(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】浴室
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20220225BHJP
E03C 1/28 20060101ALI20220225BHJP
E03C 1/29 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
E03C1/20 E
E03C1/28 A
E03C1/28 B
E03C1/29
(21)【出願番号】P 2017224665
(22)【出願日】2017-11-22
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】海野 陽平
(72)【発明者】
【氏名】栗原 祐子
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-189453(JP,A)
【文献】特開2009-114814(JP,A)
【文献】特開2008-168230(JP,A)
【文献】特開2008-168231(JP,A)
【文献】特開2010-057607(JP,A)
【文献】特開2009-195620(JP,A)
【文献】特開2008-168002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
A47K 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、前記浴槽に設けられた排水栓と、洗い場床に形成された排水口の下方に設置された排水トラップと、
前記排水口を介して前記排水トラップ
に除菌作用を有する電解水
または水道水が流れ込むように、前記電解水または水道水を前記洗い場床に吐出可能な電解水吐出装置と、電解水吐出の実行指令を受信すると電解水を吐出させる制御を実行する制御部と、使用者の操作によって前記実行指令を前記制御部へ送信する操作部と、を備えた浴室であって、
前記排水トラップは、
本体内を、天面から垂設された遮蔽部材により流入室と流出室との2室に区画し、
前記流入室の天面に洗い場床排水流入用の開口を設け、
前記遮蔽部材と本体底面との間の封水に水没する部位に、前記流入室と前記流出室との連通部を設け、
前記流出室に流出口を設け、
前記流入室の側面に浴槽排水が流入する浴槽排水流入口を設け、
前記浴槽排水が前記遮蔽部材に衝突することで前記流入室内に渦流を発生させるように構成されており、
前記使用者が前記操作部を操作した際に、前記浴槽の前記排水栓を開くとともに、前記制御部は、前記実行指令を受信した後、所定時間経過するまでは電解水を吐出せずに、該所定時間経過した後に電解水を吐出させるように制御を実行することを特徴とする浴室。
【請求項2】
前記操作部は、使用者の操作によって前記実行指令を前記制御部へ送信するとともに、前記浴槽の前記排水栓を開状態にすることを特徴とする請求項1記載の浴室。
【請求項3】
前記所定時間は、浴槽水が排出開始してから排出完了するまでの時間と想定される浴槽水排出相当時間である300秒以上の長さであることを特徴とする請求項1または2記載の浴室。
【請求項4】
前記所定時間が経つまでの間に、前記排水口へ
流入するように電解水ではない水道水を
前記洗い場床に吐出させ、前記所定時間経過した後に電解水を吐出させることを特徴とする請求項
3記載の浴室。
【請求項5】
電解水ではない水道水は、
吐出開始から吐出終了までの時間が、浴槽水が排出開始してから排出完了するまでの時間と想定される浴槽水排出相当時間である300秒以上の長さで、前記排水口へ
流入するように前記洗い場床に吐出されることを特徴とする請求項4記載の浴室。
【請求項6】
前記所定時間が経つまでの間に、
前記排水口へ流入するように前記洗い場床
に電解水ではない水道水を吐出させることを特徴とする請求項
3記載の浴室。
【請求項7】
電解水ではない水道水は、浴槽水が排出開始してから排出完了するまでの時間と想定される浴槽水排出相当時間である300秒以上の長さで、前記排水口へ向かって吐出されることを特徴とする請求項6記載の浴室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の洗い場床に向かって除菌水を吐出させる除菌水吐出装置が知られている(特許文献1)。このような除菌水吐出装置において、吐出させる除菌水として、例えば、流れてきた水(水道水)を電気分解することで生成する次亜塩素酸水などの電解水を利用することも知られている。このような電解水を除菌水として利用することで、例えば洗剤などを利用する場合と比べ、洗剤などを蓄えるカートリッジ等の用意・交換が不要であり、非常に使い勝手が良い。
