDR領域中のアミノ酸が、上記の3つの表において定義されるように、保存的置換で置換され得ることがさらに想定される。例えば、酸性残基Aspは、抗体の結合特性に実質的に影響を与えずにGluで置換され得る。
【0072】
本明細書において使用される際、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、別のエピトープと比べてそのエピトープと、より高頻度で、より迅速に、より長い期間および/またはより高い親和性または結合活性で反応または会合する場合、別の分子(すなわち、エピトープ)の領域に「特異的に」結合するといわれる。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的に結合する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、第2の標的に特異的にまたは優先的に結合しなくてもまたは結合しなくてもよいことも理解される。本明細書において使用される際、所定の抗原への抗体の結合の文脈における「結合」という用語は、典型的に、抗原をリガンドとしておよび抗体を検体として用いてBIAcore(登録商標)3000機器において例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定した際の約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下のKDに対応する親和性での結合を指し、所定の抗原または密接に関連している抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に対するその親和性より少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性がより低くなる量は、抗体のKDに依存するため、抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が非常に特異的である)場合、抗原に対する親和性が、非特異的抗原に対する親和性より低くなる量は、少なくとも10,000倍であり得る。
【0073】
本明細書において使用される際の「kd」(秒-1または1/秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも呼ばれる。
【0074】
本明細書において使用される際の「ka」(M-1×秒-1または1/M秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数を指す。
【0075】
本明細書において使用される際の「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、kdをkaで除算することによって得られる。
【0076】
本明細書において使用される際の「KA」(M-1または1/M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合平衡定数を指し、kaをkdで除算することによって得られる。
【0077】
一実施形態において、本発明は、以下の特性:
(i)非リン酸化タウに結合することが実質的にできないこと;
(ii)S404においてリン酸化され、S396においてリン酸化されないタウに結合することが実質的にできないこと;
(iii)S396においてリン酸化されるタウに結合する能力;
(iv)S396およびS404の両方においてリン酸化されるタウに結合する能力;
(v)それがリン酸化404残基(pS404)に結合することが実質的にできないように、リン酸化タウ残基S396およびS404を選択的に区別する能力;
(vi)ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウに結合する能力;
(vii)病理学的および非病理学的ヒトタウタンパク質を区別する能力;および/または
(viii)本明細書に記載されるように、トランスジェニックマウスに由来する免疫枯渇されたrTg4510抽出物とともに使用されるとき、過リン酸化タウ64kDaおよび70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%超減少させない能力;または本明細書に記載されるように、ヒトAD死後脳に由来する抽出物とともに使用されるとき、S396リン酸化過リン酸化タウバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、非過リン酸化タウバンドを10%超減少させない能力
の1つまたは複数を示す抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0078】
本発明のさらなる実施形態は、高特異性、高親和性抗体を得るための方法であって、
(A)免疫原を哺乳動物に注入して、それによって、前記哺乳動物を免疫する工程と;
(B)前記哺乳動物の前記免疫化を2回以上繰り返す工程と;
(C)他のタンパク質に結合する能力が実質的に低いが所望の高特異性、高親和性抗体の存在について、前記繰り返し免疫された哺乳動物に由来する血清試料をスクリーニングする工程と;
(D)前記高特異性、高親和性抗体を回収する工程と
を含む方法に関する。
【0079】
したがって、本発明は、残基リン酸化S396を含む病原性過リン酸化タウに対して特異的な高特異性、高親和性抗体に関する。このような抗体は、
(A)2N4Rタウの残基386~410をカバーするTDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)を含む、18~40、例えば18~30、例えば20~30連続アミノ酸残基を含む二リン酸化ペプチドを含む免疫原を哺乳動物に注入して、それによって、前記哺乳動物を免疫する工程と;
(B)前記哺乳動物の前記免疫化を2回以上繰り返す工程と;
(C)残基リン酸化S396を含む病原性過リン酸化タウに結合することが可能であるが、非病原性タウに結合する能力が実質的に低い高特異性、高親和性抗体の存在について、前記繰り返し免疫された哺乳動物に由来する血清試料をスクリーニングする工程と;
(D)前記高特異性、高親和性抗体を回収する工程と
によって、高特異性、高親和性抗体を生成するための上述される方法の適合によって生成され得る。
【0080】
本明細書において使用される際、タウ分子に結合することが「実質的にできないこと」は、対照抗体によって仲介される検出可能な結合と比べて、機能性の20%超の相違、40%超の相違、60%超の相違、80%超の相違、100%超の相違、150%超の相違、2倍超の相違、4倍超の相違、5倍超の相違、または10倍超の相違を示す。
【0081】
「選択的」および「免疫選択的」という用語は、2つのエピトープに対する抗タウ抗体の結合能力に言及する場合、飽和条件下で観察される結合が、少なくとも80%の相違、少なくとも95%の相違、最も好ましくは、100%の相違(すなわち、1つのエピトープへの検出可能な結合なし)を示すことが意図される。「選択的」および「免疫選択的」という用語は、タウ抗体に言及する場合、抗体が、ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウに結合し、病理学的および非病理学的ヒトタウタンパク質を区別することができることを意味することがさらに意図される。
【0082】
TBS-抽出可能(S1)、高塩/サルコシル-抽出可能(S3)、およびサルコシル-不溶性(P3)画分という用語は、本明細書に記載されるタウ生化学的分画によって得られる画分である。
【0083】
「正常なタウ」という用語は、タンパク質のモル当たり2~3モルのホスフェートを含有する正常な脳タウを指す。
【0084】
「過リン酸化タウ」という用語は、ウエスタンブロットにおけるポリ-アニオン種に誘発される移動度シフトと一致するタウのポリリン酸化種またはリン酸化された5つ、6つまたは7つ超のセリン、トレオニンまたはチロシン部位を有するタウ種を指す。
【0085】
「リン酸化残基396を有するタウ」という用語は、残基396がリン酸化される過リン酸化タウに関連する。
【0086】
「トランスジェニック非ヒト動物」という用語は、1つまたは複数のヒト重鎖および/または軽鎖導入遺伝子または導入染色体(trans-chromosome)(動物の天然ゲノムDNAへと統合されるかまたは非統合のいずれか)を含み、完全ヒト抗体を発現することが可能なゲノムを有する非ヒト動物を指す。例えば、トランスジェニックマウスは、マウスが、タウ抗原および/またはタウを発現する細胞で免疫されるときにヒト抗タウ抗体を産生するように、ヒト軽鎖導入遺伝子およびヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖導入染色体のいずれかを有し得る。ヒト重鎖導入遺伝子は、トランスジェニックマウス、例えばHuMAbマウス(HCo7またはHCol2マウスなど)の場合と同様に、マウスの染色体DNAへと統合され得、またはヒト重鎖導入遺伝子は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されるように、導入染色体KMマウスの場合と同様に、染色体過剰に(extra-chromosomally)維持され得る。このようなトランスジェニックおよび導入染色体マウス(本明細書においてまとめて「トランスジェニックマウス」と呼ばれる)は、V-D-J組み換えおよびアイソタイプスイッチングを行うことによって、所与の抗原(IgG、IgA、IgM、IgDおよび/またはIgEなど)に対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプを産生することが可能である。
【0087】
トランスジェニック、非ヒト動物も、特定の抗体をコードする遺伝子を誘導することによって、例えば動物の乳汁中で発現される遺伝子間を作動可能に連結することによって、特定の抗原に対する抗体の産生に使用され得る。
【0088】
本明細書において使用される際の「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」という用語は、疾患または障害の進行または重症度を改善し、遅らせ、軽減し、または抑制すること、またはこのような疾患または障害の1つまたは複数の症状または副作用を改善し、遅らせ、軽減し、または抑制することを意味する。本発明の趣旨では、「治療」または「治療すること」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るための手法をさらに意味し、ここで、「有益なまたは所望の臨床結果」としては、限定はされないが、部分的であるかまたは全体的であるかにかかわらず、症状の軽減、障害または疾患の程度の減少、安定した(すなわち、悪化していない)疾患または障害状態、疾患または障害状態の進行の遅延または緩徐化、疾患または障害状態の改善または緩和、および疾患または障害の寛解が挙げられる。
【0089】
「有効量」は、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに適用される場合、意図される生物学的効果または所望の治療結果(限定はされないが臨床結果を含む)を達成するのに、必要な投与量および期間にわたる、十分な量を指す。「治療的に有効な量」という語句は、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに適用される場合、障害もしくは疾患の状態の進行、または障害もしくは疾患の症状の進行を改善し、緩和し、安定させ、抑制し、遅らせ、軽減し、または遅延させるのに十分な、抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントの量を表すことが意図される。一実施形態において、本発明の方法は、他の化合物と組み合わせた、抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントの投与を提供する。このような場合、「有効量」は、意図される生物学的効果を引き起こすのに十分な組合せの量である。
【0090】
本発明の抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの治療的に有効な量は、個体の病状、年齢、性別、および体重、ならびに抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが個体における所望の応答を引き起こす能力などの要因に応じて変化し得る。治療的に有効な量はまた、抗体または抗体部分の何らかの毒性または有害作用を、治療的に有益な効果が上回る量である。
【0091】
上に示されるように、本発明は、特に、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、およびこのような分子(ひいてはそのこのようなエピトープ結合フラグメント)を産生するための完全に新規な方法に関する。モノクローナル抗体を単離する新規な方法のこの能力は、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基セリン396(P-S396、pS396、{p}S396)に特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体を単離するその使用によって本明細書において例示される。これらの抗体は、タウが残基396においてもリン酸化されない限り、リン酸化セリン404でタウタンパク質に結合しないように、リン酸化残基セリン396およびセリン404(P-S404、pS404)を区別するそれらの能力によってさらに特徴付けられる。
【0092】
本発明の抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、pS396特異的抗体の選択に好ましい新規な方法の使用によって生成および単離された。さらに、この非常に厳密な抗体クローン選択手順を適用することによって、S396に対して高度に特異的であるだけでなく、リン酸化pS396エピトープに対しても高度に選択的である抗体が得られた。これらの抗体は、アルツハイマー病の脳に由来するタウを独自に認識する。スクリーニング手順が、機能的および治療的有用性を有する抗体の同定を確実にすることも実証する。
【0093】
抗体を、2N4Rタウの残基386~408をカバーする二リン酸化ペプチド:TDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)に対して誘導した。マウスをリン酸化ペプチドで免疫した。十分な抗体価が得られたら、マウスを殺処分し、ハイブリドーマを生成した。ハイブリドーマを、ドットブロットおよび免疫化されたヒト病理学的および非病理学的タウを用いたMSD ELISAを用いてスクリーニングした。ドットブロットおよびウエスタンブロットにおいて病理学的および非病理学的ヒトタウタンパク質を区別する能力を、ハイブリドーマの選択に使用した。16のクローンを選択し、そのうちの4つのハイブリドーマクローンを回収し、それにより、ヒト病理学的タウ材料に結合する目立った能力を示す抗体を産生した。
【0094】
また、病理学的および非病理学的タウへの特異的結合を、罹患および非罹患ヒトAD脳に由来するタウの単離およびMSD ELISAプレートにおけるこの材料の固定化によって決定した(実施例4)。
【0095】
本発明のさらなる態様は、2N4Rタウの残基386~410をカバーするTDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)内の少なくとも18、例えば少なくとも20連続アミノ酸残基を含む二リン酸化ペプチドに対して誘導されるモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。本発明のこの態様において、モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、典型的に、2N4Rタウの残基386~410をカバーするTDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)を含む18~40、例えば18~30、例えば20~30連続アミノ酸残基を含む二リン酸化ペプチドに対して誘導される。
【0096】
本発明のさらなる態様は、月齢を健常にマッチさせた対照よりAD罹患患者に由来するリン酸化タウ(pタウ)に対する特異性を有する本発明のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであって、前記モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、本明細書に記載されるように、リン酸化-および多量体特異的Setup 1 ELISAまたはMSDを用いて、ADおよび健常対照被験体に由来する脳ホモジネート中のリン酸化タウ(pタウ)を検出するためのELISAベースのアッセイにおいて健常対照材料と比較したAD疾患材料に対する特異性の50倍超、例えば100倍超の増加の、月齢をマッチさせた健常対照に由来するタウよりAD罹患患者に由来するリン酸化タウ(pタウ)に対する特異性の差を有するようになっているモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0097】
本発明の関連する態様は、AD罹患タウに対する特異性を有する本発明のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであって、前記モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、リン酸化-および多量体特異的Setup 1 ELISAを用いて、ADおよび健常対照被験体に由来する脳ホモジネート中のリン酸化タウ(pタウ)を検出するためのELISAまたはMSDベースのアッセイにおいて健常対照材料と比較したAD疾患材料に対する特異性の50倍超、例えば100倍超の増加の、月齢を健常にマッチさせた対照よりADに対する特異性の差を有するようになっているモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0098】
Setup 1 ELISAまたはMSD方法は、工程A)C10-2被覆プレートを用いたAD脳に由来する病理学的ヒトタウ抗原の捕捉;B)増加する濃度のpS396特異的抗体ともにタウ抗原のインキュベーション;およびC)MSDからのスルホタグ化抗ヒト(総)タウ抗体を用いた固定化C10.2に捕捉された残余フリータウ抗原の検出を含む。
【0099】
さらに詳細には、工程Aは、C10-2抗体、典型的に、コーティング緩衝液中の0.5μg/ml(捕捉抗体)によるMSDプレート(典型的に、4℃で一晩)コーティング、ブロッキング(典型的に、室温で1時間)および典型的に、3回の洗浄を含む。工程Bは、AD(3人の患者からプールされる)に由来するP3溶解物(典型的に、1:1000=2~4μg/mlの希釈された総タンパク質)および/またはS1(p)(典型的に、1:300=20~40ng/mlの希釈された総タンパク質)の試料を、段階的な濃度のpS396ペプチドエピトープ特異的抗体と混合し、(典型的に、室温で1時間)インキュベートすることを含む。続いて、反応物を、工程Aにおいて準備されたプレート上で2時間インキュベートする。工程Cは、スルホタグ化ヒトタウを用いてC10-2で捕捉されたタウを検出することを含む。製造業者の指示にしたがって、MSDからのタウ抗体(典型的に、1:50)。プレートを、MSD SECTOR(登録商標)S600において分析する。AD P3およびAD S1(p)を、同様の設備において試験する。
【0100】
さらなる実施形態は、ヒト細胞株、非ヒト哺乳動物細胞株、昆虫、酵母または細菌細胞株などの細胞株において生産または製造された、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化セリン残基396に特異的に結合することが可能な抗体、またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0101】
CHO細胞株、HEK細胞株、BHK-21細胞株、マウス細胞株(骨髄腫細胞株など)、線維肉腫細胞株、PER.C6細胞株、HKB-11細胞株、CAP細胞株およびHuH-7ヒト細胞株において生産される、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に特異的に結合することが可能な抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0102】
C10-2およびC10-2変異体の特異的親和性および結合特性が、位置396または404においてリン酸化されるかまたはリン酸化されないタウ386~410(2R4N)ペプチドを用いて特性評価された。本出願において概略が示される特異的な免疫化およびスクリーニングプロトコルを用いると、高リン酸化セリン-396(pS396)特異的抗体が産生される。
【0103】
抗体が病理学的タウに対して特異的であることを実証するために、C10-2抗体はまた、免疫組織化学的分析によって特性評価された。抗体は、アルツハイマー病の脳(タウタングル)およびヒト(P301L)突然変異体タウを発現するTg4510タウトランスジェニックマウスに由来する切片における神経原線維変化への高度に特異的な結合を示す。ヒト対照脳および非トランスジェニックマウス脳に由来する組織への結合は観察されず、これは、抗体が、ヒトタウ、特に、アルツハイマー病病変に関連するタウに特異的に結合することを実証している。
【0104】
抗体C10-2
本発明の一態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0105】
本発明のさらなる態様は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0106】
IMGT定義を用いて別に定義される、本発明の一態様は、
(a)配列番号40のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号41のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号42のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号43のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号44のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号45のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0107】
Chotia定義を用いて別に定義される、本発明の一態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号52のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号53のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号54のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0108】
疾患病変に関連するタウを認識する本発明の抗体の独自の能力が実証される。病理学的タウ対非病理学的タウの結合を比較した。比較は、5つの公開されたタウ抗体:hACI-2B6、IPN002、HJ8.5、2.10.3、および4E4に対して行われる。2.10.3抗体は、セリン422(pS422)においてリン酸化されるタウに特異的に結合する市販の組み換えモノクローナル抗体である。HJ8.5は、N末端領域(残基25~30aaにおけるエピトープ)においてヒトタウのみを認識する市販のモノクローナル抗体である。抗体は、IgG2bアイソタイプのものである。抗タウ治療用抗体NI-105-4E4は、市販の抗体である。表は、単離された抗体が、ヒト病理学的タウに対する非常に高度な特異性および選択性を示すことを実証している。この選択性は、表5に示されるように比較用抗体のいずれよりも優れている。
【0109】
【0110】
飽和において、抗体C10-2は、ヒトAD脳から単離されたP3タウに対する100倍超の選択性を示す。
【0111】
選択された抗体が、機能的および治療的有用性を有することを実証するために、抗体を、インビトロおよび細胞内のタウ凝集アッセイにおいて試験した(実施例8)。これらのアッセイは、抗体が、タウの病理学的凝集過程を妨げることができることを実証する機能アッセイである。HEK293細胞を、ヒトタウ-P301L-FLAG(4R0N)で一過性にトランスフェクトする。続いて、細胞を、ヒトAD脳またはトランスジェニックTg4510脳に由来するタウ抽出物に曝露する。病理学的タウへのこの曝露は、細胞へのタウの取り込みおよび細胞内凝集を促進する。抗体C10-2を用いたタウ標本の免疫枯渇、およびこれらの抗体による細胞の直接の処理は両方とも、タウ凝集体の形成を劇的に減少させることができる。
【0112】
抗体C10-2の治療的有用性も、ヒトタウ/PS1マウスにおいて評価された。このマウスモデルは、高齢期(12~18月齢)にのみAD病変を生じるさらなるAD疾患関連動物モデルである。しかしながら、マウスは、固体もつれ病変の発生前にタウ過リン酸化を示す。マウスに、15mg/kgの用量を週に2回、13週間にわたって長期的に注入した。抗体で処理されたマウスは、リン酸化タウの劇的な減少を示し、これは、抗体C10-2による長期治療が、もつれ病変、ひいてはその後のインビボの神経変性を減少させることを示す。
【0113】
本発明の抗体は、免疫枯渇方法によってrTg4510マウス脳抽出物から過リン酸化タウを特異的に除去する。さらに、本発明の抗体は、ホモジネートから正常なタウを除去しない一方、市販のタウ5抗体は正常なタウを除去する。残基404または残基404および396の両方においてリン酸化されるタウタンパク質に結合する市販の抗体と対照的に、本発明の抗体は、セリン396においてリン酸化される過リン酸化タウを95%だけ特異的に除去する。実験(実施例12)は、本発明の抗体が、脳ホモジネート中の総タウのごくわずかな部分(8%)のみを除去するにもかかわらず、抗体は、過リン酸化タウを(90%だけ)特異的に除去することを実証する。したがって、本発明の一態様は、病原性過リン酸化タウに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。さらに、過リン酸化タウを、本発明の抗体を用いて除去した実験において、シーディング活性がなくされた。ホモジネートから過リン酸化タウを除去することによって、ホモジネートは、タウ病変のシーディングをもはや誘発しない。シーディングの減少は、もつれ形成の発生およびアルツハイマー病を含むタウオパチーの進行を軽減することが提示されている。したがって、本発明のさらなる態様は、ADまたはADの症状の進行の軽減に使用するための本発明の抗体に関する。
【0114】
抗体D55E
本発明の一態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体D55Eに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3。
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0115】
抗体D55Eに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖:
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0116】
抗体D55Eに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0117】
抗体D55Q
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体D55Qに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0118】
抗体D55Qに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0119】
抗体D55Qに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0120】
抗体D55S
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体D55Sに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0121】
抗体D55Sに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖および
(b)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0122】
抗体D55Sに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0123】
抗体D55S、抗体D55Q、抗体D55Eを用いた試験は、この残基の突然変異が、室温で長期間にわたる低pHでの処理の前および後に前記抗体を比較した際に、改変されていない結合特性を有する抗体をもたらすことを示し、これは、低pHで異性化が行われないこと、または任意の異性化タンパク質が、処理前と比較して改変されていない結合特性を有することを示す。
【0124】
抗体N32S
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32Sに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0125】
抗体N32Sに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0126】
抗体N32Sに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0127】
IMGT定義を用いた抗体N32Sの別の定義は、
(a)配列番号46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号47のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号48のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号43のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号44のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号45のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントである。
【0128】
Chotia定義を用いた抗体N32Sのさらに別の定義は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号52のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号53のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号54のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントである。
【0129】
図1から分かるように、抗体N32S(黒丸)のIC50は、抗体C10-2と比較して低下され:N32SのIC50は、44nMであると計算された。C10-2と比べたこの著しい改善は予測されなかった。
図1によって裏付けられるように、本発明の一態様は、シグナルが100nM以下の抗体の濃度で50%だけ減少されるように、本明細書に記載される流体相阻害アッセイにおいてAD-P3を阻害する抗体に関する。一実施形態において、本発明の抗体は、AD-P3捕捉についての流体相阻害アッセイに基づいて、例えば50nM以下、例えば0.1nM~50nMの濃度で、0.1nM~100nMのIC50を有する。
【0130】
抗体N32Sを用いて生成されるデータは、セリンに対して、抗体C10-2の軽鎖の、または抗体C10-2のLC CDR1の位置32における突然変異が、ペプチド阻害アッセイにおいて見かけの親和性(IC50)を高めることを示す。さらに、セリンまたはグルタミンに対して位置32における突然変異(抗体N32Sおよび抗体N32Q)は、
図20に示されるように、位置32および34の両方において脱アミド化をなくす。インビトロシーディングおよび凝集試験に関して決定される際の有効性が、N32SおよびN32Q変異体の両方において維持される。
【0131】
タンパク質バッチの不均一性につながり得る位置におけるC 10-2において潜在的に特定される潜在的な脱アミド化の可能性。C 10-2は、わずかな割合の高い見かけの親和性(2~5nM)および低い見かけの親和性での主要な結合(200~1000nM)によるAD-P3抗原への不均一な結合を示した(
図1)。不均一な結合は、脱アミド化されたおよび脱アミド化されていないC 10-2の異なる亜集団(subpopulation)を反映し得る。変異体が、置換(N32S)によって生成され、これが、脱アミド化を防止した。示されるように、C 10-2と比較して全体的に低下されたIC50(より高い見かけの親和性)によって示されるように、活性によって改善された結合。高い見かけの親和性タイプの均一な結合をもたらすさらなる置換A101Tを導入した。N32SおよびN32S-A101Tの両方における改善された結合活性は、より安定したかつ均一な抗体が、上述される突然変異によって得られたことを示唆する。
【0132】
抗体N32Q
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32Qに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0133】
抗体N32Qに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0134】
抗体N32Qに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0135】
記載されるように、抗体N32Sを用いて生成されたデータは、セリンに対する、抗体C10-2の軽鎖の、または抗体C10-2のLC CDR1の位置32における突然変異が、見かけの親和性(IC50)を高める一方、グルタミンに対する突然変異(抗体N32Q)は、改変されていない結合活性をもたらすことを示す。しかしながら、セリンまたはグルタミンに対する位置32における突然変異(抗体N32Sおよび抗体N32Q)は、
図20に示されるように、位置32および34の両方において脱アミド化をなくす。したがって、抗体N32Sおよび抗体N32Qの両方に対する利点がある。インビトロシーディングおよび凝集試験に関して決定される際の有効性が、N32SおよびN32Q変異体の両方において維持される。
【0136】
抗体N34S
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N34Sに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0137】
抗体N34Sに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0138】
抗体N34Sに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0139】
抗体N34Q
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N34Qに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0140】
抗体N34Qに関する本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0141】
抗体N34Qに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0142】
抗体N32S、N34S
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32S、N34Sに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0143】
抗体N32S、N34Sに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0144】
抗体N32S、N34Sに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0145】
抗体N32Q、N34S
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32Q、N34Sに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0146】
抗体N32Q、N34Sに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0147】
抗体N32Q、N34Sに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0148】
抗体N32Q、N34Q
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32Q、N34Qに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号37のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0149】
抗体N32Q、N34Qに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0150】
抗体N32Q、N34Qに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号37のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0151】
抗体N32S、N34Q
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32S、N34Qに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号38のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0152】
抗体N32S、N34Qに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0153】
抗体N32S、N34Qに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号38のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0154】
抗体A101T
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体A101Tに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0155】
抗体A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0156】
抗体A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0157】
抗体A101Tを用いて生成されたデータは、抗体C10-2の重鎖のまたは抗体C10-2の重鎖CR3の突然変異が、2倍増加したペプチド結合およびP3材料への10~20倍増加した結合をもたらすことを示す。さらに、A101T突然変異を含む変異体は、インビトロシーディングアッセイにおいて増加した有効性を有する。
