IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー.の特許一覧

特許7029508酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物及び方法
<>
  • 特許-酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物及び方法 図1
  • 特許-酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物及び方法 図2
  • 特許-酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物及び方法 図3
  • 特許-酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物及び方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/64 20060101AFI20220224BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20220224BHJP
   H01R 13/03 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
C25D3/64
C25D7/00 H
H01R13/03 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020167203
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2021066953
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/916,456
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨンミン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・リップシュッツ
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル・エー・ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー・ワイ・シー・チェン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-147572(JP,A)
【文献】特開2013-023693(JP,A)
【文献】特開2000-192279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00- 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオンの供給源、ビスマスイオンの供給源、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、システイン、メルカプトコハク酸、2-メルカプトプロピオン酸の塩、3-メルカプトプロピオン酸の塩、システインの塩、およびメルカプトコハク酸の塩の1つ以上から選択されるチオール末端脂肪族化合物、1つ以上のジヒドロキシビススルフィド化合物、並びに7未満のpHを含む2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物であって、前記1つ以上のジヒドロキシビススルフィド化合物が2,4-ジチア-1,5-ペンタンジオール、2,5-ジチア-1,6-ヘキサンジオール、2,6-ジチア-1,7-ヘプタンジオール、2,7-ジチア-1,8-オクタンジオール、2,8-ジチア-1,9-ノナンジオール、2,9-ジチア-1,10-デカンジオール、2,11-ジチア-1,12-ドデカンジオール、5,8-ジチア-1,12-ドデカンジオール、2,15-ジチア-1,16-ヘキサデカンジオール、2,21-ジチア-1,22-ドエイコサンジオール、3,5-ジチア-1,7-ヘプタンジオール、3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール、3,8-ジチア-1,10-デカンジオール、3,10-ジチア-1,8-ドデカンジオール、3,13-ジチア-1,15-ペンタデカンジオール、3,18-ジチア-1,20-エイコサンジオール、4,6-ジチア-1,9-ノナンジオール、4,7-ジチア-1,10-デカンジオール、4,11-ジチア-1,14-テトラデカンジオール、4,15-ジチア-1,18-オクタデカンジオール、4,19-ジチア-1,22-ドエイコサンジオール、5,7-ジチア-1,11-ウンデカンジオール、5,9-ジチア-1,13-トリデカンジオール、5,13-ジチア-1,17-ヘプタデカンジオール、5,17-ジチア-1,21-ウンエイコサンジオール及び1,8-ジメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジオールからなる群から選択される、2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物。
【請求項2】
前記1つ以上のヒドロキシビススルフィド化合物が3,6-ジチア-1,8-オクタンジオールである、請求項1に記載の2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物。
【請求項3】
1つ以上の酸又はその塩を更に含む、請求項1に記載の2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物。
【請求項4】
1つ以上のpH調整剤を更に含む、請求項1に記載の2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物。
【請求項5】
前記pHは、0~6である、請求項1に記載の2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物。
【請求項6】
基板に2成分銀-ビスマス合金を電気めっきする方法であって、
a)前記基板を提供する工程と、
