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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】フォロア軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/80 20060101AFI20220224BHJP
   F16C 19/46 20060101ALI20220224BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
F16C33/80
F16C19/46
F16C33/78 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021556303
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009249
(87)【国際公開番号】W WO2021193012
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2020052971
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 仁也
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-208086(JP,A)
【文献】特開2011-033142(JP,A)
【文献】米国特許第05833245(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/80
F16C 33/78
F16C 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の形状を有し、円環状の第1転走面を外周面に有する第1本体部と、円盤環状の形状を有し、前記第1本体部の一方の端部の前記外周面に配置されると共に前記第1本体部と同軸の中心軸を有し、前記第1本体部よりも径の大きい鍔部と、を含む内方部材と、
前記鍔部の外周面に対向する円環状の第1の面と、前記第1の面の直径よりも小さい直径であり、前記第1転走面に対向する円環状の第2転走面と、前記第2転走面と前記第1の面とをつなぐ円環状の第2の面と、を内周面に有する外輪と、
前記第1転走面および前記第2転走面上を転動可能に配置される複数の転動体と、
前記鍔部の外周面と前記第1の面との間に配置され、少なくとも一部が前記外輪との間にシール構造を形成する円環状の第1部分と、前記第1部分に接続される円環状の第2部分と、を含む第1シール部材と、を備え、
前記鍔部は、軸方向において前記第1転走面とは反対側の端面である第1端面と、軸方向において前記第1端面とは反対側の端面である第2端面とを有し、
前記第2の面は、軸方向において前記第2端面に対向しており、
前記第2部分は、前記第2端面と前記第2の面との間に配置されて、径方向内側に沿って突出しており、
前記第1部分は、前記第2部分との接続部分から軸方向において前記第1端面側に位置する第1シール端面に至る領域において、軸方向において前記第1端面側に近付くにしたがって外径が大きくなる形状を有する、フォロア軸受。
【請求項2】
前記第1部分は、前記第1端面側に近づくにしたがって外径が大きくなるテーパ状である、請求項1に記載のフォロア軸受。
【請求項3】
前記鍔部の前記第2端面の最大高さ粗さRzが、12.5μm以下である、請求項1または請求項2に記載のフォロア軸受。
【請求項4】
前記第1シール端面は、前記第1端面に近づくにしたがって外径が小さくなる形状を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項5】
前記第1シール端面は、前記第1端面側に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ状である、請求項4に記載のフォロア軸受。
【請求項6】
前記第1シール端面は、軸方向において前記第1端面に至るまで延びている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項7】
前記内方部材は、前記第1本体部の前記第1転走面から見て、前記鍔部とは反対側の前記外周面に接触するように嵌め込まれ、前記第1本体部と同軸の中心軸を有するリングをさらに含み、
前記外輪の前記内周面は、前記リングの外周面に対向すると共に前記第2転走面の直径よりも大きい直径を有する円環状の第3の面と、前記第2転走面と前記第3の面とをつなぎ、軸方向において前記リングの前記第1転走面側の端面である第3端面に対向する円環状の第4の面と、をさらに有し、
前記フォロア軸受は、前記リングの外周面と前記第3の面との間に配置され、少なくとも一部が前記外輪との間にシール構造を形成する円環状の第3部分と、前記第3部分に接続され、前記第3端面と前記第4の面との間に配置される円環状の第4部分と、を含む第2シール部材をさらに備え、
前記第4部分は、径方向内側に沿って突出しており、
前記第3部分は、前記第4部分との接続部分から軸方向において前記第4端面側に位置する第2シール端面に至る領域において、軸方向において前記リングの前記第3端面とは反対側の端面である第4端面側に近付くにしたがって外径が大きくなる形状を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項8】
前記第3部分は、前記第4端面側に近づくにしたがって外径が大きくなるテーパ状である、請求項7に記載のフォロア軸受。
【請求項9】
前記リングの前記第3端面の最大高さ粗さRzが、12.5μm以下である、請求項7または請求項8に記載のフォロア軸受。
【請求項10】
前記第2シール端面は、前記第4端面に近づくにしたがって外径が小さくなる形状を有する、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項11】
前記第2シール端面は、前記第4端面側に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ状である、請求項10に記載のフォロア軸受。
【請求項12】
前記第2シール端面は、軸方向において前記第4端面に至るまで延びている、請求項7から請求項11のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項13】
前記第2シール部材を構成する材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタールおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つの樹脂である、請求項7から請求項12のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項14】
