(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】内部軸受を有するボス
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20220224BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20220224BHJP
F17C 1/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
F17C5/06
F16J12/00 E
F17C1/00 B
(21)【出願番号】P 2018567042
(86)(22)【出願日】2017-06-07
(86)【国際出願番号】 US2017036358
(87)【国際公開番号】W WO2017222817
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-04-01
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511167010
【氏名又は名称】ヘキサゴン テクノロジー アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ムトレイ ブラッド ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】エイフーセン ジョン アレン
(72)【発明者】
【氏名】イェギー ブライアン クリストファー
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-530104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0176674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
F16J 12/00-13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器の中央の長手軸に整列して当該圧力容器に取り付けるために構成されたボスであって、
前記圧力容器の内部から外部に突き出すように構成された円筒状の首部と、
閉鎖された端部を有する前記首部に設けられ、前記圧力容器の内部に連通していない第1穴と、
前記第1穴内に少なくとも部分的に配置されている球状の軸受と、を備え、
前記第1穴は、少なくとも部分的に球面であり、前記軸受けの外部球面の第1部分に対応している表面を含み、更に、
前記軸受けの外部球面の第2部分と、前記第1穴の部分との間に配置された保持具を備えたボス。
【請求項2】
前記軸受は、内部を貫通している第2穴を有している、請求項1記載のボス。
【請求項3】
前記第1穴及び前記第2穴は同軸の長手方向軸を有している、請求項
2に記載のボス。
【請求項4】
前記保持具は、少なくとも部分的に球形であって、前記軸受の前記外部球面の前記部分に対応する内面を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載のボス。
【請求項5】
前記第1穴は肩部を有していて、
前記保持具は、前記肩部に接するように構成されている内部側端面を有している、請求項1~4のいずれか1項に記載のボス。
【請求項6】
前記保持具は環状である、請求項1~5のいずれか1項に記載のボス。
【請求項7】
前記第1穴は溝を有しており、
前記保持具は、前記溝内に少なくとも部分的に嵌まるように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のボス。
【請求項8】
圧力容器を容器装着台上に支持するためのシステムであって、
前記圧力容器の中央の長手軸に整列して、当該圧力容器に取り付けられるためのボスであって、前記ボスは、前記圧力容器の内部から外部に突き出すように構成された円筒状首部を有し、前記
円筒状首部は、閉鎖された端部を有する第1穴であって、前記圧力容器の内部に連通していない第1穴を有する
円筒状首部を備えたボスと、
前記第1穴内に少なくとも部分的に配置されていて、内部を貫通している第2穴を有している、球状の軸受であって、前記第
1穴が、少なくとも部分的に球状であり、前記軸受けの外部球面の第1部分に対応する表面を含む、球状の軸受けと、
前記容器装着台に固定されるように構成されている取付要素であって、一部が、前記第2穴を貫通して延びていて、前記圧力容器の長手方向軸にほぼ沿って前記第1穴及び前記第2穴の内部を摺動可能である、取付要素と、
前記軸受けの外部球面の一部と、前記第1穴の一部との間に配置された保持具と、
を備えたシステム。
【請求項9】
前記保持具は、少なくとも部分的に球形であって、前記軸受の前記外部球面前記
