(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】表面にパターン構造をアプライするための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20220224BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20220224BHJP
H05K 3/34 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
B44C1/17 G
B41M3/00 Z
H05K3/34 505B
(21)【出願番号】P 2019532912
(86)(22)【出願日】2017-08-25
(86)【国際出願番号】 NL2017050557
(87)【国際公開番号】W WO2018038613
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-21
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519066452
【氏名又は名称】ネーデルラントセ オルハニサティエ フォール トゥーヘパスト-ナトゥールヴェッテンシャッペリーク オンデルズック テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】アルティノフ ガリ
【審査官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501431(JP,A)
【文献】特開2011-040186(JP,A)
【文献】特開2010-015981(JP,A)
【文献】特開2013-191553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/165 - 1/175
B41M 5/26
H05K 3/00 - 3/46
H05B 33/00 - 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にパターン構造をアプライするための方法であって、
光源(3)と受け面(5)との間にドナー材料(1a)を備えるドナー基板(1)を設けることと、
前記光源(3)により前記ドナー基板(1)に向けられた光パルス(3a)を供給することであって、前記光パルス(3a)が前記ドナー材料(1a)を前記ドナー基板(1)から前記受け面(5)に転写させるように構成されることと、
を含み、
前記ドナー材料(1a)が、前記ドナー材料(1a)が付着した前記ドナー基板(1)の一つまたは複数の占有領域(2a)およびドナー材料(1a)が無い前記ドナー基板(1)の一つまたは複数の非占有領域(2b)に材料部(1b)のパターン(2)を形成し、前記非占有領域(2b)が前記占有領域(2a)の間に散在し、前記受け面(5)にドナー材料(1a)の転写パターン(4)を形成するように前記ドナー基板(1)上のドナー材料(1a)の前記パターン(2)の全体が前記光パルス(3a)により転写され、
前記ドナー基板(1)上の一つまたは複数の材料部(1b)を前記受け面(5)に転写する際により小さな副部(9)に分割するように前記ドナー基板(1)に向けられた網目状の光パターン(6p)を得るためにメッシュが用いられる、
方法。
【請求項2】
前記ドナー基板(1)上のドナー材料(1a)の前記パターン(2)の全体が前記光パルス(3a)の照射によって転写され、前記照射が前記占有および非占有領域(2a、2b)の両方を覆う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドナー基板(1)に配置された切込み(12)によりドナー材料(1a)を備える前記ドナー基板(1)の別個の部分が少なくとも部分的に得られ、前記切込みがドナー材料(1a)を保持するために配置される、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記ドナー基板(1)の前記表面とドナー材料(1a)との間の接着性を変化させるように前記ドナー基板(1)の表面の少なくとも一部を処理することをさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ドナー材料(1a)と前記ドナー基板(1)との間の接着性の程度が変化するドナー基板(1)によってドナー材料(1a)を備える前記ドナー基板(1)の別個の部分が少なくとも部分的に得られ、前記接着性が前記ドナー基板(1)の前記一つまたは複数の非占有領域(2b)においてよりも前記ドナー基板(1)の前記一つまたは複数の占有領域(2a)において高い、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ドナー基板(1)が境界(11)内に前記ドナー材料(1a)を含むための前記境界(11)を画定するセル(10)のパターンを備え、ドナー材料(1a)の前記パターン(2)が前記セルの所定のサブセットを選択的に占有することによって形成される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ドナー材料(1a)がアプライされる前記受け面(5)の少なくとも一部が湾曲している、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記受け面(
5)がフレキシブルおよび/または伸縮可能である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記光パルス(3a)が前記ドナー基板(1)の少なくとも一部に到達するのを少なくとも部分的に阻止するために、マスクが前記光源(3)と前記ドナー基板(1)との間で前記ドナー基板(1)の一部の上に配置される、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ドナー材料(1a)が熱接合により基板にチップを接合するための接合材料である、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ドナー基板(1)上の前記ドナー材料(1a)が前記受け面(
5)上の既存のパターンに一致させるためにパターニングされ、前記ドナー材料(1a)が前記既存のパターン上に転写される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法がロールを用いてドナー基板をエンボス加工するステップを含む、ロール・ツー・ロールプロセスを使用して実行される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
表面にパターン構造をアプライするためのシステムであって、
ドナー材料(1a)を備えるドナー基板(1)と、
受け面(
5)と、
前記ドナー基板(1)に向けられた光パルスを供給するために配置された光源(3)と、
を備え、
前記ドナー基板(1)が前記光源(3)と前記受け面(
5)との間に配置され、
前記光パルスが前記ドナー材料(1a)を前記ドナー基板(1)から前記受け面(
5)に転写させるように構成され、
前記ドナー材料(1a)が、前記ドナー材料(1a)が付着した前記ドナー基板(1)の一つまたは複数の占有領域(2a)および前記ドナー材料(1a)が無い前記ドナー基板(1)の一つまたは複数の非占有領域(2b)に材料部(1b)のパターン(2)を形成し、前記非占有領域(2b)が前記占有領域(2a)の間に散在し、前記受け面(5)にドナー材料(1a)の転写パターン(4)を形成するように前記ドナー基板(1)上のドナー材料(1a)の前記パターン(2)の全体が前記光パルス(3a)により転写され、
メッシュが前記ドナー基板(1)に向けられた網目状の光パターン(6p)を得るために配置され、前記網目状の光パターンにより前記ドナー基板(1)上の一つまたは複数の材料部(1b)を前記受け面(5)に転写する際により小さな副部(9)に分割することが可能になる、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は表面にパターン構造をアプライするための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば導電性ペーストで作られるパターン構造を表面または基板にアプライすることは様々な電子デバイスの製造において重要な役割を果たす。導電性パターン構造を設けるための接触および非接触での方法の両方が知られている。
【0003】