【0158】
抗体N32S、A101T
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32S、A101Tに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0159】
抗体N32S、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0160】
抗体N32S、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0161】
IMGT定義を用いて、抗体N32S、A101Tは、
(a)配列番号46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号47のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号48のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号49のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号50のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号51のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントである。
【0162】
Chotia定義を用いて、抗体N32S、A101Tは、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号55のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号56のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号57のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントである。
【0163】
図1から分かるように、抗体N32S、A101T(白丸)のIC50は、抗体C10-2と比較して著しく低下され:N32S A101TのIC50は、14nMであると計算された。C10-2と比べたこの著しい改善は予測されなかった。
図1に基づいて、本発明の一態様は、100nM以下の抗体、例えば10nM~100nMの抗体の濃度で、例えば50nM以下、例えば10nM~50nMの抗体の濃度で、シグナルが50%だけ減少されるように、本明細書に記載される流体相阻害アッセイにおいてAD-P3を阻害する抗体に関する。
図20に示されるように、抗体N32S、A101は、脱アミド化に対して非常に安定している。
図19に示されるように、抗体N32S、A101Tは、凝集のより強い減少を示した。
【0164】
抗体N32Q、A101T
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32Q、A101Tに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0165】
抗体N32Q、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0166】
抗体N32Q、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0167】
抗体N32S、D55E
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32S、D55Eに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0168】
抗体N32S、D55Eに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0169】
抗体N32S、D55Eに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0170】
抗体N32Q、D55E
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N32Q、D55Eに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0171】
抗体N32Q、D55Eに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0172】
抗体N32Q、D55Eに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0173】
抗体N34S、A101T
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N34S、A101Tに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0174】
抗体N34S、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0175】
抗体N34S、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0176】
抗体N34Q、A101T
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体N34Q、A101Tに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0177】
抗体N34Q、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0178】
抗体N34Q、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0179】
抗体D55E、A101T
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体D55E、A101Tに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0180】
抗体D55E、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0181】
抗体D55E、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0182】
抗体D55Q、A101T
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体D55Q、A101Tに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0183】
抗体D55Q、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0184】
抗体D55Q、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0185】
抗体D55S、A101T
本発明の別の態様は、抗体C10-2の変異体抗体、抗体D55S、A101Tに関する。本発明のこの態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0186】
抗体D55S、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0187】
抗体D55S、A101Tに関する、別に定義される、本発明の態様のさらなる実施形態は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0188】
重鎖変異体および軽鎖変異体の組合せが予測され、例えば、軽鎖内の複数の変異体および/または重鎖内の複数の変異体、軽鎖内の単一の変異体と、重鎖内の単一または複数の変異体との組合せ、軽鎖内の複数の変異体と、重鎖内の複数の変異体との組合せが予測される。本発明の抗体は、好ましくは、
配列番号12(軽鎖C10-2);配列番号16(軽鎖変異体N32S);配列番号17(軽鎖変異体N32Q);配列番号18(軽鎖変異体N34S);配列番号19(軽鎖変異体N34Q);配列番号20(軽鎖変異体N32S、N34S);配列番号21(軽鎖変異体N32Q、N34S);配列番号22(軽鎖変異体N32Q、N34Q);および配列番号23(軽鎖変異体N32S、N34Q)からなる群から選択される軽鎖;および
配列番号11(重鎖C10-2);配列番号13(重鎖変異体D55E);配列番号14(重鎖変異体D55Q);配列番号15(重鎖変異体D55S);配列番号24(重鎖変異体A101T);配列番号25(重鎖変異体D55E、A101T);配列番号26(重鎖変異体D55Q、A101T)、および配列番号27(重鎖変異体D55S、A101T)からなる群から選択される重鎖を含む。
【0189】
一実施形態において、軽鎖が配列番号12である場合、重鎖は、配列番号13(重鎖変異体D55E);配列番号14(重鎖変異体D55Q);配列番号15(重鎖変異体D55S);配列番号24(重鎖変異体A101T);配列番号25(重鎖変異体D55E、A101T);配列番号26(重鎖変異体D55Q、A101T)、および配列番号27(重鎖変異体D55S、A101T)からなる群から選択される。別の実施形態において、重鎖が配列番号11である場合、軽鎖は、配列番号16(軽鎖変異体N32S);配列番号17(軽鎖変異体N32Q);配列番号18(軽鎖変異体N34S);配列番号19(軽鎖変異体N34Q);配列番号20(軽鎖変異体N32S、N34S);配列番号21(軽鎖変異体N32Q、N34S);配列番号22(軽鎖変異体N32Q、N34Q);および配列番号23(軽鎖変異体N32S、N34Q)からなる群から選択される。
【0190】
モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、好適には、
(a)配列番号3、配列番号31;配列番号32;配列番号33;配列番号34;配列番号35;配列番号36;配列番号37;および配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;(b)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;(c)配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;(d)配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;(e)配列番号7;配列番号28;配列番号29;および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;および(f)配列番号8、および配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0191】
変異体の組合せの興味深い実施形態は、抗体が、抗体N32S、A101T;抗体N32Q、A101T;抗体N32S、D55E;および抗体N32Q、D55E、好ましくは、抗体N32S、A101Tからなる群から選択されるものを含む。実施例から分かるように、抗体N32Sおよび抗体N32S、A101Tが、好ましい実施形態である。
【0192】
全体で、実施例は、C10-2を含む本発明の抗体が、AD-P3抗原被覆MSDプレートに効率的に結合することを示す。比較すると、PHF-13などの市販の抗体は、低い結合活性を有する。さらに、PHF-13は、本発明の抗体と比較してかなり高い程度の非特異的結合を示した。C10-2被覆プレートにおけるPタウ抗原捕捉のC10-2流体相阻害が有効である一方(IC50=10~20nM)、PHF-13は有効でない(IC50=500~1000nM)。
【0193】
本発明の一態様は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;および
(d)配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号24、配列番号25、配列番号26、および配列番号27からなる群から選択される重鎖
を含む抗体に関する。
【0194】
本発明の一態様は、
(a)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(b)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(c)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;および
(d)配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、および配列番号23からなる群から選択される軽鎖
を含む抗体に関する。
【0195】
本発明のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、典型的に、100nM以下の抗体、例えば10nM~100nMの抗体の濃度で、例えば50nM以下、例えば10nM~50nMの抗体の濃度で、シグナルが50%だけ減少されるように、流体相阻害アッセイにおいてAD-P3を阻害する。本発明のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、典型的に、アルツハイマー病の脳抽出物における免疫枯渇試験後のpS396タウのウエスタンブロットシグナルによれば、約75ngの抗体で、AD脳ホモジネートからセリン396においてリン酸化される少なくとも15%のタウを除去することが可能である。
【0196】
抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、好ましくは、ヒトまたはヒト化抗体である。
【0197】
上述される抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、一実施形態によれば、このような軽鎖および/または重鎖CDR1、CDR2またはCDR3の変異体(4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有する)をさらに含み得る。
【0198】
図18から分かるように、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3およびLC CDR3は、少なくとも一実施形態において、タウの392~398領域への結合のために重要である。本発明の一実施形態において、本発明の抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、本発明の一態様において、本発明は、タウペプチドのY394とともに、L3:H3、L3:F8
*、H1:H13、H2:Y1、H2:Y3によって形成される疎水性ポケットを形成する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。一実施形態において、本発明は、溶媒和
{p}S396およびL3:T4、H1:R10、H1:T11、H3:R1、H3:T3間の水素結合ネットワークの形成について本明細書にさらに記載される抗体と競合する抗体に関し;(
*)L3:F8は、CDR L3のフレームワーク残基に隣接するC末端である(
図11を参照)。
【0199】
X線結晶構造から分かるように、本発明の抗体は、2つのレベルの選択性で結合する。第1のレベルの選択性は、過リン酸化病理学的タウに対する選択性であり、第2のレベルの選択性は、リン酸化セリン残基に対する選択性であり、ここで、前記リン酸化セリンのホスフェートが、前記リン酸化セリンからの1つの残基に分断されたチロシン残基の側鎖に水素結合される。したがって、本発明の興味深い態様は、モチーフが単一の残基によって隔てられたリン酸化セリン残基およびチロシン残基を含む過リン酸化タウのアミノ酸モチーフに対して選択的なモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。典型的に、アミノ酸モチーフは、配列:
Y-X-S(リン酸化)-P-
を有し、ここで、Yがチロシンであり、Xが天然アミノ酸であり、Pがプロリンであり、S(リン酸化)が、リン酸化ヒドロキシル側鎖を有するセリンである。
【0200】
同様に、本発明の興味深い態様は、リン酸化タウ、好ましくは、過リン酸化タウに結合する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関し、ここで、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、アミノ酸残基モチーフIAに対して選択的であり、ここで、Rが、天然アミノ酸の側鎖である。
【化2】
【0201】
特定の理論によって制約されるものではないが、アミノ酸モチーフIAが病理学的タウによって取られる立体配座にあるとき、本発明の抗体が、前記モチーフに対して選択的であると考えられる。したがって、アミノ酸モチーフIAは、典型的に、本発明の抗体によって選択的に認識される配列である。したがって、本発明の興味深い態様は、リン酸化タウ、好ましくは、過リン酸化タウに結合する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関し、ここで、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、アミノ酸残基モチーフIAに対して選択的であり、ここで、Rが、天然アミノ酸の側鎖である。
【0202】
本発明のこの態様の典型的な実施形態において、本発明は、リン酸化タウ、好ましくは、過リン酸化タウに結合する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関し、ここで、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、アミノ酸残基モチーフIBに対して選択的であり、ここで、Rが、限定はされないがICまたはIDなどの天然アミノ酸の側鎖である。
【化3】
【0203】
本発明の一態様において、本発明の抗体のHC CDR1領域、Asp Arg Thr Ile His(配列番号7)は、過リン酸化タウのモチーフIA~IDと相互作用する。
【0204】
図18から分かるように、本発明のこの態様において、HC CDR1における2つの連続する荷電残基、すなわち、アスパラギン酸およびアルギニンの存在は、標的化されたタウエピトープ内のモチーフとの水素結合において役割を果たし、ここで、抗体は、モチーフが単一の残基によって隔てられたリン酸化セリン残基およびチロシン残基を含む過リン酸化タウのアミノ酸モチーフに対して選択的である。したがって、本発明の一態様は、リン酸化タウ、好ましくは、過リン酸化タウに結合する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関し、ここで、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、アミノ酸残基モチーフIA~IDに対して選択的であり、ここで、抗体は、アスパラギン酸およびアルギニンなどの2つの連続する荷電アミノ酸残基を含むHC CDR1領域を含む。本発明のこの態様のさらなる代替例において、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、過リン酸化タウに結合し、ここで、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、セリン396およびチロシン394を含むエピトープに対して選択的であり、ここで、PO4基は、前記セリン396およびチロシン394のうちの一方とともに共有結合を形成し、セリン396およびチロシン394のうちの他方とともに水素結合を形成し、ここで、抗体は、アスパラギン酸およびアルギニンなどの2つの連続する荷電残基を含むHC CDR1領域を含む。HC CDR1領域の荷電アミノ酸残基は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択されてもよく、ここで、前記残基の少なくとも1つが、アスパラギン酸またはアルギニンであり、好ましくは、一方の荷電残基がアルギニンであり、他方がアスパラギン酸である。
【0205】
本発明のこの態様のさらなる実施形態において、2つの連続する荷電アミノ酸残基の一方または両方が、好ましくは、トレオニンおよびチロシンから選択される極性アミノ酸残基によって隣接される。さらに、2つの連続する荷電アミノ酸残基の一方または両方の一方または両方が、極性残基-疎水性残基-極性残基の3-アミノ酸残基モチーフによって隣接される。
【0206】
一実施形態において、HC CDR1は、5-残基モチーフ極性AA-疎水性AA-極性AA-荷電AA-荷電AAを含み、ここで、前記残基の少なくとも1つが、アスパラギン酸またはアルギニンであり、好ましくは、一方の荷電残基がアルギニンであり、他方がアスパラギン酸である。好ましくは、5-残基モチーフは、モチーフ極性AA-疎水性AA-極性AA-Asp-Argを有する。より好ましくは、HC CDR1の5-残基モチーフは、配列Thr-Phe-Thr-Asp-Argを有する。
【0207】
本発明の抗体のHC CDR1が、S396およびY394の間の静電相互作用に関与するリン酸基との水素結合に関与する2つの連続する荷電アミノ酸残基の両側にモチーフ極性-疎水性-極性-荷電を含むことに留意するのが興味深い。したがって、好ましい実施形態において、本発明のHC CDR1は、パリンドローム8-残基モチーフ極性AA-疎水性AA-極性AA-荷電AA-荷電AA-極性AA-疎水性AA-極性AAを含む。好ましくは、HC CDR1の8-残基モチーフは、モチーフThr-Phe-Thr-Asp-Arg-極性AA-疎水性AA-極性AAを含む。より好ましくは、HC CDR1の8-残基モチーフは、モチーフThr-Phe-Thr-Asp-Arg-Thr-Ile-Hisを含む。
【0208】
一実施形態において、抗体は、セリン396およびチロシン394を含む過リン酸化タウの残基392~398内のエピトープを認識し、ここで、セリン396は、リン酸化され、抗体は、2つの連続する荷電アミノ酸残基を含むHC CDR1領域を含む。好ましい実施形態において、抗体は、セリン396およびチロシン394を含む過リン酸化タウの残基392~398内のエピトープを認識し、ここで、セリン396は、リン酸化され、抗体は、5-残基モチーフ極性AA-疎水性AA-極性AA-荷電AA-荷電AAを含むHC CDR1領域を含む。より好ましい実施形態において、抗体は、セリン396およびチロシン394を含む過リン酸化タウの残基392~398内のエピトープを認識し、ここで、セリン396は、リン酸化され、抗体は、モチーフ極性AA-疎水性AA-極性AA-荷電AA-荷電AA-極性AA-疎水性AA-極性AAを含むHC CDR1領域を含む。
【0209】
さらなる好ましい実施形態において、抗体は、本明細書において定義されるHC CDR1領域および少なくとも2つの荷電残基を含む6-残基モチーフを含むHC CDR3領域を含む。
【0210】
本発明は、患者におけるタウもつれ形成を減少させる方法であって、このような治療を必要とする患者に、治療的に有効な量の本発明の抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを投与する工程を含む方法も提供する。
【0211】
本発明の一態様は、本発明の抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを用いてタウオパチーを治療する方法に関する。典型的に、タウオパチーは、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ピック病、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位型老年性認知症、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、脳卒中、脳卒中の回復、パーキンソン病に関連する神経変性、染色体に関連するパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病(Lytico-Bodig disease)(グアムパーキンソン認知症複合)、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病およびリポフスチン沈着症からなる群から選択される。より典型的に、タウオパチーは、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、およびピック病からなる群から選択される。特に、タウオパチーは、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、およびレビー小体型認知症の患者の精神医学的症状から選択され得る。
【0212】
したがって、本発明のさらなる態様は、タウオパチーの治療に使用するための、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。典型的に、タウオパチーは、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ピック病、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位型老年性認知症、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、脳卒中、脳卒中の回復、パーキンソン病に関連する神経変性、染色体に関連するパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病(グアムパーキンソン認知症複合)、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病およびリポフスチン沈着症からなる群から選択される。より典型的に、タウオパチーは、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、およびピック病からなる群から選択される。特に、タウオパチーは、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはアパシー、およびレビー小体型認知症の患者の精神医学的症状から選択され得る。
【0213】
本発明の一態様は、i)タウ抗体およびii)以下のものからなる群から選択される化合物
a)BACE阻害剤;
b)能動または受動タウ免疫療法に有用な化合物;
c)能動または受動Aβペプチド免疫療法に有用な化合物;
d)NMDA受容体拮抗薬;
e)さらなるタウタンパク質凝集阻害剤;
e)アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;
f)抗てんかん薬;
g)抗炎症薬;および
h)SSRI
の投与を含む治療法に関する。
【0214】
本発明のさらなる態様は、i)タウ抗体およびii)以下のものからなる群から選択される化合物
a)BACE阻害剤;
b)能動または受動タウ免疫療法に有用な化合物;
c)能動または受動Aβペプチド免疫療法に有用な化合物;
d)NMDA受容体拮抗薬;
e)さらなるタウタンパク質凝集阻害剤;
e)アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;
f)抗てんかん薬;
g)抗炎症薬;および
h)SSRI
を含む組成物に関する。
【0215】
本発明のさらなる態様は、i)タウ抗体を含む組成物およびii)以下のものからなる群から選択される化合物組成物
a)BACE阻害剤;
b)能動または受動タウ免疫療法に有用な化合物;
c)能動または受動Aβペプチド免疫療法に有用な化合物;
d)NMDA受容体拮抗薬;
e)さらなるタウタンパク質凝集阻害剤;
f)アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;
g)抗てんかん薬;
h)抗炎症薬;および
i)抗うつ剤
を含むキットに関する。
【0216】
a)BACE 1阻害剤と組み合わされるタウ抗体
この治療法では、本発明の組成物またはキット、タウ抗体は、BACE 1阻害剤と組み合わされ得る。BACE1阻害剤は、LY2886721、MK-8931、AZD3293、またはE2609などの小分子BACE I阻害剤であり得る。
【0217】
さらなる実施形態において、BACE 1阻害剤は、式I
【化4】
(式中、Arが、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリルからなる群から選択され、ここで、Arが、ハロゲン、CN、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6フルオロアルキルまたはC1~C6アルコキシから選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換され;R1が、1つまたは複数の水素、ハロゲン、C1~C3フルオロアルキルまたはC1~C3アルキルであり;R2が、水素またはフルオロを表す)のものである。
【0218】
式Iの例示的な化合物としては、以下のものが挙げられる。
【化5】
(3S,6S)-6-(5-アミノ-2-フルオロフェニル)-3-フルオロ-3-(フルオロメチル)-6-メチルピペリジン-2-チオン
【化6】
(3R,6S)-6-(5-アミノ-2-フルオロフェニル)-3-フルオロ-3-(フルオロメチル)-6-メチルピペリジン-2-チオン
【化7】
(3S,6S)-6-(5-アミノ-2,3-ジフルオロフェニル)-3-フルオロ-3-(フルオロメチル)-6-メチルピペリジン-2-チオン
【化8】
(3R,6S)-6-(5-アミノ-2,3-ジフルオロフェニル)-3-フルオロ-3-(フルオロメチル)-6-メチルピペリジン-2-チオン
【化9】
(6S)-6-(5-アミノ-2-フルオロフェニル)-3-フルオロ-3,6-ビス(フルオロメチル)ピペリジン-2-チオン
【0219】
さらに、好適なBACE 1阻害剤は、式II
【化10】
(式中、Arが、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,4-トリアゾリル、チオフェニル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、フラザニルおよび1,2,4-チアジアゾリルからなる群から選択され、ここで、Arが、1つまたは複数のハロゲン、CN、C
1~C
6アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
6フルオロアルキルまたはC
1~C
6アルコキシで任意選択的に置換され;R
1が、C
1~C
3アルキルまたはC
1~C
3フルオロアルキルであり;R
2が、水素、ハロゲン、C
1~C
3フルオロアルキルまたはC
1~C
3アルキルであり;R
3がC
1~C
3アルキルである)のものであり得る。
【0220】
式IIのBACE 1阻害剤の例示的な化合物としては、N-(3-((2R,5S)-6-アミノ-3,3,5-トリフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4フルオロフェニル)-5-フルオロピコリンアミド;N-(3-((2R,5S)-6-アミノ-3,3,5-トリフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4フルオロフェニル)-5-メトキシピラジン-2-カルボキサミド;N-(3-((2R,5S)-6-アミノ-3,3,5-トリフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピコリンアミド;N-(3-((2R,5S)-6-アミノ-3,3,5-トリフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4フルオロフェニル)-5-シアノ-3-メチルピコリンアミド;およびN-(3-((2R,5R)-6-アミノ-3,3,5-トリフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4フルオロフェニル)-5-(ジフルオロメチル)ピラジン-2-カルボキサミドからなる群から選択される化合物が挙げられる。
【0221】
他のBACE阻害剤は、下式
【化11】
(式中、Arが、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリルからなる群から選択され、ここで、Arが、ハロゲン、CN、C
1~C
6アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
6フルオロアルキルまたはC
1~C
6アルコキシから選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換され;
R
1が、1つまたは複数の水素、ハロゲン、C
1~C
3フルオロアルキルまたはC
1~C
3アルキルであり;
R
2が、水素またはフルオロを表す);
またはその薬学的に許容できる塩から選択され得る。
【0222】
例えば、
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピコリンアミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピコリンアミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-シアノ-3-メチルピコリンアミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-クロロピコリンアミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピラジン-2-カルボキサミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサゾール-4-カルボキサミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-4-ブロモ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-4-メチルチアゾール-2-カルボキサミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-2-(ジフルオロメチル)オキサゾール-4-カルボキサミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-1-(ジフルオロメチル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(ジフルオロメチル)ピラジン-2-カルボキサミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-4-クロロベンズアミド;
N-(3-((2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-フルオロピコリンアミド;
N-(3-((2S,5R)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピコリンアミド;
N-[3-[(2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4,5-ジフルオロ-フェニル]-5-フルオロ-ピリジン-2-カルボキサミド;
N-[3-[(2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4,5-ジフルオロ-フェニル]-5-メトキシ-ピリジン-2-カルボキサミド;
N-[3-[(2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4,5-ジフルオロ-フェニル]-5-メトキシ-ピラジン-2-カルボキサミド;
N-[3-[(2S,5R)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4,5-ジフルオロ-フェニル]-5-フルオロ-ピリジン-2-カルボキサミド;
N-[3-[(2S,5R)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4,5-ジフルオロ-フェニル]-5-メトキシ-ピリジン-2-カルボキサミド;
N-[3-[(2S,5R)-6-アミノ-5-フルオロ-5-(フルオロメチル)-2-メチル-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4,5-ジフルオロ-フェニル]-5-メトキシ-ピラジン-2-カルボキサミド;
N-[3-[(2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-2,5-ビス(フルオロメチル)-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4-フルオロ-フェニル]-5-フルオロ-ピリジン-2-カルボキサミド;
N-[3-[(2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-2,5-ビス(フルオロメチル)-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4-フルオロ-フェニル]-5-メトキシ-ピリジン-2-カルボキサミド;
N-[3-[(2S,5S)-6-アミノ-5-フルオロ-2,5-ビス(フルオロメチル)-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4-フルオロ-フェニル]-5-メトキシ-ピラジン-2-カルボキサミド;
N-[3-[(2S,5R)-6-アミノ-5-フルオロ-2,5-ビス(フルオロメチル)-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4-フルオロ-フェニル]-5-フルオロ-ピリジン-2-カルボキサミド;
N-[3-[(2S,5R)-6-アミノ-5-フルオロ-2,5-ビス(フルオロメチル)-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4-フルオロ-フェニル]-5-メトキシ-ピリジン-2-カルボキサミドおよび
N-[3-[(2S,5R)-6-アミノ-5-フルオロ-2,5-ビス(フルオロメチル)-3,4-ジヒドロピリジン-2-イル]-4-フルオロ-フェニル]-5-メトキシ-ピラジン-2-カルボキサミド
などの化合物;
または前記化合物の薬学的に許容できる塩。
【0223】
他のBACE阻害剤は、下式
【化12】
(式中、Arが、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリルおよびイソオキサゾリルからなる群から選択され、ここで、Arが、1つまたは複数のハロゲン、CN、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6フルオロアルキルまたはC1~C6アルコキシで任意選択的に置換され;
R1およびR2が、独立して、水素、ハロゲン、C1~C3フルオロアルキルまたはC1~C3アルキルである)のもの;
またはその薬学的に許容できる塩であり得る。
【0224】
例えば、
