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特許7029504リードフレームおよびパワー系半導体装置の製造方法
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  • 特許-リードフレームおよびパワー系半導体装置の製造方法 図1
  • 特許-リードフレームおよびパワー系半導体装置の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】リードフレームおよびパワー系半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
H01L23/48 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020158292
(22)【出願日】2020-09-23
(62)【分割の表示】P 2016099374の分割
【原出願日】2016-05-18
(65)【公開番号】P2020202405
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504178812
【氏名又は名称】SHプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】矢田部 広利
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007363(JP,A)
【文献】特開2010-267730(JP,A)
【文献】特開2010-245417(JP,A)
【文献】特開2011-114223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0001620(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103515261(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0258922(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101866901(CN,A)
【文献】特開2006-210489(JP,A)
【文献】特開2010-114451(JP,A)
【文献】特開2012-82528(JP,A)
【文献】特開2007-287765(JP,A)
【文献】特開2007-227163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー系半導体装置用のリードフレームの製造方法であって、
リードフレーム素材に対して、所定の形状のプレス金型を用いて打ち抜き加工を行い、パッド部とリード部とを有するリードフレームパターンを形成し、かつ、所定の凹凸を形成する三次元加工を行わない第1のプレス加工工程と、
前記第1のプレス加工工程を終え、所定の凹凸が形成されていない前記リードフレーム素材の表面を部分的にマスキングテープで覆い、前記リードフレーム素材の一部に対してエッチング処理を施すことにより、前記リードフレーム素材の表面の一部に、十点平均粗さが2.0~6.0μmである凹凸を形成する表面処理工程と、
前記表面処理工程を終えた前記リードフレーム素材に対して、前記第1のプレス加工工程で用いたプレス金型とは形状の異なるプレス金型を用い、前記パッド部と前記リード部との間に所定の段差を形成する曲げ加工を行う第2のプレス加工工程と、
を備えるリードフレームの製造方法。
【請求項2】
前記第1のプレス加工工程の前に、前記リードフレーム素材の表面を部分的にマスキングテープで覆い、めっき処理を行うことにより、めっき層を前記リードフレーム素材の表面に部分的に形成するめっき処理工程をさらに備える
請求項1に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項3】
前記第2のプレス加工工程は、前記表面処理工程を終え樹脂で封止されていない前記リードフレーム素材に対して行う
請求項1または2に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項4】
リードフレーム素材に対して、所定の形状のプレス金型を用いて打ち抜き加工を行い、パッド部とリード部とを有するリードフレームパターンを形成し、かつ、所定の凹凸を形成する三次元加工を行わない第1のプレス加工工程と、