【0003】
また、一般的に、使用者は、入浴などの浴室利用行為が完了した後、浴槽の排水栓を開くとともに、除菌水開始指令を実行することで、除菌水を排水口へ向かって吐出させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-178470号公報
【文献】特許第3886055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排水口の内部には封水が形成されている。この封水の水面と、封水を形成する排水トラップとが接する線(封水ライン)には、皮脂など水面に浮きやすい汚れが接触・付着し、それを栄養源として菌が繁殖しやすい。また、封水ラインは、カビや菌が成長するのに必要な水、栄養、空気が揃う部位である。そのため、封水ラインには黒ずみが発生しやすいものである。
【0006】
出願人は、この問題に着目し、排水口の内部に形成された封水ラインに対して除菌水を作用させ、黒ずみ発生を抑制したいと考えた。
【0007】
しかしながら、上述した通り、例えば次亜塩素酸水などの電解水を除菌水として利用した場合、電解水は菌に接触すると殺菌するとともに水に戻ってしまうため、排水口の開口部から流入した電解水が封水ラインにたどり着く前に、電解水の除菌成分の濃度が低下してしまう。したがって、封水ラインにおける黒ずみの発生を適切に抑制できないといった課題が発生した。
【0008】
本発明は、封水ラインにおける黒ずみの発生を抑制できる浴室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の浴室は、浴槽と、前記浴槽に設けられた排水栓と、洗い場床に形成された排水口の下方に設置された排水トラップと、前記排水トラップへ向かって除菌作用を有する電解水を吐出可能な電解水吐出装置と、電解水吐出の実行指令を受信すると電解水を吐出させる制御を実行する制御部と、使用者の操作によって前記実行指令を前記制御部へ送信する操作部と、を備えた浴室であって、前記排水トラップは、本体内を、天面から垂設された遮蔽部材により流入室と流出室との2室に区画し、前記流入室の天面に洗い場床排水流入用の開口を設け、前記遮蔽部材と本体底面との間の封水に水没する部位に、前記流入室と前記流出室との連通部を設け、前記流出室に流出口を設け、前記流入室の側面に浴槽排水が流入する浴槽排水流入口を設け、前記浴槽排水が前記遮蔽部材に衝突することで前記流入室内に渦流を発生させるように構成されており、前記制御部は、前記実行指令を受信した後、所定時間経過するまでは電解水を吐出せずに、該所定時間経過した後に電解水を吐出させるように制御を実行することを特徴としている。
第1の発明によれば、使用者が入浴などの浴室利用行為が完了した後、浴槽の排水栓を開くとともに、操作部を操作した際に、あえて所定時間経過するまでは電解水を吐出せずに、その所定時間経過した後に電解水を吐出させる。
浴槽の排水栓が開かれると、浴槽排水が遮蔽部材に衝突することで流入室内に渦流が発生し、その渦流によって封水内に遠心力が発生し、一時的に、排水トラップと封水とが接する封水ラインの水位が上昇する。これにより、実際の封水ラインよりも上方の排水口内部の内壁に付着した皮脂や髪毛などを洗い流すことができる。
このため、黒ずみが発生しやすい本来の封水ラインにたどり着く前に排水口内部の内壁に付着した皮脂との接触によって電解水の除菌成分の濃度が低下してしまうのを抑制できる。すなわち、除菌成分の濃度を低下させずに電解水を排水口内部の封水ラインへ流入させることができる。したがって、電解水を除菌水として利用した場合であっても、封水ラインにおける黒ずみの発生を適切に抑制することができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記操作部は、使用者の操作によって前記実行指令を前記制御部へ送信するとともに、前記浴槽の前記排水栓を開状態にすることを特徴とする。
