(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】宇宙ロケット用姿勢制御及び推力増強システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B64G 1/26 20060101AFI20220224BHJP
F02K 9/90 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
B64G1/26 A
F02K9/90
(21)【出願番号】P 2020518594
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(86)【国際出願番号】 IB2018054092
(87)【国際公開番号】W WO2018224998
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】102017000063102
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519438073
【氏名又は名称】アヴィオ ソチエタ ペル アチオーニ
【氏名又は名称原語表記】AVIO S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Leonida Bissolati, 76, 00187 Roma ITALY
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ロザティ,ロベルト
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-532809(JP,A)
【文献】特表2004-534918(JP,A)
【文献】特開平06-257512(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106593696(CN,A)
【文献】特開平02-099751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/24-1/26
F02K 9/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙ロケット用姿勢制御及び推力増強システム(100)であって、
排気ノズル(352)を備えたロケットエンジン(303)を有し、
前記排気ノズル(352)が、ロケットエンジンの長手方向軸線(A
L)に対して所定の拡大角度によって画定された出口セクションを通って超音速ガス流を流出させるように構成された拡大部分(302)を備え、
前記姿勢制御及び推力増強システム(100)が、
・排気ノズルから機械的に切り離され、ロケットエンジンの長手方向軸線に対して様々な角度位置をとるように作動させることができる、排気ノズルの拡大部分を延ばすように形成され、出口セクションの周りに配置された複数のフラップ(110、111、112、113)と、
・宇宙ロケットの実際の姿勢及び周囲の静圧を示す量を受け取り、フラップ(110、111、112、113)に、ロケットエンジンの長手方向軸に対して、所定の拡大角度以上の傾斜角に従って、フラップ(110、111、112、113)が傾斜する中立角度位置をとらせ、周囲の静圧に従って、前記周囲静圧が減少するにつれて前記傾斜角度を減少させることによって、フラップ(110、111、112、113)がとる中立角度位置を制御し、一つ又は複数のフラップ(110、111、112、113)に、宇宙ロケットの実際の姿勢及び前記宇宙ロケットに必要な姿勢に従って、中立角度位置とは異なった角度位置をとらせるように構成された制御手段(130)と
を備えていることを特徴とする宇宙ロケット用姿勢制御及び推力増強システム。
【請求項2】
前記制御手段(130)が、
・周囲静圧が減少することにつれて、前記傾斜角度を所定の拡大角度に一致させるまで傾斜角度を減少させ、
・次いで、前記傾斜角度を、周囲静圧とは独立して所定の拡大角度に等しく保つ
ように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御手段(130)が、
・周囲静圧が予め設定された閾値よりも大きい場合、傾斜角度を減少させ、周囲静圧の新しい現在値の各々に対して、超音速流の過膨張を生じさせないように傾斜角度の対応する現在値を決定し、
・周囲静圧が予め設定された閾値に対応する場合、傾斜角度を所定の拡大角度に一致させ、
・次いで、前記傾斜角角度を、周囲の静圧とは独立して、所定の拡大角度に等しく保つ
ように構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御手段(130)が、
・宇宙ロケットの実際の姿勢と、前記宇宙ロケットの要求される姿勢とを比較し、
・
実際の姿勢が要求される姿勢と異なる場合、
前記実際の姿勢及び前記要求される姿勢に基づいて、前記フラップ(110、111、112、113)が、出口セクションから出る超音速ガス流を偏向させて、実際の姿勢を要求される姿勢に向ける角度位置を決定し、前記フラップ(110、111、112、113)に所定の角度位置をとらせることによって、
フラップ(110、111、112、113)に、中立角度位置とは異なる角度位置をとらせる
ように構成されている
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御手段(130)が、
・宇宙ロケットに設置され、前記宇宙ロケットの実際の姿勢を検出するように構成された慣性プラットフォーム(201)と、
・宇宙ロケットに設置され、周囲の静圧を測定するように構成された圧力感知装置(202)と、
に接続されている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御手段(130)が、
前記宇宙ロケットの要求されている姿勢を示す一つ以上の量を決定し、受信し、又は記憶するように構成されている
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記フラップ(110、111、112、113)が、宇宙ロケットの外側構造体(301)に拘束され、前記出口セクションに配置され、かつ、前記出口セクションの周りに延在する支持構造体(140)にヒンジ止めされ、
前記フラップ(110、111、112、113)が、ロケットエンジンの長手方向軸線に対して異なる角度位置をとるように作動させることができるよう前記支持構造体(140)にヒンジ止めされて
いる
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
該システムが、複数のフラップ間パネル(160)をさらに含み、
各フラップ間パネルが、二つの隣接するフラップ(110、111、112、113)の間の隙間で支持構造体(140)にヒンジ止めされ、前記各隣接するフラップ(110、111、112、113)の少なくとも一つと常に接触したままになるよう設計されている
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
さらに複数のアクチュエータ(120)を備え、
前記アクチュエータ(120)が、
・宇宙ロケットの外側構造体(301)に固定され、
・フラップ(110、111、112、113)に連結され、前記フラップ(110、111、112、113)がロケットエンジンの長手方向軸線に対して異なる角度位置をとるように動作可能であり、
・前記制御手段(130)によって作動されている制御手段(130)に接続されている
ことを特徴とする請求項
1~8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記出口セクションが、前記ロケットエンジンの長手方向軸線に垂直な平面上に位置し、
前記ロケットエンジンの前記長手方向軸線が、前記排気ノズル及び前記ロケットエンジンの対称中心軸線である
ことを特徴とする請求項
1~9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記フラップ(110、111、112、113)が、宇宙ロケットの外側構造体(301)に拘束されているように構成された支持構造体(140)にヒンジ結合され、
支持構造体(140)が、排気ノズルの出口セクションに設けられ、前記出口セクションの周りに延在し、
前記フラップ(110、111、112、113)が、排気ノズルの長手方向軸線に対して異なる角度位置をとるよう作動させることができるように、支持構造(140)にヒンジ止めされ、
