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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】軸受システム
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/04 20060101AFI20220224BHJP
   F04D 29/057 20060101ALI20220224BHJP
   F16C 33/14 20060101ALI20220224BHJP
   F16C 33/12 20060101ALI20220224BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20220224BHJP
   F16C 33/74 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
F16C17/04 A
F04D29/057 Z
F16C33/14 Z
F16C33/12 A
F16J15/16 B
F16C33/74 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020124884
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2021032411
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】108130660
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】597149629
【氏名又は名称】建準電機工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Sunonwealth Electric Machine Industry Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100213746
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 渉
(72)【発明者】
【氏名】洪 銀樹
(72)【発明者】
【氏名】王 科鑑
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-144284(JP,A)
【文献】特開平10-269691(JP,A)
【文献】特開2013-128371(JP,A)
【文献】特開2010-53906(JP,A)
【文献】特開2007-92799(JP,A)
【文献】特開2001-20945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00-17/26
F16C 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一軸受、第二軸受および回転部材を含み、
前記第一軸受の内部は中空で第一内表面を有し、
前記第二軸受は前記第一軸受の内部に位置し、前記第二軸受は前記第一内表面と軸方向に相対するように形成される第二内表面を有し、前記第二内表面と第一内表面の間には間隔空間が形成され、前記第二軸受は前記第二内表面と軸方向に相対する外表面を有し、防漏リングは前記第一軸受と結合するとともに、前記第二軸受の外表面を被覆し、前記防漏リングは遮蔽盤を有し、前記回転軸は前記遮蔽盤の挿通孔および前記第二軸受の軸孔を貫通し、前記挿通孔の径幅は前記軸孔の孔径より大きく、
前記回転部材は回転軸と連接する外凸部を有し、前記外凸部は前記間隔空間に位置し、前記外凸部は回転時においてそれぞれ前記第一内表面および前記第二内表面との間には動圧隙間が形成され、前記回転軸は前記第一軸受の内部に位置される内端面を有し、突出部は前記内端面に突設され、前記外凸部は前記突出部に連接し、前記突出部の高度は前記外凸部の厚みより大きく、前記外凸部と前記内端面の間には含油空間が形成され、前記第一軸受の軸方向端部の第一内表面は前記突出部に位置合わせる凹溝を有し、前記突出部と前記外凸部とを結合する箇所と前記凹溝の底部の間には隙間が形成されることを特徴とする軸受システム。
【請求項2】
他に支持部を有し、前記支持部は前記第一内表面および前記第二内表面の間に位置することにより、前記第一内表面、前記第二内表面と前記支持部の内周面の間には前記間隔空間が形成されることを特徴とする請求項1に記載の軸受システム。
【請求項3】
前記回転軸は前記第二軸受の軸孔を貫通し、前記第一軸受は軸方向端部と連接する環壁を有し、前記第一内表面は前記軸方向端部に位置して前記軸孔に向くように形成され、前記支持部は一体になるように前記第一内表面と連接して前記第二内表面が当接するのに用いられ、または前記支持部は一体になるように前記第二内表面と連接して前記第一内表面に当接することを特徴とする請求項2に記載の軸受システム。
【請求項4】
前記回転軸の外径は前記軸孔の孔径より小さいことを特徴とする請求項3に記載の軸受システム。
【請求項5】
前記第一軸受の第一内表面に収容部が凹設され、前記収容部は前記間隔空間に連通し、前記回転軸の底部は前記収容部に挿入するとともに、前記収容部の底面とは接触せずに隙間を維持することを特徴とする請求項3に記載の軸受システム。
【請求項6】
前記回転軸の外径は前記収容部の径幅より小さいことを特徴とする請求項5に記載の軸受システム。
【請求項7】
前記回転軸の底部と前記外凸部の底端は平らであることを特徴とする請求項1に記載の軸受システム。
【請求項8】
前記第一軸受は環壁を有し、前記第二軸受は前記第一軸受の環壁にしまりばめで嵌合されることを特徴とする請求項1に記載の軸受システム。
【請求項9】
