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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】プレート磁石
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/28 20060101AFI20220224BHJP
   B03C 1/01 20060101ALI20220224BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20220224BHJP
   B03C 1/035 20060101ALI20220224BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
B03C1/28 107
B03C1/01
B03C1/00 H
B03C1/00 F
B03C1/00 A
B03C1/035
C12M1/00 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019510731
(86)(22)【出願日】2017-05-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 CA2017050554
(87)【国際公開番号】W WO2017190254
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】62/332,578
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518393115
【氏名又は名称】ステムセル テクノロジーズ カナダ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ジャービス エリック
(72)【発明者】
【氏名】グラウデル トム
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/080047(WO,A2)
【文献】特表2002-503548(JP,A)
【文献】国際公開第2001/071034(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/191890(WO,A1)
【文献】特表2010-518400(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046164(WO,A1)
【文献】特表2010-538607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C1/00-1/32
C12M1/00-3/10
A61K35/00-35/768
A61K36/06-36/068
A61B5/05-5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第一の次元および第二の次元を含む第一の二次元磁石配列を画定する複数の磁気要素
を含み、
(b)該複数の磁気要素が複数の一次元磁石配列を含み、各一次元磁石配列が、該第一の次元に沿って第一の方向に延びかつハルバッハ配列を画定するように向けられた、互いに隣接して位置付けられた複数の磁石を含み、該複数の一次元配列が、互いに隣接して位置付けられており、かつ該第二の次元に沿って第二の方向に延び;
(c)該複数の磁気要素が、磁性粒子を配列表面に向けて引き寄せるように構成された磁場を有する該配列表面を画定し;かつ
(d)該複数の一次元配列の磁場が該配列表面に沿って同じ方向に向けられている、
磁気分離装置。
【請求項2】
配列表面が実質的に平面である、請求項1記載の磁気分離装置。
【請求項3】
複数の磁気要素を支持するハウジングをさらに含む、請求項1または2記載の磁気分離装置。
【請求項4】
ハウジングが、配列表面に隣接する容器受け入れ面を画定する、請求項3記載の磁気分離装置。
【請求項5】
容器受け入れ面に隣接する位置に1つまたは複数の容器を導くように配置された複数の案内要素をさらに含む、請求項4記載の磁気分離装置。
【請求項6】
案内要素が、ハウジングから容器受け入れ面に対して垂直な方向にかつ配列表面から遠ざかるように延びる少なくとも1つの案内部材を含む、請求項5記載の磁気分離装置。
【請求項7】
(a)第二の二次元磁石配列を画定するように配置された第二の複数の磁気要素
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項記載の磁気分離装置。
【請求項8】
(a)第一の二次元磁石配列および第二の二次元磁石配列が、少なくとも部分的に対面する配置で位置付けられており、該第一の二次元磁石配列の配列表面が該第二の二次元磁石配列の第二の配列表面に対面しており;かつ
(b)前記装置が、該第一の二次元磁石配列と該第二の二次元磁石配列との間に、複数の磁気感受性粒子のための容器を受け入れるように成形された受け入れ区域を含む、
請求項7記載の磁気分離装置。
【請求項9】
第一の二次元磁石配列と第二の二次元磁石配列とが実質的に平行である、請求項8記載の磁気分離装置。
【請求項10】
第一の二次元磁石配列および第二の二次元磁石配列が、該第一の二次元磁石配列および該第二の二次元磁石配列の間の平面に沿って磁場強さ最小値を規定するように向けられている、請求項9記載の磁気分離装置。
【請求項11】
第一の二次元磁石配列と第二の二次元磁石配列とが背中合わせに配置されている、請求項7記載の磁気分離装置。
【請求項12】
(a)前記装置が、複数の磁気感受性粒子を収容するように構成された少なくとも1つの容器を受け入れるように成形された受け入れ区域を有し;かつ
(b)該少なくとも1つの容器が、管、バイアル、ペトリ皿、ボトル、バッグおよびマルチウェルマイクロプレートのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~11のいずれか一項記載の磁気分離装置。
【請求項13】
磁気要素が永久磁石を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の磁気分離装置。
【請求項14】
容器ユニット中の懸濁液から複数の標的を磁気的に分離するための方法であって、
(a)該複数の標的を磁性粒子と結合させて、該懸濁液中に複数の磁気的に結合した粒子を提供する工程;
(b)該容器ユニットを二次元磁石配列の配列表面に近接させて位置付ける工程であって、該二次元磁石配列が、それぞれ第一の次元に延びる互いに隣接する複数の一次元ハルバッハ配列を画定するように配置された複数の磁気要素を含み、該複数の一次元ハルバッハ配列によって画定される磁場が該配列表面に沿って同じ方向に向けられている、工程;および
(c)該容器ユニットが該配列表面に近接して位置付けられている間に該懸濁液の一部を該容器ユニットから取り出す工程
を含む、方法。
【請求項15】
容器ユニットを配列表面に近接させて位置付ける工程が、複数の案内要素を使用して該容器ユニットを該配列表面に向けて案内することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
複数の案内要素が、容器ユニットの形状に対応するように配置されている、請求項15記載の方法。
【請求項17】
容器ユニットが、管、バイアル、ペトリ皿、ボトル、バッグおよびマルチウェルマイクロプレートのうちの1つである、請求項14~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
(a)容器ユニットが複数の容器コンパートメントを含み、各容器コンパートメントが、単一の容器を受け入れるように成形されており、該容器コンパートメントのうちの少なくとも1つが、対応する懸濁液を含む使用中の容器を含み;かつ
(b)前記方法が、各使用中容器の該対応する懸濁液に関して請求項14に記載の工程(a)および工程(c)を繰り返す工程を含む、
請求項14~17のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2016年5月6日に出願された米国特許仮出願第62/332,578号の恩典を主張する。
【0002】
分野
本明細書に記載される態様は、磁石、特に、磁気分離法および磁気分離装置のための磁石配列に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
米国特許第6,514,415 B2号(特許文献1)は、容器内の粒子の磁気分離のための方法および装置を記載しようとしている。1つの態様において、容器は、多数の粒子および多数の磁気感受性粒子を含む。多数の磁石が平面に配置され、容器の近くに設置される。磁石の磁極は、容器上の平面に対して垂直に向けられた磁場を印加するパターンで配置される。磁極パターンは、容器全体にわたって、多数の磁気感受性粒子の、残りの粒子からの一貫した分離を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6,514,415 B2号
【発明の概要】
【0005】
概要
本概要は、以下のより詳細な説明に読者を導入するためのものであり、任意の特許請求された主題またはまだ特許請求されていない主題を限定または定義するためのものではない。1つまたは複数の発明は、特許請求の範囲および図面を含む本明細書の任意の部分に開示される要素またはプロセス工程の任意の組み合わせまたは部分的組み合わせに存在し得る。
【0006】
本明細書に記載される態様は、磁気分離装置に使用するためのプレート磁石の設計を提供し得る。いくつかの場合、磁石はユニバーサルプレート磁石と呼ばれ得る。本明細書に記載されるプレート磁石の態様は、妥当な時間枠内で広範囲の量を処理することができる自動化用途に使用され得る。
【0007】
広い局面において、互いに隣接して固定されて配置され、行および列を有する二次元配列を形成する複数の磁気要素を含む、容器中の複数の磁気的に結合した標的を分離するための磁気分離装置が提供され、配列の第一行にある該複数の磁気要素のそれぞれの磁石磁場が、一次ハルバッハ配列を形成するように配置されており、配列の列方向に進んで、配列の第二行および後続の行それぞれにある複数の磁石のそれぞれの磁石磁場が、任意の直前の行にある複数の磁石のそれぞれの磁石磁場に対して同じ方向に向けられており、そのため複数の磁石が磁場を容器に印加して、容器全体にわたって複数の磁気的に結合した標的の少なくともいくつかを非結合標的から分離する。
【0008】
いくつかの態様において、複数の磁石はハウジングによって支持されている。いくつかの態様において、複数の磁石はハウジングによって包囲されている。いくつかの態様において、ハウジングは、二次元フレーム配列を画定する内部フレームを有し、磁気要素は、二次元フレーム配列中に位置付けられて二次元磁石配列を画定する。
【0009】
いくつかの態様において、磁気分離装置はさらに、ハウジングに取り付けられた1つまたは複数の案内要素を含む。
【0010】
いくつかの態様において、容器は、管、バイアル、ペトリ皿、ボトル、バッグおよびマルチウェルマイクロプレートのうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
いくつかの態様において、マルチウェルマイクロプレートは、単独の管またはシングルウェル、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルマイクロプレート、384ウェルマイクロプレートおよび1536ウェルマイクロプレートのうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
いくつかの態様において、複数の磁石は、複数の永久磁石および複数の電磁石のうちの少なくとも一方を含む。
【0013】
広い局面において、複数の標的を含む容器を提供する工程;標的の少なくともいくつかが磁気感受性粒子に結合されるように複数の磁気感受性粒子を容器に加える工程;および、容器を、互いに隣接して配列の行および列に配置された複数の磁石を有する二次元磁石配列の磁場に隣接させて位置付ける工程を含み、配列の第一行にある該複数の磁石のそれぞれの磁石磁場が、一次ハルバッハ配列を形成するように配置されており、配列の列方向に進んで、配列の第二行および後続の行それぞれにある該複数の磁石のそれぞれの磁石磁場が、任意の直前の行にある該複数の磁石のそれぞれの磁石磁場に対して同じ方向に向けられており、そのため複数の磁石の複数の磁極が、平面に対して垂直に向けられた磁場を印加して、容器全体にわたって複数の磁気感受性粒子を複数の粒子から実質的に一貫して分離する、磁気分離のための方法が提供される。
【0014】
いくつかの態様において、前記容器を提供する工程は、管、バイアル、ペトリ皿、ボトル、バッグおよびマルチウェルマイクロプレートのうちの1つを提供することを含む。
【0015】