各フラップ(110、111、112、113)が、それぞれのアクチュエータ(120)と関連付けされ、
前記フラップが、互いに重なり合うことなく単一レベルで互いに整列して配置され、隣接するフラップの各対の間に間隙を形成し、かつ、
複数のフラップ間パネル(160)が設けられ、
各フラップ間パネルが、二つのフラップ(110、111、112、113)の間の隙間で支持構造体(140)にヒンジ止めされ、前記隙間が形成されているフラップ(110、111、112、113)の少なくとも一つと接触したままであるように受動的に付勢される
ことを特徴とする請求項1
~6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記フラップ間パネル(160)を押圧して、前記隣接するフラップのうちの少なくとも一つの上に載るように適合された、各フラップ間パネル(160)のための弾性予荷重部材をさらに備えている
ことを特徴とする請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
排気ノズル及びフラップ(111、112、113)が、フラップ(111、112、113)の少なくとも幾つかの角度位置において、排気ノズル(352)の拡大部分(302)の後縁部(358)と各フラップ(110; 111、112、113)の前縁部(354)との間に隙間(360)が形成され、前記隙間(360)が排気ノズル及びフラップによって画定されている内部容積をノズル及びフラップの外側の空間と連通させるように配置され、
前記隙間が、フラップの少なくとも一つの角度位置において、ノズルから排出されているガス流が外気の吸引を生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項
11又は12に記載の装置。
【請求項14】
排気ノズル(352)の拡大部分(302)の後縁部(358)と各フラップ(111、112、113)の前縁部(354)との間に隙間(360)が形成され、
前記隙間(360)が、排気ノズル(352)の拡大部分(302)とフラップ(111、112、113)とによって形成されている構成の内側の容積を、ロケットが推力装置の推力の下で移動する周囲空間と連結する
ことを特徴とする請求項
11~13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
排気ノズルを備えたロケットエンジンを装備した宇宙ロケット又は多段式宇宙ロケットであって、
前記排気ノズル(352)が、ロケットエンジンの長手方向軸線に対して所定の拡大角度によって画定されている出口セクションを介して超音速ガス流を流出させるように構成された拡大部分(302)を備え、
前記宇宙ロケット又はロケットステージが、請求項1~13の何れか一項に記載の姿勢制御及び推力増強システム(100)を装備している
ことを特徴とする宇宙ロケット又は多段式宇宙ロケット。
【請求項16】
ロケットエンジンの長手方向軸線に対して所定の拡大角度によって画定された出口セクションを介して超音速ガス流を流出させるように構成された拡大部分(302)を有する排気ノズルが設けられたロケットエンジンを備えた宇宙ロケット用の姿勢制御及び推力増強方法(100)であって、
・宇宙ロケットの実際の姿勢及び周囲静圧を示す量を受け取るステップ、
・ノズルの出口部分の周りに配置され、ノズルの拡大部分を延在するように成形された複数のフラップ(110、111、112、113)に中立角度位置をとらせ、前記中立角度位置において、フラップ(110、111、112、113)が、所定の拡大角度に等しいか、又は、それより大きい傾斜角度に従って、ロケットエンジンの長手方向軸線に対して傾斜するステップ、及び
周囲静圧に従って、前記周囲静圧が減少するにつれて、前記フラップ(111、112、113)の傾斜角度を減少させることによって、フラップ(110、111、112、113)によって取られる中立角度位置を制御するステップ
有することを特徴とする方法。
【請求項17】
一つ又は複数のフラップ(110、111、112、113)に、宇宙ロケットの実際の姿勢及び前記宇宙ロケットの必要な姿勢に従って、中立角度位置とは異なる角度位置をとらせるステップをさらに有する
ことを特徴とする請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
・周囲静圧が減少するにつれて、フラップ(11、112、113)の傾斜角度を減少させて、前記傾斜角度を所定の拡大角度に一致させるステップ、
・次いで、前記傾斜角度を、周囲静圧とは独立して所定の拡大角度に等しく保つステップ
を有することを特徴とする請求項
16又は17に記載の方法。
【請求項19】
・周囲静圧が予め設定された閾値よりも大きい場合、傾斜角度を減少させ、周囲静圧の新しい現在値の各々に対して、超音速流の過膨張を生じさせないように傾斜角度の対応する現在値を決定するステップ、
・周囲静圧が予め設定された閾値に対応する場合、傾斜角度を所定の拡大角度に一致させるステップ、
・次いで、周囲の静圧とは独立して、前記傾斜角度を所定の拡大角度に等しく保つステップ
を含むことを特徴とする請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
・宇宙ロケットの実際の姿勢と前記宇宙ロケットに要求されている姿勢とを比較するステップ、
・実際の姿勢が要求されている姿勢と異なる場合、
・前記実際の姿勢及び前記要求されている姿勢に基づいて、前記フラップ(110、111、112、113)の少なくとも一つが、出口セクションから出る超音速ガス流を偏向させて、実際の姿勢を要求されている姿勢に導く角度位置を決定するステップ、
・前記フラップ(110、111、112、113)に所定の角度位置をとらせるステップ
を有することを特徴とする請求項
16~19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
宇宙ロケットに設けられた姿勢制御及び推力増強システム(100)の処理手段にアップロードすることができるコードの少なくとも一部を含むコンピュータ製品であって、
前記コードの前記一部が、前記処理手段にアップロードされたときに、前記処理手段が請求項
1~14の何れか一項に従った姿勢制御及び推力増強システム(100)の制御手段(130)となるようにされている
ことを特徴とするコンピュータ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は宇宙ロケットに関する。本明細書に記載される実施形態は、宇宙ロケット、特に、多段宇宙ロケットの一つ又は複数の段階用の姿勢制御及び推力増強システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、宇宙ロケットの姿勢を制御するためにほとんど普遍的に使用されている機構は、現在、エンジンの排気ノズルを偏向させることによってロケットのロケットエンジンの推力方向を変化させる機構(TVC推力ロケット制御としても知られているシステム)であり、ロケットの軸線に直交する力成分を生成し、この力成分が、エンジン推力軸線とロケットの重心との間の距離の関数である制御トルクを生成する。
【0003】
典型的なTVCシステムは、特に、ロケットエンジンの排気ノズルに結合され、互いに直交する平面上に配置され、推力方向を変化させるように前記ノズルを偏向させるように作動され、それによって制御トルクを生成する二つの線形アクチュエータを使用する。
【0004】
従来のTVCシステムは、以下に述べる技術的欠点を有する。
【0005】
固体燃料ロケットモータ(SRMs)又はハイブリッド燃料ロケットエンジン(HREs)の場合、ノズルに可撓性ジョイントを設けなければならないので、その製造が非常に複雑であり、従って、コストが非常に高くなり、さらに、製造されている単一ユニットの機械的特徴は、技術仕様の公称値と著しく異なるものになることがある。
【0006】
液体燃料ロケットエンジン(LREs)の場合、「ノズル/燃焼室」ユニットには、ユニバーサルジョイント(「ジンバル」)を設けなければならず、この場合も、ロケットシステムの複雑さ、重量、及びコストが増大する。
【0007】
ノズルの構造工学は、ノズルが偏向されている間にアクチュエータによって生成される荷重を考慮に入れなければならない。
【0008】
より大きなエンジンでは、ノズル可動質量が数百キログラムのオーダーであり得、その結果、TVCシステムに高い慣性値の負荷が加えられることになり、その動的特徴(例えば、ステップコマンド応答、周波数帯域等)を著しく制限する。