前記第一軸受は環壁を有し、前記第二軸受はレーザー溶接で前記環壁を結合することを特徴とする請求項1に記載の軸受システム。
【請求項10】
前記第一軸受と前記第二軸受の材質はリン青銅合金であることを特徴とする請求項1に記載の軸受システム。
【請求項11】
前記外凸部は前記第一軸受の第一内表面と相対する第一軸方向表面を有し、前記第一内表面と前記第一軸方向表面の内に少なくとも一方には複数個の動圧溝が凹設され、前記外凸部は前記第二軸受の第二内表面と相対する第二軸方向表面を有し、前記第二内表面と前記第二軸方向表面の内に少なくとも一方には他に複数個の動圧溝が凹設されることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の軸受システム。
【請求項12】
他に環状溝を有し、前記環状溝は前記複数個の動圧溝の外周に位置して前記複数個の動圧溝と連通することを特徴とする請求項11に記載の軸受システム。
【請求項13】
前記第二軸受は前記軸孔および前記外表面と連接する第一導流斜面を有し、前記挿通孔の径幅は前記第一導流斜面と前記外表面が連接する部位の径幅より小さいことを特徴とする請求項に記載の軸受システム。
【請求項14】
前記回転軸は防漏環状凹部を有し、前記遮蔽盤は前記防漏環状凹部に半径方向に位置合わせることを特徴とする請求項に記載の軸受システム。
【請求項15】
前記遮蔽盤は斜面を有し、前記斜面は前記挿通孔に隣接するとともに、前記第二軸受に向くように形成され、前記斜面と前記第二軸受の外表面の間には断油空間が形成されることを特徴とする請求項に記載の軸受システム。
【請求項16】
前記防漏リングは前記遮蔽盤の外周に連接される挿入部を有し、前記挿入部は前記第一軸受と前記第二軸受の間に挿入し、前記挿入部は前記第一軸受を結合することを特徴とする請求項に記載の軸受システム。
【請求項17】
前記第二軸受は前記軸孔および前記第二内表面と連接する第二導流斜面を有し、前記回転軸の内端面は前記第二導流斜面に半径方向に位置合わせることを特徴とする請求項に記載の軸受システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターまたはファンの部材に関し、特に、モーターまたはファンに取り付けることができる軸受システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10には従来のファンの断面構造図が示される。従来のファン9は軸座91、軸受システム92、ローター93およびステータ94を含む。前記軸受システム92は軸筒部921を有して前記軸座91に組み立てられて結合され、含油軸受922は前記軸筒部921の内部に組み立てられ、密封栓923は前記軸筒部921の底部を密閉し、耐摩耗部材924は前記密封栓923の内に設けられる。前記ローター93は回転軸931を有して前記含油軸受922を貫通し、前記回転軸931の底端は前記耐摩耗部材924に当接し、前記回転軸931の外周面に係止部材932が結合され、前記係止部材932は前記含油軸受922の下方に位置し、前記回転軸931の頂端にホイール933が結合され、前記ホイール933の外周面に複数個の羽根934が連接され、前記ホイール933の内周面には磁性部材935が連接される。前記ステータ94は前記軸筒部921の外周に結合されるとともに、前記磁性部材935とは半径方向に相対するように形成されることにより、前記ローター93が回転するのを駆動することができる。このような従来のファン9の実施例として、例えば特許文献1に開示されたものである。
【0003】
上記従来のファン9が作動する時、仮にその回転軸931が上へ浮き上がるという現象が生じると、前記係止部材932が前記含油軸受922の底端に係止されることにより、前記回転軸931の軸方向への変位を制限することができる。しかし、前記係止部材932は前記含油軸受922の底端に繰り返してぶつかるため、前記ローター93の回転は振動によって不安定になると同時に、ノイズが生じてしまうという問題がある。以上に鑑みて、従来のファンを改善する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】台湾公告第M247713号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題を解決するために、本発明は、回転軸の軸方向変位を制限することができるとともに、回転軸が軸受の軸方向の端面にぶつかるのを大幅に減らすことができる軸受システムを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、その回転軸の底部はその他の部材とは接触せずに隙間を維持することができる軸受システムを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、その回転軸と軸受の間にはさらに均一な油膜が生じることができる軸受システムを提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、組立に必要な部材を簡素化にすることにより、組立の利便性と効率を高めることができる軸受システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の明細書全文にわたって述べられる方向を示す用語、例えば、「前」、「後」、「左」、「右」、「上(頂)」、「下(底)」、「内」、「外」、「側」などは、主に、添付図面上における方向を示すもので、本発明の各実施例に対する説明と理解を補助するためのものであり、本発明はこれらの方向に限定されるものではない。
【0010】
本発明の明細書全文にわたって記載される部品と部材は「一つ」または「一個」の助数詞を用いるのは、便宜上用いるだけのものであり、本発明の範囲における通常の意義を提供するもので、本発明においては一個または少なくとも一個を含むものであると読み取るべきであり、且つ、明確にその他の意味を指していない限り、単一の概念も複数の情況を含むものである。