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-クロロピコリンアミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-フルオロピコリンアミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピラジン-2-カルボキサミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-1-(ジフルオロメチル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-2-(ジフルオロメチル)オキサゾール-4-カルボキサミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-シアノピコリンアミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサゾール-4-カルボキサミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピリミジン-2-カルボキサミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(ジフルオロメチル)ピラジン-2-カルボキサミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4,5-ジフルオロフェニル)-2-メチルオキサゾール-4-カルボキサミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4,5-ジフルオロフェニル)-5-メトキシピラジン-2-カルボキサミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4,5-ジフルオロフェニル)-5-フルオロピコリンアミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4,5-ジフルオロフェニル)-5-クロロピコリンアミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4,5-ジフルオロフェニル)-5-シアノピコリンアミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4,5-ジフルオロフェニル)-5-メトキシピコリンアミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4,5-ジフルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピコリンアミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4,5-ジフルオロフェニル)-5-シアノ-3-メチルピコリンアミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピコリンアミド(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-ブロモピコリンアミド
(S)-N-(3-(6-アミノ-3,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-ブロモピコリンアミド
などの化合物
または前記化合物の薬学的に許容できる塩。
【0225】
他のBACE化合物は、下式
【化13】
(式中、Arが、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリルからなる群から選択され、ここで、Arが、ハロゲン、CN、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6フルオロアルキルまたはC1~C6アルコキシから選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換され;
R1が、水素、ハロゲン、C1~C3フルオロアルキルまたはC1~C3アルキルである);
またはその薬学的に許容できる塩からのものであり得る。
【0226】
化合物は、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-クロロピコリンアミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-フルオロピコリンアミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピラジン-2-カルボキサミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサゾール-4-カルボキサミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピコリンアミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(ジフルオロメチル)ピラジン-2-カルボキサミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-シアノピコリンアミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-4-メチルチアゾール-2-カルボキサミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピリミジン-2-カルボキサミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシ-3-メチルピラジン-2-カルボキサミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-シアノ-3-メチルピコリンアミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-ブロモピコリンアミド、
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピコリンアミドおよび
(S)-N-(3-(6-アミノ-2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピラジン-2-カルボキサミド;
または前記化合物の薬学的に許容できる塩であり得る。
【0227】
他のBACE阻害剤は、下式
【化14】
(式中、Arが、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリルからなる群から選択され、ここで、Arが、ハロゲン、CN、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6フルオロアルキルまたはC1~C6アルコキシから選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換され;
R1が、1つまたは複数の水素、ハロゲン、C1~C3フルオロアルキルまたはC1~C3アルキルである)のもの;
またはその薬学的に許容できる塩であり得る。
【0228】
化合物は、
N-(3-((2R,3S,5S)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-フルオロピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5S)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピラジン-2-カルボキサミド、
N-(3-((2R,3S,5S)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-フルオロピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピラジン-2-カルボキサミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサゾール-4-カルボキサミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-クロロピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)ピラジン-2-カルボキサミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-4-メチルチアゾール-2-カルボキサミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-2-(ジフルオロメチル)オキサゾール-4-カルボキサミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-1-(ジフルオロメチル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(ジフルオロメチル)ピラジン-2-カルボキサミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-4-クロロベンズアミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-シアノピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5R)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4,5-ジフルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5S)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5S)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピラジン-2-カルボキサミド、
N-(3-((2R,3S,5S)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-シアノ-3-メチルピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5S)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4,5-ジフルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピコリンアミド、
N-(3-((2R,3R,5S)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-(メトキシ-d3)ピコリンアミド、
N-(3-((2R,3S,5S)-6-アミノ-3,5-ジフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-ブロモピコリンアミド
または前記化合物の薬学的に許容できる塩であり得る。
【0229】
b)N3PGLU Aβ抗体と組み合わされるタウ抗体
この治療法では、本発明の組成物またはキット、タウ抗体は、N3PGLU Aβ抗体と組み合わされ得る。
【0230】
c)能動または受動Aβペプチド免疫療法に有用な化合物と組み合わされるタウ抗体
この治療法では、本発明の組成物またはキット、タウ抗体は、能動または受動Aβペプチド免疫療法に有用な化合物と組み合わされ得る。
【0231】
d)NMDA受容体拮抗薬と組み合わされるタウ抗体
この治療法では、本発明の組成物またはキット、タウ抗体は、NMDA受容体拮抗薬と組み合わされ得る。NMDA受容体拮抗薬は、メマンチン、ナメンダ、ナムザリック(メマンチン/ドネペジル)、およびそのジェネリック形態からなる群から選択され得る。NMDA受容体拮抗薬は、抗精神病薬から選択され得る。シナプス前ニューロンは、ネガティブフィードバック機構を介して過剰なグルタメート放出を妨げるが、このような機構は、ADなどの、細胞ストレスの条件下で損なわれる。シナプス間隙における過剰なグルタメートは、シナプス後カルシウムチャネルを持続的に開かせて、ニューロン内の細胞内カルシウムレベルの増加を招き、深刻な神経損傷および/または死を引き起こす。過剰なカルシウム流入の条件下で、NMDA受容体に拮抗することによって、抗精神病薬は、ニューロン中へのカルシウムの過剰な流入を減少させて、細胞損傷を減少させ、正常な神経シグナル伝達、ひいては認知機能を改善する。
【0232】
e)さらなるタウタンパク質凝集阻害剤と組み合わされるタウ抗体;
この治療法では、本発明の組成物またはキット、タウ抗体は、タウタンパク質凝集阻害剤と組み合わされ得る。
【0233】
f)アセチルコリンエステラーゼ阻害剤と組み合わされるタウ抗体
この治療法では、本発明の組成物またはキット、タウ抗体は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)と組み合わされ得る。AChEIは、軽度から中度のADの認知症状のための第一選択治療として使用されることが多い。この亜集団に認められるドネペジルを含むAChEIはまた、中度から重度のADを処置するために広く使用される。AChEIは、AD患者において観察されるコリン作動性欠損を軽減し、日常活動を行う患者の能力を改善する。一実施形態において、本発明は、本明細書において定義されるタウ抗体、およびアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含む治療法を含む。
【0234】
一実施形態において、AChEIは、ドネペジル、ガランタミンおよびリバスチグミンからなる群から選択される。AChEIは、経口錠剤、ゼリー、シロップ、または他の形態の経口溶液製剤であり得る。AChEIはまた、経皮投与用のパッチであり得る。
【0235】
g)抗てんかん薬と組み合わされるタウ抗体;
この治療法では、本発明の組成物またはキット、タウ抗体は、抗てんかん薬と組み合わされ得る。
【0236】
h)抗炎症薬と組み合わされるタウ抗体;
この治療法では、本発明の組成物またはキット、タウ抗体は、抗炎症薬と組み合わされ得る。
【0237】
i)抗うつ剤と組み合わされるタウ抗体
この治療法では、本発明の組成物またはキット、タウ抗体は、抗うつ剤と組み合わされ得る。
【0238】
うつ病は、AD認知症の一般的な初期の併存症状である。三環系抗うつ剤は、かつてはADの抑うつ症状のための好ましい治療であったが、SSRIが、これらの薬剤に大部分取って代わった。一実施形態において、エスシタロプラムが、その好ましい副作用プロファイルおよび最小の薬物相互作用のためADのためによく処方されるため、抗うつ剤である。さらなる実施形態において、シタロプラムまたはセルトラリンが、同様によく使用されるため、抗うつ剤である。さらなる実施形態において、ボルチオキセチンが、MDDに罹患している患者における認知能力の改善および神経系への効能(neural efficacy)のイメージング証拠(imaging evidence)に関連しているため、抗うつ剤である。抗うつ剤は、エスシタロプラム、セルトラリン、シタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファクシン、トラゾドン、ミルタザピン、ボルチオキセチンおよびそのジェネリック形態からなる群から選択され得る。
【0239】
本発明のさらなる態様は、薬学的に許容できる担体、希釈剤、補助剤および/または安定剤と一緒に組成物中の、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに関する。本発明の抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントは、タウオパチーの治療のための療法に使用され得る。典型的に、タウオパチーは、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ピック病、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位型老年性認知症、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、脳卒中、脳卒中の回復、パーキンソン病に関連する神経変性、染色体に関連するパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病(グアムパーキンソン認知症複合)、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病およびリポフスチン沈着症からなる群から選択される。より典型的に、タウオパチーは、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、およびピック病からなる群から選択される。特に、タウオパチーは、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、およびレビー小体型認知症の患者の精神医学的症状から選択され得る。
【0240】
本発明によって想定される治療は、長期であってもよく、患者は、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれ以上治療され得る。
【0241】
本発明の抗体は、例えば、Kohler et al.,Nature 256,495(1975)によって最初に記載されているハイブリドーマ方法によって産生されるモノクローナル抗体であってもよく、または組み換えDNAもしくは他の方法によって産生されるモノクローナル抗体であってもよく、またはより好ましくは、本明細書に開示される新規な方法によって産生され得る。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al.,Nature 352,624-628(1991)およびMarks et al.,J.MoI.Biol.222,581-597(1991)に記載されている技術を用いて、抗体ファージディスプレイライブラリーから単離され得る。モノクローナル抗体は、任意の好適な源から得られる。したがって、例えば、モノクローナル抗体は、例えば、表面において抗原を発現する細胞、または該当する抗原をコードする核酸の形態で、該当する抗原で免疫されたマウスから得られるマウス脾臓Bリンパ球細胞から調製されるハイブリドーマから得られる。モノクローナル抗体はまた、免疫されたヒトまたは非ヒト哺乳動物(ラット、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、霊長類など)の抗体発現細胞に由来するハイブリドーマから得られる。
【0242】
一実施形態において、本発明の抗体は、ヒト抗体である。タウに対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の部分を有するトランスジェニックまたは導入染色体マウスを用いて生成され得る。このようなトランスジェニックおよび染色体導入マウスは、本明細書においてそれぞれHuMAb(ヒトモノクローナル抗体)マウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明細書においてまとめて「トランスジェニックマウス」と呼ばれる。
【0243】
HuMAbマウスは、内因性μおよびK鎖遺伝子座を不活性化する標的突然変異と一緒に、再配列されていないヒト重鎖可変および定常(μおよびY)ならびに軽鎖可変および定常(κ)鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座(minilocus)を含む(Lonberg,N.et al.,Nature 368,856-859(1994))。したがって、マウスは、マウスIgMまたはIgKの減少した発現を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子が、クラススイッチおよび体細胞突然変異を起こして、高親和性ヒトIgG、κモノクローナル抗体を生成する(Lonberg,N.et al.(1994)、上記参照;Lonberg,N.,Handbook of Experimental Pharmacology 113,49-101(1994)、Lonberg,N.and Huszar,D.,Intern.Rev.Immunol.Vol.13 65-93(1995)およびHarding,F.and Lonberg,N.,Ann.N.Y.Acad.Sci 764 536-546(1995)に概説されている)。HuMAbマウスの作製は、Taylor,L.et al.,Nucleic Acids Research 20,6287-6295(1992)、Chen,J.et al.,International Immunology 5,647-656(1993)、Tuaillon et al.,J.Immunol.152,2912-2920(1994)、Taylor,L.et al.,International Immunology 6,579-591(1994)、Fishwild,D.et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に詳細に記載されている。米国特許第5,545,806号明細書、米国特許第5,569,825号明細書、米国特許第5,625,126号明細書、米国特許第5,633,425号明細書、米国特許第5,789,650号明細書、米国特許第5,877,397号明細書、米国特許第5,661,016号明細書、米国特許第5,814,318号明細書、米国特許第5,874,299号明細書、米国特許第5,770,429号明細書、米国特許第5,545,807号明細書、国際公開第98/24884号パンフレット、国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22645号パンフレット、国際公開第92/03918号パンフレットおよび国際公開第01/09187号パンフレットも参照されたい。
【0244】
HCo7、HCo12、HCo17およびHCo20マウスは、それらの内因性軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているように)、それらの内因性重鎖遺伝子におけるCMD破壊(国際公開第01/14424号パンフレットの実施例1に記載されているように)、およびKCo5ヒトκ軽鎖導入遺伝子(Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように)を有する。さらに、HCo7マウスは、HCo7ヒト重鎖導入遺伝子(米国特許第5,770,429号明細書に記載されているように)を有し、HCo12マウスは、HCo12ヒト重鎖導入遺伝子(国際公開第01/14424号パンフレットの実施例2に記載されているように)を有し、HCo17マウスは、HCo17ヒト重鎖導入遺伝子(国際公開第01/09187号パンフレットの実施例2に記載されているように)を有し、HCo20マウスは、HCo20ヒト重鎖導入遺伝子を有する。得られるマウスは、内因性マウス重鎖およびκ軽鎖遺伝子座の破壊のためにバックグラウンドのホモ接合体においてヒト免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖導入遺伝子を発現する。
【0245】
KMマウス株において、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているようにホモ接合的に破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、国際公開第01/09187号パンフレットの実施例1に記載されているようにホモ接合的に破壊されている。このマウス株は、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を保有する。このマウス株は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されているように、染色体14フラグメントhCF(SC20)から構成されるヒト重鎖導入染色体も保有する。HCo12-Balb/c、HCo17-Balb/cおよびHCo20-Balb/cマウスは、国際公開第09/097006号パンフレットに記載されているように、HCo12、HCo17およびHCo20を、KCo5[J/K](Balb)に交差させることによって生成され得る。
【0246】
rTg4510マウスは、突然変異体タウ導入遺伝子発現に対する時間的および空間的制御を提供する公知のタウオパチーモデルである。KMマウス株において、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているようにホモ接合的に破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、国際公開第01/09187号パンフレットの実施例1に記載されているようにホモ接合的に破壊されている。このマウス株は、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を保有する。このマウス株は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されているように、染色体14エピトープ結合フラグメントhCF(SC20)から構成されるヒト重鎖導入染色体も保有する。
【0247】
これらのトランスジェニックマウスに由来する脾細胞は、周知の技術にしたがって、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成するのに使用され得る。本発明のヒトモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、または他の種に由来する本発明の抗体はまた、該当する免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列についてトランスジェニックな別の非ヒト哺乳動物または植物の生成、および回収可能な形態での抗体の産生によって遺伝子導入的に生成され得る。哺乳動物におけるトランスジェニック産生に関連して、抗体は、ヤギ、ウシ、または他の哺乳動物の乳汁中で産生され、それから回収され得る。例えば米国特許第5,827,690号明細書、米国特許第5,756,687号明細書、米国特許第5,750,172号明細書および米国特許第5,741,957号明細書を参照されたい。
【0248】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプのものであり得る。アイソタイプの選択は、典型的に、ADCC誘導などの所望のエフェクター機能によって導かれる。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、κまたはλのいずれかが使用され得る。必要に応じて、本発明の抗タウ抗体のクラスは、公知の方法によってスイッチされ得る。例えば、元はIgMであった本発明の抗体は、本発明のIgG抗体にクラススイッチされ得る。さらに、クラススイッチ技術は、あるIgGサブクラスを別のIgGサブクラスに、例えばIgGlからIgG2に変換するのに使用され得る。したがって、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療的使用のために、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体へのアイソタイプスイッチによって変更され得る。一実施形態において、本発明の抗体は、IgG1抗体、例えばIgG1、κである。抗体は、そのアミノ酸配列が、他のアイソタイプと比べてそのアイソタイプに最も相同性が高い場合、特定のアイソタイプのものであるといわれる。
【0249】
一実施形態において、本発明の抗体は、完全長抗体、好ましくは、IgG抗体、特に、IgG1、κ抗体である。別の実施形態において、本発明の抗体は、抗体エピトープ結合フラグメントまたは一本鎖抗体である。
【0250】
抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、例えば従来の技術を用いたエピトープ結合断片化によって得られ、エピトープ結合フラグメントは、全抗体について本明細書に記載されるのと同じように有用性についてスクリーニングされ得る。例えば、F(ab’)2エピトープ結合フラグメントは、抗体をペプシンで処理することによって生成され得る。得られるF(ab’)2エピトープ結合フラグメントは、ジスルフィド架橋を還元するように処理されて、Fab’エピトープ結合フラグメントを生成し得る。Fabエピトープ結合フラグメントはIgG抗体をパパインで処理することによって得られ;Fab’エピトープ結合フラグメントは、IgG抗体のペプシン消化により得られる。F(ab’)エピトープ結合フラグメントはまた、チオエーテル結合またはジスルフィド結合により、以下に記載されるFab’を結合することによって生成され得る。Fab’エピトープ結合フラグメントは、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる抗体エピトープ結合フラグメントである。Fab’-エピトープ結合フラグメントは、F(ab’)2エピトープ結合フラグメントを、ジチオスレイトールなどの還元剤で処理することによって得られる。抗体エピトープ結合フラグメントはまた、組み換え細胞におけるこのようなエピトープ結合フラグメントをコードする核酸の発現によって生成され得る(例えばEvans et al.,J.Immunol.Meth.184、123-38(1995)を参照)。例えば、F(ab’)2エピトープ結合フラグメントの一部をコードするキメラ遺伝子は、このような切断された抗体エピトープ結合フラグメント分子を生成するために、H鎖のCH1領域およびヒンジ領域をコードするDNA配列、続いて翻訳停止コドンを含み得る。
【0251】
一実施形態において、抗タウ抗体は、一価抗体、好ましくは、ヒンジ領域の欠失を有する国際公開第2007059782号パンフレット(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている一価抗体である。したがって、一実施形態において、抗体は、一価抗体であり、前記抗タウ抗体は、i)前記一価抗体の軽鎖をコードする核酸構築物を提供する工程であって、前記構築物が、選択された抗原特異的抗タウ抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列およびIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする前記ヌクレオチド配列およびIgのCL領域をコードする前記ヌクレオチド配列が、作動可能に一緒に連結され、IgG1サブタイプの場合、CL領域をコードするヌクレオチド配列は、ポリクローナルヒトIgGの存在下でまたは動物もしくはヒトに投与されるとき、CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとともにジスルフィド結合または共有結合を形成することが可能なアミノ酸をCL領域が含まないように修飾されている工程と;ii)前記一価抗体の重鎖をコードする核酸構築物を提供する工程であって、前記構築物が、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列およびヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、CH領域をコードするヌクレオチド配列は、ヒンジ領域に対応する領域および、Igサブタイプによって必要とされるように、CH3領域などのCH領域の他の領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下でまたは動物ヒトに投与されるとき、ヒトIgのCH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとともに、ジスルフィド結合または共有結合または安定した非共有重鎖間結合の形成に関与するアミノ酸残基を含まないように修飾されており、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードする前記ヌクレオチド配列および前記IgのCH領域をコードする前記ヌクレオチド配列が、作動可能に一緒に連結される工程と;iii)前記一価抗体を生成するために細胞発現系を提供する工程と;iv)(iii)の細胞発現系の細胞内で(i)および(ii)の核酸構築物を共発現することによって、前記一価抗体を生成する工程とを含む方法によって構築される。
【0252】
同様に、一実施形態において、本発明の抗タウ抗体は、
(i)本明細書に記載される本発明の抗体の可変領域または前記領域のエピトープ結合部分、および
(ii)免疫グロブリンのCH領域またはCH2およびCH3領域を含むその領域
を含む一価抗体であり、ここで、CH領域またはその領域は、ヒンジ領域に対応する領域および、免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合、CH3領域などのCH領域の他の領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCH領域とともにジスルフィド結合を形成するか、または同一のCH領域とともに他の共有結合または安定した非共有重鎖間結合を形成することが可能なアミノ酸残基を含まないように修飾されている。
【0253】
さらなる実施形態において、本発明の一価抗体の重鎖は、ヒンジ領域全体が欠失しているように修飾されている。
【0254】
別のさらなる実施形態において、前記一価抗体の配列は、それがN結合型グリコシル化のための受容体部位を含まないように修飾されている。
【0255】
本発明は、抗タウ結合領域(例えば、抗タウモノクローナル抗体のタウ結合領域)が、2つ以上のエピトープを標的にする二価または多価二重特異性骨格の一部である「二重特異性抗体」も含む(例えば、第2のエピトープは、二重特異性抗体が、血液脳関門などの生物学的障壁を越える改良されたトランスサイトーシスを示し得るように、活性な輸送受容体のエピトープを含み得る)。したがって、別のさらなる実施形態において、抗タウ抗体の一価Fabは、異なるタンパク質を標的にするさらなるFabまたはscfvに結合されて、二重特異性抗体を生成し得る。二重特異性抗体は、二重機能、例えば抗タウ結合領域によって与えられる治療機能、および血液脳関門などの生物学的障壁を越える輸送を促進するために受容体分子に結合し得る輸送機能を有し得る。
【0256】
本発明の抗体、およびそのエピトープ結合フラグメントは、一本鎖抗体も含む。一本鎖抗体は、重鎖および軽鎖Fv領域が結合されたペプチドである。一実施形態において、本発明は、本発明の抗タウ抗体のFvにおける重鎖および軽鎖が、ペプチド一本鎖において(典型的に、約10、12、15つまたはそれ以上のアミノ酸残基の)フレキシブルペプチドリンカーと結合される一本鎖Fv(scFv)を提供する。このような抗体を産生する方法が、例えば米国特許第4,946,778号明細書、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)、Bird et al.,Science 242,423-426(1988)、Huston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)およびMcCafferty et al.,Nature 348,552-554(1990)に記載されている。一本鎖抗体は、単一のVHおよびVLのみが使用される場合、一価であり、2つのVHおよびVLが使用される場合、二価であり、または3つ以上のVHおよびVLが使用される場合、多価であり得る。
【0257】
本明細書に記載される抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、任意の好適な数の修飾アミノ酸の包含によって修飾され得るおよび/またはこのような共役置換基との結合によって修飾され得る。これに関連する適合性は、一般に、非誘導体化親抗タウ抗体に関連するタウ選択性および/または抗タウ特異性を少なくとも実質的に保持する能力によって決定される。1つまたは複数の修飾アミノ酸の包含は、例えば、ポリペプチド血清半減期を増加させ、ポリペプチド抗原性を低下させ、またはポリペプチド貯蔵安定性を増加させるのに有利であり得る。アミノ酸は、例えば、組み換え産生の際に翻訳と同時に(co-translationally)もしくは翻訳後に(post-translationally)修飾されるか(例えば、哺乳類細胞における発現の際のN-X-S/TモチーフにおけるN結合型グリコシル化)または合成手段によって修飾される。修飾アミノ酸の非限定的な例としては、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、プレニル化(例えば、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸などが挙げられる。アミノ酸の修飾の当業者の指針となるのに十分な言及は、文献全体を通して十分にある。例のプロトコルが、Walker(1998)Protein Protocols On CD-Rom,Humana Press,Totowa,NJに見られる。修飾アミノ酸は、例えば、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸、または有機誘導化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択され得る。
【0258】
本発明の抗体およびそのエピトープ結合フラグメントはまた、例えばそれらの血中半減期を増加させるために、ポリマーへの共有結合によって化学修飾され得る。例示的なポリマー、およびそれらをペプチドに結合するための方法が、例えば米国特許第4,766,106号明細書、米国特許第4,179,337号明細書、米国特許第4,495,285号明細書および米国特許第4,609,546号明細書に示されている。さらなる例示的なポリマーとしては、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)(例えば、約1,000~約40,000、例えば約2,000~約20,000、例えば、約3,000~12,000g/molの分子量を有するPEG)が挙げられる。
【0259】
本発明の抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、診断法においてまたは画像診断用リガンドとしてさらに使用され得る。
【0260】