【0009】
さらに、従来のTVCシステムは、ロケットエンジンの点火過渡中に発生する、ガス力学的性質の非定常現象、所謂、衝撃負荷にもさらされている。この現象は、エンジン点火の数千分の1秒後(拡大部分内の流れが完全に超音速になる前)にノズルの拡大部分で発生し、ガス流出における強い衝撃波及び不連続性の発生によって特徴付けられ、これは、次いで、上述の従来のTVCシステムの「ノズル/アクチュエータ」セット上に著しい衝撃負荷を誘発する。
【0010】
国際特許公開第WO-A-2015/011198号は、ロケットエンジンのための燃焼ガス放出装置を開示しており、該装置では、固定ノズル、即ち、それが設置されている航空機に対して固定されているノズルの周りに、角度的に可動であり、ノズルの延長部を画定するフラップが設けられている。フラップは、燃焼ガスが横方向に逃げることができる空間のない実質的に連続した壁を提供するために、二列で、即ち、一つの内側列及び一つの外側列で配置されている。重なり合ったフラップの各列の各フラップには、フラップを角度的に移動させるために、それぞれアクチュエータが設けられている。この構成は、非常に複雑で高価である。国際特許公開第WO-A-2015/011198号は、概して、フラップの角度配置が飛行条件及び飛行高度に従って変更され得るという事実に言及しているが、フラップをどのように制御するかについての実際的な教示はない。言及された唯一のことは、フラップの位置が、固定ノズルの円筒形又は円錐形の収縮延長部を形成するようなものであってもよいということだけである。実際には、たとえ非常に大まかな説明であるとしても、フラップはノズルの開口部に対して収縮する傾斜をとることが示唆されている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第一の目的は、従来のTVCシステムの上述の技術的欠点を有さない宇宙ロケットのための姿勢制御システムを提供することにある。
【0012】
本発明の第二の目的は、宇宙ロケットのロケットエンジンの推力方向を制御することに加えて、エンジン点火高さより上の飛行高度においてその推力を増大させることができる姿勢制御システムを提供することにある。
【0013】
これらの目的及び他の目的は、添付の特許請求の範囲に定義されたことに従った姿勢制御及び推力増強システムに関する本発明によって達成されている。
【0014】
特に、本発明による姿勢制御及び推力増強システムは、従来のTVCシステムのように偏向させる必要がないが、その長手方向軸線がロケットエンジンの長手方向軸線に一致するように固定された排気ノズルが設けられたロケットエンジンを備えた宇宙ロケットに設置されているように設計され、前記排気ノズルはロケットエンジンの長手方向軸線に対して所定の拡大角度によって画定されている出口セクションを介して超音速ガス流が出るように設計された拡大部分を備える。
【0015】
姿勢制御及び推力増強システムは、出口セクションの周りに配置され、排気ノズルの拡大部分を延ばすように成形され、前記排気ノズルから機械的に分離され、ロケットエンジンの長手方向軸線に対して異なる角度位置をとるように作動させることができる複数のフラップを備えていることを特徴とする。
このシステムは、さらに制御手段を備え、
該制御手段は、
(a)宇宙ロケットの実際の姿勢及び周囲静圧を示す量を受け取り、
(b)フラップを、ロケットエンジンの長手方向軸線に対して、所定の拡大角度以上の傾斜角度に従って傾斜させる中立角度位置を、フラップにとらせ、
(c)周囲静圧に従ってフラップがとる中立角度位置を制御し、
(d)一つ又は複数のフラップに、宇宙ロケットの実際の姿勢及び前記宇宙ロケットに必要な姿勢に従って、中立角度位置とは異なった角度位置をとらせる
よう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による姿勢制御及び推力増強システムを概略的に示し、同時に、それぞれの動作ロジックも示す。
【
図2】
図1の姿勢制御及び推力増強システムに属するフラップ及び各リニアアクチュエータの実施形態を示す。
【
図3】
図2のフラップがとり得る角度位置の一つを示す。
【
図4】
図2のフラップがとり得る角度位置の一つを示す。
【
図5】
図2のフラップがとり得る角度位置の一つを示す。
【
図6】
図2のフラップがとり得る角度位置の一つを示す。
【
図9】本発明によって得られる推力増強の一例を示す。
【
図10A】フラップが二つの異なる角度位置の一方にあるときの排気ノズル及びフラップの側面及び部分断面の拡大図を示す。
【
図10B】フラップが二つの異なる角度位置の他方にあるときの排気ノズル及びフラップの側面及び部分断面の拡大図を示す。
【
図11】フラップが異なる二つの角度位置の一方にあるときの、ロケット本体、排気ノズル及びフラップの側面から見た斜視図である。
【
図12】フラップが異なる二つの角度位置の他方にあるときの、ロケット本体、排気ノズル及びフラップの側面から見た斜視図である。
【
図13A】制御システムの改良された実施形態の機能ブロック図である。
【
図13B】制御システムの改良された実施形態の機能ブロック図である。
【
図13C】制御システムの改良された実施形態の機能ブロック図である。
【
図14】
図1と同様に、本発明の実施形態による姿勢制御及び推力増強システム、並びにそれぞれの動作論理を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明をより良く理解するために、いくつかの好ましい実施形態を、単に非限定的な実施例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
以下の説明により、当業者が本発明を実施及び使用することが可能になる。本明細書に記載された実施形態に対する変形は当業者には明らかであり、本明細書に開示された原理は、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の保護範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び用途にも適用することができる。
【0018】
従って、本発明は、本明細書に記載され図示された実施形態に限定されず、本発明の保護範囲は、本明細書で説明され、かつ、添付の特許請求の範囲に定義された原理及び特徴を包含する。
【0019】
本明細書に記載される革新的な態様は、複数のフラップ(即ち、流体流を偏向することができる可動表面)、好ましくはジェットフラップの使用にあり、これらのフラップは多段宇宙ロケットのステージのロケットエンジンの排気ノズル(例えば、収縮拡大ノズル、即ち、ラバールノズル)の拡大部分の出口セクションに対応して配置され、フラップは二重の機能を有し、即ち、フラップは宇宙ロケットの姿勢を制御し、点火高さを超える飛行高さでエンジンの推力を増大させることを可能にする。
【0020】
特に、本明細書に記載される実施形態では、姿勢制御機構は、N個(N>3、好ましくはN=3)のフラップの使用に基づき、これらフラップは、固定されたエンジンのノズルから機械的に切り離される。フラップはノズルの出口セクションに対応して配置され、必要な場合、これらフラップは、ノズルの出口セクションから出る超音速ガス流を部分的に偏向させ、従って制御トルクを生成するように、単独で、又はM個のフラップの群(都合よくはM>2)で適切に傾斜される。
【0021】
従って、この姿勢制御機構は、ロケットエンジンのノズルとの機械的接点がない。
【0022】
さらに、本明細書に記載された姿勢制御機構は、多段ロケットの低いステージ、特に、第一ステージに対して極めて有利な方法で、ロケット姿勢制御の機能に、推力増強の機能、従って所定の飛行段階に対してエンジンに特定の推進力を与える機能を、相乗的に組み合わせることができる。
【0023】
実際、多段ロケットの低いステージのエンジンのノズルは、その結果として、衝撃波が形成され、ノズルの拡大部分の内壁から限界層が分離され、これにより、エンジン推力が著しく低下し、ノズルの機能不全及び不規則な動作が引き起こされる超音速ガス流の過膨張の既知の現象を回避するために、飛行高さが低ければ低いほど、周囲静圧が高くなり、その結果、ノズルの膨張比が低くなるという事実のために、比較的低い膨張比を有する。
【0024】
特に、周知のように、ロケットエンジンの主縮拡大ノズルの膨張比は、ノズルスロートにおける全圧(実際にはエンジンの燃焼室における平均静圧に一致する)とノズルの出口部分における静圧との間の比として定義される。この比は拡大部分における超音速流の条件下(ノズルスロートにおける音速条件)では、ノズルの面積の比、即ち、ノズルの出口セクションの面積とノズルスロートの面積との間の比と(非線形であるが)相同的に変化する。