【0011】
本発明の説明において、「結合」、「組合せ」または「組み立て」等の近似の用語は、主に連接した後でも部材を破壊せずに依然として分離することができ、または連接した後に部材を分離することができない等の形態を含み、例えばねじを有する部材が互いに螺合したり、または熔接によって結合したりする連接の方式であって、これは本技術分野で通常の知識を有するものには連接しようとする部材の材質または組み立ての需要に応じて選択できるものである。
【0012】
本発明に係る軸受システムは、第一軸受、第二軸受および回転部材を含み、前記第一軸受の内部は中空で第一内表面を有し、前記第二軸受は前記第一軸受の内部に位置し、前記第二軸受は前記第一内表面と軸方向に相対するように形成される第二内表面を有し、前記第二内表面と第二内表面の間には間隔空間が形成され、前記回転部材は回転軸と連接する外凸部を有し、前記外凸部は前記間隔空間に位置し、前記外凸部は回転時においてそれぞれ前記第一内表面および前記第二内表面との間には動圧隙間が形成される。
【0013】
これにより、本発明の軸受システムは、その回転部材が回転する時、前記外凸部と前記二つの軸受の間においてそれぞれ動圧によって油膜が生じることができるため、回転軸に順調な回転を維持させることができるだけではなく、さらに前記二つの油膜によって回転軸の軸方向変位を抑制し、前記外凸部が前記二つの軸受にぶつかるのを防止することができ、その結果、作動時にノイズと振動を有効に減らすことができるため、前記軸受システムを取り付けたファンまたはモーターの品質を高める効果を有する。
【0014】
また、本発明に係る軸受システムは、他に支持部を有し、前記支持部は前記第一内表面および前記第二内表面の間に位置することにより、前記第一内表面、前記第二内表面と前記支持部の内周面の間には前記間隔空間が形成されてもよい。これにより、前記支持部によって前記間隔空間の寸法を正確に制御することができるため、組立の利便性と製品の歩留りを高める等の効果を有する。
【0015】
また、本発明に係る軸受システムは、前記回転軸は前記第二軸受の軸孔を貫通し、前記第一軸受は軸方向端部と連接する環壁を有し、前記第一内表面は前記軸方向端部に位置して前記軸孔に向くように形成され、前記支持部は一体になるように前記第一内表面と連接して前記第二内表面が当接するのに用いられ、または前記支持部は一体になるように前記第二内表面と連接して前記第一内表面に当接してもよい。これにより、前記第二軸受を前記第一軸受の内部に組み込ませる時、前記支持部が前記第一内表面または前記第二内表面に当接するまで前記第二軸受を押圧するだけで、前記間隔空間が予定の寸法に符合するように確保することができ、さらに組立に必要な部材は極めて少ないため、組立の利便性と効率を高める等の効果を有する。
【0016】
また、本発明に係る軸受システムは、前記回転軸の外径は好ましくは前記軸孔の孔径より小さくてもよい。これにより、前記回転軸の回転の順調度を高める等の効果を有する。
【0017】
また、本発明に係る軸受システムは、前記第一軸受の第一内表面に収容部が凹設され、前記収容部は前記間隔空間に連通し、前記回転軸の底部は前記収容部に挿入するとともに、前記収容部の底面とは接触せずに隙間を維持してもよい。これにより、前記回転軸が回転する時、前記収容部の底面に摩擦することがないため、回転軸の回転の順調度を高めるとともに、作動時のノイズを低く抑え、軸受システムの使用寿命を延ばす等の効果を有する。
【0018】
また、本発明に係る軸受システムは、前記回転軸の外径は前記収容部の径幅より小さくてもよい。これにより、前記回転軸の回転の順調度を高める等の効果を有する。
【0019】
また、本発明に係る軸受システムは、前記第一軸受は軸方向端部と連接する環壁を有し、前記第一内表面は前記軸方向端部に位置し、軸孔は前記軸方向端部に設けられて前記第一内表面を貫通し、前記回転軸は前記軸孔を貫通し、前記支持部は一体になるように前記第一内表面と連接して前記第二内表面が当接するのに用いられ、または前記支持部は一体になるように前記第二内表面と連接して前記第一内表面に当接してもよい。これにより、前記第二軸受を前記第一軸受の内部に組み込ませる時、前記支持部が前記第一内表面または前記第二内表面に当接するまで前記第二軸受を押圧するだけで、前記間隔空間が予定の寸法に符合するように確保することができ、さらに組立に必要な部材は極めて少ないため、組立の利便性と効率を高める等の効果を有する。
【0020】
また、本発明に係る軸受システムは、前記回転軸の外径は前記軸孔の孔径より小さくてもよい。これにより、前記回転軸の回転の順調度を高める等の効果を有する。
【0021】
また、本発明に係る軸受システムは、前記第二軸受は前記第二内表面に凹設される収容部を有して、前記収容部は前記間隔空間に連通し、前記回転軸の底部は前記収容部に挿入するとともに、前記収容部の底面とは接触せずに隙間を維持してもよい。これにより、前記回転軸が回転する時、前記収容部の底面に摩擦することがないため、回転軸の回転の順調度を高めるとともに、作動時のノイズを低く抑え、軸受システムの使用寿命を延ばす等の効果を有する。
【0022】
また、本発明に係る軸受システムは、前記回転軸の外径は前記収容部の径幅より小さくてもよい。これにより、前記回転軸の回転の順調度を高める等の効果を有する。
【0023】
また、本発明に係る軸受システムは、前記回転軸の底部と前記外凸部の底端は平らであってもよい。これにより、構造を簡素化にし、製造に便利になるという効果を有する。
【0024】