一部に対応する内面を有している、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1穴は肩部を有していて、
前記保持具は、前記肩部に接するように構成されている内部側端面を有している、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記保持具は環状である、請求項8~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1穴は溝を有しており、
前記保持具は、前記溝内に少なくとも部分的に嵌まるように構成されている、請求項8~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記取付要素はピンとして構成されている、請求項8~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
ボスを有する圧力容器を容器装着台に支持する方法であって、
前記圧力容器は、中央長手軸を有し、
前記ボスは、該ボス内に第1穴を有し、
軸受けが、前記第1穴内に少なくとも部分的に配置され、内部を貫通している第2穴を有していて、
前記方法は、
取付要素の第1部分を、前記第2穴と、前記第1穴の一部とを貫通するように挿入することであって、前記取付要素の前記第1部
分が前記
中央長
手軸に略沿って、前記第1穴及び前記第2穴内を摺動可能である、前記取付要素の
第1部分を挿入することと、
前記取付要素の第2部を前記容器装着台に取り付けることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景技術]
本開示は、広くは流体保管に関し、詳細には流体格納容器のためのボス、及び、流体格納容器を、ボスを用いて装着する方法に関する。特に適している流体格納容器は圧力容器である。代表的な圧力容器としては、耐荷重外側シェルや流体不透過内部ライナが挙げられる。
【0002】
圧力容器シェルに適した材料としては、鋼等の金属や、熱硬化性または熱可塑性樹脂により互いに接着された、巻線ガラス繊維フィラメントや他の合成フィラメントの積層された層を含んでいてもよい、複合材が挙げられる。繊維は、ガラス繊維、アラミド、カーボン、グラファイト、または他の任意の一般的に既知の繊維強化材であってもよい。使用される樹脂材料は、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、熱可塑性、または、繊維間接着、層間接着、及び、容器が使用されることになる特定の用途に必要な断片化耐性を得ることが可能な、他の任意の適切な樹脂性物質であってもよい。例示的な圧力容器の形成に関する詳細は、「フィラメント巻付方法及び装置(Filament Winding Process and Apparatus)」と題する、米国特許第4838971号明細書に開示されており、参照により本明細書に援用される。
【0003】
エラストマー系または他の非金属製弾性ライナまたは内袋は、複合材シェル内に配置されることが多く、これにより容器を封止して、内部流体の複合材材料への接触を防ぐ。ライナは、圧縮成形、ブロー成形、射出成形、または他の任意の一般的に既知の技術によって製造可能である。あるいは、ライナは、鋼、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、白金、金、銀、ステンレス鋼、及びそれらの任意の合金を含む、他の材料でできていてもよい。このような材料は一般に、高弾性率であるとして特徴づけることができる。ある実施形態では、ライナはブロー成形された高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されている。
【0004】
容器の複合材構造は、軽量や腐食、疲労、及び突発故障への耐性などの数多くの利点をもたらす。これらの特性は、少なくともある程度は、強化繊維またはフィラメントの比強度が高いことによるものである。このような複合材製容器は例えば水素、酸素、天然ガス、窒素、メタン、プロパン、及びロケット等の燃料といった様々な流体の、加圧下での格納に広く使用されている。一般的に、圧力容器はいかなる寸法でも、またいかなる構成でも可能である。容器は例えば、重さが重くても軽くても、単回使用(つまり使い捨て)であることも、再使用可能であることも、高圧(例えば50psi以上)または低圧(例えば50psi以下)にさらされることも、または、高温や極低温の温度での流体の保管に使用することも可能である。圧力容器に関する詳細は、「損傷軽減システムを備えた圧力容器(Pressure vessel with damage mitigating system)」と題する、米国特許第5476189号明細書に提示されており、参照により本明細書に援用される。
【0005】