いくつかの態様において、マルチウェルマイクロプレートを提供することは、単独の管またはシングルウェル、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルマイクロプレート、384ウェルマイクロプレートおよび1536ウェルマイクロプレートのうちの少なくとも1つを提供することを含む。
【0016】
いくつかの態様において、複数の磁石を配置することは、配置される複数の磁石を保護ハウジング内に支持することを含む。
【0017】
いくつかの態様において、複数の磁石を配置することは、複数の永久磁石および複数の電磁石のうちの少なくとも一方を配置することを含む。
【0018】
広い局面において、本明細書における教示にしたがって定義される磁気分離装置を複数含む磁気分離システムであって、複数の磁気分離装置が、より大きな平面ハルバッハ配列を提供するように二次元配列が互いに隣接して位置付けられた実質的に平面的な配列を提供するように配置されている、磁気分離システムが提供される。
【0019】
広い局面において、本明細書における教示にしたがって定義される磁気分離装置の対を含む磁気分離システムであって、磁気分離装置の対が、磁気分離装置の対の両側の容器中で分離を可能にするように背中合わせに配置されている、磁気分離システムが提供される。
【0020】
広い局面において、本明細書における教示にしたがって定義される磁気分離装置を少なくとも2つ含む磁気分離システムであって、少なくとも2つの磁気分離装置が、少なくとも部分的に対面する関係で配置されており、容器のための受け入れ区域が、少なくとも2つの磁気分離装置の間に存在する、磁気分離システムが提供される。
【0021】
いくつかの態様において、少なくとも2つの磁気分離装置は、磁場強さ最小値を規定する平面が、少なくとも2つの磁気分離装置の間の磁場強さ中間点を規定する平面の近くに得られるように向けられている。
【0022】
広い局面において、第一の次元および第二の次元を含む第一の二次元磁石配列を画定する複数の磁気要素を含む、磁気分離装置が提供され、複数の磁気要素が複数の一次元磁石配列を含み、各一次元磁石配列が、第一の次元に沿って第一の方向に延びかつハルバッハ配列を画定するように向けられた、互いに隣接して位置付けられた複数の磁石を含み、複数の一次元配列が、互いに隣接して位置付けられており、かつ第二の次元に沿って第二の方向に延び;複数の磁気要素が、磁性粒子を配列表面に向けて引き寄せるように構成された磁場を有する配列表面を画定し;複数の一次元配列の磁場が配列表面に沿って同じ方向に向けられている。
【0023】
いくつかの態様において、配列表面は実質的に平面である。
【0024】
いくつかの態様において、第一の二次元磁石配列は実質的に矩形である。
【0025】
いくつかの態様において、磁気分離装置はさらに、複数の磁気要素を支持するハウジングを含む。いくつかの態様において、複数の磁石はハウジングによって包囲されている。いくつかの態様において、ハウジングは、二次元フレーム配列を画定する内部フレームを有し、磁気要素は、二次元フレーム配列中に位置付けられて二次元磁石配列を画定する。
【0026】
いくつかの態様において、ハウジングは、配列表面に隣接する容器受け入れ面を画定する。
【0027】
いくつかの態様において、磁気分離装置はさらに、ハウジングに取り付けられた複数の案内要素を含み、案内要素は、容器受け入れ面に隣接する位置に1つまたは複数の容器を導くように配置されている。
【0028】
いくつかの態様において、案内要素は、ハウジングから容器受け入れ面に対して垂直な方向にかつ配列表面から遠ざかるように延びる少なくとも1つの案内部材を含む。
【0029】
いくつかの態様において、ハウジングは実質的に矩形であり;複数の案内要素は、ハウジングから延びる複数の案内部材を含み、複数の案内部材は、ハウジングの各角に位置付けられた少なくとも1つの案内部材を含む。
【0030】
いくつかの態様において、磁気分離装置はさらに、第二の二次元磁石配列を画定するように配置された第二の複数の磁気要素を含む。いくつかの態様において、第一の二次元磁石配列および第二の二次元磁石配列それぞれはハウジングによって支持され得る。
【0031】
いくつかの態様において、第一の二次元磁石配列および第二の二次元磁石配列は、少なくとも部分的に対面する配置で位置付けられており、第一の二次元磁石配列の配列表面が第二の二次元磁石配列の第二の配列表面に対面しており;装置は、第一の二次元磁石配列と第二の二次元磁石配列との間に、複数の磁気感受性粒子のための容器を受け入れるように成形された受け入れ区域を含む。
【0032】
いくつかの態様において、第一の二次元磁石配列と第二の二次元磁石配列とは実質的に平行である。
【0033】
いくつかの態様において、第一の二次元磁石配列および第二の二次元磁石配列は、第一の二次元磁石配列の磁場および第二の二次元磁石配列の磁場から生じる磁場強さ最小値によって規定される平面に沿って磁場強さ最小値を規定するように向けられている。
【0034】
いくつかの態様において、第一の二次元磁石配列と第二の二次元磁石配列とは背中合わせに配置されている。
【0035】
いくつかの態様において、装置は、複数の磁気感受性粒子を収容するように構成された少なくとも1つの容器を受け入れるように成形された受け入れ区域を有し;少なくとも1つの容器は、管、バイアル、ペトリ皿、ボトル、バッグおよびマルチウェルマイクロプレートのうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
いくつかの態様において、磁気要素は永久磁石を含む。
【0037】
広い局面において、容器ユニット中の懸濁液から複数の標的を磁気的に分離するための方法であって;複数の標的を磁性粒子と結合させて、細胞懸濁液中に複数の磁気的に結合した粒子を提供する工程;容器ユニットを二次元磁石配列の配列表面に近接させて位置付ける工程であって、二次元磁石配列が、それぞれ第一の次元に延びる互いに隣接する複数の一次元ハルバッハ配列を画定するように配置された複数の磁気要素を含み、複数の一次元ハルバッハ配列によって画定される磁場が配列表面に沿って同じ方向に向けられている、工程;および、容器ユニットが配列表面に近接して位置付けられている間に懸濁液の一部を容器ユニットから取り出す工程を含む、方法が提供される。
【0038】
いくつかの態様において、容器ユニットを配列表面に近接させて位置付ける工程は、複数の案内要素を使用して容器ユニットを配列表面に向けて案内することを含む。
【0039】
いくつかの態様において、複数の案内要素は、容器ユニットの形状に対応するように配置されている。
【0040】
いくつかの態様において、容器ユニットは、管、バイアル、ペトリ皿、ボトル、バッグおよびマルチウェルマイクロプレートのうちの1つである。
【0041】
いくつかの態様において、容器ユニットは複数の容器コンパートメントを含み、各容器コンパートメントは、細胞懸濁液のための単一の容器を受け入れるように成形されており、容器コンパートメントのうちの少なくとも1つは、対応する細胞懸濁液を含む使用中の容器を含み;方法は、各使用中容器の対応する細胞懸濁液に関して結合工程および抽出工程を繰り返す工程を含む。
【0042】
当業者には、本明細書に開示される装置、システムまたは方法が、本明細書に含まれる特徴の任意の1つまたは複数を具現化し得ること、およびそれらの特徴が任意の特定の組み合わせまたは部分的組み合わせで使用され得ることが理解されよう。
【0043】
[本発明1001]
(a)互いに隣接して固定されて配置され、行および列を有する二次元配列を形成する複数の磁気要素
を含み、
(b)該配列の第一行にある該複数の磁気要素のそれぞれの磁石磁場が、一次ハルバッハ配列を形成するように配置されており、かつ
(c)該配列の列方向に進んで、該配列の第二行および後続の行それぞれにある該複数の磁気要素のそれぞれの磁石磁場が、任意の直前の行にある複数の磁石のそれぞれの磁石磁場に対して同じ方向に向けられている、
容器中の複数の磁気的に結合した標的を分離するための磁気分離装置。
[本発明1002]
複数の磁石がハウジングによって支持されている、本発明1001の装置。
[本発明1003]
ハウジングに取り付けられた1つまたは複数の案内要素をさらに含む、本発明1002の装置。
[本発明1004]
容器が、管、バイアル、ペトリ皿、ボトル、バッグおよびマルチウェルマイクロプレートのうちの少なくとも1つを含む、本発明1001~1003のいずれかの装置。
[本発明1005]
マルチウェルマイクロプレートが、単独の管またはシングルウェル、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルマイクロプレート、384ウェルマイクロプレートおよび1536ウェルマイクロプレートのうちの少なくとも1つを含む、本発明1004の装置。
[本発明1006]
複数の磁石が、複数の永久磁石および複数の電磁石のうちの少なくとも一方を含む、本発明1001~1005のいずれかの装置。
[本発明1007]
(a)複数の標的を含む容器を提供する工程;
(b)該標的の少なくともいくつかが磁気感受性粒子に結合されるように複数の磁気感受性粒子を該容器に加える工程;および
(c)該容器を、互いに隣接して行および列に配置された複数の磁石を有する二次元磁石配列の磁場に隣接させて位置付ける工程
を含み、
(d)該配列の第一行にある該複数の磁石のそれぞれの磁石磁場が、一次ハルバッハ配列を画定するように配置されており、かつ
(e)該配列の列方向に進んで、該配列の第二行および後続の行それぞれにある該複数の磁石のそれぞれの磁石磁場が、任意の直前の行にある該複数の磁石のそれぞれの磁石磁場に対して同じ方向に向けられており、そのため該複数の磁石が該容器に磁場を印加して、該容器全体にわたって複数の磁気的に結合した標的の少なくともいくつかを非結合標的から分離する、
磁気分離のための方法。
[本発明1008]
容器を提供する工程が、管、バイアル、ペトリ皿、ボトル、バッグおよびマルチウェルマイクロプレートのうちの1つを提供することを含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
マルチウェルマイクロプレートを提供することが、単独の管またはシングルウェル、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルマイクロプレート、384ウェルマイクロプレートおよび1536ウェルマイクロプレートのうちの少なくとも1つを提供することを含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
複数の磁石を配置することが、該配置される複数の磁石をハウジング内に支持することを含む、本発明1007~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
複数の磁石を配置することが、複数の永久磁石および複数の電磁石のうちの少なくとも一方を配置することを含む、本発明1007~1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
本発明1001~1006のいずれかの磁気分離装置を複数含む磁気分離システムであって、該複数の磁気分離装置が、より大きな平面ハルバッハ配列を提供するように二次元配列が互いに隣接して位置付けられた実質的に平面的な配列を提供するように配置されている、磁気分離システム。
[本発明1013]
本発明1001~1006のいずれかの磁気分離装置の対を含む磁気分離システムであって、該磁気分離装置の対が、該磁気分離装置の対の両側の容器中で分離を可能にするように背中合わせに配置されている、磁気分離システム。
[本発明1014]
本発明1001~1006のいずれかの磁気分離装置を少なくとも2つ含む磁気分離システムであって、該少なくとも2つの磁気分離装置が、少なくとも部分的に対面する関係で配置されており、容器のための受け入れ区域が、該少なくとも2つの磁気分離装置の間に存在する、磁気分離システム。
[本発明1015]
磁場強さ最小値を規定する平面が、少なくとも2つの磁気分離装置の間の磁場強さ中間点を規定する平面の近くに得られるように、該少なくとも2つの磁気分離装置が向けられている、本発明1015の磁気分離システム。
[本発明1016]
(a)第一の次元および第二の次元を含む第一の二次元磁石配列を画定する複数の磁気要素
を含み、
(b)該複数の磁気要素が複数の一次元磁石配列を含み、各一次元磁石配列が、該第一の次元に沿って第一の方向に延びかつハルバッハ配列を画定するように向けられた、互いに隣接して位置付けられた複数の磁石を含み、該複数の一次元配列が、互いに隣接して位置付けられており、かつ該第二の次元に沿って第二の方向に延び;
(c)該複数の磁気要素が、磁性粒子を配列表面に向けて引き寄せるように構成された磁場を有する該配列表面を画定し;かつ
(d)該複数の一次元配列の磁場が該配列表面に沿って同じ方向に向けられている、
磁気分離装置。
[本発明1017]
配列表面が実質的に平面である、本発明1016の磁気分離装置。
[本発明1018]
第一の二次元磁石配列が実質的に矩形である、本発明1016または1017の磁気分離装置。
