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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
A61F13/56 110
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020131578
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028262
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-066517(JP,A)
【文献】特開2017-064039(JP,A)
【文献】特開2002-065746(JP,A)
【文献】特開2018-121863(JP,A)
【文献】特開2009-268687(JP,A)
【文献】特開2004-290602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に前側領域と後側領域とこれらの間に位置する中間領域とを有し、吸収体が配された本体部と、
前記本体部の中間領域から幅方向の外方に延出したウィング部とを有する吸収性物品であって、
前記ウィング部は、肌面側の第1シートと外面側の第2シートとを有し、前記第1シートと前記第2シートが接着部で互いに接合され、
前記ウィング部の前記本体部からの幅方向の延出長さの半分の地点を通り前後方向に延びる仮想線上にあり、前記仮想線が前記ウィング部と重なる部分の前後方向の中間点をウィング中心として、前記ウィング部は前記ウィング中心より前側部分の前側半部と前記ウィング中心より後側部分の後側半部とに区分され、
前記接着部は、前後方向に線状に延び、幅方向に複数列配置されたパターンを有し、
前記ウィング部の前側半部における前記接着部の密度が、前記ウィング部の後側半部における前記接着部の密度よりも高いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前後方向に前側領域と後側領域とこれらの間に位置する中間領域とを有し、吸収体が配された本体部と、
前記本体部の中間領域から幅方向の外方に延出したウィング部とを有する吸収性物品であって、
前記ウィング部は、肌面側の第1シートと外面側の第2シートとを有し、前記第1シートと前記第2シートが接着部で互いに接合され、
前記ウィング部の前記本体部からの幅方向の延出長さの半分の地点を通り前後方向に延びる仮想線上にあり、前記仮想線が前記ウィング部と重なる部分の前後方向の中間点をウィング中心として、前記ウィング部は前記ウィング中心より前側部分の前側半部と前記ウィング中心より後側部分の後側半部とに区分され、
前記接着部は、前後方向に線状に延び、幅方向に複数列配置されたパターンを有し、
前記ウィング部の前側半部における単位面積当たりの前記接着部の接着剤塗布量が、前記ウィング部の後側半部における単位面積当たりの前記接着部の接着剤塗布量よりも多いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
前後方向に前側領域と後側領域とこれらの間に位置する中間領域とを有し、吸収体が配された本体部と、
前記本体部の中間領域から幅方向の外方に延出したウィング部とを有する吸収性物品であって、
前記ウィング部は、肌面側の第1シートと外面側の第2シートとを有し、前記第1シートと前記第2シートが溶着部で互いに接合され、
前記ウィング部の前記本体部からの幅方向の延出長さの半分の地点を通り前後方向に延びる仮想線上にあり、前記仮想線が前記ウィング部と重なる部分の前後方向の中間点をウィング中心として、前記ウィング部は前記ウィング中心より前側部分の前側半部と前記ウィング中心より後側部分の後側半部とに区分され、
前記溶着部は、前後方向に線状に延び、幅方向に複数列配置されたパターンを有し、
前記ウィング部の前側半部における前記溶着部の密度が、前記ウィング部の後側半部における前記溶着部の密度よりも高いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
前記接着部または前記溶着部は、前記前側半部から前記後側半部にかけて連続した線状に設けられ、前記前側半部における線幅の平均値が、前記後側半部における線幅の平均値よりも大きい請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前後方向に延びる線状の前記接着部または前記溶着部は、前記前側半部において幅方向に並んで配置される平均本数が、前記後側半部において幅方向に並んで配置される平均本数よりも多い請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記本体部は、前記吸収体の肌面側に配されたトップシートと、前記吸収体の外面側に配されたバックシートと、前記トップシートの幅方向の両側に配されたサイドシートとを有し、