上述のような特徴を有する複合圧力容器は、当初は航空機や航空宇宙船の用途に開発されたが、これは主に、これらの乗物では重量制限が不可欠であるからである。しかし、バスや自動車等の地上車両に圧縮天然ガス(compressed natural gas:CNG)がより広く使用されるようになってきたので、複合圧力容器もより広く使用されるようになった。圧力容器の構造的な必要条件は、端部が丸みを帯びたおおむね円筒形状が、強度と梱包の効率の良さの両方の観点から大いに望まれる形状要素であることである。しかし、この丸みを帯びた形状が、このような圧力容器の車両への固定を難しくする可能性がある。
【0006】
圧縮ガスシリンダの首部は、鍔や同様の機構による取り付けに適した構造的な突起を提供する。いくつかの既知の設計では、この構造を利用してガスシリンダを固定する。しかし、このような設計には数多くの難点がある。設計の中には、位置合わせ不良への対処が不十分であり、位置合わせ不良が起こった場合には首部構造にかなりの応力をかけてしまう可能性があるものもある。また、首部の固定が不完全な設計もあり、そのために、ある特定の状況下ではシリンダが装着台から脱離してしまう危険性がある。さらに、シリンダがその主軸を中心にして回転する可能性があり、これにより接続ラインや他の取り付けられている機器に応力がかかる場合もある。
[発明の概要]
一態様では、圧力容器に取り付けるように構成されているボスは、内部にある第1穴と、第1穴内に少なくとも部分的に配置されている軸受と、を有している。別の態様では、圧力容器を容器装着台上に支持するシステムは、ボスと、軸受と、取付要素とを有している。ボスは、圧力容器に取り付けられていて、内部に第1穴を有している。軸受は、第1穴内に少なくとも部分的に配置されていて、内部を貫通している第2穴を有している。取付要素は、容器装着台に固定されるように構成されており、取付要素の一部は、第2穴を貫通して延びていて、圧力容器の長手方向軸にほぼ沿って第1穴及び第2穴の内部を摺動可能である。
【0007】
さらに別の態様では、圧力容器を容器装着台上に支持するための方法が説明されている。圧力容器は、内部にある第1穴と、第1穴内に少なくとも部分的に配置されていて、内部を貫通している第2穴を有している軸受とを有する、ボスを有している。本方法は、取付要素の第1部分を、第2穴と、第1穴の一部とを貫通するように挿入し、取付要素の第2部分を容器装着台に装着する。
【0008】
本開示は、その様々な組合せにおいて、装置形態または方法形態のどちらかで、以下の項目の列記によって特徴づけられてもよい。
項目1:圧力容器に取り付けるように構成されているボスであって、
内部にある第1穴と、
第1穴内に少なくとも部分的に配置されている軸受と、を有しているボス。
【0009】
項目2:軸受は球形である、項目1記載のボス。
項目3:第1穴は、少なくとも部分的に球形であって、軸受の球形外面の一部分に一致する、表面を有している、項目2記載のボス。
【0010】
項目4:軸受は、内部を貫通している第2穴を有している、項目1~3のいずれか1つに記載のボス。
項目5:第1穴及び第2穴は同軸の長手方向軸を有している、項目4記載のボス。
【0011】
項目6:軸受の球形外面の一部と第1穴の一部との間に配置されている保持具をさらに有している、項目2~5のいずれか1つに記載のボス。
項目7:保持具は、少なくとも部分的に球形であって、軸受の球形外面の一部分に一致する、内面を有している、項目6記載のボス。
【0012】
項目8:第1穴は肩部を有していて、
保持具は、肩部に接するように構成されている内部側端面を有している、項目6~7のいずれか1つに記載のボス。
【0013】
項目9:保持具は環状である、項目6~8のいずれか1つに記載のボス。
項目10:第1穴は溝を有しており、
保持具は、溝内に少なくとも部分的に嵌まるように構成されている、項目6~9のいずれか1つに記載のボス。
【0014】
項目11:圧力容器を容器装着台上に支持するシステムであって、
圧力容器に取り付けられ、内部に第1穴を有している、ボスと、
第1穴内に少なくとも部分的に配置されていて、内部を貫通している第2穴を有している、軸受と、
容器装着台に固定されるように構成されている取付要素であって、一部が、第2穴を貫通して延びていて、圧力容器の長手方向軸にほぼ沿って第1穴及び第2穴の内部を摺動可能である、取付要素と、を有しているシステム。
【0015】
項目12:軸受は球形であり、
第1穴は、少なくとも部分的に球形であって、軸受の球形外面に一致する、表面を有している、項目11記載のシステム。
【0016】
項目13:軸受の球形外面の一部と第1穴の一部との間に配置されている保持具をさらに有している、項目12記載のシステム。
項目14:保持具は、少なくとも部分的に球形であって、軸受の球形外面の一部分に一致する、内面を有している、項目13記載のシステム。