一実施形態において、1つまたは複数の放射性標識アミノ酸を含む本発明の抗体およびそのエピトープ結合フラグメントが提供される。放射性標識抗タウ抗体は、診断および治療目的の両方に使用され得る(放射性標識分子への結合は、別の考えられる特徴である)。このような標識の非限定的な例としては、限定はされないが、ビスマス(213Bi)、炭素(11C、13C、14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co、60Co)、銅(64Cu)、ジスプロシウム(165Dy)、エルビウム(169Er)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、金(198Au)、ホルミウム(166Ho)、水素(3H)、インジウム(111In、112In、113In、115In)、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、イリジウム(192Ir)、鉄(59Fe)、クリプトン(81mKr)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、窒素(13N、15N)、酸素(15O)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、カリウム(42K)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルビジウム(81Rb、82Rb)、ルテニウム(82Ru、97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ナトリウム(24Na)、ストロンチウム(85Sr、89Sr、92Sr)、硫黄(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、スズ(113Sn、117Sn)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb、177Yb)、イットリウム(90Y)、亜鉛(65Zn)およびジルコニウム(89Zr)が挙げられる。ジルコニウム(89Zr)が特に興味深い。放射性標識アミノ酸および関連するペプチド誘導体を調製するための方法は、当該技術分野において公知である(例えばJunghans et al.,Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686(2nd edition,Chafner and Longo,eds.,Lippincott Raven(1996))ならびに米国特許第4,681,581号明細書、米国特許第4,735,210号明細書、米国特許第5,101,827号明細書、米国特許第5,102,990号明細書(米国再発行特許第35,500号明細書)、米国特許第5,648,471号明細書および米国特許第5,697,902号明細書を参照)。例えば、放射性同位体が、クロラミンT法によって結合され得る(Lindegren,S.et al.(1998)“Chloramine-T In High-Specific-Activity Radioiodination Of Antibodies Using N-Succinimidyl-3-(Trimethylstannyl)Benzoate As An Intermediate”,Nucl.Med.Biol.25(7):659-665;Kurth,M.et al.(1993)“Site-Specific Conjugation Of A Radioiodinated Phenethylamine Derivative To A Monoclonal Antibody Results In Increased Radioactivity Localization In Tumor”,J.Med.Chem.36(9):1255-1261;Rea,D.W.et al.(1990)“Site-specifically radioiodinated antibody for targeting tumors”,Cancer Res.50(3 Suppl):857s-861s)。
【0261】
本発明は、蛍光標識(希土類キレート(例えば、ユウロピウムキレート)など)、フルオレセイン型標識(例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン)、ローダミン型標識(例えば、ALEXA FLUOR(登録商標)568(Invitrogen)、TAMRA(登録商標)またはダンシルクロリド)、VIVOTAG 680 XL FLUOROCHROME(商標)(Perkin Elmer)、フィコエリトリン;ウンベリフェロン、Lissamine;シアニン;フィコエリトリン、Texas Red、BODIPY FL-SE(登録商標)(Invitrogen)またはそれらの類似体(これらは全て、光学的検出に好適である)を用いて検出可能に標識される抗タウ抗体およびそのエピトープ結合フラグメントも提供する。化学発光標識が、用いられてもよい(例えば、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびイクオリン)。このような診断および検出はまた、本発明の診断用分子を、限定はされないが、様々な酵素、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む酵素を含む検出可能な物質に、または限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族複合体に結合することによって行われ得る。
【0262】
化学発光標識が、用いられてもよい(例えば、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびイクオリン)。このような診断および検出はまた、本発明の診断用分子を、限定はされないが、様々な酵素、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む酵素を含む検出可能な物質に、または限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族複合体に結合することによって行われ得る。常磁性標識も用いられ得、好ましくは、ポジトロン放出型断層撮影法(PET)または単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)を用いて検出される。このような常磁性標識としては、限定はされないが、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、イリジウム(Ir)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(M)、ネオジム(Nd)、オスミウム(Os)、酸素(O)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、サマリウム(Sm)、ナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、タングステン(W)、およびジルコニウム(Zi)、特に、Co+2、CR+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、Fe+3、Ga+3、Mn+3、Ni+2、Ti+3、V+3、およびV+4の常磁性イオン、様々なポジトロン放出型断層撮影法を用いたポジトロン放出金属、および非放射性常磁性金属イオンを含有する化合物が挙げられる。
【0263】
したがって、一実施形態において、本発明の抗タウ抗体またはそのタウ結合フラグメントは、蛍光標識、化学発光標識、常磁性標識、放射性同位体標識または酵素標識で標識され得る。フラグメントの標識抗体は、被験体の脳における前記タウの存在または量を検出または測定するのに使用され得る。この方法は、前記タウに結合された抗タウ抗体またはタウ結合フラグメントのインビボイメージングの検出または測定を含んでもよく、前記タウに結合された前記抗タウ抗体またはタウ結合フラグメントのエクスビボイメージングを含み得る。
【0264】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体またはそのタウ結合フラグメントの1つまたは複数のポリペプチド鎖をコードする発現ベクターに関する。このような発現ベクターは、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの組み換え産生に使用され得る。
【0265】
本発明の文脈における発現ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクター、および合成核酸ベクター(好適な組の発現制御要素を含む核酸配列)を含む、任意の好適なDNAまたはRNAベクターであり得る。このようなベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組合せに由来するベクター、およびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが挙げられる。一実施形態において、抗タウ抗体コード核酸は、例えば、線形発現要素(linear expression element)(例えば、Sykes and Johnston,Nat Biotech 12,355-59(1997)に記載されているように)、圧縮(compacted)核酸ベクター(例えば米国特許第6,077,835号明細書および/または国際公開第00/70087号パンフレットに記載されているように)、pBR322、pUC 19/18、またはpUC 118/119、「ミッジ(midge)」最小サイズ核酸ベクターなどのプラスミドベクター(例えば、Schakowski et al.,MoI Ther 3,793-800(2001)に記載されているように)を含む裸のDNAまたはRNAベクターにおいて、またはCaPO4沈殿構築物などの沈殿核酸ベクター構築物(例えば、国際公開第00/46147号パンフレット、Benvenisty and Reshef,PNAS USA 83,9551-55(1986)、Wigler et al.,Cell 14,725(1978)、およびCoraro and Pearson,Somatic Cell Genetics 2,603(1981)に記載されているように)として含まれる。このような核酸ベクターおよびその使用法は、当該技術分野において周知である(例えば米国特許第5,589,466号明細書および米国特許第5,973,972号明細書を参照)。
【0266】
一実施形態において、ベクターは、細菌細胞における本発明の抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの発現に好適である。このようなベクターの例としては、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster,J Biol Chem 264,5503-5509(1989))、pETベクター(Novagen,Madison,WI)など)などの発現ベクターが挙げられる。
【0267】
発現ベクターは、さらにまたは代わりに、酵母系における発現に好適なベクターであり得る。酵母系における発現に好適な任意のベクターが用いられてもよい。好適なベクターとしては、例えば、α因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHなどの構成的または誘導性プロモータを含むベクターが挙げられる(F.Ausubel et al.,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley InterScience New York(1987)、Grant et al.,Methods in Enzymol 153,516-544(1987)、Mattanovich,D.et al.Methods Mol.Biol.824,329-358(2012)、Celik,E.et al.Biotechnol.Adv.30(5),1108-1118(2012)、Li,P.et al.Appl.Biochem.Biotechnol.142(2),105-124(2007)、Boeer,E.et al.Appl.Microbiol.Biotechnol.77(3),513-523(2007)、van der Vaart,J.M.Methods Mol.Biol.178,359-366(2002)、およびHolliger,P.Methods Mol.Biol.178,349-357(2002)に概説されている)。
【0268】
本発明の発現ベクターにおいて、抗タウ抗体コード核酸は、任意の好適なプロモータ、エンハンサー、および他の発現促進要素を含むかまたはそれらと結合され得る。このような要素の例としては、強力な発現プロモータ(例えば、ヒトCMV IEプロモータ/エンハンサーならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモータ)、有効なポリ(A)終止配列、大腸菌(E.coli)におけるプラスミド産物の複製起点、選択可能なマーカーとしての抗生物質抵抗性遺伝子、および/または好都合なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)が挙げられる。核酸は、CMV IEなどの構成的プロモータとは対照的に誘導性プロモータも含み得る(当業者は、このような用語が、実際に、特定の条件下における遺伝子発現の程度の記述語であることを認識するであろう)。
【0269】
さらに他の態様において、本発明は、本明細書に定義される本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントまたは本明細書に定義される本発明の二重特異性分子を産生するトランスフェクトーマ(transfectoma)などの、組み換え真核生物または原核生物宿主細胞に関する。宿主細胞の例としては、酵母、細菌、および哺乳類細胞(CHOまたはHEK細胞など)が挙げられる。例えば、一実施形態において、本発明は、本発明の抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの発現のための配列コードを含む細胞ゲノムに安定に組み込まれた核酸を含む細胞を提供する。別の実施形態において、本発明は、本発明の抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの発現のための配列コードを含む、プラスミド、コスミド、ファージミド、または線形発現要素などの、融合されていない核酸を含む細胞を提供する。
【0270】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗タウ抗体を産生するための方法であって、a)本明細書において上述されるように本発明のハイブリドーマまたは宿主細胞を培養する工程と、b)培地から本発明の抗体を精製する工程とを含む方法に関する。
【0271】
一実施形態において、本発明は、調製物であって、このような用語が本明細書において使用される際、本明細書に定義される抗タウ抗体を含み、タウに結合することが可能でないかまたは調製物の抗タウ機能性を実質的に変更しない自然発生する抗体を実質的に含まない調製物に関する。したがって、このような調製物は、自然発生する血清、またはこのような血清の精製誘導体を包含せず、抗タウ抗体と、調製物の抗タウ抗体の機能性を変更しない別の抗体との混合物を含み、ここで、このような機能性は、
(i)非リン酸化タウに結合することが実質的にできないこと;
(ii)S404においてリン酸化され、S396においてリン酸化されないタウに結合することが実質的にできないこと;
(iii)S396においてリン酸化されるタウに結合する能力;
(iv)S396およびS404の両方においてリン酸化されるタウに結合する能力;
(v)それがリン酸化404残基に結合することが実質的にできないように、リン酸化タウ残基S396およびS404を選択的に区別する能力;
(vi)ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウに結合する能力;
(vii)病理学的および非病理学的ヒトタウタンパク質を区別する能力;および/または
(viii)本明細書に記載されるように、トランスジェニックマウスに由来する免疫枯渇されたrTg4510抽出物とともに使用されるとき、過リン酸化タウ64kDaおよび70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%超減少させない能力または本明細書に記載されるように、ヒトAD死後脳に由来する抽出物とともに使用されるとき、S396リン酸化過リン酸化タウバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、非過リン酸化タウバンドを10%超減少させない能力
である。
【0272】
本発明は、特に、天然抗タウ抗体の構造と比べてそのアミノ酸配列の構造変化を(そのCDR、可変領域、フレームワーク残基および/または定常領域のいずれかに)有するこのような抗タウ抗体の調製物であって、前記構造変化により、抗タウ抗体が、前記天然抗タウ抗体によって示される機能性と比べて著しく変化した機能性(すなわち、機能性の20%超の相違、40%超の相違、60%超の相違、80%超の相違、100%超の相違、150%超の相違、2倍超の相違、4倍超の相違、5倍超の相違、または10倍超の相違)を示し;ここで、このような機能性は、
(i)非リン酸化タウに結合することが実質的にできないこと;
(ii)S404においてリン酸化され、S396においてリン酸化されないタウに結合することが実質的にできないこと;
(iii)S396においてリン酸化されるタウに結合する能力;
(iv)S396およびS404の両方においてリン酸化されるタウに結合する能力;
(v)それがリン酸化404残基に結合することが実質的にできないように、リン酸化タウ残基S396およびS404を選択的に区別する能力;
(vi)ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウに結合する能力;
(vii)病理学的および非病理学的ヒトタウタンパク質を区別する能力;および/または
(viii)本明細書に記載されるように、トランスジェニックマウスに由来する免疫枯渇されたrTg4510抽出物とともに使用されるとき、過リン酸化タウ64kDaおよび70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%超減少させない能力;または本明細書に記載されるように、ヒトAD死後脳に由来する抽出物とともに使用されるとき、S396リン酸化過リン酸化タウバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、非過リン酸化タウバンドを10%超減少させない能力
であり、特に、このような変化した機能性は、構造変化の結果であり、したがってそれと切り離すことができない。
【0273】
自然発生する抗体を「実質的に含まない」という用語は、このような調製物におけるこのような自然発生する抗体の、または調製物のタウ結合特性を実質的に変更しないこのような調製物におけるある濃度のこのような自然発生する抗体の包含の完全な非存在を指す。抗体は、それが自然発生する対応物を有さないか、またはそれを自然に伴う成分から分離もしくは精製されている場合、「単離」されているといわれる。
【0274】
「自然発生する抗体」という用語は、それがこのような調製物に関する場合、生きたヒトまたは他の動物内で、それらの免疫系の機能の自然な結果として誘発される抗体(自然発生する自己抗体を含む)を指す。
【0275】
したがって、本発明の調製物は、抗タウ抗体およびタウによって保有されないエピトープに結合することが可能な意図的に加えられるさらなる抗体を含有するこのような調製物を除外せず、実際は明確にそれを包含する。このような調製物は、特に、調製物が、アルツハイマー病(AD)、嗜銀顆粒病(AGD)、進行性核上性まひ(PSP)、および大脳皮質基底核変性症(CBD)を治療する際に向上した有効性を示すその実施形態を含む。さらに、本発明は、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、およびレビー小体型認知症の患者の精神医学的症状の治療に使用することが意図された、抗タウ抗体抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを含有する調製物に関する。さらに、本発明の調製物は、脳卒中、脳卒中の回復、パーキンソン病に関連する神経変性の治療に使用され得る、抗タウ抗体抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを含有する。
【0276】
さらに他の態様において、本発明は、
(i)本明細書に定義されるタウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメント、または調製物であって、このような用語が本明細書において定義される際、このような抗タウ抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む調製物、および
(ii)薬学的に許容できる担体
を含む医薬組成物に関する。
【0277】
医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,2013に開示されているものなどの従来の技術にしたがって、薬学的に許容できる担体または希釈剤ならびに任意の他の公知の補助剤および賦形剤とともに製剤化され得る。
【0278】
薬学的に許容できる担体または希釈剤ならびに任意の他の公知の補助剤および賦形剤は、本発明の選択された化合物および選択された投与方法に好適であるべきである。医薬組成物の担体および他の成分のための適合性は、本発明の選択された化合物または医薬組成物の所望の生物学的特性に対する大きな悪影響がないことに基づいて決定される(例えば、エピトープ結合に対するそれほど大きくない影響(10%以下の相対的阻害、5%以下の相対的阻害など))。
【0279】
本発明の医薬組成物は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、洗浄剤(例えば、Tween-20またはTween-80などの非イオン性洗浄剤)、安定剤(例えば、糖またはタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、組織固定剤、可溶化剤、および/または医薬組成物に含めるのに好適な他の材料も含み得る。希釈剤は、組合せの生物学的活性に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液である。さらに、医薬組成物または製剤は、他の担体、または非毒性の、非治療的、非免疫原性安定剤なども含み得る。組成物は、タンパク質、キトサンのような多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えば、ラテックス機能化(latex functionalized)セファロース、アガロース、セルロースなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)などの、大型のゆっくりと代謝される高分子も含み得る。
【0280】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、および投与方法に対する所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変化され得る。選択された投与量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、またはそのアミド、投与経路、投与時期、用いられる特定の化合物の排せつ速度、治療期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、病態、全体的な健康および過去の病歴、ならびに医療分野において周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に応じて決まる。
【0281】
医薬組成物は、予防的および/または治療的処置のための非経口、局所、経口または経鼻手段を含む、任意の好適な経路および方法によって投与され得る。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、非経口的に投与される。本明細書において使用される際の「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、通常、注射による、腸内および局所投与以外の投与方法を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外および胸骨内注射および注入を含む。
【0282】
インビボおよびインビトロで本発明の化合物を投与するさらなる好適な経路が、当該技術分野において周知であり、当業者によって選択され得る。
【0283】
一実施形態において、その医薬組成物は、静脈内または皮下注射または注入によって投与される。
【0284】
薬学的に許容できる担体としては、本発明の化合物と生理学的に適合性の、あらゆる好適な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが挙げられる。
【0285】
本発明の医薬組成物に用いられ得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油、およびゴマ油などの植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントガムおよび注射可能な有機酸エステル(オレイン酸エチルなど)、および/または様々な緩衝液が挙げられる。他の担体が、医薬品分野において周知である。
【0286】
薬学的に許容できる担体は、滅菌注射用溶液または分散体の即時調製用の滅菌水溶液または分散体および滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が想定される。
【0287】
適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散体の場合、所要の粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0288】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる酸化防止剤、例えば(1)水溶性酸化防止剤(アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);(2)油溶性酸化防止剤(パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど);および(3)金属キレート剤(クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)も含み得る。
【0289】
本発明の医薬組成物は、組成物中に糖類、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトール、グリセロールなど)または塩化ナトリウムなどの等張剤も含み得る。
【0290】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物の保存可能期間または有効性を向上させ得る、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤または緩衝液などの、選択された投与経路に適切な1つまたは複数の補助剤も含有し得る。本発明の化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤などの速放性から化合物を保護する担体とともに調製され得る。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性、生体適合性ポリマー(エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸など)を単独でまたはワックスまたは当該技術分野において周知の他の材料とともに含み得る。このような製剤の調製のための方法は、一般に、当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0291】
一実施形態において、本発明の化合物は、インビボでの適切な分配を確実にするように製剤化され得る。非経口投与用の薬学的に許容できる担体は、滅菌注射用溶液または分散体の即時調製用の滅菌水溶液または分散体および滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が想定される。補助的な活性化合物も、組成物に組み込まれ得る。
【0292】
注射用の医薬組成物は、典型的に、製造および貯蔵の条件下で、滅菌性かつ安定性でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬剤濃度に好適な他の規則構造として製剤化され得る。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、および注射可能な有機酸エステル(オレイン酸エチルなど)を含有する、水性または非水性溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体の場合、所要の粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール(グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収が、抗体の吸収を遅らせる物質、例えば、一ステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされ得る。滅菌注射用溶液は、例えば上に列挙されるような成分の1つまたは組合せを含む適切な溶媒中に所要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて、その後の滅菌精密ろ過によって調製され得る。一般に、分散体は、塩基性分散媒および例えば上に列挙される成分からの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0293】
滅菌注射用溶液は、上に列挙されるような成分の1つまたは組合せを含む適切な溶媒中に所要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて、その後の滅菌精密ろ過によって調製され得る。一般に、分散体は、塩基性分散媒および上に列挙される成分からの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0294】
治療の上記の方法および本明細書に記載される使用における投与計画は、最適な望ましい反応(例えば、治療反応)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、いくつかの分割量が、時間をかけて投与されてもよく、または用量が、治療状況の要件によって示されるように比例的に減少または増加されてもよい。非経口組成物は、投与のしやすさおよび投与の均一性のために単位剤形で製剤化され得る。本明細書において使用される際の単位剤形は、治療される被験体のための統一された投与量として適した物理的に別個の単位を指し;各単位は、所要の医薬担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の独自の特性および得られる具体的な治療効果、ならびに(b)個体における敏感性(sensitivity)の治療のためのこのような活性化合物の配合の技術分野に固有の制限に左右され、それらに直接依存する。
【0295】
本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの有効投与量および投与計画は、治療される疾患または病態に応じて決まり、当業者によって決定され得る。いずれの日も所定の投与量が投与され、投与量は、約0.0001~約100mg/kg、より通常は約0.01~約5mg/kg宿主体重の範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重または1~10mg/kg体重の範囲内であり得る。したがって、例示的な投与量としては、約0.1~約10mg/kg/体重、約0.1~約5mg/kg/体重、約0.1~約2mg/kg/体重、約0.1~約1mg/kg/体重、例えば約0.15mg/kg/体重、約0.2mg/kg/体重、約0.5mg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約1.5mg/kg/体重、約2mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、または約10mg/kg/体重が挙げられる。
【0296】
当該技術分野において通常の技能を有する医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師は、医薬組成物に用いられる本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの用量を、所望の治療効果を得るために必要とされるより少ないレベルから開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加し得る。一般に、本発明の組成物の好適な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最低用量である化合物の量であろう。このような有効用量は、一般に、上述される要因に応じて決まる。投与は、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下投与であり得る。必要に応じて、医薬組成物の有効1日用量は、任意選択的に単位剤形で、1日を通して適切な間隔で、別々に投与される2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の分割用量として投与され得る。本発明の化合物は、単独で投与されることが可能であるが、上述されるように医薬組成物として化合物を投与するのが好ましい。
【0297】
本発明の標識抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、疾患または障害を検出、診断、または監視するために、診断目的で使用され得る。本発明は、限定はされないが、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、進行性核上性まひ(PSP)、および大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む、神経変性または認知疾患または障害の検出または診断を提供し、(a)タウに特異的に結合する1つまたは複数の抗体を用いて、被験体の細胞または組織試料内のピログルタミル化Aβフラグメントの存在を測定する工程と;(b)抗原のレベルを、制御レベル、例えば正常な組織試料におけるレベルと比較し、それによって、抗原の制御レベルと比較した、抗原の測定レベルの増加が、疾患または障害を示すか、または疾患または障害の重症度を示す工程を含む。
【0298】
本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、当該技術分野において周知の免疫組織化学法を用いて、生物学的試料内のタウまたはタウのフラグメントを測定するのに使用され得る。タンパク質を検出するのに有用な他の抗体ベースの方法としては、酵素結合免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)およびメソスケールディスカバリープラットフォーム(mesoscale discovery platform)ベースのアッセイ(MSD)などの免疫測定法が挙げられる。好適な抗体標識が、このようなキットおよび方法に使用され得、当該技術分野において公知の標識としては、酵素標識(アルカリホスファターゼおよびグルコースオキシダーゼなど);放射性同位体標識(ヨウ素(125I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)、およびテクネチウム(99mTc)など);および発光標識(ルミノールおよびルシフェラーゼなど);および蛍光標識(フルオレセインおよびローダミンなど)が挙げられる。
【0299】
標識抗タウ抗体またはそれらのタウ結合フラグメントの存在は、診断目的で、インビボで検出され得る。一実施形態において、診断は、a)有効量のこのような標識分子を被験体に投与する工程;b)投与後、所定の時間間隔にわたって待機して、標識分子を、Aβ堆積の部位(もしあれば)で濃縮させ、非結合標識分子が、バックグラウンドレベルになるまで除去されるのを可能にする工程;c)バックグラウンドレベルを決定する工程;およびd)バックグラウンドレベルを超える標識分子の検出が、被験体が疾患または障害に罹患していることを示すか、または疾患または障害の重症度を示すように、被験体中の標識分子を検出する工程を含む。このような実施形態によれば、分子は、当業者に公知の特定のイメージングシステムを用いた検出に好適なイメージング部分で標識される。バックグラウンドレベルは、検出された標識抗体の量を、特定のイメージングシステムのために予め決定された標準値と比較することを含む、当該技術分野において公知の様々な方法によって決定され得る。本発明の診断法に使用され得る方法およびシステムとしては、限定はされないが、コンピュータ断層撮影法(CT)、ポジトロン放出型断層撮影法(PET)などの全身スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、および超音波検査法が挙げられる。
【0300】
さらなる態様において、本発明は、治療に使用するための、本明細書に定義されるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
【0301】
さらなる態様において、本発明は、タウオパチーを治療、診断またはイメージングするのに使用するための、本明細書に定義されるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
【0302】
さらなる態様において、本発明は、アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、進行性核上性まひ(PSP)、および大脳皮質基底核変性症(CBD)を治療するのに使用するための、本明細書に定義されるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
【0303】
さらなる態様において、本発明は、タウオパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造に使用するための、本明細書に定義されるモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
【0304】
好ましくは、薬剤は、アルツハイマー病(AD)、嗜銀顆粒病(AGD)、進行性核上性まひ(PSP)、および大脳皮質基底核変性症(CBD)、最も好ましくは、アルツハイマー病(AD)を治療するためのものである。薬剤はまた、好ましくは、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、およびレビー小体型認知症の患者の精神医学的症状の治療のためのものである。
【0305】
さらなる態様において、本発明は、被験体におけるアルツハイマー病または他のタウオパチーを治療、診断またはイメージングする方法であって、本明細書に定義される薬剤モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを、有効量で前記被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0306】
好ましい実施形態において、治療は、長期であり、好ましくは、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれ以上にわたる。
【0307】
さらなる態様において、本発明は、治療に使用するための、本明細書に定義される抗体、またはそのフラグメントを含むキットを提供する。
【0308】
実施形態の一覧
1.抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、残基396がリン酸化されないとき、残基404においてリン酸化される配列番号1に実質的に結合しないように、ヒトタウ(配列番号1)のリン酸化残基396に特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0309】
2.モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントが、例えば50nM以下、例えば0.1nM~50nMの濃度で、100nM以下、例えば0.1nM~100nMのIC50を有するように、流体相阻害アッセイにおいてAD-P3を阻害する、実施形態1に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0310】
3.アルツハイマー病の脳抽出物における免疫枯渇試験後のpS396タウのウエスタンブロットシグナルによれば、約75ngの抗体でアルツハイマー病の脳ホモジネートからセリン396においてリン酸化される少なくとも15%のタウを除去することが可能である、実施形態1または2のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0311】
4.
