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特許7029571熱伝導部材およびそれを備えるバッテリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】熱伝導部材およびそれを備えるバッテリー
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20220224BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220224BHJP
【FI】
H05K7/20 F
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6554
H01M10/6567
H01M50/204 401H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021502633
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2020039688
(87)【国際公開番号】W WO2021106444
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2019213851
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 均
(72)【発明者】
【氏名】中藤 登
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-125665(JP,A)
【文献】特表2019-508881(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176344(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0006086(US,A1)
【文献】特開2007-294407(JP,A)
【文献】特開2005-302729(JP,A)
【文献】特表2013-519189(JP,A)
【文献】特開2018-147607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6556
H01M 10/6567
H01M 50/204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の長尺状の部材を、前記長尺状の部材の長さ方向と直交する幅方向に並べて固定している熱伝導部材であって、
前記長尺状の部材は、熱伝導シートを外殻として、当該外殻の内部に空間を備え、
前記長尺状の部材の前記長さ方向から見た面は、長円形、四角形若しくは五角以上の多角形であり、
複数の前記長尺状の部材は、前記長尺状の部材の平面若しくは最も平面に近い面が前記幅方向に沿うように、並べられており、
複数の前記長尺状の部材は、前記長さ方向の少なくとも両端側にて、前記幅方向に沿う固定シートによって固定されていて、
前記固定シートは、接着層を介して、前記熱伝導部材の最も広い面の内の片面側に固定されており、
前記熱伝導シートは、前記固定シートと固定されていない部位において、前記長尺状の部材の長さ方向に向かって進行するスリットを備えることを特徴とする熱伝導部材。
【請求項2】
前記固定シートは、グラファイト製若しくは金属を含む導電性のシートであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導部材。
【請求項3】
複数の前記固定シートの内、前記長さ方向の片側に固定されている第1固定シートの幅を、前記長さ方向の別の側に固定されている第2固定シートの幅より広くしていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱伝導部材。
【請求項4】
複数の前記固定シートに挟まれた領域に、別の前記固定シートとしての第3固定シートを1または2枚備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項5】
前記固定シートは、前記熱伝導部材の前記幅方向から外に突出していることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項6】
前記熱伝導部材を構成している一部の前記長尺状の部材を当該一部以外の長尺状の部材より長尺方向に長くしており、
前記固定シートは、当該一部の前記長尺状の部材に固定されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項7】
前記長尺状の部材は、前記外殻の内側に、前記外殻よりも柔軟性の高いクッションシートを備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項8】
筐体内に複数のセルを備えたバッテリーであって、前記セルと前記筐体との間に、請求項1からのいずれか1項に記載の熱伝導部材を備え、
前記熱伝導部材に備えられている複数の前記長尺状の部材は、前記幅方向および前記長さ方向に直交する厚さ方向にて前記セルと前記筐体との間に挟まれていることを特徴とするバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【クロスリファレンス】
【0001】
本出願は、2019年11月27日に日本国において出願された特願2019-213851に基づき優先権を主張し、当該出願に記載された内容は、本明細書に援用する。また、本願において引用した特許、特許出願及び文献に記載された内容は、本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、熱伝導部材およびそれを備えるバッテリーに関する。
【背景技術】
【0003】
複数のセルを接続したバッテリーは、自動車、船舶、航空機などの電力供給に多用されている。自動車を例に挙げると、ガソリンあるいは軽油を燃料としている従来型の自動車は、モータとエンジンとを動力に併用するタイプの自動車、エンジンとモータとを搭載しているがエンジンをバッテリーの充電のみに使用してモータのみを動力に用いるタイプの自動車、およびエンジンを搭載せずにバッテリーに接続されるモータのみを動力に用いるタイプの自動車へと変わってきている。