【0017】
項目15:第1穴は肩部を有していて、
保持具は、肩部に接するように構成されている内部側端面を有している、項目13~14のいずれか1つに記載のシステム。
【0018】
項目16:保持具は環状である、項目13~15のいずれか1つに記載のシステム。
項目17:第1穴は溝を有しており、
保持具は、溝内に少なくとも部分的に嵌まるように構成されている、項目13~16のいずれか1つに記載のシステム。
【0019】
項目18:取付要素はピンとして構成されている、項目11~17のいずれか1つに記載のシステム。
項目19:ボスを有する圧力容器を容器装着台に支持する方法であって、ボスは、内部にある第1穴と、第1穴内に少なくとも部分的に配置されていて、内部を貫通している第2穴を有している、軸受と、を有しており、当該方法は、
取付要素の第1部分を、第2穴と、第1穴の一部とを貫通するように挿入すること及び、
取付要素の第2部分を容器装着台に装着すること、を含む方法。
【0020】
項目20:軸受は球形であり、本方法はさらに、取付要素の第1部分を、軸受を第1穴内に少なくとも部分的に保持する保持具内を貫通させる、項目19記載の方法。
本概要は、以下にある詳細な説明においてさらに説明される概念を、簡略化した形態で紹介するために提供されている。本概要は、開示された主題や請求された主題の基幹となる特徴、または必須の特徴を特定することを意図するものではなく、かつ、開示された主題や請求された主題の開示された各実施形態、または全ての具体化を説明することを意図するものでもない。さらに、本概要は、請求された主題の範囲を決定する際に役立つものとして用いることを意図するものではない。他の多くの新たな効果、特徴、及び関連性は、この説明が進むにつれて明らかになるであろう。以下に続く各図及び説明は、実施形態の実例をより詳細に例示する。
【0021】
開示された主題を、添付の各図を参照してさらに説明する。ここでは、同様の構造またはシステム要素には、これらの図の全部を通して同様の参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、従来技術における圧力容器と装着用組立体を、説明のためにフレーム302は透明であるとして描いた斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のボス及び装着用組立体の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、ボスと装着用組立体を組み立てた状態の、
図1の線3-3に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、本開示のボスの一例示的実施形態を用いた圧力容器の斜視図であり、本図では、ボスの構成要素は、分解図内では互いから分離している。
【
図5】
図5は、分解した形態における、例示的なボスの
図4の線5-5に沿った斜視断面図である。
【
図6】
図6は、各構成要素が一体に組み立てられた状態における
図5のボスの斜視断面図である。
【
図7】
図7は、
図4に示されている圧力容器の一部分の、
図4の線5-5に沿った断面図であり、ここでは、例示的なボスの各構成要素が一体に組み立てられた状態であり、さらに、容器を、例示的なボスを介して外部構造に装着可能である、装着ピンを有している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記で識別表示した各図は、開示された主題の1つ以上の実施形態を説明しているが、本開示で述べたように他の実施形態もまた想定される。全ての場合において、本開示は、限定するためではなく表現するために、開示された主題を提示する。本開示の原理の範囲及び精神の範疇にある他の数多くの変形及び実施形態が、当業者により考案されうることが理解されるべきである。
【0024】
各図は定尺で描写されていない場合もある。特に、いくつかの特徴は、分かりやすくするために他の特徴と比較して拡大されている場合もある。また、「上方の(above)」、「下方の(below)」、「上の(over)」、「下の(under)」、「最上部の(top)」、「底部の(bottom)」、「側方の(side)」、「右の(right)」、「左の(left)」等の用語が用いられる場合、これらの用語は、説明を理解しやすくするためのみに使用されることが理解される。各構造は別の方向を向いている場合もあることが想定される。
[詳細な説明]
「流体収容シリンダを装着するための方法及び装置(Method and apparatus for mounting a fluid containment cylinder)」と題し、参照により全体が本明細書に援用される、Eihusen等による米国特許第6986490号明細書には、従来技術の容器固定方法及び装置が説明されている。この方法及び装置は、軸方向及び回転方向の動きに対して圧力容器を確実に固定する一方で、圧力容器装着構造が、圧力容器の首部に過度の応力をかけることなく、ある程度の位置合わせ不良を吸収できるようになっている。
