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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】入浴介助装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
A61H33/00 310N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018031813
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019146667
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】永石 昌之
(72)【発明者】
【氏名】早田 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 大平
(72)【発明者】
【氏名】東 賢輔
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-102277(JP,A)
【文献】特開2002-336153(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0331400(US,A1)
【文献】特開2003-265345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
A61G 7/10
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺と短辺とをもつリム部を有する浴槽に設置される入浴介助装置であって、
前記入浴介助装置は、
前記長辺に沿った第一の方向のリム部上面に載置される一対のサイドフレーム部と、一対の前記サイドフレーム部を連結するメインフレーム部と、を有するフレーム本体と、
浴槽内の上方位置と下方位置との間を昇降可能であり、前記フレーム本体に支持される着座台と、
前記着座台を昇降させる昇降装置と、
前記メインフレーム部の長さを、前記短辺に沿った第二の方向のリム部の長さに合わせて調節可能な調節機構と、
一対の前記サイドフレーム部のそれぞれの下方に設けられ、前記第一の方向の浴槽内壁に当接することで当該入浴介助装置を浴槽に対して突っ張り固定可能にする一対の当接部と、
を備え、
前記第一の方向のリム部上面の幅が狭く形成された浴槽に対して、前記当接部を当接可能にすると共に、前記第一の方向の浴槽内壁の傾斜が大きい浴槽に対して、前記第一の方向のリム部上面に前記サイドフレーム部を載置可能にするために、一対の前記サイドフレーム部の内、少なくとも一方のサイドフレーム部の下方に取り付けられた前記当接部の位置を前記サイドフレーム部の外側端部に対して第1内側位置に配置される第1状態と、前記第1内側位置より内側の第2内側位置に配置される第2状態とに変更可能であり、
前記当接部は、前記サイドフレーム部に対して着脱可能な別部材によって構成され、
前記当接部は、前記第一の方向の浴槽内壁に当接することで前記サイドフレーム部に固定されることを特徴とする入浴介助装置。
【請求項2】
前記当接部は、一対の前記サイドフレーム部の内、他方のサイドフレーム部の下方に設けられた前記当接部の位置も前記第1状態と、前記第2状態とに変更可能であり、
一対の前記サイドフレーム部に対する前記当接部の位置は、一方側のサイドフレーム部と他方側のサイドフレーム部とでそれぞれ異なる位置に変更可能であることを特徴とする請求項1記載の入浴介助装置。
【請求項3】
前記当接部の位置は、前記サイドフレーム部の外側端部を除く範囲で変更可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の入浴介助装置。
【請求項4】
前記サイドフレーム部に対する前記当接部の位置を変更可能な範囲は、前記サイドフレーム部の外側端部から10mm離れた位置を始点とすることを特徴とする請求項3記載の入浴介助装置。
【請求項5】
前記調節機構は、前記第二の方向から前記メインフレーム部に働いた外力によって前記メインフレーム部の長さが変わらないように、前記メインフレーム部の前記第二の方向に対する長さを維持するロック手段を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の入浴介助装置。
【請求項6】
前記当接部は、前記サイドフレーム部に対して向きを変えて着脱されることで、前記当接部の位置を前記第1状態と前記第2状態とに変更可能であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の入浴介助装置。
【請求項7】
前記調節機構は、前記第二の方向に前記メインフレーム部の長さを調節する際に、前記当接部が前記第一の方向の浴槽内壁に当接することによって前記調節機構が受ける反力が所定以上の大きさとなった場合、前記メインフレーム部の長さを前記第二の方向にそれ以上延ばすことができないように規制するリミッタ機構を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の入浴介助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴介助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、老人や身体障碍者などの一人で入浴することが困難であり、入浴に際して介助者を必要とする被介助者の入浴を支援する福祉機器として入浴介助装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