WO 2015/065182 A1公報では、光源とアクセプタ基板との間にドナー材料を備えるドナー基板を設けること、およびドナー基板からアクセプタ基板にドナー材料を転写するようにドナー基板に光のパターンを向けることによってアクセプタ基板にパターン構造が形成される。パターン光はアクセプタ基板に生成されるパターン構造に実質的に一致するように構成される必要がある。ドナー基板はパターン光の影響を受けてドナー基板からドナー材料を放出し、アクセプタ基板にパターン構造を形成するためにそこに転写する。これはパターン光ビームが向けられる位置でのみ起こる。このようなパターン光を得るために光パターニングマスクが用いられ、マスクは光源からの光を適切にパターニングするために光源とドナー基板との間に配置されたマスクパターンを備える。マスクはマスク固有のパターンを形成するように、光源からの光をドナー基板に向けられる複数のビームに分割する。パターン光がドナー材料に作用し設けられたパターンにしたがってドナー材料を転写させるように、表面全体にわたって分布するドナー材料層を有する。
【0004】
光のパターニングには一般的にマスクを使用する必要がある。光源とドナー基板との間に光パターニングマスクを配置することでセットアップの複雑さが増すばかりでなく生産コストも膨らみ、そのために最終製品がさらに高価になる。マスクは恒久的なものでありマスク固有のパターンを転写することしかできないが、一般的に比較的高価になる傾向がある。さらに、マスクはカスタマイズすることができず、異なるパターンごとに異なる(高価な)マスクを用いなければならない。その上、使用された光パターニングマスクを再使用する際の性能は制限されることが多く、そのため頻繁に交換することが必要になり得る。加えて、最終的に使用されるのはドナー基板上のドナー材料の一部のみであり、使用後、ドナー基板に付着したままの残りのドナー材料は製造プロセスにおいて廃棄物として処分される。
【0005】
したがって、基板へのパターン構造の形成において、例えばより高速で、より信頼性が高く、コスト効率に優れ、より効率的で、カスタマイズ可能であるように改善する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0006】
前述の短所のうち少なくとも一つを未然に防ぐ方法およびシステムが必要である。
【0007】
したがって、本開示の第一の態様は表面にパターン構造をアプライするための方法を提供する。この方法は光源と受け面との間にドナー材料を備えるドナー基板を設けること、光源によりドナー基板に向けられる光パルスを供給することを含み、光パルスはドナー材料をドナー基板から受け面に転写させるように構成される。ドナー材料はドナー材料が付着したドナー基板の一つまたは複数の占有領域およびドナー材料が無いドナー基板の一つまたは複数の非占有領域に材料部のパターンを形成する。非占有領域は占有領域の間に散在している。受け面にドナー材料の転写パターンを形成するように光パルスによりドナー基板上のドナー材料のパターンの全体が転写される。
【0008】
ドナー材料が受け面に転写されるように、ドナー材料を有するドナー基板の一つまたは複数の占有領域は光パルスにより照射される。ドナー基板の一つまたは複数の非占有領域もまた実際には光パルスにより照射されるが、それらの領域にドナー材料が存在しないため、ドナー材料はそれらの領域から受け面に転写されない。ドナー材料のパターンを備えるドナー基板に作用する十分に高い光強度を有する光パルスにより受け面にドナー材料を転写することが可能になる。所望のパターンのドナー材料(例えばはんだペースト、糊、導電性トラック、等)は光源(例えばフラッシュランプ)の単一のパルスを用いてドナー基板から受け基板に転写することができる。ドナー基板の事前のパターニングは実際にはいくつかの方法で実行することができ、ドナー基板上へのドナー材料の複雑なパターンの形成を達成することができる。
【0009】
ドナー基板にドナー材料のパターンを設けることによって、パターン光の使用、すなわちマスクによるパターニングは受け面にパターンを転写するためにはもはや必要とされない。こうして、このような光パターニングマスクの使用を回避することができる。このような光パターニングマスクはカスタマイズすることができず一般的に高価であるが、本開示によれば、受け面にアプライされる必要のあるドナー材料のパターンを変更および/または修正することをより容易および/または安価にすることができ、すなわち生成されるパターンのカスタマイズ性を大幅に向上させながらも製造コストを削減することができる。パターニング配置における光パターニングマスクの交換は容易でないことが多い。生成するパターンを変更する場合、マスクを交換する必要があるか、あるいは複数のマスクを用いる必要がある。一方で、パターニングされたドナー基板を交換することはより容易でコスト効率に優れる。その結果、ドナー基板上のドナー材料のパターニングは光源からの光のパターニングについて多くの利点を提供することができる。
【0010】
受け面がドナー材料のマスク固有のパターンを得るために光パターニングマスクを用いる場合、材料はドナー基板の表面全体にわたって広がり、ドナー基板上のドナー材料の一部のみの転写を可能にするためにマスクが活用される。その結果、一般的には材料のごく一部のみが実際に転写され、したがってプロセス中に使用される。本明細書に記載の本開示によると、ドナー材料のパターンを備える(予め)パターニングされたドナー基板が用いられ、このパターンはドナー材料が付着したドナー基板の一つまたは複数の占有領域およびドナー材料が無いドナー基板の一つまたは複数の非占有領域によって形成される。このようにして、材料がドナー基板を完全に覆って均一にアプライされることを防ぐことができる。ドナー基板はすでにパターニングされていてもよいし、ドナー材料はあらゆるところにアプライされる必要はなく、ドナー基板の一つまたは複数の占有領域内の選択された位置に導入される。したがって、生じる廃棄物を削減することができ、および/または使用したドナー材料のリサイクルが必要となるのを避けることができる。
【0011】
有利には、この方法は飛沫、サテライト滴、および/または広がりを伴うことなく受け面にドナー基板上のドナー材料を転写することを可能にする。
【0012】
任意選択的に、光パルスの照射によってドナー基板上のドナー材料のパターンの全体が転写され、照射は占有領域および非占有領域の両方を覆う。光パルスは直接の照射を提供するために配置することができる。ドナー基板上のドナー材料を転写するためにドナー基板の均一な照射を用いることができる。
【0013】
有利な実施形態では、一つまたは複数の占有領域はドナー基板上にドナー材料の不連続な別個の島を形成する。
【0014】
有利な実施形態では、一つまたは複数の非占有領域はドナー基板上の一つまたは複数の占有領域と接しており、また囲んでいる。
【0015】
有利な実施形態では、光パルスはドナー基板の一つまたは複数の占有領域および/または一つまたは複数の非占有領域に作用する。有利には、この場合は受け面に固有のパターンを転写させるために光パターニングが必要とされないため、光パルスは占有領域および非占有領域の両方に同時に作用することができる。したがって、光パターニングマスクのようなさらなる光をブロックまたはフィルタリングする手段はドナー基板から受け面へのドナー材料のパターンを転写するためには必要とされない可能性がある。
【0016】
有利な実施形態では、ドナー材料のパターンは受け面に生成されるパターン構造に対応する。受け面に生成されるパターンは光源により供給される光パルスの結果として前記パターンの受け面への直接の転写を可能にするようにドナー基板にパターニングされることができる。
【0017】
有利な実施形態では、ドナー材料のパターンは受け面に生成されるパターン構造と比較すると異なっている。受け面上のパターンはドナー基板上のパターンに対して歪められ、変換されまたは変形されている可能性がある。したがってドナー基板から受け面への転写の結果としての変形を考慮に入れるようにドナー基板上のパターンをその変形に適合させることができる。パターンのこのような適合を決定するために逆の技術を応用することができる。経験的モデル、実験、シミュレーション、等のような他の解決策もまた可能である。技術の組み合わせもまた用いることができる。ドナー基板上の適合パターンを用いることによってドナー材料の転写の結果としての歪みまたは変形の影響を低減するかまたは除去することができる。また、ある実施形態では、ドナー材料の転写はパターンが連続するドナー基板から同じ受け面に転写される連続転写ステップを使用して実行することができる。
【0018】
有利な実施形態では、光パルスにより受け面に向けて非接触で転写するためにドナー基板からドナー材料が放出される。結果として、単一の光パルスにより大きなドナー材料のパターンを一度に高速で転写するための非接触での方法を得ることができる。
【0019】
一つの実施形態では、ドナー基板1は透明基板1とドナー材料の層1aとの間に任意の放出層を備える。さらなる実施形態では、放出層2はドナー基板1からドナー材料1aを放出するために光6の影響下で反応する。例えば、放出は急激な熱の上昇やその結果生じる放出層材料の膨張により影響され得る。例えば、衝撃波が材料を通過し、液滴の形成を引き起こすことがある。放出層の有無によらず、放出の他のメカニズムも考えられる。
【0020】
有利な実施形態では、ドナー基板は少なくともドナー材料の無いエリアによって分けられたドナー材料の複数の分かれた部分を備える。
