(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】タンク装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/26 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
E03D1/26
(21)【出願番号】P 2017218350
(22)【出願日】2017-11-13
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】塩原 英司
(72)【発明者】
【氏名】原 弘之
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-189275(JP,U)
【文献】特開平07-279212(JP,A)
【文献】特開2003-166272(JP,A)
【文献】実開昭55-080279(JP,U)
【文献】特開2003-027554(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02876221(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貯留した洗浄水を便器本体へ供給することによって便器洗浄を行なうタンク装置において、
外郭を形成するタンク本体と、
上記タンク本体内に取り付けられて内部に洗浄水を貯留する樹脂タンクと、
を備えており、
上記樹脂タンクは、上記タンク本体との間に所定間隔の隙間を有する側面部と、上記側面部の一部に設けられ、上記側面部
の一部から上記タンク本体側に向けて突出する突出部と、を有するタンク装置。
【請求項2】
上記突出部は、上記樹脂タンクの角部に設けられる請求項1に記載のタンク装置。
【請求項3】
上記突出部は、上記側面部から上記タンク本体側に向けて突出する突出幅を調整可能である請求項1又は2に記載のタンク装置。
【請求項4】
上記突出部は、上記樹脂タンクとは別体であり、上記樹脂タンクに対して着脱可能である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク装置に係り、特に、便器に供給する洗浄水を貯留するタンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器本体へ供給するための洗浄水を貯留するタンク装置として、外郭を形成する陶器製のタンク本体と、このタンク本体の中に固定されて内部に洗浄水を貯留する樹脂製の樹脂タンクと、を有するタンク装置が知られている(例えば、特許文献1)。このようにタンク本体を陶器で形成することによって、意匠性を向上させることができる。
【0003】
上述したようなタンク装置においては、特に陶器製のタンク本体は製造誤差などによって寸法のバラつきが生じやすいため、樹脂タンクはタンク本体との間に一定間隔の隙間ができるように設計される必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、タンク本体と樹脂タンクとの間に隙間を設けると、タンク装置を組み立てるときやタンク本体内に樹脂タンクを組み立てた状態で輸送するときなどに、タンク装置に衝撃が加わることにより、タンク本体内で樹脂タンクが大きく振動してしまうことがある。
【0006】
これによって、樹脂タンクの固定部位に応力がかかってしまい、樹脂タンクの固定が外れたり、固定部位が破損したりしてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、タンク本体の寸法バラつきに樹脂タンクを対応させつつ、タンク装置に衝撃が加わった場合において、樹脂タンクがタンク本体内で大きく振動することを抑制することができるタンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るタンク装置は、内部に貯留した洗浄水を便器本体へ供給することによって便器洗浄を行なうタンク装置において、外郭を形成するタンク本体と、上記タンク本体内に取り付けられて内部に洗浄水を貯留する樹脂タンクと、を備えており、上記樹脂タンクは、上記タンク本体との間に所定間隔の隙間を有する側面部と、上記側面部の一部に設けられ、上記側面部の一部から上記タンク本体側に向けて突出する突出部と、を有する。
【0009】
この構成によれば、樹脂タンクとタンク本体との隙間を小さくすることができるため、タンク装置に衝撃が加わった場合においても、樹脂タンクがタンク本体内で大きく振動することを抑制することができる。また、樹脂タンクの全周ではなく一部に突出部を設けているため、製造誤差などによってタンク本体に寸法バラつきが生じてしまったとしても、樹脂タンクの突出部が設けられていない領域が変形することで寸法のバラつきを吸収することができる。これにより、樹脂タンクをタンク本体の寸法バラつきに対応させることができる。
【0010】
本発明の一態様に係るタンク装置において、好ましくは、上記突出部は、上記樹脂タンクの角部に設けられる。
【0011】
この構成によれば、樹脂タンクをタンク本体の寸法バラつきに対応させつつ、タンク装置に衝撃が加わった場合においても、樹脂タンクがタンク本体内で大きく振動することを抑制することができる。
【0012】
本発明の一態様に係るタンク装置において、好ましくは、上記突出部は、上記側面部から上記タンク本体側に向けて突出する突出幅を調整可能である。
【0013】
この構成によれば、突出部の突出幅を状況に応じて調整できるため、樹脂タンクを様々なサイズのタンク本体内に取り付け可能となる。
【0014】
本発明の一態様に係るタンク装置において、好ましくは、上記突出部は、上記樹脂タンクとは別体であり、上記樹脂タンクに対して着脱可能である。
【0015】
