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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】屋根構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20220224BHJP
   E04H 6/02 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
E04B1/343 U
E04H6/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019029067
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020133274
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000180302
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000126207
【氏名又は名称】シコク景材関東株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 晃士
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕章
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-059716(JP,A)
【文献】特開2019-007209(JP,A)
【文献】特開2004-308402(JP,A)
【文献】実開昭60-148403(JP,U)
【文献】特開2016-089417(JP,A)
【文献】実開平03-063620(JP,U)
【文献】実開昭58-075822(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0065038(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/343
E04H 1/12
E04H 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の屋根材を吊持材で吊下げ支持した屋根構造物であって、
前記屋根材が、平板状のアルミニウム製の形材であり、
前記吊持材には、前記屋根材を吊下げ支持するための固定金具が取付けられており、
前記固定金具は、
前記吊持材と連結するための連結部と、
前記屋根材を吊下げ支持するための支持部とを有し、
前記支持部には被係合片が形成されており、
前記屋根材は、その一側縁部に、前記被係合片の上部に係合する第1係合片が形成されている
ことを特徴とする屋根構造物。
【請求項2】
記屋根材は、その他側縁部に、隣接する屋根材の第1係合片に係合する第2係合片が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の屋根構造物。
【請求項3】
前記固定金具における支持部と、
該支持部上に配置された前記屋根材の第1係合片と、
該第1係合片上に配置された隣接する屋根材の第2係合片とが、
上方からネジにより結合されている
ことを特徴とする請求項2記載の屋根構造物。
【請求項4】
前記屋根材の第1係合片には、排水用溝が付設されている
ことを特徴とする請求項2または3記載の屋根構造物。
【請求項5】
前記屋根材の第2係合片には、前記排水用溝に雨水を案内するための突起が設けられている
ことを特徴とする請求項4記載の屋根構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造物に関する。さらに詳しくは、屋根材を吊持材で吊下げ支持する屋根構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、屋根体を一対の支柱で支持した片持ち構造のカーポート等を含む屋根構造体を開示している。屋根体は一対の支柱にそれぞれ接続された梁の下方に吊り下げ支持されている。
屋根体は複数枚の長尺の屋根材からなり、各屋根材はネジ部材で梁に結合されている。つまり、ネジ部材は梁の下縁に形成された板部を貫いて上から下向きに差し込まれ、板部の下方に配置された屋根体の適所にネジ部材のネジ山を螺合させて結合している。
【0003】
上記従来技術では、各屋根材の両側縁には引掛け片と被引掛け片とが形成されており、先にネジ部材で梁に固定された屋根材の引掛け片に、これから取付ける屋根材の被引掛け片を引掛けて、片方の側縁を預けた状態にして、人力で他方の側縁を押し上げて長尺の屋根材を水平にし、ネジ部材を上から差し込んで締結する作業が必要であった。