前記バックシートと前記サイドシートは前記本体部の中間領域から幅方向の外方に延出し、前記サイドシートが前記第1シートを形成し、前記バックシートが前記第2シートを形成する請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記ウィング部の前後方向の中心は、前記本体部の前後方向の中心よりも前側に位置する請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿パッド(軽失禁パッドを含む)や生理用ナプキン等の吸収性物品に関するものであり、特に、パンツやショーツ等の下着等に取り付けて使用することができる吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収体が配された本体部と、本体部から幅方向の外方に延出したウィング部とを有する吸収性物品が知られている(例えば、特許文献1~3)。このようなウィング部を有する吸収性物品は通常、装着の際、ウィング部を吸収性物品の外面側に折り返してパンツやショーツ等の下着に取り付けて用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-210330号公報
【文献】特開2008-136611号公報
【文献】特開2007-014650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウィング部を有する吸収性物品は、下着へ取り付ける際にウィング部が縒れたりせず安定して平面状態が維持されることが望ましく、これによりウィング部の下着への取り付け作業が容易になる。そして、ウィング部が下着に取り付けられた後は、ウィング部の下着への取り付け状態が安定して維持されることが好ましい。さらに、ウィング部によって着用者が違和感を覚えないことが好ましい。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウィング部を有する吸収性物品であって、ウィング部の下着への取り付けが容易であるとともに、ウィング部を安定して下着に取り付けることができ、着用感が良好な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明の吸収性物品とは、前後方向に前側領域と後側領域とこれらの間に位置する中間領域とを有し、吸収体が配された本体部と、本体部の中間領域から幅方向の外方に延出したウィング部とを有する吸収性物品であって;ウィング部は、肌面側の第1シートと外面側の第2シートとを有し、第1シートと第2シートが接着部で互いに接合され;ウィング部の本体部からの幅方向の延出長さの半分の地点を通り前後方向に延びる仮想線上にあり、仮想線がウィング部と重なる部分の前後方向の中間点をウィング中心として、ウィング部はウィング中心より前側部分の前側半部とウィング中心より後側部分の後側半部とに区分され;ウィング部の前側半部における接着部の密度が、ウィング部の後側半部における接着部の密度よりも高いところに特徴を有する。ウィング部の接着部は、ウィング部の前側半部における単位面積当たりの接着部の接着剤塗布量が、ウィング部の後側半部における単位面積当たりの接着部の接着剤塗布量よりも多くなるように形成されていてもよい。また、接着部の代わりに溶着部により第1シートと第2シートが接合され、ウィング部の前側半部における溶着部の密度が、ウィング部の後側半部における溶着部の密度よりも高くなるように形成されていてもよい。
【0007】
本発明の吸収性物品は、上記のようにウィング部に接着部または溶着部が形成されることにより、ウィング部の前側半部の剛性を高く、後側半部の剛性を低くすることができる。そのため、ウィング部を吸収性物品の外面側に折り返して下着に固定させる際に、剛性の高い部分によってウィング部が縒れにくくなり、ウィング部を下着に取り付ける作業が容易になるとともに、剛性の低い部分は下着の動きや歪みに対する追従性が高まるため、ウィング部を安定して下着に取り付けることができる。また、ウィング部の後側半部の剛性が低くなることで、着座状態でウィング部が着用者の股間や臀部に強く当たりにくくなり、吸収性物品の着用感を良好なものとすることができる。
【0008】
接着部または溶着部は、前後方向に線状に延び、幅方向に複数列配置されたパターンを有することが好ましい。このようなパターンで接着部または溶着部を設けることにより、吸収性物品を下着に取り付ける際、ウィング部を吸収性物品の外面側に折り返しやすくなる。また、ウィング部全体の剛性が高くなりすぎず、吸収性物品を下着に取り付けた際に、ウィング部の後側半部だけでなく前側半部も着用者の股間に強く当たりにくくなり、吸収性物品の着用感が良好となる。