【0004】
バッテリーに搭載されるセルは、充電と放電とを繰り返し可能な二次電池である。セルは、充電時および放電時に発熱し、60℃以上になると、充電および放電の各機能が低下しやすい。このため、セルからの除熱、より具体的には、充電若しくは放電中のセルから、セルを搭載している水冷若しくは空冷タイプの筐体へと効果的に熱を移動させることが求められる。
【0005】
セルからの放熱を高めるバッテリーとして、例えば、セルと筐体との間に樹脂層を介在させたバッテリーが知られている(特許文献1を参照)。樹脂層の中には、より好ましくは、熱伝導性の高いフィラー(アルミナあるいはグラファイト製のフィラー)が分散されている。これにより、セルからの熱は、セルと筐体に密着している樹脂層を経由して、筐体へと速やかに移動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2019-508871
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記公知のバッテリーは、セルと筐体との間に樹脂層を形成する労力、樹脂層を交換する労力を要するため、バッテリーのコストアップを招く。また、樹脂層に熱伝導性の高いフィラーを分散させても、樹脂の比率よりもフィラーの体積比率を高めることが難しいため、熱伝導性を高めるには限界がある。
【0008】
このような課題を解決するために、本出願人の発明者は、先に、セルと筐体の間、およびセルとセルとの間に、樹脂若しくはゴムの外側にグラファイトに代表されるシートを備えた二層構造の熱伝導部材を配置する方法を考えた。かかる熱伝導部材は、筐体とセルとの間にセットしやすく、また交換も容易である。さらには、シートは樹脂よりも熱伝導性が高いため、セルから筐体へと速やかな熱伝導を実現できる。このような熱伝導部材には、セルから筐体へのさらなる高熱伝導を実現することが求められている。
【0009】
本発明は、セルと筐体との間に容易に配置でき、容易に交換でき、かつセルから筐体へのより高い熱伝導を実現可能な熱伝導部材、およびそれを備えるバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る熱伝導部材は、複数の長尺状の部材を、前記長尺状の部材の長さ方向と直交する幅方向に並べて固定している熱伝導部材であって、
前記長尺状の部材は、熱伝導シートを外殻として、当該外殻の内部に空間を備え、
前記長尺状の部材の前記長さ方向から見た面は、長円形、四角形若しくは五角以上の多角形であり、
複数の前記長尺状の部材は、前記長尺状の部材の平面若しくは最も平面に近い面が前記幅方向に沿うように、並べられており、
複数の前記長尺状の部材は、前記長さ方向の少なくとも両端側にて、前記幅方向に沿う固定シートによって固定されている。
(2)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、前記固定シートは、接着層を介して、前記長尺状の部材に固定されていても良い。
(3)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、前記熱伝導シートは、前記固定シートと固定されていない部位において、前記長尺状の部材の長さ方向に向かって進行するスリットを備えても良い。
(4)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、前記固定シートは、グラファイト製若しくは金属を含む導電性のシートであっても良い。
(5)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、複数の前記固定シートの内、前記長さ方向の片側に固定されている第1固定シートの幅を、前記長さ方向の別の側に固定されている第2固定シートの幅より広くしていても良い。
(6)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、複数の前記固定シートに挟まれた領域に、別の前記固定シートとしての第3固定シートを1または2枚備えても良い。
(7)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、前記固定シートは、前記熱伝導部材の前記幅方向から外に突出していても良い。
(8)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、前記熱伝導部材を構成している一部の前記長尺状の部材を当該一部以外の長尺状の部材より長尺方向に長くしており、前記固定シートは、当該一部の前記長尺状の部材に固定されていても良い。
(9)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、前記固定シートは、前記熱伝導部材の最も広い面の片面に備えられていても良い。
(10)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、前記固定シートは、複数の前記長尺状の部材を束ねる環状シートであっても良い。
(11)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、前記環状シートは、隣り合う前記長尺状の部材の隙間を確保するように、当該隙間にてくびれていても良い。
(12)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、前記長尺状の部材は、前記外殻の内側に、前記外殻よりも柔軟性の高いクッションシートを備えていても良い。
(13)別の実施形態に係る熱伝導部材において、好ましくは、前記熱伝導シートは、スパイラル状に巻きながら前記長尺状の部材の長さ方向に進行するシートであっても良い。
(14)一実施形態に係るバッテリーは、筐体内に複数のセルを備えたバッテリーであって、前記セルと前記筐体との間に、上述のいずれかの熱伝導部材を備え、前記熱伝導部材に備えられている複数の前記長尺状の部材は、前記幅方向および前記長さ方向に直交する厚さ方向にて前記セルと前記筐体との間に挟まれている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セルと筐体との間に容易に配置でき、容易に交換でき、かつセルから筐体へのより高い熱伝導を実現可能な熱伝導部材、およびそれを備えるバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る熱伝導部材の斜視図を示す。