【0025】
好都合には、フラップが理想的にはノズルの拡大部分の延長部を表すように形成され、従って、エンジン点火高さより高い飛行高さでノズルの膨張比を増加させることができ、その結果、以下でよりよく説明するように、推力及び特定のパルス増強が得られる。
【0026】
本発明の特定の実施形態を説明する前に、以下に説明するように、フラップの「中立角度位置」は、周囲静圧、即ち、飛行高さに応じて変化する位置を意味し、これに対応してフラップは、ノズルから出る超音速ガス流の膨張を逆効果的に妨害しないことに留意されたい。
【0027】
特に、使用時において、フラップが超音速流を偏向させる必要がないとき、即ち、以下でより良く説明するように、ロケットの姿勢制御のための偏向コマンドがないときに、(ノズルから出る超音速ガス流の膨張を否定的に妨害しないように)この中立角度位置をとるように制御される。
【0028】
フラップにある角度位置が与えられると、ノズルを出る超音速ガス流の膨張とフラップとの間の上述の干渉が、周囲外圧が減少することにつれて減少し、従って、飛行高さが増加することにつれて減少し、フラップの中立角度位置も飛行高さに従って変化する。
【0029】
この点に関して、2つの主要な動作モード、即ち、低い飛行高度で実施されるタイプ1の動作モードと、高い飛行高度で実施されるタイプ2の動作モードとが、都合よく識別され得る。
【0030】
特に、タイプ1の動作モードでは、始めに中立角度位置が、エンジン軸線に対するフラップの傾斜に対応し、この傾斜はノズルの出口セクションにおけるノズルの長手方向プロファイルの拡大角度によって規定される予め設定された基準角度位置よりも大きい。言い換えれば、予め設定された基準角度位置は、ノズルの出口部分を特徴付けるロケットエンジンの長手方向軸線に対する拡大角度によって規定される。
【0031】
この方法では、低い飛行高度でのエンジン運転の初期段階において、ノズルから出る超音速ガス流の過膨張、即ち、これらの高度での周囲静圧の比較的高い値による過膨張を回避することが可能である。
【0032】
さらに、タイプ1の動作モードでは、中立角度位置が、飛行高度が増加するにつれて、即ち周囲静圧が減少するにつれて、予め設定された基準角度位置まで徐々に変化する。より詳細には、エンジン軸に対するフラップの対応する傾きは徐々に減少する。このタイプ1の動作モードでは、飛行高さが増加するにつれて、推力及び特定パルスが増加し、フラップが予め設定された基準角度位置を達成すると、パルスは最大になる。
【0033】
タイプ2の動作モードでは、高い飛行高度で推力及び特定パルスの最大増加が得られるように、中立角度位置が事前設定された基準角度位置に実質的に対応している。
【0034】
本発明をより良く理解するために、
図1は、非限定的な実施形態による姿勢制御及び推力増強システム100の機能ブロック図及び関連する動作ロジックを示している。
【0035】
詳細には、姿勢制御及び推力増強システム100が、宇宙ロケット、好ましくは多段宇宙ロケットのステージ、例えば第1ステージに導入されている。宇宙ロケット又はそのステージは、ロケットエンジンを備えている。ロケットエンジンは、例えば、固体燃料ロケットエンジン、液体燃料ロケットエンジン、又はハイブリッド燃料ロケットエンジンであり得る。ロケットエンジンには排気ノズルが設けられている。排気ノズルは、ロケットエンジンの長手方向軸に対する所定拡大角度によって画定される出口セクションを通って超音速ガス流が流出するように設計された拡大部分を備えている。ロケットエンジンの長手方向軸線は、排気ノズル及びロケットエンジンの対称中心軸線である。ノズルの出口セクションは、ロケットエンジンの長手方向軸に垂直な平面上にある。
【0036】
姿勢制御及び推力増強システム100は、N個のフラップ110、例えばジェットフラップを有する。上述のように、数Nは3以上であり、好ましくはN=3である。フラップ110は、ノズルの出口セクション及びその周囲に配置される。さらに、ノズルは、排気ノズルの拡大部分を延長するように成形される。以下により詳細に説明するように、フラップは、排気ノズルから機械的に切り離されている。さらに、フラップは、以下でより詳細に説明する基準に従って、ロケットエンジンの長手方向軸に対して様々な角度位置をとるように作動させることができる。
【0037】
好ましくは、かつ、便利には、フラップ110は、理想的にはノズルの拡大部分の延長部を表す曲面上に成形され、モデル化される。
【0038】
さらにまた、好ましくは、姿勢制御及び推力増強システム100は、N個のアクチュエータ120を有し得る。好ましくは、アクチュエータ120は線形アクチュエータである。各アクチュエータは、それぞれのフラップ110に連結されている。各アクチュエータは、各フラップ110がロケットエンジンの長手方向軸に対して様々な角度位置をとるように制御可能である。
【0039】
最後に、姿勢制御及び推力増強システム100は、線形アクチュエータ120の動作を制御するために線形アクチュエータ120に接続された制御ユニット130を有する。また、制御ユニット130は、慣性プラットフォーム201に接続されており、この慣性プラットフォーム201は、宇宙ロケットに設けられ、ロケットの実際の(即ち有効な)姿勢を検出し、検出された実際の姿勢、例えば、実際の姿勢角度を示す一つ又は複数の量を含む一つ又は複数の(アナログ又はデジタル)出力信号を送信するように構成されている。慣性プラットフォームは、例えば、ジャイロスコープの使用に基づくことができる。また、制御ユニット130は、圧力感知装置202、例えば、圧電又は電位差測定変換器に接続されており、この圧力感知装置202は、宇宙ロケットに設けられ、周囲静圧を測定し、測定された周囲静圧を示す一つ又は複数の量を含む一つ又は複数の(アナログ又はデジタル)出力信号を送信するように構成されている。
【0040】
具体的には、制御ユニット130は、慣性プラットフォーム201に接続され、慣性プラットフォーム201によって送信された一つ又は複数の信号を受信し、従って、ロケットの実際の姿勢を示す一つ又は複数の量を受信する。
【0041】
制御ユニット130は、また、宇宙ロケットに必要な姿勢、例えば、必要な姿勢角を示す一つ又は複数の量を記憶するか、計算するか、又は(例えば、ロケットの飛行制御システムから)受信するように構成されている。制御ユニット130は、また、圧力感知装置202に接続されて、圧力感知装置202によって送信された一つ又は複数の信号を受信し、従って、測定された周囲静圧を示す一つ又は複数の量を受信する。
【0042】
詳細には、制御ユニット130は、フラップの中立角度位置を制御するための適切な制御命令を送ることによって、線形アクチュエータ120を制御するように構成されている。特に、制御ユニット130は、フラップ110がロケットエンジンの長手方向軸に対して、所与の拡大角度以上の傾斜角度で傾斜する中立角度位置をとるように構成されている。さらに、制御ユニット130は、測定された周囲静圧に応じて、従って、測定された周囲静圧に対応する飛行高度に応じて、フラップ110がとる中立角度位置を制御するように、線形アクチュエータ120を制御するよう構成されている。
【0043】
制御ユニット130は、また、宇宙ロケットの実際の姿勢及び宇宙ロケットに必要な姿勢に従って、一つ又は複数のフラップ110が中立角度位置とは異なる角度位置をとるように、ロケットの姿勢を制御するための適切な制御命令を送ることによって線形アクチュエータ120を制御するように構成されている。
【0044】
好ましくは、制御手段 130は、周囲静圧が減少するにつれて傾斜角を減少させることによって、フラップ110がとる中立角度位置を制御するように構成されている。
【0045】
幾つかの実施形態では、制御ユニット130は、周囲静圧が減少することにつれて、前記傾斜角がノズルの前記拡大角に対応するまで傾斜角を減少させ、次いで、周囲静圧とは独立して、傾斜角を所定の拡大角に等しく保つように構成されている。
【0046】
幾つかの実施形態では、制御ユニット130は、
・周囲静圧が予め設定された閾値よりも大きい場合、傾斜角を減少させて、周囲静圧の各新しい現在値に対して、傾斜角の対応する現在値を決定し、
・周囲静圧が予め設定された閾値に対応する場合、傾斜角をノズルの所定の拡大角度に一致させ、
・次いで、前記傾斜角を、周囲静圧に関係なく、所定の拡大角度に等しく維持する