この構成によれば、タンク本体のサイズに応じた突出部を選択することができるため、樹脂タンクを様々なサイズのタンク本体内に取り付け可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタンク装置によれば、タンク本体の寸法バラつきに樹脂タンクを対応させつつ、タンク装置に衝撃が加わった場合において、樹脂タンクがタンク本体内で大きく振動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態によるタンク装置が適用された水洗大便器を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるタンク装置の概略構造を示す正面断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による樹脂タンクの上方斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態による樹脂タンクがタンク本体内に取り付けられた状態での概略を示す上面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0019】
<水洗大便器の構成>
まず、
図1により、本発明の一実施形態によるタンク装置が適用される水洗大便器について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるタンク装置が適用された水洗大便器を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、符号1は、洗い落とし式の水洗大便器を示し、この便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2にはボウル部4と、導水路6と、ボウル部4の下部と連通するトラップ管路8がそれぞれ形成されている。便器本体2のボウル部4の上縁部には、内側にオーバーハングしたリム10と、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口12が形成され、この第1吐水口12から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部を洗浄するようになっている。
【0021】
ボウル部4の下方には、一点鎖線で貯留面W0が示された溜水部14が形成されている。この溜水部14の下方には、排水トラップ管路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延びている。この上昇路8bには下降路8cが連続し、下降路8cの下端は排水ソケット(図示せず)を介して床下の排出管(図示せず)に接続されている。また、ボウル部4の貯留面W0の上方位置には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第2吐水口16が形成され、この第2吐水口16から吐水される洗浄水が溜水部14の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるようになっている。
【0022】
便器本体2の導水路6の上方には、便器本体2に供給する洗浄水を貯水するタンク装置18が設けられている。
なお、本実施形態では、タンク装置18が適用される水洗大便器1として、ボウル部8内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、洗い落し式の水洗大便器1の例について説明するが、このような洗い落し式の水洗大便器に限定されず、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式の水洗大便器等の他のタイプの水洗大便器にも適用可能である。
【0023】
<タンク装置の構成>
つぎに、
図2により、タンク装置18の概略構造について説明する。
図2は、本発明の一実施形態によるタンク装置の概略構造を示す正面断面図である。
【0024】
図2に示すように、タンク装置18は、外郭を形成する陶器製のタンク本体20と、このタンク本体20内に取り付けられて内部に洗浄水を貯留する樹脂製の樹脂タンク22と、タンク本体20に載せられる蓋体24と、を備えている。
また、樹脂タンク22の底面には、上述した便器本体の導水路6に連通する排水口22
aが形成されている。
【0025】
つぎに、タンク装置18は、外部の水道管などの給水源(図示せず)から供給される洗浄水を樹脂タンク22内に給水する給水装置26と、排水口22aを開閉する排水弁装置28と、この排水弁装置28を操作する操作装置30とを備えている。
給水装置26は、排水弁装置28による排水開始の所定時間後、給水を開始するようになっており、樹脂タンク22の満水時の止水水位は、
図2に示す位置(WL0)で一定になるようにしている。
【0026】
また、給水装置26は、従来のものと同様のものであり、外部の水道管などの給水源(図示せず)に接続される給水管32と、給水装置用のフロート34と、給水管32と連通して貯水タンク22に洗浄水を吐水する吐水管36と、フロート34にレバー38を介して連結される給水バルブ40とを備えている。
さらに、給水装置26は、蓋体24の上面に設けられた手洗いカラン44に給水する手洗い給水管42を備えており、便器への洗浄水の供給開始時(排水開始時)に、手洗いカラン44は、蓋体24の上面に形成された手洗い鉢24aに手洗い用の水を吐水することができるようになっている。また、手洗いカラン44から吐水された手洗い鉢24aの水は、手洗い鉢24aに形成された吐水口(流入口)24bにより、樹脂タンク22に流入するようになっている。
さらに、蓋体24の下方には、吐水口24bから流入する水を、排水弁装置28の制御筒46の外方に導く導水部材48が設けられている。
【0027】
タンク装置18は、操作装置30及びこの操作装置30の操作により作動される排水弁装置28を備えている。
【0028】
操作装置30は、操作レバー50と、モータ52と、このモータ52に接続される操作ボタン54(
図2にのみ図示)と、を備えている。
また、操作ボタン54は、後述する大洗浄用、小洗浄用、エコ小洗浄用の3つの操作ボタンを備えている。
【0029】
操作レバー50は、一方(本実施形態では、手前側)に(90度)回動させると、後述する大洗浄が開始され、他方(本実施形態では、奥側)に(90度)回動させると、後述する小洗浄が開始されるように、排水弁装置28を作動させる手動式の操作レバーである。