図2図2は、図1の熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
図3図3は、図1の熱伝導部材をその最も広い面側から見た平面図を示す。
図4図4は、第1実施形態に係る熱伝導部材の第1変形例をその最も広い面側から見た平面図を示す。
図5図5は、第1実施形態に係る熱伝導部材の第2変形例をその最も広い面側から見た平面図を示す。
図6図6は、第1実施形態に係る熱伝導部材の第3変形例をその最も広い面側から見た平面図を示す。
図7図7は、第1実施形態に係る熱伝導部材の第4変形例をその最も広い面側から見た平面図を示す。
図8図8は、第1実施形態に係る熱伝導部材の第5変形例をその最も広い面側から見た平面図を示す。
図9図9は、第2実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
図10図10は、第3実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
図11図11は、第4実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
図12図12は、第5実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
図13図13は、第6実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
図14図14は、第7実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
図15図15は、第8実施形態に係る熱伝導部材の斜視図を示す。
図16図16は、図15の熱伝導部材をその最も広い面側から見た平面図を示す。
図17図17は、一実施形態に係るバッテリーの概略的な縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0013】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,1i,1j,1k,1l・・・熱伝導部材、10・・・長尺状の部材、11,17,18・・・熱伝導シート、12・・・スリット、13・・・クッションシート、14・・・隙間、15・・・空間、16・・・接着層、21・・・第1固定シート(固定シート)、22・・・第2固定シート(固定シート)、23,24・・・第3固定シート(固定シート)、31,32・・・環状シート、50・・・バッテリー、51・・・筐体、52・・・底部(筐体の一部)、60・・・セル。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
1.熱伝導部材
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る熱伝導部材の斜視図を示す。図2は、図1の熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。図3は、図1の熱伝導部材をその最も広い面側から見た平面図を示す。図1および図2以降の図において、「X方向」は、長尺状の部材を並べる方向であって、長尺状の部材の長さ方向と直交する幅方向をいう。「Y方向」は、長尺状の部材の長さ方向をいう。「Z方向」は、長尺状の部材の厚さ方向をいう。ここで、「X方向」を、熱伝導部材の長さ方向と称しても良い。「Y方向」を、熱伝導部材の幅方向と称しても良い。「Z方向」を、熱伝導部材の厚さ方向と称しても良い。「最も広い面」は、熱伝導部材のXY面をいう。以後の実施形態でも同様である。なお、「X方向」を「X軸」、「Y方向」を「Y軸」、「Z方向」を「Z軸」と、それぞれ読み替えても良い。「X方向」、「Y方向」および「Z方向」は、各方向のベクトルの向きだけを意味せず、当該ベクトルの向きおよびその逆向きの両方向を意味する。
【0016】
第1実施形態に係る熱伝導部材1は、複数(すなわち2以上)の長尺状の部材10を、長尺状の部材10の長さ方向(Y方向)と直交する幅方向(X方向)に並べて固定している。この実施形態では、長尺状の部材10の数は、32本であるが、2本以上であれば、32本に限定されない。熱伝導部材1は、好ましくは、隣り合う長尺状の部材10同士の間に隙間14を備えるように構成されている。隙間14は、長尺状の部材10が幅方向に伸びるように変形容易にするのに寄与している。ただし、隙間14は、全ての隣り合う長尺状の部材10同士の間に存在していなくとも良い。長尺状の部材10は、熱伝導シート11を外殻として、当該外殻の内部に空間(中空部ともいう)15を備える。熱伝導シート11の形態、材料等については、熱伝導シート17,18にも同様に適用される。以後、同様である。空間15は、好ましくは、長尺状の部材10の長さ方向に貫通する領域であるが、当該長さ方向の一方を閉じた細長いカップ状の領域でも良い。空間15は、長尺状の部材10を、その厚さ方向につぶれやすくするのに寄与する限り、その形態に制約はない。長尺状の部材10の長さ方向から見た面は、この実施形態では、四角形である。ただし、長尺状の部材10の長さ方向から見た面は、五角以上の「多角形」、あるいは後述の実施形態で説明する「長円形」(「オーバル形状」ともいう)であっても良い。多角形としては、特に、偶数の角を有するものが好ましく、四角形、六角形または八角形がさらに好ましい。複数の長尺状の部材10は、長尺状の部材10の平面若しくは最も平面に近い面が幅方向(X方向)に沿うように並べられている。複数の長尺状の部材10は、長さ方向(Y方向)の少なくとも両端側にて、幅方向(X方向)に沿う固定シート21,22によって固定されている。ここで、固定シート21,22を固定する「両端側」とは、長尺状の部材10の正確な両端に限定されず、長尺状の部材10の長さ方向中央よりも端部に近い位置を意味する。
【0017】