第2の発明によれば、上記渦流によって、封水ラインより上方の排水口内部の内壁に付着した皮脂や髪毛などを確実に洗い流した後に、電解水を排水口へ向かって流入させることができる。これにより、除菌成分濃度の低下を抑えた電解水を確実に封水ラインに流入させることができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記所定時間は、浴槽水が排出開始してから排出完了するまでの時間と想定される浴槽水排出相当時間である300秒以上の長さであることを特徴とする。
第3の発明によれば、浴槽水の排出が完了した後、すなわち、排水トラップ内での上記渦流の発生による一時的な水位の上昇が終わった後(渦流が消失した後)に、排水トラップ内に電解水を流入させることができる。これにより、渦流とともに排出されてしまう電解水の無駄をなくし、電解水を確実に本来の封水ラインに流入させることができる。
第4の発明は、第1~第3の発明のいずれか1つにおいて、前記所定時間が経つまでの間に、前記排水口へ向かって電解水ではない水道水を吐出させ、前記所定時間経過した後に電解水を吐出させることを特徴とする。
第4の発明によれば、浴槽水の排出により流入室内に渦流を発生させることで、実際の封水ラインより上方の排水口内部の内壁に付着した皮脂や髪毛などを洗い流すことができるものの、渦流は汚水で形成された封水であるため、渦流発生が完了した後も、依然、汚水は排水口内部の内壁に付着している状態になり得る。そこで、所定時間が経つまでの間に、電解水ではない水道水を吐出させることで、排水口内部の内壁を洗い流すことができる。
第5の発明は、第4の発明において、電解水ではない水道水は、浴槽水が排出開始してから排出完了するまでの時間と想定される浴槽水排出相当時間である300秒以上の長さで、前記排水口へ向かって吐出されることを特徴とする。
第5の発明によれば、渦流発生が完了した後に、電解水ではない水道水を吐出させることができ、より確実に排水口内部の内壁を洗い流すことができる。
第6の発明は、第1~第3の発明のいずれか1つにおいて、前記所定時間が経つまでの間に、前記洗い場床へ向かって電解水ではない水道水を吐出させることを特徴とする。
第6の発明によれば、排水トラップの流入室内に渦流を発生している最中に、水道水によって洗い場床表面の皮脂汚れなどを洗い流し、その後、電解水を吐出させることができる。したがって、予め洗い場床表面の皮脂汚れなどを水道水で洗い流しておくことで、電解水の吐出を開始してから、洗い場床表面の皮脂汚れが排水口内部に流れ込んでくる可能性を抑制できる。
第7の発明は、第6の発明において、電解水ではない水道水は、浴槽水が排出開始してから排出完了するまでの時間と想定される浴槽水排出相当時間である300秒以上の長さで、前記排水口へ向かって吐出されることを特徴とする。
第7の発明によれば、渦流発生が完了した後まで、電解水ではない水道水を吐出させることができ、洗い場床を洗浄した水道水を利用して、より確実に排水口内部の内壁を洗い流すことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の浴室によれば、封水ラインにおける黒ずみの発生を抑制できる浴室が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る浴室洗浄装置の全体構成を示すシステムブロック図。
【
図5】(a)は実施形態に係る排水トラップの模式斜視図であり、(b)は同排水トラップの模式断面図。
【
図6】(a)は実施形態における電解水の吐出タイムチャートであり、(b)は実施形態における水道水及び電解水の吐出タイムチャート。
【
図7】実施形態における排水トラップ内の渦流の発生および電解水の流入を説明するための模式断面図。
【
図8】実施形態における排水トラップ内の渦流の発生および水道水の流入を説明するための模式断面図。
【
図9】実施形態における排水トラップ内への水道水および電解水の流入を説明するための模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る浴室洗浄装置1の全体構成を示すシステムブロック図である。
【0014】
浴室洗浄装置1は、電源30と、制御部40と、操作部35と、電解水吐出装置100とを備えている。電解水吐出装置100は浴室のカウンターに設置される。
【0015】
図2(a)は、実施形態に係る浴室500の模式斜視図である。
図2(b)は、浴室500におけるカウンター530の近傍を拡大した模式斜視図である。
図3は、浴槽510の平面図である。
【0016】
