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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】立壁付き洗面台
(51)【国際特許分類】
   A47K 1/00 20060101AFI20220225BHJP
   A47K 1/02 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A47K1/00 U
A47K1/02 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017189323
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019063053
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松崎 裕也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽介
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-190054(JP,A)
【文献】特開2010-075594(JP,A)
【文献】実開昭53-144732(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 1/00-1/02
E03C 1/00-1/10
A47B 67/02
A47B 77/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面が建築壁と隙間を空けて対向するよう立設される立壁と、前記立壁の前面に取付けられた吐水ユニット及び電動ユニットと、前記吐水ユニットから吐水された水を受けるボウルを有するカウンターと、を有する立壁付き洗面台において、
前記立壁には、前記立壁の前面と背面とをつなぐ貫通孔が形成されており、
前記吐水ユニットは、水を供給する給水配管を有し、前記給水配管は前記貫通孔の前面側から挿入されて前記立壁の背面側に配設され、
前記電動ユニットは、電力を供給する電気配線を有し、前記電気配線は前記貫通孔の前面側から挿入されて前記立壁の背面側に配設され、
前記給水配管を前記貫通孔に挿入する際に、前記給水配管の端部が前記建築壁に干渉することを抑制するよう前記立壁の背面側に取付けられた配管カバー部材と、を備え、
前記貫通孔は、給水配管用の第一の貫通孔と、電気配線用の第二の貫通孔とを有し、
前記配管カバー部材は、前記第一の貫通孔に挿入された前記給水配管が、前記配管カバー部材の前方を通過し、前記第二の貫通孔に挿入された前記電気配線が、前記配管カバー部材の側方及び/又は後方を通過するように構成され、可撓性を有し、前記電気配線を前記配管カバー部材の背面側から前記カウンターの下方へ配設するために、前記配管カバー部材の一部を弾性変形させることによって前方から前後方向に捲ることが可能となるよう構成されていることを特徴とする立壁付き洗面台。
【請求項2】
前記配管カバー部材は、下方側が前方へ向かって捲れるように構成した請求項1記載の立壁付き洗面台。
【請求項3】
前記配管カバー部材の背面は、前記配管カバー部材を前記建築壁に当接させた際に、左右方向に渡って前記建築壁に当接しないよう構成された凹み空間を設けた請求項2記載の立壁付き洗面台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、立壁付き洗面台に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面化粧台等、手洗いや水汲みに使用する水をカウンターに設けられたボウルで受ける洗面台では、そのボウルに近接して設けられる立壁に水栓装置を取り付ける構造が広く採用されている。
【0003】
立壁付き洗面台は、一般的に、その背面が建築壁に当接するよう設置される。したがって、ボウルとその奥側に立設する立壁とを有する洗面台を、その背面が建築壁に当接するように配置した場合、給水配管は、洗面台の立壁と建築壁との間に形成される隙間に配設されることになる。
【0004】
ところで、建築壁と立壁との距離を短くすれば洗面化粧台をすっきりした見栄えとする
ことができる。そのためには、上記隙間を小さく構成することが好ましい。しかしながら
、上記隙間を小さくしすぎると、洗面化粧台の背面を建築壁に当接するよう設置した後では、その小さな隙間で給水配管を取り回すのが困難となる。
【0005】
しかしながら、法規上、水道配管からの給水が可能となるよう給水配管の配設作業を行えるのは、所定の資格を有する者(水道工事有資格者)に限られる。洗面化粧台の商流が水道工事有資格者を経由しない場合もあり、洗面化粧台を設置する設置業者(水道工事無資格者)と、給水配管を配設する配設業者(水道工事有資格者)が異なる場合が多々ある。このような場合には、まず設置業者が洗面化粧台を現場に搬入し、一旦洗面化粧台を建築壁に当接させた上で固定する。その固定作業とは別のタイミングで、配設業者が洗面化粧台を建築壁に固定しているネジを取り外し、洗面化粧台を建築壁から引き離した上で給水配管の配設作業を行い、その後、洗面化粧台を建築壁に当接させて再固定しなければならない。
