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特許7029542ペンタシクロトリテルペン系化合物ならびにその製造方法、薬物組成物および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】ペンタシクロトリテルペン系化合物ならびにその製造方法、薬物組成物および使用
(51)【国際特許分類】
   C07J 63/00 20060101AFI20220224BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220224BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220224BHJP
   A61K 31/221 20060101ALI20220224BHJP
   A61K 31/215 20060101ALI20220224BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20220224BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20220224BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20220224BHJP
   A61K 31/27 20060101ALI20220224BHJP
   A61K 31/265 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C07J63/00 CSP
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P1/16
A61P3/06
A61P3/10
A61K31/221
A61K31/215
A61K31/216
A61K31/455
A61K31/341
A61K31/27
A61K31/265
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020537276
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 CN2018106012
(87)【国際公開番号】W WO2019052560
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-05-18
(31)【優先権主張番号】201710841681.8
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513299225
【氏名又は名称】上海 インスティテュート オブ マテリア メディカ、チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF MATERIA MEDICA, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】555 Zuchongzhi Road, Zhangjiang, Pudong, Shanghai 201203 China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ナン,ファジュン
(72)【発明者】
【氏名】シェ,シン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,チェンルー
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シメン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ヤンミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シウェイ
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-508543(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068057(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/150286(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/135449(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/135474(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/017630(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/071506(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/105926(WO,A1)
【文献】中国特許第101519423(CN,B)
【文献】J. Med. Chem.,2010年,53,178-190
【文献】Acta Pharmacologica Sinica,2014年,35,1463-1472
【文献】Collection Czechoslov. Chem. Commun.,1976年,41,1200-1207
【文献】Collection Czechoslov. Chem. Commun.,1977年,42,1220-1228
【文献】Chem. Ber.,1960年,93,1967-1975
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J 63/00
A61P 43/00
A61P 3/00
A61P 1/16
A61P 3/06
A61P 3/10
A61K 31/198
A61K 31/221
A61K 31/215
A61K 31/216
A61K 31/455
A61K 31/341
A61K 31/27
A61K 31/265
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩であって、
【化1】
化合物が、
【化2】
【化3】
である、化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の製造方法であって、
【化4】
を原料とし、3位のヒドロキシ基にエステル基を導入し、さらに水素化して17位のカルボキシ基における保護基であるベンジル基を脱離させた後、カルボキシ基にアミノ酸基を導入することによって、請求項1に記載の化合物を得るが、式中において、各置換基の定義は請求項1に記載の通りであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、
薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする薬物組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、あるいは請求項に記載の薬物組成物の使用であって、(i)ファルネソイドX受容体(FXR)拮抗剤の製造、または(ii)代謝性疾患を治療する薬物の製造に使用されることを特徴とする使用。
【請求項5】
代謝性疾患が、高脂血、胆汁鬱滞、糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝、および胆汁性肝硬変からなる群から選ばれる、請求項4に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、FXR拮抗剤に関し、具体的に、ペンタシクロトリテルペン系化合物、およびその製造方法、ならびに前記化合物を含む薬物組成物、FXR拮抗剤の製造における使用、および胆汁鬱滞、高脂血、糖尿病を治療する薬物の製造における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ファルネソイドX受容体(farnesoid X receptor、FXR)は、核内受容体スーパーファミリーのメンバーであり、肝臓、腸管、腎臓、副腎および脂肪組織においで高度に発現される。内因性胆汁酸の主なレギュレーターとして、FXR受容体は胆汁酸の合成およびその腸肝循環の過程において重要な役割を果たす。FXRは腸肝代謝軸の複雑な調節ネットワークを介し、体内におけるトリグリセリド、低密度リポタンパク質、高密度リポタンパク質および血糖のレベルを調節することができ、また肝臓損傷や炎症、肝臓癌および腸内細菌叢の調節などの過程に関与する。
【0003】
FXRは多くの代謝系疾患、たとえば胆汁酸代謝異常、脂肪代謝異常や糖代謝異常などの過程に関与するため、FXR調節剤は胆汁鬱滞、高脂血、糖尿病などの一連の代謝性疾患を治療する薬物として開発されることが期待されている。たとえば、FXRの強力な作動剤であるオベチコール酸は、原発性胆汁性肝硬変を治療するIII期臨床試験に成功し、市販が許可された。また、オベチコール酸は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)が伴う糖尿病への適応について臨床研究が行われている。現在、多くのFXR拮抗剤も報告されており、そして一部の化合物は体内薬効学実験においてある程度の血脂降下、血糖降下または胆汁酸鬱滞を改善する作用を示した。ある研究では、腸管特異的FXR遺伝子ノックアウトマウスは肥満およびインスリン耐性が生じにくいことが示され、そして当該研究チームはFXR受容体に拮抗する胆汁酸誘導体であるT-β-MCAを発見し、それは一連の代謝機能の改善と関連性があるが、当該化合物は腸内細菌が分泌する胆汁酸塩加水分解酵素(BSH)によってすぐ分解される。最近の文献では、胆汁酸誘導体であるGly-MCAが報告され、それは選択的に腸管内におけるFXR受容体を遮断し、マウスの脂肪肝を防止・逆転することができ、高脂肪食飼育マウスのインスリンと血糖に対する感度を増加させ、そしてBSHによって分解されない。FXR拮抗剤の開発は一部の代謝性疾患、たとえば肥満、高脂血、2型糖尿病や脂肪肝などの治療に新しい考え方を提供する可能性があることがわかる。
【0004】