b)前記基板を、銀イオンの供給源、ビスマスイオンの供給源、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、システイン、メルカプトコハク酸、2-メルカプトプロピオン酸の塩、3-メルカプトプロピオン酸の塩、システインの塩、およびメルカプトコハク酸の塩の1つ以上から選択されるチオール末端脂肪族化合物、1つ以上のジヒドロキシビススルフィド化合物、並びに7未満のpHを含む2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物であって、前記1つ以上のジヒドロキシビススルフィド化合物が2,4-ジチア-1,5-ペンタンジオール、2,5-ジチア-1,6-ヘキサンジオール、2,6-ジチア-1,7-ヘプタンジオール、2,7-ジチア-1,8-オクタンジオール、2,8-ジチア-1,9-ノナンジオール、2,9-ジチア-1,10-デカンジオール、2,11-ジチア-1,12-ドデカンジオール、5,8-ジチア-1,12-ドデカンジオール、2,15-ジチア-1,16-ヘキサデカンジオール、2,21-ジチア-1,22-ドエイコサンジオール、3,5-ジチア-1,7-ヘプタンジオール、3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール、3,8-ジチア-1,10-デカンジオール、3,10-ジチア-1,8-ドデカンジオール、3,13-ジチア-1,15-ペンタデカンジオール、3,18-ジチア-1,20-エイコサンジオール、4,6-ジチア-1,9-ノナンジオール、4,7-ジチア-1,10-デカンジオール、4,11-ジチア-1,14-テトラデカンジオール、4,15-ジチア-1,18-オクタデカンジオール、4,19-ジチア-1,22-ドエイコサンジオール、5,7-ジチア-1,11-ウンデカンジオール、5,9-ジチア-1,13-トリデカンジオール、5,13-ジチア-1,17-ヘプタデカンジオール、5,17-ジチア-1,21-ウンエイコサンジオール及び1,8-ジメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジオールからなる群から選択される、2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物と接触させる工程と、
c)前記2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物及び前記基板に電流を印加して、前記基板に2成分銀-ビスマス堆積物を電気めっきする工程と
を含む方法。
【請求項7】
前記1つ以上のジヒドロキシビススルフィド化合物が3,6-ジチア-1,8-オクタンジオールである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記2成分銀-ビスマス電気めっき組成物は、1つ以上の酸及びその塩を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、1つ以上のpH調整剤を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、0~6のpHを有する、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は、酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物及び方法に関し、ここで、酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、良好な導電性、低い電気接触抵抗及び低い摩擦係数を有する、銀に富む2成分銀-ビスマス合金の電着を可能にする、カルボキシル基又はスルホン酸基を有するチオール末端脂肪族化合物を含む。
【背景技術】
【0002】
銀及び銀合金めっき浴は、電子部品及び宝石類の製造に関する用途において、基材に銀及び銀合金を堆積させるのに非常に望ましい。実質的に純粋な銀は、その優れた電気特性のために接触仕上げとして使用される。それは、高い導電性と低い電気接触抵抗とを有する。しかしながら、接触仕上げとしてのその使用は、例えば、電気コネクタでは、機械的摩耗に対する耐性が低く、銀と銀との摩擦係数が高いため、制限されている。機械的摩耗に対する耐性が低いため、コネクタの比較的少数の挿入-脱挿入サイクル後、コネクタが物理的に損傷する。高い摩擦係数は、この摩耗の問題に寄与する。コネクタの摩擦係数が高い場合、コネクタの挿入及び脱挿入に必要な力は、非常に大きく、これによりコネクタが損傷するか又はコネクタの設計オプションが制限される場合がある。銀-アンチモン及び銀-スズなどの銀合金堆積物は、摩耗特性を改善するが、特に熱エージング後の接触抵抗が許容できないほど低い。銀合金は、一般的に自動車のエンジンのための部品及び高いはんだ付け温度に曝される電気コネクタのための部品に使用されるため、経時で高温に曝される際に良好な接触抵抗を維持することが重要である。
【0003】
多くの銀塩は、実質的に水不溶性であり、水溶性である銀塩は、めっき浴に一般的に存在する様々な化合物と不溶性塩を形成することが多いため、めっき業界は、実用的なめっき用途に十分な長さで安定であり、少なくとも前述の問題に対処する銀又は銀合金めっき浴を考案するために多くの課題に直面している。多くの銀及び銀-スズ合金めっき浴は、実用的な用途が可能であるようにシアン化合物を含む。しかしながら、シアン化合物は、非常に有毒である。従って、特別な廃水処理が必要である。これは、処理費用の上昇をもたらす。更に、これらの浴は、アルカリの範囲でのみ使用できるため、合金化金属の種類は、制限される。金属水酸化物などの多くの金属は、アルカリ条件下で溶解せず、溶液から沈殿する。アルカリ浴のもう1つの欠点は、めっきを回避する必要がある基板における領域をマスクするために使用される多くのフォトレジスト材料との非適合性である。このようなフォトレジストは、アルカリ条件下で溶解する可能性がある。
【0004】
アルカリ浴はまた、基板を不動態化し得、それにより、めっきされた金属と基板との間の接着が不十分になる。これは、「ストライク」めっきと呼ばれる更なる工程で対処されることが多く、これにより処理工程の数が増え、このため、金属めっきプロセスの全体的な効率が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、安定であり、酸性であり、且つ高い導電性、低い電気接触抵抗及び低い摩擦係数を有する銀合金を生成する銀合金めっき浴が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、銀イオンの供給源、ビスマスイオンの供給源及び一般式:
HS-A-R (I)
(式中、Aは、置換又は非置換(C~C)アルカンジイルであり、及びRは、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基又はスルホネート基である)
を有するチオール末端脂肪族化合物並びに7未満のpHを含む2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物であって、置換基は、(C~C)アルキル、カルボキシ(C~C)アルキル及び-NHからなる群から選択される、2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物に関する。
【0007】
本発明は、基板に2成分銀-ビスマス合金を電気めっきする方法であって、
(a)基板を提供する工程と、
(b)基板を、銀イオンの供給源、ビスマスイオンの供給源及び一般式:
HS-A-R (I)
(式中、Aは、置換又は非置換(C~C)アルカンジイルであり、及びRは、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基又はスルホネート基である)