長尺状の部材10は、その開口面を四角形とし、かつ熱伝導シート11を、その内部に空間15を形成するように筒状に巻いた筒状部材である。長尺状の部材10は、その厚さ方向(Z方向)の面を平面とするように、長尺状の部材10の幅方向(X方向)に並べられている。このため、熱伝導部材1を、長尺状の部材10の厚さ方向(Z方向)から熱源と冷却源(熱を逃がす部分であって、例えば、後述の「筐体」をいう。)にて挟持した際に、熱伝導部材1を構成する長尺状の部材10は熱源および/または冷却源と面接触しやすくなる。この結果、熱源から熱伝導部材1を経て冷却源へと熱を伝えやすくなる。冷却源は、例えば、後述の冷却剤55、あるいは筐体51(特に、底部53)に相当する。熱伝導シート11は、導電性に優れるか否かは問わない。熱伝導シート11の熱伝導率は、好ましくは10W/mK以上である。この実施形態では、熱伝導シート11は、熱伝導性を有するいかなる材料で構成可能である。熱伝導シート11は、好ましくは、グラファイト製若しくは金属製であり、熱伝導性と導電性に優れる材料から成る。熱伝導シート11は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.02~3mmが好ましく、0.03~0.5mmがより好ましい。ただし、熱伝導シート11の熱伝導率は、その厚さが増加するほど低下するため、シートの強度、可撓性および熱伝導性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0018】
熱伝導シート11は、この実施形態では、固定シート21,22と固定されていない部位、すなわち、筒状部材を挟んで固定シート21,22の反対側の面に、長尺状の部材10の長さ方向に向かって進行するスリット12を備える。この実施形態では、スリット12は、長尺状の部材10の長さ方向の全長に亘って形成されているが、全長でなくとも良い。スリット12は、長尺状の部材10をその厚さ方向(Z方向)から圧縮された際に、熱伝導シート11が長尺状の部材10の幅方向(X方向)に広がりやすくするのに寄与する。
【0019】
熱伝導シート11は、好ましくは、グラファイトを含めて、90質量%以上を炭素から構成されるシートである。例えば、熱伝導シート11に、樹脂を焼成して成るグラファイト製のフィルムを用いることもできる。ただし、熱伝導シート11は、炭素と樹脂とを含むシートであっても良い。その場合、樹脂は、合成繊維でも良く、その場合には、樹脂として好適にはアラミド繊維を用いることができる。なお、本願でいう「炭素」は、グラファイト、グラファイトより結晶性の低いカーボンブラック、ダイヤモンド、ダイヤモンドに近い構造を持つダイヤモンドライクカーボン等の炭素(元素記号:C)から成る如何なる構造のものも含むように広義に解釈される。熱伝導シート11は、樹脂に、グラファイト繊維やカーボン粒子を配合分散した材料を硬化させた薄いシートとすることができる。熱伝導シート11は、メッシュ状に編んだカーボンファイバーであっても良く、さらには混紡してあっても混編みしてあっても良い。なお、グラファイト繊維、カーボン粒子あるいはカーボンファイバーといった各種フィラーも、すべて、炭素の概念に含まれる。
【0020】
熱伝導シート11を炭素と樹脂とを備えるシートとする場合には、当該樹脂が熱伝導シート11の全質量に対して50質量%未満であるのが好ましい。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、熱源からの熱を伝導する際に溶融しない程度の高融点を備える樹脂が好ましく、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)等を好適に挙げることができる。樹脂は、熱伝導シート11の成形前の状態において、炭素フィラーの隙間に、例えば粒子状あるいは繊維状に分散している。熱伝導シート11は、炭素フィラー、樹脂の他、熱伝導をより高めるためのフィラーとして、AlNあるいはダイヤモンドを分散していても良い。また、樹脂に代えて、樹脂よりも柔軟なエラストマーを用いても良い。熱伝導シート11は、また、上述のような炭素に代えて若しくは炭素と共に、金属および/またはセラミックスを含むシートとすることができる。金属としては、アルミニウム、銅、それらの内の少なくとも1つを含む合金などの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。
【0021】
固定シート21,22は、好ましくは、接着層16を介して、長尺状の部材10に固定されている。また、固定シート21,22は、好ましくは、グラファイト製若しくは金属を含む導電性のシートである。固定シート21,22として、グラファイト製の繊維若しくは導電性に優れた金属製の繊維によってなるシートを用いても良い。固定シート21,22は、好ましくは、少なくとも、その長さ方向(X方向)に伸縮可能なシートである。長尺状の部材10がその厚さ方向(Z方向)から圧縮を受けて、その幅方向(X方向)に伸びた際に、固定シート21,22も追従して伸びることを可能にするためである。固定シート21,22は、熱伝導シート11の上述材料の選択肢と同様の材料から構成されていても良い。接着層16は、導電性に優れるフィラーを含む層であるのが好ましい。しかし、接着層16の成分は、上述のフィラーを含むものに限定されない。
【0022】
固定シート21,22は、好ましくは、熱伝導部材1の長さ方向(長尺状の部材10の幅方向:X方向)から外に突出している。この実施形態では、固定シート21は、熱伝導部材1の長さ方向両側に突出した突出部21a,21aを備える。同様に、固定シート22も、また、熱伝導部材1の長さ方向両側に突出した突出部22a,22aを備える。ただし、突出部21a,22aは、X方向の両側の内のいずれか一方に存在していても良い。突出部21a,22aは、熱伝導部材1を後述のバッテリー50内にセットする際、熱伝導部材1の正確な配置位置を決めるのに寄与する。
【0023】
固定シート21,22は、長尺状の部材10の少なくとも両端側にて、熱伝導部材1と固定されているのが好ましい。この結果、熱伝導部材1の平面視による形状(Z方向から見た形状)を四角形に保持しやすい。したがって、熱伝導部材1は、熱源からの熱伝導をより高くでき、かつバッテリーなどの放熱を必要とする場所にセットしやすくなる。また、固定シート21,22は、好ましくは、長尺状の部材10の長さ方向の少なくとも両端側に固定され、かつ幅(長尺状の部材10の長さ方向の距離)を小さくした形態である。固定シート21,22と熱伝導シート11との間に接着層が介在する領域が大きくなると、熱源から熱伝導部材1を介して冷却源に熱が伝わるのが妨げられる可能性があるからである。一方、固定シート21,22の幅を過度に狭くすると、熱伝導部材1の四角形の形状を保持しにくくなる。したがって、熱伝導部材1の熱伝導性と四角形の形状保持を両方維持できるような固定シート21,22の幅を選択するのが好ましい。