現段階で報告されたFXR拮抗剤は、主に天然産物系拮抗剤と合成系小分子拮抗剤の2種類を含む。天然産物であるググルステロン(GS)は初めて報告されたFXR拮抗剤であるが、その選択性が劣り、多くの核内受容体に作用する。2007年にCarterらによって発見されたフィストステロールであるスチグマステロールアセタート(Stigmasterol Acetate)およびChoiによって2011年に報告された一連の海洋天然産物であるツベラトリド(Tuberatolides)はいずれもFXRに拮抗するが、化合物の天然リソースが限られ、かつ全合成の難易度が高いため、このような化合物の構造について報告されていない。初めての非ステロイド系FXR小分子拮抗剤はKainumaのチームによって2007年に報告され、FXR作動剤であるGW4064から改造されたものである。もう一つの代表的な小分子拮抗剤は2012年に李剣の研究チームによって発見されたピラゾロン系化合物で、当該化合物はコレステロール飼育マウスの体内薬効学実験において投与量に依存してトリグリセリドおよび総コレステロールのレベルを降下させることができた。天然産物系も合成系小分子FXR拮抗剤も、ほとんど活性が弱いという欠陥が存在し、かつ種類が少ない。その大半は天然産物で、構造が複雑で、後の開発に不利である。
【0005】
現在、ペンタシクロトリテルペン系化合物をFXR拮抗剤として使用される報告が少なく、初めて報告されたペンタシクロトリテルペン系拮抗剤はプラチコジンDで、その後オレアノール酸もわずかなFXR拮抗活性を有することが発見された。最近、方唯碩の研究チームはオレアノール酸を改造の起点とし、3-β-オレアノール酸誘導体を合成し、FXR拮抗活性が多少向上したが、いまだにベツリン酸誘導体をFXR拮抗剤として使用する報告がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本発明の目的は、ファルネソイドX受容体拮抗剤として使用されるペンタシクロトリテルペン系化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の側面では、一般式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】
(R1は水素、ヒドロキシ基、ハロゲンまたはC-C6アルキル基である。
R2は水素、ヒドロキシ基、ハロゲン、C1-C6アルコキシ基、3-10員シクロアルコキシ基、=O、=N-OH、R-C(=O)-O-である。ここで、Rは置換または無置換の、C1-C8アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C6-C10アリール基、5-7員ヘテロアリール基、RaNH-またはRaO-である。ここで、各Raは独立にC1-C8アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C6-C10アリール基、5-7員ヘテロアリール基から選ばれる。
【0008】
R3およびR4はそれぞれ独立に無置換または置換のC1-C6アルキル基である。
R5は水素、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ホルミル基、
【化2】
から選ばれる。ここで、XはNH、OまたはSで、Rbは水素、無置換または置換のC1-C6アルキル基である。
R6、R7、R8およびR9はそれぞれ独立に水素、ヒドロキシ基またはC1~C6アルキル基である。
Zは-(CH2)-nで、nは1、2または3である。
【化3】
は単結合または二重結合を表す。
各*は独立にR配置、S配置またはラセミ体を表す。
【0009】
前記置換とは、基における水素がヒドロキシ基、ハロゲン、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO2OH)から選ばれる、1個または複数の置換基で置換されることである。)
もう一つの好適な例において、R1は水素またはヒドロキシ基である。
もう一つの好適な例において、R1は水素である。
もう一つの好適な例において、R2はヒドロキシ基、R-C(=O)-O-で、ここで、Rは置換または無置換の、C1-C6アルキル基、C3-C8シクロアルキル基、C6-C10アリール基、5-7員ヘテロアリール基、RaNH-またはRaO-で、ここで、各Raは独立にC1-C6アルキル基で、
【0010】
前記置換とは、基における水素がハロゲン、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基から選ばれる、1個または複数の置換基で置換されることである。
もう一つの好適な例において、R2はα配置で環に連結している。
もう一つの好適な例において、R3およびR4はそれぞれ独立にC1-C4アルキル基である。
もう一つの好適な例において、R3およびR4のいずれもメチル基である。
もう一つの好適な例において、R5はヒドロキシメチル基、ホルミル基、
【化4】
から選ばれ、ここで、XはNHまたはOで、Rbは水素、無置換または置換のC1-C4アルキル基で、
前記置換とは、基における水素がC1-C4アルキル基、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO2OH)から選ばれる、1個または複数の置換基で置換されることである。
【0011】
もう一つの好適な例において、R5
【化5】
である。
【0012】
もう一つの好適な例において、R6およびR7はそれぞれ独立に水素、メチル基またはエチル基で、
R8およびR9はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基またはイソブチル基である。
もう一つの好適な例において、前記化合物は、
【化6-1】
【化6-2】
である。
【0013】
本発明の第二の側面では、第一の側面に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の製造方法であって、
【化7】
を原料とし、3位のヒドロキシ基にエステル基を導入し、さらに水素化して17位のカルボキシ基における保護基であるベンジル基を脱離させた後、カルボキシ基にアミノ酸基を導入することによって、第一の側面に記載の化合物を得るが、各置換基の定義は第一の側面に記載の通りである方法を提供する。
【0014】
一つの好適な実施形態において、前記化合物またはその薬学的に許容される塩は以下の経路によって製造され、
【化8】
式H1化合物を酸塩化物、酸無水物、クロロギ酸エステルまたはイソシアネートと反応させて式H2化合物を得、
式H2化合物から保護基であるベンジル基を脱離させて式H3化合物を得、
式H3化合物をアミノ酸またはクロロギ酸エステルと反応させて式H4化合物を得、
ここで、R10は置換または無置換の、C1-C8アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C6-C10アリール基、5-7員ヘテロアリール基、RaNH-またはRaO-で、ここで、各Raは独立にC1-C8アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C6-C10アリール基、5-7員ヘテロアリール基から選ばれ、R11は水素、無置換または置換のC1-C6アルキル基から選ばれ、
置換の定義は前記と同様である。
【0015】
本発明の第三の側面では、第一の側面に記載の化合物または薬学的に許容される塩と、
薬学的に許容される担体とを含む薬物組成物を提供する。
【0016】
本発明の第四の側面では、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、あるいは請求項9に記載の薬物組成物の使用であって、(i)ファルネソイドX受容体(FXR)拮抗剤の製造、または(ii)代謝性疾患を治療する薬物の製造に使用されることを特徴とする使用を提供する。
もう一つの好適な例において、前記代謝性疾患は、高脂血、胆汁鬱滞、糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝、胆汁性肝硬変から選ばれる。
高脂血を治療する方法であって、必要な対象に、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、あるいは請求項9に記載の薬物組成物を施用する工程を含むことを特徴とする方法。
【0017】
本発明の新規なペンタシクロトリテルペン系化合物は、有効にFXR受容体に拮抗し、マイクロモル級の濃度でFXR受容体に拮抗することができ、かつTGR5受容体に作動作用がなく、既存の天然由来のFXR拮抗剤の一部と比べ、より豊富な天然リソースおよびより簡便な合成方法を有する。
【0018】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組み合わせ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。明細書で開示された各特徴は、任意の相同、同等或いは類似の目的の代替性特徴にも任意に替えることができる。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
具体的な実施形態
本願の発明者は、幅広く深く研究したところ、初めて、ペンタシクロトリテルペン系化合物を研究・開発し、その主な特徴は3位のヒドロキシ基が逆転し、かつその17位のカルボキシ基にグリシンやタウリンなどの基を導入することによって、FXR拮抗活性が顕著に増加したことである。発明者は、初めて、この構造の活性に影響する規則を見出し、かつ一連の機能が優れた化合物を得、既存の天然由来のFXR拮抗剤の一部と比べ、天然リソースがより豊富なだけでなく、合成も簡便で、当該標的に作用する代謝性疾患を治療する新規な薬物として有望である。これに基づき、本発明を完成させた。
【0020】
用語