を有するチオール末端脂肪族化合物並びに7未満のpHを含む2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物であって、置換基は、(C~C)アルキル、カルボキシ(C~C)アルキル及び-NHからなる群から選択される、2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物と接触させる工程と、
(c)2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物及び基板に電流を印加して、基板に銀-ビスマス合金堆積物を電気めっきする工程と
を含む方法にも関する。
【0008】
本発明は、基板の表面に隣接する2成分銀-ビスマス合金層を含む物品であって、2成分銀-ビスマス合金層は、90%~99%の銀と、1%~10%のビスマスとを含み、且つ1以下の摩擦係数を有する、物品に更に関する。
【0009】
上記の式(I)を有するチオール末端脂肪族化合物を酸性環境において水性2成分銀-ビスマス電気めっき組成物に含めることにより、銀に富む2成分銀-ビスマス合金を基板に堆積することができ、それにより、銀に富む2成分銀-ビスマス合金は、金に匹敵する、良好な導電性及び低い電気接触抵抗などの実質的に銀堆積物の良好な電気特性を有する。更に、銀に富む2成分銀-ビスマス合金堆積物は、低い摩擦係数を有し、それにより、銀に富む2成分銀-ビスマス合金堆積物は、良好な機械的耐摩耗性を有する。銀に富む2成分銀-ビスマス堆積物は、外観において均一で光沢がある。本発明の2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、安定である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】銀のマトリックスにビスマスが微細に分散していることを示す、2成分銀-ビスマス合金の30,000倍のSEMである。
図2】x軸及びy軸がミクロン(μm)で校正されている、銀金属堆積物の表面の2D形状測定図形である。
図3】x軸、y軸及びz軸がミクロン(μm)で校正されている、銀金属堆積物の表面の3D形状測定図形である。
図4】本発明の銀-ビスマス合金堆積物の表面の3D形状測定図形であり、合金は、98%の銀及び2%のビスマスから構成され、x軸、y軸及びz軸は、ミクロン(μm)で校正されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書全体で使用されるように、文脈がそうでないと明確に示さない限り、略語は、以下の意味を有する:℃=摂氏、ppm=100万分の1、1ppm=1mg/L、g=グラム、mg=ミリグラム、L=リットル、mL=ミリリットル、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、μm=ミクロン、DI=脱イオン、A=アンペア、ASD=アンペア/dm=めっき速度、DC=直流、v=起電力のSI単位であるボルト、mΩ=ミリオーム=電気抵抗、cN=センチニュートン=力の単位、N=ニュートン、COF=摩擦係数、rpm=1分当たりの回転数、s=秒、SEM=走査型電子顕微鏡写真、2D=2次元、3D=三次元、Ag=銀、Bi=ビスマス、Au=金及びCu=銅。
【0012】
「アルカンジイル(複数形=アルカンジイル)」という用語は、特に明記されていない限り、脂肪族炭化水素に由来する一般式C2nの一連の二価ラジカルのいずれかを意味し、こうしたアルカンジイルは、置換アルカンジイルを含む。「アルキレン」という用語は、「アルカンジイル」の使用さなくなった用語又は同義語である。「脂肪族」という用語は、炭素原子が、芳香族環ではなく、開鎖(アルカンのように)を形成する有機化合物に関連するか又はそれを示すことを意味する。合金に関して、「2成分」という用語は、2つの金属の均一な混合物から構成される金属性固体を意味する。「隣接する」という用語は、2つの金属層が共通の界面を有するように直接接触することを意味する。「接触抵抗」という用語は、2つの導電性物品間に加えられる力の関数として測定される、2つの導電性物品間の接触から生じる電気抵抗を意味する。「還元電位」という用語は、金属イオンが電子を獲得し、これにより金属に還元される傾向の尺度を意味する。略語「N」は、力のSI単位であるニュートンを意味し、1キログラムの質量に1メートル毎秒毎秒の加速度を与える力に等しく、100,000ダインに等しい。「摩擦係数」という用語は、2つの物体間の摩擦力と、この2つの物体間の通常の反応との関係を示す値であり、F=μFで示され、ここで、Fは、摩擦力であり、μは、摩擦係数であり、Fは、法線力であり、法線力は、2つの物品間の摩擦力を測定しながら、2つの物品間の相対運動の方向に垂直な2つの物品間に加えられる力である。「トライボロジー」という用語は、相対運動における相互作用する表面の科学及び工学を意味し、潤滑、摩擦及び摩耗の原理の研究及び応用を含む。「耐摩耗性」という用語は、機械的作用による表面からの材料の損失を意味する。「水性」という用語は、水又は水系を意味する。「組成物」及び「浴」という用語は、本明細書全体にわたって互換的に使用される。「堆積物」及び「層」という用語は、本明細書全体にわたって互換的に使用される。「電気めっき」、「めっき」及び「堆積」という用語は、本明細書全体にわたって互換的に使用される。「艶消し」という用語は、ぼんやりしているか又は光沢がないことを意味する。「a(1つの)」及び「an(1つの)」という用語は、本明細書全体にわたって単数形及び複数形の両方を指すことができる。特に指定のない限り、全てのパーセント(%)の値及び範囲は、重量パーセントを示す。全ての数値範囲は、包含的であり、且ついかなる順序でも組み合わされ得るが、ただし、このような数値範囲を合計したものが100%となるように制約されることが論理的である場合を例外とする。
【0013】
本発明は、水性酸性2成分銀-ビスマス電気めっき組成物に関し、ここで、水性酸性2成分銀-ビスマス電気めっき組成物は、銀イオンの供給源、ビスマスイオンの供給源及び一般式:
HS-A-R (I)
(式中、Aは、置換又は非置換(C~C)アルカンジイルであり、及びRは、カルボキシル基、カルボキシレート基及び対カチオン、スルホン酸基又はスルホネート基及び対カチオンである)
を有するチオール末端脂肪族化合物並びに7未満のpHを含み、置換基は、(C~C)アルキル、カルボキシ(C~C)アルキル及び-NHからなる群から選択される。
【0014】
上記の式(I)を有するこのような化合物は、ビスマスイオンに対して選択的な錯化剤である。好ましくは、本発明の水性酸性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、少なくとも3:1、より好ましくは3:1~10:1、更により好ましくは3:1~6:1、最も好ましくは3.5:1~4.5:1の、ビスマスイオンに対する式(I)のチオール末端脂肪族化合物のモル比を含む。
【0015】