【0021】
有利な実施形態では、分かれた部分はドナー基板上にドナー材料の構造化されたパターンを形成する。有利な実施形態では、分かれた部分は均一なサイズである。このサイズは表面積によって定量化することができる。
【0022】
生成されるドナー材料のパターンは形成されるパターン構造のエリアの異なるサイズに応じて異なるサイズを有する複数のパターンエリアを備え得る(構造化されたパターンを参照)。ドナー基板上のドナー材料のパターンは互いに離隔された均一なサイズの部分(二つの隣接する分かれた均一なサイズの部分の間の間隙)に分割することができ、複数のパターンエリアのうち一つのパターンエリアを形成するために複数の隣接する分かれた均一なサイズの部分が配置される。
【0023】
有利な実施形態では、ドナー基板は受け面から離隔されている。別のまたはさらなる実施形態では、ドナー材料は受け面に面するように配置される。ドナー基板上のドナー材料は受け面に面する一つまたは複数の突起を形成する。一つの実施形態では、ドナー材料はドナー基板とアクセプタ基板との間のドナー基板の面(側面)、すなわち光源とは反対側に配置される。ドナー基板は光に対して透明であり得る。すなわち光はドナー材料の一つの面でドナー材料に作用するまでドナー基板を通って進行し得る。ドナー材料に作用する光によって、前記材料はドナー基板から放出されてアクセプタ基板に向けて発射され、そこでパターン構造を形成することができる。したがってドナー基板は光パルスがドナー材料を受け面に転写させることができるように配置される。一つの実施形態では、ドナー基板と受け面との間の距離は25μmよりも長く、好ましくは100μmよりも長い。十分な距離をとることによって、基板間を転写させる間にドナー材料をさらに加熱することができる。さらなる実施形態では、ドナー基板と受け面との間の距離は2mmよりも短く、好ましくは1mmよりも短く、さらに好ましくは500μmよりも短い。距離をより小さくすることでドナー材料を配置する際の正確性を向上させることができる。一つの実施形態では、ドナー基板はドナー材料の層が配置された透明基板を備える。さらなる実施形態では、ドナー基板は透明基板とドナー材料の層との間に放出層を備え、放出層はドナー基板からドナー材料を放出するための光の影響下で反応する。
【0024】
有利な実施形態では、一つまたは複数の非占有領域にドナー材料が無い状態を維持しながらも一つまたは複数の占有領域にドナー材料を設けることによってドナー基板が製造される。一つまたは複数の占有領域にドナー材料を選択的に設けることによってドナー基板にドナー材料の固有のパターンを形成することができ、ドナー基板上の固有のパターンは転写後に受け面に所望のパターンを得るために好適である。さらに、ドナー基板上のドナー材料の一部を除去することによって固有のパターンを得ることもまた可能である。例えば、表面に均一に分布するドナー材料を有するドナー基板は転写後に受け面に所望のパターンを形成するために好適な固有のパターンを得るために特定の位置のドナー材料を除去するために処理され得る。
【0025】
有利な実施形態では、受け面に生成されるドナー材料のパターンの少なくとも一部を複数の分けられた別個の副部に分割し、ドナー基板上の分けられた別個の副部にドナー材料を設けることによってドナー基板が製造される。いくつかの場合では、光パルスによるドナー基板から受け基板へのドナー材料の転写は、転写の挙動が転写されるドナー材料の異なるエリアのサイズに依存するため、制御が困難な場合がある。例えば、ドナー材料のエリアを放出するために必要なエネルギーは転写されるドナー材料に対するせん断力に依存する可能性があり、せん断力は異なるエリアサイズごとに異なり得る。さらに、材料の大きなエリアが一度に転写される場合、そのエリアは転写される間に予期せぬパターニングの挙動につながる可能性のある破片に分解される可能性がある。有利には、ドナー材料のパターンまたはエリアの少なくとも一部を分けられた別個の副部に分割することによって、ドナー材料に作用する光パルスに対するドナー材料の反応をより均一で予測可能なものにすることができる。
【0026】
有利な実施形態では、ドナー基板にドナー材料の細分されたパターンを転写した後にドナー材料の細分されていないパターンが受け面上に得られるように副部間の間隔は十分に小さい。複数のパターンエリアを有する受け面に生成されるドナー材料のパターンは、ドナー基板にパターンをアプライする前に、最初により小さな副部の組に細分することができる。例えば、ブロック形状のパターンエリアは互いに離れた四つのブロック形状の副部に細分されることができ、光パルスにより転写された後に得られる受け面上のパターンは四つのブロック形状の副部に細分されることなくブロック形状のパターンエリアを備える。曲線的な形状、円、四角形、多角形、五角形、六角形、八角形、等のような、他の形状もまた用いることができる。
【0027】
有利な実施形態では、受け面に生成されるドナー材料のパターンのパターンエリアのサイズは一つまたは複数の寸法において識別され、一つまたは複数の寸法におけるパターンエリアの識別されたサイズがそれぞれ一つまたは複数の寸法に対する閾値を超える場合に複数の分けられた別個の副部に細分されるのみである。パターンエリアの最大寸法またはサイズ(例えば表面積)は前記パターンエリアの寸法またはサイズが画定された最大寸法またはサイズを超える場合にパターンエリアが複数の分けられた別個の副部に細分されるように画定されることができる。受け面に生成されるドナー材料のパターンのうちより大きなパターンエリアのみを離散させることによって、パターンにおける不要な変更を(例えばより小さなエリアにおいて)回避することができる。このようにして、ある寸法またはサイズがその寸法またはサイズに対する最大値または閾値を超える場合にパターンエリアのみを副部に細分されるために選択することができる。
【0028】
有利な実施形態では、少なくともいくつかの分けられた別個の副部は異なるサイズを有する。例えば、複雑な形状、鋭い端部、急激な変化においてはより小さなサイズを必要とし得るが、一方で他の部分に対しては均一なサイズの副部を使用することができる。
【0029】
有利な実施形態では、分けられた別個の副部は均一なサイズである。このようにして、放出されるドナー材料の各液滴を同じサイズおよび体積にすることができ、また転写特性がより予測可能なものになるように、各副部は同じサイズを有する。さらに、副部間の間隔を空けることによって転写させる間に生じる液滴もまた分離され、互いに影響を及ぼさないことが保証され、したがって転写特性の予測可能性をさらに向上させることができる。したがって、材料は分かれた均一なサイズの液滴の形態でドナー基板から放出することができる。明確に画定され分けられた液滴はより大きな構造を形成するために受け基板に衝突する際に合わさることができる。したがって一度での多数の液滴の転写に対する制御が改善されると、基板上の大きなエリア構造の高速かつ非接触でのパターニングが可能になる。
【0030】
ある実施形態では、受け面に生成されるパターンは異なるサイズを有する複数のパターンエリアを備える。ドナー基板にアプライされるドナー材料のパターンはドナー基板から受け基板へのドナー材料の放出および転写の結果として受け基板に形成される必要があるドナー材料のパターンに依存する。ドナー基板上のドナー材料のパターンおよび受け基板上のドナー材料のパターンは実質的に互いに対応し得る。しかしながら、前記パターンは所望のパターン、パターンエリアのサイズ、ドナー基板に対する受け基板の非平面形状、等に応じて、ある意味では異なることもできる。ドナー基板上のパターンを分かれた副部またはピクセル(例えば均一なサイズのピクセル)に分割し、そのようなパターンをドナー基板にアプライすることによって受け面に対するドナー材料の転写に関してより多くの制御を得ることができる。したがって複数の異なるサイズのパターンエリアのうち一つのパターンエリアを形成するために複数の副部またはピクセルを配置することができる。例えば、形成される異なるサイズの回路要素に対応する異なるサイズを有する複数のパターンエリアを備える規則的なドナー材料パターンを受け取り、パターンエリアを複数の均一に分けられたサイズのピクセルに分割することによってピクセル化されたドナー材料パターンを製造することができる。ドナー材料パターン自体のピクセルへの分割に代えて、またはそれに加えて、最初のドナー基板上の材料を除去することによってピクセルまたは副部に分割されたドナー材料パターンを得ることができる。カービングまたは類似の技術もまた用いることができる。
【0031】