【0004】
しかるに、上記従来技術では、以下の問題点があった。
まず、屋根材が内部に空洞を有する中空構造のアルミ材料の形材で構成されているため重量があり、この屋根材を上向きに押し上げる作業は重筋作業となって作業員への肉体的負担が大きかった。
また、屋根材の重量をネジ部材のネジ山だけで支えているので、積雪や強風などの上下方向の負荷により、ネジ部材のゆるみが生じやすく、屋根材のガタツキが生じる惧れがあった。
さらに、隣接する屋根材の接合部分に雨漏りを防止するパッキンを介装が必要であった。通常パッキンは樹脂製であるため、経年劣化により、防水性能が低下する惧れがある。そのため、パッキンを取り替える必要があり、メンテナンスに手間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-123647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、屋根材を軽量化することで、取付け作業が容易になる屋根構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の屋根構造物は、複数枚の屋根材を吊持材で吊下げ支持した屋根構造物であって、前記屋根材が、平板状のアルミニウム製の形材であり、前記吊持材には、前記屋根材を吊下げ支持するための固定金具が取付けられており、前記固定金具は、前記吊持材と連結するための連結部と、前記屋根材を吊下げ支持するための支持部とを有し、前記支持部には被係合片が形成されており、前記屋根材は、その一側縁部に、前記被係合片の上部に係合する第1係合片が形成されていることを特徴とする。
第2発明の屋根構造物は、第1発明において、前記屋根材は、その他側縁部に、隣接する屋根材の第1係合片に係合する第2係合片が形成されていることを特徴とする。
第3発明の屋根構造物は、第2発明において、前記固定金具における支持部と、該支持部上に配置された前記屋根材の第1係合片と、該第1係合片上に配置された隣接する屋根材の第2係合片とが、上方からネジにより結合されていることを特徴とする。
第4発明の屋根構造物は、第2発明または第3発明において、前記屋根材の第1係合片には、排水用溝が付設されていることを特徴とする。
第5発明の屋根構造物は、第4発明において、前記屋根材の第2係合片には、前記排水用溝に雨水を案内するための突起が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、つぎの効果を奏する。
a)屋根材が平板状のアルミニウム製の形材であることから、従来の空洞を有する中空構造のものと比べ、軽量化が可能であり、かつ、材料費を抑えることができる。また、屋根材が平板状であることから、天井材を使用しなくても、屋根構造物の天井面を形成することができる。
b)屋根材の第1係合片を固定金具の被係合片に係合させると屋根材の一側縁部を支えることができ、施工が容易となる。
第2発明によれば、屋根材の第1係合片を固定金具の被係合片に係合させた後で、第2係合片を隣接する屋根材の第1係合片に係合させる、屋根材を取付状態に仮固定できるので、施工が容易になり、かつ、施工作業の安全性が向上する。
第3発明によれば、固定金具の支持部と、屋根材の第1係合片と、隣接する屋根材の第2係合片とをネジにより結合していることから、従来技術のように屋根材の一側縁のみを梁などに固定したものに比べ、風などにより生じる屋根材のガタツキを抑えることができる。
また、第1係合片と第2係合片が、支持部上に配置されていることから、積雪などの下方向の負荷に対して、ネジのゆるみが生じにくい。
さらに、屋根材の上方からネジにより結合していることから、屋根構造物の下から屋根を見上げた際にネジが見えず、フラットな天井面を形成することができる。
第4発明によれば、第1係合片と第2係合片の間から雨水が入り込んだ場合でも、第1係合片に付設した排水用溝で雨水を排水できるため、屋根からの雨漏りを防ぐことができる。また、隣接する屋根材間(たとえば、第1係合片と第2係合片の間)にパッキンなどの防水用の部材を設ける必要が無いので、材料費を抑えることができ、かつ、メンテナンスの手間を省くことができる。
第5発明によれば、第1係合片と第2係合片の間から入り込んだ雨水が第2係合片の下面を伝った場合でも、突起によって雨水を排水用溝へ案内するので、屋根からの雨漏りを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る屋根構造物の部分斜視図である。
図2】固定金具10と母屋1bを示す斜視図である。