【0024】
固定シート21,22は、この実施形態では、熱伝導部材1の最も広い面(Z方向にある2つの面)の片面に備えられている。固定シート21,22をZ方向の両側の面に備え、あるいは片側の面に固定シート21を別の片側の面に固定シート22を備えても良い。ただし、固定シート21,22を上記両側の面に固定すると、熱伝導部材1の総厚が増す。このため、固定シート21,22をともに熱伝導部材1の片側の面に備える方がより好ましい。
【0025】
(第1実施形態の各種変形例)
図4は、第1実施形態に係る熱伝導部材の第1変形例をその最も広い面側から見た平面図を示す。図5は、第1実施形態に係る熱伝導部材の第2変形例をその最も広い面側から見た平面図を示す。図6は、第1実施形態に係る熱伝導部材の第3変形例をその最も広い面側から見た平面図を示す。図7は、第1実施形態に係る熱伝導部材の第4変形例をその最も広い面側から見た平面図を示す。図8は、第1実施形態に係る熱伝導部材の第5変形例をその最も広い面側から見た平面図を示す。
【0026】
第1変形例に係る熱伝導部材1aは、複数の固定シート(ここでは、固定シート21と固定シート22)に挟まれた領域に、別の固定シート23(第3固定シート23)を備える。第3固定シート23は、長尺状の部材10をその幅方向(X方向)に並べる方向に沿って熱伝導部材1aに固定されている。第3固定シート23を熱伝導部材1aに固定している点以外、熱伝導部材1aの構成は、先に説明した熱伝導部材1の構成と同様である。第3固定シート23によって、複数の長尺状の部材10の長さ方向中央領域を固定すると、熱伝導部材1aの形状をより保持しやすくなる。第3固定シート23の幅は、長尺状の部材10と、熱源および/または冷却源との間における熱伝導を低減しないように、固定シート21,22の各幅よりも狭い方が好ましい。第3固定シート23は、1枚または2枚以上でも良い。第3固定シート23は、長尺状の部材10の幅方向に突出した突出部(突出部21a,22aに相当する部分)を備えても良い。当該突出部は、熱伝導部材1aを後述のバッテリー50内にセットする際、熱伝導部材1aの正確な配置位置を決めるのに寄与する。
【0027】
第2変形例に係る熱伝導部材1bは、複数の固定シート21,22の内、長尺状の部材10の長さ方向の片側に固定されている固定シート(第2変形例の説明においてのみ、「第1固定シート」という)21の幅を、当該長さ方向の別の側に固定されている固定シート(第2変形例の説明においてのみ、「第2固定シート」という)22の幅より広くしている。かかる構成以外は、先に説明した熱伝導部材1の構成と同様である。第1固定シート21によって複数の長尺状の部材10を確実に固定できれば、第2固定シート22の幅を第1固定シート21の幅より狭くしても、熱伝導部材1bの形状を保持できる。また、第2固定シート22の幅をより小さくすることにより、長尺状の部材10と、熱源および/または冷却源との間における熱伝導を高めることができる。
【0028】
第3変形例に係る熱伝導部材1cは、複数の固定シート(ここでは、固定シート21と固定シート22)に挟まれた領域に、固定シート21と固定シート22とを接続する別の固定シート24(第3固定シート24)を備える。第3固定シート24は、前述の第3固定シート23と異なり、固定シート21と固定シート22とを連結するシートであり、好ましくは、長尺状の部材10の長さ方向に沿って配置されている。第3固定シート24を熱伝導部材1cに固定している点以外、熱伝導部材1cの構成は、先に説明した熱伝導部材1の構成と同様である。第3固定シート24によって、複数の長尺状の部材10の長さ方向中央領域を固定すると、熱伝導部材1cの形状をより保持しやすくなる。第3固定シート24の幅は、長尺状の部材10と、熱源および/または冷却源との間における熱伝導を低減しないように、固定シート21,22の各幅よりも狭い方が好ましい。第3固定シート24は、1枚または2枚以上でも良い。第3固定シート24は、長尺状の部材10の長さ方向に突出した突出部(突出部21a,22aに相当する部分)を備えても良い。当該突出部は、熱伝導部材1cを後述のバッテリー50内にセットする際、熱伝導部材1cの正確な配置位置を決めるのに寄与する。
【0029】
第4変形例に係る熱伝導部材1dは、熱伝導部材1における1枚の固定シート21を、4枚の短い固定シート21に代用した点で、熱伝導部材1と異なる。4枚の固定シート21は、分離していても、長尺状の部材10の幅方向(X方向)に一直線に並んでいる。ただし、4枚の固定シート21は、一直線に並んでいなくとも良い。さらには、固定シート21の数は、4枚に限定されず、2枚以上であれば制約はない。このように、熱伝導部材1の固定シート21に比べて短い固定シート21を分離して用いると、固定シート21の熱伝導性が熱伝導シート11の熱伝導性より低い場合であっても、熱源からの冷却源への熱伝導を妨げるリスクが低くなる。なお、固定シート21に代えて、あるいは固定シート21と共に、熱伝導部材1の1枚の固定シート22を、上記の2枚以上の短い固定シート21と同様に短くし、長尺状の部材10に固定しても良い。
【0030】