【0006】
上記のような煩雑な作業を回避するために、先に設置業者が建築壁に当接させて設置し
ておいた洗面化粧台を移動させることなく、前面側から立壁に形成された貫通孔に給水配管を挿入することで、給水配管を立壁と建築壁の間の隙間に配設し、給水配管をカウンターの下方へ通し、カウンターの下方で建築壁から延びる配管と接続する方法が考えられる。しかしながら、かかる方法では、建築壁と立壁との距離が短い場合には、挿入された給水配管が建築壁と干渉し、建築壁を削ってしまうというおそれがあった。
【0007】
例えば特開2015-54163号公報(以下、特許文献1)では、上記課題に対し、洗面台の立壁の背面に硬質の配管カバー部材を設ける構成が知られている。
【0008】
一方、近年、洗面台の立壁の前面側にボウルに向かって吐水を行うための吐水部材だけでなく、自動水栓や照明装置などの電力を必要とする部材(電動部材)を取りつけようとする動きがある。その際に、配管カバー部材の内部に電気配線を通してしまうと、電気配線と給水配管が絡まることや、電気配線の漏電の恐れがあり、電気配線は、配管カバー部材の背面を通すことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-54163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、洗面台の立壁の前面に電動部材を取付ける場合に、配設業者が洗面台の前面から施工のために電気配線を立壁の背面に設けられた配管カバー部材の背面と建築壁との間に通す。その際に、電気配線を、配管カバー部材を起点に左右方向に位置調整しようとすると、配管カバー部材の背面と建築壁との間の隙間が小さいため、電気配線の取り回しが困難になる課題がある。
【0011】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、電気配線を配管カバー部材の背面に通す場合でも、洗面台の前方から電気配線の取り回しが容易な立壁付き洗面台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために構成された本発明によれば、背面が建築壁と隙間を空けて対向するよう立設される立壁と、前記立壁の前面に取付けられた吐水ユニット及び電動ユニットと、前記吐水ユニットから吐水された水を受けるボウルを有するカウンターと、を有する立壁付き洗面台において、
前記立壁には、前記立壁の前面と背面とをつなぐ貫通孔が形成されており、
前記吐水ユニットは、水を供給する給水配管を有し、前記給水配管は前記貫通孔の前面側から挿入されて前記立壁の背面側に配設され、
前記電動ユニットは、電力を供給する電気配線を有し、前記電気配線は前記貫通孔の前面側から挿入されて前記立壁の背面側に配設され、
前記給水配管を前記貫通孔に挿入する際に、前記給水配管の端部が前記建築壁に干渉することを抑制するよう前記立壁の背面側に取付けられた配管カバー部材と、を備え、
前記貫通孔は、給水配管用の第一の貫通孔と、電気配線用の第二の貫通孔とを有し、
前記配管カバー部材は、前記第一の貫通孔に挿入された前記給水配管が、前記配管カバー部材の前方を通過し、前記第二の貫通孔に挿入された前記電気配線が、前記配管カバー部材の側方及び/又は後方を通過するように構成され、可撓性を有し、前記電気配線を前記配管カバー部材の背面側から前記カウンターの下方へ配設するために、前記配管カバー部材の一部を弾性変形させることによって前方から前後方向に捲ることが可能となるよう構成されていることを特徴としている。
さらに、この立壁付き洗面台によれば、配管カバー部材は、第一の貫通孔に挿入された給水配管が、配管カバー部材の前方を通過し、第二の貫通孔に挿入された電気配線が、配管カバー部材の側方及び/又は後方を通過するように構成しているため、立壁に形成されたそれぞれの貫通穴に給水配管と電気配線とを挿入する際にも、給水配管と電気配線とが配管カバー部材に対して異なる領域を通過するので、挿入時に給水配管と電気配線とが干渉する恐れがなく、より施工が容易となる。

【0013】
この立壁付き洗面台によれば、洗面台の前方から配管カバー部材を前後方向に捲ることができるので、例えば、配管設置業者が洗面台を背面が見えるように移動させることなく給水配管や電気配線を洗面台の前方から接続することができる。
また、配管カバー部材によって、給水配管を貫通孔に挿入する際に給水配管の端部により建築壁が傷つかないようにカバーしつつ、電気配線が漏電しないように給水配管と電気配線とが異なる領域を通過するように区分けすることができる。