前記第1シール部材を構成する材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタールおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つの樹脂である、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項15】
前記転動体は、ころである、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォロア軸受に関するものである。
【0002】
本出願は、2020年3月24日出願の日本出願第2020-052971号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
外輪が他の部材と接触しつつ回転するフォロア軸受が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1においては、第1転走面を有する内方部材と、第1転走面に対向する第2転走面を有する外輪と、第1転走面および第2転走面上を転動可能に配置される複数の転動体と、内方部材と外輪との間に配置されるシール部材と、を備えるフォロア軸受が開示されている。フォロア軸受における内方部材は、円環状の鍔部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-33142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたフォロア軸受は、シール部材が内方部材の鍔部に設置された状態で、内方部材を外輪に挿入することで組立てられる。上記シール部材は、外輪との間にシール構造を形成するように配置される。シール構造は、フォロア軸受の内部からグリスが漏れたり、内部へ異物が混入したりすることを低減するために、外輪とシール部材との間に隙間が形成されているか、または外輪とシール部材とが接触する構造である。上記特許文献1のフォロア軸受では、内方部材を外輪に挿入する際に、外輪がシール部材に引っ掛かるおそれがあり、組み立てにおいて外輪が設置し難くなる。そこで、組み立てが容易なフォロア軸受を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従ったフォロア軸受は、棒状の形状を有し、円環状の第1転走面を外周面に有する第1本体部と、円盤環状の形状を有し、第1本体部の一方の端部の外周面に配置されると共に第1本体部と同軸の中心軸を有し、第1本体部よりも径の大きい鍔部と、を含む内方部材と、鍔部の外周面に対向する円環状の第1の面と、第1転走面に対向する円環状の第2転走面と、を内周面に有する外輪と、第1転走面および第2転走面上を転動可能に配置される複数の転動体と、鍔部の外周面と第1の面との間に配置され、少なくとも一部が外輪との間にシール構造を形成する円環状の第1部分を含む第1シール部材と、を備える。第1部分は、軸方向において鍔部の第1転走面とは反対側の端面である第1端面側に近付くにしたがって外径が大きくなる形状を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記フォロア軸受によれば、フォロア軸受の組み立てを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、フォロア軸受の構造を示す概略斜視図である。
図2図2は、フォロア軸受の構造を示す概略断面図である。
図3図3は、フォロア軸受の構造を示す概略断面図である。
図4図4は、シール部材の構造を示す概略斜視図である。
図5図5は、フォロア軸受の組立方法を説明するための概略断面図である。
図6図6は、フォロア軸受の組立方法を説明するための概略断面図である。
図7図7は、フォロア軸受の組立方法を説明するための概略断面図である。
図8図8は、フォロア軸受の組立方法を説明するための概略断面図である。
図9図9は、他の実施の形態に係るフォロア軸受の構造を示す概略断面図である。
図10図10は、図9の領域αを拡大して示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示のフォロア軸受は、棒状の形状を有し、円環状の第1転走面を外周面に有する第1本体部と、円盤環状の形状を有し、第1本体部の一方の端部の外周面に配置されると共に第1本体部と同軸の中心軸を有し、第1本体部よりも径の大きい鍔部と、を含む内方部材と、鍔部の外周面に対向する円環状の第1の面と、第1転走面に対向する円環状の第2転走面と、を内周面に有する外輪と、第1転走面および第2転走面上を転動可能に配置される複数の転動体と、鍔部の外周面と第1の面との間に配置され、少なくとも一部が外輪との間にシール構造を形成する円環状の第1部分を含む第1シール部材と、を備える。第1部分は、軸方向において鍔部の第1転走面とは反対側の端面である第1端面側に近付くにしたがって外径が大きくなる形状を有する。
【0010】
本開示のフォロア軸受は、第1シール部材を備える。第1シール部材は、鍔部の外周面と第1の面との間に配置され、外輪との間にシール構造を形成する円環状の第1部分を含む。第1部分は、第1端面側に近付くにしたがって外径が大きくなる形状を有する。上記フォロア軸受は、鍔部に第1シール部材が設置された内方部材を外輪に挿入することで組み立てられる。第1シール部材が上記第1部分を含むことで、内方部材を外輪に挿入する際に、外輪が第1部分によって案内され、外輪が第1シール部材に引っ掛かることが低減される。したがって、本開示のフォロア軸受によれば、フォロア軸受の組み立てを容易にすることができる。
【0011】
上記フォロア軸受では、第1部分は、第1端面側に近づくにしたがって外径が大きくなるテーパ状であってもよい。このようにすることにより、内方部材を外輪に挿入する際に、外輪が第1部分によってより確実に案内され、外輪が第1シール部材に引っ掛かることがより低減される。したがって、本開示のフォロア軸受によれば、フォロア軸受の組み立てをより容易にすることができる。
【0012】
上記フォロア軸受では、第2転走面の直径は、第1の面の直径よりも小さくてもよい。外輪は、第2転走面と第1の面とをつなぎ、軸方向において鍔部の第1端面とは反対側の端面である第2端面に対向する円環状の第2の面を内周面にさらに有してもよい。第1シール部材は、第1部分に接続され、第2端面と第2の面との間に配置される円環状の第2部分をさらに含んでもよい。第1シール部材が第2部分を含むことで、フォロア軸受に対しアキシャル荷重が加わった際に、鍔部の第2端面と外輪の第2の面とが接触することを抑制することができる。したがって、鍔部の第2端面と外輪の第2の面とが接触することによる摩耗などの発生を抑制することができる。
【0013】
上記フォロア軸受では、鍔部の第2端面の最大高さ粗さRzが、12.5μm以下であってもよい。このような構成を採用することで、フォロア軸受1に対しアキシャル荷重が加わった際に、第1シール部材と鍔部の第2端面との摩擦を低減することができる。
【0014】