被介助者の方々は、洗い場で座椅子に腰を掛けた後、お尻を横にずらしながら、昇降する入浴介助装置の着座部に移乗することによって、浴槽の縁を跨ぐことなく楽に入浴を行うことができる。また、介助者の方々は、被介助者を抱え上げて浴槽に入れるような力仕事を行う必要がなくなるため、楽に被介助者の入浴の支援を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-102277号公報
【文献】特開2012-205862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
入浴介助装置は、左右両側に設けられたサイドフレーム部(例えば図12(a)に、一方のサイドフレーム部121のみを図示)を、浴槽のリム部102に合致するように間隔調整を行いながら載置し、サイドフレーム部121の下方に設けられた当接部135を、浴室の洗い場側と浴室の壁側の浴槽内壁105に対して当接させ突っ張り固定することで十分な固定力を確保し、入浴介助装置が浴槽に対して位置ズレすることがないように設置される。
【0006】
しかしながら、近年、浴槽に使用する水の節水化や、浴槽に対するデザインの追求や、入浴時の姿勢が身体に与える影響などへの関心が高まるに従って、入浴介助装置を設けることができない形状を有する浴槽が多数販売されるようになってきている。
【0007】
例えば、特許文献2に記載の浴槽は、節水性を高めるために水深の深い領域を極力少なくしつつ、開放的な入浴感を与えるために、リム部付近の浴槽内壁を浴槽の外側に向かって広げているので、リム部の幅が従来よりも狭く形成されている。
【0008】
このような浴槽に対して入浴介助装置を設置すると、図12(b)に示すように、浴室の壁200側の浴槽内壁105に当接部が当接するよりも前に、サイドフレーム部121が浴室の壁200に当接してしまうため、左右の一対の当接部135同士による突っ張り固定が行えなくなり、位置がズレないようにするために必要な固定力を確保できないという課題を生じた。
【0009】
このとき、浴室の壁200側のリム部102が狭く形成された浴槽に入浴介助装置を設置した場合であっても、当接部135が浴室の壁200側の浴槽内壁105に当接するように、図13(a)に示すように、サイドフレーム部121に対する当接部135の位置を外側に変えることが考えられる。しかしながら、この場合、図13(b)に示すように、リム部102付近の浴槽内壁105の傾斜が大きい浴槽に対しては、入浴介助装置を設置した際に、浴槽のリム部102上面にサイドフレーム部121が載置する面積が小さくなりすぎるため、不安定な載置になってしまうという新たな課題が生じた。
【0010】
本発明は、当接部の位置を浴槽の短手方向に自在に変更可能な入浴介助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明の入浴介助装置は、長辺と短辺とをもつリム部を有する浴槽に設置される入浴介助装置であって、前記入浴介助装置は、前記長辺に沿った第一の方向のリム部上面に載置される一対のサイドフレーム部と、一対の前記サイドフレーム部を連結するメインフレーム部と、を有するフレーム本体と、浴槽内の上方位置と下方位置との間を昇降可能であり、前記フレーム本体に支持される着座台と、前記着座台を昇降させる昇降装置と、前記メインフレーム部の長さを、前記短辺に沿った第二の方向のリム部の長さに合わせて調節可能な調節機構と、一対の前記サイドフレーム部のそれぞれの下方に設けられ、前記第一の方向の浴槽内壁に当接することで当該入浴介助装置を浴槽に対して突っ張り固定可能にする一対の当接部と、を備え、前記第一の方向のリム部上面の幅が狭く形成された浴槽に対して、前記当接部を当接可能にすると共に、前記第一の方向の浴槽内壁の傾斜が大きい浴槽に対して、前記第一の方向のリム部上面に前記サイドフレーム部を載置可能にするために、一対の前記サイドフレーム部の内、少なくとも一方のサイドフレーム部の下方に取り付けられた前記当接部の位置を前記サイドフレーム部の外側端部に対して第1内側位置に配置される第1状態と、前記第1内側位置より内側の第2内側位置に配置される第2状態とに変更可能であることを特徴とする。
第1の発明によれば、浴室の壁側のリム部の上面の幅が狭く形成された浴槽に対して入浴介助装置を設置する場合において、当接部をサイドフレーム部の外側端部に対して第1内側位置に配置することで、サイドフレーム部が浴室の壁に当たってしまうことなく、当接部を浴槽内壁に当接させることが可能となり、突っ張り固定をすることができる。
また、当接部が当接する浴槽内壁の傾斜が大きい浴槽に対して入浴介助装置を設置する場合において、当接部を第2内側位置にすることで、浴槽内壁の傾斜が大きい場合でも、リム部上面にサイドフレーム部が載置する面積を大きくすることが可能となり、安定した載置を行うことができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記当接部は、一対の前記サイドフレーム部の内、他方のサイドフレーム部の下方に設けられた前記当接部の位置も前記第1状態と、前記第2状態とに変更可能であり、一対の前記サイドフレーム部に対する前記当接部の位置は、一方側のサイドフレーム部と他方側のサイドフレーム部とでそれぞれ異なる位置に変更可能であることを特徴とする。
第2の発明によれば、一対の長辺側リム部のうち一方のリム部の上面の幅が相対的に狭く、他方のリム部の上面の幅が相対的に広く形成された浴槽に対して入浴介助装置を設置する場合において、一方の当接部の位置を第1内側位置としつつ、他方の当接部の位置を第2内側位置にすることができるため、リム部上面に対するサイドフレーム部の載置面積を両側で補い合うことができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記当接部の位置は、前記サイドフレーム部の外側端部を除く範囲で変更可能であることを特徴とする。