[本発明1019]
複数の磁気要素を支持するハウジングをさらに含む、本発明1016~1018のいずれかの磁気分離装置。
[本発明1020]
ハウジングが、配列表面に隣接する容器受け入れ面を画定する、本発明1019の磁気分離装置。
[本発明1021]
容器受け入れ面に隣接する位置に1つまたは複数の容器を導くように配置された複数の案内要素をさらに含む、本発明1020の磁気分離装置。
[本発明1022]
案内要素が、ハウジングから容器受け入れ面に対して垂直な方向にかつ配列表面から遠ざかるように延びる少なくとも1つの案内部材を含む、本発明1021の磁気分離装置。
[本発明1023]
(a)ハウジングが実質的に矩形であり;かつ
(b)複数の案内要素が、該ハウジングから延びる複数の案内部材を含み、該複数の案内部材が、該ハウジングの各角に位置付けられた少なくとも1つの案内部材を含む、
本発明1021または1022の磁気分離装置。
[本発明1024]
(a)第二の二次元磁石配列を画定するように配置された第二の複数の磁気要素
をさらに含む、本発明1020~1023のいずれかの磁気分離装置。
[本発明1025]
(a)第一の二次元磁石配列および第二の二次元磁石配列が、少なくとも部分的に対面する配置で位置付けられており、該第一の二次元磁石配列の配列表面が該第二の二次元磁石配列の第二の配列表面に対面しており;かつ
(b)前記装置が、該第一の二次元磁石配列と該第二の二次元磁石配列との間に、複数の磁気感受性粒子のための容器を受け入れるように成形された受け入れ区域を含む、
本発明1016~1024のいずれかの磁気分離装置。
[本発明1026]
第一の二次元磁石配列と第二の二次元磁石配列とが実質的に平行である、本発明1025の磁気分離装置。
[本発明1027]
第一の二次元磁石配列および第二の二次元磁石配列が、該第一の二次元磁石配列の磁場および該第二の二次元磁石配列の磁場から生じる磁場強さ最小値によって規定される平面に沿って磁場強さ最小値を規定するように向けられている、本発明1026の磁気分離装置。
[本発明1028]
第一の二次元磁石配列と第二の二次元磁石配列とが背中合わせに配置されている、本発明1024の磁気分離装置。
[本発明1029]
(a)前記装置が、複数の磁気感受性粒子を収容するように構成された少なくとも1つの容器を受け入れるように成形された受け入れ区域を有し;かつ
(b)該少なくとも1つの容器が、管、バイアル、ペトリ皿、ボトル、バッグおよびマルチウェルマイクロプレートのうちの少なくとも1つを含む、
本発明1020~1028のいずれかの磁気分離装置。
[本発明1030]
磁気要素が永久磁石を含む、本発明1020~1029のいずれかの磁気分離装置。
[本発明1031]
容器ユニット中の懸濁液から複数の標的を磁気的に分離するための方法であって、
(a)該複数の標的を磁性粒子と結合させて、該懸濁液中に複数の磁気的に結合した粒子を提供する工程;
(b)該容器ユニットを二次元磁石配列の配列表面に近接させて位置付ける工程であって、該二次元磁石配列が、それぞれ第一の次元に延びる互いに隣接する複数の一次元ハルバッハ配列を画定するように配置された複数の磁気要素を含み、該複数の一次元ハルバッハ配列によって画定される磁場が該配列表面に沿って同じ方向に向けられている、工程;および
(c)該容器ユニットが該配列表面に近接して位置付けられている間に該懸濁液の一部を該容器ユニットから取り出す工程
を含む、方法。
[本発明1032]
容器ユニットを配列表面に近接させて位置付ける工程が、複数の案内要素を使用して該容器ユニットを該配列表面に向けて案内することを含む、本発明1031の方法。
[本発明1033]
複数の案内要素が、容器ユニットの形状に対応するように配置されている、本発明1032の方法。
[本発明1034]
容器ユニットが、管、バイアル、ペトリ皿、ボトル、バッグおよびマルチウェルマイクロプレートのうちの1つである、本発明1031~1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
(a)容器ユニットが複数の容器コンパートメントを含み、各容器コンパートメントが、単一の容器を受け入れるように成形されており、該容器コンパートメントのうちの少なくとも1つが、対応する懸濁液を含む使用中の容器を含み;かつ
(b)前記方法が、各使用中容器の該対応する懸濁液に関して結合工程および抽出工程を繰り返す工程を含む、
本発明1031~1034のいずれかの方法。
様々な態様のこれらのおよび他の局面および特徴が以下さらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
記載される態様をより良く理解し、また、それらを実施し得る方法をより明確に示すために、例として添付図面を参照する。
図1】磁気分離プロセスの例示的態様の模式図である。
図2】プレート磁石を使用する磁気分離プロセスの例示的態様の略図である。
図3A】磁極間の間隙中に生成された磁力線の例の図である。
図3B】四極磁石構成を使用して生成された磁力線の図である。
図3C】例示的態様のハルバッハ磁石配列の図である。
図3D図3Cのハルバッハ磁石配列の場合の磁力線の図である。
図4】磁石配列の様々な例示的構成の場合の磁場強さを示す。
図5図5Aは、例示的態様の二次元磁石配列の磁気要素の平面図である。図5Bは、例示的態様の二次元磁石配列のためのハウジングの斜視図である。
図6A】一定の要素サイズを有する磁石配列の例の磁気要素の平面図である。
図6B図6Aの磁石配列の斜視図である。
図7】磁石配列構成の様々な例に関して、高さとともに起こる磁場減衰を示すチャートである。
図8A】細胞分離試験部位を特定した、図6Aの磁石配列の平面図である。
図8B図6Aの磁石配列の場合の、図8Aに示す細胞分離試験部位における細胞分離性能を示すチャートである。
図9図9Aは、様々な例示的磁石配列構成の場合の回収率を対時間で示すチャートである。図9Bは、様々な例示的磁石配列構成の場合の純度オッズ比変化を対時間で示すチャートである。
図10図10Aは、様々な例示的磁石配列構成の場合の回収率を対時間で示すチャートである。図10Bは、様々な例示的磁石配列構成の場合の純度オッズ比変化を対時間で示すチャートである。
図11】様々な例示的磁石配列構成の場合の平均MFDを対プロセス量高さで示すチャートである。
図12】超常磁性粒子の例示的な磁化曲線を示すチャートである。
図13】磁気分離装置の例示的態様における二次元磁石配列の略斜視図である。
図14】磁気分離装置の別の例示的態様における二次元磁石配列の略斜視図である。
図15】異なる要素サイズを有する磁石配列の例の磁気要素の平面図である。
図16】磁気分離装置のさらなる例示的態様における二次元磁石配列の略斜視図である。
図17A】磁気分離装置の様々なさらなる例示的態様における二次元磁石配列の平面図である。
図17B】磁気分離装置の様々なさらなる例示的態様における二次元磁石配列の平面図である。
【0045】
本明細書に添付される図面は、本明細書の教示の物品、方法および装置の様々な例を説明するためのものであり、教示されるものの範囲を何らかのやり方で限定することを意図したものではない。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
以下、特許請求される主題の態様の例を提供するために、様々な装置またはプロセスを説明する。以下に記載される態様は、限定的な意味に考慮されてはならず、以下に記載されるプロセスまたは装置とは異なるプロセスまたは装置をも包含し得る。特許請求される主題は、以下に記載されるいずれか1つの装置またはプロセスの特徴のすべてを有する装置またはプロセスに限定されず、または、以下に記載される複数またはすべての装置に共通の特徴に限定されない。以下に記載される装置またはプロセスが、任意の特許請求される主題の態様ではない可能性もある。本願において特許請求されない、以下に記載される装置またはプロセスに開示される任意の主題は、別の保護文献、たとえば継続特許出願の主題であってもよく、出願人、発明者または所有者は、本明細書におけるその開示によって任意のそのような主題を捨てる、権利放棄する、または公衆に献呈することを意図しない。
【0047】
さらに、説明を簡潔かつ明確にするために、適切と考えられる場合、対応するまたは類似の要素を示すために符番が図面間で繰り返し使用される場合もあることが理解されよう。加えて、本明細書に記載される例示的態様の完全な理解を提供するために、数多くの具体的な詳細が述べられる。しかし、当業者には、本明細書に記載される例示的態様は、これらの具体的な詳細なしでも実施され得ることが理解されよう。他の例において、本明細書に記載される例示的態様を不明瞭にしないために、周知の方法、手順および構成要素は詳細には説明されない。また、説明は、本明細書に記載される例示的態様の範囲を限定するものと見なされてはならない。
【0048】
別段明示的に指定されない限り、用語「態様(an embodiment)」、「態様(embodiment)」、「態様(embodiments)」、「その態様(the embodiment)」、「その態様(the embodiments)」、「1つまたは複数の態様」、「いくつかの態様」および「1つの態様」は、「発明の1つまたは複数の(すべてではない)態様」を意味する。
【0049】
別段明示的に指定されない限り、用語「~を含む(including)」、「~を含む(comprising)」およびその変形は、「~を含むが、それに限定されない」を意味する。別段明示的に指定されない限り、項目のリストは、項目のいずれかまたはすべてが相互に排他的であることを暗示しない。別段明示的に指定されない限り、用語「1つの(a)」「1つの(an)」および「その(the)」は「1つまたは複数の」を意味する。
【0050】
本明細書において使用される表現「および/または」は、非排他的論理和を表すことを意図する。すなわち、「Xおよび/またはY」は、たとえば、XまたはYまたは両方を意味することを意図する。さらなる例として、「X、Yおよび/またはZ」は、XまたはYまたはZまたはそれらの任意の組み合わせを意味することを意図する。
【0051】
磁気細胞分離は、磁場を使用して、磁気的に結合した標的(磁気的に標識された細胞とも呼ばれる)を懸濁液から分離する。説明を簡潔かつ容易にするために、説明は、細胞の懸濁液のような懸濁液に適用される磁気分離技術(すなわち、磁気細胞分離)を参照し得る。しかし、当業者の読者には、本明細書に記載される装置、システムおよび方法がまた、磁気分離のために磁気感受性粒子と結合させることができる他の関心対象の標的、たとえばDNA、RNA、タンパク質などと一緒に使用され得ることが明らかであるはずである。一般に、本明細書に記載される磁気分離装置、システムおよび方法の態様は任意の磁気感受性粒子と一緒に使用され得る。
【0052】
磁気細胞分離技術は、高感度、選択的、迅速かつ高収率の細胞分離を提供する目的をもって、絶えず開発されている。磁気細胞分離のために開発された2つの技術が、正の選択および負の選択である。正の選択法においては、標的細胞を磁性粒子で標識する。負の選択法においては、望まれない細胞を磁性粒子で標識する。
【0053】
正の選択法または負の選択法の選択は、関心対象の標的タイプおよび/または関心対象の標的タイプが関与する下流側用途に依存し得る。たとえば、標的が磁性粒子で直に標識される場合、特定の標的タイプを集団から単離するためには正の選択法が好ましくあり得る。しかし、正の選択は、いくつかの下流側用途に干渉するおそれがある。たとえば、正の選択は、磁性粒子および/または抗体が、下流側の研究に関与する結合部位または活性部位をブロックするならば、問題となる可能性がある。そのような場合、負の選択が、望まれない標的タイプを標識し、集団から除去して、関心対象の標的を未接触/未修飾のまま残すため、好ましくあり得る。磁気分離はまた、様々な関心対象の標的、たとえば磁気感受性粒子と結合させることができる細胞、DNA、RNAおよび/またはタンパク質で適用することもできる。
【0054】
一般に、磁気分離を実施するためには、標的(たとえば細胞、DNA、RNAおよび/またはタンパク質)を含む懸濁液を容器中で磁性粒子と混合することができる。磁性粒子は、特定の標的タイプまたは標的分集団(たとえば、正の選択法の場合には関心対象の細胞または負の選択法の場合には望まれない細胞)と結合するように選択/設計されることができる。次いで、混合した標的および磁性粒子をインキュベートして、磁性粒子を特定の標的タイプと結合させることができる(本明細書においては結合した粒子、磁気的に結合した粒子、磁気的に標識された標的および/または磁気的にタグ付けされた標的と呼ばれる)。たとえば、磁性粒子は、特定の細胞タイプ/分集団上の対応するユニークなエピトープを認識する特異的抗体と連結させることができる。抗体は、標的細胞および磁性粒子を結合して細胞-抗体-磁性粒子複合体を形成する。
【0055】