本明細書において、前記のアルキル基は脂肪族アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基でもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基などを含むが、これらに限定されない。「C1-C8」のような表現とは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を有する相応する基をいい、たとえば、「C1-C8アルキル基」とは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を有するアルキル基を、「C2-C10アルケニル基」とは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を有するアルケニル基をいう。
本明細書において、前記アルケニル基はビニル基、プロペニル基、ブテニル基、スチリル基、シンナミル基、または類似の基が好ましい。
【0021】
本明細書において、ハロゲンとは好適にフッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
本明細書において、アルコキシ基とは、-O-(アルキル基)をいい、ここで、アルキル基の定義は上記の通りである。「C1-6アルコキシ基」とは1-6個の炭素を含むアルキルオキシ基をいい、非限定的な実施例はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などを含む。
本明細書において、前記シクロアルキル基は飽和または部分飽和の単環または多環の環状炭化水素置換基でもよく、それに炭素原子が3~20個、好ましくは3~12個、より好ましくは3~10個含まれる。単環シクロアルキル基の非制限的な実施例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロオクチルなどを含み、多環シクロアルキル基はスピロ環、縮合環および架橋環のシクロアルキル基を含む。
本明細書において、シクロアルコキシ基とは、-O-(シクロアルキル基)をいい、ここで、シクロアルキル基の定義は上記の通りである。
【0022】
前記アリール基とは6~10員の全炭素の単環または縮合多環(すなわち隣接する炭素原子対を共有する環)基で、前記の基は共役のπ電子系を有し、たとえばフェニル基やナフチル基が挙げられる。前記アリール環は複素環基、ヘテロアリール基またはシクロアルキル環と縮合してもよく、非制限的な実施例はベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾピラゾール、キノリン、ベンゾインドール、ベンゾジヒドロフランを含む。
【0023】
前記ヘテロアリール基とはヘテロ原子を1~4個、環原子を5~14個含むヘテロ芳香族系をいうが、ここで、ヘテロ原子は酸素、硫黄および窒素を含む。ヘテロアリール基は5員または6員がこのましく、たとえばフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、N-アルキルピロリル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、テトラゾリル基などが挙げられる。前記のヘテロアリール基はアリール基、複素環基またはシクロアルキル環に縮合してもよいが、ここで、母体構造と連結した環はヘテロアリール環である。
【0024】
本発明において、別途に説明しない限り、
【化9】
は連結位置を表す。
特別に説明しない限り、本発明に記載される構造式はすべての互変異性、光学異性および立体異性の形態(たとえばエナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体または配座異性体)、たとえば不斉中心を有するR、S配置、二重結合の(Z)、(E)異性体および(Z)、(E)の配座異性体を含むことを意味する。そのため、本発明の化合物の単独の立体異性体、互変異性体あるいはそのエナンチオマー、ジアステレオマーまたは幾何異性体または配座異性体または互変異性体の混合物はいずれも本発明の範囲に含まれる。
【0025】
用語「互変異性体」は異なるエネルギーを有する構造異性体が低いエネルギー障壁を超え、互いに転換することができることを意味する。たとえば、プロトン互変異性体(すなわちプロトトロピー)はプロトン移動によって互変するもの、たとえば1H-インダゾールと2H-インダゾール、1H-ベンゾ[d]イミダゾールと3H-ベンゾ[d]イミダゾールを含み、原子価互変異性体は一部の結合電子が再構成して互変するものを含む。
【0026】
本明細書において、前記の薬学的に許容される塩は特に限定されず、好ましくは無機酸塩、有機酸塩、アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩を含み、前記無機酸塩は塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などを含み、前記有機酸塩はギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などを含み、前記アルキルスルホン酸塩はメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩などを含み、前記アリールスルホン酸塩はベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などを含む。
【0027】
製造方法
本発明のペンタシクロトリテルペン系化合物は、以下の経路によって製造することができる。
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
【化10-4】
【0028】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
別途に定義しない限り、本文に用いられるすべての専門用語と科学用語は、当業者に熟知される意味と同様である。また、記載の内容と類似あるいは同等の方法および材料は、いずれも本発明の方法に用いることができる。ここで記載の好ましい実施方法及び材料は例示のためだけである。
【0029】
下記製造実施例において、NMRはVarian製のMercury-Vx 300M装置によって測定され、NMR校正は、δ H 7.26 ppm(CDCl3)、2.50 ppm(DMSO-d6)である。質量分析は、Agilent 1200 Quadrupole LC/MS液相質量分析装置またはSHIMADZU GCMS-QP5050Aによって測定された。試薬は主に上海化学試薬公司から提供された。TLC薄層クロマトグラフィーシリカゲルプレートは山東煙台会友シリカゲル開発有限公司製で、型番はHSGF 254である。化合物の精製に使用された順相カラムクロマトグラフィーのシリカゲルは山東青島海洋化工社支社製で、型番はzcx-11で、200~300メッシュである。
本明細書における略号に相応する意味は以下の通りである。
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン、DCM:ジクロロメタン、DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、TFA:トリフルオロ酢酸。
【0030】
実施例1
【化11】
(1)室温で原料であるベツリン酸S1(1.2 g, 2.63 mmol)をメタノール(50 mL)に溶解させ、窒素ガスで置換した後、迅速に10%のPd/Cを入れ、さらに窒素ガス、水素ガスの順で置換し、室温で撹拌した。24時間後、TLCによって完全に反応したことが検出された。窒素ガスで置換した後、ろ過でPd/Cを除去し、反応液を回転乾燥して石油エーテル/酢酸エチル=10:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、化合物S2 1.04 g (2.27 mmol)を得たが、白色の固体で、モル収率は86%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 3.13 (t, 1H, J = 9.0, 6.9 Hz), 2.28-2.16 (m, 2H), 1.98-1.78 (m, 4H), 1.64-0.96 (m, ほかの脂環プロトン), 0.96 (s, 3H), 0.93 (s, 3H), 0.92 (s, 3H), 0.90 (s, 3H), 0.89 (s, 3H), 0.87 (s, 3H), 0.78 (s, 3H).
【0031】
(2)室温で上記工程の産物S2(1.04 g, 2.27 mmol)をDMF(20 mL)に溶解させ、無水炭酸カリウム(0.626 g, 4.54 mmol)を入れ、撹拌しながらゆっくり塩化ベンジル(0.313 mL, 2.72 mmol)を滴下した。滴下終了後、反応液を50℃にして3h撹拌し、TLCによるモニタリングで完全に反応したことが示された。混合物を室温に冷却し、脱イオン水を50 mL入れて希釈し、酢酸エチル(2×50 mL)で抽出し、合併した有機層をそれぞれ脱イオン水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して減圧で蒸留し、所要の白色固体の化合物S3 1.21g (2.20 mmol)を得たが、そのまま次の工程の反応に使用し、モル収率は97%であった。
【0032】
(3)氷水浴においてS3(1.21 g,2.20 mmol)をジクロロメタン(30mL)に溶解させ、デス・マーチン酸化剤(1.87 g, 4.40 mmol)を分けて入れ、ゆっくり室温に昇温させて1時間撹拌した。反応混合物をろ過して回転乾燥し、石油エーテル/酢酸エチル=10:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、化合物S4 0.983 g (1.80 mmol)を得たが、白色の固体で、モル収率は82%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.38-7.30 (m, 5H), 5.16-5.05 (m, 2H), 2.55-2.34 (m, 2H), 2.31-2.18 (m, 3H), 1.95-1.12 (m, ほかの脂環プロトン), 1.06 (s, 3H), 1.01 (s, 3H), 0.93 (s, 3H), 0.91 (s, 3H), 0.86 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 0.79-0.73 (m, 6H).
