(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】エキシマランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 65/00 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
H01J65/00 B
(21)【出願番号】P 2018129309
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】森 和之
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-347025(JP,A)
【文献】特開2003-317665(JP,A)
【文献】特開2010-009939(JP,A)
【文献】特開2012-164531(JP,A)
【文献】特開2011-023156(JP,A)
【文献】特開2015-197948(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145253(WO,A1)
【文献】特開2014-195758(JP,A)
【文献】特開2012-109389(JP,A)
【文献】特開2003-317666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の平面部と一対の側面部とからなる、偏平な略矩形断面形状の放電容器の前記平面部のそれぞれの外表面に一対の外部電極が配置されてなるエキシマランプにおいて、
前記一対の外部電極のうちの少なくとも一方の電極は、前記放電容器内で生成された紫外線を透過させるための光透過部を有し、
前記外部電極の端部に、前記平面部間の距離よりも小さくされた領域にまで延在する補助電極を設け、
前記外部電極に給電するリード線が、前記平面部間の距離よりも小さくされた領域において前記補助電極に接続されていることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記補助電極は、前記外部電極より小幅であることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記放電容器が偏平な略矩形断面形状のガラス管と、その端部近傍に溶着された封止部材とからなり、前記ガラス管の端部は前記封止部材よりも外側に突出して裾部を形成し、
前記裾部の平面部に前記外部電極の対向する方向に凹部を形成し、前記補助電極は当該凹部にまで延在し、当該凹部において前記リード線が前記補助電極に接続されていることを特徴とする請求項
1または2に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記放電容器の端部にピンチシール部を形成して当該放電容器を密閉し、前記補助電極は前記ピンチシール部にまで延在し、当該ピンチシール部において前記リード線が前記補助電極に接続されていることを特徴とする請求項
1または2に記載のエキシマランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扁平な矩形断面形状を有する放電容器を備えたエキシマランプに関し、特に、放電容器の外面に電極が設けられたエキシマランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプは、紫外線、特に波長の短い紫外線を放射することができるため、半導体製造工程や液晶製造工程、オゾン発生装置などに利用されている。
特開2013-098015号公報(特許文献1)にはそのようなエキシマランプの例が開示されている。
図5にかかるエキシマランプ21が示されており、その放電容器22は、全体が偏平な矩形断面形状をなし、該放電容器22の平面部23の外表面上には外部電極24が対向して設けられていて、これら外部電極24は不図示の高周波電源に接続されている。
【0003】
この放電容器22は、例えば波長200nm以下の紫外線の透過性に優れた材料、例えば、合成石英ガラスなどのシリカガラス、サファイアガラスなどが用いられる。
そして、前記放電容器22の内部には、使用される光の波長により、発光ガスとして、キセノンガス、クリプトンガスなどの希ガス、または、これらと塩素などのハロゲンガスとの混合ガスが封入される。
また、放電容器22の両端には、エキシマランプ21を光照射装置に固定するためのランプベース30、30が取り付けられている。
【0004】
かかるエキシマランプ21の構造は、例えば、特開2013-149546号公報(特許文献2)に示されていて、その具体的な構造が
図6に示されている。