次いで、容器を磁場に曝露することにより、関心対象の標的を懸濁液から回収することができる。磁場が、磁気的に結合した標的を誘導して、磁石表面にもっとも近い容器表面に集積させる。次いで、非標識標的を新たな容器の中に抽出して(たとえば吸引、注ぎ出し、親水性/毛細管抽出、シリンジポンプ、重力フローセルシステム、ポンプおよび/または圧力勾配によって)、磁気的に結合した標的を元の容器の中に、たとえば磁石に近い容器表面に残す。あるいはまた、負の選択法が使用されるならば、抽出される標的が所望の標的であり得る。
【0056】
図1は、磁気分離プロセスの態様の例示的模式図を示す。磁気細胞分離プロセスの一例が、Stemcell TechnologiesのEasySep(商標)分離プロセスと呼ばれるものである。図1に示す磁気分離は、四極磁石配列を用いるEasySep(商標)分離プロトコルを使用する例示的態様である。試薬濃度、インキュベーション時間および分離時間は、所望の分離および使用される磁石の強さに依存して異なる。
【0057】
例示的な磁気細胞分離プロセスにおいては、細胞懸濁液が、図1に示す管のような容器に提供される。他の態様においては、異なる容器、たとえばバイアル、ペトリ皿、ボトル、変形可能な容器(たとえばバッグ)またはマルチウェルマイクロプレートを使用し得る。マルチウェルマイクロプレートを使用する様々な例においては、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルマイクロプレート、384ウェルマイクロプレートおよび1536ウェルマイクロプレーのような、様々なマイクロプレート構成を使用し得る。
【0058】
細胞懸濁液は、複数の関心対象の細胞および複数の望まれない細胞を含み得る。複数の磁気結合性粒子が細胞懸濁液に導入される(すなわち加えられる)。磁気結合性粒子は、細胞懸濁液中の細胞の1つまたは複数の分集団と結合して、その分集団中の細胞が、磁気結合性粒子と結合したならば、磁気感受性になるように選択されることができる。これらの結合した粒子は、複数の磁気的に結合した細胞粒子または磁気的に結合した粒子と呼ばれ得る。いくつかの場合、細胞懸濁液および磁気結合性粒子をインキュベートして、磁気的に結合した粒子を形成させてもよい。
【0059】
いくつかの場合、複数の磁気結合性粒子は、関心対象の細胞と結合するように選択され得る(すなわち、正の選択法の場合)。他の場合において、複数の磁気結合性粒子は、望まれない細胞と結合するように選択され得る(すなわち、負の選択法の場合)。
【0060】
結合した粒子が形成したならば(たとえばインキュベーションののち)、容器を、本明細書に開示されるような磁石配列に近接近させて位置付け得る。たとえば、容器は、磁石配列の表面に隣接して位置付けられ得る。いくつかの場合、容器は、磁石配列によって提供される案内要素および/または磁石配列のためのハウジングによって、磁石配列の表面に近い位置に案内され得る。図1に示すように、容器は、四極磁石配列のためのハウジングによって提供される受け入れ区域内に位置付けられ得る。案内要素は、たとえば容器を受け入れ区域に収容するように成形されることにより、容器を受け入れ区域中に案内する1つまたは複数の壁を含み得る。
【0061】
二次元磁石配列を使用する、本明細書に記載される態様においては、容器を二次元磁石配列の配列表面に近接させて位置付け得る。たとえば、図2および図5Bに示すように、二次元配列はプレート磁石として提供され得る。次いで、容器を、配列表面に近接する面(たとえば、配列表面そのものまたは配列表面に隣接する/配列表面のすぐ上にある容器受け入れ面)に設置し得る。容器受け入れ面の一例が図5Bに示されている。
【0062】
いくつかの場合、容器は、1つまたは複数の二次元磁石配列の配列表面に近接する受け入れ区域に位置付けられ得る。受け入れ区域のいくつかの例が図13、14、16、17Aおよび17Bに示されている。
【0063】
磁気的に結合した標的および非結合標的を含む容器を、磁石配列の表面に近接させて(たとえば受け入れ区域中に)放置してインキュベートさせ得る。磁石配列によって生成される磁場が、磁気的に結合した標的および磁性粒子を、磁石配列に近接する容器面に引き寄せ得る。次いで、残る非結合標的を容器からたとえば吸引、注ぎ出しなどによって取り出し得る。非結合標的が吸引または注ぎ出されるとき、磁気的に結合した標的は、磁石配列によって加えられる磁場のために、元の容器中に保持されることができる。
【0064】
他の態様においては、非結合標的を、懸濁液から、たとえば、磁石配列の表面に隣接して位置付けられた出口に通して取り出し得る。これは、たとえば、流れる細胞懸濁液を含む磁気分離プロセスにおいて有用であり得る。たとえば、磁気的に標識された細胞を含む懸濁液を、磁石配列の表面に隣接して位置付けられた容器に流し込み得る。そのような場合、磁気的に標識された細胞は、磁石配列を通過するとき、流れる懸濁液から取り出され得、非結合標的は、フローセルから流出し続けることを許され得る。
【0065】
細胞分離の性能は、分離後の試料の純度および標的細胞の回収率に基づいて計測することができる。例示的な純度パラメータおよび回収率パラメータは式(1)および(2)において定義される:
式中、
は細胞の数であり、下付き文字「tar」は標的細胞の数を表し、下付き文字「ntar」は非標的細胞の数を表し、下付き文字「initial」は分離前の初期標的細胞画分を表し、下付き文字「final」は分離後の細胞画分を表す。
【0066】
プレート磁石で速い回収速度を達成するためには、細胞にかかる平均磁場勾配(全プロセス量での)が大きくあるべきである。プレート磁石システムにおいて、分離性能は、磁石の強さ、細胞懸濁液を保持する容器の形状および処理される試料量に依存し得る。
【0067】
図2は、例示的なプレート磁石システムの最大プロセス量高さ
および捕捉量高さ
の例を示す。図2の例において、容器200はプレート磁石210の表面に隣接して位置付けられている。容器200aは、第一の複数の磁気的に結合した標的、第二の複数の非結合標的および第三の複数の非結合磁性粒子を含む、初期処理試料量220で示されている。処理試料量220は、磁性粒子を添加し、懸濁液をインキュベートしたのち、非結合標的を取り出す前の容器200中の体積に相当する。容器200bは、非結合標的の吸引ののち管中に保持された体積の量(すなわち、非結合標的を取り出したのち、容器200中に残る懸濁液の体積)に相当する捕捉量230を含む状態で示されている。図2中、分離距離は、プロセス量220の最大高さ
と捕捉量230の高さ
との間の差である。
【0068】
本明細書に記載される態様において、磁石配列は、複数の磁気要素を磁場供給源として使用して形成され得る。電磁石および永久磁石が、本明細書に記載される様々な態様において磁気要素として使用され得る磁場供給源の例である。
【0069】
電磁石は一般に、磁場を誘発するために電気エネルギーの連続供給を必要とする。電磁石を使用して大きな磁場(たとえば約1T)を生成するためには、しばしば大きな電流が必要とされる。しかし、大きな電流は、試料の加熱を招く、および/または安全性への懸念を呈する場合がある。
【0070】
永久磁石は磁場を受動的に生成することができる。永久磁石技術における進歩は、細胞分離法に適切であり得る体積に対して1Tの強力な磁場を提供し得る(たとえば、M. Zborowski, Magnetic Cell Separation, Amsterdam: Elsevier, 2008を参照のこと)。その結果、永久磁石は、いくつかの態様において、電磁石と比較して、磁気分離用途のための簡単かつ手頃な代替を提供し得る。永久磁石は、永久磁石からの磁場成分が空間内のある点で代数的に加算されるような様々な構成に配置されることができる。この性質は重ね合わせと呼ばれ、これを使用して、強い局所磁場および高い勾配を生成することができる。
【0071】
従来のシステムにおいて、プレート型磁石は一般的に、北磁気要素と南磁気要素とを交互に配列したもの(本明細書においてはDexter Designと呼ばれる)を使用する。この構成は、磁場を囲む磁極間間隙を形成して、大きな磁場勾配を生成する。北磁気要素305と南磁気要素310との間の磁極間間隙の磁力線300の一例が図3Aに示されている。
【0072】
いくつかの他の従来システム(たとえば、円柱形配置と一緒に使用されるもの)においては、図3Bに示すように、磁気要素325および330の四極円形配置320を使用し得る。四極構成320は、最小限の漂遊磁場損失のおかげで、大きな磁場を提供し得る。四極構成320はまた、磁場が、四極磁気配置320の表面で大きく、その中心335ではゼロに打ち消されるため、大きな磁場勾配を提供し得る。
【0073】
四極磁石構成320は円柱形配置における分離に有用であり得るが、平面磁石配列のための交互北南配置300はいくつかの欠点を有する場合がある。交互N/S構成300の1つの潜在的欠点は、磁極間の間隙が、処理されるウェルの下に(すなわち容器ユニットの下に)正確に位置するように注意深く配置されなければならないことである。磁極間間隙の上に位置合わせされていないウェル/容器は十分な磁場勾配を経験し得ない。その結果、位置合わせされていないウェル中の磁気分離は、磁極間間隙の真上に位置するウェル/容器中の磁気分離よりも劣り得る。これは、異なる容器ユニット配置ごとに(たとえば異なるマルチウェルプレート配置ごとに)異なる磁石配列が求められるという結果を招き得る。これはまた、磁石配列上の容器の位置合わせの可能性を導いて、磁気分離性能に有意な影響を及ぼし得る。
【0074】
図3Cに見られるハルバッハ配列350は、磁気要素355a~355eの90°回転パターンを有する。ハルバッハ配列350は、図3Dに示すように、重ね合わせの原理を使用して、一方の側で磁場を増幅し、他方の側で磁場を打ち消す。磁気要素355a、355cおよび355eによって誘導された磁場360は、磁気要素355bおよび355dによって誘導された磁場365と重ね合わされて、磁場370を生成する。いくつかの例において、以下さらに詳細に説明するように、ハルバッハ配列350を使用する態様は、関心対象の容器サイズに関し、他の磁石構成よりも均一な磁場が提供されることを可能にし得る。
【0075】
図4に示すように、ハルバッハ配列は、スーパーハルバッハ(SH: Super Halbach)構成およびハイパーハルバッハ(HH: Hyper Halbach)構成のような、多様な磁気構成において使用されている。図4に示すプロットは、HH構成が相対的にもっとも強い磁場およびもっとも急峻な勾配を生成し、シングルハルバッハ構成および交互磁石(すなわち北南)構成がそれに続くことを示す。
【0076】
次に図5Aを参照すると、図5Aには本明細書に記載される磁気分離法および装置の態様において使用され得る二次元磁石配列500の例が示されている。磁石配列500は、直線状ハルバッハ配列として記され得る二次元磁石配列の例示的態様である。
【0077】
磁石配列500は、二次元磁石配列を画定するように配置された複数の磁気要素510を含む。
【0078】
二次元磁石配列は、第一の次元505(行方向とも呼ばれる)に沿って延びる複数の磁気要素510と、第二の次元515(列方向とも呼ばれる)に沿って延びる複数の磁気要素510とを含む。
【0079】
例示的な配列500において、複数の磁気要素510は複数の一次元磁石配列520に配置されている。各磁石配列520は、互いに隣接して位置付けられて第一の次元505の方向に延びる(すなわち、配列500の行を画定する)複数の磁気要素510を含む。各一次元磁石配列520中の複数の磁気要素510は、ハルバッハ配列、たとえば図3Cに示されかつ本明細書中で先に記載されたハルバッハ配列を画定するように向けられている。
【0080】
たとえば、一次元磁石配列520aは磁気要素510aa、510ab、510ac、510adおよび510aeを含む。磁気要素510aa、510ab、510ac、510adおよび510aeの向きは、同じ一次元磁石配列520a中の各隣接する磁気要素に対して90°回転している。
【0081】
同様に、一次元磁石配列520eは磁気要素510ea、510eb、510ec、510edおよび510eeを含む。磁気要素510ea、510eb、510ec、510edおよび510eeの向きは、同じ一次元磁石配列520e中の各隣接する磁気要素に対して90°回転している。
【0082】
磁気要素510は磁石配列500の配列表面を画定する。図5A中、配列表面は、紙面から外を向いている。磁気要素510は、複数の磁気要素510によって画定される磁場が磁気感受性粒子を配列表面に向けて引き寄せるように配置されている。
【0083】
配列500中、複数の一次元磁石配列520によって画定される磁場はすべて、磁石配列500の表面に沿って同じ方向に向けられている。図5Aに示す例において、各一次元磁石配列520は、他の一次元磁石配列520それぞれと同じ構成および向きの磁気要素510を有する。すなわち、配列500中の各磁気要素510は、第二の次元515の方向に、それに隣接する各磁気要素と同じ磁場向きを有する(すなわち、列中の各磁気要素510は同じ向きを有する)。
【0084】