第5変形例に係る熱伝導部材1eは、熱伝導部材1eを構成している一部の長尺状の部材10を当該一部以外の長尺状の部材10より長尺方向に長くしており、固定シート21を、当該一部の長尺状の部材10に固定している。熱伝導部材1eは、当該熱伝導部材1eを構成している複数の長尺状の部材10の内の一部(図中、「x」で示す長尺状の部材10)をY方向に長くして、当該一部に固定シート21を固定している点で、熱伝導部材1と異なる。当該一部の長尺状の部材10は、図中、10本であるが、2本以上であり、かつ熱伝導部材1eの全ての長尺状の部材10の数(ここでは、32本)未満であれば制約はない。好ましくは、当該一部の長尺状の部材10の数は、熱伝導部材1eの全ての長尺状の部材10の数の半分未満である。なお、固定シート21に代えて、あるいは固定シート21と共に、固定シート22を、固定シート22側に長くした一部の長尺状の部材10に固定しても良い。このように、固定シート21,22を、当該固定シート21,22側に長くした一部に固定することによって、固定シート21,22の熱伝導性が熱伝導シート11の熱伝導性より低い場合であっても、熱源からの冷却源への熱伝導を妨げるリスクが低くなる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る熱伝導部材について説明する。第2実施形態において、第1実施形態(各種変形例も含む)と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0032】
図9は、第2実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
【0033】
第2実施形態に係る熱伝導部材1fは、熱伝導シート11の外殻の内側に、当該外殻よりも柔軟性の高いクッションシート13を備える。クッションシート13は、好ましくは、熱伝導シート11に対して、密着(非接着状態)、接着あるいは溶着している。クッションシート13の厚さは、長尺状の部材10の弾性変形を容易にする趣旨から、熱伝導シート11の厚さに比べて大きい方が好ましい。クッションシート13を備えている点以外、熱伝導部材1fの構成は、先に説明した熱伝導部材1の構成と同様である。クッションシート13は、長尺状の部材10が外圧およびその解除によって弾性変形しやすくするのに寄与する。特に、熱伝導シート11自体に弾性が乏しい場合に、クッションシート13の存在は重要である。
【0034】
クッションシート13は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。クッションシート13は、熱伝導シート11を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、クッションシート13は、より好ましくは、ウレタン系エラストマー中にシリコーンを含浸したもの、あるいはシリコーンゴムにより構成される。クッションシート13は、その熱伝導性を少しでも高めるために、ゴム中にAl、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。クッションシート13は、その内部に気泡を含むものの他、気泡を含まないものでも良い。また、「クッションシート」は、柔軟性に富み、熱源の表面に密着可能に弾性変形可能な部材を意味し、かかる意味では「ゴム状弾性体」と読み替えることもできる。さらに、クッションシート13の変形例としては、上記ゴム状弾性体ではなく、金属を用いて構成することもできる。クッションシート13は、樹脂やゴム等から形成されたスポンジあるいはソリッド(スポンジのような多孔質ではない構造のもの)で構成することも可能である。
【0035】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る熱伝導部材について説明する。第3実施形態において、前述の各実施形態(第1実施形態の各種変形例も含む)と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0036】
図10は、第3実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
【0037】
第3実施形態に係る熱伝導部材1gにおいて、長尺状の部材10の長さ方向から見た面が長円形(すなわち、オーバル形状)である点以外の構成は、第1実施形態に係る熱伝導部材1と共通である。熱伝導シート11を、スリット12を備えたオーバル形状の外殻とすると、Z方向の両面が平面、若しくは長尺状の部材10の幅方向(X方向)に比べて平面に近くなる。この結果、熱伝導部材1eの厚さ方向(Z方向)から熱源および/または冷却源が接触する状態は、より広い面での接触となりやすい。したがって、熱源から熱伝導部材1gを介して冷却源に熱を伝導させやすくなる。
【0038】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る熱伝導部材について説明する。第4実施形態において、前述の各実施形態(第1実施形態の各種変形例も含む)と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0039】
図11は、第4実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
【0040】
第4実施形態に係る熱伝導部材1hは、熱伝導シート11の外殻の内側に、当該外殻よりも柔軟性の高いクッションシート13を備える。クッションシート13を備えている点以外、熱伝導部材1hの構成は、先に説明した第3実施形態に係る熱伝導部材1gの構成と同様である。クッションシート13は、熱伝導部材1が外圧およびその解除によって弾性変形しやすくするのに寄与する。特に、熱伝導シート11自体に弾性が乏しい場合に、クッションシート13の存在は重要である。
【0041】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る熱伝導部材について説明する。第5実施形態において、前述の各実施形態(第1実施形態の各種変形例も含む)と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0042】
図12は、第5実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
【0043】
第5実施形態に係る熱伝導部材1iは、固定シート21,22に代えて、複数の長尺状の部材10を束ねる固定シート(環状シート31,32という)を備える。なお、環状シート31は、図12では見えていないが、わかりやすさを優先して、符号「31」を図中に表示している。環状シート31の符号「31」は、図13以降の図でも同様の趣旨で表示している。環状シート31,32は、固定シート21,22と同様、長尺状の部材10の長さ方向(Y方向)の少なくとも両端側にて、長尺状の部材10の幅方向(X方向)に沿って、複数の長尺状の部材10を固定している。しかし、環状シート31,32は、熱伝導部材1iを構成する複数の長尺状の部材10を束ねる閉じたループ状の帯である。環状シート31,32は、熱伝導部材1iの形状を、より保持しやすくするのに寄与している。