放電容器22は、偏平な矩形断面形状を有するガラス管221と、その両端に挿入・溶着された封止部材222とからなり、封止部材222には排気管223が設けられている。このとき、封止部材222は、ガラス管221の端部から若干量だけ内部に挿入されて溶着されていて、ガラス管221の端部は封止部材222よりも外側に突出する裾部224を形成する。
【0005】
そして、この特許文献2の従来技術においては、外部電極24の端部にはベタ状電極25が設けられていて、このベタ状電極25に、外部電極24に給電するリード線26がガラスハンダ27などにより溶接接続されている。
そして、
図6(B)に示すように、放電容器22の端部を覆うようにランプベース30が取り付けられている。
【0006】
ところで、このようなエキシマランプは、先述のように種々の用途に用いられるが、オゾン発生装置など、流れる気体を処理するエキシマランプにおいては、ランプを被処理気体の流れ方向に沿うようにその長手方向を配置させて、真空紫外光を気体に照射することが行われている。
このような場合、
図7に示すように、被処理気体がランプベース30の後方(後流側)において渦を発生してしまい、気体に乱流が生じ、ランプ21の放電容器22に沿った円滑な流れができずに、効率的な処理ができないという問題がある。
図6に示すように、給電用のリード線26が外部電極24(のベタ状電極25)上にハンダ27により溶接接続されるので、放電容器22の厚さ方向(外部電極間の厚さ方向)で外表面から溶接部(ハンダ)27が突出することで、ランプベース30の厚さが放電容器22の厚さよりもかなり大きくなることで、より一層の不具合が生じている。
【0007】
また、エキシマランプからの真空紫外光は気体中での飛程が短く、周囲の気体に吸収され減衰する。このようなエキシマランプを気体処理以外の被処理物に直接真空紫外光を照射する光源として利用する場合にあっても、ランプベースがランプの厚さよりも相当に厚くなるため、エキシマランプを被処理物に近接配置することができず、効果的な紫外光の照射ができないという不具合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-098015号公報
【文献】特開2013-149546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、一対の平面部と一対の側面部とからなる、偏平な略矩形断面形状の放電容器の前記平面部のそれぞれの外表面に一対の外部電極が配置されてなるエキシマランプにおいて、放電容器の端部に設けられるランプベースの厚さを極力小さなものとして、被処理物に対する紫外光の効果的な照射を可能とし、更には、気体をランプの長手方向に流通させて処理する装置に好適なエキシマランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明では、前記外部電極の端部に、前記平面部間の距離よりも小さくされた領域にまで延在する補助電極を設け、前記外部電極に給電するリード線が、前記平面部間の距離よりも小さくされた領域において前記補助電極に接続されていることを特徴とする。
また、前記放電容器が偏平な略矩形断面形状のガラス管と、その端部近傍に溶着された封止部材とからなり、前記ガラス管の端部は前記封止部材よりも外側に突出して裾部を形成し、前記裾部の平面部に前記外部電極の対向する方向に凹部を形成し、前記補助電極は当該凹部にまで延在し、当該凹部において前記リード線が前記補助電極に接続されていることを特徴とする。
また、前記放電容器の端部にピンチシール部を形成して当該放電容器を密閉し、前記補助電極は前記ピンチシール部にまで延在し、当該ピンチシール部において前記リード線が前記補助電極に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外部電極の端部に補助電極を設け、前記外部電極間の距離よりも小さくされた領域において、前記外部電極に給電するリード線が前記補助電極に接続されているので、リード線およびその溶接部が前記平面部よりも厚さ方向で大きく突出することがなく、これをカバーするランプベースも放電容器の厚さより突出することを極力回避できるので、被処理気体の流れを邪魔することなく、円滑にランプの放電容器に沿って流せるようにでき、効果的な処理が可能となる。
また、気体以外の被処理物に直接紫外光を照射する場合にあっても、ランプと被処理物を近接配置でき、空気による真空紫外光の減衰を抑制して効果的な処理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施例の上面図(A)、側面図(B)、斜視図(C)。
【
図2】リード線を接続した状態の斜視部(A)と一部側断面図(B)。
【
図4】リード線を接続した状態の斜視部(A)と一部側断面図(B)。
【
図6】従来例のリード線を接続した状態の斜視図(A)と部分断面図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、本発明のエキシマランプ1が示されていて、