ように構成されている。
【0047】
好ましくは、制御ユニット130は、例えば、実際の姿勢角度と要求されている姿勢角度とが互いに等しいかどうか、又は、それらが予め設定された閾値よりも大きく異なるかどうかをチェックして、宇宙ロケットの実際の姿勢と宇宙ロケットに要求されている姿勢とを比較することによって、フラップ110のうちの一つ又は複数に中立角度位置とは異なる角度位置をとらせる構成されている。実際の姿勢と要求されている姿勢とが異なる場合(又は、予め設定された閾値を超えて異なる場合)、前記実際の姿勢と前記要求されている姿勢とに基づいて、中央制御ユニット130は、フラップのうちの一つ又は複数が出口セクションを出る超音速ガス流を偏向させて、実際の姿勢を要求されている姿勢に向けるように角度位置を決定することができる。一つ以上のフラップのこの角度位置が決定されていると、中央ユニット130は、フラップを所定の角度位置にするために、フラップのアクチュエータを制御することができる。
【0048】
より具体的には、有利な実施形態によれば、制御ユニット130は、ロケットの実際の姿勢と必要な姿勢とが異なる場合に、
・前記実際の姿勢及び前記必要な姿勢に基づいて、前記N個のフラップ110のM個のフラップの角度位置(ここで、N>M>1)を決定し、前記M個のフラップ110がロケットの実際の姿勢を必要な姿勢にもっていくように、ノズルから出る超音速ガス流を偏向させ、
・前記M個のフラップ110が所定の角度位置をとるように、線形アクチュエータ120を作動させる
ステップを実行するように構成され得る。
【0049】
上記の説明から明らかなように、線形アクチュエータ120を介して制御ユニット130によって実行されるフラップ110によってとられる位置の制御は、実際の姿勢及び要求されている姿勢に基づいてロケットの姿勢を制御する機能と、周囲の静圧、即ち、飛行レベルに基づいて中立角度位置を制御する機能との二つの機能を有する。
【0050】
さらにまた、
図1は、慣性プラットフォーム201が宇宙ロケットの動的挙動から生じるロケットの実際の姿勢を検出するように、制御ユニット130によって実行されているフラップ110がとる位置の制御から生じる宇宙ロケットの動的挙動を概念的に(当業者には明らかな方法で)表すために、「ロケットのダイナミクス」と称されるブロック203を示している。
【0051】
都合のよいことに、ロケットが低い飛行高さ、即ち、予め設定された閾値高さより低い高さであるとき、制御ユニット130は、タイプ1の動作モードを実行して、発射機の姿勢及び中立角度位置の両方を制御し、周囲静圧が減少することにつれて、即ち、飛行高さが増加することにつれて、ロケットエンジンの長手方向軸線に対するフラップ110の傾斜に対応する予め設定された基準角度位置を達成するまで、即ち、ノズルの出口セクションを特徴付ける所定の拡大角度に実質的に等しい角度位置を達成するまで、中立角度位置を変化させる。この予め設定された基準角度位置は、また、上述の予め設定された閾値高さに対応する予め設定された周囲静圧閾値にも関連付けられる。
【0052】
都合よくは、ロケットが高い飛行高度、即ち、予め設定された閾値高度を超える高さにある場合、制御ユニット130は、タイプ2の動作モードを実行し、ロケットの姿勢の制御のみを行い、一方、姿勢制御コマンドがない場合には、フラップ110は、予め設定された基準角度位置に保たれる。
【0053】
この点に関して、タイプ1の動作モードにおいて、フラップ110の中立角度位置が、周囲静圧に従って決定されていることに基づく法則は、ノズルの内側及び外側に存在する特定の流体力学的フィールドの特徴に依存し、従って、CFD(計算流体力学)シミュレーション及び/又は実験試験に基づいてケースバイケースで都合よく定義することができることに留意されたい。
【0054】
制御ユニット130は、第一の予め決めた計算機能を実行することによって、又は第一の予め決めたルックアップテーブルを使用することによって、N個のフラップ110の中立角度位置、即ち、ロケットエンジンの長手方向軸に対する傾斜角度を決定するように構成され得、第一の予め決めたルックアップテーブルには、各高さ値、即ち、周囲静圧の値に対する傾斜角度の値が記憶されている。
【0055】
同様に、制御ユニット130は、第二の予め設定された計算機能を実行することによって、又は第二の予め設定されたルックアップテーブルを使用することによって、姿勢制御のためのフラップ110の角度位置を決定するように構成することができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、ロケットの姿勢及び中立角度位置の制御が、
図1に示すように、適切なソフトウェア及び/又はファームウェアを介してプログラムされた単一の処理及び制御ユニットによって実行され得る。他の実施形態では、二つの別個のユニットが提供されてもよい。第一ユニットは姿勢制御の専用であり、従って、ロケットの実際の姿勢及び必要な姿勢に基づいて前記姿勢制御を実行するように適切にプログラムされている。第二ユニットは中立角度位置制御の専用であり、従って、周囲静圧に基づくフラップ110の中立角度位置の前記制御を実行するように適切にプログラムされている。
【0057】
フラップ110及び線形アクチュエータ120の例示的な実施形態が
図2に示されている。特に、
図2は多段宇宙ロケットの一つのステージ(例えば、第一ステージ)の下部の不等角投影図である。このステージは、外側構造体301と、排気ノズルを備えたロケットエンジンとを含む。
図2には、排気ノズルの拡大部分302が示されている。符号303はロケットエンジンを概略的に示している。このロケットエンジン303は、その端部が図示されており、当業者に知られている方法で設計することができるものである。特に、ロケットエンジンは、固体燃料ロケットエンジンであり得る。他の実施形態では、ロケットエンジンは、液体燃料ロケットエンジン又はハイブリッド燃料ロケットエンジンであってもよい。
【0058】
図2の実施例では、拡大部分302は実質的に円錐台である。拡大部分302は出口セクションで終端し、そこから、使用中、超音速ガス流が出る。前記出口セクションは、ロケットエンジンの長手方向軸線AL、即ち、排気ノズル及びロケットエンジンの中心対称軸線に対する所定の拡大角によって特徴付けられる。
【0059】
図2の実施例では、フラップ110は、理想的にはノズルの拡大部分302の拡大形状の延長部を形成する湾曲形状を有する三つジェットフラップ111、112、113から成る。言い換えれば、フラップ111、112、113は、拡大部分302の延長部を形成するように形成されている。
【0060】
ジェットフラップ111、112、113は、ロケットエンジンの長手方向軸線ALに直交する平面内で互いに120°で配置されており、有利には、内面及び外面の両方に適切な断熱材が設けられている。
【0061】
幾つかの実施形態では、ジェットフラップ111、112、113は、軸線ALに実質的に直交する平面上で、ノズルの拡大部分302の出口セクションの周りに延在する支持構造体140にヒンジ留めされている。
図2の実施例では、支持構造体140は六角形である。また、支持構造体140には、有利には、全ての表面に適切な断熱材が設けられている。
【0062】
支持構造体140は、ロケットステージの外側構造体301に固定されており、例えば、
図2の場合のようにエンジンフランジ又は段間フランジに、又は、所謂エンジンスカートに固定されている。例えば、支持構造体140は、複数の支持ロッド141によって外側構造301に取り付けられ得る。
図2の実施例では、六つのヒンジ付きロッドが設けられており、これらのロッドはそれぞれの端部のアイレットでウォームギヤを用いて長さを調整することができる。
【0063】
各ジェットフラップ111、112、113は、
図2に示すように、従来の各対のヒンジ150を用いて支持構造体140に連結され得る。代わりに、かつ、より便利には、各ジェットフラップ111、112、113を回転させるために球面ジョイントが使用され得る。
【0064】
さらに、
図2の実施例では、各ジェットフラップ111、112、113に対して一つずつ、3つの線形アクチュエータ120が使用されている。各線形アクチュエータは、一方の側において、ロケットのステージの外側構造体301に固定されたヒンジに接続されている。各線形アクチュエータ120は、他方の側では、各ジェットフラップ111、112、113に接続するための一対のV字形連結部と一体の可動ヒンジに接続されている。
【0065】