図2(a)に示すように、浴室500は、4つの壁541~544と天井545に囲まれている。その浴室500内に、浴槽510、洗い場床520、およびカウンター530が設けられている。さらに、浴室500には、鏡、水栓装置、ハンドシャワーなどが適宜設けられている。
【0017】
浴槽510の一対の短辺側に、第1の壁541と第2の壁542が互いに対向して設けられている。浴槽510の一方の長辺側に第4の壁544が設けられている。その第4の壁544に対向して、洗い場床520側に第3の壁543が設けられている。
【0018】
洗い場床520には排水口521が設けられている。
図2(a)に示す例では、排水口521は、洗い場床520における浴槽510側の縁部近傍であって、洗い場床520の長手方向の略中央に位置している。
【0019】
洗い場床520の表面(床面)には、第1の壁541側の縁部、第2の壁542側の縁部、および第3の壁543側の縁部から、排水口521へと向かう緩やかな下り傾斜(排水勾配)が設けられている。
【0020】
カウンター530は、例えば第2の壁542に取り付けられている。カウンター530は、洗い場床520の表面から上方に離間して設置されている。カウンター530は、上方から見たときに、洗い場床520の短辺方向に沿った長辺をもつ略矩形状の形状を有する。
【0021】
図2(b)に示すように、カウンター530は、天板531と、天板531の下方を覆うカバー532とを有する。
図1に示す電解水吐出装置100は、一部の要素(止水栓50、吐水部10)を除いて、天板531とカバー532で囲まれたカウンター530の内部に収容されている。
【0022】
吐水部(ノズル部)10は、
図2(b)に示すように、カウンター530の下方に突出するように設けられている。吐水部10は、洗い場床520の表面から離間している。また、吐水部10は、カウンター530の横幅方向(短手方向)における中央付近に設置されている。すなわち、吐水部10は、洗い場床520の長手方向の一端側であって且つ短辺方向の中央付近に設置されている。この位置での後述する吐水部10の回転動作により、水道水および電解水を洗い場床520の略全体に吐水しやすくなる。
【0023】
図3に示すように、浴槽510の底面には排水栓511が設けられている。排水栓511は、浴槽510の底面に形成された浴槽排水口を開閉する。浴槽510のリムには排水栓ボタン512が設けられ、この排水栓ボタン512の操作により、排水栓511は開閉される。
【0024】
図1に示す止水栓50は水道水が供給される給水管と接続される。その止水栓50は、ストレーナ51と接続されている。ストレーナ51の下流側は定流量弁52に接続され、その定流量弁52の下流側は2つの配管61、62に分岐している。
【0025】
一方の配管61には電磁弁53が設けられ、その電磁弁53の下流側は吐水部10の第1の吐水口11につながっている。また、例えば寒冷地などでは、電磁弁53と吐水部10との間に必要に応じて水抜弁54が接続される。
【0026】
他方の配管62には、上流側から順に、ストレーナ55、電磁弁56、調圧弁57、逆止弁59、電解水生成部20、ストレーナ65、および吐水部10の第2の吐水口12が接続されている。また、調圧弁57と逆止弁59との間に安全弁58が接続されている。
【0027】
また、電解水吐出装置100は、吐水部10を回転(旋回)動作させるモーター(例えばステッピングモーター)66を有する。このモーター66も、カウンター530の内部に収容されている。
【0028】
制御部40は、電磁弁53、電磁弁56、電解水生成部20、およびモーター66の動作を制御する。電源30はそれらに電力を供給する。また、電源30は操作部35に電力を供給する。電源30は、
図2(a)に示すように例えば浴室500の天井545の裏に設置される。制御部40は、カウンター530の内部、または浴室500の天井545の裏に設置される。
【0029】
電磁弁53は制御部40の制御によって開閉される。電磁弁53が開くと、水道水が第1の吐水口11から吐水される。電磁弁53が閉じると、第1の吐水口11から水道水は吐水されない。
【0030】
電磁弁56は制御部40の制御によって開閉される。電磁弁56が開くと、水道水が電解水生成部20に供給され、その電解水生成部20で生成された電解水が第2の吐水口12から吐水される。電磁弁56が閉じると、第2の吐水口12から電解水は吐水されない。
【0031】
調圧弁57による水道水の圧力制御により、電解水生成部20に供給される水道水の流量が調整される。電解水生成部20に供給される水道水の流量調整により、第2の吐水口12から吐水される電解水の流量が調整される。