上記フォロア軸受では、第1シール部材は、軸方向において第1端面側に位置する第1シール端面を含んでもよい。第1シール端面は、第1端面に近づくにしたがって外径が小さくなる形状を有してもよい。このようにすることにより、第1シール端面上にダストが溜まっても、第1シール端面は上記形状を有するため、第1シール端面上に溜まったダストを第1端面側に向かって滑り落ちやすくすることができる。よって、第1シール端面上にダストを堆積しにくくすることができる。したがって、第1シール端面上のダストが第1シール部材の外周面を乗り越えて軸受内部に侵入するおそれを低減することができ、フォロア軸受における防塵性能の向上を図ることができる。
【0015】
上記フォロア軸受では、第1シール端面は、第1端面側に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ状であってもよい。このようにすることにより、第1シール端面上に溜まったダストを第1端面側に向かってより確実に滑り落ちやすくすることができる。よって、第1シール端面上にダストをより堆積しにくくすることができる。したがって、第1シール端面上のダストが第1シール部材の外周面を乗り越えて軸受内部に侵入するおそれを大きく低減することができ、フォロア軸受における防塵性能の向上をさらに図ることができる。
【0016】
上記フォロア軸受では、第1シール端面は、軸方向において第1端面に至るまで延びていてもよい。このようにすることにより、上記形状の第1シール端面上に溜まったダストを第1端面まで滑らかに滑り落とすことができ、第1シール端面と鍔部の外周面との間の領域においてダストを溜まりにくくすることができる。よって、フォロア軸受における防塵性能の向上を図ることができる。
【0017】
上記フォロア軸受では、内方部材は、第1本体部の第1転走面から見て、鍔部とは反対側の外周面に接触するように嵌め込まれ、第1本体部と同軸の中心軸を有するリングをさらに含んでもよい。外輪の内周面は、リングの外周面に対向すると共に第2転走面の直径よりも大きい直径を有する円環状の第3の面と、第2転走面と第3の面とをつなぎ、軸方向においてリングの第1転走面側の端面である第3端面に対向する円環状の第4の面と、をさらに有してもよい。フォロア軸受は、リングの外周面と第3の面との間に配置され、少なくとも一部が外輪との間にシール構造を形成する円環状の第3部分と、第3部分に接続され、第3端面と第4の面との間に配置される円環状の第4部分と、を含む第2シール部材をさらに備えてもよい。第3部分は、軸方向においてリングの第3端面とは反対側の端面である第4端面側に近付くにしたがって外径が大きくなる形状を有してもよい。
【0018】
第1本体部が外輪に挿入された状態で、第2シール部材が設置されたリングが第1本体部に取り付けられる。第2シール部材が第3部分を含むことで、第2シール部材が設置されたリングを第1本体部に取り付ける際に、リングが第3部分の外周面によって案内され、第2シール部材が外輪に引っ掛かることが低減される。したがって、第2シール部材が設置されたリングを第1本体部に対して取り付け易くすることができる。また、第2シール部材が第4部分を含むことで、フォロア軸受に対しアキシャル荷重が加わった際にリングの第3端面と第4の面とが接触することを抑制することができる。したがって、リングの第3端面と外輪の第4の面とが接触することによる摩耗などの発生を抑制することができる。
【0019】
上記フォロア軸受では、第3部分は、第4端面側に近づくにしたがって外径が大きくなるテーパ状であってもよい。このようにすることにより、リングを第1本体部に取り付ける際に、リングが第3部分の外周面によってより確実に案内され、第2シール部材が外輪に引っ掛かることがより低減される。したがって、本開示のフォロア軸受によれば、フォロア軸受の組み立てをより容易にすることができる。
【0020】
上記フォロア軸受では、リングの第3端面の最大高さ粗さRzが、12.5μm以下であってもよい。このような構成を採用することで、フォロア軸受に対しアキシャル荷重が加わった際に第2シール部材とリングの第3端面との摩擦を低減することができる。
【0021】
上記フォロア軸受では、第2シール部材は、軸方向において第4端面側に位置する第2シール端面を含んでもよい。第2シール端面は、第4端面に近づくにしたがって外径が小さくなる形状を有してもよい。このようにすることにより、第2シール端面上にダストが溜まっても、第2シール端面は上記形状を有するため、第2シール端面上に溜まったダストを第4端面側に向かって滑り落ちやすくすることができる。よって、第2シール端面上にダストを堆積しにくくすることができる。したがって、第2シール端面上のダストが第2シール部材の外周面を乗り越えて軸受内部に侵入するおそれを低減することができ、フォロア軸受における防塵性能の向上を図ることができる。
【0022】
上記フォロア軸受では、第2シール端面は、第4端面側に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ状であってもよい。このようにすることにより、第2シール端面上に溜まったダストを第4端面側に向かってより確実に滑り落ちやすくすることができる。よって、第2シール端面上にダストをより堆積しにくくすることができる。したがって、第2シール端面上のダストが第2シール部材の外周面を乗り越えて軸受内部に侵入するおそれを大きく低減することができ、フォロア軸受における防塵性能の向上をさらに図ることができる。
【0023】
上記フォロア軸受では、第2シール端面は、軸方向において第4端面に至るまで延びていてもよい。このようにすることにより、上記形状の第2シール端面上に溜まったダストを第4端面側まで滑らかに滑り落とすことができ、第2シール端面とリングの外周面との間の領域においてダストを溜まりにくくすることができる。よって、フォロア軸受における防塵性能の向上を図ることができる。
【0024】
上記フォロア軸受では、第2シール部材を構成する材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタールおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つの樹脂であってもよい。上記樹脂は、第2シール部材を構成する材料として好適である。
【0025】
上記フォロア軸受では、第1シール部材を構成する材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタールおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つの樹脂であってもよい。上記樹脂は、第1シール部材を構成する材料として好適である。
【0026】
上記フォロア軸受では、転動体は、ころであってもよい。このようにすることにより、フォロア軸受の断面高さを抑制しつつ、十分な耐荷重を達成することが容易となる。
【0027】
[実施形態の具体例]