図2の実施例では、各ジェットフラップ111、112、113と、各線形アクチュエータ120の可動部分との間の接続構造は、すべての表面に適切な断熱材が設けられた一対のV字形連結部121によって構成され、前記連結部121の頂点は、それぞれの線形アクチュエータ120の可動部分にヒンジ留めされ、他の二つの端部はそれぞれのジェットフラップ111、112、113の外面に一体的に固定されている。
【0066】
図2に示す実施例は、非限定的な例であることに留意されたい。実際、支持構造体140は六角形とは異なる形状を有することもでき、また、支持ロッド141とは異なる支持手段を介して、例えば支持梁を介して、ステージの外側構造体201に固定することができる。
【0067】
さらに、アクチュエータ120は、異なる技術を用いて設計されてもよい。例えば、線形若しくは回転式又は任意の他のタイプの電気機械式アクチュエータ、油圧式アクチュエータ、又は空気圧式アクチュエータ等を使用することができる。
【0068】
いずれの場合も、ジェットフラップ111、112、113がヒンジ止めされる支持構造体140は、実際には、ノズルと前記ジェットフラップ111、112、113との間のいかなる機械的接触も回避し、従って、ノズルから機械的に分離されていることに留意されたい。このようにして、使用中、ジェットフラップ111、112、113、支持構造体140、及びロケットステージの外側構造体301は、ノズルではなく構造荷重を受ける。
【0069】
図2の実施例では、ジェットフラップ111、112、113は基準角度位置、即ち、高い飛行高度に対する中立角度位置にあり、ここでは、ジェットフラップはロケットエンジンの排気ノズルの延長部を表す。
【0070】
図3、
図4、
図5及び
図6は
図2の側面図である。
図3では、ジェットフラップ111、112、113は基準角度位置、即ち、高い飛行高度に対する中立角度位置にある。
図4では、ジェットフラップ111、112、113は基準角度位置に対して10°だけ外側に偏向されている。
図4に示すジェットフラップ111、112、113の姿勢は、高さゼロにおける可能な中立角度位置を単に示す例であり得る。
図5では、ジェットフラップ111は、基準角度位置に対して30°内側に偏向され、一方、他のフラップは
図4の角度位置にある。
図6では、ジェットフラップ111及び113が基準角度位置に対して30°内側に偏向されている。
【0071】
図5及び
図6に示すジェットフラップ111、112、113の姿勢は、ロケットの姿勢を制御するためにジェットフラップ111、112、113がとることができる二つの可能な構成を示す例であることを理解されたい。
【0072】
図3、
図4、
図5及び
図6において、一点鎖線は、ジェットフラップ111におけるノズルの拡大部分302の拡大プロファイルを表しており、基準角度位置の概念を簡単に示し、基準角度位置に対するジェットフラップ111の整列(
図3)、外向きの偏向(
図4)、又は内向きの偏向(
図5及び
図6)のよりよい理解を可能にするものであることに留意されたい。
【0073】
有利な実施形態では、ジェットフラップ111、112、113間の間隙を通るガスの側部漏れを最小限に抑え、それにより、システムの効率を高めるために、前記隙間にフラップ間パネルを配置することができる。
【0074】
この目的のために、
図7及び
図8は本発明の第二の好ましい非限定的な実施形態を示しており、ここでは、
図2、
図3、
図4、
図5及び
図6に既に示されて説明された姿勢制御及び推力増強システム100の構成要素を、
図2~
図6で使用された符号と同じ参照番号によって示し、再度説明はしない。
【0075】
特に、
図7及び
図8の好ましい実施形態では、ジェットフラップ111、112、113の間の隙間で支持構造体140にヒンジ止めされた3つのフラップ間パネル160が使用されている。弾性荷重部材、例えば、ばね、特に螺旋ばねが、フラップ間パネル160と支持構造140との間の連結ヒンジに関連付けられ、フラップ間パネルに弾性荷重を加えることができる。このようにして、各フラップ間パネル160は、以下に説明するように、それに隣接する二つのフラップと相互作用する。フラップ間パネル160に隣接する二つのジェットフラップが中立角度位置にある場合、フラップ間パネル160は、前記隣接するジェットフラップの両方と接触したままである。二つの隣接するジェットフラップの一方が中立角度位置にあり、他方のジェットフラップが姿勢制御のために内側に偏向されている場合、フラップ間パネル160は、中立角度位置にある前記ジェットフラップと接触したままである。隣接するジェットフラップの両方が姿勢制御のために内側に偏向されている場合、フラップ間パネル160は、前記隣接するジェットフラップの少なくとも一つと接触したままである。好ましくは、各フラップ間パネル160は、二つの隣接するジェットフラップ111、112、113の間の隙間に対応して支持構造体140に拘束された各ヒンジ161にヒンジ止めされている。好ましくは、前記各ヒンジ161のピン(
図7及び
図8には明確に示されていない)の周りに、一つ又は複数のばね、例えばねじりコイルばね(図面を簡単にするために
図7及び
図8には示されていない)が挿入されている。ばねの機能は、フラップ間パネル160に、フラップ間パネルをロケットエンジンの長手方向軸ALに向かって回転方向に付勢するトルクを発生させ、従って、フラップ間パネルがそれに隣接するジェットフラップ111、112、113の一方又は両方に載る予荷重を発生させることである。
【0076】
有利には、フラップ間パネル160は、適当な断熱材を有し、ジェットフラップ111、112、113の形状に適合した湾曲形状を有する。
図7及び
図8に示す実施例では、各フラップ間パネル160の平面投影は、実質的に二等辺台形である。
【0077】
上記の説明から、本発明が多くの利点を有することが明らかであり、その中で以下に言及する利点がある。
・本発明のように、固体燃料ロケットモータ(SRM)又はハイブリッド燃料ロケットエンジン(HRE)のノズル内の可撓性継手を排除することができ、また、液体燃料ロケットエンジン(LRE)内のセットノズル/燃焼室のジンバルを排除することができ、従来のTVCシステムのようにノズルを偏向させる必要はなく、固定し、その長手方向軸をエンジン長手方向軸に一致させることができる。
・その結果、エンジン上のノズルを一体化/較正するためのコスト及び時間が減少し、本発明のシステムとエンジンノズルとの間に機械的接触が存在せず、特に、エンジンノズル上のアクチュエータの負荷が完全に排除され、その結果、ノズルの質量及び単一コストが減少する。
・本発明のシステムとロケットエンジンのノズルとの間の機械的接触が上述のように存在しないため、制御システムを対応するステージと一体化し、較正するための時間及びコストを削減できる。
・少なくとも1桁の回転慣性の減少に起因するシステムの動的特徴の増強であって、負荷は、ノズルの可動部分全体によってではなく、ジェットフラップによってのみ構成されている。
・高い飛行高度での推力増強(従って、特定のパルス増強)で、周囲静圧の低い値のおかげで、ジェットフラップの角度位置決めにより、ノズルの膨張比を、より低い高度で生じるノズルの超音速流の過膨張から生じる問題なしに、仮想的に増加させることができる。
・本発明のシステムはインパルス負荷の負の現象(従来のTVCシステムに関して既に上述した)によって影響を受けないが、本発明のシステムはノズルから物理的に切り離されており、一方、この現象はエンジン点火時に、ジェットフラップの全てが最大開口位置(外側への最大偏向)にあり、従って、ノズルから出るガス流とのその相互作用はほとんどゼロであるか、又はいずれにしても無視できるので、ジェットフラップに著しい影響を及ぼさない。
【0078】
図9には、本発明の使用により、飛行高さの関数としての多段宇宙ロケットの第一ステージの可能な推力増強の例が示されている。
【0079】
図9に示されていることをより良く理解するために、ロケットエンジンの推力Tを計算するための次式(1)が考慮されなければならない:
【0080】
上式中、mはノズルから出るガスの質量流量を示し、Veはノズルの出口セクションにおけるガスの速度を示し、Aeはノズルの出口セクションの面積を示し、Peはノズルの出口セクションにおけるガスの静圧を示し、Paは、飛行レベルに応じた周囲静圧、即ち、Pa=Pa(h)を示す。式中、hは飛行高さである。
【0081】