有利な実施形態では、均一なサイズの部分はドナー基板上のドナー材料の非連続な別個の部分を形成する。対応するドナー材料の液滴を受け面に均一な距離で堆積させることができるように副部を均一に離すことによってピクセル化させることができる。転写される均一な液滴が受け面に到達すると、それらは基板上に均一に広がることがあり、それにより隣接する転写された液滴と結合する。したがって、互いに接続している分かれた液滴によってパターン構造と互いに結び付く大きなエリアを形成することができる。一般的に、例えばビームのサイズ、ドナー材料の層厚み、ドナー材料の粘度、および/または液滴の転写速度に関して、隣接する副部の間に適切に小さな離隔距離を設けることによって隣接する液滴の連結を達成することができる。その一方で、離隔距離は好ましくは液滴が別々に転写されることを可能にするために十分に大きい。一般的に隣接する副部間の離隔距離を副部のサイズ程度かまたはそれよりも小さく、例えば副部のサイズの20-200%の間、好ましくは50-150%の間、よりいっそう好ましくは50-100%の間で設けることが有利であることがわかっている。パターンがドナー基板にアプライされる前に最初にピクセル化される場合、適切に分離された液滴がドナー基板から射出されるようにピクセルサイズおよび距離を選択することができる。
【0032】
ドナー材料の厚みが大き過ぎると、せん断力によりドナー材料がドナー基板から適切に放出されるのが妨げられる可能性がある。その一方で、ドナー基板上のドナー材料の単一の島が大き過ぎると、転写されるドナー基板のエリアは分裂する可能性がある。
【0033】
ドナー基板上にパターンを設けることは機械的および/または化学的に達成することができる。例えば、機械的手段を活用することによって、ドナー基板の表面に溝を配置することができ、その溝をドナー材料で充填することができる。溝はエンボス加工ツール、スクラッチ加工ツール、カービングツール、等のような他の機械的手段によっても生成することができる。切込みまたは溝を得るために他の技術もまた活用することができる。例えば、ドナー基板に溝を生成するためにレーザービームを使用することができる。機械的手段を使用することは一般的に比較的容易でコスト効率に優れているが、その結果は恒久的なものであり得る。ドナー基板にドナー材料を配し、ドナー基板にパターンを形成するために必要に応じて余分な材料を削り取るために機械的手段を使用することもまた可能である。さらに、例えばドナー基板上に疎水性および/または親水性の領域を生成することによってパターニングを「化学的に(chemically)」達成することもできる。「機械的(mechanical)」手段および「化学的(chemical)」手段を使用したパターニングは機械的手段が恒久的である一方で、化学的手段は一時的(例えばドナー材料を保持するための化学薬品は除去可能である)および/または順応性があるという意味においては異なり得る。したがって化学的なパターニング手段を使用することによってカスタマイズ性を向上させることができる。
【0034】
任意選択的に、ドナー基板上の一つまたは複数の材料部を受け面に転写する際により小さな副部に分割するようにドナー基板に向けられる網目状の光パターンを得るためにメッシュが用いられる。メッシュは光源とドナー基板との間に配置することができる。メッシュは網目状の光パターンを得るために部分的に光を通過させるように構成されたマスクとすることができる。
【0035】
有利な実施形態では、ピクセル化されたマスクはドナー基板上のピクセル化されていないパターンと組み合わせて用いられる。このようにして、光パルスが基板の所定の部分に到達するのを少なくとも部分的に阻止することによってパターンエリアを一つまたは複数の副部にピクセル化または細分するためにマスクを用いることができ、ドナー基板の選択的に照射することができるようになる。このようにして、マスクまたはメッシュはドナー基板上のドナー材料のパターン(例えば最大ドナー液滴サイズを画定する簡素なラスタ)に拘束されることがなくなる。より小さなピースまたは副部に分割されるパターンエリアを可能にするためにメッシュを用いることができる。このようにして、最大ドナー液滴サイズを画定するドナー材料のピクセル化されたパターンを得ることができ、システムの複雑さを大幅に低減させることができる。メッシュは副部のサイズおよび/または隣接する副部間の距離を画定することのできる解像度を有することができる。したがって、異なるパターンのドナー材料を有する複数のドナー基板に対してメッシュを用いることができる。多くのタイプ、例えば長方形、三角形、多角形、等のメッシュを用いることができる。
【0036】
任意選択的に、ドナー基板上に配置された切込みによりドナー材料を備えるドナー基板の別個の部分が少なくとも部分的に得られ、切込みはドナー材料を保持するために配置される。ドナー材料は粘性材料のような固体材料または液体とすることができる。ドナー材料の例は導電性ペースト、熱接合材料、はんだ、糊、等である。高い粘度を有するドナー材料の場合には、切込みおよび/または溝のような機械的手段はドナー基板上にドナー材料を保持するために有用であり得る。切込みまたは溝はドナー材料で充填することができる。このような(機械的な)切込みまたは溝はドナー材料が集まることができるドナー基板表面上の井戸とみなすことができ、高粘性ドナー材料を保持するために特に有用であり得る。
【0037】
有利な実施形態では、ドナー材料を保持するための占有領域を配置するために機械的手段および化学的手段の両方の組み合わせが用いられる。低粘性材料の場合、機械的手段および化学的手段の両方が有利になり得る。
【0038】
有利な実施形態では、ドナー基板の表面上に配置された二つの突起の間に切込みが形成される。このようにして、ドナー基板上にパターンを形成するためにドナー材料を集めることができる井戸またはチャネルを形成することができる。
【0039】
有利な実施形態では、切込みはレーザースクライビング加工によって形成される。このようにして、ドナー基板の表面に所望のパターンを生成するためにドナー基板のトポロジーパターニングを達成することができる。例えば、画定されたエリアの周辺に切込みをレーザースクライビング加工することができる。次に、画定されたエリアにドナー材料を供給することができる。光源の単一の光パルスを用いてドナー基板からの材料を次に受け面に転写することができる。レーザースクライビング加工により再使用可能なドナー基板を低コストで製造することが可能になる。類似の方法でチャネル、井戸、切込み等もドナー基板表面上に生成することができる。
【0040】
有利な実施形態では、切込みはエンボス加工によって形成される。ドナー基板をエンボス加工するためにパターンテンプレートを備えるエンボス加工ユニットを用いることができる。このようにして、ドナー基板の一つまたは複数の占有領域上のドナー材料を保持するために配置することのできる切込み、井戸、チャネル、突起、等のような機械的な構造を形成するために、ドナー基板の表面を素早くかつ効率的に修正することが可能である。有利な実施形態では、エンボス加工はロール・ツー・ロールプロセスとも互換性があり、基板上に固有のパターンをアプライする素早くかつ効率的な方法を提供することができる。
【0041】
任意選択的に、この方法はドナー基板の前記表面とドナー材料との間の接着性を変化させるようにドナー基板の表面の少なくとも一部を処理することをさらに含む。
【0042】
ドナー材料を保持するために配置される占有領域およびドナー材料が無い状態を維持する非占有領域を形成するための機械的および/または化学的手段を使用してドナー基板を得ることができ、非占有領域に実質的にドナー材料が無い状態を維持しながらも占有領域上にドナー材料を設けることによってドナー材料のパターンが得られる。占有領域は機械的な溝、別個の化学的な親水性領域、等によって形成または強化することができる。ドナー材料はコスト効率に優れ、かつ容易な方法でテンプレート上にアプライすることができる。例えば、ドナー基板の前記表面とドナー材料との間の接着性を変化させるためにドナー材料を保持するための切込みを備えるドナー基板をさらに処理することができる。このようにして、前記ドナー材料表面に設けられた切込みによりドナー材料をより容易に付着させることができる。
【0043】
任意選択的に、ドナー材料とドナー基板との間の相対接着性がドナー基板の一つまたは複数の非占有領域においてよりもドナー基板の一つまたは複数の占有領域において高くなるように配置されたドナー基板によってドナー材料を備えるドナー基板の別個の部分が少なくとも部分的に得られる。
【0044】
ドナー基板の表面は特定の領域がドナー材料に対して異なる相対接着性を有するドナー基板上に生成されるように、例えば化学薬品を使用して化学的に加工および/または処理されることができる。有利な実施形態では、ドナー基板上の領域の接着特性のこのような化学的な操作は恒久的なものではない。例えば、表面を再処理することによって他の構成を得ることができるように表面を洗浄することができる。したがって、化学的手段を用いることによって適応されるドナー基板は、必要に応じて再使用および修正することができる。表面の処理は実際には多くの方法で達成することができる。例えば、単一層、酸化、プリンタ、マスク、等を使用して好適な化学薬品をアプライすることができる。表面はあらゆるところを疎水性にすることができ、その上にある特定の領域、すなわち占有領域において親水性にすることができるため、材料をドナー基板の特定の位置に容易にアプライすることができる。ドナー材料は親水性の特性を有する占有領域に付着し、疎水性の特性を有する非占有領域を避ける傾向がある。これはデジタル処理で制御可能なシステムを使用して達成することができ、それによってパターニングプロセスを単純化し、加速し、そしてより正確にすることができ、新しいプロトタイプデザインの高速かつ正確な製造を可能にする。