したがって、給水配管と電気配線とが異なる領域を通過するようにしつつ、洗面台の前方から容易に電気配線の取り回しをすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、さらに、配管カバー部材は、下方側が前方へ向かって捲ることができるように構成している。
【0015】
この立壁付き洗面台によれば、配管カバー部材は前方に向かって捲ることができるため、配管カバー部材と建築壁との間に隙間を僅かしか確保できない状態であっても、電気配線を取りまわすために、配管カバー部材を捲ることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、さらに、前記配管カバー部材の背面は、前記配管カバー部材を前記建築壁に当接させた際に、左右方向に渡って前記建築壁に当接しないよう構成された凹み空間を設けている。
【0017】
この立壁付き洗面台によれば、配管カバー部材の背面は、前記配管カバー部材を前記建築壁に当接させた際に、左右方向に渡って前記建築壁に当接しないよう構成された凹み空間を設けているため、例えば設置業者が建築壁と立壁付き洗面台とが当接するように設置する際に、建築壁と配管カバー部材の背面との間に電気配線が挟まれることで、電気配線が破損することを抑制することができる。
また、例えば設置業者が建築壁と立壁付き洗面台とが当接するように設置し、配管カバー部材と建築壁との間に隙間がないような場合においても、電気配線を通すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の態様によれば、洗面台の前方から配管カバー部材を前後方向に捲ることができるので、例えば、配管設置業者が洗面台を背面が見えるように移動させることなく給水配管や電気配線を洗面台の前方から接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る洗面化粧台の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る洗面化粧台のカウンター及びキャビネットの断面図である。
図3】本発明の実施形態による洗面化粧台における水栓装置の吐水系統を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る洗面化粧台のカウンター及びキャビネットの背面斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る配管カバー部材の下方領域を洗面化粧台の前方から見た図である。
図6】本発明の実施形態に係る洗面化粧台の吐水ユニット挿入中の断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る洗面化粧台の水栓装置挿入後の背面図である。
図8】本発明の実施形態に係る洗面化粧台の配管カバー部材の背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0023】
まず、図1乃至図5を参照して、実施形態にかかる洗面化粧台の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台の斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台のカウンター及びキャビネットの断面図であり、図3は、本発明の実施形態による洗面化粧台における水栓装置の吐水系統を示すブロック図であり、図4は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台のカウンター及びキャビネットの背面斜視図であり、図5は、本発明の実施形態に係る配管カバー部材を洗面化粧台の前方から見た図である。
【0024】
図1に示すように、洗面化粧台1は、洗面室床Fに載置されるとともに、その背面を洗
面室壁Wに当接させて設置されている。洗面化粧台1は、カウンター10と、化粧鏡ユニット20と、キャビネット30と、水栓装置40を備えている。
【0025】
カウンター10は、その背面が洗面室壁Wに直接又は固定のための金具等やキャビネッ
ト30を介して間接的に取り付けられており、略垂直な前面を有する立壁11と、その立
壁11の前面側に設けられるボウル12を有する。立壁11とボウル12は、樹脂材料で一体的に形成されている。ボウル12は椀状に形成され、その内部で水を受けるとともに、その水を貯留することも可能である。図2に示すように、ボウル12の下面には、受けた水を下方に排出するための排水口13が形成されており、排出された水は、この排水口13に接続される排水管(図示せず)によって下水管側に導かれる。
【0026】
化粧鏡ユニット20は箱状に形成され、内部に歯ブラシ等を収納可能である。図1に示
すように、化粧鏡ユニット20は立壁11上に配置されるとともに、背面が洗面室壁Wに
対し直接又は間接的に取り付けられている。また、その前面には、使用者の姿を映す化粧
鏡21が取り付けられており、その上部には、前方に投光する照明22を備えている。