【0033】
(4)上記工程の産物S4(0.983 g, 1.80 mmol)およびS-(-)-2-メチルオキサザボロリジン(100 mg, 0.36 mmol)を100 mLの加熱乾燥された丸底フラスコに入れ、新しくナトリウム糸で処理されたTHF(70 mL)を入れた。室温でゆっくり10Mのボラン-テトラヒドロフラン溶液(0.32mL)を滴下し、10分間で滴下が終わるように滴下速度を制御し、室温で10分間撹拌し、TLCによるモニタリングで完全に反応したことが示された。反応フラスコを氷水浴に移し、ゆっくりメタノールを滴下して反応をクエンチングし、泡が生じなくなったら溶媒を回転乾燥で除去し、石油エーテル/酢酸エチル=10:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、化合物S5 827 mg (1.51 mmol)を得たが、白色の固体で、モル収率は84%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.30 (m, 5H), 5.15-5.06 (m, 2H), 3.38 (t, 1H, J = 3.0 Hz), 2.55-2.34 (m, 2H), 2.31-2.18 (m, 3H), 1.95-1.12 (m, ほかの脂環プロトン), 0.94 (s, 3H), 0.93 (s, 3H), 0.91 (s, 3H), 0.85-0.82 (m, 9H), 0.75-0.73 (m, 6H).
【0034】
(5)化合物S5 (110 mg,0.20 mmol)および触媒量のDMAP (2.4 mg, 0.02 mmol)をジクロロメタン(5 mL)に溶解させ、トリエチルアミン(83 μL,0.60 mmol)を入れ、氷水浴において無水酪酸(98 μL,0.60 mmol)を滴下し、室温で12時間反応させ、TLCで完全に反応したことが示された。濃縮して溶媒を除去した後、酢酸エチルを入れて希釈し、それぞれ水および塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル=10:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物S9 111 mg (0.18 mmol)を得たが、モル収率は90%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.38-7.30 (m, 5H), 5.15-5.06 (m, 2H), 4.62 (t, 1H, J = 3.0 Hz), 2.34-2.16 (m, 4H), 1.93-1.04 (m, ほかの脂環プロトン), 0.97 (t, 6H, J = 7.2 Hz), 0.87-0.86 (m, 3H), 0.84-0.82 (m, 6H), 0.76-0.73 (m, 6H).
【0035】
(6)上記工程の産物S9(111 mg, 0.18 mmol)をメタノール(10 mL)および少量の酢酸エチルに溶解させ、窒素ガスで置換した後、迅速に10%のPd/Cを入れ、さらに窒素ガス、水素ガスの順で置換し、室温で撹拌した。1時間後、TLCによって完全に反応したことが検出された。窒素ガスで置換した後、ろ過でPd/Cを除去し、反応液を回転乾燥して石油エーテル/酢酸エチル=9:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、化合物S10 79 mg (0.15 mmol)を得たが、白色の固体で、モル収率は83%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.61 (s, 1H), 2.30 (t, 2H, J = 7.5 Hz), 2.28-2.15 (m, 4H), 1.98-1.15 (m, ほかの脂環プロトン), 0.94 (s, 3H), 0.91 (s, 3H), 0.90 (t, 3H, J = 6.0 Hz), 0.85 (s, 3H), 0.83 (s, 3H), 0.82 (s, 3H), 0.75 (s, 3H), 0.73 (s, 3H).
【0036】
(7)上記工程の産物S10 (79 mg, 0.15 mmol)および触媒量のDMF (2 μL, 0.02 mmol)を2 mLの乾燥されたジクロロメタンに溶解させ、0℃で塩化オキサリル(125 μL, 1.5 mmol)を入れ、10分間後室温に戻して3時間撹拌した。そのままジクロロメタンを回転で除去してオイルポンプで吸引乾燥し、次の工程の反応に使用した。グリシンt-ブチルエステル塩酸塩(51 mg, 0.30 mmol)、触媒量のDMAP (3.7 mg, 0.03 mmol)を1 mLのジクロロメタンに溶解させ、0℃でトリエチルアミン(103 μL, 0.75 mmol)を滴下した後、新しく調製された酸塩化物のジクロロメタン溶液を1 mL滴下し、10分間後室温に戻し、室温で12時間反応させ、TLCで完全に反応したことが示された。濃縮して溶媒を除去した後、酢酸エチルを入れて希釈し、それぞれ水および塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル=8:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物 83 mg (0.13 mmol)を得たが、モル収率は87%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.02 (t, 1H, J = 5.1 Hz), 4.62 (t, 1H, J = 3.0 Hz), 3.91-3.88 (m, 2H), 2.48-2.38 (m, 1H), 2.31 (t, 2H, J = 7.5 Hz), 2.04-2.00 (m, 1H), 1.91-1.04 (m, ほかの脂環プロトン), 1.47 (s, 9H), 1.04-0.95 (m, 6H), 0.92 (s, 3H), 0.86-0.82 (m, 12H), 0.74 (d, 3H, J = 6.6 Hz).
【0037】
(8)上記工程の産物83 mg (0.13 mmol)を3 mLのジクロロメタンに溶解させ、0.2 mLのTFAを入れ、室温で1時間撹拌し、TLCで完全に反応したことが示された。そのまま回転乾燥で溶媒を除去し、ジクロロメタン/メタノール=20:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物C4 (59 mg, 0.10 mmol)を得たが、モル収率は77%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.16 (s, 1H), 4.63 (t, 1H, J = 2.7 Hz), 4.07 (s, 2H), 2.41-2.21 (m, 4H), 2.05-1.04 (m, ほかの脂環プロトン), 1.00-0.95 (m, 6H), 0.92 (s, 3H), 0.87-0.83 (m, 12H), 0.75 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
【0038】
実施例1と同様の方法によって異なる酸無水物または酸塩化物で以下の化合物を合成した。
【表A-1】
【表A-2】
【表A-3】
【0039】
実施例2
【化12】
化合物C4(42 mg,0.07 mmol)をメタノールと水(4:1)の混合溶媒に溶解させ、0℃で水酸化ナトリウム(28 mg,0.7 mmol)を入れ、10分間後室温に戻し、12時間撹拌した。TLCで完全に反応したことが示された。回転でメタノールを除去し、希塩酸を入れてpH値を中性に調整し、酢酸エチルを入れて希釈し、それぞれ水および飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮し、ジクロロメタン/メタノール=10:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物C1 21 mg (0.04 mmol)を得たが、モル収率は57%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.13-6.10 (m, 1H), 4.04 (d, 2H, J = 4.8 Hz), 3.40 (t, 1H, J = 3.0 Hz), 2.43-1.12 (m, ほかの脂環プロトン), 0.97 (s, 3H), 0.93 (s, 3H), 0.92 (s, 3H), 0.87-0.82 (m, 9H), 0.75 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
【0040】
実施例3
【化13】
(1)化合物S3 (148 mg,0.27 mmol)および触媒量のDMAP (3.7 mg, 0.03 mmol)をジクロロメタン(5 mL)に溶解させ、トリエチルアミン(112 μL,0.81 mmol)を入れ、氷水浴において無水酪酸(132 μL,0.81 mmol)を滴下し、室温で12時間反応させ、TLCで完全に反応したことが示された。濃縮して溶媒を除去した後、酢酸エチルを入れて希釈し、それぞれ水および塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル=10:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物S6 142 mg (0.23 mmol)を得たが、モル収率は85%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.30 (m, 5H), 5.15-5.05 (m, 2H), 4.50-4.45 (m, 1H), 2.34-2.14 (m, 4H), 1.86-1.09 (m, ほかの脂環プロトン), 0.99-0.92 (m, 6H), 0.85-0.79 (m, 9H), 0.75-0.73 (m, 6H).