【0044】
この実施形態において、環状シート31,32は、突出部21a,22aに相当する突出部を備えていない。しかし、環状シート31,32に、熱伝導部材1gの長さ方向(X方向)の両側若しくは片側に突出部を備えても良い。固定シート21,22に代えて環状シート31,32を備える点、および突出部21a,22aに相当する突出部を備えていない点を除き、熱伝導部材1iの構成は、第2実施形態に係る熱伝導部材1fの構成と共通する。
【0045】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る熱伝導部材について説明する。第6実施形態において、前述の各実施形態(第1実施形態の各種変形例も含む)と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0046】
図13は、第6実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
【0047】
第6実施形態に係る熱伝導部材1jは、固定シート21,22に代えて、複数の長尺状の部材10を束ねる固定シート(環状シート31,32という)を備える。さらに、環状シート31,32は、隣り合う2本の長尺状の部材10の隙間14において、長尺状の部材10の厚さ方向(Z方向)の部位36を固定されている。このため、環状シート31,32は、隣り合う長尺状の部材10の隙間14を確保するように、当該隙間14にてくびれている。すなわち、長尺状の部材10同士の隙間14は、環状シート31,32の位置で凹部35を形成している。
【0048】
当該部位36の固定方法は、この実施形態では、接着剤を用いる方法であるが、糸、ステイプル若しくは両面テープなどの固定部材を用いた方法、さらには固定部材を使わないで行う方法(例えば、熱溶着)でも良い。このように、環状シート31,32は、長尺状の部材10を個別に挿入可能に構成されている。したがって、接着層16を備えなくとも、長尺状の部材10同士が接触せず、長尺状の部材10の幅方向(X方向)の可動領域を規制できる。なお、接着層16を追加的に用いて、環状シート31,32を長尺状の部材10に、より強固に固定しても良い。また、環状シート31,32は、突出部21a,22aに相当する突出部を備えていない。しかし、環状シート31,32に、熱伝導部材1hの長さ方向(X方向)の両側若しくは片側に突出部を備えても良い。
【0049】
固定シート21,22に代えて環状シート31,32を用いている点、部位36にて環状シート31,32をZ方向で固定している点、接着層16を必ずしも要しない点、および突出部21a,22aに相当する突出部を備えていない点を除き、熱伝導部材1jの構成は、第4実施形態に係る熱伝導部材1hの構成と共通する。
【0050】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態に係る熱伝導部材について説明する。第7実施形態において、前述の各実施形態(第1実施形態の各種変形例も含む)と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0051】
図14は、第7実施形態に係る熱伝導部材を、その長さ方向に沿う端面(長尺状の部材の開口面)から見た側面図および当該端面の一部Aの拡大図を示す。
【0052】
第7実施形態に係る熱伝導部材1kは、長尺状の部材10にスリット12を備えていない。スリット12を備えていない点以外、熱伝導部材1iの構成は、第4実施形態に係る熱伝導部材1hの構成と共通する。長尺状の部材10の外殻を構成する熱伝導シート17は、上述の熱伝導シート11と異なり、長尺状の部材10の外側面に沿って完全に閉じた形態を有する。クッションシート13も熱伝導シート11の内側の面に沿って閉じた形態を有する。Z方向からの外圧によって熱伝導シート17が十分に変形しやすい場合には、長尺状の部材10にスリット12を備えていなくとも良い。
【0053】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態に係る熱伝導部材について説明する。第8実施形態において、前述の各実施形態(第1実施形態の各種変形例も含む)と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0054】
図15は、第8実施形態に係る熱伝導部材の斜視図を示す。図16は、図15の熱伝導部材をその最も広い面側から見た平面図を示す。
【0055】
第8実施形態に係る熱伝導部材1lにおいて、長尺状の部材10の長さ方向の開口面の形状は長円形である。熱伝導部材1lは、第7実施形態に係る熱伝導部材1kと同様、長尺状の部材10の側面にて閉じた筒状のクッションシート13を備える。筒状のクッションシート13の外側面には、帯状の熱伝導シート18が巻回されている。より具体的には、熱伝導シート18は、筒状のクッションシート13に対してスパイラル状に巻きながら長尺状の部材10の長さ方向(Y方向)に進行するシートである。熱伝導シート18をスパイラル状に巻いた際のスパイラル状の隙間は、スリット12に相当し、熱伝導シート18の外殻の変形容易性に寄与する。すなわち、長尺状の部材10の外側面を熱伝導シート18にてスパイラル状に覆うと、長尺状の部材10の変形に伴い熱伝導シート18も変形しやすい。このため、熱伝導部材1lの使用中、熱伝導シート18が破損するリスクを低減できる。
【0056】
複数の長尺状の部材10は、固定シート21,22の他に、糸41,42によっても接続されている。糸41,42は、手縫いにより、あるいはソーイングマシンを用いて、長尺状の部材10に固定されている。糸41は、固定シート21の近傍であって、固定シート21とは別の位置にて、長尺状の部材10の幅方向(X方向)に沿って備えられる。糸42も、固定シート22の近傍であって、固定シート22とは別の位置にて、長尺状の部材10の幅方向(X方向)に沿って備えられる。熱伝導部材1lは、糸41,42によって複数の長尺状の部材10を接続して成るが、糸41,42のみでは形状を保持することが難しい。糸41,42に加えて、固定シート21,22を備えることにより、熱伝導部材1lの形状(平面視にて、おおよそ長方形)を保持しやすくなる。なお、糸41,42は、固定シート21,22と長尺状の部材10との間に挟まれる位置に存在していても良い。