【0032】
また、電磁弁53、56によって、その下流側に供給される水道水の流量を調整することができる。
【0033】
電解水生成部20は電解水を生成する。この電解水は除菌作用を有する除菌水である。電解水生成部20は、例えば陽極と陰極とを有する電解槽である。それら陽極と陰極との間に電圧を印加して、陽極と陰極との間を流れる水道水を電気分解することで、水道水は電解水に変性する。水道水は塩化物イオンを含んでいるため、その塩化物イオンを電気分解することによって、次亜塩素酸が生成される。
【0034】
次亜塩素酸は、菌を死滅させ、さらに菌の繁殖を抑える能力をもつ。したがって、電解水は、次亜塩素酸を含み、除菌作用を有する除菌水である。
【0035】
【0036】
吐水部10は、円筒状に形成され、その下部側面に第1の吐水口11と第2の吐水口12が設けられている。第1の吐水口11および第2の吐水口12は、それぞれ、縦長のスリット状に形成されている。
【0037】
第1の吐水口11と第2の吐水口12は、円筒状の吐水部10の周方向に並んで配置されている。または、第1の吐水口11と第2の吐水口12を高さ方向に並んで配置してもよい。
【0038】
第1の吐水口11からは、電解水でない水道水が洗い場床520に吐水される。第2の吐水口12からは、前述した電解水(除菌水)が洗い場床520に吐水される。円筒状の吐水部10内に水道水または電解水を一時的に貯留することができ、吐水圧力を上昇させることができる。
【0039】
縦長の第1の吐水口11から、縦方向(上下方向)に扇状に広がった水道水を吐水することができる。同じく縦長の第2の吐水口12から、縦方向(上下方向)に扇状に広がった電解水を吐水することができる。
【0040】
前述したモーター66の駆動により、円筒状の吐水部10をその中心軸(
図4において1点鎖線で示す)のまわりに回転させ、水道水や電解水が吐出される方向を変化させることができる。
【0041】
図5(a)は実施形態に係る排水トラップ70の模式斜視図であり、
図5(b)は排水トラップ70の模式断面図である。
【0042】
排水トラップ70は、洗い場床520に形成された排水口521の下方に設置されている。洗い場床520には凹状に排水枡91が一体形成されており、排水枡91の下部に排水トラップ70が連結されている。排水枡91の上面は、
図2(a)に示す排水カバー95で覆われる。
【0043】
排水枡91の底側にはフランジ部材92がパッキンを介して取り付けられ、このフランジ部材92に排水トラップ70の上端が取り付けられている。フランジ部材92内には上方から着脱可能にヘアキャッチャー81が取り付けられている。
【0044】
排水トラップ70の本体80の上方には、洗い場排水流入用の開口93が設けられている。洗い場床520側からの排水は、排水枡91を通り、開口93から排水トラップ70内に流入する。
【0045】
排水トラップ70の本体80の側面に、浴槽排水流入口78が開口形成されている。浴槽排水流入口78は、この浴槽排水流入口78に接続された配管を通じて、浴槽排水口に接続されている。
【0046】
浴槽排水流入口78の反対側に流出口79が開口形成されている。排水トラップ70内に流れ込んだ浴槽排水、洗い場排水、電解水などは、流出口79を通じて、この流出口79に接続された排水管に流出する。
【0047】
流出口79の上流側には、本体80の底面72より一体に立ち上げられた封水壁77が形成されている。この封水壁77の上端が封水面Wの高さとなる。
【0048】
封水壁77の上流側には、排水トラップ70の本体80内を天面71から垂設された遮蔽部材76が設けられている。遮蔽部材76は、排水トラップ70内を流入室73と流出室74との2室に区画する。遮蔽部材76の下端と、排水トラップ70の底面72との間には、流入室73と流出室74とを連通させる連通部75が形成されている。連通部75は、遮蔽部材76と底面72との間の封水に水没する部位に設けられている。
【0049】
流入室73の側面に浴槽排水流入口78が形成され、浴槽排水流入口78は流入室73に連通している。浴槽排水流入口78と略反対側に流出口79が形成され、流出口79は流出室74に連通している。流入室73の天面(上方)に、洗い場排水流入用の開口93が形成されている。
【0050】