前記第1のプレス加工工程を終え、所定の凹凸が形成されていない前記リードフレーム素材の表面を部分的にマスキングテープで覆い、前記リードフレーム素材の一部に対してエッチング処理を施すことにより、前記リードフレーム素材の表面に、十点平均粗さが2.0~6.0μmである凹凸を形成する表面処理工程と、
前記表面処理工程を終えた前記リードフレーム素材に対して、前記第1のプレス加工工程で用いたプレス金型とは形状の異なるプレス金型を用い、前記パッド部と前記リード部との間に所定の段差を形成する曲げ加工を行う第2のプレス加工工程と、
を備える製造方法により得られたリードフレームを準備する工程と、
前記パッド部に半導体素子を搭載するダイボンディング工程と、
前記半導体素子の電極部と前記リード部とをワイヤで接続するワイヤボンディング工程と、
前記半導体素子と前記ワイヤとを樹脂で封止する樹脂封止工程と、
を備えるパワー系半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームを用いて製造される樹脂封止型の半導体装置では、封止材となる樹脂とリードフレームとの密着性(以下、「樹脂密着性」ともいう。)を向上させるために、リードフレームの表面に凹凸を形成する技術が知られている(たとえば、特許文献1および特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-218275号公報
【文献】特開平8-78606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年においては、たとえば自動車などの車載用途にパワー系の半導体素子をリードフレームに搭載して樹脂封止した半導体装置が提供されている。この種の半導体装置に用いられるリードフレームは、一般の電子デバイス(たとえばパーソナルコンピュータなど)用途の半導体装置に用いられるリードフレームに比べて、厚み寸法が格段に大きいものとなっている。具体的には、一般の電子デバイス用途の半導体装置のリードフレームの厚み寸法が0.15mm程度であるのに対して、パワー系半導体装置用のリードフレームの厚み寸法は0.5mm以上となっている。
【0005】
厚み寸法が0.5mm以上のリードフレームでは、樹脂密着性を向上させるために、専らその厚みを利用して凹凸を形成している。具体的には、リードフレーム素材に対して溝加工や潰し加工などの三次元加工を施すことにより凹凸を形成している。
【0006】
しかしながら、リードフレーム素材に三次元加工によって凹凸を形成する方法では、順送プレス加工法によってリードフレームを製造する場合に、プレスによる打ち抜き加工のためのステージの他に、三次元加工を行うステージを設ける必要がある。このため、プレス金型(順送金型)のコストが高くなってしまう。また、打ち抜き加工に加えて三次元加工を行うとなると、プレス金型を立ち上げる際に、三次元加工に起因するリードフレームの寸法的な狂いを金型の位置調整によって解消する必要がある。このため、金型の調整作業によって生産性の低下を招いてしまう。
【0007】
本発明の主な目的は、0.5mm以上の厚み寸法を有するリードフレーム素材を用いてリードフレームを製造する場合に、プレス金型のコスト低減や金型調整の時間短縮を図ることができるリードフレームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、0.5mm以上の厚み寸法を有するリードフレーム素材を用いてリードフレームを製造する、リードフレームの製造方法であって、
前記リードフレーム素材に対して、所定のリードフレームパターンを形成する打ち抜き加工を含み、かつ、所定の凹凸を形成する三次元加工を含まないプレス加工を施すプレス加工工程と、
前記リードフレーム素材に対して、化学的な表面処理を施すことにより、前記リードフレーム素材の表面に凹凸を形成する表面処理工程と、
を備えるリードフレームの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、0.5mm以上の厚み寸法を有するリードフレーム素材を用いてリードフレームを製造する場合に、プレス金型のコスト低減や金型調整の時間短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るリードフレームの構成例を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るリードフレームの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
<リードフレームの構成>
図1は本発明の実施形態に係るリードフレームの構成例を示す平面図である。