また、本発明に係る軸受システムは、前記回転軸は円周面、外端面および内端面を有し、前記外凸部は前記外端面と前記内端面の間に位置合わせしてもよい。これにより、前記回転部材の回転の安定性を高める効果を有する。
【0025】
また、本発明に係る軸受システムは、前記第一軸受は環壁を有し、前記第二軸受は前記第一軸受の環壁にしまりばめで嵌合されてもよい。これにより、結合の安定性を高める効果を有する。
【0026】
また、本発明に係る軸受システムは、前記第一軸受は環壁を有し、前記第二軸受はレーザー溶接で前記環壁を結合してもよい。これにより、結合の安定性を高める効果を有する。
【0027】
また、本発明に係る軸受システムは、前記外凸部は一体になるように前記回転軸の円周面と連接し、前記円周面から半径方向に向かって外へ延伸するように形成されてもよい。これにより、前記外凸部が前記回転軸の円周面における位置は変わることなく固定を維持することにより、組立の誤差や後続における相対変位を低く抑えて油膜形成の効果に影響を及ぼすことがないため、軸受システムの作動の安定性を高める効果を有する。
【0028】
また、本発明に係る軸受システムは、前記外凸部は前記回転軸の円周面に結合され、前記円周面から半径方向に向かって外へ延伸するように形成されてもよい。これにより、製造および組立の利便性を高める効果を有する。
【0029】
また、本発明に係る軸受システムは、前記外凸部はレーザー溶接で前記回転軸の円周面に結合されてもよい。これにより、結合の安定性を高める効果を有する。
【0030】
また、本発明に係る軸受システムは、前記第一軸受と前記第二軸受の材質はリン青銅合金であってもよい。これにより、前記第一軸受と前記第二軸受は十分な構造強度を有してファンの基座と直接結合することができるとともに、潤滑油が漏れるという現象はなくなるため、部材を簡素化にし、組立の利便性と効率を高める効果を有する。
【0031】
また、本発明に係る軸受システムは、前記外凸部は円盤状に形成されて前記回転軸の円周面に環囲してもよい。これにより、前記外凸部と前記第一軸受および前記第二軸受の間に生じる油膜はさらに均一になることができるため、回転軸の回転の順調度を高める効果を有する。
【0032】
また、本発明に係る軸受システムは、前記外凸部は前記第一軸受の第一内表面と相対する第一軸方向表面を有して、前記第一内表面と前記第一軸方向表面の内に少なくとも一方には複数個の動圧溝が凹設され、前記外凸部は前記第二軸受の第二内表面と相対する第二軸方向表面を有して、前記第二内表面と前記第二軸方向表面の内に少なくとも一方には他に複数個の動圧溝が凹設されてもよい。これにより、前記軸受システムが作動時に生じる動圧の効果をさらに高める効果を有する。
【0033】
また、本発明に係る軸受システムは、他に環状溝を有し、前記環状溝は前記複数個の動圧溝の外周に位置して前記複数個の動圧溝と連通してもよい。これにより、潤滑油の循環の順調度を高める効果を有する。
【0034】
また、本発明に係る軸受システムは、前記第二軸受は前記第二内表面と軸方向に相対する外表面を有し、防漏リングは前記第一軸受と結合するとともに、前記第二軸受の外表面を被覆してもよい。これにより、潤滑油の漏れを防止することができるとともに、前記第二軸受の固定を輔助する効果を有する。
【0035】
また、本発明に係る軸受システムは、前記防漏リングは遮蔽盤を有することができ、前記回転軸は前記遮蔽盤の挿通孔および前記第二軸受の軸孔を貫通し、前記挿通孔の径幅は前記軸孔の孔径より大きくてもよい。これにより、前記回転軸が前記防漏リングに摩擦しないことを確保することができるため、回転軸の回転の順調度に影響を及ぼさない効果を有する。
【0036】
また、本発明に係る軸受システムは、前記第二軸受は前記軸孔および前記外表面と連接する第一導流斜面を有することができ、前記挿通孔の径幅は前記第一導流斜面と前記外表面が連接する部位の径幅より小さくてもよい。これにより、前記防漏リングによって前記第一導流斜面に沿って流出する潤滑油を止めることができるため、潤滑油の漏れを防止する効果を有する。
【0037】
また、本発明に係る軸受システムは、前記回転軸は防漏環状凹部を有し、前記遮蔽盤は前記防漏環状凹部に半径方向に位置合わせしてもよい。これにより、潤滑油が前記防漏環状凹部に流入した後、重力の影響によって前記第一軸受の内部に流れ戻ることができるため、潤滑油が前記回転軸に沿って流失するのを防止する効果を有する。
【0038】
また、本発明に係る軸受システムは、前記遮蔽盤は斜面を有し、前記斜面は前記挿通孔に隣接するとともに、前記第二軸受に向くように形成され、前記斜面と前記第二軸受の外表面の間には断油空間が形成されてもよい。これにより、潤滑油が前記第一導流斜面に沿って前記第二軸受の上端まで流れた時、持続的に前記断油空間に流れ込んで前記挿通孔から流出し難いため、潤滑油が漏れるのを防止する効果を有する。
【0039】
また、本発明に係る軸受システムは、前記防漏リングは前記遮蔽盤の外周に連接される挿入部を有し、前記挿入部は前記第一軸受と前記第二軸受の間に挿入し、前記挿入部は前記第一軸受を結合してもよい。これにより、前記防漏リングは前記第一軸受を安定して結合することができるとともに、兼ねて前記第二軸受の位置決めを補助することができるため、結合の安定性を高める効果を有する。
【0040】
また、本発明に係る軸受システムは、前記回転軸は前記第一軸受の内部に位置される内端面を有し、突出部は前記内端面に突設され、前記外凸部は前記突出部に連接し、前記突出部の高度は前記外凸部の厚みより大きく、前記外凸部と前記内端面の間には含油空間が形成されてもよい。これにより、前記含油空間に位置する潤滑油は前記外凸部と前記第二軸受の第二内表面の間の動圧隙間に順調に補充することができるため、回転軸の回転の順調度を高める効果を有し、さらに作動時のノイズと振動を減らす効果を有する。
【0041】
