IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブランパン・エス アーの特許一覧

<>
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図1
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図2
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図3a
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図3b
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図4
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図5
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図6
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図7
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図8
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図9
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図10
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図11
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図12
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図13
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図14
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図15
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図16
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図17
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図18
  • 特許-瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/16 20060101AFI20220224BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G04B19/16 Z
G04B45/00 T
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020162919
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2021089269
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】19213804.8
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルナト・モンフェレール
(72)【発明者】
【氏名】リリアン・ジョリー
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161307(JP,A)
【文献】特開2016-224033(JP,A)
【文献】特開2014-6261(JP,A)
【文献】特開2014-215299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構(100)であって、時計ムーブメントによって駆動されるように構成され、少なくとも1つの遊星車セット(300)の枢動を、角度移動の一部分において制御することができる制御車セット(200)を有するマルテーゼ・クロス・タイプの停止機構を備える表示機構(100)であり、前記制御車セット(200)は、前記時計ムーブメントに含まれるドライバ車セットまたは筒かな(12)からカム車セット(456)を介して間接的に枢動されるように構成された環状リング(10)を備え、前記カム車セット(456)は、前記遊星車セット(300)を遊星車軸周りに枢動させるために、前記環状リング(10)を第1の方向に瞬間的に変位させることによって前記環状リング(10)を活性位置から非活性位置に動かし、前記第1の方向とは反対の第2の方向に戻る動きのときに、前記瞬間的な変位よりもゆっくりとした前記環状リング(10)の制御された変位によって前記環状リング(10)を前記非活性位置から前記活性位置に動かすように構成され、前記カム車セット(456)は、同軸上