艶消しから半光沢までの均一な銀に富む2成分銀-ビスマス合金堆積物は、良好な導電性及び低い電気接触抵抗などの実質的に良好な電気特性を有する。銀に富む2成分銀-ビスマス合金堆積物は、低い摩擦係数を有し、それにより、銀に富む2成分銀-ビスマス合金層は、良好な機械的耐摩耗性を有する。本発明の酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、安定である。水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、これらに限定されないが、アンチモン、スズ、銅、ニッケル、コバルト、カドミウム、金、鉛、インジウム、鉄、パラジウム、プラチナ、ロジウム、ルテニウム、テルル、タリウム、セレン及び亜鉛などの任意の更なる合金金属を含まない。好ましくは、酸性水性銀-ビスマス電気めっき組成物は、シアン化物を含まない。
【0016】
好ましくは、本発明のチオール末端脂肪族化合物は、以下の1つ以上から選択される。
【化1】
及びチオール末端脂肪族化合物の塩。より好ましくは、本発明のチオール末端脂肪族化合物は、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、システイン、メルカプトコハク酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、2-メルカプトエタンスルホン酸及びチオール末端脂肪族化合物の塩の1つ以上から選択され、更により好ましくは、本発明のチオール末端脂肪族化合物は、システイン、メルカプトコハク酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、2-メルカプトエタンスルホン酸及びチオール末端脂肪族化合物の塩の1つ以上から選択され、更に好ましくは、本発明のチオール脂肪族化合物は、メルカプトコハク酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、2-メルカプトエタンスルホン酸及びチオール末端脂肪族化合物の塩の1つ以上から選択され、最も好ましくは、本発明のチオール末端脂肪族化合物は、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、2-メルカプトエタンスルホン酸及びチオール末端脂肪族化合物の塩の1つ以上から選択される。本発明のチオール化合物の塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム及びセシウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩並びにテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
好ましい塩の例は、チオグリコール酸アンモニウム;チオグリコール酸ナトリウム;メルカプトコハク酸、ナトリウム塩;3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、ナトリウム塩;3-メルカプト-1-エタンスルホン酸、ナトリウム塩及び3-メルカプト-1-エタンスルホン酸、カリウム塩である。このような好ましい塩の混合物は、本発明の2成分銀-ビスマス電気めっき組成物にも含まれ得る。より好ましくは、塩は、メルカプトコハク酸、ナトリウム塩;3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、ナトリウム塩及び3-メルカプト-1-エタンスルホン酸、ナトリウム塩である。
【0018】
本発明のチオール末端脂肪族化合物は、水性酸環境において銀に富む2成分銀-ビスマス合金の電気めっきを可能にするのに十分な量で含まれる。好ましくは、本発明のチオール末端脂肪族化合物は、5g/L以上の量で含まれ、より好ましくは、このチオール化合物は、10g/L~100g/L、更に好ましくは15g/L~60g/L、更により好ましくは20g/L~50g/L、最も好ましくは30g/L~50g/Lの量で含まれる。
【0019】
本発明の水性酸性銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、銀イオンの供給源を含む。銀イオンの供給源は、これらに限定されないが、ハロゲン化銀、グルコン酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、硝酸銀、硫酸銀、アルカンスルホン酸銀、アルカノールスルホン酸銀又はこれらの混合物などの銀塩によって提供できる。ハロゲン化銀が使用される場合、好ましくは、ハロゲン化物は、塩化物である。好ましくは、銀塩は、硫酸銀、アルカンスルホン酸銀、硝酸銀又はこれらの混合物であり、より好ましくは、銀塩は、硫酸銀、メタンスルホン酸銀又はこれらの混合物である。銀塩の混合物を組成物に含めることもできる。銀塩は、一般的に市販されているか、又は文献に記載されている方法によって調製することができる。好ましくは、銀塩は、容易に水に溶解する。
【0020】
水性酸性2成分銀-ビスマス電気めっき組成物に含まれる銀塩の量は、所望の艶消しから半光沢までの均一な銀に富む2成分銀-ビスマス合金堆積物を提供するのに十分な量であり、好ましくは、銀に富む2成分銀-ビスマス合金堆積物の銀含有量は、90%~99.8%の銀、更に好ましくは90%~99.7%の銀、より好ましくは93%~99.7%の銀、最も好ましくは95%~99%の銀を含む。好ましくは、銀塩は、少なくとも10g/Lの濃度で銀イオンを提供するために組成物に含まれ、より好ましくは、銀塩は、10g/L~100g/Lの量の銀イオン濃度を提供する量で組成物に含まれ、更に好ましくは、銀塩は、20g/L~80g/Lの銀イオン濃度を提供する量で含まれ、更により好ましくは、銀塩は、20g/L~70g/Lの濃度で銀イオンを提供する量で含まれ、最も好ましくは、銀塩は、20g/L~60g/Lの銀イオン濃度を提供する量で組成物に含まれる。
【0021】
水性酸性銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、溶液におけるBi3+イオンを電気めっき浴に提供するビスマスイオンの供給源を含む。ビスマスイオンの供給源としては、メタンスルホン酸ビスマス、エタンスルホン酸ビスマス、プロパンスルホン酸ビスマス、2-ビスマスプロパンスルホン酸及びp-フェノールスルホン酸ビスマスなどのアルカンスルホン酸のビスマス塩、ヒドロキシメタンスルホン酸ビスマス、2-ヒドロキシエタン-1-スルホン酸ビスマス及び2-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸ビスマスなどのアルカノールスルホン酸のビスマス塩並びに硝酸ビスマス、硫酸ビスマス、塩化ビスマス及び酸化ビスマスなどのビスマス塩が挙げられるが、これらに限定されない。ビスマス塩の混合物を組成物に含めることもできる。好ましくは、ビスマス塩は、水溶性である。
【0022】