なお、化粧鏡ユニット20の有無は、どちらでもよい。
【0027】
キャビネット30は、カウンター10の下方に配置されており、左右一対の側板31L、31Rと、前面を構成する扉32を備えている。また、図2に示すように、側板31L、31Rの下部の間に、それぞれを連結するように底板33が設けられる。また、図2及び図3に示すように、側板31L、31Rの洗面室壁W側の側部の間には、それぞれを連結するように後横桟34が設けられている。これら側板31L、31R、扉32、底板33、後横桟34により、キャビネット30は内部に収納空間35を形成する箱状を呈している。洗面化粧台1の使用者は、扉32を開閉することで、前方から収納空間35にアプローチし、収納や取り出しを行うことができる。さらに、一対の側板31L、31Rの間であって、後横桟34の下方且つ前方には、後横桟34よりも厚みが小さい背板36が設けられており、使用者が扉32を開けた際に、収納空間35を介して洗面室壁Wが見えないよう覆っている。
【0028】
図2及び図3に示すように、水栓装置40は立壁11の前面に取付けられた棚形状のケーシング41と、このケーシング41の内部に収納され、一部のコード・配管類が立壁11の背面に配設されている吐水ユニット410及び電動ユニット420と、を有している。
なお、吐水ユニット410は、ケーシング41の外部に設けられていてもよい。
【0029】
図3に示すように、吐水ユニット410において給水系統には、上流側から順に、給水源から給水配管411へ供給される水を遮断するための止水栓413と、吐水部418からの水の吐出、停止を切り換える水用電磁弁415と、水を吐水部418へ供給する給水配管411と、が設けられている。同様に、給湯系統には、上流側から順に、給水源である湯沸かし器(図示せず)等からの湯を遮断するための止水栓414と、吐水部418からの湯の吐出、停止を切り換える湯用電磁弁416と、湯を吐水部418へ供給する給湯配管412と、が設けられている。
なお、図3において実線は湯水の通り道を表しており、破線は電気又は電気信号の通り道を表している。
【0030】
これらの給水系統及び給湯系統を通って夫々供給された水及び湯は、流調・温調バルブ
419を通過し、吐水部418からボウル12へ向かって吐出される。
上記のように、流調・温調バルブ419は、操作ハンドル41aに連結された所謂「シングルレバー水栓」であり、操作ハンドル41aの操作により、給水系統及び給湯系統を通って供給された湯及び水を所定の割合で混合させると共に、混合された湯水の流出流量を調整することができる。
【0031】
電動ユニット420は、人体検知センサ422と、コントローラ424と、を有している。
人体検知センサ422は、赤外線式のセンサであり、吐水部418に接近した手指等により反射された赤外線を検出して、手指等の接近を検知するように構成されている。接近センサとしては、赤外線式の他、マイクロ波式等、任意の非接触タイプのセンサを使用することができる。
【0032】
水用電磁弁415及び湯用電磁弁416は、制御装置であるコントローラ424によって、開弁、閉弁が制御されるように構成されている。換言すると、コントローラ424は、人体検知センサ422が検知した被検知物の有無に基づいて、水用電磁弁415及び湯用電磁弁416の制御を行う。
【0033】
本実施形態においては、コントローラ424は、マイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路、電磁弁の駆動回路、及びこれらを作動させるソフトウェア等(以上、図示せず)により構成されている。また、コントローラ424は、収納空間35に収納されたAC電源(図示せず)から電気配線424aを介して供給される電力により作動される。
【0034】
図4に示すように、カウンター10の立壁11の背面には、左右方向に延びる長方形状の金属板110が張り付けられている。
この金属板110には、ケーシング41の内部に収納されたコントローラ424から立壁11の背面に伸びる電気配線424aが通過する立壁11の前面まで貫通した貫通孔110aと、ケーシング41の内部に収納された吐水部418から立壁11の背面へ伸びる給水配管411及び給湯配管412が通過する立壁11の前面まで貫通した貫通孔110bが設けられている。
【0035】
さらに、カウンター10の立壁11の背面側には、給水配管411及び給湯配管412を覆うように配管カバー部材50と、が取り付けられている。配管カバー部材50についての詳細な説明は後述する。また、電気配線424aは、配管カバー部材50に覆われておらず、配管カバー部材50の背面側を通過する。
【0036】
次に、図4乃至5に基づいて、配管カバー部材50の詳細構造について説明する。
【0037】
図4及び図5に示すように、配管カバー部材50は、配管カバー部材50の上下に位置する個所が、それぞれ洗面洗面台1に取付けられている。