【0009】
接着部または溶着部は、前側半部から後側半部にかけて連続した線状に設けられ、前側半部における線幅の平均値が、後側半部における線幅の平均値よりも大きいことが好ましい。このように接着部または溶着部を設けることにより、前側半部と後側半部の境目でウィング部の剛性が急激に変化せず、ウィング部の取り扱い性が良好となる。
【0010】
本体部は、吸収体の肌面側に配されたトップシートと、吸収体の外面側に配されたバックシートと、トップシートの幅方向の両側に配されたサイドシートとを有し、バックシートとサイドシートは本体部の中間領域から幅方向の外方に延出し、サイドシートが第1シートを形成し、バックシートが第2シートを形成していることが好ましい。このようにウィング部が構成されることにより、本体部とウィング部の境目付近の剛性が高くならず、ウィング部を吸収性物品の外面側に折り返してパンツやショーツ等の下着に固定させた際に、ウィング部の折り返し部に着用者の肌が当たっても、着用者が違和感を覚えにくくなる。また、サイドシートによって本体部の肌面側の幅方向の両側に防漏フラップを形成することができ、尿等の横漏れを防止することができる。
【0011】
ウィング部の前後方向の中心は、本体部の前後方向の中心よりも前側に位置することが好ましい。このようにウィング部が設けられることにより、着座状態でウィング部の前側半部が着用者の股間部や臀部にさらに当たりにくくなり、吸収性物品の着用感が良好となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸収性物品は、ウィング部の下着への取り付け作業を容易に行うことができるとともに、ウィング部を安定して下着に取り付けることができ、しかも着座状態でウィング部が着用者の股間や臀部に強く当たりにくくなるため、着用感が良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の吸収性物品の一例を表し、吸収性物品を肌面側から見た平面図を表す。
図2図1に示した吸収性物品を外面側から見た平面図を表す。
図3図1および図2に示した吸収性物品のIII-III断面図を表す。
図4図1に示した吸収性物品のウィング部の拡大平面図を表す。
図5】ウィング部の接着部または溶着部の形成パターンの一例を表す。
図6】ウィング部の接着部または溶着部の形成パターンの他の一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の吸収性物品は、吸収体が配された本体部と本体部から幅方向の外方に延出したウィング部とを有するものであり、このウィング部を利用して吸収性物品をパンツやショーツ等の下着に取り付けて使用することができるものである。本発明の吸収性物品としては、尿パッド(軽失禁パッドを含む)や生理用ナプキン等が挙げられる。以下、本発明の吸収性物品について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明は図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0015】
図1図4には、本発明の吸収性物品の一例を示した。図1は、吸収性物品を肌面側から見た平面図を表し、図2は、図1に示した吸収性物品を外面側から見た平面図を表し、図3は、図1図2に示した吸収性物品のIII-III断面図を表し、図4は、図1に示した吸収性物品のウィング部の拡大平面図を表す。なお図面では、矢印xが幅方向、矢印yが前後方向を表し、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zを表す。
【0016】
吸収性物品において、前後方向yは、吸収性物品を装着した際に着用者の股間の前後方向に延びる方向に相当し、幅方向xは、吸収性物品と同一面上にあり前後方向と直交する方向を意味し、吸収性物品を装着した際の着用者の左右方向に相当する。吸収性物品はまた、厚み方向zに対して肌面側と外面側を有する。肌面側とは、吸収性物品を装着した際の着用者の肌に向く側を意味し、外面側とは、吸収性物品を装着した際の着用者とは反対に向く側を意味する。吸収性物品の外面側は、吸収性物品を使用する際にパンツやショーツ等の下着に対向する面(衣類対向面)となり、例えば、バックシートの外面側が衣類対向面に相当する。
【0017】
吸収性物品1は、吸収体6が配された本体部2と、本体部2から幅方向xの外方に延出したウィング部3とを有する。本体部2は、吸収性物品を装着した際に着用者の股間に当てられる部分であり、着用者から排泄された尿等を吸収するように機能する。本体部2は、前後方向yに長い形状で形成されることが好ましく、例えば、略長方形、長円形、砂時計形、羽子板形等に形成される。ウィング部3は、本体部2から幅方向xの外方に延出した部分であり、吸収性物品1を装着する際に、ウィング部3を吸収性物品1の外面側に折り返してパンツやショーツ等の下着に固定するために使用される。ウィング部3は、本体部2から延出し、本体部2の幅方向xの一方側と他方側にそれぞれ設けられる。吸収性物品1は、ウィング部3で最も幅広に形成されることが好ましい。図1および図2では、本体部2とウィング部3の境界線が一点鎖線で表されている。