【0041】
(2)上記工程の産物S6(142 mg, 0.23 mmol)をメタノール(15 mL)および少量の酢酸エチルに溶解させ、窒素ガスで置換した後、迅速に10%のPd/Cを入れ、さらに窒素ガス、水素ガスの順で置換し、室温で撹拌した。1時間後、TLCによって完全に反応したことが検出された。窒素ガスで置換した後、ろ過でPd/Cを除去し、反応液を回転乾燥して石油エーテル/酢酸エチル=8:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、化合物S7 101 mg (0.19 mmol)を得たが、白色の固体で、モル収率は83%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.48 (t, 1H, J = 7.5 Hz), 2.28 (t, 2H, J = 7.5 Hz), 2.30-2.15 (m, 4H), 1.90-1.07 (m, ほかの脂環プロトン), 0.94 (s, 3H), 0.91 (s, 3H), 0.90 (t, 3H, J = 6.0 Hz), 0.85 (s, 3H), 0.83 (s, 3H), 0.82 (s, 3H), 0.75 (s, 3H), 0.73 (s, 3H).
【0042】
(3)上記工程の産物S7 (101 mg, 0.19 mmol)および触媒量のDMF (2 μL, 0.02 mmol)を2 mLの乾燥されたジクロロメタンに溶解させ、0℃で塩化オキサリル(158 μL, 1.9 mmol)を入れ、10分間後室温に戻して3時間撹拌した。そのままジクロロメタンを回転で除去してオイルポンプで吸引乾燥し、次の工程の反応に使用した。グリシンt-ブチルエステル塩酸塩(65 mg, 0.38 mmol)、触媒量のDMAP (3.7 mg, 0.03 mmol)を1 mLのジクロロメタンに溶解させ、0℃でトリエチルアミン(130 μL, 0.95 mmol)を滴下した後、新しく調製された酸塩化物のジクロロメタン溶液を1 mL滴下し、10分間後室温に戻し、室温で12時間反応させ、TLCで完全に反応したことが示された。濃縮して溶媒を除去した後、酢酸エチルを入れて希釈し、それぞれ水および飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル=8:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物S8 105 mg (0.17 mmol)を得たが、モル収率は89%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.01 (t, 1H, J = 5.1 Hz), 4.51-4.45 (m, 1H), 3.91-3.88 (m, 2H), 2.48-2.38 (m, 1H), 2.30-2.25 (m, 3H), 2.03-2.00 (m, 1H), 1.81-1.11 (m, ほかの脂環プロトン), 1.47 (s, 9H), 0.97-0.91 (m, 9H), 0.86-0.83 (m, 12H), 0.74 (d, 3H, J = 6.6 Hz).
【0043】
(4)上記工程の産物S8 105 mg (0.17 mmol)を5 mLのジクロロメタンに溶解させ、0.2 mLのTFAを入れ、室温で1時間撹拌し、TLCで完全に反応したことが示された。そのまま回転乾燥で溶媒を除去し、ジクロロメタン/メタノール=20:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物C12 (82 mg, 0.14 mmol)を得たが、モル収率は82%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.15-6.11 (m, 1H), 4.51-4.45 (m, 1H), 4.05 (t, 1H, J = 4.8 Hz), 2.38-2.25 (m, 4H), 2.02-1.12 (m, ほかの脂環プロトン), 0.97-0.90 (m, 9H), 0.86-0.83 (m, 12H), 0.75 (d, 3H, J = 6.6 Hz).
【0044】
実施例4
【化14】
(1)上記工程の産物S10 (50 mg, 0.095 mmol)および触媒量のDMF (1 μL, 0.01 mmol)を1 mLの乾燥されたジクロロメタンに溶解させ、0℃で塩化オキサリル(125 μL, 0.95 mmol)を入れ、10分間後室温に戻して3時間撹拌した。そのままジクロロメタンを回転で除去してオイルポンプで吸引乾燥し、次の工程の反応に使用した。グリシンt-ブチルエステル塩酸塩(36 mg, 0.19 mmol)、触媒量のDMAP (2.4 mg, 0.02 mmol)を1 mLのジクロロメタンに溶解させ、0℃でトリエチルアミン(67 μL, 0.48 mmol)を滴下した後、新しく調製された酸塩化物のジクロロメタン溶液を1 mL滴下し、10分間後室温に戻し、室温で12時間反応させ、TLCで完全に反応したことが示された。濃縮して溶媒を除去した後、酢酸エチルを入れて希釈し、それぞれ水および飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル=15:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物 47 mg (0.072 mmol)を得たが、モル収率は76%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.18 (d, 1H, J = 7.2 Hz), 4.62 (t, 1H, J = 3.0 Hz), 4.48-4.38 (m, 1H), 2.44-2.27 (m, 4H), 2.01-1.03 (m, ほかの脂環プロトン), 0.99-0.92 (m, 9H), 0.86-0.82 (m, 12H), 0.74 (d, 3H, J = 6.6 Hz).
【0045】
(2)上記工程の産物47 mg (0.072 mmol)を2 mLのジクロロメタンに溶解させ、0.2 mLのTFAを入れ、室温で1時間撹拌し、TLCで完全に反応したことが示された。そのまま回転乾燥で溶媒を除去し、ジクロロメタン/メタノール=20:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物C18 (36 mg, 0.060 mmol)を得たが、モル収率は83%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.06 (d, 1H, J = 6.6 Hz), 4.63 (s, 1H), 4.59-4.49 (m, 1H), 2.41-2.28 (m, 4H), 2.00-1.08 (m, ほかの脂環プロトン), 1.00-0.93 (m, 9H), 0.88-0.83 (m, 12H), 0.75 (d, 3H, J = 6.6 Hz).
実施例4と同様の方法によってD-アラニン塩酸塩で化合物C19を合成した。
【化15】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.06 (d, 1H, J = 6.3 Hz), 4.63 (t, 1H, J = 3.0 Hz), 4.55-4.46 (m, 1H), 2.43-2.24 (m, 4H), 2.03-1.05 (m, ほかの脂環プロトン), 1.00-0.92 (m, 9H), 0.87-0.83 (m, 12H), 0.75 (d, 3H, J = 6.6 Hz).