に取り付けられたプレート(15)とカム(16)とを備え、前記プレート(15)は、前記筒かな(12)によって間接的に駆動され、前記カム(16)の偏心爪(160)を駆動するためのスロット(151)を備え、前記カム(16)の輪郭は、前記環状リング(10)を2つの極端な活性位置と非活性位置との間で駆動するように構成されたドライバ(17)の枢動を制御し、前記スロット(151)は、一方では、前記カム(16)と相互作用する前記ドライバ(17)の非活性方向への明確な跳躍を可能にし、他方では、前記偏心爪(160)と前記スロット(151)との相対移動に関するより長い再活性時間を可能することを特徴とし、前記カム車セット(456)はまた、前記プレート(15)および前記カム(16)と同軸上に取り付けられた摩擦車(14)を備え、前記摩擦車(14)は、前記筒かな(12)によって直接的または間接的に駆動され、前記プレート(15)を摩擦駆動するように配置され、前記プレートに対するその角度調節によって前記環状リング(10)の跳躍の瞬間の正確な調節が可能になることを特徴とする、時計表示機構(100)。
【請求項2】
前記制御車セット(200)は第1の滑り領域と第1の駆動領域の第1の交替を備え、前記遊星車セット(300)は、第2の空き領域と第2の駆動領域の第2の交替を備え、前記第2の空き領域はそれぞれ、前記遊星車セット(300)の休止位置に対応する前記制御車セット(200)の角度移動の一部において、前記制御車セットの前記第1の滑り領域の1つの上を順次滑るように配置され、前記制御車セット(200)の前記第1の駆動領域は、前記制御車セット(200)の角度移動のいくつかの部分において、前記遊星車セット(300)に含まれる前記第2の駆動領域と協働して、1つの前記第2の空き領域が、前記遊星車セット(300)の別の休止位置で前記第1の滑り領域と再び協働するまで前記遊星車セット(300)を枢動させるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項3】
前記ドライバ(17)は枢動ラックであり、前記枢動ラックはラックばね(18)によって戻され、前記環状リング(10)に含まれる環状リング内歯(107)と協働するように配置されたラック歯(170)を備え、前記カム(16)の輪郭に追従するように配置されたフィーラ(171)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の表示機構(100)。
【請求項4】
前記カム(16)は、変化する外側輪郭(161)と前縁(162)とを有して前記跳躍を可能にするスネイル・カムであることを特徴とする、請求項3に記載の表示機構(100)。
【請求項5】
前記スロット(151)と前記偏心爪(160)との組合せによって、前記フィーラ(171)を瞬間的に落下させることができることを特徴とする、請求項4に記載の表示機構(100)。
【請求項6】
前記環状リング(10)は環状であり、その枢動軸に対して偏心した環状リング・ローラ(19)によって案内されて枢動することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の表示機構(100)。
【請求項7】
前記表示機構(100)は、各前記遊星車セット(300)を担持する星形車(4)を備え、前記星形車(4)は、単一の枢動方向に連続して枢動運動を行うように前記環状リング(10)に同軸で枢動するように取り付けられ、前記時計ムーブメントの車セットによって駆動されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の表示機構(100)。
【請求項8】
前記星形車(4)は、環状リムに内歯(43)を備え、前記環状リムは枢動軸受を備えるか、またはその枢動軸に対して偏心した星形車ローラ(6)によって案内されて枢動することを特徴とする、請求項7に記載の表示機構(100)。
【請求項9】
各前記遊星車セット(300)は、前記星形車(4)のアーム(7)または周囲に、自由に枢動するように取り付けられていることを特徴とする、請求項7または8に記載の表示機構(100)。
【請求項10】
各前記遊星車セット(300)は、前記星形車(4)のアーム(7)または周囲に含まれるハウジングと摩擦して枢動するように取り付けられていることを特徴とする、請求項7または8に記載の表示機構(100)。
【請求項11】
各前記遊星車セット(300)は、可撓性があって前記星形車(4)に含まれるアーム(7)の端部に取り付けられていることを特徴とする、請求項7~10のいずれか一項に記載の表示機構(100)。
【請求項12】
各前記遊星車セット(300)は、相対的な駆動のために、前記環状リング(10)に含まれる環状リング歯(1802、1804)と協働するように配置された歯(811、812、813、814、815、816)を備える切頭歯部と、前記第2の空き領域を形成し、前記環状リング(10)に含まれる円筒状肩部(9)の上を滑るように配置された凹んだ領域(821、822)とを備えることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の表示機構(100)。