図3】(A)図は本発明に係る屋根材1eaの断面図、(B)図は屋根材1fの断面図、(C)図は屋根材1gの断面図である。
図4】第1実施形態に係る屋根構造物の施工要領の説明図である。
図5】第1実施形態に係る屋根構造物の施工後の説明図である。
図6】(A)図は本発明に係る屋根材1ebの断面図、(B)図は屋根材1ebの施工後の屋根構造物の説明図である。
図7】第1実施形態に係る屋根構造物の斜視図である。
図8図7に示す屋根構造物の平面図である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
図10図8のX-X線断面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る屋根構造物の斜視図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る屋根構造物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の各実施形態を図面に基づき説明する。
本発明に係る屋根構造物の適用対象はカーポートのほか、サイクルポートや回廊などを含むが、以下では、代表的な適用対象であるカーポートに適用した実施形態を説明する。
なお、本明細書で、前後方向を意味する用語は、図7における屋根1の自由端側(図中左側)を基準として「前方」とか「前端」と表現し、屋根1の固定端側(図中右側)を基準として「後方」とか「後端」と表現する。また、左右を意味する用語は図7における手前側を「左」とし、奥側を「右」として表現する。上下を意味する用語は、各図の上下方向を基準として表現する。
【0011】
(第1実施形態に係る屋根構造物の構成)
図7に示す符号Aはカーポートで、屋根1と支柱2を主たる構成要素としている。
屋根1は、その後端部で左右一対の支柱2,2に取付けられ固定されている。屋根1の前端部は自由端である。屋根1は、屋根材1eを吊持材で吊下げ支持した構成となっている。本発明の係る屋根材1eには、図3(A)に示す屋根材1eaと図6(A)に示す屋根材1ebの2つが含まれる。2つの屋根材1ea,1ebを含めて説明するときは符号1eを使用する。特許請求の範囲にいう吊持材には、母屋のほか梁や垂木などが含まれるが、以下では母屋1bを吊持材に用いた実施形態を説明する。
【0012】
本実施形態における支柱2は、上端が後方に傾斜した状態で屋根1を支持する傾斜タイプである。支柱2自体の形状は任意であり、断面四角形の角筒や、角筒を2本結合したものなどを採用できる。また、支柱2は直立したものであってもよい。
本発明において、屋根1を支持する支柱2の本数は2本以上でもよく、本数に制限はない。たとえば、屋根1の左右寸法が大きい場合、左右一対の支柱2の間に、中間支持用の支柱2を設けてもよい。また、屋根1の四方に、各々支柱2を設け、支柱2を4本使用してもよい。符号2bは支柱2の下端部であり、地中のコンクリート基礎5に固定されている。
【0013】
屋根1は、梁1a、母屋1bからなる枠材1dに平板状の屋根材1eを固定した部材である。梁1aは、2本用いられ2本の支柱2の上端に固定されている。母屋1bは2本の梁1aに対して直角に交差して取付けられている。図示の実施形態では4本の母屋1bが用いられているが、3本以下であってもよく、5本以上であってもよい。
屋根1の後端には横樋4aが取付けられ、支柱2の側面には縦樋4bが取付けられている。横樋4aと縦樋4bとでカーポートAの樋4が構成されている。
梁1aや母屋1bはアルミニウム製の形材が用いられるが、これに限らず任意の材料を用いることができる。
【0014】
本発明における屋根材は、屋根としての機能(雨水などを排水溝へ案内する、太陽光を遮断する等)を有する部材である。図示の屋根材1eは長尺であり平板状のアルミニウム製の形材が用いられる。屋根材1eは図7および図8に示すように、複数枚が用いられる。図示の例では、8枚であるが、屋根1の大きさによって7枚以下でもよく、9枚以上でもよい(この枚数には後述する屋根材1f,1gを含まない)。
左右両端の梁1a,1aに固定される屋根材1f,1gは本発明に係る屋根材1eとは異なる構成となるが、この点は後述する。
図8に示すように、屋根材1eの長さは、屋根1の長さとほぼ等しくなる。換言すれば、屋根材1eは、屋根1の前端部から後端部に至る長さの長尺材である。
【0015】
従来の屋根材は、内部に空洞を有する中空構造のアルミニウム製の形材であるが、本発明の屋根材1eは平板状のアルミニウム製の形材であるため、軽量化が可能であり、かつ材料費を抑えることができる。また、本発明の屋根材1eは、平板状とすることで、屋根構造物の天井面を形成することができる。
【0016】
つぎに、吊持材である母屋1bに屋根材1eを取付ける構造を説明する。