【0046】
実施例5
【化16】
化合物S10 (50 mg, 0.095 mmol)および触媒量のDMF (1 μL, 0.01 mmol)を2 mLの乾燥されたジクロロメタンに溶解させ、0℃で塩化オキサリル(80 μL, 0.95 mmol)を入れ、10分間後室温に戻して3時間撹拌した。そのままジクロロメタンを回転で除去してオイルポンプで吸引乾燥し、次の工程の反応に使用した。直前に調製された酸塩化物およびトリエチルアミン(263 μL, 1.9 mmol)をジオキサン(3 mL)に溶解させた後、0℃でタウリン(36 mg, 0.285 mmol)およびトリエチルアミン(263 μL, 1.9 mmol)の水溶液を1 mL滴下し、10分間後室温に戻し、室温で3時間反応させ、TLCで完全に反応したことが示された。希塩酸を入れてpH値を酸性に調整し、酢酸エチルを入れて希釈し、それぞれ水および飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮し、ジクロロメタン/メタノール=10:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物C20 16 mg (0.025 mmol)を得たが、モル収率は27%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.09 (br s, 1H), 4.61 (s, 1H), 3.20-3.03 (m, 4H), 2.33-2.28 (m, 2H), 1.72-1.60 (m, 4H), 1.44-1.07 (m, ほかの脂環プロトン), 0.99-0.89 (m, 9H), 0.87-0.81 (m, 12H), 0.73-0.72 (m, 3H).
【0047】
実施例6
【化17】
(1)化合物S10(100 mg, 0.189 mmol)を乾燥DMF(3 mL)に溶解させ、無水炭酸カリウム(65.3 mg, 0.473 mmol)を入れ、撹拌しながらゆっくりブロモ酢酸ベンジル(0.148 mL, 0.945 mmol)を滴下し、滴下終了後、室温で3h撹拌し、TLCによるモニタリングで完全に反応したことが示された。脱イオン水を30 mL入れて希釈し、酢酸エチル(2×30 mL)で抽出し、合併した有機層をそれぞれ脱イオン水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル=30:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物S13 124 mg (0.183 mmol)を得たが、モル収率は97%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.38-7.34 (m, 5H), 5.24-5.13 (m, 2H), 4.63-4.62 (m, 3H), 2.32 (t, 2H, J = 7.5 Hz), 2.28-2.20 (m, 2H), 1.96-1.77 (m, 3H), 1.71-1.64 (m, 2H), 1.61-1.04 (m, ほかの脂環プロトン), 1.00-0.92 (m, 9H), 0.87-0.83 (m, 9H), 0.75 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
【0048】
(2)上記工程の産物S13(124 mg, 0.183 mmol)をメタノール(15 mL)および少量の酢酸エチルに溶解させ、窒素ガスで置換した後、迅速に10%のPd/Cを入れ、さらに窒素ガス、水素ガスの順で置換し、室温で撹拌した。1時間後、TLCによって完全に反応したことが検出された。窒素ガスで置換した後、ろ過でPd/Cを除去し、反応液を回転乾燥してジクロロメタン/メタノール=20:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、化合物C21 80 mg (0.137 mmol)を得たが、白色の固体で、モル収率は75%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.66-4.58 (m, 3H), 2.32 (t, 2H, J = 7.5 Hz), 2.24-2.17 (m, 3H), 1.94-1.77 (m, 4H), 1.71-1.64 (m, 2H), 1.61-1.04 (m, ほかの脂環プロトン), 1.00-0.92 (m, 9H), 0.87-0.82 (m, 9H), 0.75 (d, 3H, J = 6.6 Hz).
【0049】
実施例7
【化18】
(1)化合物S5 (100 mg, 0.182 mmol)、イソシアン酸エチル(150 μL, 1.82 mmol)、トリエチルアミン(505 μL, 3.64 mmol)およびDMAP(1.22 mg, 0.01 mmol)を3 mLのトルエンに溶解させ、120℃で試験管を封じて2日反応させ、TLCによるモニタリングで完全に反応したことが示された。脱イオン水を30 mL入れて希釈し、酢酸エチル(2×30 mL)で抽出し、合併した有機層をそれぞれ脱イオン水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル=15:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物S14 85 mg (0.137 mmol)を得たが、モル収率は75%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.26 (m, 5H), 5.15-5.06 (m, 2H), 4.64 (br s, 1H), 4.49 (s, 1H), 3.24-3.20 (m, 2H), 2.31-2.15 (m, 4H), 1.85-1.77 (m, 4H), 1.68-1.01 (m, ほかの脂環プロトン), 0.96 (s, 3H), 0.86-0.82 (m, 12H), 0.75-0.73 (m, 6H).
【0050】
(2)上記工程の産物S14(85 mg, 0.137 mmol)をメタノール(15 mL)および少量の酢酸エチルに溶解させ、窒素ガスで置換した後、迅速に10%のPd(OH)2/Cを入れ、さらに窒素ガス、水素ガスの順で置換し、室温で撹拌した。1時間後、TLCによって完全に反応したことが検出された。窒素ガスで置換した後、ろ過でPd(OH)2/Cを除去し、反応液を回転乾燥して石油エーテル/酢酸エチル=8:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、化合物S15 61 mg (0.115 mmol)を得たが、白色の固体で、モル収率は84%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.67 (br s, 1H), 4.50 (s, 1H), 3.27-3.17 (m, 2H), 2.29-2.16 (m, 4H), 1.91-1.78 (m, 4H), 1.68-1.06 (m, ほかの脂環プロトン), 0.99 (s, 3H), 0.93 (s, 3H), 0.86-0.85 (m, 12H), 0.75 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
【0051】
(3)上記工程の産物S15 (61 mg, 0.115 mmol)および触媒量のDMF (1 μL, 0.01 mmol)を2 mLの乾燥されたジクロロメタンに溶解させ、0℃で塩化オキサリル(96 μL, 1.15 mmol)を入れ、10分間後室温に戻して3時間撹拌した。そのままジクロロメタンを回転で除去してオイルポンプで吸引乾燥し、次の工程の反応に使用した。グリシンt-ベンジルエステル塩酸塩(47 mg, 0.23 mmol)、触媒量のDMAP (2.4 mg, 0.02 mmol)を1 mLのジクロロメタンに溶解させ、0℃でトリエチルアミン(80 μL, 0.58 mmol)を滴下した後、新しく調製された酸塩化物のジクロロメタン溶液を1 mL滴下し、10分間後室温に戻し、室温で12時間反応させ、TLCで完全に反応したことが示された。濃縮して溶媒を除去した後、酢酸エチルを入れて希釈し、それぞれ水および飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル=8:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物S16 52 mg (0.077 mmol)を得たが、モル収率は67%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.34 (m, 5H), 6.07 (t, 1H, J = 5.4 Hz), 5.22-5.13 (m, 2H), 4.65 (br s, 1H), 4.49 (s, 1H), 4.08-3.97 (m, 2H), 3.26-3.17 (m, 2H), 2.46-2.23 (m, 3H), 2.03-1.04 (m, ほかの脂環プロトン), 0.97 (s, 3H), 0.90 (s, 1H), 0.85-0.83 (m, 9H), 0.74 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
【0052】
(4)上記工程の産物S16(52 mg, 0.077 mmol)をメタノール(10 mL)および少量の酢酸エチルに溶解させ、窒素ガスで置換した後、迅速に10%のPd/Cを入れ、さらに窒素ガス、水素ガスの順で置換し、室温で撹拌した。1時間後、TLCによって完全に反応したことが検出された。窒素ガスで置換した後、ろ過でPd/Cを除去し、反応液を回転乾燥してジクロロメタン/メタノール=20:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物C22 (38 mg, 0.065 mmol)を得たが、モル収率は84%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.17 (s, 1H), 4.66 (br s, 1H), 4.50 (s, 1H), 4.04-3.97 (m, 2H), 3.28-3.20 (m, 2H), 2.44-2.27 (m, 3H), 2.04-1.05 (m, ほかの脂環プロトン), 0.98 (s, 3H), 0.92 (s, 3H), 0.86-0.84 (m, 9H), 0.74 (d, 3H, J = 6.6 Hz).