【0018】
本体部2は、前後方向yに前側領域Fと後側領域Rとこれらの間に位置する中間領域Mとを有する。前側領域Fは、本体部2の前側端を含み、前後方向yに所定の長さを有するように形成され、後側領域Rは、本体部2の後側端を含み、前後方向yに所定の長さを有するように形成される。中間領域Mは、前側領域Fと後側領域Rの間に位置し、前側領域Fと後側領域Rに隣接して形成される。中間領域Mは、本体部2からウィング部3が延在する前後方向yの範囲の領域に相当する。中間領域Mは、吸収性物品1の前後方向yの相対位置として前側端を0%とし後側端を100%としたときに、20%~80%の範囲内にあることが好ましい。
【0019】
ウィング部3は、吸収性物品1の外縁形状に基づき、例えば次のように規定される。ウィング部3が幅方向xの最も外方に延出する箇所よりも前側において、吸収性物品1の外縁が最も幅方向xの内方に位置する最も後方の箇所が、ウィング部3の基部前側端(すなわち本体部2とウィング部3の境界線の前側端)に相当し、ウィング部3が幅方向xの最も外方に延出する箇所よりも後側において、吸収性物品1の外縁が最も幅方向xの内方に位置する最も前方の箇所が、ウィング部3の基部後側端(すなわち本体部2とウィング部3の境界線の後側端)に相当する。ただし、ウィング部3の基部前側端は吸収性物品1の前側縁には位置せず、ウィング部3の基部後側端は吸収性物品1の後側縁には位置しない。本体部2とウィング部3は、ウィング部3の基部前側端と基部後側端とを結ぶ直線により区分される。ウィング部3の基部前側端の近傍と基部後側端の近傍では、吸収性物品1の外縁が前後方向yに平行に延びるか、吸収性物品1の外縁が幅方向xの内方に凸となるように形成されることが好ましい。
【0020】
ウィング部3は、吸収性物品1の前後方向yの相対位置として前側端を0%とし後側端を100%としたときに、基部前側端と基部後側端が20%~80%の範囲内に位置することが好ましい。ウィング部3の前後方向yの長さ(基部前側端から基部後側端の前後方向yの長さ)は、吸収性物品1の前後方向yの長さの10%以上であることが好ましく、15%以上がより好ましく、また50%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。
【0021】
吸収性物品1は、ウィング部3が幅方向xの最も外方に延在する部分で、各ウィング部3の幅方向xの長さが、本体部2の幅方向xの長さの20%以上60%以下となるように形成されることが好ましく、30%以上50%以下がより好ましい。なお、ここで説明したウィング部3の幅方向xの長さは、ウィング部3が本体部2から延出する長さを意味する。
【0022】
図4に示すように、ウィング部3は、ウィング中心3Cを有し、ウィング中心3Cよりも前側部分の前側半部3Fと、ウィング中心3Cよりも後側部分の後側半部3Rとに区分される。ウィング中心3Cは次のように位置決めされる。すなわち、ウィング部3において、ウィング部3が本体部2から幅方向xに延出する長さの半分の地点を通り前後方向yに延びる仮想線13上にあり、仮想線13がウィング部3と重なる部分の前後方向yの中間点が、ウィング中心3Cとなる。
【0023】
本体部2は、トップシート4とバックシート5を有し、これらの間に吸収体6が配されていることが好ましい。トップシート4は吸収性物品を使用の際に着用者側に位置するシートであり、吸収体6の肌面側に配される。トップシート4は液透過性であることが好ましい。バックシート5は、吸収性物品を使用の際に着用者とは反対側に位置するシートであり、吸収体6の外面側に配される。バックシート5は液不透過性であることが好ましい。着用者から排泄された尿等はトップシート4を透過して吸収体6により収容され、バックシート5は排泄物が外部へ漏れるのを防ぐ。
【0024】
液透過性のトップシート4としては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシート4として、織布、編布、有孔プラスチックフィルム等を用いてもよい。
【0025】
液不透過性のバックシート5としては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。バックシート5は2以上のシートの積層体から構成されていてもよく、例えば、不織布とプラスチックフィルムとの積層体を用いてもよい。この場合、積層体を構成する少なくとも1つのシートが液不透過性であればよく、また積層体を構成する各シートは同じ大きさであっても異なる大きさであってもよい。液不透過性には撥水性の意味も含まれる。