(a)配列番号3、配列番号31;配列番号32;配列番号33;配列番号34;配列番号35;配列番号36;配列番号37;配列番号38;配列番号40;および配列番号46からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(b)配列番号4;配列番号41;および配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
(c)配列番号5;配列番号42;および配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(d)配列番号6;配列番号43;配列番号49;配列番号52;および配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
(e)配列番号7;配列番号28;配列番号29;配列番号30;配列番号44;配列番号50;配列番号53;および配列番号56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;および
(f)配列番号8、配列番号39;配列番号45;配列番号51;配列番号54;および配列番号57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0312】
5.
(a)配列番号12;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号19;配列番号20;配列番号21;配列番号22および配列番号23からなる群から選択される軽鎖;および
(b)配列番号11;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号24;配列番号25;配列番号26;および配列番号27からなる群から選択される重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0313】
6.
(a)軽鎖が配列番号12であり;
(b)重鎖が、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号24、配列番号25、配列番号26および配列番号27からなる群から選択される、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0314】
7.
(a)軽鎖が、配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号19;配列番号20;配列番号21;配列番号22および配列番号23からなる群から選択され;
(b)重鎖が配列番号11である、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0315】
8.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0316】
9.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖:
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0317】
10.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0318】
11.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0319】
12.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0320】
13.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0321】
14.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0322】
15.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0323】
16.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0324】
17.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0325】
18.
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0326】
19.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0327】
20.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0328】
21.
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0329】
22.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0330】
23.
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0331】
24.
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0332】
25.
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0333】
26.
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0334】
27.
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0335】
28.
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0336】
29.
(a)配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0337】
30.
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0338】
31.
(a)配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0339】
32.
(a)配列番号36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0340】
33.
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0341】
34.
(a)配列番号36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0342】
35.
(a)配列番号37のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0343】
36.
(a)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0344】
37.
(a)配列番号37のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0345】
38.
(a)配列番号38のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0346】
39.
(a)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0347】
40.
(a)配列番号38のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0348】
41.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0349】
42.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0350】
43.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つを含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0351】
44.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0352】
45.
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0353】
46.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0354】
47.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0355】
48.
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0356】
49.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0357】
50.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0358】
51.
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0359】
52.
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0360】
53.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0361】
54.
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0362】
55.
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0363】
56.
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0364】
57.
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0365】
58.
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0366】
59.
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0367】
60.
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0368】
61.
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含み;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
のうちの少なくとも1つをさらに含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0369】
62.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0370】
63.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0371】
64.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0372】
65.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0373】
66.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0374】
67.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0375】
68.
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0376】
69.
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、実施形態1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0377】
70
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含み;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
をさらに含む、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0378】
71.モチーフが単一の残基によって隔てられたリン酸化セリン残基およびチロシン残基を含む過リン酸化タウのアミノ酸モチーフに対して選択的である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0379】
72.アミノ酸モチーフが、配列:
-Y-X-S(リン酸化)-P-
を有し、ここで、Yがチロシンであり、Xが天然アミノ酸であり、Pがプロリンであり、S(リン酸化)が、リン酸化ヒドロキシル側鎖を有するセリンである、実施形態71に記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0380】
73.Fc領域を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0381】
74.薬剤の生体内半減期を増加させるための部分をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0382】
75.i)抗体は、非リン酸化タウに実質的に結合しない;ii)抗体は、396がリン酸化されないとき、404においてリン酸化されるタウに実質的に結合しない;iii)抗体は、396においてリン酸化されるタウに結合する;およびiv)抗体は、396および404が両方ともリン酸化されるとき、タウに結合するという試験基準にしたがって、リン酸化残基396を含むヒトタウに特異的に結合する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0383】
76.2N4Rタウの残基386~408をカバーするTDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)内の少なくとも18連続アミノ酸残基、例えば少なくとも20連続アミノ酸残基を含む二リン酸化ペプチドに対して誘導される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0384】
77.2N4Rタウの残基386~410をカバーするTDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)を含む18~40、例えば18~30、例えば20~30連続アミノ酸残基を含む二リン酸化ペプチドに対して誘導される、実施形態76に記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0385】
78.月齢をマッチさせた健常対照よりAD罹患患者に由来するリン酸化タウ(pタウ)に対する特異性を有するモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであって、前記モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、リン酸化-および多量体特異的Setup 1 ELISAを用いて、ADおよび健常対照被験体に由来する脳ホモジネート中のリン酸化タウ(pタウ)を検出するためのELISAベースのアッセイにおいて健常対照材料と比較したAD疾患材料に対する特異性の50倍超、例えば100倍超の増加の、月齢をマッチさせた健常対照に由来するタウよりAD罹患患者に由来するリン酸化タウ(pタウ)に対する特異性の差を有するようになっている、実施形態1~70のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0386】
79.AD罹患タウに対する特異性を有するモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであって、前記モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、リン酸化-および多量体特異的Setup 1 ELISAを用いて、ADおよび健常対照被験体に由来する脳ホモジネート中のリン酸化タウ(pタウ)を検出するためのELISAベースのアッセイにおいて健常対照材料と比較したAD疾患材料に対する特異性の50倍超、例えば100倍超の増加の、月齢をマッチさせた健常対照よりADに対する特異性の差を有するようになっている、実施形態78に記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0387】
80.ヒトタウのリン酸化残基396に特異的に結合することが可能な、2N4Rタウ、またはそのエピトープ結合フラグメントの残基386~410をカバーする二リン酸化ペプチド:TDHGAEIVYK{p}SPVVSGDT{p}SPRHL(配列番号2)に対して誘導される、実施形態1~70のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0388】
81.ヒト細胞株、非ヒト哺乳動物細胞株、昆虫、酵母または細菌細胞株などの細胞株において、または組み換え技術によって生産または製造された、実施形態1~70のいずれかに記載の抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0389】
82.CHO細胞株、HEK細胞株、BHK-21細胞株、マウス細胞株(骨髄腫細胞株など)、線維肉腫細胞株、PER.C6細胞株、HKB-11細胞株、CAP細胞株およびHuH-7ヒト細胞株において生産される、実施形態81に記載の抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0390】
83.前記モノクローナル抗体が、i)リン酸化エピトープS396に対して特異的であり、かつii)ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウを特異的に認識するクローンを単離するために、ヒト病理学的および非病理学的タウでハイブリドーマをスクリーニングすることによって単離されたハイブリドーマによって発現され、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、病理学的および非病理学的ヒトタウタンパク質を区別することができる、実施形態1~70のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0391】
84.抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、検出可能な部分をさらに含む、実施形態1~70のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0392】
85.検出可能な部分が、蛍光標識、化学発光標識、常磁性標識、放射性同位体標識または酵素標識である、実施形態84に記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0393】
86.実施形態1~70のいずれかに記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む調製物であって、前記調製物が、タウに結合することが可能でないかまたは調製物の抗タウ機能性を実質的に変更しない自然発生する抗体を実質的に含まず、前記機能性が、
(i)非リン酸化タウに結合することが実質的にできないこと;
(ii)S404においてリン酸化され、S396においてリン酸化されないタウに結合することが実質的にできないこと;
(iii)S396においてリン酸化されるタウに結合する能力;
(iv)S396およびS404の両方においてリン酸化されるタウを結合する能力;
(v)それがリン酸化404残基に結合することが実質的にできないようにまたはそれがS396に優先的に結合するように、リン酸化タウ残基S396およびS404を選択的に区別する能力;
(vi)ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウに結合する能力;
(vii)病理学的および非病理学的ヒトタウタンパク質を区別する能力;および/または
(viii)実施例に記載されるように、トランスジェニックマウスに由来する免疫枯渇されたrTg4510抽出物とともに使用されるとき、過リン酸化タウ64kDaおよび70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%超減少させない能力
からなる群から選択される調製物。
【0394】
87.実施形態1~70に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む調製物であって、前記抗体または前記そのエピトープ結合フラグメントが、天然抗タウ抗体の構造と比べて、そのアミノ酸配列の構造変化を有し、前記構造変化により、前記抗体または前記フラグメントが、前記天然抗タウ抗体によって示される機能性と比べて変化した機能性を示し、前記機能性が、
(i)非リン酸化タウに結合することが実質的にできないこと;
(ii)S404においてリン酸化され、S396においてリン酸化されないタウに結合することが実質的にできないこと;
(iii)S396においてリン酸化されるタウに結合する能力;
(iv)S396およびS404の両方においてリン酸化されるタウに結合する能力;
(v)それがリン酸化404残基に結合することが実質的にできないようにまたはそれがS396に優先的に結合するように、リン酸化タウ残基S396およびS404を選択的に区別する能力;
(vi)ヒトアルツハイマー病の脳に由来する過リン酸化タウに結合する能力;
(vii)病理学的および非病理学的ヒトタウタンパク質を区別する能力;および/または
(viii)本明細書に記載されるように、トランスジェニックマウスに由来する免疫枯渇されたrTg4510抽出物とともに使用されるとき、過リン酸化タウ64kDaおよび70kDaバンドを少なくとも90%だけ特異的に減少させる一方、55kDaタウバンドを10%超減少させない能力
からなる群から選択される調製物。
【0395】
88.実施形態1~70のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント、または実施形態86~87のいずれかに記載の調製物、および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【0396】
89.実施形態1~70のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントをコードするか、またはその構成鎖をコードする核酸。
【0397】
90.治療に使用するための、実施形態1~70のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、または実施形態86~87のいずれか1つに記載の調製物、または実施形態88に記載の医薬組成物。
【0398】
91.タウオパチーを治療、診断またはイメージングするのに使用するための、実施形態1~70のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、または実施形態86~87のいずれか1つに記載の調製物、または実施形態88に記載の医薬組成物。
【0399】
92.アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ピック病、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位型老年性認知症、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、脳卒中、脳卒中の回復、パーキンソン病に関連する神経変性、染色体に関連するパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病(Lytico-Bodig disease)(グアムパーキンソン認知症複合)、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病およびリポフスチン沈着症からなる群から選択されるタウオパチーを治療するのに使用するための、実施形態1~70のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、または実施形態86~87のいずれか1つに記載の調製物、または実施形態88に記載の医薬組成物。
【0400】
93.アルツハイマー病の治療に使用するための、実施形態1~70のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0401】
94.タウオパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造に使用するための、実施形態1~70のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、または実施形態86~87のいずれか1つに記載の調製物、または実施形態88に記載の医薬組成物。
【0402】
95.アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ピック病、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位型老年性認知症、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、脳卒中、脳卒中の回復、パーキンソン病に関連する神経変性、染色体に関連するパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病(グアムパーキンソン認知症複合)、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病およびリポフスチン沈着症からなる群から選択される疾患を治療するための薬剤として使用するための、実施形態1~70のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、または実施形態86~87のいずれか1つに記載の調製物、または実施形態88に記載の医薬組成物。
【0403】
96.被験体におけるアルツハイマー病または他のタウオパチーを治療、診断またはイメージングする方法であって、治療的に有効な量の実施形態1~70のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、実施形態86~87のいずれか1つに記載の調製物、または実施形態88に記載の医薬組成物を、前記被験体に投与する工程を含む方法。
【0404】
97.治療が、長期である、実施形態96に記載の方法。
【0405】
98.前記長期治療が、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、または少なくとも1年間にわたる、実施形態97に記載の方法。
【0406】
99.被験体がヒトである、実施形態96~98のいずれか1つに記載の方法。
【0407】
100.治療に使用するための、実施形態1~70のいずれか1つに記載の抗体、またはそのフラグメント、実施形態86~87のいずれか1つに記載の調製物、または実施形態88に記載の医薬組成物を含むキット。
【0408】
101.被験体の脳における前記タウの存在または量を検出または測定するのに使用するための、実施形態1~70に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、または前記抗体またはフラグメントを含む調製物または医薬組成物。
【0409】
102.前記検出または測定が、前記タウに結合された前記抗タウ抗体のインビボイメージングを含む、実施形態88に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、調製物または医薬組成物。
【0410】
103.前記検出または測定が、前記タウに結合された、前記抗タウ抗体または前記そのフラグメントのエクスビボイメージングを含む、実施形態99~100に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント、調製物または医薬組成物。
【0411】
104.過リン酸化タウを含むもつれから少なくとも90%の過リン酸化タウを除去する方法であって、過リン酸化タウを、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントと接触させる工程を含み、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、リン酸化残基396を有するタウに対して選択的であり、実施形態1~70のいずれか1つに記載されるとおりである方法。
【0412】
105.患者におけるアルツハイマー病の進行を遅らせる方法であって、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを投与することによって、前記患者における病理学的タウタンパク質の蓄積を減少させるかまたは軽減する工程を含み、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが、リン酸化残基396を有するタウに対して選択的であり、実施形態1~70のいずれか1つに記載されるとおりである方法。
【0413】
106.i)実施形態1~70、特に、実施形態17、18、44または45に記載のタウ抗体およびii)以下のものからなる群から選択される化合物
a)BACE阻害剤;
b)能動または受動タウ免疫療法に有用な化合物;
c)能動または受動Aβペプチド免疫療法に有用な化合物;
d)NMDA受容体拮抗薬;
e)さらなるタウタンパク質凝集阻害剤;