【0053】
実施例8
【化19】
(1)化合物S5 (130 mg, 0.237 mmol)を3 mLのピリジンに溶解させ、-20℃でクロロギ酸エチル(113 μL, 1.19 mmol)を入れ、10分間後室温に戻して室温で撹拌し、2時間後TLCで完全に反応したことが示された。脱イオン水を30 mL入れて希釈し、酢酸エチル(2×30 mL)で抽出し、合併した有機層をそれぞれ希塩酸、脱イオン水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル=10:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物S17 97 mg (0.156 mmol)を得たが、モル収率は66%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.38-7.30 (m, 5H), 5.15-5.06 (m, 2H), 4.46 (t, 1H, J = 2.7 Hz), 4.19 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 2.30-2.14 (m, 4H), 1.96-1.02 (m, ほかの脂環プロトン), 0.95 (s, 3H), 0.90-0.83 (m, 15H), 0.75-0.73 (m, 6H).
【0054】
(2)化合物S17(97 mg, 0.156 mmol)をメタノール(20 mL)および少量の酢酸エチルに溶解させ、窒素ガスで置換した後、迅速に10%のPd(OH)2/Cを入れ、さらに窒素ガス、水素ガスの順で置換し、室温で撹拌した。1時間後、TLCによって完全に反応したことが検出された。窒素ガスで置換した後、ろ過でPd(OH)2/Cを除去し、反応液を回転乾燥して石油エーテル/酢酸エチル=8:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、化合物S18 48 mg (0.091 mmol)を得たが、白色の固体で、モル収率は58%であった。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.47 (t, 1H, J = 2.7 Hz), 4.20 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 2.28-2.14 (m, 4H), 1.91-1.14 (m, ほかの脂環プロトン), 0.98 (s, 3H), 0.93 (s, 3H), 0.90 (s, 3H), 0.88-0.84 (m, 9H), 0.75 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
【0055】
(3)上記工程の産物S18 (48 mg, 0.091 mmol)および触媒量のDMF (1 μL, 0.01 mmol)を2 mLの乾燥されたジクロロメタンに溶解させ、0℃で塩化オキサリル(76 μL, 0.91 mmol)を入れ、10分間後室温に戻して3時間撹拌した。そのままジクロロメタンを回転で除去してオイルポンプで吸引乾燥し、次の工程の反応に使用した。グリシンt-ベンジルエステル塩酸塩(37 mg, 0.18 mmol)、触媒量のDMAP (2.4 mg, 0.02 mmol)を1 mLのジクロロメタンに溶解させ、0℃でトリエチルアミン(64 μL, 0.46 mmol)を滴下した後、新しく調製された酸塩化物のジクロロメタン溶液を1 mL滴下し、10分間後室温に戻し、室温で12時間反応させ、TLCで完全に反応したことが示された。濃縮して溶媒を除去した後、酢酸エチルを入れて希釈し、それぞれ水および飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル=8:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物S19 49 mg (0.072 mmol)を得たが、モル収率は79%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.35 (m, 5H), 6.04 (t, 1H, J = 5.4 Hz), 5.22-5.14 (m, 2H), 4.47 (t, 1H, J = 2.7 Hz), 4.19 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 4.05 (d, 2H, J = 5.4 Hz), 2.46-2.37 (m, 1H), 2.31-2.23 (m, 1H), 2.02-1.10 (m, ほかの脂環プロトン), 0.97 (s, 3H), 0.90-0.83 (m, 15H), 0.74 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
【0056】
(4)上記工程の産物S19(49 mg, 0.072 mmol)をメタノール(10 mL)および少量の酢酸エチルに溶解させ、窒素ガスで置換した後、迅速に10%のPd/Cを入れ、さらに窒素ガス、水素ガスの順で置換し、室温で撹拌した。1時間後、TLCによって完全に反応したことが検出された。窒素ガスで置換した後、ろ過でPd/Cを除去し、反応液を回転乾燥してジクロロメタン/メタノール=20:1の溶離剤系でカラムクロマトグラフィーによって分離させ、産物C23 (35 mg, 0.060 mmol)を得たが、モル収率は83%であった。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.15 (t, 1H, J = 5.4 Hz), 4.46 (t, 1H, J = 2.7 Hz), 4.19 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 4.05-4.03 (m, 2H), 2.42-2.32 (m, 1H), 2.29-2.21 (m, 1H), 2.02-1.12 (m, ほかの脂環プロトン), 0.97 (s, 3H), 0.91-0.84 (m, 12H), 0.74 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
【0057】
実施例9 FXR拮抗剤の試験
1.実験目的
レポーター遺伝子実験によって化合物のFXRに対する拮抗活性を検出する。
2.実験原理
FXRは胆汁酸によって活性化される核内受容体で、体内における糖代謝や脂肪代謝などに対して調節作用を有する。FXRが活性化すると、一連の遺伝子の発現が開始し、外部の刺激に応答する。ルシフェラーゼレポーター遺伝子システムはホタルルシフェラーゼ(Firefly Luciferase)の活性を検出するレポーター系である。ルシフェラーゼは蛍光基質であるルシフェリン(Luciferin)の酸化を触媒し、同時に生物蛍光が放出され、蛍光強度を検出することによってルシフェラーゼの発現量が推測される。本実験において、被験化合物はFXRを標的とするものである可能性があるが、GW4064は既知のFXR作動剤で、FXRリガンド結合ドメインと結合すると、一連の遺伝子の発現が開始する。そのため、レポーター遺伝子実験を利用し、HEK293細胞にLBD(hFXR)-pbindおよびPGL4.31-Lucの2つのプラスミドを共形質転換させ、細胞がFXRリガンド結合ドメインを発現するようにする。それぞれ2つの被験化合物を提供し、そしてブランク対照群を設け、さらに作動剤を入れ、化合物がFXRに親和力がある場合、作動剤と競争してFXRリガンド結合ドメインと結合し、pGL4.31-Lucにおけるルシフェラーゼの発現に影響を与える。Envision2101マルチラベルプレートリーダーで化学発光の計数値を検出し、蛍光強度から被験化合物のFXR活性に対する影響を判断した。