【0045】
二つの物体または表面間の引力とみなされる接着性を変化させることは、異なる方法で達成することができる。例えば、比較的疎水性および親水性の領域を得るようにドナー基板の表面は少なくとも部分的にコーティングされ、化学的に処理されることができる。
【0046】
有利な実施形態では、ドナー基板上にドナー材料をアプライする際にアライメントを提供するようにドナー基板は少なくとも一つのアライメントマーカを備える。
【0047】
有利な実施形態では、アライメントマーカはドナー基板の一つまたは複数の占有領域のうち少なくとも一つによって形成される。
【0048】
任意選択的に、ドナー基板は境界内にドナー材料を含むための境界を画定するセルのパターンを備え、ドナー材料のパターンはセルの所定のサブセットを選択的に占有することによって形成される。このようにして、ドナー基板は選択され占有されたセルによって得られたドナー基板上のパターンを形成するためにドナー材料によって選択的に占有することが可能であるように配置された複数の所定のセルを備えることができる。
【0049】
任意選択的に、セルは行および/または列の配列でドナー基板上に配置される。ドナー基板の複数の所定のセルはセルが行および/または列に配列されるセル配置で配列されることができ、一つまたは複数のセル上にドナー材料を選択的に設けることによってドナー基板上のドナー材料のパターンを構成することが可能である。
【0050】
セルはドナー基板上の限定されたエリアによって形成される。ドナー基板上にドナー材料のパターンを形成するように、ドナー基板を一つまたは複数の所定のセル上のドナー材料を用いて選択的に占有することができる。このようにして、一つまたは複数の占有領域のパターンまたは配置を構成することが可能であり、一つのドナー基板により得られる可能性のある複数のパターンが可能になる。このようにして、選択されたセルのみがドナー材料を有するように確保することができる一方、固有のパターンが形成され得るように他のセルはドナー材料を含まないように確保することができる。ドナー基板内の任意の空のセル内のドナー材料を交換することによってドナー基板を再利用することができる。
【0051】
有利な実施形態では、配列はドナー材料によって選択的に占有されるように配置されたドナー基板上の所定のセルのマトリクスを形成する行および列を備える。
【0052】
有利な実施形態では、複数の所定のセルは同じサイズおよび/または形状を有する。したがって、複数の所定のセルを構造化することができる。解像度は、複数の所定のセルのサイズおよびあるエリアと隣接するエリアまでの相互距離に応じて定義することができる。より高い解像度はより正確なパターニングをもたらし得る一方、より低い解像度はより容易なパターニングをもたらし得る。
【0053】
有利な実施形態では、複数の所定のセルは異なるサイズおよび/または形状を有する第一のセルおよび第二のセルを備える。
【0054】
配列されたセルはドナー材料によって選択的に占有されることができ、それによりドナー材料を有する占有領域の構成可能な配置、すなわち固有のパターンを画定することを可能にする。したがって、パターンはアプリケーションおよび/または受け面に転写する必要がある所望のパターンに応じてカスタマイズすることができる。
【0055】
有利な実施形態では、セルはスロットによって形成され、スロットは行および列に配置されることができる。スロットはドナー材料を間に配置することのできる側壁を有することができる。
【0056】
有利な実施形態では、セルはスライシング経路を画定するチャネルによって形成され、チャネルはドナー材料を間に配置することのできる側壁を有する。
【0057】
ある実施形態では、ドナー材料で選択的に充填することのできるスロットによって所定のセルが形成される。スロットのマトリクスをドナー基板上に配置し、構成可能なスロットの配置を提供することができる。複数の所定のセルまたは所定のスロットはドナー材料によって様々な組み合わせで占有するように配置され、それによってドナー基板上に構成可能なパターンを提供し、光パルスによりドナー基板から転写される際に受け面上に(所望の)選択されたパターンをもたらす。その結果、ドナー基板上のドナー材料のパターンをアプライすることをより容易にする一方で、ドナー基板を多くのパターン構成に対して用いることができる。
【0058】
構成可能なセルの配列は多くのサイズ、形状および形態を有することができる。例えば、セルは曲線的な、多角形の、三角形の、正方形の、長方形の、台形の、丸い、円形の、楕円形の、ハチの巣状の形状、四角形、五角形、六角形、八角形、等とすることができる。他の形状もまた可能である。さらに、セルは構造的な特徴を有するかまたはドナー基板の表面の(例えば化学的な、物理的な、等の)特性の結果として形成することができる。構造的な特徴の場合、例えば、ドナー材料により占有可能であるように表面に切込みを形成することができる。(例えば化学的な)表面特性の場合、セルの表面はセルの外側と比較してセルの内側においてドナー材料とドナー基板との間の相対接着性が高くなるように配置することができる。構造的特徴と表面特性との組み合わせもまた用いることができる。
【0059】
任意選択的に、ドナー材料がアプライされる受け面の少なくとも一部は湾曲している。
【0060】
回路パターンを構造的な構成要素に直接アプライするプロセスにおいて経験される課題は、このような構造的な構成要素(すなわち受け面)は三次元または非平面である場合が多いということである。本開示による方法によって非平面の受け面への回路パターンのアプライが可能になる。さらに、回路パターンが非平面の受け面にアプライされると導電性のはんだ接合部を形成するためにはんだペーストが回路パターン上の別個の位置に供給される。はんだは非平面の表面上の複数の別個の位置にアプライすることが可能である。
【0061】
ドナー基板が受け面に対して離れている場合、ドナー材料の転写を非接触で達成することができ、それにより受け面の非平面または湾曲部上へのドナー材料の転写がより容易になる。一例では、所望のパターンのドナー材料が平面のドナー基板から非平面の受け面に転写される。
【0062】
有利な実施形態では、受け面は非平面の三次元形状を有する。
【0063】
任意選択的に、受け面はフレキシブルおよび/または伸縮可能である。
【0064】
有利な実施形態では、受け面は可逆的に伸縮可能である。例えば、4またはそれ以下の倍率で寸法に沿って伸縮すると可逆的な変形が生じる。弾性変形の結果として、受け面に対する損傷および/または劣化(塑性変形、不可逆的変形を参照)を防ぐことができる。
【0065】
有利な実施形態では、ドナー基板から受け面へのドナー材料の転写の瞬間に受け面は少なくとも部分的に非平面形状に変形および/または伸縮される。受け面のこのような変形および/または伸縮状態はドナー材料をドナー基板から受け面に転写するためにより適したものであり得る。
【0066】
有利な実施形態では、受け面は変形および/または伸縮形態のドナー材料を転写した後に解放される。
【0067】
この目的のために、受け面の少なくとも一部を変形および/または伸縮状態に変形させるために変形ユニットを配置することができ、変形後に受け面を解放することができる。引き伸ばされた後、受け面が変形ユニットによって解放されると再びその元の形状をとることができる。
【0068】
有利な実施形態では、受け面は基板である。
【0069】
任意選択的に、光パルスがドナー基板の少なくとも一部に到達するのを少なくとも部分的に阻止するために光源とドナー基板との間でドナー基板の一部の上にマスクが配置される。
【0070】
したがって、ドナー材料のパターンを受け面に転写するためのマスクを用いてドナー基板を選択的に照射する必要は無い。しかしながら、受け面のパターニングを改善するように、ドナー材料のパターンを有する、すなわち占有領域および非占有領域を備えるドナー基板と組み合わせてマスクを使用することができる。有利な実施形態では、マスクはパターンに固有のものではない。光パルスが基板の所定の部分に到達するのを少なくとも部分的に阻止することによってパターンエリアを一つまたは複数の副部にピクセル化または細分するためにマスクを使用することができ、ドナー基板を選択的に照射することができる。有利な実施形態では、マスクはパターンエリアをより小さなピースまたは副部に分割するのを可能にするための格子および/またはメッシュを備える。このようにして、システムの複雑さを大幅に低減させることができる。格子マスクは副部のサイズおよび/または隣接する副部の間の距離を画定することのできる解像度を有することができる。したがって、異なるパターンのドナー材料を有する複数のドナー基板に格子マスクを用いることができる。多くのタイプの格子およびメッシュ、例えば長方形、三角形、多角形、等を用いることができる。