図示したリードフレーム1は、たとえば銅または銅合金からなるリードフレーム素材を用いて構成されるものである。リードフレーム素材の厚み寸法は、少なくとも0.5mmとする。このような肉厚のリードフレーム素材は、良好な放熱性が要求されるパワートランジスタやパワーICなどの半導体装置のリードフレームに用いられる。
【0013】
リードフレーム1は、半導体素子(半導体チップ)の搭載が予定されているダイパッド部2と、複数(図例では3つ)のリード部3a,3b,3cと、を備えている。ダイパッド部2は、平面視四角形(図例では長方形)に形成されている。ダイパッド部2の形状および寸法は、これに搭載される半導体素子の形状および寸法に応じて適宜設定または変更が可能である。ダイパッド部2には基準孔4が設けられている。ダイパッド部2の両側縁には連結部5a,5bが設けられ、この連結部5a,5bを介してダイパッド部2が他のダイパッド部(不図示)に連結されている。
【0014】
一方、リード部3a,3b,3cは、連結部6a,6bによって相互に連結されている。両側2つのリード部3a,3cはダイパッド部2と分離した状態で形成され、中央のリード部3bはダイパッド部2に一体につながった状態で形成されている。また、各々のリード部3a,3b,3cの一端部はフレーム部7に一体につながっている。フレーム部7には送り孔8が設けられている。
【0015】
上記構成からなるリードフレーム1を用いて半導体装置を製造する場合は、少なくとも3つの工程、すなわちダイボンディング工程と、ワイヤボンディング工程と、樹脂封止工程とを順に経る。ダイボンディング工程では、ダイパッド部2に半導体素子を搭載する。
ワイヤボンディング工程では、半導体素子の電極部とこれに対応するリード部3a,3cをそれぞれ金属細線からなるワイヤで接続する。樹脂封止工程では、半導体素子とワイヤを樹脂で封止する。
【0016】
<リードフレームの製造方法>
続いて、本発明の実施形態に係るリードフレームの製造方法について説明する。
まず、リードフレーム素材として、たとえば銅または銅合金からなる板状の金属条を用意する。リードフレーム素材は、長尺の金属条であって、たとえばリール状に巻かれた状態で供給される。
【0017】
本実施形態で使用するリードフレーム素材の厚み寸法は0.5mm以上とする。また、本実施形態ではリードフレーム素材の厚み寸法を次のように規定する。すなわち、上記金属条が平条である場合は、いずれの箇所でも板厚が一体となる。このため、平条からなるリードフレーム素材の厚み寸法は一義的に決まる。これに対して、上記金属条が異形条である場合は、リードフレーム素材のなかに薄板部分と厚板部分が混在する。そこで、異形条からなるリードフレーム素材の厚み寸法は、厚板部分の厚み寸法で規定するものとする。
【0018】
次に、上記のリードフレーム素材に対して、図2に示すように、めっき処理工程S1と、第1のプレス加工工程S2と、表面処理工程S3と、第2のプレス加工工程S4とを順に行う。
【0019】
(めっき処理工程:S1)
めっき処理工程S1では、リードフレーム素材に対して、ダイパッド部2の素子搭載予定領域や、各々のリード部3a,3b,3cの端部領域(ワイヤ接続予定領域、外部接続予定領域)などを対象に、めっき処理を行う。その際、めっき層を形成する領域を露出し、かつ、めっき層を形成しない領域を被覆するように、リードフレーム素材の表面を部分的にマスキングテープなどで覆い、その状態で所望のめっき浴にリードフレーム素材を浸漬させることにより、たとえばニッケル、パラジウム、銀、金等のめっき層をリードフレーム素材の表面に部分的に形成する。これにより、めっき付きの金属条からなるリードフレーム素材が得られる。
【0020】
(第1のプレス加工工程:S2)
第1のプレス加工工程S2では、リードフレーム素材に対し、プレス金型を用いてプレス加工を施すことにより、上記図1に示すリードフレームパターンを形成する。プレス加工は順送プレス加工法によって行う。順送プレス加工法は、リードフレームの搬送方向に複数のステージを配置し、各々のステージにリードフレームの被加工部を順に送り込むことにより、各々のステージが備えるプレス金型によりプレス加工を行う方法である。
【0021】
本実施形態においては、第1のプレス加工工程S2を打ち抜き加工によって行うことにより、所定のリードフレームパターン(ダイパッド部2、リード部3a,3b,3cなど)を形成する。打ち抜き加工では、適量の加工油をリードフレーム素材に供給する必要がある。このため、第1のプレス加工工程S2において、打ち抜き加工により所定のリードフレームパターンを形成した後は、リードフレーム素材を脱脂洗浄しておく。脱脂洗浄は、第1のプレス加工工程S2で行うプレス加工とインライン化することも可能である。
【0022】