e)アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;
f)抗てんかん薬;
g)抗炎症薬;および
h)SSRI;および
iii)1つまたは複数の薬学的に許容できる賦形剤
を含む医薬組成物。
【0414】
107.アルツハイマー病の治療、ADの進行の軽減またはADの症状の軽減の方法であって、i)実施形態1~70、特に、実施形態17、18、44または45に記載のタウ抗体およびii)以下のものからなる群から選択される化合物
a)BACE阻害剤;
b)能動または受動タウ免疫療法に有用な化合物;
c)能動または受動Aβペプチド免疫療法に有用な化合物;
d)NMDA受容体拮抗薬;
e)さらなるタウタンパク質凝集阻害剤;
e)アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;
f)抗てんかん薬;
g)抗炎症薬;および
h)SSRI
の投与を含む治療を含む方法。
【0415】
108.i)実施形態1~70、特に、実施形態17、18、44または45に記載のタウ抗体を含む組成物およびii)以下のものからなる群から選択される化合物を含む組成物
a)BACE阻害剤;
b)能動または受動タウ免疫療法に有用な化合物;
c)能動または受動Aβペプチド免疫療法に有用な化合物;
d)NMDA受容体拮抗薬;
e)さらなるタウタンパク質凝集阻害剤;
f)アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;
g)抗てんかん薬;
h)抗炎症薬;および
i)抗うつ剤
を含むキット。
【0416】
109.前記BACE1阻害剤が、LY2886721、MK-8931、AZD3293、またはE2609からなる群から選択される小分子BACEI阻害剤である、請求項106に記載の組成物、請求項107に記載の方法、請求項108に記載のキット。
【0417】
110.前記BACE1阻害剤が、式I
【化15】
(式中、Arが、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリルからなる群から選択され、ここで、Arが、ハロゲン、CN、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6フルオロアルキルまたはC1~C6アルコキシから選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換され;R1が、1つまたは複数の水素、ハロゲン、C1~C3フルオロアルキルまたはC1~C3アルキルであり;R2が、水素またはフルオロを表す)のものである、請求項106に記載の組成物、請求項107に記載の方法、請求項108に記載のキット。
【0418】
111.式Iの化合物が、以下のものからなる群から選択される、請求項110に記載の組成物、方法またはキット。
【化16】
(3S,6S)-6-(5-アミノ-2-フルオロフェニル)-3-フルオロ-3-(フルオロメチル)-6-メチルピペリジン-2-チオン
【化17】
(3R,6S)-6-(5-アミノ-2-フルオロフェニル)-3-フルオロ-3-(フルオロメチル)-6-メチルピペリジン-2-チオン
【化18】
(3S,6S)-6-(5-アミノ-2,3-ジフルオロフェニル)-3-フルオロ-3-(フルオロメチル)-6-メチルピペリジン-2-チオン
【化19】
(3R,6S)-6-(5-アミノ-2,3-ジフルオロフェニル)-3-フルオロ-3-(フルオロメチル)-6-メチルピペリジン-2-チオン
【化20】
(6S)-6-(5-アミノ-2-フルオロフェニル)-3-フルオロ-3,6-ビス(フルオロメチル)ピペリジン-2-チオン
【0419】
112.前記BACE1阻害剤が、式II
【化21】
(式中、Arが、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,4-トリアゾリル、チオフェニル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、フラザニルおよび1,2,4-チアジアゾリルからなる群から選択され、ここで、Arが、1つまたは複数のハロゲン、CN、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6フルオロアルキルまたはC1~C6アルコキシで任意選択的に置換され;R1が、C1~C3アルキルまたはC1~C3フルオロアルキルであり;R2が、水素、ハロゲン、C1~C3フルオロアルキルまたはC1~C3アルキルであり;R3がC1~C3アルキルである)のものである、請求項106に記載の組成物、請求項107に記載の方法、請求項108に記載のキット。
【0420】
113.前記BACE1阻害剤が、N-(3-((2R,5S)-6-アミノ-3,3,5-トリフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4フルオロフェニル)-5-フルオロピコリンアミド;N-(3-((2R,5S)-6-アミノ-3,3,5-トリフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4フルオロフェニル)-5-メトキシピラジン-2-カルボキサミド;N-(3-((2R,5S)-6-アミノ-3,3,5-トリフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4-フルオロフェニル)-5-メトキシピコリンアミド;N-(3-((2R,5S)-6-アミノ-3,3,5-トリフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4フルオロフェニル)-5-シアノ-3-メチルピコリンアミド;およびN-(3-((2R,5R)-6-アミノ-3,3,5-トリフルオロ-2,5-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン-2-イル)-4フルオロフェニル)-5-(ジフルオロメチル)ピラジン-2-カルボキサミドからなる群から選択される、請求項106に記載の組成物、請求項107に記載の方法、請求項108に記載のキット。
【0421】
114.前記NMDA受容体拮抗薬が、メマンチン、ナメンダ、ナムザリック(メマンチン/ドネペジル)、およびそのジェネリック形態からなる群から選択される、請求項106に記載の組成物、請求項107に記載の方法、請求項108に記載のキット。
【0422】
115.前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が、ドネペジル、ガランタミンおよびリバスチグミンからなる群から選択される、請求項106に記載の組成物、請求項107に記載の方法、請求項108に記載のキット。
【0423】
116.前記抗うつ剤が、エスシタロプラム、セルトラリン、シタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ベンラファクシン、トラゾドン、ミルタザピン、ボルチオキセチンおよびそのジェネリック形態からなる群から選択される、請求項106に記載の組成物、請求項107に記載の方法、請求項108に記載のキット。
【0424】
117.アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ピック病、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位型老年性認知症、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、脳卒中、脳卒中の回復、パーキンソン病に関連する神経変性、染色体に関連するパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病(グアムパーキンソン認知症複合)、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病およびリポフスチン沈着症からなる群から選択されるタウオパチーを治療するのに使用するための、請求項106に記載の組成物、請求項107に記載の方法、請求項108に記載のキット。
【0425】
118.タウオパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造に使用するための、請求項106に記載の組成物、請求項107に記載の方法、請求項108に記載のキット。
【0426】
119.アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、進行性核上性まひ(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、およびレビー小体型認知症の患者の精神医学的症状を治療するための、請求項106に記載の組成物、請求項107に記載の方法、請求項108に記載のキット。
【実施例】
【0427】
実施例1:タウリン酸化ペプチド396/404によるマウスの免疫化
C56/BL6およびFVBマウスを、TiterMax補助剤中で製剤化された10μgのP30コンジュゲートリン酸化タウペプチド386~408(pS396/pS404)(配列番号2)で免疫した。
【0428】
マウス(C56/BL6およびFVB株、雌および雄、2~3月齢のマウス)を、ペプチドエピトープP30コンジュゲートリン酸化タウ386~408で免疫した。
【0429】
免疫原性P30コンジュゲートリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)ペプチドを、TiterMax/供給業者のプロトコルにしたがって、TiterMax(1:1vol:volで混合される400μg/mlのペプチド)中で製剤化し、マウスに、20μgのペプチド(100μl)の抗原を皮下注入した。対照マウスに、補助剤のみを注入した。全てのペプチド免疫化マウスを、1ヶ月間隔で、0.5μgのペプチド/Titermax(上述されるように製剤化され、注入される10μg/mlのペプチド)で追加免疫した。最後に、マウスを、脾細胞の採取とそれに続く脾細胞とSP-2細胞との融合の3日前にTitermaxなしのP30コンジュゲートリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)で追加免疫した。リン酸化タウ386~408(pS396/pS404)への陽性結合を示し、ADおよびTG4510脳溶解物(実施例2Bにおいて後述される)に由来するS1およびP3抗原に対する優先的結合活性を示した後、最初に生成されたハイブリドーマを、再クローニングサイクルのために選択した。ドットブロットおよび脳溶解物で被覆されたELISAまたはMSDプレートを用いて、このような結合を、対照に由来する脳溶解物へのこのような抗体の結合活性と比較した。
【0430】
実施例2A:ハイブリドーマ生成
マウスを、対応するマウスの脾細からの採取およびそれに続く脾細胞とSP-2細胞との融合の3日前にTitermaxなしのP30コンジュゲートリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)で追加免疫した。ELISAに検出されたリン酸化タウ386~408(pS396/pS404)への陽性結合、およびドットブロットおよび脳溶解物で被覆されたELISAまたはMSDプレートを用いて、対照に由来する脳溶解物と比較した、ADおよびTG4510脳溶解物に由来するS1およびP3抗原に対する優先的結合活性の後、ハイブリドーマを、再クローニングサイクルのために選択した。
【0431】
実施例2B 特定の抗体のウエスタンブロットおよびドットブロット分析
タウ生化学的分画
ヒトタウ突然変異P301Lを過剰発現するヒトまたはrTg4510マウスに由来する脳組織を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含有する10体積のトリス-緩衝生理食塩水中で以下のように均質化した:50mMのトリス/HCl(pH7.4);274mMのNaCl;5mMのKCl;1%のプロテアーゼ阻害剤混合物(Roche);1%のホスファターゼ阻害剤混液IおよびII(Sigma);および1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF;Sigma)。ホモジネートを、4℃で20分間にわたって27,000×gで遠心分離して、上清(S1)およびペレット画分を得た。ペレットを、5体積の高塩/スクロース緩衝液(0.8MのNaCl、10%のスクロース、10mMのトリス/HCl、[pH7.4]、1mMのEGTA、1mMのPMSF)中で再度均質化し、上記のように遠心分離した。上清を収集し、37℃で1時間にわたってサルコシル(1%の最終濃度;Sigma)とともにインキュベートした後、4℃で1時間にわたって150,000×gで遠心分離して、P3画分と呼ばれるサルコシル不溶性ペレットを得た。P3ペレットを、脳ホモジネートに使用された元の体積の半分に等しい体積になるまで、TE緩衝液(10mMのトリス/HCl[pH8.0]、1mMのEDTA)中で再懸濁させた。
【0432】
ウエスタンおよびドットブロット
分画された組織抽出物S1およびP3を、0.1MのDTTを含有するSDS-試料緩衝液に溶解させた。熱処理された試料(95℃で10分間)を、4~12%のビス-トリスSDS-PAGEゲル(Invitrogen)におけるゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜(BioRad Laboratories,Hercules,CA)上に移した。ドットブロット試料を、試料にわたって公知の濃度で、ニトロセルロース膜(Amersham,Pittsburgh,PA)上に直接滴下した。ウエスタンおよびドットブロット膜の両方を、TBS-Tween(0.5%)pH7.4中の5%の脱脂粉乳中でブロックした後、1μg/mlのC10-2中で、4℃で一晩インキュベートした。膜を洗浄し、ペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgG(1:5000;Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)とともにインキュベートした。結合抗体を、強化化学発光システム(ECL PLUS kit;PerkinElmer)を用いて検出した。定量化およびウエスタンおよびドットブロット免疫反応性の視覚分析を、コンピュータに接続されたLAS-4000 BioImaging Analyzer System(Fujifilm,Tokyo,Japan)およびMulti Gauge v3.1ソフトウェア(Fujifilm)を用いて行った。タンパク質充填量を、元の画分の体積によって調整し、これは元の組織の湿重量に換算され得る。
【0433】
実施例3.AD-P3捕捉についての流体相阻害アッセイ
実施例3Aの目的:マウスC10.2に対するAD-P3脳物質中のpS396タウ抗原に結合するヒトC10-2および突然変異変異体の阻害を定量化するため。対象とするC10.2変異体とともにプレインキュベートされたAD-P3またはAD-P3とインキュベートする前に、MSDプレートをマウスC10-2で被覆した。阻害の程度が、抗原に結合する流体相抗体の見かけの親和性を反映するIC50値として示される。Graph Pad Prismソフトウェアを用いて1または2部位結合モデルに適合させることによって、IC50値を得た。P(404)タウと反応性の陰性対照抗体(マウスC10-1)を、比較のために加えた(データは示されない)。
【0434】
方法:MSDプレートを、室温で一晩、捕捉抗体(炭酸緩衝液pH8.5中の750ng/mlのマウスC10-2)で被覆した後、ブロッキングし(PBS、3%のBSA、0.1%のNP40中で30分間)、5回洗浄した(PBS、0.1%のBSA、0.1%のNP40)。段階的濃度(0~1000nM)の抗体を、室温でAD-P3材料とともに60分間インキュベートし、続いて、上述されるようにマウスC10-2で被覆されたMSDプレートにおいて、室温で1時間インキュベートした。プレートを、(PBS、0.1%のBSA、0~.1%のNP40)中で5回洗浄し、抗ヒト総タウ(MSDスルホタグ化1:50)を、阻害されていない遊離タウ抗原を反映する捕捉されたタウを検出するために加えた。
【0435】
結果:データは、ヒトC10-2および変異体を用いたタウ捕捉の用量依存的阻害を示した(
図1)。変異体C10-2_N32SおよびC10-2_N32S:A101Tは、より強く阻害するが(1部位結合モデルに適合された、それぞれIC50=44および14nM)、C10-2は、2部位結合モデルへの最良適合によって反映される不均一な阻害を示した(IC50 14nM/630nM)。高親和性抗体結合(IC50=14nM)が全結合の25%未満を占めていたため、低親和性結合(IC50=630)が優勢であった。結果が、
図1に示される。
【0436】
実施例3Bの目的:流体相阻害アッセイにおいてpS396タウ386~408ペプチドに結合するヒトC10-2および突然変異変異体の阻害を定量化するため。阻害の程度が、抗体結合の見かけの親和性を反映するIC50値として示される。Graph Pad Prismソフトウェアを用いて、1または2部位結合モデルに適合させることによって、IC50値を得た。P(404)タウと反応性の陰性対照抗体(マウスC10-1)を、比較のために加えた(データは示されない)。
【0437】
方法:MSDプレートを、室温で一晩、炭酸緩衝液pH9.5中のpS396タウ386~408ペプチドで被覆した後、ブロッキングし(PBS、3%のBSA、0.1%のNP40中で30分間)、5回洗浄した(PBS、0.1%のBSA、0.1%のNP40)。段階的濃度(0~1000nM)のpS396タウ386~408を、室温で1ng/mlの抗体とともに60分間インキュベートし、続いて、上述されるようにpS396タウ386~408で被覆されたMSDプレートにおいて室温で1時間インキュベートした。プレートを、(PBS、0.1%のBSA、0.1%のNP40)中で5回洗浄し、抗ヒト総タウ(MSDスルホタグ化1:50)を、阻害されていない遊離抗体を反映する結合抗体を検出するために加えた。結果が、
図2に示される。
【0438】
実施例4.抗体の免疫組織化学的プロファイリング
組織
マウス:マウス脳組織を、8月齢のrTg4510マウスから採取した。これらのトランスジェニックマウスは、CamK2陽性ニューロン中、tet-off応答因子下でヒト変異タウ(P301L 0N4R)を発現し、6月齢以降に顕著なタウ過リン酸化およびもつれ形成を示す。非トランスジェニック同腹仔を対照として用いた。マウス脳を、4%のパラホルムアルデヒドへの浸漬によって固定し、パラフィンに包埋した。ヒト:ホルマリンで固定され、パラフィンで包埋された、前頭葉のヒト脳試料を、Tissue Solutions(Glasgow,UK)から取得した。末期と診断されたアルツハイマー病(AD;Braak段階V~VI)の3つのドナーに由来する組織を、月齢をマッチさせた、認知症でない対照ドナーと比較した。
【0439】
免疫組織化学:
マウスおよびヒト組織の4μm厚の切片を、ミクロトームで切断し、脱パラフィン化し、10分間にわたって、10mMのクエン酸緩衝液、pH6中で切片をマイクロ波処理することによって、抗原賦活化を行った。内因性ペルオキシダーゼを、1%の過酸化水素、続いて、PBS、1%のBSA、0.3%のTriton X-100(PBS-BT)中の5%の正常なブタ血清によりブロッキングした。切片を、
図1に示される濃度の範囲で、PBS-BT中で希釈されたhC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101T抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。切片を、PBS、0.25%のBSA、0.1%のTriton X-100中で洗浄してから、1時間にわたって1:200でビオチン化二次ブタ抗ヒト抗体(#B1140;Sigma-Aldrich)とともにインキュベートした。さらなる洗浄後、ストレプトアビジン-ビオチン複合体キット(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を適用し、最後に、免疫活性を、0.05%のジアミノベンジジンで視覚化した。切片を、核の位置を示すためにヘマトキシリンで対比染色した。
【0440】
結果
hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tは、3つのAD脳内の病理学的タウ(すなわち、もつれ、神経絨毛糸、ジストロフィー性神経突起)と一致する構造を標識した。免疫活性の強度は、濃度依存性であった。例えばグリア細胞または血管の明らかな標識は検出されなかった。対照脳に由来する切片で免疫活性は検出されなかった。同様に、全ての3つの抗体は、rTg4510脳の海馬および皮質の両方においてリン酸化タウについて予測されるパターンを生じた。非トランスジェニックマウスに由来する脳切片では、免疫活性は検出されなかった。
【0441】
実施例5.静脈内(i.v.)注射後のrTg4510マウスにおけるタウ構造の装飾
方法
10月齢のrTg4510マウス。これらのトランスジェニックマウスは、CamK2陽性ニューロン中、tet-off応答因子下でヒト変異タウ(P301L 0N4R)を発現し、6月齢以降に顕著なタウ過リン酸化およびもつれ形成を示す。さらに、神経変性が、強い病変を有する領域において、rTg4510マウスの10月齢の時点で存在する。単一トランスジェニックtTA同腹仔を対照として用いた。マウスに、80mg/kgの濃度で、hC10-2、hC10-2_N32SまたはhC10-2_N32S_A101T抗体のいずれかを、尾静脈を介して単回注射した。マウス1匹につき150μLの体積を注射した。注射の3日後、マウスに、PBSを2分間灌流させた後、4%のパラホルムアルデヒドを10分間灌流させた。脳を、30%のスクロース中で凍結防止し、40ミクロンの自由に浮遊する低温切開片に切り分けた。切片を、20分間にわたってPBS/1%のBSA/0.3%のTriton X-100中の5%の正常なブタ血清とともにインキュベートし、PBSで洗浄し、最後に、1:200でAlexaFluor488コンジュゲート二次抗ヒトIgG(#709-545-149;Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,USA)とともにインキュベートした。Hoechstを核染色に使用した。切片を、PBS中で洗浄し、取り付け、蛍光顕微鏡によって調べた。
【0442】
結果
hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tの静脈内(i.v.)注射により、老化したrTg4510マウス脳の海馬および皮質における標的構造へのインビボ結合が生じた(
図4~7)。観察される陽性構造の数は、個々のrTg4510動物によって異なっていた。tTA対照マウスでは、3つの抗体のいずれの注射の後も、特定の蛍光シグナルは検出されなかった(
図4~7)。陰性対照として用いる、対照ヒトIgGの注射は、rTg4510マウスにおいてシグナルを生じなかった(データは示されない)。rTg4510脳における陽性シグナルは、細胞内染色として容易に見えず、神経変性の過程で放出される細胞外のタウ物質を表し得る。まとめると、これらのデータは、hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101T抗体が、脳実質中に浸透することができ、インビボでrTg4510マウスにおける標的を特異的に装飾することを示唆している。
【0443】
実施例6.アルツハイマー病の脳におけるタウ免疫活性の特性評価
組織:
パラフィンで包埋された、前頭葉のヒト脳試料を、Tissue Solutions(Glasgow,UK)から取得した。末期と診断されたアルツハイマー病(AD;Braak段階V~VI)のドナーに由来する組織が含まれていた。
【0444】
免疫組織化学
ヒト組織の4μm厚の切片を、ミクロトームで切断し、脱パラフィン化し、10分間にわたって、10mMのクエン酸緩衝液、pH6中で切片をマイクロ波処理することによって、抗原賦活化を行った。切片を、PBS、1%のBSA、0.3%のTriton X-100(PBS-BT)中の5%の正常なブタ血清とともにインキュベートした後、PBS-BTで希釈されたhC10-2またはhC10-2_N32S_A101T抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。切片を、PBS、0.25%のBSA、0.1%のTriton X-100中で洗浄した。免疫活性を、AlexaFluor488コンジュゲート二次抗ヒトIgG(1:200;#709-545-149,Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,USA)によって視覚化した。蛍光免疫二重染色のための、切片を、AT8(1:500;#MN1020,ThermoFisher,Waltham USA)またはE1総ヒトタウ抗体とともに共インキュベートし、特注のウサギ抗体が、N末端タウ19-33に対して産生された(Crowe et al,1991)。AT8およびE1の免疫活性をそれぞれ、抗マウスAlexaFluor568(1:400;#A10037,ThermoFisher)および抗ウサギAlexaFluor568(1:400;#A10042,ThermoFisher)で視覚化した。切片を、蛍光顕微鏡によって分析した。
【0445】
結果
N末端総タウおよびpS396タウについて二重染色されたAD切片において、もつれを有するニューロンの集団を、E1ならびにhC10-2およびhC10-2_N32S_A101T抗体のいずれかによって標識した(
図7)。多くのタウもつれが、hC10-2およびhC10-2_N32S_A101T抗体のいずれかのみによって標識された(
図7、矢印)。細胞外タウ(ゴーストもつれ)は、N末端タウ抗体によって染色されないことが以前に示されている(例えばBondareff et al,1990;Braak et al,1994;Flores-Rodrigues et al,2015)。したがって、hC10-2またはhC10-2_N32S_A101T抗体のみによって標識されるタウ種は、細胞外のゴーストもつれを表す可能性が高い。
【0446】
ウエスタンブロットおよび免疫沈降
実験手順および実験の説明
トランスジェニックrTg4510マウスを使用した:P301L突然変異を有するヒトタウcDNA(4R0NタウP301L)を、テトラサイクリン-オペロン-レスポンダー(TRE)構築物の下流に配置した。導入遺伝子を活性化するために、レスポンダーは、テトラサイクリン調整遺伝子発現系(tTA)からなるアクチベータ構築物と共発現される必要がある。tTAアクチベータ系を、CaMKIIαプロモータの下流に配置し、それによって、主に前脳構造に対するTREの発現を制限した。タウ導入遺伝子レスポンダーは、FVB/N(Taconic)マウス系統で発現され、tTAアクチベータ系は、129S6(Taconic)マウス系統において維持された。それらのF1子孫は、非トランスジェニック(非tg)および単一トランスジェニック同腹仔マウスとともにレスポンダーおよびアクチベータ導入遺伝子(rTg4510)を有していた。F1マウスのみを実験に使用した。全てのマウスを、Taconic(Denmark)で飼育し、tTAアクチベータ導入遺伝子についてはプライマー対の5’-GATTAACAGCGCATTAGAGCTG-3’および5’-GCATATGATCAATTCAAGGCCGATAAG-3’、ならびに突然変異体タウレスポンダー導入遺伝子については5’-TGAACCAGGATGGCTGAGCC-3’および5’-TTGTCATCGCTTCCAGTCCCCG-3’を用いた尾部DNAの分析によって、遺伝子型を同定した。マウスを集団で飼育し、水および食物(Brogaarden、Denmark)を自由に与えるとともに栄養強化物質を与えた。明/暗サイクルは12時間であり;室温は21±2℃であり、55%±5%の相対湿度であった。実験動物(登録番号2014-15-0201-00339)についてのデンマークの法律にしたがって実験を行った。
【0447】
脳の代謝環境を保存するため、およびタウの生化学的プロファイルを変化させ得る人為的な影響を防ぐために、頸椎脱臼によってマウスを安楽死させた。マウス脳を、正中線で矢状方向に2等分して、2つの脳半球を得た。各動物の右脳半球の皮質および海馬を、ドライアイス上で迅速に凍結させ、使用するまで-80℃で貯蔵した。アルツハイマー病(AD)患者および老化した健常対照(HC)ドナーに由来する凍結されたヒト皮質を、Tissue Solution(Glasgow,UK)から購入した。ヒト脳試験片は、6時間未満の同様の死後処理時間を有しており、それをアミロイドおよびタウ病変について特性評価し、選択されたAD試験片をBraak段階V~VIとして分類した。
【0448】
脳溶解物からタウタンパク質を免疫沈降させるために、Crosslink免疫沈降キット(Thermo Fisher Pierce 26147)を、製造業者の指示にしたがって使用した。簡潔に述べると、抗体を、プロテインA/Gプラスアガロースに結合した後、結合抗体をDSS(スベリン酸ジスクシンイミジル)で架橋した。脳ホモジネートを、トリス緩衝液(25mMのトリス/HCl pH7.6、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのEGTA、および完全なプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤混合物)中で調製し、対照アガロース樹脂とともに4℃で一晩プレクリアした。プレクリアされた溶解物を、抗体-架橋樹脂とともに4℃で一晩インキュベートした後、50μlの溶出緩衝液(pH2.8)で抗原溶出を行い、5 μlの1Mのトリス、pH9.5を含む収集チューブ中に直ぐに遠心分離した。免疫沈降したタウを、ジチオスレイトール(DTT、100mM)を含むSDS-試料緩衝液に溶解させ、熱処理し(95℃で10分間)、後述されるようにウエスタンブロット法に供した。
【0449】