【請求項13】
各前記遊星車セット(300)は、前記環状リング(10)に含まれる円筒状肩部(9)の上を滑るように配置された第2の空の領域を形成する中空の円筒状輪郭をそれぞれが有する枝部を有するマルテーゼ・クロスであり、前記枝部は、相対的な枢動を引き起こすために、前記環状リング(10)の突出する爪と協働するように配置された凹部によって分離されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の表示機構(100)。
【請求項14】
前記表示機構(100)は月相または月齢表示であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の表示機構(100)。
【請求項15】
前記表示機構(100)は昼/夜表示であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の表示機構(100)。
【請求項16】
前記表示機構(100)はAM/PM表示であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の表示機構(100)。
【請求項17】
前記表示機構(100)は世界時表示であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の表示機構(100)。
【請求項18】
前記表示機構(100)はカレンダー、日付、日、または月、あるいはうるう年表示であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の表示機構(100)。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の少なくとも1つの表示機構(100)を駆動するように構成された時計ムーブメントを含む時計(1000)であって、前記表示機構(100)は、前記制御車セット(200)を、限定された角度移動の前後枢動運動をするように駆動するため、および各前記遊星車セット(300)を担持する星形車(4)を単一の方向に連続枢動するための別々の機能を備えることを特徴とする時計(1000)。
【請求項20】
前記時計(1000)が携行型時計であることを特徴とする、請求項19に記載の時計(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構に関する。本機構は、時計ムーブメントによって駆動されるように構成され、少なくとも1つの遊星車セットの枢動を、その角度移動の一部分において制御することができる制御車セットを有するマルテーゼ・クロス・タイプの停止機構を備える。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような表示機構を含む時計、特に携行型時計に関する。
【0003】
本発明は、複雑機構を有する時計のための表示機構の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
マルテーゼ・クロス停止機構の使用は、時計の製作において特定の表示機能に対して知られている。最もよく知られているのは、万年カレンダー時計のうるう年表示である。
【0005】
一般に、マルテーゼ・クロス機構は連続駆動機構であると言われている。遊星車は、太陽車の周りを連続して回転し、遊星車の自転もまたゆっくりと連続的である。
【0006】
連続した表示は、特に表示が変わるあたりでは、使用者にとって不安を生じさせる。それは、使用者は、表示の変更が起きたかどうかを知る手段を有しないからである。
【0007】
BALLOUARD名義の国際公開第2010/058367(A1)号には、ムーブメントが筒かなを駆動し、その自由端に、円形配置で時刻を示す12または24の印を備えた文字盤上を1時間に1回転するインジケータ部材が取り付けられた、携行型時計表示機構が開示されている。これらの印はそれぞれ、偶数の歯を備えた別々のピニオンに接続され、ピッチ円直径が、印の数の半分にピニオンのピッチ円直径を掛けたものに等しい歯付き部分と噛み合うことによって、隣り合うピニオンのうちの1つと同時に駆動され、歯付き部分は、インジケータ部材の各回転の後、筒かなの回転によって駆動される制御手段によって、1回転を印の数で分割された角度の値だけ前記筒かなの周りに回転させられる。
【0008】
JACCARD名義のスイス特許第3366A号には、カムおよび車を担持する筒かなと、マルテーゼ・クロス車を作動させるように設計されたディスク/爪とを組み合わせたものを備えた「針なし時計」として知られている携行型時計が開示されている。このディスクは渦巻ばねの端部の1つを担持し、渦巻ばねの他端は筒かな、または筒かなを担持する心棒に取り付けられ、歯または下部突起は、車の開口を通過し、歯または突起を有するレバーまたはアーム、およびばねと組み合わさって、歯または突起は、筒かなの連続回転時にディスク/爪を一時的に止め、歯または突起がカムのくぼみに落ちるとすぐそれ自体の仕掛けに従う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2010/058367(A1)号