水性酸性2成分銀-ビスマス電気めっき組成物に含まれるビスマス塩の量は、所望の艶消しから半光沢までの均一な銀に富む2成分銀-ビスマス合金堆積物を提供するのに十分な量であり、好ましくは、ここで、銀に富む2成分銀-ビスマス合金堆積物のビスマス含有量は、0.2%~10%のビスマス、更に好ましくは0.3%~10%のビスマス、より好ましくは0.3%~7%のビスマス、最も好ましくは1%~5%のビスマスを含む。好ましくは、ビスマス塩は、銀-ビスマス組成物に含まれ、50ppm~10g/L、更に好ましくは100ppm~5g/L、より好ましくは200ppm~1g/L、最も好ましくは300ppm~800ppmの量のビスマス(III)イオンを提供する。このようなビスマス塩は、市販されているか、又は化学文献の開示に従って製造することができる。それらは、一般的に、Aldrich Chemical Company,Milwaukee,Wisconsinなどの様々な供給源から市販されている。
【0023】
好ましくは、本発明の水性酸性銀-ビスマス合金電気めっき組成物において、溶媒として含まれている水は、偶発的な不純物を制限するために、脱イオンされること及び蒸留されることの少なくとも1つが行われる。
【0024】
任意選択的に、酸は、組成物に導電性を付与することを促進するために2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物に含まれ得る。酸としては、酢酸、クエン酸、アリールスルホン酸などの有機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びプロパンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、フェニルスルホン酸及びトリルスルホン酸などのアリールスルホン酸並びに硫酸、スルファミン酸、塩酸、臭化水素酸及びホウフッ化水素酸などの無機酸を挙げることができるが、これらに限定されない。前述の酸の水溶性塩は、本発明の2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物にも含まれ得る。好ましくは、酸は、酢酸、クエン酸、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸又はこれらの塩であり、より好ましくは、酸は、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸又はこれらの塩である。このような塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム及びセシウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム塩及びマグネシウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。このような塩としては、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム二塩基酸、クエン酸ナトリウム一塩基酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸二カリウム二塩基酸及びクエン酸カリウム一塩基酸も挙げられるが、これらに限定されない。酸の混合物を使用することができるが、好ましくは、使用する場合、単一の酸を使用する。酸は、一般的に市販されているか、又は文献で知られている方法により調製することができる。このような酸は、所望の導電性を提供する量で含まれ得る。好ましくは、酸又はその塩は、少なくとも5g/L、より好ましくは10g/L~250g/L、更により好ましくは30g/L~150g/L、最も好ましく30g/l~125g/Lの量で含まれる。
【0025】
水性酸性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物のpHは、7未満である。好ましくは、pHは、0~6であり、より好ましくは、pHは、0~5であり、更に好ましくは、pHは、0~3であり、更により好ましくは、pHは、0~2.5であり、最も好ましくは、pHは、0~2である。
【0026】
任意選択的に、pH調整剤は、本発明の水性酸性2成分銀-ビスマス合金組成物に含まれ得る。このようなpH調整剤としては、無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基及びこれらの塩が挙げられる。このような酸としては、硫酸、塩酸、スルファミン酸、ホウ酸、リン酸及びこれらの塩などの無機酸が挙げられるが、これらに限定されない。有機酸としては、酢酸、クエン酸、アミノ酢酸及びアスコルビン酸並びにこれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。このような塩としては、クエン酸三ナトリウムが挙げられるが、これに限定されない。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどの無機塩基並びに様々な種類のアミンなどの有機塩基を使用することができる。好ましくは、pH調整剤は、酢酸、クエン酸及びアミノ酢酸並びにこれらの塩、最も好ましくは酢酸、クエン酸及びこれらの塩から選択される。pH調整剤は、所望のpH範囲を維持するために必要な量で加えることができる。
【0027】
任意選択的に、しかし好ましくは、ジヒドロキシビススルフィド化合物又はこれらの混合物を本発明の水性酸性銀-ビスマス合金電気めっき組成物に含めることができる。このようなジヒドロキシビススルフィド化合物としては、2,4-ジチア-1,5-ペンタンジオール、2,5-ジチア-1,6-ヘキサンジオール、2,6-ジチア-1,7-ヘプタンジオール、2,7-ジチア-1,8-オクタンジオール、2,8-ジチア-1,9-ノナンジオール、2,9-ジチア-1,10-デカンジオール、2,11-ジチア-1,12-ドデカンジオール、5,8-ジチア-1,12-ドデカンジオール、2,15-ジチア-1,16-ヘキサデカンジオール、2,21-ジチア-1,22-ドエイコサンジオール、3,5-ジチア-1,7-ヘプタンジオール、3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール、3,8-ジチア-1,10-デカンジオール、3,10-ジチア-1,8-ドデカンジオール、3,13-ジチア-1,15-ペンタデカンジオール、3,18-ジチア-1,20-エイコサンジオール、4,6-ジチア-1,9-ノナンジオール、4,7-ジチア-1,10-デカンジオール、4,11-ジチア-1,14-テトラデカンジオール、4,15-ジチア-1,18-オクタデカンジオール、4,19-ジチア-1,22-ドエイコサンジオール、5,7-ジチア-1,11-ウンデカンジオール、5,9-ジチア-1,13-トリデカンジオール、5,13-ジチア-1,17-ヘプタデカンジオール、5,17-ジチア-1,21-ウンエイコサンジオール及び1,8-ジメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ジヒドロキシビススルフィド化合物は、3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール、3,8-ジチア-1,10-デカンジオール、2,4-ジチア-1,5-ペンタンジオール、2,5-ジチア-1,6-ヘキサンジオール、2,6-ジチア-1,7-ヘプタンジオール、2,7-ジチア-1,8-オクタンジオール、より好ましくは3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール、2,4-ジチア-1,5-ペンタンジオール、2,5-ジチア-1,6-ヘキサンジオール、2,6-ジチア-1,7-ヘプタンジオール及び2,7-ジチア-1,8-オクタンジオール、更により好ましくは3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール、2,6-ジチア-1,7-ヘプタンジオール及び2,7-ジチア-1,8-オクタンジオール、最も好ましくは3,6-ジチア-1,8-オクタンジオールから選択される。