図1に示すように、屋根材1eは固定金具10を介して母屋1bに吊下げ支持される。図1では1本の母屋1bに吊下げられる屋根材1eの長手方向の一部のみ図示しているが、実際には図8および図9に示すように、複数本の母屋1bで屋根材1eが固定金具10によって固定される。
【0017】
図2に示すように、固定金具10は母屋1bの下面に取付けられる。
固定金具10は、母屋1bと連結するための連結部11と、屋根材1eを吊下げ支持するための支持部12とを有する。固定金具10は、連結部11と支持部12が別体のものを結合したものであってもよいが、一体に形成された部材であることがより好ましい。
【0018】
連結部11は断面略U字状に形成されており、1枚の底板11aとこの底板11aの両端縁から立ち上る2枚の側板11bからなる。2枚の側板11bにはネジ孔11cが形成されており、ネジ孔11cにネジを横から通して母屋1bにねじ込むことで固定金具10を母屋1bの下面に取付けることができる。連結部11の形状は、吊持材に連結できるものであれば、とくに制限はなく、断面略U字状のものに限られない。
【0019】
前記支持部12は連結部11の底板11aにつながるよう平板状に形成されており、底板11aより広い幅を有している。
そして、支持部12の両端部には各々雌ネジ孔12cが形成されており、屋根材1eを固定するためのネジ30をねじ込めるようになっている。
また、支持部12の先端は上方に向け折り曲げられた被係合片13が形成されている。この被係合片13は屋根材1eを吊り下げたときの外れ落ちを防止するためのものである。
【0020】
つぎに、本発明に係る屋根材1eを説明する。
図3(A)は、屋根材1eのうち第一の例である屋根材1eaを示している。
同図に示すように、本発明に係る屋根材1eaは平板状の本体部20を備えており、その一側縁部(図中右端側)には、第1係合片21が形成されており、その他側縁部(図中左端側)には第2係合片22が形成されている。なお、本発明において、屋根材が平板状であるとは、屋根材の本体部が空洞を有する中空構造を備えていない形状のことである。
第1係合片21と第2係合片22は断面形状が複雑であるが、屋根材1eaの素材はアルミニウム製の形材であるので、複雑な断面形状でも任意に成形することができる。
【0021】
第1係合片21は、固定金具10の被係合片13に係合する係合部26と、支持部12および隣接する屋根材の第2係合片22とネジ30により結合する結合面27と、を有する。この屋根材1eaにおいて、第1係合片21は、断面視で上下反転した略L字形に形成されており、結合面27の下面には下向きの2本の平行なリブ21a,21aが形成されている。このリブ21a,21aの下端は施工状態で固定金具10の支持部12の上面に接触する。
この屋根材1eaでは、結合面27が係合部26の一部の役割を担う形状となっている。
【0022】
第1係合片21の外端(右端)には断面L字形の樋23が形成され、その内側が雨水の排水用溝24とされている。この排水用溝24は屋根材1eaの全長にわたって形成されている。屋根1の全表面に降ってきた雨水は基本的に本体部20でほとんど全量を図7に示す横樋4aに導き排水するが、後述するように第1係合片21と第2係合片22の間から入り込んだ雨水は排水用溝24で横樋4aに導かれ、外部に排水される。
【0023】
第2係合片22は、隣接する屋根材の第1係合片21に係合する係合部28と、固定金具10の支持部12および隣接する屋根材の第1係合片21とネジにより結合する結合面29と、を有する。この屋根材1eaにおいて、第2係合片22は、断面図で上下反転したL字形に形成されており、結合面29の外端には下向きの1本のリブ22aが形成されている。この第2係合片22の内側には、排水用溝24に雨水を案内する突起25が設けられている。この突起25は排水用溝24の凹所内に臨むように形成されているが、係合はしていない。この突起25が排水用溝24内に臨んでいることにより、第1係合片21と第2係号片22の間から入り込んだ雨水が第2係合片22の下面を伝った場合でも、雨水を案内する役目を果すことができる。
【0024】
雨水の排水は、既述のごとく基本的に屋根材1eaの本体部20が担っているが、排水用溝24は、第1係合片21と第2係合片22の間から入り込んだ雨水を横樋4aに案内するものである。
とくに、第1係合片21と第2係合片22の間から入り込んだ雨水が第2係合片22の下面を伝った場合は、突起25によって雨水を排水用溝24へ案内し、その排水用溝24で雨水を排水できるため、屋根1からの雨漏りを防ぐことができる。そのため、隣接する屋根材1ea,1ea間にパッキンなどの防水用の部材を設ける必要が無くなるので、材料費を抑えることができ、かつ、メンテナンスの手間を省くことができる。