【文献】スイス特許第3366A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、マルテーゼ・クロス機構の跳躍を瞬間的に行わせることを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はまた、特定の動きを有する少なくとも1つの遊星車セットを実装した時計、特に携行型時計のための表示機構を作製することを提案する。より詳細には、この特定の動きには、太陽車と呼ばれる要素の周りの遊星車セットの連続回転運動の少なくとも1つの段階と、正確な位置と時における遊星車セットの単独の瞬間的な自転運動の少なくとも1つの段階とが含まれる。
【0012】
本発明は、遊星軸の太陽車の周りの回転速度を変えないで、太陽車の周りの回転を確実にしながら、遊星車の瞬間的な1度限りの自転をさせることにある。
【0013】
このため、本発明は、請求項1に記載の時計表示機構に関する。
【0014】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような表示機構を含む時計、特に携行型時計に関する。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めば明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】太陽車と呼ばれる要素の周りの遊星車セットの特定の動きの概略図である。遊星車セットは、太陽車の周りを連続回転運動(矢印A)しており、少なくとも1つの角度位置において自転枢動運動(矢印B)を行い、この枢動運動は、この機構の構成に部分的または全面的に依存していてもよい。
図2】本発明による瞬間的な跳躍表示機構の一部分の概略部分平面図である。本図は、時計ムーブメントの歯車列からの星形車の駆動機構の構成要素のみを示し、星形車のアームは、これらの遊星車セット、ここでは遊星車からなる遊星車セットを担持し、遊星車のそれぞれは、部分的に頭が切られた歯を備え、それぞれ、関係した遊星車の角度位置に応じて、環状リング・ローラに案内された環状リングの円筒部分の上を滑る、またはこの環状リングの外歯付き部分と噛み合うように構成される。ここでは、この星形車は、非限定的に星形車ローラ上を連続回転し、ここでは、時計周りに回転する。
図3a図2の詳細平面図である。本図は、環状リングの円筒部分上で滑り位置にあるこのような遊星車を示す。
図3b】同じ詳細を示す斜視図である。
図4図2と類似の態様の、本発明による同じ瞬間的な跳躍表示機構の別の部分の図である。本図では、時計ムーブメントの歯車列から、カム車セット、次いでドライバを経た、遊星車が協働する環状リングの駆動機構の構成要素のみが示され、この駆動機構は、環状リングの活性位置にあるように示され、矢印は、このカム車セットのスネイル・カムに従うこのドライバのフィーラが落ちるとすぐに環状リングが枢動する反時計回りを示し、この枢動運動は、環状リングの外歯部分に向かい合う遊星車を回転駆動する。
図5図4の詳細図で、互いに同軸で重ねられた摩擦車、プレート、およびスネイル・カムを含むカム車セットを示す。摩擦車は、スネイル・カムに含まれる偏心爪を制限および駆動するためのスロットを含むプレートを調節可能に駆動し、ここでは、環状リング歯と協働するように構成されたラック歯を備える、枢動ラックであるドライバ・フィーラはスネイル・カム上を動く。
図6図4と類似の態様の、環状リングの非活性位置にあることを示す同じ駆動機構の図である。矢印は時計方向を示し、同じフィーラがスネイル・カムの最高点に登ると、環状リングは続いて、図6に示した瞬間に対して、反時計回りに枢動しようとする。
図7図5と類似の態様の図6の詳細の図である。
図8】瞬間的な跳躍表示機構全体の概略部分平面図である。ムーブメントのプレートに対する遊星車の公転運動、および各遊星車が環状リングの外歯部分に向かい合うときの各遊星車の瞬間的な回転運動の両方を確実にするために、星形車駆動機構と環状リング駆動機構とが組み合わされており、これは、この環状リングが活性位置から非活性位置への瞬間的な跳躍に動く瞬間の直前の図である。
図9図9乃至図15は、図3と類似の態様で、遊星車の運動の連続ステップを示す。図9は、図の右側にあって時計回りに滑っている遊星車は接近位置にあるが、左側に見える遊星車は回転したところで滑り移動を再び始めていることを示している。環状リングは活性位置にある。
図10】跳躍前位置を示している。遊星車は6時の位置に達している。環状リングはまだ活性位置にある。
図11図11乃至図14は跳躍を分解した図である。図11では、遊星車はまだ6時の位置にあり、環状リングはそのとき、半時計周りに回転しており、活性位置から非活性位置に変わる途中である。
図12】環状リングは反時計回りに移動し続け、遊星車と噛み合い、遊星車を回転させ始めている。
図13】この同期した2つの動きが続いている。