次に、本開示のフォロア軸受の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0028】
図1は、本開示の一実施の形態におけるフォロア軸受の構造を示す概略斜視図である。図1においては、内部の構造を表示する観点から、一部の部品を部分的に切断した状態が示されている。図1において、ハッチングが付された領域は、断面に対応する。図2は、フォロア軸受の構造を示す概略断面図である。図2は、フォロア軸受の回転軸を含む断面を示す。図3は、図2の領域αを拡大して示す概略断面図である。
【0029】
図1図3を参照して、本実施の形態におけるフォロア軸受1は、内方部材10と、外輪20と、第1シール部材30Aと、第2シール部材30Bと、転動体としての複数のころ40と、を備えている。本実施の形態では、フォロア軸受1は、ころ40の保持器を有さない総ころ軸受である。内方部材10は、第1本体部50と、第1本体部50の一方の端部の外周面に配置される鍔部52と、リング60と、を含む。内方部材10は、鋼製である。第1本体部50は、棒状(中実円筒状)の形状を有する。
【0030】
第1本体部50の一方の端部の、第1本体部50の中心軸と交差(本実施の形態では直交)する領域を含むように、正六角柱状の形状を有する六角穴53Aが形成されている。第1本体部50の他方の端部の外周面には、らせん状のねじ溝が形成されたねじ部54が配置されている。このような構造を有することにより、フォロア軸受1の設置に際しては、例えばフォロア軸受1を保持する保持部材に形成されたねじ穴(図示せず)にねじ部54をねじ込むとともに、六角穴53Aに六角レンチの先端を挿入して締めつける、またはハウジング孔に内方部材10を通し、ねじ部54にナットを螺合することにより、保持部材に対してフォロア軸受1を固定することができる。
【0031】
第1本体部50は、他の領域よりも径がやや大きい大径部51を有する。大径部51は、軸方向において中央よりも鍔部52側に配置されている。大径部51は、軸方向において後述する鍔部52とねじ部54との間に配置されている。大径部51の外周面は、円筒面状の形状を有する第1転走面51Aを含む。すなわち、第1本体部50は、円環状の第1転走面51Aを外周面50Aに有している。
【0032】
第1本体部50には、軸方向において鍔部52とは反対側の端部に開口56Aを有し、軸方向に沿って延びる第1の穴56が形成されている。第1本体部50には、第1本体部50の外周面50Aに開口57Aを有し、径方向に沿って延びる第2の穴57が形成されている。第2の穴57は、第1の穴56に連通する。第1本体部50には、大径部51の第1転走面51Aに開口58Aを有し、径方向に沿って延びる第3の穴58が形成されている。第3の穴58は、第1の穴56に連通する。第1本体部50は、軸方向において大径部51とねじ部54との間に配置され、大径部51よりも径の小さい円環状の突出部501を有する。
【0033】
鍔部52は、第1本体部50よりも径の大きい円盤環状の形状を有する。鍔部52は、第1本体部50と同軸の中心軸を有する。大径部51の径は、鍔部52の径よりも小さい。鍔部52は、外周面52Aと、軸方向における一方の端面である第1端面52Bと、第1端面52Bとは反対側の第2端面52Cと、を含む。第1端面52Bと、第2端面52Cとは平行に配置される。第1端面52Bおよび第2端面52Cは、平面状の形状を有する。本実施の形態では、第2端面52Cの最大高さ粗さRzは12.5μm以下である。第2端面52Cの最大高さ粗さRzは、好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは7μm以下であり、特に好ましくは6.3μm以下である。最大高さ粗さRzは、例えばJIS B 0601に基づいて測定することができる。本実施の形態では、例えば、鍔部52の第2端面52Cに対して研削加工を実施することで、上記最大高さ粗さRzを満たす第2端面52Cを有する鍔部52を形成することができる。なお、第2端面52Cは、上記最大高さ粗さRzを満たすように、研削加工の他、公知の方法によって加工されてもよい。
【0034】
リング60は、軸方向において、第1本体部50の大径部51から見て、鍔部52とは反対側の突出部501の外周面に嵌め込まれている。リング60は、突出部501の外周面に公知の方法で固定されている。リング60は、円環状の形状を有する。リング60は、外周面61と、内周面62と、軸方向における一方の端面である第3端面63と、第3端面63とは反対側の第4端面64と、を含む。外周面61と、内周面62とは同心の円筒面である。第3端面63と、第4端面64とは平行に配置される。図3を参照して、軸方向における大径部51の鍔部52とは反対側の段差部である段差面51Bに第3端面63において接触するように、リング60が配置される。リング60は、第1本体部50に圧入され、第1本体部50に対して固定されている。本実施の形態では、リング60の第3端面63の最大高さ粗さRzは12.5μm以下である。第3端面63の最大高さ粗さRzは、好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは7μm以下であり、特に好ましくは、6.3μm以下である。最大高さ粗さRzは、例えばJIS B 0601に基づいて測定することができる。本実施の形態では、例えば、リング60の第3端面63に対して研削加工を実施することで、上記最大高さ粗さRzを満たす第3端面63を有するリング60を作製することができる。軸方向において大径部51を挟むように鍔部52とリング60とが配置されることで、軸方向に外輪20および複数のころ40が軸方向に抜けてしまうことを抑制することができる。なお、第3端面63は、上記最大高さ粗さRzを満たすように、研削加工の他、公知の方法によって加工されてもよい。
【0035】
内方部材10は、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、軸受鋼などの鋼からなる。本実施の形態では、内方部材10は、高炭素クロム軸受鋼製である。第1本体部50の第1転走面51Aを含む領域に対して、熱処理が実施されてもよい。熱処理として、例えば、高周波焼入および焼戻が実施されてもよい。第1本体部50の第1転走面51Aを含む領域に対して、研削加工が実施されてもよい。本実施の形態では、鍔部52に対しては、熱処理が実施されない。
【0036】
外輪20は、内周面21Aと、外周面21Bと、軸方向の一方の端面である第1外輪端面21Cと、軸方向の他方の端面である第2外輪端面21Dと、を含む。内周面21Aは、第1本体部50の第1転走面51Aに対向する第2転走面22Cを含む。すなわち、外輪20は、第2転走面22Cを内周面21Aに有する。第2転走面22Cは、円筒面状の形状を有する。本実施の形態では、外周面21Bは、円筒面状の形状を有する。第1外輪端面21Cおよび第2外輪端面21Dは、環状の平面である。第1外輪端面21Cおよび第2外輪端面21Dは、軸方向に直交する。第1外輪端面21Cと第2外輪端面21Dとは平行に配置される。第1外輪端面21Cおよび第2外輪端面21Dは、フォロア軸受1において、外部に露出する構成である。