【0025】
本実施形態において、屋根1の両端部、つまり梁1aに直接結合される屋根材は、第2発明に含まれない屋根材であり、上記図3(A)に示す形状とは異なっている。
図8の左端に示す屋根材1fは、図3(B)に示すように、本体部20の一側縁部(右端側)には第1係合片21を形成しているが、他側縁部(左端側)には第2係合片を形成していない。
また、図8の右端に示す屋根材1gは、図3(C)に示すように、本体部20の他側縁部(左端側)には第2係合片22を形成するが一側縁部(右端側)には第1係合片を形成しないものとなる。
【0026】
(第1実施形態に係る屋根構造物の施工方法)
つぎに、図4に基づき本発明の屋根構造のうち屋根材1eaの施工方法を説明する。なお、図4図10におけるIV部分を拡大した図である。
母屋1bには所定の間隔で固定金具10を取付けるが、図は取付け後の状態を示している。図中左端の屋根材1fは、他側縁部(左端側)を梁1aに形成されている固定部40の下部材41上に載せ、一側縁部(右端側)の第1係合片21を固定金具10の支持部12上に載せる。その後、他側縁部(左端側)に上部材42をのせてネジ止め固定する(図4参照)。
【0027】
上記の状態で、屋根材1fの第1係合片21上に隣接する屋根材1eaの第2係合片22を配置する。このとき、この屋根材1eaの第1係合片21は、隣接する固定金具10の支持部12上に配置する。そして、屋根材1eaの第2係合片22と隣接する屋根材1fの第1係合片21とを上方からネジ30で共に貫いて、固定金具10の支持部12に結合する。つまりネジ30をねじ込んでねじ止め固定する。
ネジ30のねじ込みのため、固定金具10の支持部12に形成された雌ネジ孔12c(図2参照)と同位置に第1係合片21と第2係合片22の適所には貫通孔を形成しておくとよい。
【0028】
図4には示していないが、屋根材1eaの右隣に取付ける別の屋根材1eaは上記と同じ要領を繰返せばよく、そうすることで全枚数の屋根材1eaを取付けることができる。
なお、図8の最右端の屋根材1gは一側縁部(右端側)を右側の梁1aの固定部40で固定することになる(図10参照)。
【0029】
図5および図10は固定された屋根材1eaを示している。同図に示すように、母屋1bに取付けられた固定金具10の支持部12に、屋根材1eaの第1係合片21と隣接する屋根材1eaの第2係合片22が共にネジ30により結合されることで、屋根材1eaの固定が完了する。
この状態で、第1係合片21の結合面27の下面のリブ21aは支持部12の上面に当接し、係合部26は固定金具10の支持部12先端の被係合片13に係合している。また、第2係合片22の結合面29は固定金具10の支持部12上に配置された隣接する屋根材1eaの第1係合片21の結合面27に当接すると共に、係合部28は直接には隣接する屋根材1eaの第1係合片21に係合して間接的に固定金具10の支持部12に係合している。
このように、屋根材1ea,1eaを配置した状態で、固定金具10の支持部12と、屋根材1eaの第1係合片21と、隣接する屋根材1eaの第2係合片22とをネジ30により結合する。
【0030】
つぎに、本発明に係る屋根材1eの他の例である屋根材1ebを図6に基づき説明する。
図6(A)に示す屋根材1ebは、第1係合片21および第2係合片22を備えている点は、図3(A)に示す屋根材1eaと同様であるが、それらの形状は少し異なっている。
【0031】
第1係合片21のうち、係合部26は固定金具10の支持部12の被係合片13に係合するように断面略U字状に形成されている。結合面27は係合部26につながる平坦な形状であり、図中左側に延び、かつ係合部26よりも低い位置となるように形成されている。このため結合面27は係合部26の役割は担っていないが、固定金具10の支持部12に当接させることができる。
【0032】
第2係合片22のうち、係合部28は隣接する屋根材1f(または1eb)の第1係合片21の係合部26に係合するように断面略U字状に形成されている。結合面29は係合部28につながる平坦な形状であり、図中左側に延び、かつ係合部28よりも低い位置となるように形成されている。なお、結合面29の外端には下向きの1本のリブ22aが形成されている。結合面29は係合部28の役割は担っていないが、固定金具10の支持部12上の隣接する屋根材1fの第1係合片21における結合面27に当接することができる。
【0033】
図6(B)は同図(A)に示す屋根材1ebを固定金具10に取付けた状態を示している。この屋根材1ebにおいて、第1係合片21の結合面27も第2係合片22の結合面29も取付け後の接触面積が大きいので、屋根材1ebの風雨等の外力に対する抵抗力を高め、ガタツキ等を抑制しやすい。