【0071】
任意選択的に、ドナー材料は接合材料である。接合材料は例えば、熱整合材料、はんだ、接着剤、糊、等とすることができる。異なる材料を単一の基板上で使用することができる。
【0072】
任意選択的に、接合材料は熱接合により基板にチップを接合するために用いられる。このようにして、チップのような構成要素は受け面上のドナー材料のアプライされたパターンを用いることによって受け面に接合されることができる。
【0073】
任意選択的に、ドナー基板上のドナー材料は受け面状の既存のパターンと一致するようにパターニングされ、ドナー材料は既存のパターン上に転写される。有利な実施形態では、既存のパターンは電気端子のパターンであり、ドナー材料は導電性材料であり、導電性ドナー材料は電気的接続を形成するために電気端子上に転写される。
【0074】
有利な実施形態では、受け基板は回路および複数の電気接点を備える基板であり、接合材料ははんだであり、ドナー基板上のはんだパターンははんだ点のパターンを形成するように受け基板に転写される。一例では、必要とされるはんだパターンを受け基板にアプライする前にはんだ点が最初に識別される。
【0075】
任意選択的に、この方法はロール・ツー・ロール(R2R)プロセスを使用して実行される。ドナー基板に向けられた光パルスの結果として、光源(例えばフラッシュランプ)からの比較的大きなエリアの照射は付着したドナー材料を有するドナー基板の固有の位置に対する光源のアライメントに関する制限を打ち消し、したがってこのプロセスをR2Rプロセスと互換性があるようにする。フレキシブルな受け基板と共にR2R設定を使用することによってより高い処理速度を達成することができる。
【0076】
有利な実施形態では、R2Rプロセスはロールを用いてドナー基板をエンボス加工するステップをさらに含む。
【0077】
第二の態様によれば、本発明は表面にパターン構造をアプライするためのシステムを提供する。このシステムは、ドナー材料を備えるドナー基板、受け面、およびドナー基板に向けられた光パルスを供給するように配置された光源を備える。ドナー基板は光源と受け面との間に配置される。光パルスはドナー材料をドナー基板から受け面に転写させるように構成される。ドナー材料はドナー材料が付着したドナー基板の一つまたは複数の占有領域およびドナー材料が無いドナー基板の一つまたは複数の非占有領域に材料部のパターンを形成する。非占有領域は占有領域の間に散在する。受け面にドナー材料の転写パターンを形成するように光パルスによりドナー基板上のドナー材料のパターンの全体が転写される。
【0078】
光源はフラッシュランプ、例えば光パルスを供給することにより一度に全体のパターン構造を転写することのできる(パルス状の)キセノンフラッシュランプまたは任意の他の光源とすることができる。例えば、一つの実施形態では、ドナー基板から受け面にパターニングされたインクを転写するために高強度パルスキセノンフラッシュランプが使用される。高出力レーザーパルス(例えばレーザー誘起前方転写法-LIFT)もまたドナー基板から受け面にドナー材料を放出することができ、完全なパターンを同時に転写することができる。従来の光源を用いて転写材料を適切に得るためには短時間かつ高出力の光源が望ましい。
【0079】
別の態様によれば、本発明は通信ネットワークからのダウンロードが可能な、および/またはコンピュータ読み取り可能な媒体および/またはマイクロプロセッサ実行可能な媒体に記憶された、プロセッサを含むフォトニック熱接合システムによって実行される際に本明細書に記載の方法をシステムに実行させるプログラムコード命令を備えるコンピュータプログラム製品を提供する。
【0080】
本発明はさらに本発明の方法にしたがって得られるパターン構造を備える基板に関する。
【0081】
パターン構造は例えば熱接合材料(例えばはんだまたは接着性材料)から作られた導電性トラックおよび/または接合点を備えることができる。
【0082】
ドナー材料のパターンを転写するための方法は基板に構成要素(例えばチップ)をはんだ付けするための方法としても使用することができる。例えば、電気的接続は最初に電気的接続が必要とされる位置を決定し、次にドナー基板に必要なパターンをアプライし、その次に受け基板にパターンを転写することによって生成することができる。
【0083】
本発明は添付図面を参照しながら、そのいくつかの特定の実施形態の説明によりさらに明らかになるであろう。例示的な実施形態は非限定的なイラストレーションによって与えられる。詳細な説明は本発明の可能な実施の例を提供するが、その範囲に含まれる実施形態のみを説明しているとみなされるべきではない。本発明の範囲は特許請求の範囲に画定されており、その説明は本発明を制限することなく実例を示すものとみなすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1a-1b】
図1aおよび
図1bは、本発明の実施形態を模式的に示す。
【
図2a-2b】
図2aおよび
図2bは、本発明の実施形態を模式的に示す。
【
図4a-4b】
図4aおよび
図4bは、本発明の実施形態を模式的に示す。
【
図5】
図5は、本発明のドナー基板を模式的に示す。
【0085】
[発明の詳細な説明]
図1aおよび
図1bは表面上にパターン構造をアプライするための方法の模式的なイラストレーションを示す。ドナー材料1aを備えるドナー基板1は光源3と受け面5との間に設けられる。光源3によって光パルス3aがドナー基板1に向けられる。光パルス3aはドナー材料1aをドナー基板1から受け面5に転写させるように構成される。ドナー材料1aはドナー材料1aが付着したドナー基板1の一つまたは複数の占有領域2aおよびドナー材料1aが無いドナー基板1の一つまたは複数の非占有領域2bに材料部1bのパターン2を形成する。非占有領域2bは占有領域2aの間に散在しており、受け面5上にドナー材料1aの転写パターン4を形成するように光パルス3aによりドナー基板1上のドナー材料1aのパターン2の全体が転写される。
【0086】
図1aは光パルス3aにより受け面5上に前記ドナー材料1aを転写する前の、ドナー基板1に付着したドナー材料1aを示す。
図1bは光パルス3aにより転写された、受け面5上に形成されたドナー材料1aの転写パターン4を示す。この例では、転写前はドナー基板1およびそれに付着したドナー材料1aはいずれも受け面5から離隔されており、前記ドナー材料1aは非接触で転写される。
【0087】
図2aおよび
図2bはパターン2を備えるドナー基板1の例を示す。パターンは他の材料部1bと接続する材料部1bおよび/または他の材料部1bと接続されていない分かれた材料部1bを有することができる。
図2bの例では材料部1bは予測可能な方法で繰り返されるパターン2、すなわち構造化された方法で配置された一群の長方形の材料部1bを備えるパターン2を含む。
【0088】
図3aはドナー基板1上の一つまたは複数の材料部1bを受け面5上に転写する際により小さな副部9に分割するようにドナー基板1に向けられる網目状の光パターンを得るためのメッシュが用いられる実施形態を示す。この例では、メッシュは光源3とドナー基板1との間に配置されたマスクであり、マスク7はドナー基板1に作用する光源3により放射される光パルス3a光をパターニングするための網目状のマスクパターン7pを備える。光源3により放射された光パルス3aは材料部1bをより小さなサイズの副部9にパターニングするために均一に分けられた光ビームに分割される。
【0089】
パターン光6pが受け面5上に生成されるパターン構造と一致する必要は無い。
図3bに示されるようなドナー材料1aの比較的大きな連続したエリアを備え得る材料部1bを
図3cに示されるようなより小さな副部9に細分するように一般的なマスクを使用することができる。一般的に、示されるようなドナー基板1上の回路または対応するパターン2では、材料部1bは異なるサイズのC1、C2、C3、等を有し得る。材料部1bが大き過ぎるサイズ、例えばC1を有する場合は、例えば広い連続したビームを備えるパターニングされていない光6pはドナー基板1に作用し、ドナー基板1から放出されて受け面5に転写されるドナー材料の大きな塊を生じさせる可能性がある。しかしながら、このエリアは非常に大きいため、転写させる間に破損する可能性があり、その結果破片が形成され、それにより受け面5上に不規則な転写パターン4が形成される可能性がある。したがって、ドナー基板1上の材料部1bをより小さな副部9に細分することのできるパターン光を得るためのマスクまたはメッシュを用いることが有利であり得る。マスクは一般的なものとすることができ、ドナー基板1上のパターン2に関して独立して構成されることができる。
【0090】