【0026】
吸収体6は、尿等の排泄物を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。吸収体6としては、例えば、吸収性材料を所定形状に成形した成形体を用いることができ、当該成形体は、紙シート(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や液透過性不織布等の被覆シートで覆われてもよい。吸収性材料としては、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維や、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。また、吸水性材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱融着性繊維が含まれてもよい。これらの熱融着性繊維は、尿等との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理がされていてもよい。吸収性材料は、吸収容量を高める点から、少なくとも吸水性樹脂を含むことが好ましい。
【0027】
吸収体6はシート状吸収体であってもよい。シート状吸収体としては、不織布シート間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように形成されたものが挙げられる。このように形成されたシート状吸収体は、不織布シート間に吸水性樹脂を有するため、高い吸収容量を実現できるとともに、不織布シート間にパルプ繊維を有しないため、嵩張らず薄型に形成することができる。
【0028】
シート状吸収体は、吸収性材料として吸水性繊維を用いたものであってもよい。この場合もまた、シート状吸収体が嵩張らず薄型に形成される。吸水性繊維としては、プロトン化または塩形成したカルボキシル基を含有する繊維が挙げられる。例えば、アクリル繊維を加水分解して、アクリル繊維に含まれるニトリル基をカルボキシル基に変換することにより、吸水性繊維を得ることができる。このとき、吸水性繊維に含まれるカルボキシル基は、アルカリ金属塩またはアンモニア塩を形成していることが好ましい。また吸水性繊維は、親水性繊維をアクリル酸に浸漬し、繊維表面でアクリル酸を析出させることにより製造することができる。
【0029】
吸収体6の形状(平面形状)は特に限定されない。吸収体6の形状としては、例えば、略長方形、長円形、砂時計形、羽子板形等が挙げられる。
【0030】
本体部2には、トップシート4の幅方向xの両側にサイドシート9が設けられることが好ましい。サイドシート9によって本体部2の肌面側の幅方向xの両側に防漏フラップ10を形成することができ、トップシート4上に排泄された尿等の横漏れを防止することができる(図3を参照)。この場合、サイドシート9は、サイド接合部12でトップシート4の肌面側に接合され、サイド接合部12よりも幅方向xの内方部分が防漏フラップ10として機能する。サイドシート9のサイド接合部12よりも内方部分には起立用弾性部材11が設けられることが好ましく、起立用弾性部材11の収縮力によりサイドシート9の幅方向xの内方部分が着用者の肌に向かって立ち上がりやすくなる。サイドシート9は、トップシート4よりも幅方向xの外方に延在するように設けられることが好ましい。サイドシート9は液不透過性であることが好ましく、バックシート5に使用可能なシート材料から構成することができる。
【0031】
本体部2には、バックシート5と吸収体6との間に台紙7が設けられていることが好ましい。台紙7は、吸収性物品1(特に本体部2)の形崩れを防止するために設けられる。台紙7は、不織布や紙(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)等から構成することができ、液透過性であっても液不透過性であってもよい。
【0032】
台紙7は、その外縁の全体が、本体部2の外縁よりも内側に位置することが好ましい。従って、ウィング部3には台紙7が存在しないことが好ましい。また、台紙7の外縁は本体部2の外縁の近傍に位置することが好ましく、例えば本体部2の外縁から25mm以内にあることが好ましく、20mm以内にあることがより好ましく、15mm以内にあることがさらに好ましい。
【0033】