排水トラップ70は、浴槽排水流入口78から流入した浴槽排水が遮蔽部材76に衝突することで流入室73内に渦流を発生させるように構成されている。流入室73に流入した浴槽排水は、排水トラップ70の内周面と遮蔽部材76に沿って旋回して渦流となる。この渦流は、遮蔽部材76が下端側から上方に向かって拡径状に傾斜されているため、遮蔽部材76にガイドされて上昇渦流となり、本体80内を上昇する。
【0051】
この上昇渦流が排水枡91の上端付近まで上昇するように遮蔽部材76の傾斜角度が設定されていれば、上昇渦流により排水枡91の内周面やヘアキャッチャー81に付着しているゴミや髪の毛が落とされ、渦の中心に集められ、さらに渦の中心から下方へ落下して、ゴミや髪の毛はヘアキャッチャー81の下端の底面中央部に集められることとなる。これにより、ヘアキャッチャー81は、その中央部分以外に髪の毛などが付着していない状態に保たれ、通水が良好となる。
【0052】
図6(a)は、実施形態における電解水の吐出タイムチャートである。
【0053】
使用者が前述した操作部35を操作すると(操作部35がONになると)、操作部35は制御部40へ電解水吐出の実行指令を送信する。制御部40は、操作部35から電解水吐出の実行指令を受信した後、所定時間経過するまでは電解水を吐出せずに、所定時間経過した後に電解水を吐出させるように制御を実行する。
【0054】
すなわち、使用者が入浴などの浴室利用行為が完了した後、
図3に示す排水栓ボタン512を操作して浴槽510の排水栓511を開くとともに、操作部35を操作した際に、あえて所定時間経過するまでは電解水を吐出せずに、その所定時間経過した後に電解水を吐出させる。
【0055】
図7(a)~(c)は、実施形態における排水トラップ70内の渦流の発生および電解水の流入を説明するための模式断面図である。
【0056】
図7(a)は、浴槽510の排水栓511が閉じられ、排水トラップ70内に浴槽排水が流入していない状態を表す。そして、浴槽510の排水栓511が開かれると、浴槽排水流入口78から流入した浴槽排水が遮蔽部材76に衝突することで流入室73内に渦流が発生する。
図7(b)に示すように、その渦流によって封水内に遠心力が発生し、一時的に、排水トラップ70と封水とが接する封水ラインの水位W’が上昇する。これにより、封水壁77の高さで規定される実際の封水ラインWよりも上方の排水口521内部の内壁(排水枡91の内壁および排水トラップ70の内壁)に付着した皮脂や髪毛などを洗い流すことができる。
【0057】
そして、制御部40は、操作部35が操作されてから所定時間経過した後に、吐水部10から電解水を排水口521へ向かって吐出させ、
図7(c)に示すように電解水が排水口521から排水トラップ70内に流入する。
【0058】
上記渦流の発生にともなう水位上昇によって、排水口521から流入した電解水が本来の封水ラインWにたどり着くまでの経路の皮脂などが洗い流されている。このため、黒ずみが発生しやすい本来の封水ラインWにたどり着く前に排水口521内部の内壁に付着した皮脂との接触によって電解水の除菌成分の濃度が低下してしまうのを抑制できる。すなわち、除菌成分の濃度を低下させずに電解水を排水口521(排水トラップ70)内部の封水ラインWへ流入させることができる。したがって、電解水を除菌水として利用した場合であっても、封水ラインWにおける黒ずみの発生を適切に抑制することができる。
【0059】
ここで、所定時間は、一般的な大きさの浴槽のほぼ満水時、例えば浴槽の許容水位に対して9割まで浴槽水を溜めた状態から浴槽水の排出を開始し、この排出開始から排出完了するまでの時間と想定される浴槽水排出相当時間である300秒以上の長さである。この所定時間経過後、電解水は、例えば390秒間連続的に吐出される。
【0060】
所定時間をこのような浴槽水排出相当時間以上の長さに設定することで、浴槽水の排出が完了した後、すなわち、排水トラップ70内での上記渦流の発生による一時的な水位の上昇が終わった後(渦流が消失した後)に、排水トラップ70内に電解水を流入させることができる。これにより、渦流とともに排出されてしまう電解水の無駄をなくし、電解水を確実に本来の封水ラインに流入させることができる。
【0061】
また、操作部35は、使用者の操作によって電解水吐出の実行指令を制御部40へ送信するとともに、浴槽510の排水栓511を開状態にすることもできる。すなわち、操作部35が使用者によって操作されることで、電解水吐出の実行指令を制御部40へ送信するのみならず、浴槽510の排水栓511を開状態にさせる。