図5Aに示す例示的配列500において、磁気要素510はそれぞれ同じ要素サイズを有する。代替態様において、磁石配列500中の磁気要素のサイズおよび形状は、配列の全体サイズに基づいて変更および/または調整されてもよい。たとえば、磁気要素510のサイズは、隣接するハルバッハ配列520の間で変化してもよく、それでも、それらのハルバッハ配列は、配列500の表面で同じ方向を向く磁場を画定する。
【0085】
図5Aに示すように、二次元配列500は実質的に矩形である。他の態様において、配列は、異なる二次元構成に配置されてもよい。いくつかの場合、磁気要素の形状を調節して、異なる形状の直線状ハルバッハ配列を提供してもよい。
【0086】
いくつかの場合、配列500の表面は実質的に平面であり得る。代替態様において、配列500の表面は平面である必要はない。たとえば、配列500の表面は、磁気分離装置とともに使用される容器の形状に適合するように成形されてもよい。たとえば、いくつかの例において、配列500の表面は湾曲していてもよい。これは、湾曲している場合もある容器、たとえばバッグまたは他の変形可能な容器を用いる細胞分離を容易にし得る。
【0087】
本明細書に記載される態様は磁気分離装置を提供する。磁気分離装置は、複数の標的を収容するように構成された容器とともに使用され得る。複数の標的は、所望の細胞/関心対象の細胞および望まれない細胞またはDNA、RNAもしくはタンパク質を含むことができる。
【0088】
複数の標的を複数の磁気感受性粒子と結合させて、磁気感受性である磁気的に結合した標的を提供し得る。いくつかの場合、磁気的に結合した標的は磁気感受性粒子であり得る。磁気的に結合した標的は、たとえば、標的(たとえば、正の選択技術の場合には所望の細胞または負の選択技術の場合には望まれない細胞)と磁性粒子とを結合させて、標的および磁性粒子を含む磁気的に結合した標的複合体(または結合した粒子/細胞)を形成することによって生成され得る。
【0089】
装置は、二次元磁石配列を画定するように配置された複数の磁気要素を含み得る。たとえば、図5Aに示されかつ上述された磁石配列500は、磁気分離装置において磁石配列として使用され得る。
【0090】
いくつかの例において、磁気要素は、互いに隣接して配置されて、少なくとも1つの行および少なくとも1つの列を有する矩形配列を画定することができる。一般に、矩形の磁石配列は典型的に、複数の行および複数の列を含み得る(配列500の例のように)。他の態様において、磁石配列は矩形である必要はない。
【0091】
一般に、各行中の磁気要素は、一次ハルバッハ配列を画定するように配置されることができる。磁石の各行は、各一次ハルバッハ配列の磁場が同じ方向を向くように互いに隣接して配置されることができる。矩形の磁石配列は実質的に平面の磁気プレートを画定することができる。いくつかの態様において、実質的に平面の磁気プレート中の磁石の各行は実質的に同じ磁場を提供し得る。
【0092】
換言するならば、矩形配列の第一行にある磁石は、一次ハルバッハ配列を画定するように配置されたそれぞれの磁場を有することができる。配列の列方向に進んで、配列の第二行および後続の行それぞれにある磁石のそれぞれの磁場は、任意の直前の行にある磁石のそれぞれの磁場と同じ方向に向けられることができる。
【0093】
様々な異なる容器が、本明細書に記載される磁気分離装置の態様で使用され得る。たとえば、いくつかの態様において、容器はマルチウェルマイクロプレートであり得る。マルチウェルマイクロプレートは、単独の管またはシングルウェル、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルマイクロプレート、384ウェルマイクロプレートおよび1536ウェルマイクロプレートのうちの少なくとも1つを含み得る。容器はまた、たとえば、管、バイアル、ペトリ皿、バッグ(たとえば、任意の形状の軟質壁容器)およびボトルのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0094】
いくつかの場合、入口または出口または両方を有する管またはバッグのような容器は、磁気分離法が実施されている間に標的を含む懸濁液を流動させ得る。他の場合、懸濁液は容器内で実質的に静的であり得る。
【0095】
様々な態様において、磁気分離装置に使用される磁石は永久磁石の形態をとり得る。これが、分離される試料の加熱を回避させ得る。これはまた、磁場を誘発するための電流の使用に伴い得る安全性への懸念を回避させ得る。
【0096】
他の態様において、磁石は電磁石であり得る。これはまた、電源を接続または切断することによって磁石の磁場を制御(たとえばアクティブ化または非アクティブ化)し得る。
【0097】
いくつかの態様において、磁石は、磁気分離装置中のハウジング、たとえば以下に説明する図5Bに示すハウジング550によって、またはハウジング550の中に支持され得る(すなわち、ハウジング550によって包囲され得る)。ハウジングは磁石配列の構築および動作を容易にし得る。
【0098】
次に図5Bを参照すると、図5Bにはハウジング550の例示的態様が示されている。いくつかの態様において、ハウジング550のようなハウジングは、図5Aに示す磁石配列500のような二次元磁石配列を支持するために使用され得る。いくつかの場合、磁石配列はハウジング550内に閉じ込められ得る。ハウジング550は、磁石配列500の周囲の保護ハウジングとして働き得る。ハウジング550はまた、磁石配列500の磁気要素を定位置に保持し得る。
【0099】
ハウジング550はハウジングベース560を含み得る。ハウジングベース560の内部は、磁気要素を受け入れるためのフレームを画定し得る。フレームは、二次元配列の形状を画定する複数のチャネルおよび溝を含み得る。ハウジングベース560は、フレームのチャネルおよび溝を画定する壁を含み得る。ハウジングベース560はまた、ハウジングベース560から上に延びる側壁565を含み得る。いくつかの場合、側壁565は、ハウジングベース560中のチャネルの外側部分を画定するように働き得る。各チャネルは、第一の次元に沿って配列を実質的に横切る方向に延び得る。各チャネルは、磁気要素が位置付けられ得る第一の次元に沿う位置に対応する複数の溝を含み得る。
【0100】
磁石配列の磁気要素は、ハウジングベース560のチャネルおよび溝内に位置付けられることができる。個々の磁気要素は、対応するチャネルおよび溝の位置内で定位置に固定され得る。たとえば、磁気要素は、止めねじの使用によってハウジングベース560に固定され得る。ハウジング550はまた、磁気要素を覆うように取り付けられ得る、かつ、そのものが磁性、強磁性または磁化性であってもよいし、なくてもよいハウジングカバー555を含み得る。一般に、薄い非強磁性材料が、磁場を乱さないため、望ましい。しかし、異なる表面形状を有する強磁性カバーは、磁気分離に対してプラスの効果を及ぼし得る。カバー555はまた、磁気要素を定位置に維持するためのさらなる支持を提供し得る。ハウジングカバー555はまた、ハウジングによって支持される磁石配列の配列表面に隣接する容器受け入れ面580を含み得る。容器受け入れ面580は、磁気分離プロセスに使用するための容器を支持するように成形され得る。
【0101】
両方が存在する態様において、ハウジングベース560はハウジングカバー555よりも厚くてもよい。これは、ハウジングベース560がハウジング550のための構造完全性を提供することを許し得る。ハウジングカバー555は、磁石配列の磁場への干渉を最小化し、かつ、ハウジングカバー555の容器受け入れ面580に隣接してまたは容器受け入れ面580の上に位置付けられる容器のために最大限の磁場強さを提供するために、薄くてもよい。
【0102】
直線状ハルバッハ配列構造は、隣接する磁気要素が互いに反発する不安定な磁気構成である可能性があるため、ハウジング550は二次元磁石配列の製造を容易にし得る。いくつかの態様において、磁気要素は、セラミック要素のような脆い材料で形成される場合がある。そのような場合、ハウジング550は、セラミック要素が損傷しないことを保証しながらも磁気要素を定位置に固定するために、好ましいといえる。
【0103】
あるいはまた、いくつかの態様においては、鉄磁石のような、比較的脆くない材料を使用してもよい。そのような態様において、磁気要素を互いに隣接して固定するための代替方法(たとえば、隣接する磁石間の接着剤またはコネクタ)が使用されるならば、ハウジング550は省略されてもよい。
【0104】
追加的または代替的に、磁気要素は、互いに連結するように成形されてもよい(たとえば図15を参照)。いくつかの場合、これは、ハウジングを要することなく、より脆い磁気要素(たとえばセラミック要素)を使用することを許し得る。
【0105】
いくつかの場合、ハウジング550はまた、案内要素570a~570dを含み得る。案内要素570は、容器を、ハウジング550のトップカバー555に隣接するまたはトップカバー555によって提供される容器受け入れ面580に向けて案内または誘導するために使用され得る。案内要素570はまた、容器または容器ユニットを磁石配列の表面に近接させて保持し得る。
【0106】
案内要素570は、ハウジング550から延びる案内部材を含み得る。案内部材は、ハウジング550のトップカバー555、側壁565および/またはハウジングベース560から延び得る。案内部材は、磁気分離プロセスに使用される容器の形状に対応するように成形されかつ位置付けられ得る。たとえば、案内要素570は、ハウジング550の各角でハウジングのトップカバーの表面から延びる案内部材を含み得る。案内要素570は、容器および/または複数の容器を保持する容器ユニットと係合するように成形された案内チャネル575を含み得る。図5Bに示す例において、案内要素は、マルチウェル容器ユニットを容器受け入れ面580の近くに保持し得る。これは、マルチウェル容器ユニット内に保持された複数の個々の容器が、容器受け入れ面580の上および容器受け入れ面580に近接して同時並行的に位置付けられることを容易にし得る。
【0107】
いくつかの場合、磁気分離装置が、そのトップカバー555が面に対面する状態で位置付けられている場合、案内要素570はまた、ハウジング550のトップカバー555を別の面から持ち上げ得る。これは、磁気分離装置を表面から引き離すことを可能にすることにより、磁気分離装置を磁気感受性面、たとえば金属面から取り除くことを容易にし得る。案内部材はまた、磁気分離装置が表面または別の磁気分離装置に引き寄せられることによってユーザの手がつぶされることがないことを保証にするための安全機能として作動し得る。
【0108】
配列中の磁石は、様々な態様において、関心対象の容器ユニットおよびサイズに関して磁場均一性、磁場強さおよび磁場強度減衰率の所望のバランス(すなわち、磁性粒子を使用する細胞分離が達成され得る有効深さ)を提供するようにサイズ設定および配置され得る。磁石はまた、様々な態様において、関心対象の容器ユニットおよびサイズに関してより大きな深さの磁気分離量を可能にする、磁場勾配と磁場浸透距離との間の所望のバランスを達成するように配置され得る。
【0109】
本明細書に記載される磁気分離装置およびシステムの態様はまた、複数の二次元磁石配列をモジュール式に組み合わせ得る。二次元磁石配列は、個々の二次元磁石配列を組み合わせてより大きな二次元磁石配列にすることにより、より大きな配列へとアセンブルされ得る。これは、磁気分離装置が異なるサイズの容器とともに使用されることを許し得る。本明細書に記載される態様において、二次元磁石配列は、同じ向きを有する磁気要素の列を含み得、一方で、行がハルバッハ配列を画定する。この構成は、複数の二次元磁石配列を、それらの磁場が同じ方向を向く状態で、横並びに位置付けることができるモジュール構造を容易にし得る。列は磁気要素の反復パターン/順列(たとえば、列を通して同じ要素)を有するため、列を複数の二次元磁石配列にかけて容易に延ばすことができる。
【0110】
いくつかの場合、個々の二次元磁石配列を背中合わせに配置して、分離を、たとえば管ラック構成において、2組の試料に対して実施し得るようにすることもできる。これは、自動化ピペット移送システムを含むもののような、迅速な自動化処理法を容易にし得る。たとえば、試験管のような容器は、背中合わせの二次元磁石配列の両側に位置付けられ得る。試料を両側の管に移すことができ、磁気分離プロセスをそれらの試料に対して実質的に同時並行に実施することができる。直線状ハルバッハ配列は、配列表面とは反対の側では最小限の磁場しか生じさせないため(上記図3Dに示すように)、この背中合わせ配置においては、最小限の干渉しか起こり得ない。
【0111】
次に図14を参照すると、図14には磁気分離装置1400の一例が示されている。磁気分離装置1400は第一の二次元磁石配列1405aおよび第二の二次元磁石配列1405bを含む。第一の二次元磁石配列1405aは複数の一次元磁石配列1415a~1415hを含む。第二の二次元磁石配列1405bは複数の一次元磁石配列1425a~1425hを含む。
【0112】