【0037】
内周面21Aは、軸方向において、第2転走面22Cを挟むように配置される円環状の第1の面22Aおよび円環状の第3の面22Dを含む。第1の面22Aは、外輪20の一方の端部の内周面21Aに配置される。第3の面22Dは、外輪20の他方の端部の内周面21Aに配置される。第1の面22Aおよび第3の面22Dの直径は、第2転走面22Cの直径よりも大きい。第1の面22Aおよび第3の面22Dは、回転軸と同軸の中心軸を有する円筒面状の形状を有する。第1の面22Aは、鍔部52の外周面52Aに対向する。第3の面22Dは、リング60の外周面61に対向する。内周面21Aは、第1の面22Aと第2転走面22Cとをつなぐ第2の面22Bと、第3の面22Dと第2転走面22Cとをつなぐ第4の面22Eとをさらに含む。第2の面22Bおよび第4の面22Eは、環状の平面である。第2の面22Bおよび第4の面22Eは、軸方向に直交する。第2の面22Bと第4の面22Eとは平行に配置される。第2の面22Bは、鍔部52の第2端面52Cに対向する。第4の面22Eは、リング60の第3端面63に対向する。
【0038】
外輪20は、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、軸受鋼などの鋼からなる。本実施の形態では、外輪20は、高炭素クロム軸受鋼製である。外輪20の第2転走面22Cを含む領域に対して、熱処理が実施されてもよい。熱処理として、例えば、高周波焼入および焼戻が実施されてもよい。第2転走面22Cを含む領域に対して、研削加工が実施されてもよい。
【0039】
図2図4を参照して、第1シール部材30Aおよび第2シール部材30Bは、第1部分および第3部分としての環状部31と、第2部分および第4部分としての突出部32と、を含む。環状部31は、円環状の形状を有する。環状部31は、外周面31Aと内周面31Bとを含む。外周面31Aは、円錐面状の形状を有する。内周面31Bは、円筒面状の形状を有する。外周面31Aおよび内周面31Bは、回転軸と同軸の中心軸を有する。環状部31の外周面31Aは、一方の端面に向かって径が大きくなるテーパ状の形状を有する。環状部31の外径は、第1の面22Aおよび第3の面22Dの内径よりも小さい。突出部32は、環状部31に接続される。突出部32は、環状部31の他方の端面から径方向内側に沿って突出する。突出部32は、円環状の形状を有する。突出部32は、平板環状の形状を有する。突出部32は、環状部31と同軸に配置される。突出部32は、軸方向における一方の端面32Aと、端面32Aとは反対側の端面32Bとを含む。
【0040】
図3を参照して、第1シール部材30Aの環状部31は、径方向において鍔部52の外周面52Aと第1の面22Aとの間に配置されている。第1シール部材30Aの環状部31の外周面31Aと第1の面22Aとの間には、隙間が形成されている。なお、環状部31と鍔部52の外周面52Aとの間には、図示していない隙間が形成されている。環状部31は鍔部52に隙間嵌されている。第1シール部材30Aは、いわゆる非接触シールである。第1シール部材30Aにおける突出部32は、軸方向において鍔部52の第2端面52Cと第2の面22Bとの間に配置されている。突出部32の端面32Aは、鍔部52の第2端面52Cに接触可能である。突出部32の端面32Bは、軸方向において第2の面22Bに対向する。第1シール部材30Aと外輪20との間に隙間を形成すると共に、第1シール部材30Aと鍔部52との間に隙間を形成することにより、第1シール部材30Aを設置することによる外輪20の摺動抵抗や回転トルクなどの増加を低減することができ、外輪20をスムーズに回転させることができる。なお、外周面31Aと第1の面22Aとを接触させ、隙間を形成しない構造としてもよい。また、鍔部52と第1シール部材30Aとは隙間のない密着した構造としてもよい。
【0041】
第2シール部材30Bの環状部31は、径方向においてリング60の外周面61と第3の面22Dとの間に配置されている。第2シール部材30Bの環状部31の外周面31Aと第3の面22Dとの間には、隙間が形成されている。なお、環状部31とリング60の外周面61との間には、図示してしない隙間が形成されている。環状部31はリング60に隙間嵌されている。第2シール部材30Bは、いわゆる非接触シールである。第2シール部材30Bにおける突出部32は、軸方向においてリング60の第3端面63と第4の面22Eとの間に配置されている。突出部32の端面32Aは、リング60の第3端面63に接触可能である。突出部32の端面32Bは、軸方向において第4の面22Eに対向する。第2シール部材30Bと外輪20との間に隙間を形成すると共に、第2シール部材30Bとリング60との間に隙間を形成することにより、第2シール部材30Bを設置することによる外輪20の摺動抵抗や回転トルクなどの増加を低減することができ、外輪20をスムーズに回転させることができる。なお、外周面61と第3の面22Dとを接触させ、隙間を形成しない構造としてもよい。また、リング60と第2シール部材30Bとは隙間のない密着した構造としてもよい。
【0042】
第1シール部材30Aの環状部31は、軸方向において第1端面52B側に位置する第1シール端面31Cを含む。第2シール部材30Bの環状部31は、軸方向において第4端面64側に位置する第2シール端面31Dを含む。第1シール端面31Cおよび第2シール端面31Dは、環状の平面である。第1シール端面31Cおよび第2シール端面31Dは、軸方向に直交する。第1シール端面31Cと第2シール端面31Dとは平行に配置される。第1シール端面31Cは、軸方向において第1外輪端面21Cよりも軸受内部側に配置される。本実施形態においては、外輪20の第1の面22Aと鍔部52の外周面52Aと第1シール部材30Aの第1シール端面31Cとによって、軸方向に開口を有するスペース71が形成される。第2シール端面31Dは、軸方向において第2外輪端面21Dよりも軸受内部側に配置される。本実施形態においては、外輪20の第3の面22Dとリング60の外周面61と第2シール部材30Bの第2シール端面31Dとによって、軸方向に開口を有するスペース72が形成される。
【0043】
第1シール部材30Aおよび第2シール部材30Bを構成する材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタールおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つの樹脂である。本実施の形態では、第1シール部材30Aおよび第2シール部材30Bを構成する材料は、例えばナイロン66である。第1シール部材30Aおよび第2シール部材30Bを構成する材料は、二硫化モリブデンが添加されたナイロン66等でもよい。ナイロン66の他、二硫化モリブデン等を含んでいてもよい。第1シール部材30Aおよび第2シール部材30Bを構成する材料として、ナイロン66を採用すると、第1シール部材30Aおよび第2シール部材30Bが柔らかく、摩耗し易くなる。第2端面52Cおよび第3端面63の最大高さ粗さRzを6.3μm以下とすることで、第1シール部材30A及び第2シール部材30Bの摩耗を一層低減することができる。