【0028】
好ましくは、ジヒドロキシビススルフィド化合物は、水性酸性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物に少なくとも0.5g/L、より好ましくは10g/L~200g/L、更により好ましくは50g/L~150g/L、更に好ましくは50g/L~125g/L、最も好ましくは80g/L~115g/Lの量で含まれ得る。
【0029】
任意選択的に、1つ以上の界面活性剤は、本発明の水性酸性銀-ニッケル合金電気めっき組成物に含まれ得る。このような界面活性剤としては、カチオン性及びアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤などのイオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤は、0.05m/L~30m/Lなどの従来の量で含まれ得る。
【0030】
アニオン性界面活性剤の例としては、ジ(1,3-ジメチルブチル)スルホコハク酸ナトリウム、ナトリウム-2-エチルヘキシル硫酸、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤の例は、ペルフルオロ化4級アミンなどの4級アンモニウム塩である。
【0031】
他の任意の添加剤には、光沢剤及び殺生物剤が含まれ得るが、これらに限定されない。当技術分野で周知の従来の光沢剤及び殺生物剤は、水性酸性2成分銀-ビスマス電気めっき組成物に含まれ得る。このような任意の添加剤は、従来の量で含まれ得る。
【0032】
好ましくは、本発明の酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、水、銀イオン及び対アニオン、ビスマス(III)イオン及び対アニオン、一般式:
HS-A-R(I)
(式中、Aは、置換又は非置換(C~C)アルカンジイルであり、及びRは、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基又はスルホネート基である)
を有するチオール末端脂肪族化合物であって、置換基は、(C~C)アルキル、カルボキシ(C~C)アルキル及び-NHからなる群から選択される、チオール末端脂肪族化合物、任意選択的にジヒドロキシビススルフィド化合物、任意選択的に酸又はその塩、任意選択的にpH調整剤、任意選択的に界面活性剤、任意選択的に光沢剤及び任意選択的に殺生物剤から構成され、pHは、7未満である。
【0033】
更に好ましくは、本発明の酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、水、銀イオン及び対アニオン、ビスマス(III)イオン及び対アニオン、一般式:
HS-A-R(I)
(式中、Aは、置換又は非置換(C~C)アルカンジイルであり、及びRは、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基又はスルホネート基である)
を有するチオール末端脂肪族化合物であって、置換基は、(C~C)アルキル、カルボキシ(C~C)アルキル及び-NHからなる群から選択される、チオール末端脂肪族化合物、ジヒドロキシビススルフィド化合物、任意選択的に酸又はその塩、任意選択的にpH調整剤、任意選択的に界面活性剤、任意選択的に光沢剤及び任意選択的に殺生物剤から構成され、pHは、0~6である。
【0034】
より好ましくは、本発明の酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、水、銀イオン及び対アニオン、ビスマス(III)イオン及び対アニオン、一般式:
HS-A-R(I)
(式中、Aは、置換又は非置換(C1~)アルカンジイルであり、及びRは、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基又はスルホネート基である)
を有するチオール末端脂肪族化合物であって、置換基は、(C~C)アルキル、カルボキシ(C~C)アルキル及び-NHからなる群から選択される、チオール末端脂肪族化合物、ジヒドロキシビススルフィド化合物、酸又はその塩、任意選択的にpH調整剤、任意選択的に界面活性剤、任意選択的に光沢剤及び任意選択的に殺生物剤から構成され、pHは、0~6である。
【0035】
更により好ましくは、本発明の酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、水、銀イオン及び対アニオン、ビスマス(III)イオン及び対アニオン、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、システイン、メルカプトコハク酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、2-メルカプトエタンスルホン酸からなる群から選択されるチオール末端脂肪族化合物、チオール末端脂肪族化合物の塩及びこれらの混合物、ジヒドロキシビススルフィド化合物、その酸又は塩、任意選択的にpH調整剤、任意選択的に界面活性剤、任意選択的に光沢剤及び任意選択的に殺生物剤から構成され、pHは、0~3である。
【0036】
本発明の酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物を使用して、導電性及び半導電性基板の両方の様々な基板に2成分銀-ビスマス合金層を堆積させることができる。好ましくは、銀-ビスマス合金層が堆積される基板は、銅及び銅合金基板である。このような銅合金基板には、真鍮及び青銅が含まれるが、これらに限定されない。めっき中の電気めっき組成物の温度は、室温~70℃、好ましくは30℃~60℃、より好ましくは40℃~60℃の範囲であり得る。銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、好ましくは、電気めっき中に連続攪拌下にある。
【0037】
本発明の酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき方法は、基板を提供する工程、本発明の酸性水性銀-ビスマス合金電気めっき組成物を提供する工程及び例えば基板を組成物中に浸漬することにより又は基板に組成物を噴霧することにより、基板を酸性水性銀-ビスマス合金電気めっき組成物と接触させる工程を含む。従来の整流器で電流を流し、ここで、基板がカソードとして機能し、対電極又はアノードが存在する。アノードは、2成分銀-ビスマス合金を電気めっきして、基板の表面に隣接して堆積させるために使用される任意の従来の可溶性又は不溶性アノードであり得る。