図2には、リード線が接続された状態が示されている。なお、
図1、2においては、煩雑さを避ける意味で排気管(
図6参照)は省略されている。
エキシマランプ1は、一対の矩形状の平面部3、3と、その長手方向の側縁部に沿った一対の側面部4、4とからなる、偏平な略矩形断面形状の放電容器2を有する。
図1(B)に示されるように、この放電容器2の平面部3、3の外表面上には一対の外部電極5、5が設けられている。そして放電容器2の内部の放電空間には、放電ガスとして希ガスと塩素ガスが封入されている。希ガスは、クリプトン、キセノンなどから選択される。
【0014】
前記外部電極5、5は、放電容器2の平面部3、3の外表面上に、例えば金などの金属ペーストによる塗布または転写紙を貼り付けることで形成することができる。かかる外部電極5は、少なくとも一方の電極が光透過部を具備するよう、例えば網状に形成されており、光透過部を介して放電空間で生成された紫外線が放出されることになる。
そして、前記外部電極5の一端部にはいわゆるベタ状電極6が形成されている。
なお、放電容器2の断面形状は、正確に扁平矩形状である必要はなく、平面部3及び/又は側面部4が、外部側に若干だけ膨出する形状であってもよいし、逆に内部側に凹む形状であってもよい。更には、台形形状や平行四辺形形状も採用できるものであり、本願明細書では、これらを総称して、略矩形形状と表記している。
【0015】
この第1実施例では、放電容器2は、断面が略扁平矩形状の筒状ガラス管2aと、その端部近傍に溶着された封止部材2bとからなり、ガラス管2aの端部は前記封止部材2bよりも外側に突出して裾部2cが形成されている。そして、この裾部2cには、前記外部電極5の対向する方向に凹部8、8が形成されている。
前記外部電極5(ベタ状電極6)には補助電極7が接続されていて、前記凹部8にまで延在している。
この補助電極7は、印刷により形成してもよく、また、ディスペンサで導電ペーストを塗布し乾燥することにより形成することもできる。
【0016】
そして、
図2に示すように、外部電極5に給電するリード線10が、この凹部8内において補助電極7にガラスハンダ11などにより溶接接続されている。このとき、ガラスハンダ11は、凹部8の上面、即ち、平面部3よりも低い位置に収まることが好ましい。
【0017】
上記構成を有する放電容器2の端部に、
図6(B)に示すようなランプベースを取り付けるとき、溶接部(ガラスハンダ)11が邪魔になることがなく、ランプベースの厚さを最小なものとすることができる。
【0018】
図3、4に他の第2実施例が示されていて、放電容器2の端部において、平面部3方向に圧潰されたピンチシール部9が形成されている。このピンチシール部9は、放電容器2の端部を加熱軟化し、これを押圧・圧潰することで成形され、これにより放電容器2は密閉される。
そして、放電容器2の平面部3上に設けられた外部電極5の端部のベタ状電極6には補助電極7が接続され、この補助電極7は放電容器2の外表面に沿う形でピンチシール部9まで延びている。
【0019】
図4(A)(B)には、外部電極5に給電するリード線10の接続構造が示されていて、リード線10は、ピンチシール部9上で補助電極7にガラスハンダ11などにより溶接接続されている。
【0020】
この実施例によれば、リード線10がピンチシール部9上で補助電極7に溶接接続されているので、その溶接部(ガラスハンダ)11は、放電容器2の平面部3、3間の厚さ方向で大きく突出することがなく、場合によっては、厚さ方向の範囲内に収めることができ、この端部にランプベース(
図6(B)参照)を取り付けても、その厚さを小さくして薄型とすることができ、平面部3、3間の厚さを大きく上回ることがない。
なお、この実施例では、補助電極7は外部電極5よりも小幅なものが示されているが、特に小幅とすることなく、例えば、外部電極5と同幅のものであってもよい。
また、
図1、2の実施例および
図3、4の実施例では、外部電極5の端部にベタ状電極6が設けられているが、これを省いた構造とすることもできる。
【0021】
以上のように、本発明では、放電容器の平面部に設けた外部電極の端部に補助電極を設け、前記外部電極間の距離よりも小さくされた領域において、リード線が前記補助電極に接続されているので、リード線およびその溶接部が前記平面部よりも厚さ方向で大きく突出することがなく、これをカバーするランプベースも放電容器の厚さより大きく突出することを極力回避できるという効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0022】
1 :エキシマランプ
2 :放電容器
2a:ガラス管
2b:封止部材
2c:裾部
3 :平面部
4 :側面部
5 :外部電極
6 :ベタ状電極
7 :補助電極
8 :凹部
9 :ピンチシール部
10:リード線
11:ハンダ(溶接部)