式(1)の意味をより良く理解するために、ノズルの膨張比が変化することにつれて、Ve及びPeは反対に変化し(即ち、一方が増加するにいつれて、他方が減少するか、又はその逆)、いずれの場合にも、周囲静圧Paの所定の値(飛行高さが増加することにつれてPaが減少する)に対して、最大推力値は、Pa = Pe(ノズルの整合条件)である特定の膨張比で得られることを想起されたい。逆に、ノズルの膨張比が整合条件の値よりも大きくなると、超音速流の過膨張の現象が発生し、この状態では膨張比が増大することにつれて、(過膨張レベルが高くなるにつれてより強くなる)衝撃波の形成、及び結果として生じるノズルの拡大部分の内壁からの限界層の剥離のために、推力及び特定のインパルスが単調に減少し、この後者の事象が所定の過膨張レベルを超えて、ノズルの異常又は不規則な動作を誘発する。
【0082】
従って、
図9を参照すると、低い飛行高さでは、フラップ110がノズルの出口セクションの拡大角度に対応する基準角度位置に対して外向きに偏向されている。このようにして、ノズルの拡大部分の内壁からの制限層の分離を回避することが可能である。
【0083】
より高い高さ(典型的には10/15kmのオーダー)に到達すると、フラップ110は基準角度位置に偏向され、従って、実際にはノズルの拡大部分を延ばし、従って、その膨張比を増大させ、この場合、上述のように、より低い高さで生じる超音速流の過膨張による問題を招くことはない。その結果、ノズルの前記膨張比の増大は、本発明が使用されない場合に比べて推力及び特定のパルス増強を伴う。
【0084】
排気ノズル及びフラップの構造のさらなる特定の態様を、以下に詳細に説明する
図10A、10B、11及び12に具体的に示す。より詳細には、
図10A及び10Bは、排気ノズル352及びフラップ111、112、113を有するロケットの後部の拡大詳細図を示している。フラップの位置は、
図4及び
図5の位置に対応している。
図10A、10Bには、排気ノズル352の拡大部分302の一部及びフラップの一つ(フラップ111)が、排気ノズル352及びロケットエンジン303の長手方向軸ALを含む平面による断面で示されている。
【0085】
単なる例として、
図10Aでは、フラップ111は収縮角度位置を有し、一方、
図10Bでは、全てのフラップ111、112、113が、排気ノズル352の拡大部分302の開口角度に対してより拡大する中立角度位置を有する。
【0086】
図10A及び10Bにおいて、符号358は、排気ノズル352の拡大部分302の最終縁部、即ち、後縁部を示し、符号354は、フラップの前縁部、即ち、第一縁部を示し、符号356は、フラップ111、112、113の後縁部を示している。
【0087】
図10A及び
図10Bから明らかに理解できるように、排気ノズル352の拡大部分302の後縁部358と各フラップ111、112、113の前縁部354との間には、空間又は隙間360が形成されている。排気ノズル352の拡大部分302とフラップ111、112、113との間にはシール部材が設けられていないので、隙間360は排気ノズル352の拡大部分302とフラップ111、112、113とによって形成されている構成の内側の容積を、外側容積、即ち、ロケットがロケットエンジンの推力の下で移動する周囲空間と連結する。その結果、排気ノズル352の拡大部分302の間には密封閉鎖部が存在しない。フラップ111、112、113のすべての角度位置において、開口又は隙間360が維持され、その幅はフラップの角度位置に応じて大きくもなり、小さくもなる。
【0088】
従って、特に
図10Bに示すように、フラップ111,112,113の拡大角度が、拡大部分302の拡大角度(エンジン軸線ALとノズルの出口セクションの接線との間の角度)より大きい場合、拡大部分302及びフラップ111、112、113によって画定されている容積内の排気ガスの低圧が、いわゆるエジェクタ効果によって、外気の吸引を引き起こす。ロケットエンジンの排気ガスによって隙間360を通って吸引されているこの外気の流れは、フラップの内壁上の静圧の増加を引き起こす。この効果は、幾つかの従来技術の推進システムで生じるように、ロケットエンジン内部のターボ機械、例えば、液体燃料を燃焼室に供給するターボポンプのタービンからの加圧ガス流を必要とせずに、フラップ111、112、113及び排気ノズル352の拡大部分302の幾何学的形状によって得られる。
【0089】
これは、フラップの連結縁部に向かって送られるセパレートガス流が利用できない(即ち、ガス流が燃焼室から来ない)固体燃料ロケットエンジンにおいても、フラップの内壁からの流れの離脱の危険性が低減されるので有益である。
【0090】
各フラップ111、112、113と拡大部分302との間の隙間360を介したエジェクタ効果のおかげで、外部から吸引される空気が、フラップの内壁の温度を低下させるという利点も有する。
【0091】
図10A、10Bでは、間隙360がフラップ間パネル160のない構成で示されている。しかしながら、(
図7及び
図8に示すような)フラップ間パネル160を有する構成においても、同じ配置及び利点を得ることができることは理解されるべきである。
図11及び
図12は、ロケットエンジンの側面から見たロケットの端部の斜視図の図を示しており、ここでは、排気ノズル352の拡大部分302並びにフラップ111、112、113及びフラップ間パネル160の配置構造に加えて、それぞれの支持構造体140が示されている。より詳細には
図11においては、フラップ111、112、113は、排気ノズル352に対して拡大位置に配置されている。逆に、
図12では、フラップ111、112、113は、
図8と同様に、排気ノズル352の拡大部分302と同じ傾斜で、より正確には、排気ノズル352の後縁部における排気ノズル352に対する接線の傾斜で配置されている。両方の図面において、排気ノズル352の後縁部358とフラップ111、112、113の前縁部354との間に形成された隙間360が示されている。
【0092】
ここでは、原則として
図1を参照して上述したフラップ111、112、113の角度開放を制御する方法がより詳細に示されている。
図13A、13B、13C、14及び15は、制御方法を概略的に示すブロック図である。
【0093】
各フラップ111、112、113に対する制御アルゴリズムは、以下の二つの別個の機能を有する。
・[(PS)FTE]Targetで示されているフラップの後縁内部のターゲット静圧、即ち、所望の静圧の計算
・[(Ps)FTE]Target値に対応するβDAPで示されたフラップの中立角度位置の計算
【0094】
幾つかの実施例では、アルゴリズムを実行するための入力データを取得するために使用するセンサは、以下のセンサを含む。
・周囲静圧センサ
このセンサは、宇宙ロケットの任意の適切な位置、即ち、ロケットエンジンが設けられており、制御されるべきフラップシステムが設けられているステージに配置され得る。
・圧力センサ、例えば、ピトー管
このセンサは、静圧及び全圧の両方を測定することができ、各フラップの内面の後縁部に配置される。
・静圧センサ
このセンサは、各フラップの入口側の後縁部に配置される。
【0095】
フラップの後縁における所望の静圧の計算、即ち、[(Ps)FTE]Targetの計算に必要な入力データは、以下の通りである。
・[(Ps)Amb]Measで示される周囲静圧の測定値
・[(PT)FTE]Measで示されるフラップの後縁部で測定した全内圧
・[(Ps)FTE]Measで示されるフラップの後縁部で測定した内部静圧
・[(Ts)FTE]Measで示されるフラップの後縁部で測定した内部静圧温度
【0096】
計算値[(Ps)FTE]Targetに対するフラップβDAPの中立角度位置の計算のための入力データは、以下の通りである。
・[(Ps)FTE]Measで示されるフラップの後縁部内の静圧の測定値
・静圧の計算値、即ち、[(Ps)FTE]Targetで示されるフラップの後縁部内のターゲット静圧
【0097】
フラップの後縁部内のターゲット静圧、即ち[(Ps)FTE]Targetの計算は、前提条件として、(PSEP)EFTで示されるフラップの後縁部の内面における対応する流れの分離静圧の予想を必要とする。分離静圧は、例えば、周囲静圧と、その流れ及び/又は任意の他の流れの必要とされるパラメータの局所マッハ数の値を使用して、ロケットノズルの流れ分離の基準を用いて、適切に決定され得る。実際の流れ分離静圧(PSEP)FTEが得られると、単に、計算から得られた値に、漏れ、計算の不確実性、及び他の要因を考慮に入れた安全マージン(ΔPs)Marginを加算することによって、ターゲット静圧を計算することが可能になる。従って、実質的には、次式の通りである。
[(Ps)FTE]Target = (PSEP)FTE + (ΔPs)Margin