また、本発明に係る軸受システムは、前記第二軸受は前記軸孔および前記第二内表面と連接する第二導流斜面を有し、前記回転軸の内端面は前記第二導流斜面に半径方向に位置合わせしてもよい。これにより、前述した潤滑油の補充はさらに順調になるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第一実施例の分解斜視図。
図2】本発明の第一実施例の組立断面図。
図3】本発明の第二実施例の分解斜視図。
図4】本発明の第二実施例の組立断面図。
図5】本発明のその他の実施例において支持部が第二軸受に連接された状態の組立断面図。
図6】本発明の第三実施例の組立断面図。
図7】本発明のもう一つの態様の回転軸の斜視図。
図8】本発明の第四実施例の分解斜視図。
図9】本発明の第四実施例の組立断面図。
図10】従来のファンの断面構造図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の上記およびその他の目的、特徴と利点をさらに明らかに且つ分かり易くするべく、下記のとおり本発明の実施例をもって、さらに図面を参照して詳しく説明する。
【0044】
図1、2に示されるように、本発明の軸受システムの第一実施例が示される。第一実施例の軸受システムは第一軸受1、第二軸受2および回転部材3を含む。前記第二軸受2は前記第一軸受1の内部に位置し、前記回転部材3は前記第一軸受1と前記第二軸受2に相対して回転することができる。
【0045】
前記第一軸受1は環壁11を有し、環壁11が軸方向端部12と連接することにより、前記第一軸受1は概ね内部が中空の杯状に形成されて前記第二軸受2を収容することができる。本実施例において、前記軸方向端部12は前記環壁11の底側に位置することができ、そして前記環壁11とは一体に成形して互いに連接するため、前記第一軸受1の底端は完全に密閉されて前記第一軸受1の内部の潤滑油が漏れるのを有効に避けることができる。その中に、前記軸方向端部12は第一内表面121を有し、前記第一内表面121は前記環壁11の上端に向くように形成することができる。
【0046】
前記第二軸受2は前記第一軸受1の内部に位置し、前記第二軸受2は前記第一内表面121と軸方向に相対するように形成される第二内表面21を有し、さらに前記第二内表面21と前記第一内表面121の間には間隔空間Sが形成される。また、前記第二軸受2はしまりばめで前記第一軸受1の環壁11に嵌合することができ、そして好ましくは連接部の外端においてレーザー溶接を行なう。
【0047】
さらに、本実施例の軸受システムは他に支持部4を含み、前記支持部4は前記第一内表面121および前記第二内表面21の間に位置することにより、前記第一内表面121および前記第二内表面21を間切りするのに用いられ、前記第二軸受2が前記第一軸受1の内部に組み立てられた後、前記第二内表面21と前記第一内表面121は予定の間隔を確保することができるため、組立の利便性を高めるとともに、前記間隔空間Sの寸法を正確に制御することができる等の効果を有する。
【0048】
具体的に言えば、前記支持部4は一体になるように前記第一内表面121と連接し、そして前記第一内表面121の上から突出することができ、前記第二軸受2を組立てる時、前記第二内表面21が前記支持部4に当接するまで前記第二軸受2を押圧するだけで、前記第二軸受2の結合の深さを制限することができ、そして前記第一内表面121、前記第二内表面21と前記支持部4の内周面41の間には前述の間隔空間Sが形成されると同時に、前記間隔空間Sが予定の寸法に符合するように確保することができ、また組立に必要な部材は極めて少ないため、組立を迅速に完成することができる。
【0049】
その他の実施例において、前述の設置とは逆に、前記支持部4は一体になるように前記第二内表面21と連接し、そして前記第二軸受2を組立てる時、前記支持部4を前記第一内表面121に当接させる。または、前記支持部4をさらに二つの部分に分けることができ、一つの部分は一体になるように前記第一内表面121と連接し、もう一方の部分は一体になるように前記第二内表面21と連接し、そして組み立てる時に合わせるように当接することにより、全て上述の効果に達することができる。
【0050】
その他に、本実施例の第二軸受2は貫通した軸孔22を有することができ、前記軸孔22によって前記間隔空間Sと外部を連通する。また、前記軸孔22は前記第二内表面21を貫通して前記第一内表面121に向くように形成される。好ましくは、前記軸孔22の少なくとも一部は軸方向に沿って下から上へ向かって次第に拡張するような形態に形成されるため、前記軸孔22まで不意に流れ溢れた潤滑油は比較的引き続き外部へ流出し難くなる。
【0051】
前記回転部材3は駆動によって回転可能な回転軸31を有し、前記回転軸31は円周面311、外端面312および内端面313を有し、前記回転軸31は前記第二軸受2の軸孔22を貫通することができ、そして前記回転軸31の外端面312は前記第一軸受1の外部に位置し、前記回転軸31の内端面313は前記第一軸受1の内部に位置する。また、前記回転軸31の外径D1は好ましくは前記軸孔22の孔径D2より少し小さいため、前記回転軸31の回転の順調度を高めることができる。
【0052】
前記回転部材3は前記回転軸31と連接し、そして前記間隔空間Sの中に位置する外凸部32を有し、前記回転軸31は前記外凸部32を連動して同期に回転することができる。本実施例において、前記外凸部32は前記回転軸31の円周面311に連接することができ、そして、前記外凸部32が相対する第一軸方向表面321と第二軸方向表面322を有するように、前記外凸部32は概ね前記円周面311から半径方向に向かって外へ延伸して前記間隔空間Sの中に設けられる。前記第一軸方向表面321は前記第一軸受1の第一内表面121と相対し、前記第二軸方向表面322は前記第二軸受2の第二内表面21と相対する。