図14】同期した2つの動きが完了し、遊星車の最後の歯が環状リングの外歯を離れ、環状リングの円筒軌道と向かい合う遊星車の切頭部が現れている。
図15】跳躍後の位置において、遊星車は瞬間的な半回転の自転を終了した。星形車によって駆動される遊星車は6時の位置を離れ、環状リングの円筒軌道の上で滑り運動を再び始める。次いで、環状リングは、その非活性位置から活性位置に戻るが、この動きは星形車の進行よりもゆっくりと起き、その結果、遊星車との進行動作を妨げないが、この特定の非限定的な実施形態では、6時回転位置で1時間後に現れる次の遊星車の瞬間的な跳躍をさせる準備をするのに適切な遅れを有している。
図16】前図のすべてとは反対側のムーブメントの側から見た、摩擦車を含むカム車セットの概略平面図である。摩擦車は、モーション・ワーク車を介して筒かなによって駆動され、その摩擦がプレートの枢動を駆動し、プレートおよびカムと同軸に取り付けられ、プレートに対するその角度調節によって環状リングの跳躍の瞬間の正確な調節が可能になる。
図17】同じ側からのカム車セットの斜視図である。
図18】同じ側からのカム車セットの分解斜視図である。
図19】この表示機構を備える、携行型時計よりなる時計の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、太陽車と呼ばれる固定または可動要素の周りの遊星車セットの公転運動の一般的な問題を提示している。本図では、遊星車セットは、太陽車の周りを連続した回転運動(矢印A)をしており、少なくとも1つの角度位置、限定するものではないが、ここでは、6時の位置において、自転枢動運動(矢印B)をし、この枢動運動の角度移動は、機構の構成に依存する。
【0018】
本実施形態では、本発明は、遊星車の単一の回転点を有する特定の変形で例示されているが、特定の表示機構は、所望の表示用途に応じて、太陽車の周囲にわたってこのような回転点をいくつか有することができることは理解される。
【0019】
本発明は、瞬間的な跳躍機能を有する時計表示機構100に関する。この表示機構100は、時計ムーブメントによって駆動されるように構成されており、少なくとも1つの遊星車セット300の枢動を、少なくともその角度移動の一部分において、制御することができる制御車セット200を有する「マルテーゼ・クロス」タイプの停止機構を備える。
【0020】
本発明によれば、この制御車セット200は環状リング10を備え、環状リング10は、時計ムーブメントに含まれるドライバ車セットまたは筒かな12からカム車セット456を介して間接的に枢動するように構成される。
【0021】
このカム車セット456は、遊星車セット300を遊星車軸周りに枢動させるために、環状リング10を第1の方向に瞬間的に変位させることによって環状リング10を活性位置から非活性位置に動かし、第1の方向とは反対の第2の方向に戻る動きのときには、瞬間的な変位よりもゆっくりとした環状リング10の制御された変位によって環状リング10を非活性位置から活性位置に動かすように構成される。
【0022】
カム車セット456は、同軸上に取り付けられた少なくとも1つのプレート15と1つのカム16とを備える。プレート15は、筒かな12によって間接的に駆動され、スロット151を備え、このスロット151は、カム16に含まれる偏心爪160の移動を制限し、前記爪をスロットの一端の止め位置に駆動するように構成される。カム16の変化する輪郭161がドライバ17の枢動を制御し、ドライバ17は、環状リング10が活性位置と非活性位置との間で駆動されるように構成される。したがって、スロット151は、一方では、非活性方向にカム16と相互作用するドライバ17の明確な跳躍を可能にし、他方では、爪160とスロット151との相対移動に関するより長い再活性時間を可能にする。ストリップ/爪システムの効用は、フィーラの瞬間的落下を可能にすることであり、フィーラは、落下したときカムの最小半径部に接触する。
【0023】
より詳細には、制御車セット200は、第1の滑り領域と第1の駆動領域の第1の交替を備え、遊星車セット300は、第2の空き領域と第2の駆動領域の第2の交替を備える。第2の空き領域はそれぞれ、遊星車セット300の休止位置に対応する制御車セット200の角度移動の一部において、制御車セットの第1の滑り領域の1つの上を滑るように配置される。制御車セット200の第1の駆動領域は、制御車セット200の角度移動のいくつかの部分において、遊星車セット300に含まれる第2の駆動領域と協働して、第2の空き領域が、遊星車セット300の別の休止位置で第1の滑動領域と協働するまで遊星車セット300を枢動させるように配置される。
【0024】
より詳細には、ドライバ17は枢動ラックであり、枢動ラックはラックばね18によって戻され、環状リング10の環状リング内歯107と協働するように配置されたラック歯170を備える。この枢動ラックは、カム16の輪郭に追従するように配置されたフィーラ171を含む。
【0025】