【0038】
本発明の酸性水性銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、広い電流密度範囲にわたり、艶消しから半光沢までの均一な銀に富む銀-ビスマス合金層の堆積を可能にする。銀に富む銀-ビスマス合金は、合金中の不可避の不純物を除いて、90%~99.8%の銀及び0.2%~10%のビスマス、好ましくは90%~99.7%の銀及び0.3%~10%のビスマス、より好ましくは93%~99.7%の銀及び0.3%~7%のビスマス、最も好ましくは95%~99%の銀及び1%~5%のビスマスを含む。
【0039】
本発明の艶消しから半光沢までの均一な銀に富む銀-ビスマス合金を電気めっきするための電流密度は、0.1ASD以上の範囲であり得る。好ましくは、電流密度は、0.5ASD~70ASD、更に好ましくは1ASD~40ASD、より好ましくは1ASD~30ASD、更により好ましくは1ASD~15ASDの範囲である。
【0040】
本発明の2成分銀-ビスマス合金層の厚さは、銀-ビスマス合金層の機能及びそれがめっきされる基板のタイプに応じて変動し得る。好ましくは、銀-ビスマス合金層は、1μm以上の範囲である。更に好ましくは、銀-ビスマス層は、1μm~100μm、より好ましくは1μm~50μm、更により好ましくは1μm~10μm、最も好ましくは1μm~5μmの厚さ範囲を有する。
【0041】
本発明の酸性水性2成分銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、銀-ビスマス合金層を含むことができる様々な基板をめっきするために使用できることが想定される一方、好ましくは、本発明の酸性水性銀-ビスマス合金電気めっき組成物は、相当な接触力及び摩耗が発生すると予想される電気コネクタの上部層又はコーティングを電気めっきするために使用される。銀に富む銀-ビスマス合金の堆積物は、従来のコネクタに見られる従来の銀コーティングの非常に望ましい代替物である。銀-ビスマス合金堆積物は、低い電気接触抵抗を有する。更に、本発明の銀-ビスマス合金堆積物は、低いCOF、好ましくは1以下、より好ましくは0.3以下のCOFを有する。本発明の銀-ニッケル合金堆積物のCOFは、実質的に純粋な銀堆積物のCOFよりも好ましくは40%、より好ましくは80%少ないCOFを有し、従って、本発明の2成分銀-ビスマス合金は、実質的に純粋な銀よりも耐摩耗性が実質的に改善されている。当技術分野で周知の従来のトライボロジー測定及び形状測定により、金属堆積物の表面摩耗を決定することができる。
【0042】
以下の実施例は、本発明を更に例示するために含まれるが、その範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0043】
2成分銀-ビスマス合金電気めっきの実施例1~8:
特に明記しない限り、全ての場合において、電気めっき基板は、5cm×5cmの真鍮(70%の銅、30%の亜鉛)クーポンであった。電気めっき前にクーポンをRONACLEAN(商標)GP-100電解アルカリ脱脂洗浄剤(DuPont de Nemoursから入手可能)において室温で30秒間、電流密度5ASDの直流で電気洗浄した。電気洗浄後、クーポンを脱イオン水で濯ぎ、10%の硫酸で30秒間活性化し、脱イオン水で再度濯ぎ、次いで電気めっき浴に入れた。電流密度1ASD(実際の流れた電流は、0.28Aである)において直流で6分間電気めっきを行い、約4μmの銀-ビスマス堆積物を堆積させた。電気めっきは、白金化チタンアノードを使用して、四角いガラスビーカーにおいて行った。撹拌は、400rpmの回転速度において、長さ5cmのテフロンコーティングされた攪拌棒によって行った。電気めっきは、55℃の温度で行った。全ての銀-ビスマス電気めっき浴は、水系であった。それぞれの浴に水を加えて所望の体積にした。電気めっき浴のpHは、水酸化カリウム又はメタンスルホン酸で調整した。
【0044】
電気めっきされた銀-ビスマス合金の厚さ及び元素組成は、Bowman,Schaumburg,ILから入手可能なBowman Series P X線蛍光光度計(XRF)を使用して測定した。XRFは、Bowmanの銀及びビスマスの純元素厚さ標準を使用して校正し、純元素厚さ標準及びXRF取扱説明書のファンダメンタルパラメーター(FP)計算を組み合わせて合金組成及び厚さを計算した。
【0045】
実施例1(本発明)
以下の組成の水性酸性2成分銀-ビスマス電気めっき浴を調製する。
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール:102g/L
2g/Lのビスマスイオンを供給するメタンスルホン酸ビスマス
システイン:9g/L
3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、ナトリウム塩:2g/L
2に調整したpH
【0046】
めっき処理後、電着されたコーティングは、金属性及び艶消しであり、98%の銀及び2%のビスマスの組成である。図1は、銀のマトリックスにビスマスが微細に分散していることを示す、2成分銀-ビスマス合金の30,000倍のSEMである。
【0047】
実施例2(本発明)
以下の組成の水性酸性2成分銀-ビスマス合金電気めっき浴を調製する。
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール:102g/L
5g/Lのビスマスイオンを供給するメタンスルホン酸ビスマス
システイン:9g/L
2-メルカプトエタンスルホン酸:400ppm
2に調整したpH
【0048】
めっき処理後、電着されたコーティングは、金属性及び半光沢であり、95%の銀及び5%のビスマスの組成である。
【0049】
実施例3(本発明)
以下の組成の水性酸性2成分銀-ビスマス合金電気めっき浴を調製する。
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール:102g/L
5g/Lのビスマスイオンを供給するメタンスルホン酸ビスマス
3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、ナトリウム塩:13.2g/L
システイン:400ppm
2に調整したpH
【0050】
めっき処理後、電着されたコーティングは、金属性及び半光沢であり、96%の銀及び4%のビスマスの組成である。
【0051】
実施例4(本発明)
以下の組成の水性酸性2成分銀-ビスマス合金電気めっき浴を調製する。
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール:102g/L
5g/Lのビスマスイオンを供給するメタンスルホン酸ビスマス
3-メルカプト-1-エタンスルホン酸、ナトリウム塩:12.2g/L
システイン:400ppm
2に調整したpH
【0052】
めっき処理後、電着されたコーティングは、金属性及び半光沢であり、96%の銀及び4%のビスマスの組成である。
【0053】
実施例5(発明)
以下の組成の水性酸性2成分銀-ビスマス合金電気めっき浴を調製する。