【0053】
本発明においては前記外凸部32の形態を制限せず、前記外凸部32の軸方向の高度H1は前記間隔空間Sの軸方向の高度H2より小さく、そして前記外凸部32は回転時においてそれぞれ前記第一内表面121および前記第二内表面21との間には動圧隙間Gが形成されるのを原則とする。本実施例において外凸部32は選択的に円盤状からなることにより、前記回転軸31の円周面311を環囲することができる。
【0054】
前述の支持部4を有する実施例において、前記外凸部32は前記支持部4の内周面41と間隔を有して接触しないように維持するべきで、前記回転部材3の回転の順調度に影響を及ぼすのを避けなければならない。その他に、前記外凸部32は前記回転軸31の円周面311に一体に成形するように連接することができる(図6に示す如く)。または、例えばレーザー溶接またはしまりばめなどの嵌合の方式で前記回転軸31の円周面311に結合することができ、本発明においては限制を設けない。また、本実施例の回転部材3は前記回転軸31の底部B1と前記外凸部32の底端B2が平らになるような形態を選択することができる。すなわち、前記回転軸31の内端面313は前記外凸部32の第一軸方向表面321と共同の平面を有し、前記回転部材3は概ね逆さのT字形に形成される。
【0055】
前記軸受システムが作動時において生じる動圧の効果をさらに高めるべく、選択的に前記第一内表面121と前記第一軸方向表面321の内に少なくとも一方には複数個の動圧溝5を凹設することができ、他に前記第二内表面21と前記第二軸方向表面322の内に少なくとも一方には他に複数個の動圧溝5を凹設する。例えば、本実施例において選択的に前記第一軸受1の第一内表面121と前記第二軸受2の第二内表面21にそれぞれ複数個の動圧溝5が凹設されてもよいが、必ずしもこの限りではない。
【0056】
詳しく言えば、同じ表面上に位置する前記複数個の動圧溝5は選択的に前記回転軸31の回転軸線Cを中心にして放射線状に分布するように凹設することができ、または選択的に参考円の接線に沿って延伸するように形成することができ、前記複数個の動圧溝5は同方向の円弧状に形成することができ、そしてそれぞれの前記動圧溝5の深さは約0.02~0.04mmである。また、前記軸受システムは好ましくは環状溝6を有し、前記環状溝6は前記複数個の動圧溝5の外周に位置して前記複数個の動圧溝5と連通することができるため、潤滑油の循環の順調度を高めることができる。また、前記第二内表面21に凹設される前記複数個の動圧溝5は前記軸孔22まで連通または連通しないように凹設することができ、他に環状溝6は前記第二内表面21の前記複数個の動圧溝5の外周に位置して前記複数個の動圧溝5と連通することができる。
【0057】
前述の構造によれば、上述の軸受システムがファンの中に応用される時、前記第一軸受1はファンのフレームに結合され、ステータは前記第一軸受1の外周に設けられ、ホイールは前記回転部材3の回転軸31に結合されることができる。前記ファンが作動する時、前記ステータによって前記ホイールが回転するのを駆動することができるため、前記回転部材3を連動して前記第一軸受1と前記第二軸受2に相対して回転することができる。前記回転部材3が回転する過程において、前記外凸部32と前記第一内表面121の間に位置する動圧隙間Gの中の潤滑油には油膜が生じることができ、前記外凸部32と前記第二内表面21の間に位置する動圧隙間Gの中の潤滑油にはもう一つの油膜が生じることができるため、前記回転部材3は順調な回転を維持することができる。
【0058】
さらに、前記二つの油膜によって前記外凸部32が前記第一軸受1または前記第二軸受2にぶつかるのを防止することができ、故に本実施例の軸受システムが作動する時、前記第一軸受1または前記第二軸受2にぶつかることによってノイズと振動が生じ易いという問題点はない。その他に、前記外凸部32と前記第一内表面121の間に生じる動圧、および前記外凸部32と前記第二内表面21の間に生じる動圧によっては、全て回転軸31に軸方向変位が生じるのを抑制する効果を有する。
【0059】
また、言い加えると、前記第一軸受1と前記第二軸受2はリン青銅合金から製造される軸受を採用することにより、十分な構造強度を有するとともに、金属粉末で焼結される含油軸受、または多孔質軸受(porous bearing)と称するものと比較すると、リン青銅軸受は密度が高いため、潤滑油が毛細現象によって内部より外部への流動から起きる漏油の現象は生じなくなる。そのため、本発明の軸受システムはファンの基座と直接結合することができ、前記第一軸受1と前記第二軸受2の外部に硬質でかつ漏油防止可能なブシュを再び設ける必要がないため、部材を簡素化にし組立の利便性と効率を高めることができる。
【0060】
図3、4に示されるように、本発明の軸受システムの第二実施例が示される。本実施例において、前記第一軸受1の軸方向端部12は前記環壁11の頂端に位置することができるため、前記第一軸受1の底端は開放状に形成されて前記第二軸受2と結合するのに便利になる。
【0061】
詳しく言えば、前記第一軸受1の軸方向端部12は第一内表面121を有し、前記第一内表面121は前記環壁11の底部に向くように形成することができる。前記第一軸受1は軸孔13を有し、前記軸方向端部12に設けられて前記第一内表面121を貫通することにより、前記軸孔13によって前記間隔空間Sと外部を連通する。前記回転部材3の回転軸31は前記軸孔13を貫通するため、前記外凸部32の第一軸方向表面321は前記第一内表面121に向くように形成されることができる。また、前記回転軸31の外径D1は好ましくは前記軸孔13の孔径D3より少し小さいため、前記回転軸31の回転の順調度を高めることができる。
【0062】