より詳細には、カム16は、スネイルの形状が変化する外側輪郭161と前縁162とを有して跳躍を可能にするスネイル・カムである。スロット151と爪160との組合せによって、カム16の最大半径部上のフィーラ171の戻りを可能にし、かつ制限する。
【0026】
特定の実施形態では、この変化するスネイル状外側輪郭161は、カムの始めの180°の間は膨らみ、その後、残りの角度移動では変化のない同心部分であり、したがって、歯付きの環状リングは、活性位置では、遊星車が到着するのを待つことができる。登り傾斜の勾配は、跳躍したばかりの遊星車との干渉を回避するために、急すぎないことが好ましい。
【0027】
前縁162は、この機構を可逆性にすることができる傾斜を含むことが有利であり、これは、逆の動きを必要とする時間設定などの調節時に有用である。
【0028】
本発明によれば、カム車セット456はまた摩擦車14を備え、摩擦車14は、プレート15およびカム16と同軸に取り付けられ、筒かな12によって直接的または間接的(例えば、モーション・ワーク車セット13を介して)に駆動され、プレート15の枢動軸152を摩擦駆動するように配置され、プレートに対するその角度調節によって環状リング10の跳躍の瞬間の正確な調節が可能になる。
【0029】
より詳細には、環状リング10は環状であり、その枢動軸に対して偏心した環状リング・ローラ19によって案内され枢動される。当然ながら、ローラによる案内だけに限ったものではなく、これは、案内システムの特定の非限定的な場合である。
【0030】
より詳細には、表示機構100は、各遊星車セット300を担持する星形車4を備え、星形車4は、単一の枢動方向に連続して枢動運動を行うように取り付けられ、時計ムーブメントの車セットによって駆動される。星形車のこの連続運動は特定の非限定的な場合であり、例えば、時間設定操作などのときには、その回転は連続的でないことがあり、同様に、特に時間設定操作という同じ例では、回転方向も逆転することがあることは理解されよう。
【0031】
環状リング10と星形車4の枢動軸は一致していることが好ましく、より詳細には、時計ムーブメントの時車1または筒かな12の主枢動軸Dと同軸であることが好ましい。
【0032】
一変形例では、各遊星車セット300は、星形車4のアーム7または周囲に、自由に枢動するように取り付けられる。
【0033】
別の変形例では、各遊星車300は、星形車4のアーム7または周囲に含まれるハウジングと摩擦して枢動するように取り付けられる。
【0034】
特に、各遊星車セット300、特に遊星車8は、星形車4に含まれるアーム7、特定の変形例では可撓性のアーム7の端部71に取り付けられる。このアーム7の端部71はまた、遊星車8と噛み合った別の車セットを案内するための軸受を備えることができる。遊星車8は、アーム7の端部71の穴に、またはアーム7の端部71に含まれる摩擦クランプに案内され、相補的な可撓性アーム72によって形成された遊星車ハブ80を備えることができる。遊星車8はまた、アーム7の端部71に関する軸方向の制限のための少なくとも1つのフランジ83を含むことができる。
【0035】
図に示された特定の変形例では、各遊星車セット300は、歯81、811、812、813、814、815、816を備える切頭歯部を含み、これらは、相対的な駆動のために、環状リング10の歯付き外側部分108、特に環状リング10の環状リング歯1802、1804と協働するように配置される。環状リング10は、その構造体と歯1802および1804との間に凹部1801、1803、1805を備える。各遊星車セット300は、第2の空き領域を形成する凹んだ領域82、821、822を備え、これらによって、遊星車セット300は、環状リング10に含まれる滑らかな円筒状肩部9の上を滑ることができる。図に示された例では、滑りは、一方では、遊星車セット300の歯811、816で起こり、他方では813、814で起こり、それらは第2の各空き領域と並んでいる。
【0036】
図に示された例では、遊星車セット300はそれぞれ、遊星車の180°の回転を可能にする2つの第2の空き領域821、822を備える。他の実施形態、例えば、120°の回転のための3つの第2の凹んだ領域なども可能であることは明らかであり、同様に、これらの第2の凹んだ領域は必ずしも等距離ではない。
【0037】
図示されていない別の変形例では、各遊星車セット300は、環状リング10の円筒状肩部9の上を滑るように配置された第2の空の領域を形成する凹みのある円筒状輪郭をそれぞれが有するアームを有するマルテーゼ・クロスである。このマルテーゼ・クロスの枝部は、従来のように、相対的な枢動のために、環状リング10から突出する爪または歯などと協働するように配置された凹部によって分離されている。
【0038】
図示されていないさらに別の変形例では、この機構は、内歯上で動作するマルテーゼ・クロスを備える。
【0039】
特定の実施形態では、表示機構100は月相または月齢表示である。
【0040】
別の特定の変形例では、表示機構100は昼/夜表示である。
【0041】
別の特定の変形例では、表示機構100はAM/PM表示である。
【0042】