ここで、厚み寸法が0.5mm以上のリードフレーム素材を用いる場合は、第1のプレス加工工程S2において、樹脂密着性を向上させるための三次元加工を行うのが一般的であるが、本実施形態では、第1のプレス加工工程S2で三次元加工は行わない。三次元加工は、リードフレーム素材に対して溝加工や潰し加工などを行うことにより、所定の凹凸を形成するものである。このような三次元加工を第1のプレス加工工程S2から除外することにより、三次元加工の導入にともなう弊害を避けることができる。ただし、三次元加工を行わないと樹脂密着性を向上させることはできない。そこで、本実施形態においては、第1のプレス加工工程S2とは別の表面処理工程S3で樹脂密着性向上のための表面処理を行う。
【0023】
(表面処理工程:S3)
表面処理工程S3では、第1のプレス加工工程S2を終えたリードフレーム素材に対して、化学的な表面処理を施すことにより、リードフレーム素材の表面に凹凸を形成する。
化学的な表面処理としては、エッチング処理を適用することができる。その場合、リードフレーム素材が銅または銅合金の金属条であれば、硫酸系のエッチング液を用いたエッチング処理により、リードフレーム素材の表面に凹凸を形成することができる。
【0024】
上記の表面処理は、リードフレーム素材の全面を対象に行ってもよいし、一部を対象に行ってもよい。リードフレーム素材の一部を対象とする場合は、リードフレーム素材の表面を部分的にマスキングテープ等で覆い隠して表面処理を行えばよい。実際に表面処理が施されたリードフレーム素材の表面には細かな凹凸が形成される。この凹凸によるリードフレーム素材の表面粗さは、好ましくは、十点平均粗さ(Rz)で2.0~6.0μmである。
【0025】
(第2のプレス加工工程:S4)
第2のプレス加工工程S4では、表面処理工程S3を終えたリードフレーム素材に対し、上記第1のプレス加工工程S2とは形状の異なるプレス金型を用いてプレス加工を施すことにより、長尺状のリードフレーム素材を所定の長さで短冊状に切断する切断加工や、パッド部2とリード部3a,3b,3cとの間に所定の段差を形成すべくリード部3a,3b,3cの所定部位を曲げる曲げ加工などを行う。第2のプレス加工工程S4では、上記第1のプレス加工工程S2と同様、凹凸形成のための三次元加工は行わない。また、第2のプレス加工工程S4では、第1のプレス加工工程S2で必要とされる加工油を使用することなくプレス加工を行う。
【0026】
ちなみに、リードフレームの最終的な製品形態が、リール状に巻き取られた形態(リール品)の場合は、第2のプレス加工工程S4を省略する。
【0027】
<実施形態の効果>
本発明の実施形態によれば、以下に記述する1つまたは複数の効果が得られる。
【0028】
本発明の実施形態においては、厚み寸法が0.5mm以上のリードフレーム素材を用いてリードフレームを製造する場合に、第1のプレス加工工程S2では所定のリードフレームパターンを形成する打ち抜き加工は行うが、凹凸形成のための三次元加工は行わず、それとは別の表面処理工程S3で化学的な表面処理によりリードフレーム素材の表面に凹凸を形成する。これにより、第1のプレス加工工程S2に三次元加工を導入することで生じる弊害、すなわちプレス金型のコスト増や金型調整にともなう生産性の低下などを避けることができる。
【0029】
また、本発明の実施形態においては、第1のプレス加工工程S2を行った後で表面処理工程S3を行う。このため、第1のプレス加工工程S2を行う前に表面処理工程S3を行う場合に比べて、次のような効果が得られる。すなわち、第1のプレス加工工程S2では、リードフレーム素材に加工油を供給して打ち抜き加工を行う。このため、表面処理工程S3でリードフレーム素材の表面に凹凸を形成してから第1のプレス加工工程S2を行うと、リードフレーム素材の表面の凹凸に加工油が入り込み、脱脂洗浄で加工油を除去しづらくなる。これに対して、第1のプレス加工工程S2の後で表面処理工程S3を行う場合は、リードフレーム素材の表面が平滑な状態で脱脂洗浄が行われるため、加工油を効率良く除去することができる。
【0030】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0031】
たとえば、上記実施形態においては、第1のプレス加工工程S2の前にめっき処理工程S1を行うものとしたが、これに限らず、第1のプレス加工工程S2の後、あるいは、表面処理工程S3の後に、めっき処理工程S1を行ってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…リードフレーム
2…ダイパッド部
3a,3b,3c…リード部
図1
図2