その他に、前記支持部4は一体になるように前記第一内表面121と連接することができ、そして前記第一内表面121の下に突出し、前記第二軸受2を組立てる時、前記第二内表面21が前記支持部4に当接するまで前記第二軸受2を押圧するだけで、前記第二軸受2の結合の深さを制限することができ、そして前記第一内表面121、前記第二内表面21と前記支持部4の内周面41の間には前述の間隔空間Sが形成されると同時に、前記間隔空間Sが予定の寸法に符合するように確保することができ、また組立に必要な部材は極めて少ないため、組立を迅速に完成することができる。
【0063】
その他の実施例において、前述の設置とは逆に、前記支持部4は一体になるように前記第二内表面21と連接し、そして前記第二軸受2を組立てる時、前記支持部4を前記第一内表面121に当接させる(図5に示す如く)。または、前記支持部4をさらに二つの部分に分けることができ、一つの部分は一体になるように前記第一内表面121と連接し、もう一方の部分は一体になるように前記第二内表面21と連接し、そして組み立てる時に合わせるように当接することができる。
【0064】
また、図3、4に示されるように、本実施例の回転部材3は、選択的に前記外凸部32を前記回転軸31の外端面312と内端面313の間に位置合わせることができ、前記回転部材3は概ね十字形に形成される。そのため、本実施例の第二軸受2は他に収容部23を有し、前記収容部23は前記第二内表面21に凹設され、そして前記収容部23は前記間隔空間Sに連通することができる。このように、簡素化の構造によって前記回転軸31の底部B1は前記収容部23に挿入することができ、そして前記回転軸31の底部B1の内端面313は好ましくは前記収容部23の底面231とは接触せずに隙間を維持することができるため、前記回転軸31が回転する時、前記底面231に摩擦することはない。その中に、前記回転軸31の外径D1は好ましくは前記収容部23の径幅D4より少し小さいため、前記回転軸31の回転の順調度を高めることができる。
【0065】
図6に示されるように、本発明の軸受システムの第三二施例が示される。本実施例において、前記第一軸受1の軸方向端部12は前記環壁11の底部に位置することができるため、前記第一軸受1の頂端は開放状に形成されて前記第二軸受2と結合するのに便利になるとともに、前記回転部材3も概ね十字形に形成される。
【0066】
詳しく言えば、本実施例の支持部4は一体になるように前記第二内表面21と連接することができ、そして前記第二内表面21の下に突出し、前記第二軸受2を組立てる時、前記第一内表面121が前記支持部4に当接するまで前記第二軸受2を押圧するだけで、前記第二軸受2の結合の深さを制限することができ、そして前記第一内表面121、前記第二内表面21と前記支持部4の内周面41の間には前述の間隔空間Sが形成されると同時に、前記間隔空間Sが予定の寸法に符合するように確保することができ、また組立に必要な部材は極めて少ないため、組立を迅速に完成することができる。
【0067】
他に、本実施例の第一軸受1は他に収容部14を有し、前記収容部14は前記第一内表面121に凹設され、そして前記収容部14は前記間隔空間Sに連通することができる。このように、前記回転軸31の底部B1は前記収容部14に挿入することができ、そして前記回転軸31の底部B1の内端面313は好ましくは前記収容部14の底面141とは接触せずに隙間を維持することができるため、前記回転軸31が回転する時、前記底面141に摩擦することはない。また、前記回転軸31の外径D1は好ましくは前記収容部14の径幅D5より少し小さいため、前記回転軸31の回転の順調度を高めることができる。
【0068】
図7に示されるように、前述の各実施例において、選択的に前記回転部材3の外凸部32の第一軸方向表面321と第二軸方向表面322において全て複数個の動圧溝5を設けることができ、そして上端に位置する複数個の動圧溝5は下端に位置する複数個の動圧溝5とは、軸方向において互いに位置合わせたりまたはずれたりすることができるため、本発明においては限制を設けない。言い換えれば、前述の各実施例において、前記第一軸受1の第一内表面121、前記第二軸受2の第二内表面21および前記外凸部32の二つの軸方向表面321は全てそれぞれ複数個の動圧溝5を設けることができる。
【0069】
または、前記第一軸受1の第一内表面121と前記第二軸受2の第二内表面21は前記複数個の動圧溝5を設けず、前記外凸部32の第一軸方向表面321と第二軸方向表面322だけにそれぞれ複数個の動圧溝5を設けることができる。以上は全て本発明の分野に通常の知識を有する者には需要に応じて選択または変更できるものであるため、本発明の図面に示されるものだけとは限らない。また、前記第一軸受1の第一内表面121において前記複数個の動圧溝5を加工し成形することと比較すると、前記外凸部32の第一軸方向表面321において前記複数個の動圧溝5を加工し成形することはより簡単に行なうことができるため、加工の利便性と効率を高めることができる。
【0070】
図8、9に示されるように、本発明の軸受システムの第四実施例が示される。本実施例において、前記軸受システムは他に防漏リング7を有し、前記防漏リング7によって潤滑油の流出を防止する効果を高めることができる。
【0071】
詳しく言えば、前記第二軸受2は前記第二内表面21と軸方向に相対する外表面24を有する。前記第二軸受2は第一導流斜面25と第二導流斜面26を有し、前記第一導流斜面25は前記軸孔22および前記外表面24と連接し、前記第一導流斜面25と前記外表面24が連接する部位には径幅D6が形成される。前記第二導流斜面26は前記第一導流斜面25とは軸方向に間隔を有するように形成され、さらに前記第二導流斜面26は前記軸孔22および前記第二内表面21と連接する。
【0072】