別の特定の変形例では、表示機構100は世界時表示である。
【0043】
別の特定の変形例では、表示機構100はカレンダー、日付、日、または月、あるいはうるう年表示である。
【0044】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような表示機構100を駆動するように構成された時計ムーブメントを備える時計1000に関する。本発明によれば、この表示機構100は、制御車セット200を、限定された角度移動の前後枢動運動をするように駆動するため、および各遊星車セット300を担持する星形車4を単一の方向に連続枢動するための別々の機能を備える。
【0045】
より詳細には、この時計1000は携行型時計である。
【0046】
図は、本発明の特定の非限定的な変形例およびその動作の詳細を示している。
【0047】
表示機構100は、本明細書では、互いに組み合わされた以下の2つのサブシステムから構成される。
- 第1の機構は、遊星車セット300、または、この場合は遊星車8を担持する星形車4の駆動に関係する。この機構は、機械式または電気機械式の時計ムーブメントの列から情報を取り出して、歯車列、伝動装置、および回転案内部によって回転速度の減速を達成するように構成される。
- 第2の機構は、固定されたマルテーゼ・クロス歯を担持する環状リング10の駆動に関する。この機構は、機械式または電気機械式のムーブメントの列から情報を取り出して、摩擦システムを使用することによる調節を可能にし、カム機構、電動装置、および回転支持部の使用を通じて跳躍を行うように構成される。
【0048】
図2に示す、星形車4の駆動に関するサブシステムは、遊星車セット300、ここでは、遊星車8をプレート5の周りに一定速度で回転させるという目的を有する。
【0049】
この動きを達成するために、情報が、時計ムーブメントの中央で、特に、限定するものではないが、歯11を備える時車1から取り出され、この情報は、特に、歯21および22を有する歯車減速車セット2ならびに中間車3を備える歯車列によって星形車4にその内歯43を介して伝達される。図示の特定の場合には、星形車4は、星形車4の穴46を案内する星形車ローラ6によってプレート5の周りを枢動し、12時間で時計回りに1回転する。当然ながら、この12時間での回転は、図に示された特定の設計であり、本発明から逸脱せずに他の用途に対して他の時間値を選ぶことができる。より詳細には、星形車4は、星形車4の枢動軸に対して偏心した星形車ローラ6によって、案内されて枢動する環状リムに内歯43を備える。ローラによる案内は、単に図に示された特定の場合であり、回転軸受案内などの他の案内の方式も考えられる。この歯43は、中間駆動車3の歯32と協働する。
【0050】
星形車4は、ここでは、12個のアーム7、より詳細には、限定するものではないが、可撓性アームを有し、これらのアーム7によって各遊星車8を有する枢動軸を形成することができる。遊星車8は、星形車4によってプレート5の周りを回転駆動され、遊星車8の歯が環状リング10の円筒状外面9に当たって滑ることによって、ほとんどの時間、環状リング10によって角度的に案内される。
【0051】
各遊星車8は、12時間でプレート5の周りを完全に回転するが、自転はしない。
【0052】
環状リング10の駆動に関するサブシステムは、環状リング10の変位と角位置を管理するという目的を有する。
【0053】
環状リング10は、急速な瞬間的な動きで活性位置から非活性位置に動き、次いで、ゆっくりとした制御された動きで活性位置に戻る。より詳細には、活性位置に戻るときの上昇は、始めに変化し、最後にゼロになる。
【0054】
環状リング10のこれらの様々な動きを達成するために、情報は、特に、限定するものではないが、筒かな12から時計ムーブメントの中央で取り出され、モーション・ワーク車セット13によってカム車セット456に伝達される。このカム車セット456は摩擦車14を含み、したがって、摩擦車14は一定回転速度を有し、1時間で時計回りに1回転する(図ではCW=時計回り)。
【0055】
カム車セット456は3つの段を有する、すなわち、摩擦車14と、プレート15と、偏心爪160を担持するカム16とを有する。カム16は、ドライバ、ここでは、枢動ラック17を操作して環状リング10を一方向または他方向に動かす機能を有する。摩擦車14は、スロット140を画定する、摩擦車14に含まれる可撓性ストリップによって、例えば、プレート15のテーパ状肩部152に働く摩擦によってプレート15を駆動する。プレート15は、プレート5に含まれるスロット151、特にプレート15と同心の円の円弧状のスロットによってカム16の爪160を駆動する。
【0056】
摩擦によって、環状リング10の跳躍の瞬間の正確な調節が可能になり、スロット151によって、カム16と相互作用するラック17の明確な跳躍が可能になる。
【0057】
ラックばね18によって押さえつけられたラック17は、カム16の外周から情報を受け取り、環状リング10の内歯107がラック歯170と噛み合うことによって環状リング10にその情報を伝える。より詳細には、環状リング10は、環状リング穴119を案内する環状リング・ローラ19によってプレート5の周りを枢動する。