【0098】
上述の計算により得られる中立角度位置βDAPの値は、フラップ毎に異なるのが一般的である。しかしながら、全てのフラップ111、112、113に対して同じ角度位置を採用する必要があるので、角度位置として、例えば、以下の基準の一つによって定義される位置が採用される。
・全てのフラップについて計算された値の間の平均値
・フラップに対して計算された値の最高値
【0099】
マッハ数を計算するための音速aの値は、以下のように決定される。
式中、(Ts)
FTEは、フラップの後縁部におけるガスの静的温度(絶対温度、即ちケルビン度)であり、γは、ガスの一定圧力及び一定体積における比熱の比であり、Rは、ガスの定数である。
【0100】
これらのパラメータは、概して、排気ノズル352からの燃焼ガスと、フラップ111、112、113の前縁部の隙間360を通して吸引される空気との間の混合の程度に依存することを考慮すべきである。
これは、以下の変数を考慮するアルゴリズムに含まれる関数によって考慮に入れることができる。
・排気ノズルのプロファイル
・膨張比
・ロケットエンジンの燃焼室温度
・ロケットエンジンの燃焼室圧力
・排気ガスの質量流量
・周囲静圧(Ps)Amb
・フラップの偏向角度
【0101】
アルゴリズムに含まれる関数は、実験によって、及び/又は計算流体力学(CFD)シミュレーションによって決定され得る。
【0102】
図13A、13B、13Cは、上記に要約されたアルゴリズムを用いてフラップの中立角度位置を計算するためのプロセスのブロック図を示している。より詳細には、
図13Aには、周囲静圧センサ401、フラップの後縁部上の静圧センサ403、複数のフラップの後縁部における静圧及び全圧の変換器のグループ、例えば、全体として符号405で示されているピトー管が示されている。符号407はフラップ後縁部のターゲット静圧を算出するブロックを示している。符号409は、フラップの中立角度位置を計算するためのブロックを示している。
図13Aのブロック図は、上述の符号と共に、センサ及び計算ブロックからの測定及び計算パラメータを示している。
【0103】
図13Bには、フラップの後縁部における流れ分離静圧を計算するためのブロック407がより詳細に示されている。入力パラメータは、
図13Aに示されているものである。簡単化するために、測定されたパラメータは、添え字「
Meas」なしで、
図13A及び上記の説明で使用された符号と同じ符号で示される。
図13Bにおいて、符号411は、フラップの後縁部における流れ分離静圧(P
SEP)
FTEを計算するためのブロックを示している。このブロックは、測定された周囲静圧及びフラップの後縁部におけるマッハ数を入力データとして使用する。ブロック411の出力は、ブロック415において、安全マージン(ΔPs)
Marginを適用することによって、ターゲット静圧[(Ps)
FTE]
Targetを計算するために使用される。ブロック413によって計算されたフラップの後縁部におけるガス速度と音速との間の比率によって与えられるマッハ数は、フラップの後縁部における静圧及び全圧の測定されたパラメータに加えて、フラップの後縁部におけるP
FTEで示されるガス密度に基づいて、ブロック421によって計算されるV
FTEによって示されるフラップの後縁部におけるガス速度を知ることを必要とする。ガス密度P
FTEは、フラップの後縁部で測定された静圧及び静温度に関するデータに基づいて密度を計算するためのブロック419によって計算されている。ブロック419におけるパラメータRは、フラップの後縁部の内壁を流れるガスの定数である。フラップの後縁部における音速a
FTEは、ブロック417によって、フラップの後縁部において測定された静的温度、並びに、ガスの比熱比γ及び定数Rに基づいて計算される。
【0104】
図13Cは、フラップの中立角度位置を計算するためのブロック409をより詳細に示す。このブロックは、ターゲット静圧[(Ps)
FTE]
Target、即ち、フラップの後縁部で要求される静圧と、フラップの後縁部で測定された静圧[(Ps)
FTE]
Measとの間の誤差(ΔPs)Errorを計算する。 計算された誤差値は、ターゲット中立角度位置(β
DAP)
Targetを決定する制御装置423に適用される。計算された誤差値は、角度の実際の値を生成するコントローラ425を備えたフィードバックループからの実際の角度位置(β
DAP)
Actualと比較され、フラップの角度をターゲット値(β
DAP)
Targetに向けて収束させる。コントローラ425で得られた値は、
図13A及び
図13Cの両方においてブロック410で示されたフラップのアクチュエータに適用される。また、
図13Cには、フラップの後縁部における静圧及び全圧を決定する圧力センサ(ピトー管)とのコントローラ425の概念的な接続が示されている。この概念的な接続は、フラップの角度を変化させることによって、フラップの後縁部においてピトー管によって記録される圧力値も変化することを実質的に示している。
【0105】
図14のブロック図は、
図1と同様であるが、制御システム全体をより詳細に示す。より具体的には、
図14には以下のブロックが示されている。
・フラップ111、112、113の後縁部における静圧及び全圧のセンサを示すブロック451
・ブロック451のセンサに接続された圧力変換器を示すブロック453
・フラップの中立角度位置(β
DAP)を計算するための上述のアルゴリズムを実行するブロック455
・周囲静圧センサを表すブロック457
・周囲静圧センサに関連する圧力変換器を示すブロック459
・フラップの後縁部における流れ静的温度センサを示すブロック460
・フラップ111、112、113の作動ループを示すブロック461
・ブロック461のアクチュエータによって与えられるフラップに必要な偏向角度を示すブロック463
・ロケットのオンボードコンピュータによって及ぼされているガイド機能に基づいてロケットに必要な姿勢角度を決定するブロック465
・ロケットのダイナミックスを示すブロック467
・ロケットの実際の姿勢角度を示すブロック469
・ロケットの姿勢を制御するための制御ユニットを表すブロック471
・ロケットの実際の又は現在の姿勢角度を決定する慣性プラットフォーム及びそのセンサを示すブロック473
【0106】
図14の一連のブロックは、
図13 A、13B、13Cを参照して説明したアルゴリズムに従ってフラップの中立角度位置の制御と、ロケットの姿勢の制御とを実行し、フラップ111、112、113のアクチュエータ(ブロック461)にコマンドを送る。要約すると、ブロック451、453、457、459、460は、フラップ111、112、113の中立位置を計算するのに必要なパラメータを、ブロック455によって実行されているアルゴリズムに与える。従って、ブロック455は、フラップの作動ループを表すブロック463に機能的に接続されている。ブロック473によって表されている慣性プラットフォームは、ロケットの実際の姿勢の測定に関するデータを提供し、ブロック465は、ロケットのターゲット姿勢に関する情報を提供する。ロケットの姿勢を制御するための制御ユニット(ブロック471)を介して、ブロック461におけるフラップのアクチュエータに信号が与えられ、ロケットの姿勢が変更するようにフラップを作動させる。ブロック469から、慣性プラットフォーム473は、フラップを介して得られる姿勢の変化に続いて、ロケットの現在の(実際の)姿勢の測定を実行する。
【0107】
姿勢制御は、実際には以下のように行われる。慣性プラットフォーム473は、ロケットの姿勢角度、より正確にはピッチ角及びヨー角を測定する。オンボードコンピュータ(ブロック465)は、測定された姿勢角度とターゲット姿勢角度とを比較し、様々なフラップ(図示の例では3つ)に対するターゲット偏向値を姿勢制御ユニット471に送る。これらの角度は、飛行高度に従って計算された中立角度位置を考慮したものである(
図13A~13C)。ブロック471からの信号に基づいて、作動ループは、必要に応じて、ターゲット姿勢を達成するためにロケットに必要なトルクを生成するように、フラップのアクチュエータに作用して、他のフラップとは独立して各フラップの角度位置を変更する。
【0108】
様々な実施形態を参照して本発明を説明したが、添付の特許請求の範囲において請求されている本発明の保護の範囲から逸脱することなく、本発明に修正、変形、及び省略を行うことができることは当業者には明らかである。さらに、特に明記しない限り、方法又はプロセスの任意のステップの順序又はシーケンスは、別の実施形態に従って変更することができる。