装置1400は、第一の二次元磁石配列1405aに対応する第一の受け入れ区域1410aを含む。装置1400はまた、第二の二次元磁石配列1405bに対応する第二の受け入れ区域1410bを含む。これが、容器が磁気細胞分離のために装置1400のいずれの側にも位置付けられることを許し得る。
【0113】
一対の二次元磁石配列1405aおよび1405bは背中合わせの配置で位置付けられている。すなわち、第一の二次元磁石配列1405aによって生成される磁場は、第二の二次元磁石配列1405bによって生成される磁場とは反対の方向を向く。磁気分離方法を実施するために、容器は、背中合わせの配列1405aおよび1405bのいずれかの側または両側で使用され得る。
【0114】
磁石配列の背面で二次元磁石配列の磁場が実質的にゼロになるため、磁気分離装置1400は、第一の二次元磁石配列1405aおよび第二の二次元磁石配列1405bそれぞれが、装置1400の両側に位置付けられた容器によって実質的に同時に磁気細胞分離を実施することを許し得る。
【0115】
いくつかの場合、二次元磁石配列の2つ以上が対面配置(または部分的対面配置)に配置され得る。たとえば、磁気分離のために、2つ以上の個々の二次元磁石配列が、1つまたは複数の容器が平面配列の間に位置付けられるかまたは挟まれる状態で、平行に配置されることができる。
【0116】
次に図13を参照すると、図13には磁気分離装置またはシステム1300の例示的態様が示されている。磁気分離システム1300は、第一の二次元磁石配列1305aおよび第二の二次元磁石配列1305bを含む、複数の二次元磁石配列を含む。二次元磁石配列1305aおよび1305bは、図5に示す二次元磁石配列500に概して類似し得る。
【0117】
第一の二次元磁石配列1305aは複数の一次元磁石配列1315a~1315hを含む。一次元磁石配列1315a~1315hそれぞれ中の磁気要素は、ハルバッハ配列を画定するように向けられている。さらに、各ハルバッハ配列1315a~1315hの磁場は、第一の二次元磁石配列1305a中で同じ方向に向けられている。互いに横方向に隣接するが、異なるハルバッハ配列1315中にある磁気要素の磁場もまた、同じ方向に向けられている。
【0118】
同様に、第二の二次元磁石配列1305bは複数の一次元磁石配列1325a~1325hを含む。一次元磁石配列1325a~1325hそれぞれ中の磁気要素は、ハルバッハ配列を画定するように向けられている。さらに、各ハルバッファ配列1325a~1325hの磁場は、第一の二次元磁石配列1305b中で同じ方向に向けられている。互いに横方向に隣接するが、異なるハルバッハ配列1325中にある磁気要素の磁場もまた、同じ方向に向けられている。他の態様において、横方向に隣接する磁気要素の磁場は、図17Aおよび17Bに示すように同じ方向にある必要はない。
【0119】
システム1300中、一対の二次元磁石配列1305aおよび1305bは対面配置で提供されている。すなわち、第一の二次元磁石配列1305aからの磁場は第二の二次元磁石配列1305bに向けられている。同様に、第二の二次元磁石配列1305bからの磁場は第一の二次元磁石配列1305aに向けられている。
【0120】
システム1300は受け入れ区域1310を含む。受け入れ区域は、容器を受け入れるように構成されている。容器が受け入れ区域1310に位置付けられると、容器内の細胞懸濁液は、一対の二次元磁石配列1305aおよび1305bによって誘導される磁場の使用により、磁気的に分離されることができる。たとえば、受け入れ区域1310は、試験管、皿もしくはフラスコ、または試験管、皿もしくはフラスコのトレーを受け入れるように構成され得る。あるいはまた、受け入れ区域1310は、細胞懸濁液がそこを通って流れ、流れる懸濁液から磁気感受性粒子を取り出すことを可能にするように位置付けられてもよい。
【0121】
磁気分離装置1300中、第一の二次元磁石配列1305aと第二の二次元磁石配列1305bとは互いに平行である。第一の二次元磁石配列1305aおよび第二の二次元磁石配列1305bの磁場強さが、第一の二次元磁石配列1305aおよび第二の二次元磁石配列1305bの受け入れ区域1310内の位置に磁気強さ中間点平面を規定する。たとえば磁気強さ中間点平面は、第一の二次元磁石配列1305aの磁場と第二の二次元磁石配列1305bの磁場とが同一である場合、幾何学的中間点に一致し得る。他の場合には、磁場強さが変化する場合、磁気強さ中間点平面は幾何学的中間点に位置しなくてもよい。第一の二次元磁石配列1305aおよび第二の二次元磁石配列1305bの磁場は、磁気強さ中間点を規定する平面に実質的に沿って磁場強さ最小値を提供するように選択されることができる。受け入れ区域1310は、1つまたは複数の容器を磁気強さ中間点平面に誘導するように構成され得る。これは、第一の二次元磁石配列1305aと第二の二次元磁石配列1305bとの間に大きな磁場勾配を提供することによって磁気分離を容易にし得る。
【0122】
平行な平面配列の間の向きは、平行な平面ハルバッハ配列間の磁場強さ中間点を規定する平面の近くで、磁場強さ最小値を規定する平面が得られるように構成されることができる。磁場強さ中間点は、たとえば、それぞれの二次元磁石配列の磁場強さが異なる場合、二次元磁石配列間の幾何学的中間点に完全には一致し得ない。これは、二等分磁場最小値平面から遠ざかるにつれ、磁場勾配を増大させ得る。
【0123】
いくつかの態様において、対面する二次元磁石配列の磁場の向きは互いに対して回転してもよい(たとえば、平行、垂直または他の相対的な向き)。次に図16を参照すると、図16には例示的な磁気分離装置1600が示されている。磁気分離装置1600は、対面配置にある第一の二次元磁石配列1605aおよび第二の二次元磁石配列1605bを含む。第一の二次元磁石配列1605aと第二の二次元磁石配列1605bとの間に、容器のため受け入れ区域1610が配置されている。
【0124】
第一の二次元磁石配列1605aは複数の一次元ハルバッハ配列1615a~1615eを含む。同様に、第二の二次元磁石配列1605bは複数の一次元ハルバッハ配列1625a~1625eを含む。しかし、第一の二次元磁石配列1605aの磁場の向きは、第二の二次元磁石配列1605bの磁場に対して垂直に回転している。
【0125】
同様に、少なくとも2つの対面する二次元磁石配列は、互いに対してある角度で位置付けられ得る。二次元磁石配列の角度および回転は、特定の用途に望ましい磁場に依存して調節されることができる。
【0126】
次に図17Aを参照すると、図17Aには例示的態様の磁気分離装置1700aおよび磁気分離装置1750aの平面図が示されている。磁気分離装置1700aは、垂直配置にある一対の二次元磁石配列1705aおよび1705bを含む。両二次元磁石列1705aおよび1705bの前部の区域には、容器のための受け入れ区域1710が位置付けられている。したがって、両二次元磁石配列1705aおよび1705bの磁場は、少なくとも部分的に重なって、受け入れ区域1710中で容器中の標的を引き寄せることができる。
【0127】
磁気分離装置1750aは、部分的に対面する配置(鋭角関係とも呼ばれる)にある一対の二次元磁石配列1755aおよび1755bを含む。両二次元磁石配列1755aおよび1755bの前部の区域には、容器のための受け入れ区域1760が位置付けられている。したがって、両二次元磁石配列1755aおよび1755bの磁場は、少なくとも部分的に重なって、受け入れ区域1760中で容器中の標的を引き寄せることができる。
【0128】
次に図17Bを参照すると、図17Bには例示的態様の磁気分離装置1700bおよび磁気分離装置1750bの平面図が示されている。磁気分離装置1700bは、垂直配置にある一対の二次元磁石配列1705aおよび1705b'を含むという点で、装置1700aに類似している。しかし、磁気分離装置1700bにおいて、二次元磁石配列1705b'の向きは二次元磁石配列1705bの向きに対して回転している。その結果、受け入れ区域1710中で容器と相互作用する磁場は、磁気分離装置1700bの場合、磁気分離装置1700aと比較して異なる。
【0129】
同様に、磁気分離装置1750bは、磁石配列1755b'の磁場が磁石配列1755bの磁場に対して回転していることを除き、磁石分離装置1750aに類似している。ここでもまた、受け入れ区域1760中の容器と相互作用する磁場は、磁気分離装置1750bの場合、磁気分離装置1750aと比較して異なる。
【0130】
本明細書に記載される態様は、妥当な時間枠内で少量(たとえば1マイクロリットル)~大量(>50mL)を処理することができる自動化用途に使用することができる実質的に汎用性のプレート磁石を提供することができる。
【0131】
有限平面上で最大限の均一性を達成するために、磁石配列(たとえばLH配列)内の磁気ブロックのサイズおよび形状は、配列の全体サイズに依存して変更および調整されることができる。たとえば、85mm×130mm(標準ANSIプレート寸法)の配列中、小さな立方体磁石要素の交互のブロックをより大きな(2倍サイズの)ブロックとアセンブルして、有限直線状ハルバッハ配列の境界効果を減らすことができる。他の例において、磁気要素は、所望の磁場分布および均一性を提供するために、矩形(かつ立方体ではない)または他の形状であってもよい。
【0132】
次に図15を参照すると、図15には本明細書に記載されるいくつかの態様においてそれぞれ一次元ハルバッハ配列1500aおよび1550b(ひいては、二次元磁石配列)を形成するために使用され得る磁気要素1510および1520の例が示されている。第一の一次元ハルバッハ配列1500aは第一の複数の磁気要素1510a~1510iを含む。第二の一次元ハルバッハ配列1500bは第二の複数の磁気要素1520a~1520iを含む。
【0133】
図15に示すように、磁気要素1510a~1510iの磁場は、ハルバッハ配列1500aを画定するように向けられている。しかし、配列1500a中、磁気要素1510は一定の要素サイズを有しない。むしろ、磁気要素1510のサイズはハルバッハ配列1500a全体を通して異なる。例示的配列1500a中、磁気要素1510のサイズは1反復パターン内で異なり、各第二の磁気要素1510が同じサイズを有する。同様に、磁気要素1510は一定の形状を有しない。むしろ、形状もまた異なり、各第二の磁気要素1510が同じ形状を有する。ハルバッハ配列1500a中、磁気要素1510a、1510c、1510e、1510gおよび1510iは互いに同じ形状およびサイズを有する。磁気要素1510b、1510d、1510fおよび1510hは、互いに同じ形状および大きさを有するが、磁気要素1510a、1510c、1510e、1510gおよび1510iとは異なる。
【0134】
ハルバッハ配列1500bもまた、変化する要素サイズを使用する例示的な磁石配列を示す。図示するように、磁気要素1520b、1520d、1520fおよび1520hは、配列1500aの磁気要素1510b、1510d、1510fおよび1510hの概して同じ形状およびサイズを有する。しかし、磁気要素1520a、1520c、1520e、1520gおよび1520iは、配列1500aの磁気要素1510a、1510c、1510e、1510gおよび1510iよりも小さい。
【0135】
ハルバッハ配列1500aおよび1500bはまた、連結する磁気要素を有する一次元磁石配列の例を示す。これは、配列中の磁気要素の間でさらなる構造支持を提供し得る。
【0136】
いくつかの場合、関心対象の容器に、配列の表面全体にわたってより均一な磁場を提供するために、磁場強さを犠牲にする場合がある。したがって、本明細書に記載されるLH配列の態様は、関心対象の容器ユニットに強い磁場勾配および非常に均一な磁場の両方を提供し得る。これは、たとえば、磁石配列の表面上の試料の正確な位置付けとは無関係に、磁気面を横切る位置に位置付けられた容器に対して細胞分離が再現可能に実施されることを可能にし得る。
【0137】
磁場は、磁場強さ
および磁場強度
によって規定される。磁場強さベクトルとは磁場供給源の強さを指し、磁場強度ベクトルとは、周囲の空間に対する結果的な影響を指す。磁場強さは、駆動力または「原因」と称されることができるが、一方で、磁場強度は、結合磁束密度または「効果」とみなされることができる。自由空間(真空)中、磁場強度は、式(3)に示すように、磁場強さに比例する。
式中、
は自由空間の透磁率
である。
【0138】
磁力線を使用して磁場を可視化することができる。磁力線はどの場所でも磁場強さベクトルおよび磁場強度ベクトルに接している。物質の存在が磁場強さと磁場強度との関係を変化させる。物質中の磁場強度は式(4)によって求められる。
式中、
は磁化ベクトルである。磁化は、式(5)で表されるように、体積
の物質中の磁気双極子モーメント
の密度を規定する。
【0139】
等方性材料において、磁化は磁場強さに比例する。この性質は式(6)で定義される。
式中、
は材料の体積磁化率である。
【0140】
磁化率は、印加された磁場に応答する物質の磁化の程度を表す無次元定数である。したがって、式(4)は、以下のように再整理することができる。