【0044】
図2図4を参照して、複数のころ40が、第1転走面51Aおよび第2転走面22C上を転動可能に配置されている。ころ40は、中実円筒状の形状を有する。ころ40は、円筒面状の外周面41と、球面状の一対の端面42とを含む。端面42は、平坦状であってもよい。ころ40は、外周面41において第1転走面51Aおよび第2転走面22Cに接触している。ころ40は、例えば軸受鋼などの鋼からなっている。ころ40は、焼入硬化されていてもよい。
【0045】
次に、本実施の形態におけるフォロア軸受1の組立方法について説明する。まず、図5を参照して、第1本体部50と、鍔部52とを含む中間体2が準備される。次に、図5および図6を参照して、中間体2に対して第1シール部材30Aが取り付けられる。第1本体部50の端部55を第1シール部材30Aに挿入し、第1シール部材30Aの突出部32が鍔部52の第2端面52Cに接触するように配置される。次に、図6および図7を参照して、第1シール部材30Aが設置された中間体2に対して、ころ40が配置される。この際に、ころ40は、外周面41において第1転走面51Aに接触するように配置される。次に、図7および図8を参照して、第1シール部材30Aが取り付けられ、ころ40が配置された中間体2に対して、外輪20が取り付けられる。第1本体部50の端部55を外輪20に挿入し、外輪20の第2転走面22Cがころ40の外周面41に接触すると共に第1転走面51Aに対向するように配置される。次に、図2図3および図8を参照して、第1シール部材30Aおよび外輪20が取り付けられ、ころ40が配置された中間体2に対して、第2シール部材30Bが設置されたリング60が取り付けられる。第1本体部50の端部55がリング60に挿入され、リング60が大径部51の段差面51Bに接触するように嵌め込まれることにより、リング60は第1本体部50に固定される。以上の工程により、本実施の形態のフォロア軸受1が完成する。
【0046】
ここで、本実施の形態におけるフォロア軸受1は、第1シール部材30Aを備える。第1シール部材30Aは、外輪20との間にシール構造を形成する環状部31を含む。環状部31は、第1端面52B側に近付くにしたがって外径が大きくなる形状を有する。第1シール部材30Aが環状部31を含むことで、内方部材10に対して外輪20を取り付ける際に外輪20が環状部31によって案内され、外輪20が第1シール部材30Aに引っ掛かることが低減される。したがって、本実施の形態におけるフォロア軸受1によれば、フォロア軸受1の組み立てが容易である。
【0047】
本実施の形態では、第1シール部材30Aの環状部31は、第1端面52B側に近づくにしたがって外径が大きくなるテーパ状である。よって、内方部材10を外輪20に挿入する際に、外輪20が第1シール部材30Aの環状部31によってより確実に案内され、外輪20が第1シール部材30Aに引っ掛かることがより低減される。したがって、本開示のフォロア軸受1によれば、フォロア軸受1の組み立てをより容易にすることができる。
【0048】
上記実施の形態では、第1シール部材30Aは、突出部32を含む。第1シール部材30Aが突出部32を含むことで、フォロア軸受1に対しミスアライメントなどによって発生するアキシャル荷重が加わった際に、鍔部52の第2端面52Cと外輪20の第2の面22Bとが接触することを抑制することができる。したがって、鍔部52の第2端面52Cと外輪20の第2の面22Bとが接触することによる摩耗などの発生を抑制することができる。
【0049】
上記実施の形態では、鍔部52の第2端面52Cの最大高さ粗さRzが、12.5μm以下である。このような構成を採用することで、フォロア軸受1に対しアキシャル荷重が加わった際に、第1シール部材30Aと鍔部52の第2端面52Cとの摩擦を低減することができる。
【0050】
上記実施の形態では、鍔部52の第2端面52Cおよびリング60の第3端面63に対して研削加工が実施される。上記実施の形態では、外輪20の第2の面22Bおよび第4の面22Eに対して、研削加工が実施されていない。すなわち、第2の面22Bおよび第4の面22Eの最大高さ粗さRzは、12.5μmよりも大きい。本実施の形態では、フォロア軸受1に対しアキシャル荷重が加わった際に、第1シール部材30Aが第2の面22Bに接触する面積が、第1シール部材30Aが第2端面52Cに接触する面積よりも大きくなっている。つまり、第1シール部材30Aと外輪20との間に発生する摩擦力は、第1シール部材30Aと鍔部52との間に発生する摩擦力よりも大きくなる。第1シール部材30Aと同様に、フォロア軸受1に対しアキシャル荷重が加わった際に、第2シール部材30Bが第4の面22Eに接触する面積が、第2シール部材30Bが第3端面63に接触する面積よりも大きくなっている。つまり、第2シール部材30Bと外輪20との間に発生する摩擦力は、第2シール部材30Bとリング60との間に発生する摩擦力よりも大きくなる。この際に、第1シール部材30Aまたは第2シール部材30Bが、外輪20と共に内方部材10に対して回転する場合がある。第1シール部材30Aまたは第2シール部材30Bが回転すると、第1シール部材30Aと第2端面52Cとの間、または第2シール部材30Bと第3端面63との間ですべり摩擦が発生し、第1シール部材30Aまたは第2シール部材30Bの摩耗が発生する。第2端面52Cおよび第3端面63の最大高さ粗さRzを小さくすることによって、上記すべり摩擦の発生を低減し、第1シール部材30Aおよび第2シール部材30Bの摩耗を低減することができる。なお、外輪20の第2の面22Bに対して、研削加工が実施されない場合について説明したが、これに限られず、外輪20の第2の面22Bに対して研削加工が実施されてもよい。
【0051】
上記実施の形態では、第1シール端面31Cは、軸方向において第1外輪端面21Cよりも軸受内部側に配置され、外輪20の第1の面22Aと鍔部52の外周面52Aと第1シール部材30Aの第1シール端面31Cとによって、軸方向に開口を有するスペース71が形成される構成を採用する。このようにすることにより、フォロア軸受1を構成する各部材の寸法の許容差が累積されたとしても、軸方向において第1外輪端面21Cよりも第1シール端面31Cが軸受外部側に突き出るおそれを低減することができる。よって、第1シール部材30Aの外周面31Aが軸受外部に露出するおそれを低減することができ、第1シール部材30Aの外周面31A上にダストを溜まりにくくすることができる。また、このような形状の第1シール部材30Aを樹脂成型する際に、角部が狭くなる箇所が少ないため、容易に成型することができる。
【0052】