【0025】
図1~3に示されているように、従来技術におけるシリンダ及びフレームの組立体300は、シリンダ304のボス308の首部306の外面の周囲に配置されている球面軸受310を有している。ボス308は、「フィラメント巻き付け式圧力容器のためのボス(Boss for a filament wound pressure vessel)」と題し、参照により本明細書に援用される、米国特許第5429845号明細書に開示されているようなボスであってもよい。球面軸受310の内面322は、首部306の外面と接合するような形状をしている。例えば、首部306の円筒形状に沿うようにするために、内面322は円筒形である。組み立てた際には、球面軸受310は、フレーム302内で球形の内面316に嵌まっている。球面軸受310は、固定鍔320によりフレーム302内に収まっている。固定鍔320は、球面軸受310の外面に嵌まるような形状をした内面324を有していてもよい。固定鍔320は、止め輪330によりフレーム302内に保持されている。ある程度の軸位置合わせ不良は、組立体300によって、弊害がある可能性がある応力をシリンダ304のボス308の首部306にかけることなく許容可能である。しかし、圧力容器は、車両内等のスペースが限られている領域に装着することが多い。このような領域では、首部306、フレーム302、軸受310、及び固定鍔320の拡張に貴重なスペースが求められる。
【0026】
図4~7は本開示の例示的なボス12を示しており、ここでは、ボス12と取り付けられた圧力容器10のそれぞれの装着構造が、ボス12の内側にある穴26内に設けられている。そのため、スペースが指定されている場合に、容器10はシリンダ304よりも長くなることができる(その結果、より大きな容積が提供できる)。なぜなら、容器10の装着に必要とされる容器10の外側の構造が少なくなるからである。開示されているボス12、及び複合材圧力容器10の装着方法により、貴重なスペースを占有することなく、容器の拡大が可能になる。
【0027】
図4は、保持具20と保持輪22とによってボス12の首部16内に保持されている内部軸受18を有している、本開示の例示的なボス12を含む、圧力容器10の斜視図である。
図5は、容器10から外されている状態における例示的なボス12の分解斜視断面図であり、断面は
図4の線5-5に沿ったものである。
図6は
図5と同様であるが、ボス12の各構成要素は一体に組み立てられている。
図7は、ボス12の各部の周囲に形成された圧力容器10のライナ34とシェル36とをさらに示していて、さらには、少なくとも一部が穴26内へ入り、かつ、軸受18の穴56を貫通して延びている、装着ピン14が示されている。
【0028】
図4~7に示されている例示的実施形態において、ボス12の首部16には、内部に穴26が機械加工、または他の方法で形成されている。穴26は、軸受18を受容するように構成されており、軸受18は、2つの環状保持具、つまり軸受カップ保持具20と保持輪22とによって、穴26内に配置・保持されている。
図7に示されているように、本事例ではピン14として構成されている、容器装着または取付要素の一部が、ボス12の穴26内にほぼ収容されている。
【0029】
図5~7に示されているように、軸受18は、その内部を貫通する穴56を有している。
図6及び
図7に示されているように、穴26及び穴56の各長手方向軸は軸24方向に同軸であり、軸24は圧力容器10の長手方向軸と一致する。
図7に示されているように、穴56は、ピン14の一部を、穴56を貫通して穴26には部分的に挿入できるように構成されている。ピン14は、軸受18を貫通してボス12の穴26内へ、軸24に沿って長手方向に可動である。ピン14の外側部分70は、容器10を外側の容器装着構造(図示せず)に装着する例示的方法で使用される。従来の手法では、外側部分70は、ピン14、よって圧力容器10を、このように従来の容器装着構造に装着可能にするための締結具、開口、ブラケット、及び他の取り付け器具を有することもある。開示されたこの装着システムは、軸24に沿って穴56を貫通して穴26内では少なくとも部分的に行われる、ピン14の長手方向の摺動運動によって、加圧中に容器10が長さ方向に拡張することを可能にする。さらに、開示されたシステムでは、外側部分70に取り付けられている外側構造に対するピン14の配置に影響を及ぼすことなく、圧力容器10に対して、例示的実施形態では球面軸受である軸受18及び軸24を中心にした回転運動にある程度の自由度が得られる。軸受18、保持具20、22、及びピン14のかなりの部分をほぼボス12内に位置させることにより、開示されたボス12及び装着システムは装着台の必要性がなくなる。よって、ある所定の格納スペースの長さに対して、