式中、
は、材料の比透磁率と定義される。
【0141】
磁化率は、多くの場合、細胞およびその培地のような生物学的物質の場合は非常に小さい。理由は、細胞が大部分、反磁性である水で構成されているからである。水は、10-6程度の非常に小さい負の磁化率を有する。磁気細胞分離に使用され得る強磁性材料は、10-1程度の磁化率を有することができる。したがって、標的細胞を磁性粒子で標識すると、標的細胞の磁化率をその周囲と比較して劇的に増すことができる。
【0142】
磁性材料の体積に対する磁力は式(8)によって求められる。
【0143】
磁力は、式(6)および(7)を式(8)に代入することによって書き換えられて、以下の式(9)を与えることができる。
【0144】
磁気的に標識された細胞にかかる全磁力は式(10)によって求められる。
式中、
は、1細胞あたりの粒子の数であり、
は、1個の磁性粒子の体積である。
【0145】
したがって、標識された細胞にかかる磁力は、磁性粒子の性質(一定と仮定する)と、磁場強度ベクトル
の、それ自体に対する微分である項
とによって特徴づけることができる。この項は磁力密度と呼ばれ、式(11)によって定義される。
【0146】
一次元の場合、磁気的に標識された細胞にかかる磁力は、式(12)へと簡約することができる。
【0147】
上記式は、細胞にかかる磁力が磁場強度および磁場強度勾配の関数であることを示す。外部磁場中の標識細胞の経路は、磁力線をたどらないため、直観的でない場合がある。細胞は、先に定義された磁力場によって画定される磁気経路線をたどる。磁気経路線はどの場所でも磁力場に接している。
【0148】
典型的に細胞分離に使用される磁性ナノ粒子は超常磁性である。超常磁性粒子の磁化曲線を図12に見ることができる。図12は、磁性粒子が、磁化が磁場強度に比例する線形超常磁性領域または磁化が一定のままである飽和磁性領域のいずれかにあることができることを示す。これは、式(13)中、有効磁化率と呼ばれる項
によって数学的に表すことができる。
【0149】
有効磁化率を式(10)に代入すると、以下の式(14)が得られる。
【0150】
標的にかかる磁力は、粒子が線形領域にあるのか、または飽和超常磁性領域にあるのかに依存し得る。これは、区分的有効磁化率式(13)を式(14)に代入して式(15)を得ることにより、式形態で表すことができる。式(15)を一次元の場合へと簡約すると、式(16)が得られる。
【0151】
式(16)は、線形超常磁性領域中、磁力が、粒子の磁気的性質(一定である)と磁場と磁場勾配との積であることを示す。飽和超常磁性領域中、磁力は、粒子の磁気的性質と磁場勾配との積である。
【0152】
プレート磁石において速い回収速度を有するためには、容器中の標的にかかる平均磁力(全プロセス量に及ぶ)が大きくあるべきである。これは、プレート磁石システム中では、分離性能が、多くの場合、使用されるハードウェアおよび処理される試料量に依存することを意味する。理由は、ハードウェアおよびプロセス量が分離高さ範囲を規定するからである。図2に見られる分離高さ範囲は、最大プロセス量高さ
と捕捉量高さ
との間の差である。捕捉量とは、管中に保持される量である。このセクションにおいて、平均磁力(所与の分離高さ範囲にわたる)は均一なプレート磁石システムに関して導出される。
【0153】
例示的なプレート磁石態様を評価するために使用される、STEMCELL Technologiesから市販されている磁性ナノ粒子は、約0.5Tの磁場強度で飽和する。試験されるプレート磁石態様においては、飽和領域と比較してかなり多くの磁性ナノ粒子が超常磁性線形領域に存在する。理由は、試験された態様のプロトタイプの最大磁場強度が表面で約0.5Tであったことであり、それが高さとともに指数関数的に減衰することがわかったからである。したがって、線形領域中の細胞に対する飽和領域中の細胞の割合は無視しうる程度である。したがって、プレート磁石システムの態様において、細胞にかかる磁力は式(17)によって求めることができる。簡約された一次元の場合において、磁力は式(18)によって求めることができる。線形超常磁性領域中の磁性粒子性質および標識条件は、式(19)に定義される定数
によって表される。
【0154】
高さの関数としての磁場強度は、均一なプレート磁石に関して実験的に測定された。均一なプレート磁石の高さとともに起こる磁場減衰は式(20)によって定義される。式中、
は、磁石の表面における磁場を表す正の定数であり、かつ
は、高さとともに起こる磁場減衰速度を規定する正の定数である。式(20)の高さに対して導関数をとると、式(22)、すなわち、高さの関数としての磁場勾配が得られる。
【0155】
先に式(11)で定義した一般磁力密度関数は、均一なプレート磁石ケースの場合、式(24)に簡約することができる。
【0156】
したがって、均一なプレート磁石上の所与の高さでの磁力は、式(25)を使用して決定され得る。
【0157】
負の符号は、力がz方向で下向きに作用することを示す(基準系に関しては図2を参照)。式(26)は、磁力密度の大きさ(MFD)を関数
として定義する。分離高さ範囲にわたって式(26)の積分をとり、分離高さ範囲によって割ると、式(27)、すなわち平均MFD(AVG MFD)が得られる。
【0158】
平均MFDは、細胞が経験する平均力に比例する、したがって、回収速度に直に関連する。その結果、本発明者らは、平均MFDを、本明細書に記載される様々な態様を比較するためのパラメータとして使用した。
【0159】
前記を考慮して、本発明者らは、磁場密度(MFD)を計算することによって所与の磁石配列の性能が予測可能であることを突き止めた。たとえば、1/2"N52磁石を用いる場合、1/4"N52磁石で構成された配列と比較して、約6倍強力な配列を形成することができる。図11に示すように、6倍強力な磁石配列(LH2)が達成され、その結果、約25mmの分離ゾーン(Z2)の増加が得られる ― この増加は、ディープウェルプレートにおける分離を可能にする(たとえば、図11に示すLH2を参照)。
【0160】
本明細書に記載される態様は、様々な設計目的を満たすために具現化され得る。第一に、磁石が多様なハードウェアと適合性であることが好ましい場合がある。プレート磁石の平坦な形状は、広い範囲のハードウェア、たとえばマイクロプレート、管、細胞培養フラスコまたはバッグとの容易な適合を許し得る。または、プレート磁石の湾曲した、または非平面の形状は、バッグのような変形可能な容器との容易な適合を許し得る。二次元磁石配列を使用する、本明細書に記載される磁気分離装置のいくつかの例示的態様はこれらの恩典を提供し得る。
【0161】
本明細書に記載される態様はまた、自動化細胞分離機器に搭載可能であり得る。しかし、本明細書に記載される態様はまた、大きな体積範囲にわたって大きな平均MFDを有することができる。MFDは、表面の磁場、磁場勾配および分離高さ範囲に依存する。分離性能がどの位置ででも、かつ、どのハードウェアとでも一貫しているよう、均一な磁場が好ましい。本明細書に記載されるいくつかの態様は、15分以下の期間で試料を処理することができる。
【0162】
記載されるプレート磁石を使用して分離される標的の回収率および最終純度は、ハードウェアおよびプロセス量によって異なり得るが、性能は、プロトタイプ態様を試験したときの他の磁石構成の性能と少なくとも同等またはそれを超えることが好ましい。ユニットサイズプレート磁石は、好ましくは、標準マイクロプレートの面積または約0.011平方メートル(0.12平方フィート)に等しいフットプリントを有するべきである。二次元磁石配列を使用する、本明細書に記載される磁気分離装置のいくつかの例示的態様は、検査室技師によって取り扱われる。したがって、それらは、妥当な重さおよび必要な安全機構、たとえば上記の案内部材を用いて具現化され得る。さらに、上記のように、本明細書に開示される磁気分離装置の態様は、妥当なコストで容易に製造され得る。たとえば、フレームを備えたハウジングが磁気分離装置の構築を簡素化し得る。
【0163】
(表1)プレート磁石の態様の設計目的およびベンチマーク値
【実施例
【0164】
本発明者らによって構築されたプロトタイプを使用して、プレート磁石の3つの代替構成(図6Aに示す)を試験し、評価した。試験した代替構成は、本明細書に記載され、上記図5Aに示された配列500と類似する直線状ハルバッハ(LH)配列構成620ならびに上述のスーパーハルバッハ(SH)610およびハイパーハルバッハ(HH)630配列の例であった。これらの態様のプロトタイプを、Stemcell Technologiesから市販されている既存のNSプレート磁石構成600(Dexter Design)に対して評価した。望ましいパラメータ、たとえば一貫した細胞分離性能、大きな平均MFD(磁力密度)、高い最終回収率、高い最終純度およびアセンブリの容易さを比較の手段として評価した。結果が図7および8B~11に示されている。
【0165】
図4に示す磁気実験は、HH態様がもっとも強い磁場およびもっとも急峻な勾配を生じさせ得、シングルハルバッハ、交互の磁石およびSHがそれに続くことを示す。HHは強い磁場を提供し得るが、アセンブリが複雑である。
【0166】
発明者らによって試験されたSH設計610は、一貫した分離性能を示したが、Dexter NS設計600と同程度の平均MFD(典型的な細胞分離高さ範囲の場合)を示した。したがって、SH610における細胞分離性能はNS600と同程度であった。
【0167】
試験されたLH態様620およびHH構成630は、NS構成600よりもはるかに大きい、同程度の平均MFD(典型的な細胞分離高さ範囲の場合)を示した。これは、LH態様620およびHH構成630が、最終細胞回収率および純度に関して同程度の細胞分離性能を有すると解釈された。
【0168】
LH態様620およびHH構成630は、NS構成600の約2倍である回収速度を示した。これは、NS構成600と比べて、LH配列620およびHH配列630のより高い最終回収率および純度を生じさせた。
【0169】
試験されたLH態様620は、関心対象の位置に関して均一な磁場を有し、その結果、磁石上のすべての位置で一貫した細胞分離性能が得られた。試験されたHH構成630は、均一な磁場を示さず、強い磁極(HH Hポール)および弱い磁極(HH Nポール)を有していた。その結果、試験されたHH構成630において、細胞分離性能はすべての位置で一貫してはいなかった。
【0170】
LH態様620はまた、アセンブリを容易にする簡単な磁石配置を提供した(上記のように)。LH態様620は、有意に小さい、かつより低い等級の磁石を有するにもかかわらず、現行のDEXTER NS設計600磁石を実に性能で上回ることがわかった。
【0171】
1/4インチ立方体N42希土類磁石を使用して、HH、LHおよびSH配列それぞれに関して一定の要素サイズ9×9配列を構築した。HH630、LH620およびSH610配列の平面図ならびにNS対照構成600の平面図が図6Aに示されている。矢印は磁石のS極からN極を指す。
【0172】
ハウジングの一例を使用して立方体磁石を所望の向きに保持した。磁石は、X方向には1mmのリブを用い、Y方向には1mmのプラスチックスペーサを用いて等間隔に離間させた。これは、均一な磁場を維持するのに役立ち得る。ハウジングのトップカバーは、表面における磁場を最大化するために、できるだけ薄い(1mm)ことが好ましい。ハウジングベースは、ハウジングに十分な剛性を提供し得る、増大した厚さ(3mm)を有することができる。磁石を定位置に固定するために、一対のハウジング部分(すなわち、ベースおよびトップカバー)が使用され得、それが図5Bおよび6Bに示されている。
【0173】
代替磁石配列構成のプロトタイプの磁気的性質および分離性能を特徴づけるために、複数の実験を実施した。ガウスメータ(AlphaLabs Inc. GM2-Model)を使用して各磁石の磁場を特徴づけた。プロトタイプ性能を試験するためにCD3陽性細胞選択分離を使用した。生細胞およびCD3陽性細胞の初期および最終細胞濃度計測をフローサイトメトリー(BD Accuri(商標)C6)によって実施した。これらの実験から、最終回収率およびロジット純度差のような分離パラメータを計算することができた。これらの実験から収集されたデータを使用して、例示的な代替プレート磁石態様のプロトタイプの性能を評価した。
【0174】
各プロトタイプに関し、異なる高さ間隔で磁場を計測することにより、高さとともに起こる磁場減衰を特徴づけた(図7に示すように)。NS、SH、LH、HHおよびDexter Design(Stemcell technologiesのBLUE磁石)磁石を評価した。以前の試験においては、HH構成が均一であり得ないことがわかった。HH構成は、ハイパーポール(Hポール)と呼ばれる強い極と、ヌルポール(Nポール)と呼ばれる弱い極とを有し得る。この実験においては、HH HポールおよびHH Nポールをそれぞれ試験した。計測は、磁石ハウジング面から0、0.4、0.76、1.72、3.46、6.4、9.46、12.65mmで実施した。プラスチックスペーサは磁場に干渉しないため、プラスチックスペーサを使用して高さの変化を生じさせた。この実験においては、48の条件それぞれで3回の反復計測を実施して、合計144の計測値を出した。この実験の結果が図7のチャートに示されている。