台紙7は、吸収体6の前側縁よりも前方に延在するとともに、吸収体6の後側縁よりも後方に延在することが好ましい。このように本体部2が形成されていれば、本体部2の前後方向yの両端部での保形性が確保されるとともに、本体部2の前側縁近傍や後側縁近傍に吸収体6の非存在部分が形成されることによって、吸収性物品1を着用者の下着から取り外す際に、吸収体6の存在部分に触れずに吸収性物品1を下着から取り外すことが可能となる。吸収体6の前後方向yの長さは、例えば、台紙7の前後方向yの長さの60%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、また95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。台紙7はまた、吸収体6の幅方向の外縁よりも外方に延在することが好ましい。これにより、吸収体6の幅方向の端部が歪んだり折れたりしにくくなり、吸収体6の吸収性能が安定して発揮されやすくなる。
【0034】
吸収性物品1の外面側には粘着部8が設けられることが好ましい(図2を参照)。粘着部8は、ウィング部3の外面側に設けられることが好ましく、さらに本体部2の外面側に設けられてもよい。吸収性物品1の外面側に粘着部8を設けることにより、吸収性物品1をパンツやショーツ等の下着に安定して固定することができる。
【0035】
図3に示すように、ウィング部3は、複数のシート部材が積層されて構成されている。具体的には、ウィング部3は肌面側の第1シート21と外面側の第2シート22を有し、第1シート21と第2シート22が互いに接合されている。第1シート21と第2シート22は、本体部2を構成するシート部材が、本体部2から幅方向xの外方に延在して形成されたり、本体部2にウィング部用シートを取り付けることにより形成される。前者の場合、第1シート21と第2シート22は、トップシートやバックシートやサイドシートから構成することができる。後者の場合、ウィング部用シートは、トップシートやバックシートに適用可能なシートから構成することができる。第1シート21と第2シート22は、一方を本体部2を構成するシート部材から構成し、他方をウィング部用シートから構成することもできる。なお、ウィング部3には吸収体は配されないことが好ましい。
【0036】
第1シート21と第2シート22は、本体部2を構成するシート部材から構成されることが好ましい。これにより、本体部2とウィング部3の境目付近の剛性が高くならず、ウィング部3を吸収性物品1の外面側に折り返してパンツやショーツ等の下着に固定させた際に、ウィング部3の折り返し部に着用者の肌が当たっても、着用者が違和感を覚えにくくなる。この場合、本体部2を構成するシート部材が、本体部2の中間領域から幅方向xの外方に延出し、第1シート21または第2シート22を形成することとなる。第1シート21と第2シート22の好ましい組み合わせとしては、トップシートとバックシートの組み合わせや、サイドシートとバックシートの組み合わせが挙げられ、好ましくはサイドシートが第1シート21を形成し、バックシートが第2シート22を形成する。図面に示した吸収性物品1では、サイドシート9が第1シート21を形成し、バックシート5が第2シート22を形成している。なお、トップシートが第1シートを形成する場合、吸収性物品1にはサイドシートが設けられなくてもよい。
【0037】
ウィング部3は、第1シート21と第2シート22が接着部23や溶着部24で互いに接合されている。接着部23は、第1シート21および/または第2シート22に接着剤を塗布することより形成され、第1シート21と第2シート22を接着剤で互いに接合したときの接合部に相当する。溶着部24は、第1シート21と第2シート22をヒートシールや超音波溶着により溶着することにより形成され、溶着によって第1シート21と第2シート22が互いに接合したときの接合部に相当する。
【0038】
図5および図6には、ウィング部3の接着部23または溶着部24の形成パターンの例を示した。吸収性物品1では、ウィング部3の前側半部3Fにおける接着部23の密度が、ウィング部3の後側半部3Rにおける接着部23の密度よりも高く形成されている、または、ウィング部3の前側半部3Fにおける単位面積当たりの接着部23の接着剤塗布量が、ウィング部3の後側半部3Rにおける単位面積当たりの接着部23の接着剤塗布量よりも多く形成されている、または、ウィング部3の前側半部3Fにおける溶着部24の密度が、ウィング部3の後側半部3Rにおける溶着部24の密度よりも高く形成されている。このようにウィング部3が形成されていれば、ウィング部3は前側半部3Fの剛性が高く、後側半部3Rの剛性が低く形成される。
【0039】