図3aはメッシュ7により得られる均一に分けられた光ビームを使用してパターン2の材料部1bの大きなエリアが細分される実施形態を示す。ドナー基板1に作用するパターン光6pは受け面5上にドナー材料1aの転写パターン4を形成するためにドナー基板1から放出され受け面5に転写される材料部1bを生じさせる。有利には、パターン光6pはドナー基板1に同時に作用する複数の分かれた均一なサイズのビーム6bに分割される。これによりドナー材料1aがドナー基板1から分かれた均一なサイズの液滴8dの形態で放出される。
【0091】
本明細書に記載のように、好ましくは、ビームが均一なサイズ、すなわち、それらがほぼ同じサイズ、例えばビームの断面または(最大)直径を有する。好ましくは、全ビーム直径サイズは平均ビーム直径サイズの±30%以内であり、好ましくは±20%以内、さらに言えば±10%以内である。ビームサイズの広がりが小さいほど、得られる液滴のサイズは均一になり得る。ほぼ等しいビームサイズに代えて、またはそれに加えて、好ましくは、ビームあたりのエネルギーもまたほぼ等しく、例えば30%以内であることが好ましい。
【0092】
好ましくは、受け面5上に均一な距離でドナー材料1aの液滴8dを堆積させるために隣り合うビーム6bは均一な距離6dをとっており、連結しているパターン構造または転写パターン4は受け面5上に広がっている転写された液滴によって形成され、隣り合う転写された液滴に結合している。
【0093】
本明細書に記載のように、好ましくは、ビームは均一に距離をとっており、すなわち、共にパターンを形成している隣り合うビームは、ビーム間の距離が平均距離の30%、好ましくは20%、さらに言えば10%以内である。距離の広がりが小さいほど、基板上での液滴の転写およびその後の広がりの挙動をより予測可能にすることができる。
【0094】
一つの実施形態では、ビームのサイズ6cの50-150%の間である隣り合うビーム間の離隔距離6dによって所望の広がりおよび連結が達成される。
【0095】
図3bはドナー材料1aが付着したドナー基板を示しており、ドナー材料1aは複数の材料部1bを備えるパターン2を形成している。
図3cはマスク7の結果として光パルス3aによって照射されている副部9を示しており、付着したドナー材料1aを有し、パターン光の結果として照射されないドナー基板1上の占有領域は材料部1b副部9(黒色)間の間隙(白色)として示されている。このようにして、
図3bに示されるようなドナー基板1上のドナー材料1aのパターン2は
図3cに示されるようなマスク7によって得られた副部9の局所的な照射によってより小さなピクセルPに細分され、光パルス3aによって照射された副部9のみが転写される。光は受け面5上のパターン構造4の連結したエリアを形成する複数の分かれた均一なサイズの隣り合うビーム6bに分割されたパターンエリア7aによってパターニングされる。一つの実施形態では、受け面上の転写パターン構造またはパターン4は異なる寸法を有する回路部分を備える回路パターンである。ピクセル間の離隔距離X2は好ましくはピクセルのサイズX1の10-150%の間である。他のピクセルタイプ、寸法および構成もまた用いることができる。一例(図示されていない)では、ドナー基板1の一つまたは複数の部分のみがマスクによってピクセル化される。別の、またはさらなる例では、光は第二のマスク(図示されていない)によって分かれたビームに分割される。多くのバリエーションが可能である。マスク7は一般的なパターンメッシャとして使用することができ、所望の(ピクセル)解像度に応じて異なるパターン2を有する異なるドナー基板1に同じ一般的なマスクを用いることができる。
【0096】
一つの実施形態では、ドナー基板1上のドナー材料1aの層厚み8tの150-250%の間であるドナー基板1に作用するビーム6bのサイズ6cによって所望の液滴形成が達成される。一般的に、サイズ、例えば液滴8dの直径8cは、例えばビーム6bの直径6c程度のサイズとすることができる。これはピクセルのサイズX1が好ましくはドナー材料1aの層厚み8tの150-250%であることを意味する。
【0097】
図3cに示されるように、ピクセル化されたマスクは光によってドナー基板から放出された材料のサイズを調整するために複数の区切られたピクセルPを備えるパターンでドナー基板1上にパターニングされる光パルスの光を生じさせる。このようにしてドナー層の不規則および/または制御不能な分解とは対照的に所望の液滴形成を達成することができる。
【0098】
一つの実施形態では、ピクセル間の格子7bによってパターンエリア7aがピクセルPに分割される。一つの実施形態では、各ピクセルは200μmよりも小さい、好ましくは、150μmよりも小さい、より好ましくは100μmよりも小さい、ピクセル直径を有する。
【0099】
好ましくは、ビームは適切に形成された液滴を供給するためにほぼ等しい第一の寸法および第二の寸法X1、X2有し、例えばビームは正方形または円形とすることができる。したがって、マスクパターンにおいて、ピクセルPは好ましくは第一の寸法X1および第一の寸法X1とほぼ等しい、例えば±20%以内である横断方向の第二の寸法Y1を有する。他の寸法および構成もまた考えられる。
【0100】
図4aはドナー材料を境界内に含むための境界11を画定するセル10のパターンを備えるドナー基板1を用いた実施形態を示しており、セル10の所定のサブセットを選択的に占有することによってドナー材料1aのパターン2が形成される。
図4bは光パルス4aによるドナー基板1から受け面5上への選択的に占有されたセル10の所定のサブセットに存在するドナー材料1a(
図4aを参照)の転写によって得られる受け面5上のドナー材料1aの転写パターン4を示す。この例において、セル10は円形の境界11を形成する。他の形状、サイズおよび構成(例えば互いに対する距離)が可能である。受け面5上に同じかまたは異なる転写パターン4を得るために選択的に占有されることのできるセル10を備えるドナー基板は容易に再使用されることができる。
【0101】
図5はドナー材料1aを備える様々なドナー基板(
図5(a)-(f))を示す。ドナー基板1上にパターン2を形成するようにドナー材料1aの無い一つまたは複数の非占有領域2bを維持しながらも、一つまたは複数の占有領域2aにドナー材料1aを選択的に供給することによってドナー基板1を製造することができる。転写後に受け面5上に所望の転写パターン4を形成するようにパターン2を構成することができる。
図5(a)-(c)に示されるドナー基板において、ドナー材料を備えるドナー基板の別個の部分はドナー基板1上に配置された切込み12により少なくとも部分的に得られ、切込み12はドナー材料1aを保持するために配置される。切込み12または溝12は材料部1bを形成するドナー材料1aで充填することができる。このような切込み12はドナー材料1aを保持することのできるドナー基板表面上の井戸とみなすことができる。
図5(b)において、ドナー基板の表面上に配置された突起13の間に切込み12が形成されている。
図5(c)において切込みはドナー基板の表面を変形させるレーザースクライビングの結果として形成される。次にドナー材料1aはより容易にアプライされ、切込み12に供給され得る。ドナー材料からドナー基板1への強化された接着性を得るために多くの切込みの形状が可能である。エンボス加工によって切込み12を形成することもできる。
図5(d)においてドナー材料とドナー基板との間の相対接着性がドナー基板1の一つまたは複数の非占有領域2bにおいてよりもドナー基板1の一つまたは複数の占有領域2aにおいて高くなるように配置されたドナー基板によってドナー基板1上のドナー材料1aの材料部1bが少なくとも部分的に得られる。この目的のために、ドナー材料1aに対して異なる相対接着性を有するドナー基板上に固有の領域が生成されるように、例えば、化学物質を使用して化学的に、ドナー基板1の表面を加工および/または処理することができる。
図5(d)に示される例において、ドナー基板1はドナー材料1aに対して強化された接着性を有するゾーン14を備える。
図5(e)において、追加の層15がドナー材料1aに対してより高い接着性を有するゾーン14を有する基板1上にアプライされ、有利にはドナー材料1aがゾーン14上にアプライされる。
図5(f)はドナー材料1aが付着しているゾーン14においてドナー材料1aに対してより高い接着性を得るために表面処理(例えば酸化)されたドナー基板1を示す。ドナー材料1aはドナー基板1上に占有領域を形成するためにゾーン14により容易に付着する傾向(より高い接着性)がある。
【0102】
図6はドナー基板1上にドナー材料1aをアプライするための方法を示しており、テンプレート15はドナー基板1上にパターン2を形成するように構成され、使用される。テンプレート15は切込みまたは溝16を備え、ドナー基板と接触している。次に溝16をドナー材料1aで充填し、その後パターン2を形成するドナー材料1aがドナー基板1に付着したまま留まることができるようにテンプレート16を除去する。
【0103】