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール:102g/L
5g/Lのビスマスイオンを供給するメタンスルホン酸ビスマス
メルカプトコハク酸:11.1g/L
3-メルカプト-1-エタンスルホン酸、ナトリウム塩:400ppm
2に調整したpH
【0054】
めっき処理後、電着されたコーティングは、金属性及び艶消しであり、98%の銀及び2%のビスマスの組成である。
【0055】
実施例6(本発明)
以下の組成の水性酸性2成分銀-ビスマス電気めっき浴を調製する。
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール:102g/L
5g/Lのビスマスイオンを供給するメタンスルホン酸ビスマス
メルカプトコハク酸:11.9g/L
2-メルカプトプロピオン酸:400ppm
2に調整したpH
【0056】
めっき処理後、電着されたコーティングは、金属性及び艶消しであり、94%の銀及び6%のビスマスの組成である。
【0057】
実施例7(本発明)
以下の組成の水性酸性2成分銀-ビスマス電気めっき浴を調製する。
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール:102g/L
5g/Lのビスマスイオンを供給するメタンスルホン酸ビスマス
メルカプト酢酸:9g/L
2-メルカプトエタンスルホン酸:400ppm
2に調整したpH
【0058】
めっき処理後、電着されたコーティングは、金属及び半光沢であり、95%の銀及び5%のビスマスの組成である。
【0059】
実施例8(比較例)
以下の組成の水性酸性2成分銀-ビスマス電気めっき浴を調製する。
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
10g/Lのビスマスイオンを供給するメタンスルホン酸ビスマス
メタンスルホン酸:150g/L
Pluronic L-44界面活性剤(BASFから購入):10g/L
O-クロロベンズアルデヒド:100ppm
3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール:80g/L
pH<1
【0060】
めっき処理後、電着されたコーティングは、金属性及び半光沢であり、46%の銀及び54%のビスマスの組成である。
【0061】
実施例9(本発明)
接触抵抗測定
接触抵抗は、Starrett DFC-20デジタルフォースゲージを備えたStarrett MTH-550手動フォース試験装置スタンドを含む、カスタム設計された装置を使用して評価した。デジタルフォースゲージには、直径2.5mmの半球状の先端を備えた金めっきされた銅プローブが装備されていた。金めっきされたプローブと、対象の銀合金でめっきされた平らなクーポンとの間の接触の電気抵抗を、接触力が変動したときの4線式抵抗測定を使用して測定した。電流源は、Keithley 6220DC電流源であり、電圧計は、Keithley 2182Aナノボルトメータであった。これらの機器は、最大の精度を得るために熱電補償モードで操作した。
【0062】
上記の実施例1に開示された水性酸性2成分銀-ビスマス合金電気めっき浴からの約3μmの2成分銀-ビスマス合金で電気めっきした平らな真鍮クーポンを使用して試験を行った。適用した力は、Starrett DGF-20デジタルフォースゲージを使用して測定され、手動の高さステージを使用して調整される。接触抵抗は、下記の表1に示される。
【表1】
【0063】
実施例10(比較例)
銀の耐摩耗性
トライボロジー測定は、線形往復ステージを備えたAnton Paar TRB3ピン-オン-ディスク摩擦計(Anton Paar GmbH,Graz,Austriaから入手可能)を使用して行った。全ての試験は、1Nの荷重、10mmのストローク長及び5mm/秒の滑り速度を使用して行った。全ての試験は、「ライク-オン-ライク」で行い、すなわち、平らなクーポン及び球形ボールは、それぞれDuPont de Nemoursから入手可能なSILVER GLO(商標)電解銀浴から生成された同じ銀金属堆積物でめっきされた。使用したボールは、C260真鍮(70%の銅、30%の亜鉛)からなり、直径が5.55mmであり、約5μmの銀で電気めっきされた。平らなクーポンはまた、C260真鍮からなり、約5μmの銀で電気めっきされた。試験中、摩擦係数を、摩擦計を使用して監視した。摩耗痕の深さは、レーザー形状測定を使用して測定した。測定は、100サイクルで行い、それぞれのサイクルは、クーポン上のボールの1回の往復ストロークであった。銀めっきされた堆積物を突き破るのに必要なのは、100サイクルのみであった。形状測定の測定は、Keyence VK-Xレーザー走査型共焦点顕微鏡(Keyence Corporation of America,Elmwood Park,NJから入手可能)を使用して行った。摩耗痕は、レーザー形状測定を使用して200倍の倍率で測定した。3D及び2D形状測定図形は、KeyenceのVK-X Analysisソフトウェアを使用して、これらの測定から作成された。
【0064】
図2は、x軸に沿って600μm~800μm及びy軸に沿って+2μm~-5μmの銀の主要な表面摩耗を示す、銀堆積の2D形状測定グラフである。縦の点線は、7.3μmであるくぼみ-摩耗痕の深さを示す。図3は、銀堆積物の3D形状測定グラフであり、100サイクル後の銀堆積の深刻な表面摩耗を更に例示する。スケールは、図2の通り、くぼみ摩耗痕の深さを示す。
【0065】
摩擦係数(COF)は、約1.6であると決定された。COFは、ソフトウェアTribometer、バージョン8.1.5を使用して、上記の摩擦計によって直接測定した。
【0066】
実施例11(本発明)
2成分銀-ビスマス合金耐摩耗性
トライボロジー測定は、上記の実施例10の通り、線形往復ステージを備えたAnton Paar TRB3ピン-オン-ディスク摩擦計を使用して行われる。全ての試験は、1Nの荷重、10mmのストローク長及び5mm/秒の滑り速度を使用して行った。平らなクーポン及び球形のボールは、それぞれ上記の実施例1の銀-ビスマス合金でめっきされている。使用したボールは、C260真鍮(70%の銅、30%の亜鉛)からなり、直径は、5.55mmであり、約5μmの銀-ビスマス合金で電気めっきされている。平らなクーポンはまた、C260真鍮からなり、約2μmの合金で電気めっきされている。試験中、摩擦係数は、摩擦計を使用して監視される。摩耗痕の深さは、Keyence VK-Xレーザー走査型共焦点顕微鏡を使用して、実施例10の通りレーザー形状測定を使用して測定される。測定は、500サイクルにわたって行われる。摩耗痕は、レーザー形状測定を使用して200倍の倍率で測定される。Keyenceのソフトウェアを使用して、これらの測定値から3D形状測定図形が作成される。
【0067】
図4は、銀-ビスマス堆積物の3D形状測定グラフである。500サイクル後でも表面の摩耗の兆候はない。摩擦係数は、約0.3であると決定され、これは、実施例10の銀よりも80%減少している。
図1
図2
図3
図4