【0058】
したがって、環状リング10は、その活性位置から非活性位置に瞬間的に跳躍し(図ではACW:反時計回り)、次いで、活性位置までゆっくりと反対方向に戻り(図ではCW:時計回り)、このサイクルを周期的に、例えば、図に示された機構では毎時繰り返すが、当然、この周期性は表示のタイプに依存し、例えば、月齢表示に対してはその期間は異なる。
【0059】
図4は、活性位置にある環状リング駆動システムを示し、ラック17はフィーラ171を備え、フィーラ171は、カム16に最大半径のところに備えられ跳躍を引き起こすように意図された、スネイル161と前縁162、特に実質的に真っ直ぐな前縁との間の境界にあるくちばし部に載っている。
【0060】
図6は、非活性位置の環状リング駆動システムを示し、フィーラ171は、前縁162を通った直後のスネイル161の最小半径のところに載っている。
【0061】
図8は、上記の2つのサブシステムを組み合わせた、本発明による瞬間的な跳躍機能を有するマルテーゼ・クロス機構全体を示す。遊星車8は、星形車4のアーム7によって駆動され、プレート5の周りを一定速度で回転する。遊星車8が6時位置に達すると、環状リング10は遊星車8を瞬間的に半回転自転させる。遊星車8が星形車4によってプレート5の周りを一定に回転させられ、プレート5によって角度的に案内されていることに注意のこと。
【0062】
遊星車8は以下のような順序で瞬間的に跳躍する。
- 接近位置。図9に示す。遊星車8は星形車4によって駆動され、活性位置にある環状リング10によって滑るように案内されている。
- 跳躍前位置。図10に示す。遊星車8は時計、特に携行型時計の6時位置にあるが、この特定の位置に限定にはされない。環状リング10は遊星車8を案内し、環状リング10はまだ活性位置にある。
- 跳躍。半回転動作時の凹部821および822の位置変化をその順番で図11乃至図14に分けて示す。遊星車8はまだ6時位置にあり、次に、環状リング10が回転し、活性位置から非活性位置に動くと、その移動中に遊星車8と噛み合って半回転させる。遊星車8は瞬間的に半回転自転する。歯811は環状リング10の第1の凹部1801内に、次いで、第2の歯812は、第1の環状リング歯1802の後の第2の凹部1803内に、次いで、第3の歯813は、第2の環状リング歯1804の後の第3の凹部1805内に入り、これによって、第2の車セット凹部822は徐々に円筒状肩部9の方に動くことができ、すなわち、歯813および814の側面は肩部9の上を滑る。
- 跳躍後位置。図15に示す。遊星車8は環状リング10によって案内され、星形車4によって駆動され、6時位置を離れ、第2の凹部822の両側の歯813および814によって環状リング10の円筒状肩部9上を案内される。次いで、環状リング10は、その非活性位置から活性位置に戻るが、この動きは星形車4の進行よりもゆっくりにされて、遊星車8との進行動作を妨げないが、1時間後に現れる次の遊星車の瞬間的な跳躍の準備をするのに適切な遅れを有している。
【0063】
本発明は重要な利点を提示する。本発明は、特に、マルテーゼ・クロス機構が瞬間的な跳躍を行うことを可能にする。このような瞬間的な跳躍を達成することは表示に直接的に影響を与え、使用者にとって確実な読取信頼性を与える。例えば、12時におけるAM/PMの変更など、インジケータが1つの位置から別の位置に中間位置なしに明確に動く。したがって、使用者は、明確、正確、および明白に読むことができる情報を見る。
【0064】
本発明による機構は、跳躍の瞬間における同期の欠点を有する、例えば時間設定操作などのときの逆方向の調節を許容する。
【符号の説明】
【0065】
1 時車
2 歯車減速車セット
3 中間車
4 星形車
5 プレート
6 星形車ローラ
7 アーム
8 遊星車
9 円筒状肩部
10 環状リング
11 歯
12 筒かな
13 モーション・ワーク車セット
14 摩擦車
15 プレート
16 カム
17 ドライバ、ラック
18 ラックばね
19 環状リング・ローラ
21 歯
22 歯
32 歯
43 内歯
46 穴
71 端部
72 可撓性アーム
80 遊星車ハブ
81 歯
82 凹んだ領域
83 フランジ
100 表示機構
107 環状リング内歯
108 歯付き外側部分
119 環状リング穴
140 スロット
151 スロット
152 枢動軸、テーパ状肩部
160 爪
161 輪郭、スネイル
162 前縁
170 ラック歯
171 フィーラ
200 制御車セット
300 遊星車セット
456 カム車セット
811 歯
812 歯
813 歯
814 歯
815 歯
816 歯
821 凹んだ領域、空き領域
822 凹んだ領域、空き領域
1000 時計
1801 凹部
1802 歯
1803 凹部
1804 歯
1805 凹部
ACW 反時計回り
CW 時計回り
D 主枢動軸
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19