図1~3の組立体300のシリンダ304の長さと比較して、流体の格納・保管に使用できる容器10の長さを伸ばすことができる。
【0030】
図5及び
図6に示されているように、ボス12は、長手方向の穴26を有している。いくつかの実施形態において、ボス12は、端壁28にアパーチャ等の開口を有していて、これにより穴26と容器10の内部環境30(
図7に標記されている)との間で流体を連通する。他の実施形態では、ボス12は、容器10の内部環境30と外部環境54との間で流体の連通を可能にするものではなく、むしろ、主として容器10を装着するものとして使用される。この場合、内部で貫通しているポートを有する別のボスを、容器10上の別の場所に設けることも可能である。
【0031】
ボス12の一例示的実施形態において、穴26の表面の少なくとも一部に雌ねじ32が設けられており、これにより、例えば圧力容器10のライナ34とシェル36とをボス12の周囲に形成するためのマンドレル(図示せず)に、ボス12を装着することが可能になる。一例示的実施形態において、穴26は、軸受18の球形外面40に沿うような形状をしている、部分的に球形の内面38を有している。一例示的実施形態において、穴26は、形状が保持具20の円筒形外面44に一致するように構成されている、ほぼ円筒形の内面42を有している。さらに、保持具20は、軸受18の球形外面40の一部分の形状に沿うように部分的に球形である内面46を有している。一例示的実施形態における軸受18は、内部側端面48と外部側端面52とを有している。
図6及び
図7に示されているように、軸受18の外部側端面52は圧力容器10の外部環境54に曝されている。
【0032】
一例示的実施形態において、保持具20は内部側端面58を有し、内部側端面58は穴26の肩部50に接するように構成されている。保持具20は外部側端面60も有し、外部側端面60は、保持輪22に隣接するように構成されている。一例示的実施形態における保持輪22は、外径及び厚さが、穴26の溝62内に少なくとも部分的にぴったりと嵌合できるような大きさである。保持輪22はまた、軸受18の球形面40の外面に沿うように、部分的に球形形状の内径面を有している。
【0033】
図6に示されているように、例示的なボス12は、首部16から外側に向かって放射状に延びるフランジ64を有している。一例示的実施形態において、フランジ64は、蟻継構造である溝66を有している。
図7を参照すると、圧力容器10の形成の際には、ボス12を、容器形成用マンドレル(図示せず)上に(ねじ32を介して)装着することができる。このように配置すると、溶解ポリマー材料を内部形状(図示せず)の周りに流すことができるが、ここではライナ材料を溝66内に流すことができ、これによりライナ34をボス12のフランジ64に機械的に連結する連結タブ68が形成される。ライナ34の材料を硬化、または他の方法で固体化した後、フィラメント巻き付け工程を用いて、ライナ34とフランジ64の外側部分の周囲にシェル36を形成可能である。
【0034】
いくつかの実施形態を参照して本開示の主題を説明してきたが、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、形態や詳細の変更を行ってもよいことを認識するであろう。例えば、例示的実施形態において、軸受18は、
図7に示すように、圧力容器10を外側構造(図示せず)に装着する際に、ピン14を介して複数の自由度が可能になる球面軸受である。しかし、軸受18を少なくとも部分的にボス12内に配置することによる省スペース化の効果は、ジャーナルスリーブ、ブッシング、円筒形、線形、及び他の軸受構造を含む、非球面軸受を用いても実現可能である。軸受自体は、ゴム等の圧縮性材料で形成、または圧縮性材料を含有することによって、例えば、振動を調整したり動きを偏向したりする働きをさらに提供してもよい。また、圧力容器10を外側構造に装着する際の動きの自由度も、例えば可撓で弾性のあるピン14を用いることによって達成可能である。追加として、または代替として、ピン14は、可撓または弾性のある外側構造(図示せず)に装着可能である。ピン14は、断面が円形であることも、または他の形状、例えば六角形等であることによって、例えば対応する形状の穴56との楔止めを可能にすることができる。さらに、軸受18を少なくとも部分的にボス12内に装着する場合に省スペース化を最適に実現しながら、代替として、または追加として、軸受18をボス12の端面または外面に面実装することができる。また、ある実施形態に関して開示したいずれの特徴も、別の実施形態に組み込んでもよいし、その逆を行ってもよい。