また、モータ52は、大洗浄のボタンが押されると、操作レバー50と同一の一方(手前側)の方向に回転し、小洗浄のボタンが押されると、操作レバー50と同一の他方(奥側)の方向に回転して、それぞれ、大洗浄或いは小洗浄が開始されるように排水弁装置28を作動させるようになっている。
このように、本実施形態では、使用者は、大洗浄及び小洗浄については、操作レバー50を操作しても良いし、操作ボタン54を押しても良い。エコ小洗浄については、モータ52によってのみ、即ち、使用者が操作ボタンを押すことによって、排水弁装置28が作動される。
【0030】
これらの操作レバー50及びモータ52には、ワイヤ部材やユニバーサルジョイントなどにより構成される回転伝達部材56が連結されている。この回転伝達部材56の他端側には、その回転に伴って、回転伝達部材56を中心に揺動する第1の引き上げ部材58及び第2の引き上げ部材60が取り付けられ、これらの第1の引き上げ部材58及び第2の引き上げ部材60の先端部には、それぞれ、第1玉鎖62の上端部分及び第2玉鎖64の上端部分が取り付けられている。
【0031】
これらの第1の引き上げ部材58及び第2の引き上げ部材60は、回転伝達部材56を一方側(大洗浄時)に回転させると、第1の引き上げ部材58のみが、その一方側に揺動して第1玉鎖62のみを引き上げ、一方、回転伝達部材56を他方側(小洗浄時、エコ小洗浄時)に回転させると、第1の引き上げ部材58及び第2の引き上げ部材60の両方が、その他方側に揺動して第1玉鎖62及び第2玉鎖64の両方を引き上げるような機械的な機構とされている。
【0032】
<樹脂タンクの構成>
つぎに、
図3,4により、樹脂タンク22の概略構造について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による樹脂タンクの上方斜視図である。
図4は、本発明の一実施形態による樹脂タンクがタンク本体内に取り付けられた状態での概略を示す上面視図である。
【0033】
図3に示すように、樹脂タンク22は、側面部22bの一部に設けられ、側面部22bからタンク本体20側に向けて突出する突出部22cを有する。この突出部22cは、樹脂タンク22に一体的に設けられ、樹脂タンク22の上端の角部である四隅にそれぞれ設けられている。
【0034】
図4に示すように、樹脂タンク22がタンク本体20内に取り付けられた状態において、樹脂タンク22の突出部22cが設けられていない領域A1においては、樹脂タンク22の側面部22bとタンク本体20との間に距離Xの隙間を有する。また、樹脂タンク22の突出部22cが設けられている領域A2においては、樹脂タンク22の突出部22cとタンク本体20との間に距離Yの隙間を有する。この距離Yは距離Xよりも小さい。
【0035】
<作用効果>
つぎに、上述した本発明の一実施形態によるタンク装置18における作用効果について説明する。
【0036】
まず、本発明の一実施形態によるタンク装置18によれば、樹脂タンク22は、側面部22bの一部に設けられ、側面部22bからタンク本体20側に向けて突出する突出部22cを有する。これにより、樹脂タンク22とタンク本体20との隙間を小さくすることができるため、タンク装置18に衝撃が加わった場合においても、樹脂タンク22がタンク本体20内で大きく振動することを抑制することができる。また、樹脂タンク22の全周ではなく一部に突出部22cを設けているため、製造誤差などによってタンク本体20に寸法バラつきが生じてしまったとしても、樹脂タンク22の突出部22cが設けられていない領域A1が変形することで寸法のバラつきを吸収することができる。これにより、樹脂タンク22をタンク本体20の寸法バラつきに対応させることができる。
【0037】
また、本発明の一実施形態によるタンク装置18によれば、突出部22cは、樹脂タンク22の角部に設けられている。これにより、樹脂タンク22をタンク本体20の寸法バラつきに対応させつつ、タンク装置18に衝撃が加わった場合においても、樹脂タンク22がタンク本体20内で大きく振動することを抑制することができる。
【0038】
以上、本願の開示する技術の実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものではない。
【0039】
例えば、側面部22bからタンク本体20側に向けて突出する突出部22cの突出幅が調整可能となるように、突出部22cを切断可能にしたり、突出部22cを折りたたみ可能にしたりしてもよい。これにより、突出部22cの突出幅を状況に応じて調整できるため、樹脂タンク22を様々なサイズのタンク本体20内に取り付け可能となる。
【0040】
例えば、上記実施形態においては、樹脂タンク22と一体的に突出部22cを設けることとしたが、本発明はこれに限らず、突出部22cを樹脂タンク22と別体とし、樹脂タンク22に対して着脱可能となるようにしてもよい。これにより、タンク本体20のサイズに応じた突出部22cを選択することができるため、樹脂タンク22を様々なサイズのタンク本体20内に取り付け可能となる。
【0041】
前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0042】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 ボウル部
6 導水路
8 トラップ管路
8a トラップ管路の入口
8b 上昇路
8c 下降路
10 リム
12 第1吐水口
14 溜水部
16 第2吐水口
18 タンク装置
20 タンク本体
22 樹脂タンク
22a 排水口
22b 側面部
22c 突出部
24 蓋体
24a 手洗い鉢
24b 吐水口
26 給水装置
28 排水弁装置
30 操作装置
32 給水管
34 給水装置用フロート
36 吐水管
38 レバー
40 給水バルブ
42 手洗いカラン
44 手洗い給水管
46 制御筒
48 導水部材
50 操作レバー
52 モータ
54 操作ボタン
56 回転伝達部材
58 第1の引き上げ部材
60 第2の引き上げ部材
62 第1玉鎖
64 第2玉鎖
X 距離
Y 距離
A1 領域
A2 領域