【0058】
3.実験サンプル
試験前に化合物をDMSOに溶解させ、母液を調製し、使用時に培養液で所要の濃度に希釈した。
4.実験方法
2 μgのキメラプラスミドLBD(hFXR)-pbindを2 μgのルシフェラーゼレポータープラスミドと2×106 HEK293細胞に共形質転換させ、白色の不透明の96ウェルプレートに接種した。24 h後、培養液を捨て、被験化合物(無血清培養液で希釈、1% DMSO含有)を入れて1 hインキュベートした後、FXR作動剤GW4064(300 nM)を入れて6 h刺激し、最後にルシフェラーゼの基質を入れて振とうして分解させ、そしてEnvision 2104マルチラベルプレートリーダーで発光の数値を検出した。
【0059】
5.実験結果:(C1などの6つの化合物を例としたが、これらの化合物に限定されない)
【表1】
注:IC50は薬物サンプルのFXRに対する拮抗活性の評価で、半数50%効果濃度である。
6.結果と検討:
これらの化合物はFXRリガンド結合ドメインを発現するHEK293細胞においてFXR作動剤であるGW4064と競争し、そしてGW4064のFXRに対する作動作用に拮抗することができ、その活性は投与量に依存し、IC50値は表1に示す。結果から、これらの化合物はFXR受容体の拮抗剤であることがわかった。
【0060】
実施例10 TGR5作動試験実施例
1.実験目的
TGR5一過性形質移入HEK293細胞を利用して化合物で刺激した後、ホモジニアス時間分解蛍光(Homogeneous Time-Resolved Fluorescence、HTRF)でこれらの化合物がTGR5を作動させることができるか検出する。
【0061】
2.実験原理
TGR5は胆汁酸膜受容体であり、GPCRファミリーのメンバーでもあり、胆汁酸、脂質および糖質の代謝に調節作用を有する。TGR5がGsタンパク質と共役し、活性化すると、さらにアデニル酸シクラーゼを活性化させ、セカンドメッセンジャーであるcAMPが生じる。HTRFはcAMP含有量を検出する方法で、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET、Fluorescence Resonance Energy Transfer)と時間分解蛍光(TRF、Time Resolved Fluorescence)の2種類の技術を合わせたものである。Eu含有穴状化合物を蛍光ドナーとし、その発光スペクトルが蛍光アクセプターの励起スペクトルとある程度重なり、FRETによってドナーを誘導して蛍光を生じさせ、Euの蛍光寿命が長く、TRFによって蛍光バックラウンドからドナーからの蛍光信号を区別することができる。蛍光ドナーをcAMP特異性抗体と結合させ、同時に蛍光ドナーでcAMPを標識し、両者が抗原抗体特異的認識反応によって近づき、FRETが発生し、細胞で生成したcAMPが標識されたcAMPと抗体の結合部位を競争することで、蛍光強度が低下する。本実験はTGR5作動剤であるINT777を陽性対照とし、化合物のTGR5に対する作用を検討した。
【0062】
3.実験サンプル
試験前に化合物をDMSOに溶解させ、母液を調製し、使用時に培養液で所要の濃度に希釈した。
4.実験方法
4.1、被験化合物を1×PBSで最終濃度の2倍に調製した。ここで、最終濃度は100mM、10mM、1mM、100nM、10nM、1nM、0.1nM、DMSO(各ウェルに1%のDMSOが含まれている)であった。
4.2、細胞の処理:
4.2.1、トリプターゼで細胞を消化した後、無血清培養液で懸濁させた。
4.2.2、細胞密度を一定にした。同時に、無血清培養液にIBMX(最終濃度500mM)を入れ、細胞数は2000/5μl/ウェルであった。
【0063】
4.2.3、5 μlの被験化合物および5μlのIBMX含有細胞懸濁液を入れて混合し、アルミホイルで384ウェルプレートを密閉し、室温で光を避けて30分間未満反応させた。
4.3、検出基質の調製
4.3.1、1μlのcAMP-d2をcAMPとcGMPの共役体および分解緩衝液で20μlに希釈した。
4.3.2、1μlの抗cAMPクリプテートをcAMPとcGMPの共役体および分解緩衝液で20μlに希釈した。
4.3.3、30分間後、 5μl(1.3.1)+5μl(1.3.2)を入れ、アルミホイルで384ウェルプレートを密閉し、室温で光を避けて分間反応させた。
4.4、60分間後、Envision2101マルチラベルプレートリーダー(PerkinElmer)で数値を読み取った。
【0064】
5.実験結果
(C1などの6つの化合物を例としたが、これらの化合物に限定されない)
【表1】
注:EC 50は薬物サンプルのTGR5に対する作動活性の評価で、半数50%効果濃度である。NRは100 μMの濃度で活性がないことを表す。
【0065】
実施例11 CCK-8試験実施例
1.実験目的
CCK-8実験によって化合物の細胞毒性を判定する。
2.実験原理
CCK-8は酸化還元反応の指示薬で、電子キャリアである1-メトキシPMSが存在する条件において、生細胞における脱水素酵素を利用してテトラゾリドWST-8を触媒してホルマザン色素を生成させ、そしてホルマザン色素の生成量が生細胞の数と線形関連し、プレートリーダーで波長450 nmにおいてその吸光値を測定することによって、間接的に生細胞数を反映することができる。そのため、この方法は一部の生物活性因子の活性検出、大規模の抗腫瘍薬物のスクリーニング、細胞増殖試験、細胞毒性試験や薬物アレルギー試験などに使用される。本実験は化合物の細胞毒性の判定に使用される。
【0066】
3.実験サンプル
試験前に化合物をDMSOに溶解させ、母液を調製し、使用時に培養液で所要の濃度に希釈した。
4.実験方法
まず、2 μgのキメラプラスミドLBD(hFXR)-pbindを2 μgのルシフェラーゼレポータープラスミドと2×106 HEK293細胞に共形質転換させ、透明の96ウェルプレートに接種した。24 h後、培養液を捨て、被験化合物(無血清培養液で希釈、1% DMSO含有)を入れて1 hインキュベートした後、FXR作動剤GW4064(300 nM)を入れて4 h刺激した。各ウェルに10 μlのCCK-8検出試薬を入れた。2 h後、Flextation装置によって450 nmおよび650 nm(参照波長として)において検出した。
【0067】
5.実験結果:(C1などの6つの化合物を例としたが、これらの化合物に限定されない)
【表3】
【0068】
6.結果と検討
表3の実験結果から、これらの化合物は30 μMおよび100 μMの濃度のいずれでもHEK293細胞に顕著な毒性がなかったことがわかる。

各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。