ヒトタウ濃度を、製造業者の指示(Invitrogen)にしたがって総ヒトタウについてELISAによって、脳ホモジネートおよびプレクリアされた溶解物中で測定した。
【0450】
組織を、以下のようにプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含有する10体積のトリス-緩衝生理食塩水(TBS)中で均質化した:50mMのトリス/HCl(pH7.4);274mMのNaCl;5mMのKCl;1%のプロテアーゼ阻害剤混合物(Roche);1%のホスファターゼ阻害剤混合物IおよびII(Sigma);および1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)。ホモジネートを、4℃で20分間にわたって27,000×gで遠心分離して、上清(S1)およびペレット画分を得た。ペレットを、5体積の高塩/スクロース緩衝液(0.8MのNaCl、10%のスクロース、10mMのトリス/HCl、[pH7.4]、1mMのEGTA、1mMのPMSF)中で再度均質化し、上記のように遠心分離した。上清を収集し、37℃で1時間にわたってサルコシル(1%の最終濃度;Sigma)とともにインキュベートした後、4℃で1時間にわたって150,000×gで遠心分離して、塩およびサルコシル抽出性(S3)およびサルコシル不溶性(P3)画分を得た。P3ペレットを、TE緩衝液(10mMのトリス/HCl[pH8.0]、1mMのEDTA)中で、脳ホモジネートに使用される元の体積の半分に等しい体積になるまで再度懸濁させた。過リン酸化タウ種についてS1画分を富化するために、S1画分の一部を、20分間にわたる150,000×gでのさらなる遠心分離によって、上清(S1s)および沈殿物(S1p)画分に分けた。S1pペレットを、TBS緩衝液中で、使用される元のS1体積の5分の1に等しい体積になるまで再度懸濁させた。分画組織抽出物S1、S1pおよびP3を、DTTを含有するSDS-試料緩衝液(100mM)に溶解させた。熱処理された試料(95℃で10分間)を、4~12%のビス-トリスSDS-PAGEゲル(Invitrogen)におけるゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜(BioRad Laboratories,Hercules,CA)上に移した。TBS中の5%の無脂肪乳および0.1%のTriton-X100を含有するブロッキング溶液でブロッキングした後、膜を、1μg/mlのhC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tまたはウサギ抗pS396タウ(Invitrogen)とともにインキュベートした。膜を洗浄し、ペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヒトIgGまたは抗ウサギ抗体(1:5000;Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)とともにインキュベートした。結合抗体を、強化された化学発光システム(ECL PLUSキット;Perkin Elmer)を用いて検出した。ウエスタンブロット免疫活性の定量化および視覚分析を、コンピュータに連結されたLAS-4000 BioImaging Analyzer System(Fujifilm、東京、日本)およびMulti Gauge v3.1ソフトウェア(Fujifilm)を用いて行った。タウタンパク質を検出するために、マウスに由来する約2μgのS1、ヒト脳に由来する20μgのS1および等体積の異なる画分(S1、S1p、およびP3)を、SDS PAGEに充填した。
【0451】
ウエスタンブロットによる病理学的タウの検出
3匹の32週齢のrTg4510マウスおよび非トランスジェニック(非tg)対照同腹仔からプールされた前脳ホモジネートならびに4匹のADおよび4匹の健常対照(HC)ドナーからプールされた皮質試験片を、可溶性(S1)、TBS可溶性ペレット(S1p)およびサルコシル不溶性画分(P3)中に単離した。hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tを、ウエスタンブロットにおいて1μg/mlで使用し、rTg4510マウスおよびADから病理学的タウを検出した。本発明者らは、32週齢のrTg4510マウスに由来するS1において55および64kDaタウ、およびP3およびS1p画分において64および70kDaタウの検出を観察した。さらに、50kDa未満の3つの切断された(truncated)タウバンドが、P3画分において観察された。ヒト導入遺伝子タウを発現しない非tg対照同腹仔に由来するS1pおよびP3においてシグナルは検出されなかった。50kDa前後の弱いシグナルが、非tgマウスに由来するS1画分において検出され、これは、S396残基においてリン酸化される内因性マウスタウを表す可能性が最も高い(
図8A~8C)。hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tは、rTg4510マウスにおいて、pS396タウ、ならびに正常なリン酸化55kDaおよび過リン酸化64kDaタウ種の両方を検出したことが要約される。最も強いシグナルが、hC10-2_N32S_A101Tで観察された。
【0452】
ADドナーに由来するS1、S1pおよびP3画分において、hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tは、典型的なADタウ塗抹標本および病理学的な4つのタウバンドパターン(54、64、69および74kDaタウ)を検出した。予測されるように、P3画分から単離されたサルコシル不溶性過リン酸化タウ種が最も顕著であり、続いて、S1p画分が富化された可溶性過リン酸化タウ種であった。健常対照(HC)に由来するP3画分においてシグナルは検出されなかった。HCに由来するS1およびS1p画分において、55kDa前後の弱いシグナルが検出され、これは、S396残基における正常なリン酸化タウを表す可能性が高い(
図8A~8C)。hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tが、過リン酸化タウを表すADおよび病理学的な4つのタウバンドパターンに特徴的な典型的なタウ塗抹標本を検出したことが要約される。最も強いシグナルが、hC10-2_N32S_A101Tで観察された。
【0453】
病理学的タウの免疫沈降
非変性条件下でタウに結合するhC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tの能力を決定するために、タウ抗体をプロテインA/G樹脂上へと共有結合的に架橋し、それによって、抗体汚染のないIPを得るタウ免疫沈降(IP)プロトコルを確立した。SDS-PAGEによるタウ分析では、両方のタンパク質が50kDa前後で検出されるため、IPに使用される抗体の重鎖の存在は、シグナルを邪魔し得る。ヒト脳に由来する病理学的タウを破壊するhC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tの有効性を調べた。抗原として、それぞれ0.1μgおよび0.15μgのヒトタウ(ヒトタウELISAによって決定される)を含有する4匹のプールされたADおよびHCドナーに由来する脳ホモジネートからの500μgのプレクリアされた溶解物を使用した。hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101T(10μg)は、ポリクローナルウサギ抗pS396タウ抗体によって視覚化されるプレクリアされたADホモジネート(抗原/ab1:100の比率)からの54、64、69および74kDaタウ種(4つの病理学的タウバンド)およびAD塗抹標本を破壊した(
図9)。hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tで破壊されたAD脳に由来するタウバンドの強度を、対照ヒトIgG抗体およびHC脳と比較すると、hC10.2、hC10-2_N32S、hC10-2_N32S_A101Tが、AD脳のみに由来するpS396部位において過リン酸化タウを免疫沈降し、1:100の抗原/抗体比で有効であったことが要約され得る。
【0454】
細胞および凝集アッセイ
HEK293細胞を、平板培養の24時間後に、6ウェルプレートにおいてヒトタウ-P301L-FLAGで一過性にトランスフェクトし、続いて、24時間後に、24時間にわたって脳ホモジネートとともにインキュベートした後、細胞を分割および再度平板培養し、さらに24時間後に収集した。細胞を溶解させ、1%のtriton X、Phos-stopおよび完全なホスファターゼおよびプロテアーゼ阻害剤(Roche)緩衝液が補充されたPBS中で超音波処理し、30分間にわたって100,000×gで超遠心分離した。ペレットを、SDS中で再懸濁させ、超音波処理し、30分間にわたって100,000×gで超遠心分離した。上清を、ウエスタンブロット法によって分析した。ヒトタウ-P301Lを発現する細胞は、rTg4510タウトランスジェニックマウスに由来する総脳ホモジネートをシーディングすると、不溶性(SDS画分、E1/FLAG検出)、過リン酸化(pS396検出)タウを示した。
【0455】
tTAマウスに由来する対照脳ホモジネートで処理された細胞は、凝集過リン酸化ヒトタウが存在しないことを示した。さらに、HEK293細胞の総細胞溶解物を、Cisbio製のタウ凝集アッセイを用いて分析した。このアッセイは、FRETにおいてドナー(Tb3+コンジュゲート)およびアクセプタ(d2コンジュゲート)Abの両方に同じ抗体を用いた時間分解蛍光に基づくものである。10μlの試料を、10μlの抗体混合物と混合し、20時間インキュベートした。プレートをPherastarプレートリーダーで読み取って、時間分解蛍光(励起光のスイッチング後に測定/積分される(integrated)FRETシグナル)を評価した。アッセイは、ヒト剖検材料、rTg4510マウスにおいて、および高い特異性および感度を有する播種されたHEK細胞において凝集タウを測定する。結果が
図10に示される。
【0456】
実施例7.タウの免疫枯渇
アルツハイマー病の脳抽出物を、10倍体積の滅菌冷PBS中の凍結された死後前頭前皮質から作製した。組織を、ナイフホモジザイナー(knife homogenizer)を用いて均質化した後、超音波処理し、出力2で5×0.9秒パルス(Branson sonifier)にかけた。次に、ホモジネートを、4℃で5分間にわたって3000gで遠心分離した。上清を分割し、急速凍結させ、使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0457】
25μgの抗体(ヒト化C10-2変異体および2.10.3、マウスAT8、Thermo Scientific mn 1020)を、125μlのMagnetic dynabead懸濁液(免疫沈降キットDynabeads Protein G Novex、Cat no 10007D)に固定した。十分な洗浄の後、被覆ビーズを、可変量の非被覆洗浄ビーズと混合した。5μgの抗体に対応する100%のAb被覆ビーズから開始して、100%の非被覆ビーズに到るまで。ビーズの総量は、全ての試料において同じであった。ビーズを、20μlのAD抽出物と混合し、室温で10分間インキュベートした。電磁ビーズを、抽出物から分離し、抽出物を分割し、急速凍結させ、使用するまで-80℃で保持した。
【0458】
ウエスタンブロットを用いた枯渇の分析
試料を、1×SDSローディングバッファーおよび100mMのDTT中で沸騰させた。3μlの抽出物に対応する体積を、4~12%のビス-トリスNuPAGE Gel(LifeTech Novex)上に充填した。電気泳動の後、タンパク質を、Immobilon-FL PVDF膜(0.45μm、IPFL10100、Millipore)上にブロッティングした。膜を、SEAブロッキングバッファー(Prod#37527、Thermo)を用いてブロッキングした。タウおよびP-タウレベルを、タウ5(タウ5は、エピトープがタウアミノ酸210~241の中にあることが記載される市販の抗タウ抗体である)を用いて試料中で評価した。それは、タウに対するマウスモノクローナルである。Abcam ab80579、1:2000)マウスC10-2(1μg/ml)、P-S199/202(Invitrogen 44768 G、1:1000)、P-S422(Abcam ab79415、1:750)、ヒトIPN(1μg/ml)。Gapdhおよびアクチンを、充填対照(Abcam ab9484、1:2000、Sigma A5441、1:20000)として使用した。二次フルオロフォアコンジュゲートIgG抗体を使用し(IRDye 800CWヤギ抗ヒト、IRDye 800CW、ヤギ抗ウサギ、IRDye 680ヤギ抗マウス、LI-COR biosciences)、シグナルを、Odyssey CLxおよびImage studioソフトウェア(LI-COR biosciences)を用いて定量化した。全レーンにおける個々のバンドならびにシグナルの定量化を行い、これから、S字形用量反応曲線をプロットし、可能であれば、最大効果およびEC50値を推定した。
【0459】
結果
2.10.3およびC10-2抗体は両方とも、アルツハイマー病の脳の調製物からタウのごく一部を除去する。これは、総タウタンパク質含量中のタウのサブセットに対する選択性を示す。pS422タウに対する特異性を有するように設計された2.10.3は、総タウ量の最大で24%を除去する一方、C10-2は、総タウの最大で15%を除去する(
図11を参照)。これは、pS396サブセットが、全ての他の因子が等しいタウのより小さいサブセットであると解釈され得る。あるいは、データは、2.10.3抗体がpS422に対して選択的であるより、C10-2抗体がpS396に対して選択的であると解釈され得る。
【0460】
2.10.3およびC10-2は両方とも、セリン422においてリン酸化されるタウの90%超を除去するが、pS422タウの50%を除去するのに必要な抗体の量は異なり、2.10.3については、0.42μgの抗体およびC10-2については、0.27μgが同じ効果のために必要とされた(
図12を参照)。本発明の一実施形態において、抗体は、386~404内のエピトープに対して特異的であり、ここで、ヒトタウのセリン残基396がリン酸化され、1μg未満の抗体を用いて、pS422タウの80%が除去される(ウエスタンブロット分析による免疫枯渇試験において)。
【0461】
C10-2は、セリン396においてリン酸化されるタウを効率的に除去する(最大効果:効果の88%および半分に、0.30μgの抗体を用いて達する)。2.10.3は、セリン396においてリン酸化されるタウをより少ない割合で除去する(最大効果:その効果の60%および半分に、0.63μgの抗体を用いたときに達する)(
図13を参照)。これは、セリン422においてリン酸化される全てのタウが、セリン396においてもリン酸化されるが、過リン酸化タウの一部は、セリン396においてリン酸化され、ここで、位置422におけるリン酸化セリンが存在しないことを示す。本発明の一実施形態において、抗体は、386~404内のエピトープに対して特異的であり、ここで、ヒトタウの残基396がリン酸化され、1μg未満の抗体を用いて、pS396タウの80%が除去される(ウエスタンブロット分析による免疫枯渇試験において)。
【0462】
C10-2によって除去されるタウの大部分は、セリン199/202においてもリン酸化され、これは、そのリン酸化を有するタウの69%が免疫枯渇によって影響されるためである(0.34μgの抗体を用いたときの効果の50%)。2.10.3免疫枯渇は、pS199/202タウにおいてS字形用量反応を示さないが、シグナルの低下が、増加する量の抗体で見られる(最大量の抗体(5μg)を用いたときに最大52%の低下(
図14を参照)。本発明の一実施形態において、抗体は、386~404内のエピトープに対して特異的であり、ここで、ヒトタウのセリン残基396がリン酸化され、1μg未満の抗体を用いて、P-S199/202タウの80%が除去される(ウエスタンブロット分析による免疫枯渇試験において)。
【0463】
これらの結果は、リン酸化セリン396を標的にするC10-2抗体が、422位置におけるリン酸化セリンを標的にする2.10.3抗体より大きいプールの過リン酸化タウに結合することを示す。
【0464】
免疫枯渇後のウエスタンブロットにおける個々のバンドを調べる際、25kDaバンドが、セリン396においてリン酸化されるものと同定された。このフラグメントは、C10-2によって免疫枯渇されたが、2.10.3およびAT8は、このフラグメントを枯渇しなかった(
図15を参照)。したがって、C10-2は、アルツハイマー病の脳抽出物に由来するこの切断型のタウを除去する独自の特徴を有する。
【0465】
実施例8.C10-2変異体の比較
全てのC10-2変異体は、免疫枯渇アッセイにおいて同じ効率を有していた(
図16を参照)。これらの結果は、導入された突然変異が、アルツハイマー病の脳に特有のタウへの機能的結合を変化させていないことを示す。
【0466】
8a.播種されたrTg4510マウスにおける抗体処理
CamK2陽性ニューロン(rTg4510)中、tet-off応答因子下でヒト突然変異タウ(P301L 0N4R)を発現するトランスジェニックマウスを使用した。このモデルは、通常、3月齢でタウ病変を発生し始めるが、妊娠中および子が生まれてから最初の3週間にわたって母親にドキシサイクリンを供給することによって、病変は、より遅い段階で発生する(6月齢後に開始する)。ドキシサイクリンで予め処理されたマウスを、2月齢から開始して、15mg/kg/週で、mC10-2、hC10-2、2.10.3または対照抗体で長期的に処理した。2.5ヶ月の時点で、アルツハイマー病の脳抽出物を、海馬に注入した。マウス20匹に、吸入剤の吸入によって麻酔をかけ、定位フレームに固定した。頭蓋骨を露出させ、ブレグマおよびラムダが水平になるまで調整した。ブレグマの2mm側方(右)および2.4mm後方で、頭蓋骨に孔を空けた。10μlのシリンジのベベルチップ(SGE)を用いて、シーディング材料を、上記の配置で、脳表面の1.4mm前面に注入した。2μlの、実施例7に記載される抽出物を、その部位(1μl/分)にゆっくりと注入し、シリンジを5分間そのままにして置いてから、それを取り出した。創傷を縫うことによって閉じ、目を覚ますまでマウスを加熱した。マウスを3ヶ月間飼育してから殺処分し、かん流を4%で固定。マウスを、シーディングの3ヵ月後に殺処分するまで、抗体で処理した。
【0467】
免疫組織化学
固定された脳を、NSA30において35μmの冠状断面へと切断し、6つ置きの切片を、タウもつれ(ガリアス銀染色)について染色した。陽性染色されたニューロン(細胞体)を、全ての脳の海馬の同側および反対側で計数した。海馬の全てのサブ領域が含まれていた。脳当たり8つの切片を計数した。結果は、8つの切片からの陽性ニューロンの合計を反映する。
【0468】
統計分析:群を比較すると、差異は、有意に異なっている。ここでは、ノンパラメトリック検定、クラスカル・ウォリス検定およびダンの多重比較検定を使用した。
【0469】
結果:抽出物は、同側海馬におけるもつれ病変のシーディングをもたらした。mC10-2処理は、播種された海馬のもつれ病変を57%だけ有意に減少させた(P<0.05)。hC10-2が病変を減少させたことを示す明らかな傾向があった。2.10.3は、効果を示すことができなかった(
図17を参照)。
【0470】
実施例8b.C10.2変異体の抗シーディング効果
試験の目的
タウ凝集体の細胞間伝播は、CNS内のアルツハイマー病の病変の発達および位相的な拡大に寄与することが示唆されている。インビトロシーディングモデルを確立し、それによって、HEK293細胞において発現された細胞内ヒトタウに、細胞外で適用された病理学的タウ凝集体を播種する。この試験の目的は、治療パラダイムにおいてシーディングした後のモノクローナルヒトC10.2および変異体の治療効果を評価および比較することであった。シーディングは、細胞内で発現されたタウの過リン酸化/ミスフォールディングを開始させる量の過リン酸化タウ(シード)の導入を意味することが意図される。
【0471】
試験の関連性を確立する背景
Aβの細胞外プラークおよびタウの神経内の対になったらせん状フィラメントの堆積は、アルツハイマー病の特徴である。タウの神経内封入体は、洗浄剤に不溶性の、過リン酸化された、アミロイド形態のタウから主に構成され、AD患者において、CNS内で凝集体の拡大を示唆する空間時間的パターンで堆積される。タウ凝集体は、プリオン様の機構で、インビボおよびインビトロの両方で、細胞間で伝播することが実験的に示されている。疾患の伝播に影響を与える細胞外の拡大のこの存在は、CNS浸透抗体を用いた免疫療法のための道を切り開くものである。
【0472】
タウ凝集体/シードの適用は、インビトロの細胞内タウの凝集をもたらすことが示されている(Frost et al.,2009、Guo and Lee 2011、Yanamandra et al.,2013)。本発明者らは、インビトロシーディングモデルを確立し、それによって、Tg4510マウスに由来する粗脳ホモジネート(凝集したヒトタウを含む)を用いて、ヒト0N4Rタウに、HEK293細胞において一時的に発現されたP301L突然変異を播種する。重要なことには、残留タウ凝集体(シード)を、播種されたpcDNA対照細胞において検出することができないため、全ての読み取りは、細胞内タウの変換を検出しており、外因性シーディング材料からの何らのシグナルも検出しない。hC10.2の異なる変異体の抗シーディング効果を、このアッセイにおいて決定した。
【0473】
変異体
抗体C10-2(hC10.2)
抗体N32S(hC10.2 N32S)
抗体N32Q(hC10.2 N32Q)
抗体N32S、D55E(hC10.2 N32S D55E)
抗体N32Q、D55E(hC10.2 N32Q D55E)
抗体N32S、A101T(hC10.2 N32S A101T)
【0474】
参照品
対照hIgG1(B12)
【0475】
試験システム/動物
HEK293細胞に、hタウ-P301L(0N4R)を一過性にトランスフェクトした。
【0476】
実験設計
シーディング材料:12月齢のマウスに由来するTg4510ホモジネート(および対照)を、ビーズ均質化(bead homogenization)によって阻害剤なしでTBS中の10%のホモジネートとして均質化し、超音波処理した。ホモジネートを、15分間にわたって21000×gで回転させ、可溶性画分をシーディングに使用した。
【0477】
HEK293シーディングアッセイ:このアッセイにおいて、600,000個のHEK293細胞を、0日目に6ウェルプレート中でウェルごとに平板培養する。1日目に、製造業者のプロトコルにしたがって、10μlのlipofectamine2000を用いて、細胞に、4μgのプラスミドDNAをトランスフェクトする。培地を4時間後に交換する。2日目に、細胞に、12月齢のTg4510またはtTaマウスに由来する粗脳ホモジネートを播種する。40μgの総タンパク質を含有するホモジネート(tg4510ホモジネートについて約65ngの総ヒトタウ)を、各ウェルの培地に適用する。抗体処理のために、実験ホモジネートを、4℃で一晩、抗体とともにまたは抗体なしでプレインキュベートする。シーディングの6時間後、細胞増殖を減少させるために、培地を低血清培地に交換し、抗体を再度適用する。
【0478】
3日目(シーディングの24時間後)に、細胞外シードを分解するために、細胞を3分間にわたってトリプシン処理し、分画実験のために6ウェルプレートにおいてウェル当たり800,000個の細胞で、Cisbioタウ凝集アッセイのために96ウェル当たり20,000個の細胞で、および高含量イメージングによる抗体取り込み評価のために96ウェル当たり10,000個で、再度平板培養する。抗体を、各ウェルに再度適用する。
【0479】
細胞分画:シーディングの48時間後、分画のための細胞を、冷PBS中で擦ることによって採取し、ペレット化し、ホスファターゼおよびプロテアーゼ阻害剤とともに1%のtriton-Xを含むTBSに溶解させ、超音波処理する。超遠心分離(4℃で30分間にわたって100,000×g)の後、ペレットを、1%のSDS中で再度懸濁させ、超音波処理し、もう一度超遠心分離する。Triton-XおよびSDS可溶性画分を、総タウ(E1)およびS396(D1.2)におけるタウのリン酸化について、ウエスタンブロット法によって分析する。D1.2シグナルを、Odysseyイメージング機械において免疫蛍光によって定量化する。
【0480】
Cisbioタウ凝集アッセイ:シーディングの48時間後、Cisbio凝集アッセイのための細胞を、氷冷PBS中で洗浄し、凍結乾燥させる。細胞を、ホスファターゼ/プロテアーゼ阻害剤およびベンゾナーゼ(benzonase)(RNaseおよびDNase)を含む1%のtriton-Xに溶解させ、オービタルシェーカーにおいて、4℃で40分間にわたって650RPMでインキュベートする。均一性時間分解蛍光(HTRF(登録商標)、Cisbio)を用いたFRET測定のためにドナーおよびアクセプタに結合される同じ抗体を用いることに基づいたアッセイである、Cisbioタウ凝集アッセイによって、総細胞溶解物を、タウ凝集体について分析する。モノマータウは、同じ結合エピトープについて競合する際、アクセプタまたはドナー抗体のいずれかのみに結合し得る(=FRETなし)。これに対し、オリゴマータウは、ドナーおよびアクセプタの両方に結合し得る(=FRETシグナル)。総タンパク質が、BCAによって全ての試料について決定され、試料の信号対雑音比が、タンパク質に対して正規化され、8つの技術的反復(technical replicate)を用いて、相対タウ凝集としてプロットされる。
【0481】
抗体取り込み:シーディングの48時間後、抗体取り込みのためのプレートを、4%のパラホルムアルデヒドおよび4%のスクロース中で固定し、抗ヒト二次抗体で染色した。抗体取り込みを、Cellomicsを用いて確認した。
【0482】
データ分析/統計
データは、異なる2週間にわたって行われ、分析された4つの独立した生物学的反復のプールされたデータ+/-S.E.M.として表される。データは、テューキーの多重比較検定とともに一元配置ANOVAを用いて分析される(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
【0483】
結果
hC10.2は、対照と比較して約40%だけ、シーディングおよび不溶性過リン酸化タウに対する減少の影響を有していた。全ての他の抗体は、同様またはhC10.2より優れた効果を示した。特に、hC10.2のN32SおよびN32S_A101T変異体は、より強い効果、凝集タウの45%および62%の減少を示した。N32S_A101T変異体は、hC10.2と比較して、凝集に対して大幅に強い効果を示した。
【0484】
実施例8C:本発明のhC10.2および変異体における安定性試験
試験の目的
この試験は、変異体の電位差を明らかにするためにストレス条件に焦点を合わせて、本発明の抗体の基本的安定性の問題を評価するために行った。
【0485】
試験設計
全ての試料を、同一の出発条件(緩衝液、濃度および凝集体レベル)になるように最初に調製した。これは、試料の挙動のその後の発生に潜在的に影響し得る初期特性の差をなくし得る。対照を-80℃に保持し、ストレスを加えた試料(40℃)と並行して分析した。試料を、異なる時点で40℃から取り出し、SEC-uplc、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LCMS)によるペプチドマッピングおよび示差走査蛍光定量法(DSF)によって、最後に同時に分析した。
【0486】
変異体
抗体C10-2(hC10.2)
抗体N32S(hC10.2 N32S)
抗体N32Q(hC10.2 N32Q)
抗体N32S、D55E(hC10.2 N32S D55E)
抗体N32Q、D55E(hC10.2 N32Q D55E)
抗体N32S、A101(hC10.2 N32S A101T)
抗体A101T(hC10.2 A101T)
抗体D55E(hC10.2 D55E)
抗体N32Q、A101T(hC10.2 N32Q A101T)
【0487】
参照品
試験の期間にわたって-80℃で貯蔵された抗体試料を、参照用に使用した。
【0488】
背景情報
モノクローナル抗体の安定性の側面は、製剤原料の製造、最終的な貯蔵および製剤化の側面のために重要である。この試験では、本発明者らは、明白な問題が候補のいずれかにおいて明らかであるかどうかを明らかにするために、凍結融解サイクル、高温および低pHによって抗体にストレスを与えた。
【0489】
材料および方法
脱アミド化試験のために、試料を、1mlの試料中でバイアルに入れ、40℃でインキュベートする。所定の時点で、試料を-80℃にし、分析するまで貯蔵する。
【0490】
脱アミド化試験
該当する実際の残基についての詳細な情報を得るために、Asn残基の脱アミド化を、ペプチドレベルで試験する。したがって、標準的プロトコルを用いた還元およびアルキル化(ヨード酢酸)の後、mAbをブタトリプシンで消化する。ペプチドを、CSHT130 C18 1.7μmのカラムにおいて分離し、MSeモードで動作するXEVO QTOF(Waters)MS機器に導入した。一連の試験を通して、同一のパラメータを使用した。全ての時点からのペプチドマップを、BiopharmaLynxにおいて分析し、以下の制限を有して定量化した:明白に識別された脱アミド化ペプチドのみが含まれ、インソースフラグメントは含まれない。それぞれの識別されたペプチドの脱アミド化%を、経時的に監視する。
【0491】
SEC方法の概要
TUV検出器を備えたAcquity UPLC(waters)においてACQUITY UPLC(登録商標)BEH200 SEC 1.7μm 4.6×150mMのカラム上で、SECクロマトグラフィーによって、凝集を決定した。(泳動用緩衝液:Gibco PBS-Invitrogen #14190-094+0.1MのNaClで希釈された)100μg/mlに調整された20μlの試料を、0.4ml/分でカラムに適用し、定組成溶離によって6分間にわたって分離した。