【0062】
使用者が排水栓ボタン512を操作しなくても、操作部35の操作に連動して、より確実に浴槽510の排水栓511を開状態にさせてから、上記所定時間経過した後に電解水を排水口521へ向かって吐出させる。すなわち、上記渦流によって、封水ラインより上方の排水口521内部の内壁に付着した皮脂や髪毛などを確実に洗い流した後に、電解水を排水口521へ向かって流入させることができる。これにより、除菌成分濃度の低下を抑えた電解水を確実に封水ラインに流入させることができる。
【0063】
図6(b)は、他の実施形態における水道水及び電解水の吐出タイムチャートである。
図8(a)~
図9(b)は、
図6(b)に示すタイムチャートに沿った排水トラップ内の封水、水道水、および電解水の作用を説明するための模式断面図である。
【0064】
この例では、制御部40は、上記実行指令を受信すると、所定時間が経つまでの間に、排水口521へ向かって、電解水ではない水道水を吐出させる。そして、上記実行指令を受信した後、所定時間(この間、水道水が吐出)経過した後に電解水を吐出させる。
【0065】
図8(a)は、浴槽510の排水栓511が閉じられ、排水トラップ70内に浴槽排水が流入していない状態を表す。そして、浴槽510の排水栓511が開かれると、
図8(b)に示すように、浴槽排水流入口78から流入した浴槽排水が遮蔽部材76に衝突することで流入室73内に渦流が発生する。
【0066】
浴槽水の排出により流入室73内に渦流を発生させることで、実際の封水ラインより上方の排水口521内部の内壁に付着した皮脂や髪毛などを洗い流すことができるものの、渦流は汚水で形成された封水であるため、渦流発生が完了した後も、依然、汚水は排水枡91や排水トラップ70の内壁に付着している状態になり得る。そこで、所定時間が経つまでの間に、電解水ではない水道水を吐出させることで、排水枡91や排水トラップ70の内壁を洗い流すことができる。
【0067】
電解水ではない水道水は、前述した浴槽水排出相当時間である300秒以上の長さで、排水口521へ向かって吐出される。例えば、操作部35がONにされると、断続的に水道水が吐出される。
図6(b)に示す例では、480秒間に2回に分けて断続的に水道水が吐出される。水道水の吐出終了から例えば240秒後に、電解水が390秒間連続的に吐出される。
【0068】
水道水を上記浴槽水排出相当時間以上の長さで吐出することで、
図9(a)に示すように、渦流発生が完了した後に、確実に水道水で排水口521内部の内壁を洗い流すことができる。その後、
図9(b)に示すように、除菌成分濃度の低下が抑制された電解水が排水口521から排水トラップ70内に流入する。
【0069】
また、吐水部10は、上記所定時間が経つまでの間に、洗い場床520へ向かって、電解水ではない水道水を吐出させる。すなわち、排水トラップ70の流入室73内に渦流を発生している最中に、水道水によって洗い場床520表面の皮脂汚れなどを洗い流し、その後、電解水を吐出させることができる。したがって、予め洗い場床520表面の皮脂汚れなどを水道水で洗い流しておくことで、電解水の吐出を開始してから、洗い場床520表面の皮脂汚れが排水口521内部に流れ込んでくる可能性を抑制できる。
【0070】
その水道水は、前述した浴槽水排出相当時間である300秒以上の長さで吐出される。これにより、
図9(a)に示すように、渦流発生が完了した後まで、電解水ではない水道水を吐出させることができ、洗い場床520を洗浄した水道水を利用して、より確実に排水口521内部の内壁を洗い流すことができる。
【0071】
本実施形態において、例えば、吐水部10からの電解水の吐出流速は9(m/s)以上11(m/s)以下であり、吐水部10からの水道水の吐出流速は5.6(m/s)である。
【0072】
また、電解水及び水道水はそれぞれ粒状に吐出される。例えば、電解水の粒径は800(μm)であり、水道水の粒径は0.3(mm)以上3.5(mm)以下である。
【0073】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…浴室洗浄装置、10…吐水部、20…電解水生成部、35…操作部、40…制御部、70…排水トラップ、73…流入室、74…流出室、75…連通部、76…遮蔽部材、77…封水壁、78…浴槽排水流入口、79…流出口、91…排水枡、93…開口、100…電解水吐出装置、510…浴槽、511…排水栓、520…洗い場床、521…排水口