ウィング部3の剛性が高くなると、ウィング部3を吸収性物品1の外面側に折り返して下着に固定させる際に、ウィング部3が縒れることなく平面状のまま下着に固定させることが容易になる。一方、ウィング部3の剛性が低くなると、ウィング部3を吸収性物品1の外面側に折り返して下着に固定させた際に、下着の動きや歪みに対する追従性が高まる。そのため、ウィング部3の下着への固定状態が好適に維持されやすくなる。また、ウィング部3の剛性が低くなると、ウィング部3が下着に固定された部分で着用者が違和感を覚えにくくなる。特に、ウィング部3の後側半部3Rの剛性が低くなることで、着座状態でウィング部3が着用者の股間部や臀部に強く当たりにくくなり(換言すれば、着座状態でウィング部3の前側半部3Fが着用者の股間部や臀部に当たりにくくなり)、吸収性物品1の着用感が良好となる。そのため、吸収性物品1は上記のようにウィング部3が形成されることにより、ウィング部3の下着への取り付け作業が容易になるとともに、ウィング部3を安定して下着に取り付けることができ、しかも着座状態でウィング部3が着用者の股間や臀部に強く当たりにくくなり、着用感が良好なものとなる。
【0040】
上記のように形成されたウィング部3は、製造の際に、ウィング部3を本体部との境目付近で折り返すことが容易になる。具体的には、後側を先頭に吸収性物品1を製造ライン上を搬送させながらウィング部3にガイド部材を当てると、ガイド部材が剛性の低い後側半部3Rに当たることにより、ウィング部3が本体部2からスムーズに立ち上がり、本体部2とウィング部3の境目付近にきれいに折り目が形成されやすくなる。
【0041】
ウィング部3の前側半部3Fの接着部23の密度は、前側半部3Fの接着部23の面積、すなわち接着剤が塗布された部分の面積を、前側半部3Fの面積で除することにより求めることができる。ウィング部3の後側半部3Rの接着部23の密度も同様にして求めることができる。接着部23の面積は、第1シートと第2シートを剥がして、第1シートまたは第2シートにトナー(炭素粉末)を散布し、トナーが付着して黒く可視化された部分の面積を測ることにより求めることができる。
【0042】
ウィング部3の前側半部3Fの単位面積当たりの接着部23の接着剤塗布量は、前側半部3Fに塗布された接着剤の重量を、前側半部3Fの面積で除することにより求めることができる。ウィング部3の後側半部3Rの単位面積当たりの接着部23の接着剤塗布量も同様にして求めることができる。接着部23の接着剤塗布量は、ウィング部3の前側半部3Fまたは後側半部3Rを切り出し、切り出し片から溶剤で接着剤を溶かし出し、そこから溶剤を留去した残留物の重さを測ることにより求めることができる。あるいは、製造時の接着剤使用量から接着剤塗布量を求めることもできる。
【0043】
ウィング部3の前側半部3Fの溶着部24の密度は、前側半部3Fの溶着部24の面積を前側半部3Fの面積で除することにより求めることができる。ウィング部3の後側半部3Rの溶着部24の密度も同様にして求めることができる。ウィング部3の溶着部24の面積は、ウィング部3の第1シート側または第2シート側からの外観を画像化し、溶着部24の面積を測ることにより求めることができる。
【0044】
前側半部3Fと後側半部3Rにおける接着部23または溶着部24の配置態様は特に限定されない。前側半部3Fでは、接着部23または溶着部24が全面に設けられていてもよい。接着部23または溶着部24は所定のパターンで配置されていてもよい。接着部23は、例えば、ビード法、カーテンスプレー法、オメガコーティング法、スパイラルコーティング法、パターンコート等の公知の接着剤の塗布方法により形成することができる。
【0045】
接着部23または溶着部24は、図5および図6に示すように、前後方向yに線状に延び、幅方向xに複数列配置されたパターンを有することが好ましい。すなわち、接着部23または溶着部24は、前後方向yに延びるストライプ状のパターンを有することが好ましい。このようなパターンで接着部23または溶着部24を設けることにより、吸収性物品1を下着に取り付ける際、ウィング部3を吸収性物品1の外面側に折り返しやすくなる。また、ウィング部3全体の剛性が高くなりすぎず、吸収性物品1を下着に取り付けた際に、ウィング部3の後側半部3Rだけでなく前側半部3Fも着用者の股間に強く当たりにくくなり、吸収性物品1の着用感が良好となる。
【0046】
前後方向yに延びる線状の接着部23または溶着部24の少なくとも一部は、ウィング部3を前後方向yに横切るように配されていることが好ましい。例えば前後方向yに延びる線状の接着部23または溶着部24の1/3以上(本数基準)がそのように配されていることが好ましく、1/2以上がそのように配されていることがより好ましく、2/3以上がそのように配されていることがさらに好ましく、全部がそのように配されていることが特に好ましい。
【0047】
前後方向yに延びる線状の接着部23または溶着部24は、例えば図5に示すように、前側半部3Fから後側半部3Rにかけて連続した線状に設けられ、前側半部3Fにおける線幅の平均値が後側半部3Rにおける線幅の平均値よりも大きくなるように設けられることが好ましい。このように接着部23または溶着部24を設けることにより、前側半部3Fと後側半部3Rの境目でウィング部3の剛性が急激に変化せず、ウィング部3の取り扱い性が良好となる。接着部23または溶着部24の前側半部3Fまたは後側半部3Rにおける線幅の平均値は、各線状の接着部23または溶着部24の前側半部3Fまたは後側半部3Rにおける面積と長さを求め、それに基づき全ての線状の接着部23または溶着部24の前側半部3Fまたは後側半部3Rにおける面積の総和と長さの総和を求め、当該面積の総和を当該面積の長さで除することにより求めることができる。