上記実施の形態では、フォロア軸受1は、第2シール部材30Bを備える。第2シール部材30Bは、第1シール部材30Aと同様に環状部31および突出部32を含む。第2シール部材30Bの環状部31は、リング60の第4端面64側に近付くにしたがって外径が大きくなる形状を有する。第2シール部材30Bが環状部31を含むことで、第2シール部材30Bが設置されたリング60を第1本体部50に取り付ける際に、リング60が環状部31の外周面31Aによって案内され、第2シール部材30Bが外輪20に引っ掛かることが低減される。したがって、第2シール部材30Bが設置されたリング60を第1本体部50に対して取り付け易くすることができる。また、第2シール部材30Bが突出部32を含むことで、フォロア軸受1に対しアキシャル荷重が加わった際にリング60の第3端面63と第4の面22Eとが接触することを抑制することができる。したがって、リング60の第3端面63と外輪20の第4の面22Eとが接触することによる摩耗などの発生を抑制することができる。
【0053】
上記実施の形態では、第2シール部材30Bの環状部31は、第4端面64側に近づくにしたがって外径が大きくなるテーパ状である。よって、リング60を第1本体部50に取り付ける際に、リング60が第2シール部材30Bの環状部31によってより確実に案内され、第2シール部材30Bが外輪20に引っ掛かることがより低減される。したがって、本開示のフォロア軸受1によれば、フォロア軸受1の組み立てをより容易にすることができる。
【0054】
上記実施の形態では、第2シール端面31Dは、軸方向において第2外輪端面21Dよりも軸受内部側に配置され、外輪20の第3の面22Dとリング60の外周面61と第2シール部材30Bの第2シール端面31Dとによって、軸方向に開口を有するスペース72が形成される構成を採用する。このようにすることにより、フォロア軸受1を構成する各部材の寸法の許容差が累積されたとしても、軸方向において第2外輪端面21Dよりも第2シール端面31Dが軸受外部側に突き出るおそれを低減することができる。よって、第2シール部材30Bの外周面31Aが軸受外部に露出するおそれを低減することができ、第2シール部材30Bの外周面31A上にダストを溜まりにくくすることができる。また、このような形状の第2シール部材30Bを樹脂成型する際に、角部が狭くなる箇所が少ないため、容易に成型することができる。
【0055】
上記実施の形態では、リング60の第3端面63の最大高さ粗さRzが、12.5μm以下である。このような構成を採用することで、フォロア軸受1に対しアキシャル荷重が加わった際に第2シール部材30Bとリング60の第3端面63との摩擦を低減することができる。なお、フォロア軸受1の用途に応じ、リング60の第3端面63の最大高さ粗さRzが12.5μmよりも大きくてもよい。
【0056】
上記実施の形態では、第1シール部材30Aの環状部31は、第1端面52B側に近づくにしたがって外径が大きくなるテーパ状であることとしたが、これに限られない。例えば、第1シール部材30Aの環状部31の外周面31Aは、図2および図3に示す断面、すなわち、フォロア軸受1の回転軸を含む断面において円弧状であって、第1端面52B側に近づくにしたがって外径が大きくなるようにしてもよい。具体的には、外周面31Aの径の大きくなっていく割合が、第1端面52B側に近づくにしたがって、小さくなるような円弧状であってもよいし、外周面31Aの径の大きくなっていく割合が、第1端面52B側に近づくにしたがって、大きくなるような円弧状であってもよい。さらに、第1シール部材30Aの環状部31の外周面31Aは、円弧状の領域とテーパ状の領域とを含む構成としてもよい。すなわち、第1シール部材30Aの環状部31の外周面31Aは、円弧状の領域とテーパ状の領域とが軸方向において連なって形成されてもよい。また、第1シール部材30Aの環状部31の外周面31Aは、曲面を含むよう構成されていてもよい。同様に、第2シール部材30Bの環状部31は、第4端面64側に近づくにしたがって外径が大きくなるテーパ状であることとしたが、これに限られず、例えば、第2シール部材30Bの環状部31の外周面31Aは、図2および図3に示す断面、すなわち、フォロア軸受1の回転軸を含む断面において円弧状であって、第4端面64側に近づくにしたがって外径が大きくなるようにしてもよい。以下に示す実施の形態についても同様である。
【0057】
次に、他の実施の形態について説明する。図9は、他の実施の形態に係るフォロア軸受の構造を示す概略断面図である。図9は、フォロア軸受の回転軸を含む断面を示す。図10は、図9の領域αを拡大して示す概略断面図である。図9に示すフォロア軸受は、図1および図2に示すフォロア軸受に対して、第1シール部材および第2シール部材の構成が異なる点において、図1および図2に示すフォロア軸受と相違する。
【0058】
図9および図10を参照して、他の実施の形態に係るフォロア軸受1は、第1シール部材30Cおよび第2シール部材30Dを含む。第1シール部材30Cは、第1シール部材30Aと同様に環状部31および突出部32を含む。第1シール部材30Cの環状部31の外周面31Aは、鍔部52の第1端面52B側に近づくにしたがって外径が大きくなるテーパ状の形状を有する。第1シール部材30Cは、軸方向において第1端面52B側に位置する第1シール端面31Eを含む。第1シール端面31Eは、第1端面52Bに近づくにしたがって外径が小さくなる形状を有する。具体的には、第1シール端面31Eは、第1端面52B側に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ状である。また、第1シール端面31Eは、軸方向において第1端面52Bに至るまで延びている。本実施形態においては、第1端面52Bには、いわゆるC面取りが施されているが、第1シール端面31Eは、C面取りが施された第1端面52Bに至るまで延びている。本実施形態においては、図2および図3に表れるスペース71は設けられない構成である。
【0059】
また、第2シール部材30Dは、第2シール部材30Bと同様に環状部31および突出部32を含む。第2シール部材30Dの環状部31の外周面31Aは、リング60の第4端面64側に近づくにしたがって外径が大きくなるテーパ状の形状を有する。第2シール部材30Dは、軸方向において第4端面64側に位置する第2シール端面31Fを含む。第2シール端面31Fは、第4端面64に近づくにしたがって外径が小さくなる形状を有する。具体的には、第2シール端面31Fは、第4端面64側に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ状である。なお、第2シール端面31Fについては、軸方向においてリング60の第4端面64には至っていない構成である。本実施形態においては、図2および図3に表れるスペース72は設けられない構成である。
【0060】