具体的には、配管カバー部材50の上方領域には穴部(図示せず)が設けられており、金属板110に設けられたL字状の爪部(図示せず)に穴部を嵌め込むことで、配管カバー部材50の上方領域は金属板110に取り付けられている(図4)。また、配管カバー部材50の下方領域には、2か所のねじ用の穴が設けられており、配管カバー部材50の下方領域は、ねじ60にて後横桟34の前面に仮止めされている(図5)。
上記のように洗面化粧台1に配管カバー部材50を固定すると、配管カバー部材50は、上方領域から下方領域へ向かうにつれて、前方側へ傾斜する形となる(図2)。
なお、配管カバー部材50の下方領域は、背板36の前面に仮止めしてもよい。
【0038】
また、配管カバー部材50は、1枚のポリプロピレン製のシートを折り込み線に沿って折り曲げること及び、シートの角部をシートに設けられた穴に嵌め込むことにより、組み立てられており、カバー部材として機能している。
そのため、射出成型などが不要であるとともに、可撓性を有し弾性変形する。
なお、配管カバー部材50は、防水機能を備え且つ可撓性を有した素材であれば他の素材であっても代用可能である。
【0039】
次に、図2及び図4乃至図8に基づいて、本発明の実施形態における洗面化粧台1の施工工程について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台の吐水ユニット挿入中の断面図であり、図7は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台の水栓装置挿入後の背面図であり、図8は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台の配管カバー部材の背面斜視図である。
【0040】
<第1の工程>
まず、図4乃至図5に示すように、カウンター10の立壁11の背面側に、配管カバー部材50を取り付ける。具体的には、配管カバー部材50の上方の穴部を金属板110の爪部に嵌め込み、配管カバー部材50の下方を後横桟34の前面にねじで仮固定する。
これらの取り付けは、洗面化粧台1の工場出荷時から予め取り付けておいてもよい。
【0041】
<第2の工程>
次に、立壁11に配管ガイド部材50が取り付けられた状態の洗面化粧台1を移動させ、その背面を洗面室壁Wに当接させて設置する。
その際、配管カバー部材50の背面側上方領域の一部は、洗面室壁Wの前面に当接する(図2)。
【0042】
<第3の工程>
次に、図6に示すように、吐水ユニット410の給水配管411、給湯配管412、をそれらの端部に設けられた袋ナット411a、412aから押し込むようにして貫通孔110bに挿入する。そして、給水配管411、給湯配管412、の端部が収納空間35に届くように矢印Iの向きに押し込んでいく。
同様に、ケーシング41から伸びる電気配線424aも貫通孔110aに挿入し、立壁11の前面側から背面側に通す。
【0043】
この第3の工程により、給水配管411及び給湯配管412を貫通孔110bに挿入すると、給水配管411及び給湯配管412は配管カバー部材50に対しては前面側のみを通過する。
同様に、電気配線424aを貫通孔110aに挿入すると、電気配線424aは下方に垂れ、配管カバー部材50に対しては前面側を通過することなく背面右方側を通過する(図7)。
なお、この工程において電気配線424aは、配管カバー部材50に対して側方を通過してもよい。
【0044】
<第4の工程>
次に、図8に示すように、配管カバー部材50の下方を仮止めしたねじ60から外し、配管カバー部材50の下方側を矢印IIの方向(前方)へ弾性変形させることより捲る。
そして、配管カバー部材50背面側に位置していた電気配線424aを収納空間35へ通す。具体的には、配管カバー部材50の背面右方側において下方に向かって垂れている電気配線424aを後横桟34の上面に乗せる形で、配管カバー部材50の右方側から左方側へ通し、配管カバー部材50の左側面を通過させ、収納空間35へ導く。
その後、配管カバー部材50の下方をねじ60により固定する。
【0045】
<第5の工程>
次に、キャビネット30の収納空間35に垂下している給水配管411と洗面室壁Wから伸びる給水管(図示せず)と接続する。また、給湯配管412と給湯機(図示せず)を接続する。同様に、キャビネット30の収納空間35に垂下している電気配線424aとAC電源70と接続する。
【0046】
この時、図2に示すように、配管カバー部材50の背面に位置する電気配線424aは後横桟34の上面と配管カバー部材50の背面と洗面室壁Wの前面とに囲まれた凹み空間Sに位置することになる。
凹み空間Sは、電気配線424aを配管カバー部材50の左右方向に通せるように、配管カバー部材50の背面側下方領域の左右方向全域に渡って設けられている。換言すると、配管カバー部材50の下方側領域は、左右方向全域に渡って洗面室壁Wに当接しない。
【0047】