【0175】
試験された様々な磁石の磁場特性を表2に示す。
【0176】
(表2)磁石態様ごとの磁場特性
【0177】
表面における磁場強さは、降順で、HH Hポール、LH、DEXTER DESIGN、SH、NSおよびHH Nポールであり、それぞれ、5800G(0.58T)、4900G(0.49T)、4500G(0.45T)、4100G(0.41T)、3600G(0.36T)および3000(0.3T)の大きさを有するものであった。磁場減衰率は、降順で、HH Nポール、SH、NS、DEXTER DESIGN、HH HポールおよびLHの順であり、それぞれ、0.55mm-1、0.46mm-1、0.44mm-1、0.32mm-1、0.27mm-1および0.23mm-1の値を有するものであった。より大きい磁場減衰率はより急峻な磁場勾配に相当する。
【0178】
HHは均一な磁場を有さなかった。HH Hポールがもっとも大きな磁場の大きさを有し、一方で、HH Nポールはもっとも弱かった。同じ量の磁性材料を使用して、かつ磁石の向きを変えるだけで、HH Hポールは、NSと比較して61%大きな磁場を生成した。HH Hポールの磁場減衰率はNS減衰率よりも39%小さく、一方で、HH NポールはNS減衰率よりも25%大きかった。
【0179】
LHが、2番目に大きい磁場の大きさおよび全磁極にわたって均一な磁場を有していた(他の位置は試験しなかった)。磁場の大きさはNS磁場の大きさよりも36%大きく、かつ磁場減衰率はNSの減衰率よりも48%小さかった。LHの強力な初期磁場および浅い磁場勾配が大きな高さ範囲の分離を可能にする。
【0180】
SHは磁極上に均一な磁場を有していた。磁場の大きさは、NS磁場の大きさよりもわずかに大きかった(14%)だけであり、磁場速度はNS速度よりもわずかに大きかった(5%)。この磁石の平均MFDは、小さな初期磁場および浅い勾配を有するため、小さいと予想される。
【0181】
LHおよびHH Hポール磁石はいずれも、DEXTER DESIGN磁石と比較して、より大きな初期磁場およびより小さい磁場減衰率を有していた。これは、LH態様およびHH構成のプロトタイプが、Dexter Designと比較して、より少ない磁性材料およびより弱い磁石を使用して、より大きな磁場およびより浅い勾配を生じさせたことを意味する。したがって、これらの構成ははるかに大きな平均MFDを提供し、それが他方で、はるかに大きな分離高さ範囲(より大きな量)の処理を可能にし得る。
【0182】
一貫した分離性能は、均一な磁場を有するプレート磁石の駆動力である。理論的に、磁場が均一であるならば、分離性能は一貫しているはずである。各磁石上の様々な位置でCD3陽性細胞選択分離を実施することにより、各代替磁石構成および対照磁石に関して均一性を試験した。CD3細胞の回収率が位置と位置との間で一貫しているならば、その磁石を均一とみなした(少なくとも細胞分離目的には)。図8Aに示すように、NS構成およびDexter Design磁石800を位置805aおよび805bで試験した。SH構成810を位置815aおよび815bで試験した。例示的なLH態様820を位置825a~825dで試験した。HH構成830を位置835aおよび835bで試験した。
【0183】
PURPLE磁石(Stemcell Technologiesから市販されている)を最大回収率のための対照として使用した。DexterおよびNS磁石は4つの独立した(反復しない)位置を有し、SHおよびLHは6つの独立した位置を有し、HHは12の独立した位置を有する。プレート磁石の場合、2mLバイアルを使用した。理由は、このバイアルは、所望の位置の真上に簡単に設置することができたからである。使用したプロセス量は0.5mLの捕捉量であり、0.1mLを残した。すなわち、理論的には、ベースライン回収率は20%になるはずである。負の画分を、マイクロピペットを用いる吸引によって除去した。PURPLE磁石は5mL管を使用し、2mLのプロセス量を有していた。この実験においては、合計36回の分離のために、3つの反復を含む12の条件があった。分離はランダムブロック設計において実施した。この実験の結果は図8Bに見ることができる。
【0184】
NS、SHおよびLHは、一貫した回収率を有することがわかり、それらが均一な磁場を有することを示した。HHは、予想されたように、HH Hポール(P1)とHH Nポール(P2)との間で一貫した回収率を有さず;その磁場が均一でないことを示した。10分間の分離の場合、平均LH回収率は70.21%であり、これは44.28%のNS回収率よりも59%高かった。平均HH Hポール回収率は75.35%であり、これはNS回収率よりも70%高い。これらの回収率は平均Dexter磁石設計よりも大きく、回収率61.64%である。SHおよびHH Nポールは、それぞれ39.26%および44.76%の平均回収率を有し、いずれも平均NS回収率よりも低かった。もっともおそらくは、磁場の大きさは同じであるが、勾配がわずかに浅いため、SH回収率はNSよりも低かった。
【0185】
次に、代替磁石態様のプロトタイプごとに、時間の関数としての回収率(回収速度)を特徴づけた。これは、各プレート磁石システムの場合に回収率が時間とともにどのように変化するのかのよりよい理解を提供し得る。この実験の場合、分離はCD3陽性細胞選択であり、処理量0.5mLであり、捕捉量0.1mLであった。ここでもまた、理論的ベースライン回収率は20%である。2mLのPURPLE磁石分離を完了することにより、最大回収率を見いだした。使用された各種プレート磁石はNS、LHおよびHHであり、すべての分離をP1位置(最後の実験からの)で実施した。各磁石は、0、5、10および20分の時間間隔で分離を完了させた。ここでもまた、2mLバイアルを使用した。理由は、このバイアルは、所望の位置の真上に簡単に設置することができたからである。この実験においては、合計23の分離のために、2つの反復(PURPLEの場合は3つ)を含む11の条件があった。分離はランダムブロック設計において実施した。これらの実験からの対時間の回収率および純度オッズ比変化を図9Aおよび9Bに見ることができる。
【0186】
LHおよびHH Hポールは同程度の回収速度を示した。理由は、LHおよびHH Hポールが、現行の実験設備の場合、分離高さ範囲にわたって同程度の平均MFDを有したからである。2mLのバイアルは磁石面の5mm上に位置する。したがって、HH Hポールは、そのわずかにより急峻な磁場勾配により、そのより高い初期磁場の利点を失う。LHおよびHH Hポールの回収速度はNSの回収速度の約2倍である。
【0187】
次に、LH態様およびDexter Design磁石を一対一で比較した。だだし、Dexterプレート磁石はより多くの磁性材料およびより高級な磁石を有していた。この実験は、プロトタイプLHがDexter Designと比べてどの程度であるのかのベースラインを与えた。この情報を使用して、より大きく、より高級な磁石を備えた第二の直線状ハルバッハ(LH2)プロトタイプの潜在能力を評価した。
【0188】
LHおよびDexter磁石の回収速度を一対一で比較し、細胞沈降速度を定量した。非標的細胞の沈降は最終純度の低下を招くおそれがある。この実験の場合、分離はCD3陽性細胞選択であり、処理量1mLであり、捕捉量0.1mLであった。したがって、ベースライン回収率は10%である。2mLのPURPLE磁石分離を完了することにより、最大回収率を見いだした。使用された各種プレート磁石はLHおよびDexter Designであり、すべての分離をP1位置(上記)で実施した。各磁石は、0、3、5、8、10、15、25、40および60分の時間間隔で分離を完了させた。
【0189】
磁石に載せなかった沈降条件(SED)もまた、同じ時間間隔で処理した。ここでもまた、2mLバイアルを使用した。理由は、このバイアルは、所望の位置の真上に簡単に設置することができたからである。この実験においては、合計52の分離のために、2つの反復を含む26の条件があった。非常に多くの分離があったため、フローサイトメトリー分析の前に、条件ごとに2つの反復を混合した。これは、反復のマニュアル平均を提供する。分離はランダムブロック設計において実施した。この実験からの対時間の回収率および純度オッズ比変化を図10A(LH、BLUEおよびSEDの対時間回収率)および10B(LH、BLUEおよびSEDの純度オッズ比の対時間変化)に見ることができる。
【0190】
プロトタイプLH態様は、1/4"N42グレード希土類立方体磁石を磁気要素として使用した。LH設計のさらなる態様(LH2と呼ばれる)は、1/4"N42グレード希土類立方体磁石と比べ、1/2"N52グレード希土類立方体磁石を磁気要素として用い得る。LH2態様に関し、平均MFDを、プロセス量高さおよび一定の捕捉量高さの範囲にわたって評価した。また、対比のために、NS、DexterおよびLHの場合の平均MFDをシミュレーションした。図11は、平均MFDを、NS構成、Dexter構成ならびにLHおよびLH2態様の場合のプロセス量高さの関数として示す。捕捉量高さは4.99mmに設定され、プロセス量高さは5mm~25mmまで変化する。
【0191】
図11が示すように、LH2態様は、そのより大きな平均MFDのために、DEXTER DESIGN磁石と比較して、はるかに強い平均磁力を細胞に対して生成すると予想される。これは、LH2設計が現行のDexter Designよりもはるかに強力であり、したがって、大きな分離高さ範囲(潜在的には最大1インチ)を処理する能力を有するはずであることを示す。使用されるハードウェアに依存して、LH2は小~特大のプロセス量を処理することができるはずである。
【0192】
直線状ハルバッハ配列は、磁石要素の安定した構成ではない。その結果、直線状ハルバッハ配列の要素を定位置に保持するために、適当なハウジングが求められることがある。より強い磁気要素はハウジング中に大きな内部応力を生じさせ得;したがって、ハウジングのために強い材料が求められることがある。アルミニウムが、大きな強度対重量比を有し、かつ非磁性材料であるため、適当なハウジング材料の一例である。対照的に、鋼は非常に強いが、強磁性であり、かつ磁場を乱すおそれがある。
【0193】
いくつかの場合、止めねじを使用して、磁気要素を定位置に固定してもよい。外部支柱、たとえば案内要素、たとえばハウジングの表面から約1/2"延びる4つの外部支柱を安全措置として使用してもよい。これらの支柱は、磁石が大きな強磁性物体に近づきすぎるのを阻止し得る。これはまた、ユーザが手をつぶされることから保護し得る。支柱は、ユーザを大きな強磁性物体から保護するために使用することができる。それでもなお、小さな強磁性物体が磁石面に接近するおそれがあるため、ユーザは磁石を注意して取り扱うべきである。平均MFDを最大化にするために、トッププレート/カバーの厚さが最小化されてもよい。
【0194】
有限の表面平面上で最大限の均一性を達成するために、直線状ハルバッハ配列中の磁気要素のサイズおよび形状は、配列の全体サイズに依存して変更および調整されることができる。たとえば、85mm×130mm(標準ANSIプレート寸法)の配列中、小さな立方体磁石要素の交互のブロックをより大きな(2倍サイズの)ブロックと一緒にアセンブルして、有限直線状ハルバッハ配列の境界効果を減らすことができる(たとえば図15を参照)。磁気強さを犠牲にしながらも配列の表面全体にわたってより均一な全体的磁場を生じさせる設計を生み出すことができる。したがって、直線状ハルバッハ配列は、非常に強い磁場勾配と、たとえば、磁石配列の表面上の試料の正確な位置付けとは無関係に、磁気面全体にわたって細胞分離を再現可能に実施することを可能にする均一な磁場との両方を、生じるように最適化されることができる。
【0195】
配列要素が配列のサイズに対して拡大縮小すると、不均一性が生じる。そのような場合、可変サイズの磁気要素を配列中に使用して磁場均一性を改善し得る。
【0196】
上記の詳細な説明は例示的態様の特徴を記載するが、記載された態様のいくつかの特徴および/または機能は、記載された態様の精神および動作原理を逸脱することなく、変更を受けることができることが理解されよう。たとえば、提示された態様または実施例によって記載される様々な特徴が選択的に互いに組み合わされてもよい。したがって、上述されたものは、特許請求された概念を例示し、非限定的であることを意図する。当業者には、添付の特許請求の範囲に定義される発明の範囲を逸脱することなく、他の変形および修飾を加え得ることが理解されよう。特許請求の範囲は、好ましい態様および実施例によって限定されるべきではなく、全体としての記載と合致するもっとも広い解釈を与えられるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B