【0057】
なお、スパイラル状の熱伝導シート18をクッションシート13の外側に備える点、糸41,42を備える点以外、熱伝導部材1lの構成は、第7実施形態に係る熱伝導部材1kの構成と共通する。
【0058】
(第8実施形態の変形例)
熱伝導部材1lを構成する長尺状の部材10は、帯状の熱伝導シート18の裏面に帯状のクッションシートを備えた積層シートをスパイラル状に巻いた部材であっても良い。かかる場合、スパイラル状の積層シートの巻き回によって生じるスパイラル状の隙間は、スリット12に相当する。
【0059】
2.バッテリー
次に、熱伝導部材を備えるバッテリーの実施形態について説明する。
【0060】
図17は、一実施形態に係るバッテリーの概略的な縦断面図を示す。
【0061】
この実施形態において、バッテリー50は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル(単に、セルとも称する。)60を備える。バッテリー50は、一方に開口する有底型の筐体51を備える。筐体51は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。セル60は、筐体51の内部54に配置される。複数のセル60は、好ましくは、筐体51内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられている(不図示)。筐体51の底部52には、冷却剤55の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ53が備えられている。
【0062】
セル60は、底部52との間に、熱伝導部材1を挟むようにして筐体51内に配置されている。すなわち、バッテリー50は、筐体51内に複数のセル60を備えており、セル60と筐体51との間に熱伝導部材1を備えている。熱伝導部材1に備えられている複数の長尺状の部材10は、幅方向(X方向)および長さ方向(Y方向)に直交する厚さ方向(Z方向)にてセル60と筐体51との間に挟まれている。このような構造のバッテリー50において、セル60は、熱伝導部材1を通じて筐体51に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。なお、冷却剤55は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却剤55は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。また、この実施形態では、熱伝導部材1は、13個のセル60を載置しているが、セル60の個数は13個に限定されない。複数の長尺状の部材10は、セル60を載置するとその重さで圧縮され扁平の形態になる。なお、本願では、「縦断面」とは、バッテリー50の筐体51の内部54における上方開口面から底部52へと垂直に切断する方向の断面を意味する。
【0063】
バッテリー50は、熱伝導部材1に限られず、上述の各実施形態に係る熱伝導部材1a~1lのいずれかを備えていても良い。また、熱伝導部材1,1a~1l(以後、「熱伝導部材1等」という。)は、その厚さ方向(Z方向)にあるいずれの面をセル60の底部に接触させるように、筐体51に備えられても良い。
【0064】
長尺状の部材10の長さ方向(Y方向)から見た面は、長円形、四角形若しくは五角以上の多角形である。複数の長尺状の部材10は、長尺状の部材10の平面若しくは最も平面に近い面が幅方向(X方向)に沿って並べられている。特に、長尺状の部材10の厚さ方向(Z方向)にある両面は、平面か、正確には平面といえなくても当該外側面のどの位置の面よりも平面に近い。長尺状の部材10をこのような形状にして、熱伝導部材1等の構成要素とすることにより、熱伝導部材1等とセル60および/または筐体51の底部53と、より広い面にて接触しやすくなる。これは、熱伝導部材1等のセル60からの除熱性能をより高めることにつながる。
【0065】
3.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0066】
例えば、熱伝導部材1等に接する熱源は、セル60のみならず、回路基板や電子機器本体などの熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。熱伝導部材1等は、バッテリー50以外の構造物、例えば、電子機器、家電、発電装置等に配置されていても良い。
【0067】
固定シート21,22,23,24は、好ましくは、グラファイト製若しくは金属を含む導電性のシートであるが、絶縁性のシートでも良い。
【0068】
前述の各実施形態に係る熱伝導部材1等の各構成要素は、組み合わせ不能な場合を除き、自由に組み合わせることができる。例えば、第3固定シート23または第3固定シート24は、熱伝導部材1d~1h,1k,1lに備えても良い。また、熱伝導部材1bの幅の小さな第2固定シート22を、熱伝導部材1a,1c,1d~1h,1k,1lに備えても良い。また、環状シート31,32を、熱伝導部材1,1a~1e,1g,1h,1k,1lに備えても良い。部位36で固定した形態の環状シート31,32も、熱伝導部材1j以外の各種熱伝導部材に備えても良い。また、糸41,42は、熱伝導部材1l以外の各種熱伝導部材に備えても良い。各種実施形態および各種変形例に係る熱伝導部材1等を構成する長尺状の部材10は、1種類ではなく、2種類以上混在していても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る熱伝導部材は、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品などの各種電子機器にも利用することができる。また、本発明に係るバッテリーは、自動車用のバッテリー以外に、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリーにも利用できる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17