【0048】
前後方向yに延びる線状の接着部23または溶着部24は、例えば図6に示すように、前側半部3Fにおいて幅方向xに並んで配置される平均本数が、後側半部3Rにおいて幅方向xに並んで配置される平均本数よりも多くなるように設けてもよい。この場合、1本の線状の接着部23または溶着部24が前側半部3Fの前後方向yの全体に延びる場合は1本と数え、前側半部3Fの前後方向yの1/2の長さで延びる場合は0.5本と数えることにより、前側半部3Fと後側半部3Rにおけるそれぞれの線状の接着部23または溶着部24の平均本数を求めることができる。このように接着部23または溶着部24を設ければ、前側半部3Fの剛性と後側半部3Rの剛性または柔軟性を任意に調整しやすくなり、ウィング部3の前側半部3Fと後側半部3Rに所望の性状を付与しやすくなる。
【0049】
前後方向yに延びる線状の接着部23または溶着部24の線幅やピッチは、第1シート21と第2シート22の接合強度やウィング部3の剛性または柔軟性を考慮して適宜設定すればよい。線状の接着部23または溶着部24の線幅は、例えば0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上がさらに好ましく、また6mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、4mm以下がさらに好ましい。線状の接着部23または溶着部24のピッチ(隣接する線状の接着部23または溶着部24の中心間距離)は、例えば、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、また15mm以下が好ましく、12mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
【0050】
接着部23を形成する接着剤の種類は特に限定されないが、ホットメルト接着剤を用いることが製造上簡便である。接着剤は、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤や;スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系エラストマーをベースポリマーとして含むことが好ましい。また、ベースポリマーとして、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA);ポリエステル;アクリル系エラストマー;ポリオレフィン系エラストマー等を用いてもよい。接着剤には、粘着付与剤、軟化剤、ワックス、安定剤等が含まれていてもよい。
【0051】
ウィング部3の前側半部3Fまたは後側半部3Rにおける単位面積当たりの接着部23の接着剤塗布量は、1g/m2~30g/m2の間で適宜設定することが好ましい。当該接着剤塗布量は、3g/m2以上がより好ましく、5g/m2以上がさらに好ましく、また25g/m2以下がより好ましく、20g/m2以下がさらに好ましい。
【0052】
ウィング部3の前後方向の中心、すなわちウィング中心3Cは、本体部2の前後方向yの中心よりも前側に位置することが好ましい。このようにウィング部3が設けられることにより、着座状態でウィング部3の前側半部3Fが着用者の股間部や臀部にさらに当たりにくくなり、吸収性物品1の着用感が良好となる。
【0053】
図1および図2に示すように、吸収体6は、前後方向yに対してウィング部3と重なる部分において、幅方向xの両側縁が直線状に形成されていることが好ましい。吸収体6がこのような形状に形成されていれば、直線状に形成された吸収体6の幅方向xの両側縁に沿ってウィング部3を吸収性物品1の外面側に折り返しやすくなる。そのため、ウィング部3の下着への取り付け作業が容易になる。同様の観点から、台紙7は、前後方向yに対してウィング部3と重なる部分において、幅方向xの両側縁が直線状に形成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0054】
1:吸収性物品
2:本体部
3:ウィング部、3C:ウィング中心、3F:前側半部、3R:後側半部
4:トップシート
5:バックシート
6:吸収体
7:台紙
8:粘着部
9:サイドシート
10:防漏フラップ
13:仮想線
21:第1シート
22:第2シート
23:接着部
24:溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6