前記回転部材3の回転軸31は防漏環状凹部314を有し、前記防漏環状凹部314は前記回転軸31の円周面311に環設されるため、潤滑油が前記回転軸31の円周面311に沿って流出する時、前記防漏環状凹部314に流入した後、重力の影響によって前記第一軸受1の内部に流れ戻ることができるため、潤滑油が前記回転軸31に沿って流失するという現象を有効に減らすことができる。
【0073】
本実施例において、回転軸31は他に突出部315を有し、前記突出部315は前記回転軸31の内端面313に突設され、前記外凸部32は結合または一体成形によって前記回転軸31の突出部315に連接される。また、前記突出部315の高度Hは前記外凸部32の厚みTより大きく形成することができ、さらに前記外凸部32と前記回転軸31の内端面313は間隔を有し、前記外凸部32と前記回転軸31の内端面313の間には含油空間S1が形成されるため、潤滑油は前記外凸部32と前記第二軸受2の第二内表面21の間の動圧隙間Gに比較的に簡単かつ順調に補充することができる。また、好ましくは、前記回転軸31の内端面313は前記第二導流斜面26に半径方向に位置合わせることができるため、前述した潤滑油補充の効果はさらに順調になる。
【0074】
本実施例において、前記複数個の動圧溝5は選択的に前記外凸部32の第一軸方向表面321および第二軸方向表面322に設けることができ、さらに前記複数個の動圧溝5は例えば人文字の形に形成することもできるが、必ずしもこの限りではない。
【0075】
前記防漏リング7は前記第一軸受1と結合することができ、そして前記第二軸受2の外表面24を被覆することができるため、潤滑油の漏れを防止することができるとともに、前記第二軸受2の固定を輔助することができる。本実施例において、前記防漏リング7は遮蔽盤7aと挿入部7bを有し、前記遮蔽盤7aは概ね半径方向に延伸する環状盤からなり、前記遮蔽盤7aは挿通孔71を有し、前記回転軸31は前記挿通孔71を貫通し、そして前記遮蔽盤7aは前記防漏環状凹部314に半径方向に位置合わせることができる。その中に、前記挿通孔71の径幅D7は前記軸孔22の孔径D2より大きいため、前記回転軸31は前記防漏リング7に摩擦することがなく、そして前記挿通孔71の径幅D7は好ましくは小於前記第一導流斜面25と前記外表面24が連接する部位の径幅D6より小さいため、前記防漏リング7によって前記第一導流斜面25に沿って流出する潤滑油を止めることができる。
【0076】
また、前記遮蔽盤7aは斜面72を有し、前記斜面72は前記挿通孔71に隣接するとともに、前記第二軸受2に向くように形成され、前記遮蔽盤7aの厚みは前記挿通孔71に向かって次第に減るように形成されるため、前記斜面72と前記第二軸受2の外表面24の間には断油空間S2が形成される。このように、潤滑油が前記第一導流斜面25に沿って前記第二軸受2の上端まで流れた時、持続的に前記断油空間S2に流れ込んで前記防漏リング7の挿通孔71から流出し難くなる。前記挿入部7bは前記遮蔽盤7aの外周に連接され、そして概ね軸方向に延伸するように形成されるため、前記防漏リング7は前記挿入部7bによって前記第一軸受1と前記第二軸受2の間に挿入することができ、さらに前記挿入部7bはしまりばめで前記第一軸受1の環壁11に嵌合され、そして好ましくは連接部の外端においてレーザー溶接Wを行なうことにより、前記防漏リング7が前記第一軸受1に堅固に結合されることができるとともに、兼ねて前記第二軸受2の位置決めを補助することができる。
【0077】
以上により、本発明の軸受システムによれば、その回転部材が回転する時、前記外凸部と前記二つの軸受の間においてそれぞれ動圧によって油膜が生じられるため、回転軸の回転の順調度を維持することができるだけではなく、さらに前記二つの油膜によって回転軸の軸方向変位を抑制するとともに、前記外凸部が前記二つの軸受にぶつかるのを防止することができ、これにより、作動時のノイズと振動を有効に減らすことができるため、前記軸受システムを取り付けたファンまたはモーターの品質を高めることができる。
【0078】
また、言い加えると、本発明の軸受システムは予め組立てを完成し、そして後続においてファンまたはモーターに迅速に組み立てることができ、さらにその回転部材の回転軸によってファンまたはモーターの基座に取り付けることができるため、ファンまたはモーターの組立の効率を高めることができる。
【0079】
本発明は、その精神と必須の特徴事項から逸脱することなく他のやり方で実施することができる。従って、本明細書に記載した好ましい実施形態は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0080】
1 第一軸受
11 環壁
12 軸方向端部
121 第一内表面
13 軸孔
14 収容部
141 底面
2 第二軸受
21 第二内表面
22 軸孔
23 収容部
231 底面
24 外表面
25 第一導流斜面
26 第二導流斜面
3 回転部材
31 回転軸
311 円周面
312 外端面
313 内端面
314 防漏環状凹部
315 突出部
32 外凸部
321 第一軸方向表面
322 第二軸方向表面
4 支持部
41 内周面
5 動圧溝
6 環状溝
7 防漏リング
7a 遮蔽盤
7b 挿入部
71 挿通孔
72 斜面
B1 底部
B2 底端
C 回転軸線
D1 外径
D2,D3 孔径
D4,D5,D6,D7 径幅
G 動圧隙間
H 高度
H1 軸方向高度
H2 軸方向高度
S 間隔空間
S1 含油空間
S2 断油空間
T 厚み
W レーザー溶接
9 ファン
91 軸座
92 軸受システム
921 軸筒部
922 含油軸受
923 密封栓
924 耐摩耗部材
93 ローター
931 回転軸
932 係止部材
933 ホイール
934 羽根
935 磁性部材
94 ステータ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10