上記実施の形態では、第1シール端面31E上にダストが溜まっても、第1シール端面31Eは上記形状を有するため、第1シール端面31E上に溜まったダストを第1端面52B側に向かって滑り落ちやすくすることができる。よって、第1シール端面31E上にダストを堆積しにくくすることができる。したがって、第1シール端面31E上のダストが第1シール部材30Cの外周面31Aを乗り越えて軸受内部に侵入するおそれを低減することができ、フォロア軸受1における防塵性能の向上を図ることができる。
【0061】
上記実施の形態では、第1シール端面31Eは、第1端面52B側に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ状である。よって、第1シール端面31E上に溜まったダストを第1端面52B側に向かってより確実に滑り落ちやすくすることができる。よって、第1シール端面31E上にダストをより堆積しにくくすることができる。したがって、第1シール端面31E上のダストが第1シール部材30Cの外周面31Aを乗り越えて軸受内部に侵入するおそれを大きく低減することができ、フォロア軸受1における防塵性能の向上をさらに図ることができる。
【0062】
上記実施の形態では、第1シール端面31Eは、軸方向において第1端面52Bに至るまで延びている。よって、上記形状の第1シール端面31E上に溜まったダストを第1端面52Bまで滑らかに滑り落とすことができ、第1シール端面31Eと鍔部52の外周面52Aとの間の領域においてダストを溜まりにくくすることができる。よって、フォロア軸受1における防塵性能の向上を図ることができる。
【0063】
上記実施の形態では、第2シール部材30Dは、軸方向において第4端面64側に位置する第2シール端面31Fを含む。第2シール端面31Fは、第4端面64に近づくにしたがって外径が小さくなる形状を有する。よって、第2シール端面31F上にダストが溜まっても、第2シール端面31Fは上記形状を有するため、第2シール端面31F上に溜まったダストを第4端面64側に向かって滑り落ちやすくすることができる。よって、第2シール端面31F上にダストを堆積しにくくすることができる。したがって、第2シール端面31F上のダストが第2シール部材30Dの外周面31Aを乗り越えて軸受内部に侵入するおそれを低減することができ、フォロア軸受1における防塵性能の向上を図ることができる。
【0064】
上記実施の形態では、第2シール端面31Fは、第4端面64側に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ状である。よって、第2シール端面31F上に溜まったダストを第4端面64側に向かってより確実に滑り落ちやすくすることができる。よって、第2シール端面31F上にダストをより堆積しにくくすることができる。したがって、第2シール端面31F上のダストが第2シール部材30Dの外周面31Aを乗り越えて軸受内部に侵入するおそれを大きく低減することができ、フォロア軸受1における防塵性能の向上をさらに図ることができる。
【0065】
なお、上記実施の形態において、第2シール端面31Fは、軸方向において第4端面64に至るまで延びていてもよい。このようにすることにより、上記形状の第2シール端面31F上に溜まったダストを第4端面64側まで滑らかに滑り落とすことができ、第2シール端面31Fとリング60の外周面61との間の領域においてダストを溜まりにくくすることができる。よって、フォロア軸受1における防塵性能の向上を図ることができる。また、鍔部52の第1端面52Bにおいて面取りが設けられていない構成を採用してもよい。
【0066】
上記実施の形態では、軸方向に沿って延びる第1の穴56が第1本体部50に形成されている。第1本体部50には、第1の穴56に連通し、外周面50Aに開口57Aを有する第2の穴57が形成されている。第1本体部50には、第1転走面51Aに開口58Aを有し、第1の穴56に連通する第3の穴58が形成されている。第1の穴56の開口56Aから潤滑剤を注入することで、第1の穴56および第3の穴58を通じて、ころ40の外周面41に給油を実施することができる。第1の穴56の開口56Aを閉塞するようにグリースニップルや止め栓が取り付けられてもよい。
【0067】
上記実施の形態では、外輪20の外周面21Bが円筒面状の形状を有する場合について説明したが、これに限られず、外周面21Bの形状は球面状であってもよい。上記実施の形態においては、フォロア軸受1の転動体としてころ40が採用される場合について説明したが、転動体として玉が採用されてもよい。また、上記実施の形態においては、転動体が単列に配置される場合について説明したが、複列に配置されてもよい。また、上記実施の形態では、内方部材10が第1転走面51Aを外周面50Aに有する第1本体部50を含む場合について説明したが、これに限られず、内方部材10が、第1本体部50と、第1転走面51Aを外周面に有し、第1本体部50に嵌め込まれる内輪とを含むようにしてもよい。なお、第1シール部材30Aと外輪20との間、および第1シール部材30Aと鍔部52との間に隙間が形成されている。さらに、第2シール部材30Bと外輪20との間、および第2シール部材30Bと鍔部52との間に隙間が形成されている。このような隙間を形成することで、第1シール部材30Aおよび第2シール部材30Bを設けることによる外輪20の回転トルク等の増加を低減でき、外輪20をスムーズに回転させることができる。また、上記実施の形態では、フォロア軸受1が保持器を有さない総ころ軸受である場合について説明したが、これに限られず、フォロア軸受1は保持器を有してもよい。
【0068】
本開示において、フォロア軸受1とは、第1本体部50が固定された状態で外輪20が他の部材と接触しつつ周方向に第1本体部50に対して相対的に回転する軸受をいう。上記他の部材は、特に限定されるものではなく、例えばカムであってもよいし、レールであってもよいし、ベルトであってもよい。上記実施の形態におけるフォロア軸受1によれば、工作機械や産業用ロボット等において直線運動などを円滑に案内することができる。
【0069】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 フォロア軸受、2 中間体、10 内方部材、20 外輪、21A,31B,62 内周面、21B,31A,41,50A,52A,61 外周面、21C 第1外輪端面、21D 第2外輪端面、22A 第1の面、22B 第2の面、22C 第2転走面、22D 第3の面、22E 第4の面、30A,30C 第1シール部材、30B,30D 第2シール部材、31 環状部、31C,31E 第1シール端面、31D,31F 第2シール端面、32 突出部、32A,32B,42 端面、40 ころ、50 第1本体部、501 突出部、51 大径部、51A 第1転走面、51B 段差面、52 鍔部、52B 第1端面、52C 第2端面、53A 六角穴、54 ねじ部、55 端部、56 第1の穴、56A,57A,58A 開口、57 第2の穴、58 第3の穴、60 リング、63 第3端面、64 第4端面、71,72 スペース、Rz 最大高さ粗さ、α 領域。
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