図7はドナー材料1aがアプライされている受け面5の少なくとも一部が湾曲し、非平面で、三次元形状を形成している実施形態を示す。有利には、ドナー材料1aの転写パターン4を複雑な三次元形状基板に非接触でアプライするために本発明を使用することができる。
【0104】
図8は受け面5が湾曲し、フレキシブルである実施形態を示す。ドナー基板1上のドナー材料1aのパターン2を湾曲した受け面5上に転写する前に、変形手段18によって受け面5が変形される。変形手段18は受け面5を所望の形状に保ち、変形させるために配置されることができる。ドナー基板1上のドナー材料1aのパターン2を転写することによって得られる受け面5上の転写パターン4は、特に受け面が伸縮性のある材料で作られている場合に、フレキシブルな受け面5の三次元形状による影響を強く受け得る。したがって、変形手段18はパターン2を転写するために受け面5を所望の三次元形状にすることができる。示されている例において、変形の結果として得られる三次元形状は非平面である。しかしながら、平面形状もまた可能である。他の変形形状もまた考えられる。
【0105】
図9は受け面5上に転写パターン4またはパターン構造4を設けるためのシステム100の実施形態を示す。システム100は本明細書に記載の方法を実行するために使用され得る。システム100は光パルス3aを供給するために構成された光源3を備える。このシステムは転写パターン4を受けるための受け面5または基板5を設けるための手段20aをさらに備える。前記手段20aは例えば連続した方法、例えばロール・ツー・ロール(roll-to-roll)またはロール・ツー・シート(roll-to-sheet)プロセスでパターン構造を製造するためのロールを備える基板輸送機を備え得る。システム100はドナー材料1aを備えるドナー基板1を設けるための手段20bをさらに備え、ドナー基板1は光源3と受け面5との間に配置される。手段20bは例えばドナー基板を運搬するための輸送システムを備え得る。システム100は例えば光源3とドナー基板1との間に配置されたメッシュ7(ここには図示されていない)をさらに備え得る。好ましい実施形態では、メッシュはドナー基板1に作用する光源3からの光6をパターニングするためのマスクパターンを備える。パターン光6pは分かれた均一なサイズの液滴8dの形態でドナー基板1からドナー材料1aを放出するためにドナー基板1に同時に作用する複数の分かれた均一なサイズのビーム6bに分割することができる。さらに、ドナー基板1へのドナー材料1aの付着がより容易になされ、および/または強化されるように、システム100はパターン2を転写する前にドナー材料1aを操作するための手段(図示されていない)を備え得る。例えば、システムはエンボス加工手段、(化学的表面)処理手段、レーザースクライビング手段、等を備えてもよく、これらは前述されている。一つの実施形態では、単一の光パルスまたはパルス列によって完全な転写パターン4が受け面5上に形成されるように輸送機20a、20bの速度Vおよび光源3のパルス変調がコントローラ25によって制御される。換言すると、輸送機20a、20bは光源によって生成された各光パルスについて、基板が次のパターンを生成するために新しい位置に移動するような速度でドナー基板およびアクセプタ基板を移動させる。
【0106】
一つの実施形態では、本方法は他のステップ、例えばチップボンドパッドのパターニング、導電性インクのフォトニック焼結、ボンドパッドへのはんだバンプの配置、チップ配置後のフォトニックはんだ付け、サイドリークを避けるための溝の充填と組み合わせられ得る。
【0107】
一般的に、パルスは一つまたは複数の比較的短い(すなわち、短時間の)バーストを示す一過性の外乱とみなすことができる。実施形態において示されるパルスは素早くピークに到達し、その後ゆっくりと減衰する比較的急峻な前縁を備える。しかしながら、受け面または受け基板にドナー基板上のドナー材料のパターンを転写するために多くのバリエーションのパルスが可能であり、用いられることができる。例えば、一つのピークのみを備える単一のパルスの代わりに変調されたパルスおよび/または複数の連続したパルスもまた用いることができる。一つのパルスは複数のパルスに分けることができる。いくつかの実施形態では、変調光パルスおよび/または複数の比較的パルス状のエネルギーピーク(電磁放射)を備える光パルス列は「光パルス(a light pulse)」とみなすことができ、その光パルスはドナー材料の温度を瞬間的に上昇させるために配置される。
【0108】
一つの実施形態では、光は変調パルスを備えてその変調は第一および第二の時間間隔を備え、第一の時間間隔において、変調パルスはドナー材料を放出するための第一の光強度を有し、第二の時間間隔において、変調パルスはドナー材料がドナー基板とアクセプタ基板との間を通過する間にドナー材料を乾燥、融解、および/または焼結するための第二の光強度を有する。現在のところ、フライト中に転写された液滴を除去し、乾燥させ、および焼結(融解)させるために変調パルスを使用できることが認識されている。液滴は放熱されないため、非常に効率的に極度の高温に加熱されることができる。基板間の間隙および液滴速度はパルスの時間フレームを決定し得る。例えば、距離に応じて、一つの実施形態では、第一の時間間隔は50μsよりも短く第二の時間間隔は100μsよりも長い。好ましくは、第一の光強度は第二の光強度よりも高い。より長いパルスを使用することによって、転写された液滴を効率的に加熱するために(ドナー材料の放出のために使用されるエネルギーとは別の)さらなるエネルギーを使用することができる。
【0109】
本明細書で使用されるように、用語「基板(substrate)」は処理が行われる表面を備える物体としての材料科学における通常の意味を有する。基板はその上に電子機器、例えば集積回路を製造するために好適である。処理は一つまたは複数の処理ステップ、例えば積層、露光、キュア、等において基板上に電子構造を製造することを含み得る。一般的な半導体製造プロセスにおいて、基板はシリコンウェハであり得る。フレキシブルな電子機器の生産において、基板は一般的に箔を備える。用語「箔(Foil)」は一つまたは複数の材料の層を備えるシートを指す。好ましくは、箔はロール・ツー・ロール(R2R)またはロール・ツー・シート(R2S)製造プロセスにおいて使用されることができるように、フレキシブルである。このような目的のために、箔は曲率半径が50cmまたはそれよりも小さい、例えば12cmであり、本質的な機能、例えば電子的な機能性を失うことなく巻くかまたは曲げることができる場合にフレキシブルであるとみなされ得る。あるいは、または併せて箔が500Pa・m^3よりも小さい曲げ剛性を有する場合にフレキシブルであるとみなされ得る。
【0110】
本明細書では、本発明は本発明の実施形態の固有の例を参照しながら説明している。しかしながら、特許請求の範囲によって画定される範囲から逸脱することなく様々な修正および変更がなされ得ることが明らかであろう。明瞭さおよび簡潔な説明の目的のために、本明細書では特徴は同じかまたは別の実施形態の一部として説明されるが、本発明の範囲は説明された特徴の全てまたはいくつかの組み合わせを有する実施形態を含み得ることを理解されたい。また同様の機能および結果を達成するための本開示の利益を有する当業者によって別の方法が考えられ得る。例えばドナー基板は組み合わせられてもよく、または一つまたは複数の別の構成要素に分けられてもよい。説明され示されるような実施形態の様々な要素が構成要素を損傷するリスクの低減すること、コストを削減すること、製造を改善すること、効率を改善すること等のような利点を提供する。当然のことながら、設計および利点を見出し一致させることにおいてさらなる改善を提供するために前述の実施形態またはプロセスのうち任意の一つを一つまたは複数の他の実施形態またはプロセスと組み合わせ得ることを理解されたい。この開示はチップを基板にはんだ付けするための特別な利点を提供するものであり、一般に表面に部品をはんだ付けする必要のあるあらゆる用途に適用することができることを理解されたい。
【0111】
特許請求の範囲において、参照符号は特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書または添付の特許請求の範囲において使用される場合の用語「備えている(comprising)」および「含んでいる(including)」は排他的(exclusive)かつ網羅的(exhaustive)な意味で解釈されるべきではなくむしろ非排他的(inclusive)な意味に解釈されるべきである。したがって本明細書で用いられる「備えている」という表現は任意の請求項に記載されたものに加えて他の要素またはステップの存在を排除するものではない。さらに、語「a」および「an」は「only one(ひとつだけ)」に限定するように解釈されるべきではなく、代わりに「at least one(少なくとも一つ)」を意味するために使用され、そして複数を排除しない。具体的または明示的に記載または請求されていない特徴はその範囲内で本発明の構造にさらに含まれ得る。