【0034】
(第2実施形態の屋根構造物)
図11に基づき、第2実施形態の屋根構造物を説明する。
この屋根構造物は、吊持材として梁1aを用いた実施形態である。
2本の支柱2,2のそれぞれの上端に梁1aが1本ずつ片持ち状に取付けられている。2本の梁1a,1aのそれぞれに複数個の固定金具10が取付けられている。
【0035】
屋根材1eとしては図3(A)に示す屋根材1eaと図6(A)に示す屋根材1ebのどちらを用いてもよい。
固定金具10による屋根材1eの吊下げ支持構造は図5および図6を用いて説明したものと同様であり、その施工方法は図4を用いて説明したものと同様である。
本実施形態では、屋根1の四周を囲むように、囲み部材1h,1iが取付けられている。なお、囲み部材1iは雨水を排出する樋機能を有するものである。
【0036】
(第3実施形態の屋根構造物)
図12に基づき、第3実施形態の屋根構造物を説明する。
本実施形態は、支柱2が直立したものである。
屋根1の構成は、図7から図10に基づき説明したものと同様であり、屋根材1eは母屋1bに取付けた固定金具10を介して吊下げ支持されている。屋根材1eとしては図3(A)に示す屋根材1eaと図6(A)に示す屋根材1ebのどちらを用いてもよい。
【0037】
(他の実施形態)
上記第1~第3実施形態において、特許請求の範囲にいう「吊持材」として、母屋と梁を説明したが、これ以外にも、垂木なども吊持材に該当し、種々の吊持材を用いて屋根材を吊下げ支持するものは、全て本発明に含まれる。
また、「屋根材」として、図3(A)に示す屋根材1eaと図6(A)に示す屋根材1ebを説明したが、これ以外にも、平板状のアルミニウム製の形材であり、一側縁部に、被係合片に係合する第1係合片が形成され、他側縁部に、隣接する屋根材の第1係合片に係合する第2係合片が形成されているものは、全て本発明に含まれる。
【0038】
本発明の各実施形態の利点は、以下のとおりである。
(1)屋根材1eが平板状のアルミニウム製の形材であることから従来の中空構造のものと比べ、軽量化が可能であり、かつ、材料費を抑えることができる。また、屋根材1eが、平板状であることから、天井材を使用しなくても、屋根構造物の天井面を形成することができる。
(2)屋根材1eの上方からネジ30により結合していることから、屋根構造物の下から屋根を見上げた際にネジ30が見えず、フラットな天井面を形成することができる。
【0039】
(3)屋根材1eの第1係合片21を固定金具10の支持部12に形成された被係合片13に係合させ、第2係合片22を隣接する屋根材1eの第1係合片21に係合させることで、屋根材1eを仮固定することができるので、施工が容易になり、かつ、施工作業の安全性が向上する。
(4)固定金具10の支持部12と、屋根材1eの第1係合片21と、隣接する屋根材1eの第2係合片22とをネジ30により結合していることから、従来技術のように屋根材の一側縁のみを梁などに固定したものに比べ、風などにより生じる屋根材1eのガタツキを抑えることができる。
(5)第1係合片21と第2係合片22が、支持部12上に配置されていることから、積雪などの下方向の負荷に対して、ネジ30のゆるみが生じにくい。
【0040】
(6)第1係合片21と第2係合片22の間から雨水が入り込んだ場合でも、第1係合片21に付設した排水用溝24で雨水を排水できるため、屋根からの雨漏りを防ぐことができる。また、隣接する屋根材間(例えば、第1係合片21と第2係合片22の間)にパッキンなどの防水用の部材を設ける必要が無いので、材料費を抑えることができ、かつ、メンテナンスの手間を省くことができる。
(7)第1係合片21と第2係合片22の間から入り込んだ雨水が第2係合片22の下面を伝った場合でも、突起25によって雨水を排水用溝24へ案内するので、屋根からの雨漏りを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、屋根材を吊持材で吊下げ支持する形式の屋根構造物を対象とし、その対象物には、車庫(カーポート)や、自転車を保管する駐輪場(サイクルポート)、人の歩行場所に設置する回廊を含むが、これらに限定されない。
【符号の説明】
【0042】
1 屋根
1a 梁
1b 母屋
1e 屋根材
10 固定金具
11 連結部
12 支持部
13 被係合片
20 本体部
21 第1係合片
26 係合部
27 結合面
22 第2係合片
28 係合部
29 結合面
24 排水用溝
25 突起
30 ネジ
図1
図2
図3
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図12