以上、説明したように、本実施形態に係る洗面化粧台1によれば、洗面化粧台1の前方から配管カバー部材50を前後方向に捲ることができるので、例えば、配管設置業者が洗面化粧台1を背面が見えるように移動させることなく給水配管411及び給湯配管412や電気配線424aを洗面化粧台1の前方から接続することができる。
また、配管カバー部材50によって、給水配管411及び給湯配管412を貫通孔110bに挿入する際に給水配管411及び/又は給湯配管412の端部により洗面室壁Wが傷つかないようにカバーしつつ、電気配線424aが漏電しないように給水配管411及び給湯配管412と、電気配線424aとが異なる領域を通過するように区分けすることができる。
したがって、給水配管411及び給湯配管412と、電気配線424aとが異なる領域を通過するようにしつつ、洗面化粧台1の前方から容易に電気配線424aの取り回しをすることができる。
【0048】
また、洗面化粧台1では、配管カバー部材50は前方に向かって捲ることができるため、配管カバー部材50と洗面室壁Wとの間に隙間を僅かしか確保できない状態であっても、電気配線424aを取りまわすために、配管カバー部材50を捲ることができる。
【0049】
さらに、洗面化粧台1では、配管カバー部材50の背面は、配管カバー部材50を洗面室壁Wに当接させた際に、左右方向に渡って洗面室壁Wに当接しないよう構成された凹み空間Sを設けているため、例えば設置業者が洗面室壁Wと洗面化粧台1とが当接するように設置する際に、洗面室壁Wの前面と配管カバー部材50の背面との間に電気配線424aが挟まれることで、電気配線424aが破損することを抑制することができる。
また、例えば設置業者が洗面室壁Wと洗面化粧台1とが当接するように設置し、配管カバー部材50と洗面室壁Wとの間に隙間がないような場合においても、電気配線424aを通すことができる
【0050】
また、洗面化粧台1では、配管カバー部材50は、第一の貫通孔110bに挿入された給水配管411及び給湯配管412が、配管カバー部材50の前方を通過し、第二の貫通孔110aに挿入された電気配線424aが、配管カバー部材50の側方及び/又は後方を通過するように構成しているため、立壁11に形成されたそれぞれの貫通穴に給水配管411及び給湯配管412と電気配線424aを挿入する際にも、給水配管411及び給湯配管412と電気配線424aが配管カバー部材50に対して異なる領域を通過するので、挿入時に給水配管411及び給湯配管412と電気配線424aが干渉する恐れがなく、より施工が容易となる。
【0051】
以上、本発明に係る洗面化粧台1の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の具体例に限定されるものではない。
本実施例においては、吐水ユニット410及び電動ユニット420は、水栓装置40として、一体として構成されているが、例えば、電動ユニット420は照明装置であり、水栓装置40とは別体で構成されていてもよい。

また、本実施例においては、貫通孔は、給水配管411及び給湯配管412と電気配線424aと用に2っ設けられているが、貫通孔を共通化し第4の工程により、給水配管411及び給湯配管412と電気配線424aとが配管カバー部材50に対して異なる領域を通過するように調整してもよい。
【0052】
また、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えて
いる限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素および
その配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適
宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能
な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含
む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
1 洗面化粧台
10 カウンター
11 立壁
110 金属板
110a 貫通孔(第二の貫通孔)
110b 貫通孔(第一の貫通孔)
12 ボウル
13 排水口
20 化粧鏡ユニット
21 化粧鏡
22 照明
30 キャビネット
31R 右側板
31L 左側板
32 扉
33 底板
34 後横桟
35 収納空間
36 背板
40 水栓装置
41 ケーシング
41a 操作ハンドル
410 吐水ユニット
411 給水配管
412 給湯配管
411a、412a 袋ナット
413、414 止水栓
415 水用電磁弁
416 湯用電磁弁
418 吐水部
420 電動ユニット
422 人体検知センサ
424 コントローラ
424a 電気配線
50 配管カバー部材
60 ねじ
70 AC電源
W 洗面室壁
F 洗面室床
S 凹み空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8