【0492】
データを、MassLynxによって分析し、AUCを用いて、凝集のレベルを定量化する。
【0493】
低pH実験
hC10.2を、プロテインGカラムに適用し、標準条件を用いてpH2.8で溶離した。試料をpH2.8に保持し、アリコートを、時間0、15、30、60、120および180分の時点で取り出し、中和してから、PBS中で脱塩した。試料を、結合親和性、凝集および脱アミド化について分析した。
【0494】
ストレス条件:40℃および28日間の脱アミド化におけるhC10.2の特性評価
Asnの脱アミド化が、ペプチドLC:T2、HC:T36およびHC:T25によってカバーされるいくつかの主要でない部位および3つの主要な部位において観察される。これらにおいて、脱アミド化が時間とともに増加し、それぞれ75%、38%および28%で終了する。ペプチドHC:T36およびT25と対照的に、LC:T2ペプチドにおけるAsn残基(LC N32およびN34)は、インシリコ分析(配列モチーフ)に基づいて、脱アミド化しやすいと予測されなかったが、意外なことに、実際の実験では、それらは、hC10.2における他のAsn残基と明らかに区別される。このペプチドの増加した脱アミド化は、二重リン酸化ペプチドに対する結合活性の低下と相関し、脱アミド化およびIC50の間の機械的関係を示唆する。この観察は、hC10.2 LCにおけるAsn 残基32および/または34を変更すると、これらの部位における脱アミド化を減少させ得ることも示唆している。
【0495】
変異体の分析では、単に、Asn32を、SerまたはGlnのいずれかに変更すると、Asn34における脱アミド化反応を完全に防ぐことが明らかである(
図20)。また、本発明者らは、この突然変異を有する変異体におけるGln32の脱アミド化を検出しない。
【0496】
低pHにおける脱アミド化
この試験では、本発明者らは、40℃安定性試験について上述されるのと同じ方法でhC10.2を分析した。この場合のみ、トリプシンおよびLys-Cの混合物を用いて(Promega製品)、リジン残基における切断を最適化した。脱アミド化のさらなる部位または程度は観察されず、ここでも、最も顕著なペプチドは、LC-T2、HC-T25およびHC-T36であった。さらに、低pHで処理された試料においてIC50の変化は観察されなかった。
【0497】
SEC分析
凝集のレベルは、全ての調製物において3%未満であり、凝集の程度の変化は、40℃で28日間にわたって観察されなかった。
【0498】
実施例9
rTg4510マウスからのタウシードの単離
rTg4510マウスは、テトラサイクリン-オペロン-レスポンダー(TRE)およびテトラサイクリン調整遺伝子発現系(tTA)からなるアクチベータ構築物の下流のヒトMAPT遺伝子におけるP301L突然変異を有する4R0Nタウを共発現する二重トランスジェニックマウスである。P301L突然変異は、染色体に関連するパーキンソニズム17(FTDP-17)を伴う前頭側頭型認知症を招く優性突然変異である。rTg4510マウスにおいて、P301L hタウの発現は、年齢に依存して、プレタングル(pre-tangle)および神経原線維変化(NFT)形成、ニューロンの損失および行動異常を含むタウ病変を誘発する。NFTは、対になったらせん状フィラメント(PHF)、ねじれたリボン(twisted ribbon)から構成される神経内タウ凝集体であり、または直線フィラメントは、洗浄剤に不溶性であり、主に、過リン酸化タウを含有する。過リン酸化は、タウが、成人健常脳に由来するタウより多くの部位においてリン酸化されること、および所与の部位について、通常のパーセンテージより高いタウ分子がリン酸化される(>8のリン酸化モル/タウモル)ことを意味する。NFTの解剖学的分布は、アルツハイマー病(AD)における認知低下ならびに正常な老化および軽度の認知機能障害における記憶力低下と相関する死後の病理組織学的特徴である。AD患者の脳におけるNFTの分布パターンは、非常に階層的であり、6つの段階に分けられている。NFT変化による脳における段階的な浸潤はまた、生化学的に確認されており、罹患領域にしたがって10段階に分類されている。AD脳に由来する異なるタウ種の生化学的特性評価は、元々、不溶性タウの単離のための1%のサルコシルを用いた分画プロトコルに基づいていた。この方法に基づいて、サルコシル不溶性ペレット(P3)画分において単離されるサルコシル不溶性過リン酸化タウ種が、PHF-タウとして定義され、生化学的なNFT同等物と見なされる。可溶性画分(S1)において単離される緩衝液可溶性過リン酸化タウ種は、非原線維オリゴマータウ種として定義され、生化学的なプレタングルタウ同等物と見なされる。rTg4510マウスにおいて、正常なモノマーリン酸化および非リン酸化ヒト4R0Nトランスジェニックタウが、可溶性画分(S1)中に存在し、SDS pageにおいて55kDaタウ種として視覚化される。P301L突然変異を有する過リン酸化4R0Nタウが、可溶性(S1)画分において、ならびにトリス-緩衝生理食塩水(TBS)可溶性沈殿物(S1p)およびサルコシル不溶性ペレット(P3)画分のみにおいて、64kDaおよび70kDaの移動度がシフトされたタウとして示される。P3において単離されるサルコシル不溶性64kDaおよび70kDaタウ種は、タウ原線維(PHF-タウ)および生化学的なNFT同等物である。S1におけるおよびTBS可溶性沈殿物画分(S1p)が富化された緩衝液可溶性64kDaおよび70kDaタウ種は、オリゴマータウであり、生化学的なプレタングルタウ同等物である。70kDaタウ種は、P301L突然変異体に対して特異的であり、FTDP-17患者の脳においても見られる。40週齢のrTg4510マウスに由来する脳組織を、50mMのトリス/HCl(pH7.4)、274mMのNaCl、および5mMのKClを含有する10体積のTBS中で均質化した。ホモジネートを、4℃で20分間にわたって27,000×gで遠心分離して、上清(S1)およびペレット(P1)画分を得た。TBS抽出性S1画分を、4℃で1時間にわたる150,000×gでの遠心分離によって、上清(S1s)および沈殿物(S1p)画分に分けた。S1pペレットを、10mMのトリス/HCl[pH8.0]中で、元のS1体積の5分の1に等しい体積になるまで再度懸濁させた。P1ペレットを、5体積の高塩/スクロース緩衝液(0.8MのNaCl、10%のスクロース、10mMのトリス/HCl、[pH7.4])中で再度均質化し、4℃で20分間にわたって27,000×gで遠心分離した。上清を収集し、37℃で1時間にわたってサルコシル(1%の最終濃度;Sigma)とともにインキュベートした後、4℃で1時間にわたって150,000×gで遠心分離して、P3画分と呼ばれるサルコシル不溶性ペレットを得た。P3ペレットを、10mMのトリス/HCl[pH8.0]中で、脳ホモジネートに使用される元の体積の半分に等しい体積になるまで再度懸濁させた。SDS-pageにおいて64および70kDaの過リン酸化タウとして特性評価されるrTg4510マウス脳に由来する病理学的タウは、それぞれTBS可溶性オリゴマーおよびサルコシル不溶性原線維タウとして、S1pおよびP3画分のみに存在していた。S1s画分は、SDS-pageにおいて55kDaタウとして示される正常な非リン酸化およびリン酸化タウを含有する。病理学的タウ、それぞれS1pおよびP3画分において単離される可溶性オリゴマーおよび不溶性原線維を、過リン酸化タウシードとして用いて、内因性モノマーヒトタウを、凝集タウの封入体中に動員し、rTg4510マウスから単離される初代皮質培養物におけるタウシーディングを誘導した。
【0499】
rTg4510マウスから単離される初代神経培養物におけるシーディングアッセイ
マウス皮質ニューロン(CTX)を、E14~16日目に、rTg4510マウス胚から単離した。単一トランスジェニックtTAアクチベータマウスを、単一トランスジェニック突然変異体タウレスポンダーマウスと交配期を合わせた(time-mated)。妊娠した雌を、受胎後14~16日の時点で安楽死させ、胚は、tTAアクチベータ導入遺伝子についてプライマー対の5’-GATTAACAGCGCATTAGAGCTG-3’および5’-GCATATGATCAATTCAAGGCCGATAAG-3’、ならびに突然変異体タウレスポンダー導入遺伝子について5’-TGAACCAGGATGGCTGAGCC-3’および5’-TTGTCATCGCTTCCAGTCCCCG-3’を用いた脳DNAを有する遺伝子型であった一方、単離された胚皮質を、4℃で塩化カルシウム(BrainBits LLC)なしでHibernate E中に保持した。rTg4510マウス胚に由来する皮質を選択し、溶解されたニューロンを、0.13×10
6個の細胞/cm2(420,000個の細胞/ml、100μl/ウェル、96ウェルプレート)の密度で100μg/mlのポリ-L-リジン被覆皿において平板培養し、酸化防止剤、0.5mMのL-グルタミン、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン(全ての溶液はGibco-BRL Invitrogen製)とともに2%のB-27補給剤が補充されたグリア調整Neurobasal培地中で培養した。グリア調整Neurobasal培地を、24時間のインキュベーションの後、コンフルエントおよび非増殖性初代マウス星状膠細胞培養物によって生成した。ニューロンを、培地の半分を新鮮なグリア調整Neurobasal培地と交換することによってインビトロで4日(DIV)の時点で供給し、その後、供給を、7日置きに行った。供給後DIV4で、神経培養物を、1μMのシトシンアラビノシドで処理して、細胞の増殖を停止させた。培養物中のグリア細胞の割合は、DIV15でグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)に対する抗体によって評価した際、10%未満であった。rTg4510マウスに由来するCTXは、内因性マウスタウおよびトランスジェニックヒトタウ4R0Nを発現する。rTg4510マウスに由来するCTXは、SDS-pageにおいて55kDaタウバンドとして示される正常なヒトモノマー非リン酸化およびリン酸化タウのみを含有し;過リン酸化タウ種(64および70kDa)は、rTg4510マウスに由来する未処理のCTX中に存在しない。DIV7で、病理学的タウシード、それぞれS1pおよびP3画分において単離される可溶性オリゴマーまたは不溶性原線維過リン酸化タウのいずれかとともにCTXをインキュベートすることによって、タウシーディングを誘発した。完全な培地交換を、DIV11で導入して、病理学的タウシードの連続的な取り込みを防ぎ、CTXにおけるタウシーディングを、DIV15で測定した。タウシーディングは、SDS pageにおける64、70および140kDaのより高い分子量における移動度がシフトされたタウバンドとして示される凝集および過リン酸化タウの封入体中へのモノマー可溶性ヒトタウの動員によって特徴付けられた。過リン酸化タウシード、それぞれS1pおよびP3画分からの可溶性オリゴマーまたは不溶性原線維は、CTXにおいて同等にタウシーディングを誘発した。タウシーディングに対するタウ抗体の効果を調べるために、CTXを、40週齢のrTg4510マウスから単離される0.1μlのP3または0.2μlのS1p画分(0.2ngの総ヒトタウを含有する)および10μgの抗体(hC10.2、hC10.2_N32S、hC10.2_A101T_N32S、ヒトIgG対照)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の混合物で処理した。タウシード抗体混合物を、CTXへの添加の前に4℃で2時間プレインキュベートした。DIV11で、新鮮なグリア調整Neurobasal培地への完全な培地交換を行った。DIV15で、4℃で45分間にわたって200rpmで振とうしながら、ニューロンを、1%のプロテアーゼ阻害剤混合物(Roche)、1%のホスファターゼ阻害剤混合物IおよびII(Sigma)、および0.2%のBenzonase(Sigma))を含む氷冷triton溶解緩衝液(50mMのトリス、150mMのNaCl中1%のtriton X-100(pH7.6)に溶解させ、溶解物を、Cisbioインビトロ凝集アッセイにおいて使用し、タンパク質含量を、製造業者の指示にしたがって、ビシンコニン酸(BCA)アッセイによって決定した。Cisbio製のタウ凝集アッセイは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)においてドナー(Tb3+コンジュゲート)およびアクセプタ(d2コンジュゲート)抗体の両方について同じ抗体を用いた時間分解蛍光に基づいており、製造業者の指示にしたがって行った。簡潔に述べると、9μlの試料を、9μlの抗体混合物と混合し、20時間インキュベートした。プレートを、Pherastaプレートリーダーで読み取って、時間分解蛍光(励起光のスイッチング後に測定/積分される(integrated)FRETシグナル)を評価した。アッセイは、rTg4510マウスに由来する脳物質において、および高い特異性および感度でrTg4510胚から単離されるタウ播種CTXに由来するニューロン溶解物において、タウオリゴマーおよび原線維の両方のタウ凝集を測定する。結果が
図21に見られる。ヒトIgG対照抗体とのP3またはS1pシードのインキュベーションは、播種CTXから、PBSとのP3またはS1pシードのインキュベーションと同様のタウ凝集シグナルをもたらした。PBSおよびヒトIgG対照抗体からのシグナルを平均し、100%タウ凝集として設定した。タウ抗体hC10.2、hC10.2N32SおよびhC10.2A101T-N32Sは、DIV15で、P3およびS1p誘発タウシーディングの両方からのタウ凝集シグナルを著しく減少させた。2つの個々の実験からの結果を要約した。hC10.2抗体は、P3およびS1p誘発タウシーディングを23%だけ減少させた。変異体hC10.2N32SおよびhC10.2A101T-N32Sは、P3およびS1p誘発タウシーディングを、それぞれ41~53%および48~60%だけ減少させた。変異体hC10.2N32SおよびhC10.2A101T-N32Sは、それぞれオリゴマーまたは原線維タウからなるS1pまたはP3からの過リン酸化タウシードによって誘発されるrTg4510に由来するCTXにおけるタウシーディングを減少させる際に、hC10.2と比較して優れていた。
【0500】
実施例10
hC10-2_N32S_A101Tの静脈内(i.v.)注射後のrTg4510マウスにおけるタウ構造の用量依存的装飾
方法:
12月齢のrTg4510マウス。これらのトランスジェニックマウスは、CamK2陽性ニューロン中、tet-off応答因子下でヒト変異タウ(P301L 0N4R)を発現し、6月齢以降に顕著なタウ過リン酸化およびもつれ形成を示す。さらに、神経変性が、強い病変を有する領域において、rTg4510マウスの12月齢の時点で存在する。マウスに、80mg/kg、20mg/kg、8mg/kgおよび0.8mg/kgの用量でhC10-2_N32S抗体を、尾静脈を介して単回静脈内(i.v.)注射した。マウス1匹につき100μLの体積を注射した。注射の3日後、マウスに、PBSを2分間灌流させた後、4%のパラホルムアルデヒドを10分間灌流させた。脳を、30%のスクロース中で凍結防止し、40ミクロンの自由に浮遊する低温切開片に切り分けた。切片を、20分間にわたってPBS/1%のBSA/0.3%のTriton X-100中の5%の正常なブタ血清とともにインキュベートし、PBS中で洗浄し、最後に、1:200でAlexaFluor488コンジュゲート二次抗ヒトIgG(#709-545-149;Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,USA)とともにインキュベートした。切片を、PBS中で洗浄し、取り付け、蛍光顕微鏡によって調べた。
【0501】
結果:
hC10-2_N32Sの静脈内(i.v.)注射により、老化したrTg4510マウス脳の主に海馬および皮質において標的構造へのインビボ結合が生じた(
図1)。観察される陽性構造の数は、個々のrTg4510動物によって異なっていた。rTg4510脳における陽性シグナルは、細胞内染色として容易に見えず、神経変性の過程で放出される細胞外のタウ物質を表し得る。半定量的採点によって、最も高いシグナル(蛍光強度および陽性構造の数)が、20および80mg/kgで投与された全てのマウスにおいて検出された(表6)。標識された構造が、4匹中3匹のマウスにおいて8mg/kgで存在したが、20および80mg/kgにおけるより明らかに低いレベルであった。0.8mg/kgの静脈注射は、適用される視覚化方法を用いてバックグラウンド上にシグナルを生じなかった。まとめると、これらのデータは、hC10-2_N32S抗体が、用量依存的に、脳実質中に浸透することができ、インビボでrTg4510マウスにおける標的を特異的に装飾することを示唆している。
図22。
【0502】
【0503】
実施例11 タウにおけるシードタウ病変
シードの調製
ADドナーに由来する凍結された皮質組織試料を、Tissue Solutions(Glasgow,UK)から入手した。脳組織を秤量し、滅菌冷PBS(脳試料の10倍の体積)中でナイフホモジザイナーを用いて均質化した。次に、ホモジネートを、出力2に設定されたBranson sonifierにおいて5×0.9秒パルスによって超音波処理した。ホモジネートを、4℃で5分間にわたって3000gで遠心分離し、上清を分割し、ドライアイス上で急速凍結させ、使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0504】
試験に使用される動物
CamKII陽性ニューロン(rtg4510)中で、テトラサイクリン制御性トランス活性化因子下でヒト変異タウ(P301L 0N4R)を発現するトランスジェニックマウスを使用した。このモデルは、通常、3~4月齢でタウ病変を発生し始める。妊娠中の母親および子が生まれてから最初の3週間にわたってドキシサイクリンを供給することによって、病変は、より遅い段階(6月齢後)で発生する。試験に使用される、ドキシサイクリンで予め処理されたマウスは、シーディングの時点で2.5月齢であった。
【0505】
抗体の処理
抗体を、滅菌PBS中1.5mg/mlの濃度で調製し、1つの投与時点に十分な抗体を含むアリコートにした。アリコートを、使用されるまで4℃で貯蔵した。2月齢から5.5月齢で殺処分されるまで、マウスに、抗体(10ml/kgに等しい15mg/kg)の腹腔内(IP)投与を週に1回与えた。以下の抗体を使用した:対照ヒトB12-IgGI、hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101T。
【0506】
定位固定注入
3回目の抗体投与を与えた直後に、イソフルラン吸入によってマウスに麻酔をかけ、定位フレームに固定した。頭蓋骨を露出させ、ブレグマおよびラムダが水平になるまで位置を調整した。ブレグマの2mm側方(右)および2.4mm後方で、頭蓋骨に孔を空けた。26ゲージのベベルチップ(SGE)を備えた10μlのシリンジのを用いて、シーディング材料を、脳表面の1.4mm前面に注入した。
【0507】
2μlの材料を、その部位にゆっくりと(0.5μl/分)注入し、その後、シリンジをさらに5分間そのままにして置いてから、それを取り出した。創傷を縫うことによって閉じ、マウスを、麻酔からの回復中に加熱によって支援した。次に、マウスを3ヶ月間飼育してから、4%のパラホルムアルデヒドで灌流固定した。
【0508】
組織学
固定された脳を、MultiBrain(登録商標)技術を用いてNeuroscience Associates(Knoxville,TN)で処理した。ブロック当たり最大で25のマウス脳を一緒に埋め込み、脳全体を通して冠状面において35μmの凍結切片にした。6つ置きの切片を、Gallyas銀染色で染色して、神経原線維変化を明らかにした。切片を取り付け、カバースリップし、Gallyas銀陽性ニューロン(細胞体)を、全ての脳の海馬の注入側で計数した。海馬の全てのサブ領域が含まれていた。脳当たり8つの切片を計数した。結果は、8つの切片からの陽性ニューロンの合計を反映する。
【0509】
結果
hC10-2、hC10-2_N32SおよびhC10-2_N32S_A101Tは全て、注射された海馬においてタウもつれのシーディングを著しく減少させた(一元配置anovaおよびテューキーの多重比較検定)。対照処理マウスと比較して、hC10-2:50%、hC10-2_N32S:47%およびhC10-2_N32S_A101T:60%。
図23。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
(a)配列番号3、配列番号31;配列番号32;配列番号33;配列番号34;配列番号35;配列番号36;配列番号37;配列番号38;配列番号40;および配列番号46からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(b)配列番号4;配列番号41;および配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
(c)配列番号5;配列番号42;および配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(d)配列番号6;配列番号43;配列番号49;配列番号52;および配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
(e)配列番号7;配列番号28;配列番号29;配列番号30;配列番号44;配列番号50;配列番号53;および配列番号56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;および
(f)配列番号8、配列番号39;配列番号45;配列番号51;配列番号54;および配列番号57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[2]
(a)配列番号12;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号19;配列番号20;配列番号21;配列番号22および配列番号23からなる群から選択される軽鎖;および
(b)配列番号11;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号24;配列番号25;配列番号26;および配列番号27からなる群から選択される重鎖
を含む、モノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[3]
(a)前記軽鎖が配列番号12であり;
(b)前記重鎖が、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号24、配列番号25、配列番号26および配列番号27からなる群から選択される、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[4]
(a)前記軽鎖が、配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号19;配列番号20;配列番号21;配列番号22および配列番号23からなる群から選択され;
(b)前記重鎖が配列番号11である、先行請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[5]
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[6]
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項1または5に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[7]
(a)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、請求項1~4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[8]
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項7に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[9]
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、請求項1~4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[10]
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項9に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[11]
(a)配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、請求項1~4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[12]
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項11に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[13]
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、請求項1~4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[14]
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項13に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[15]
(a)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(c)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
(d)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(e)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および
(f)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3
を含む、請求項1~4に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[16]
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項15に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[18]
請求項1~16のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントと、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
[17]
アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ピック病、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位型老年性認知症、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、脳卒中、脳卒中の回復、パーキンソン病に関連する神経変性、染色体に関連するパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病(グアムパーキンソン認知症複合)、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病およびリポフスチン沈着症からなる群から選択されるタウオパチーを治療するのに使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[18]
アルツハイマー病の治療に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[19]
アルツハイマー病、嗜銀顆粒病(AGD)、精神病、特に、ADに起因する精神病またはADの患者における精神病、ADに起因するアパシーまたはADの患者におけるアパシー、レビー小体型認知症の患者の精神医学的症状、進行性核上性まひ(PSP)、前頭側頭型認知症(FTDまたはその変異型)、TBI(急性または慢性外傷性脳損傷)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ピック病、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位型老年性認知症、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、脳卒中、脳卒中の回復、パーキンソン病に関連する神経変性、染色体に関連するパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病(グアムパーキンソン認知症複合)、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病およびリポフスチン沈着症からなる群から選択される疾患を治療するための薬剤として使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメント。
[20]
被験体におけるアルツハイマー病または他のタウオパチーを治療、診断またはイメージングする方法であって、治療的に有効な量の請求項1~16のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、またはそのエピトープ結合フラグメントを、前記被験体に投与する工程を含む方法。
[21]
前記治療が、長期である、請求項20に記載の方法。
【配列表】