第3の発明によれば、当接部の位置は、リム部上面にサイドフレーム部を安定して載置することが可能な範囲(サイドフレーム部の外側端部を除く範囲)で、第二の方向に変更することができる。
第4の発明は、第3の発明において、前記サイドフレーム部に対する前記当接部の位置を変更可能な範囲は、前記サイドフレーム部の外側端部から10mm離れた位置を始点とすることを特徴とする。
第4の発明によれば、第一の方向に沿った浴槽内壁は、水が溢れにくいように曲率をもったR形状を有していることが多い。浴槽内壁に形成されるR形状は、サイドフレーム部の外側端部から10mmまでの範囲に形成されることが多い。そのため、この範囲と被らないように当接部の位置を変更することができるようにしている。
第5の発明は、第1~第4の発明のいずれか1つにおいて、前記調節機構は、前記第二の方向から前記メインフレーム部に働いた外力によって前記メインフレーム部の長さが変わらないように、前記メインフレーム部の前記第二の方向に対する長さを維持するロック手段を備えることを特徴とする。
第5の発明によれば、調節機構にロック手段を備えたことで、メインフレーム部の長さが第二の方向に対して変わることがないため、当接部による突っ張り固定を解除してしまうおそれがない。
第6の発明は、第1~第5の発明のいずれか1つにおいて、前記当接部は、前記サイドフレーム部に対して着脱可能な別部材によって構成され、前記当接部は、前記第一の方向の浴槽内壁に当接することで前記サイドフレーム部に固定されると共に、前記サイドフレーム部に対して向きを変えて着脱されることで、前記当接部の位置を前記第1状態と前記第2状態とに変更可能であることを特徴とする。
第6の発明によれば、入浴介助装置が浴槽に対して突っ張り固定される力を利用し、当接部がサイドフレーム部に固定されるように構成されているため、ネジなどの固定手段を必要としていない。また、サイドフレーム部に対する当接部の位置を容易に変更可能である。
第7の発明は、第1~第6の発明のいずれか1つにおいて、前記調節機構は、前記第二の方向に前記メインフレーム部の長さを調節する際に、前記当接部が前記第一の方向の浴槽内壁に当接することによって前記調節機構が受ける反力が所定以上の大きさとなった場合、前記メインフレーム部の長さを前記第二の方向にそれ以上延ばすことができないように規制するリミッタ機構を有することを特徴とする。
第7の発明によれば、調節機構にリミッタ機構を設けることで、浴槽内壁を傷つけることを防止しつつ、最適な突っ張り固定力で入浴介助装置を浴槽に設置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リム部上面の幅が小さい浴槽に対して入浴介助装置を強固に突っ張り固定しつつ、浴槽内壁の傾斜が大きい浴槽に対して入浴介助装置を安定して載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る入浴介助装置の斜視図である。
図2】同入浴介助装置の斜視図である。
図3】同入浴介助装置が浴槽に設置された状態の斜視図である。
図4】(a)は同入浴介助装置におけるフレーム本体および昇降装置の斜視図であり、(b)は同フレーム本体および昇降装置の上面図である。
図5】同入浴介助装置におけるサイドフレーム部および当接部材の斜視図である。
図6】同サイドフレーム部および当接部材の分解斜視図である。
図7】同入浴介助装置における調節機構の斜視図である。
図8】(a)は同入浴介助装置における当接部が第1内側位置にある第1状態の模式図であり、(b)は同当接部が第2内側位置にある第2状態の模式図である。
図9】同入浴介助装置における一対の当接部の取付位置が左右で異なる状態の模式図である。
図10】同入浴介助装置における着座台が浴槽内の上方位置にある状態の模式図である。
図11】同入浴介助装置における着座台が浴槽内の下方位置にある状態の模式図である。
図12】(a)及び(b)は、参考例の入浴介助装置の浴槽に対する設置形態を説明する模式図である。
図13】(a)及び(b)は、参考例の入浴介助装置の浴槽に対する設置形態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る入浴介助装置1の斜視図である。
図2は、図1に示す入浴介助装置1を裏側から見た斜視図である。
図3は、入浴介助装置1が浴槽100に設置された状態の斜視図である。
【0016】
浴槽のリム部は1対の長辺と1対の短辺とを有し、平面視において矩形の輪郭をもつ。図3には、一対の短辺側リム部のうちの一方の短辺側のリム部101と、一対の長辺側のリム部102の一部分(短辺側のリム部101に続く部分)を表す。入浴介助装置1は、浴槽100の一対の長辺側のリム部102の上面に載置される。
【0017】
本明細書において、長辺側のリム部102の延在方向を第一の方向または長手方向とし、短辺側のリム部101の延在方向を第二の方向または短手方向とする。
【0018】
入浴介助装置1は、着座台50と、当接部35と、フレーム本体20とを有する。
【0019】
図4(a)はフレーム本体20の斜視図であり、図4(b)はフレーム本体20の上面図である。
【0020】
フレーム本体20は、一対のサイドフレーム部21と、それら一対のサイドフレーム部21を連結するメインフレーム部22とを有する。
【0021】
メインフレーム部22は、第1フレーム部22aと、第2フレーム部22bと、第3フレーム部22cとを有する。第1フレーム部22aと第2フレーム部22bは、第3フレーム部22cに対して、メインフレーム部22の延在方向にスライド移動自在となっている。第3フレーム部22cに対する第1フレーム部22aと第2フレーム部22bのスライド移動により、メインフレーム部22の長さが調節される。
【0022】
一対のサイドフレーム部21のうちの一方のサイドフレーム部21は第1フレーム部22aに連結され、他方のサイドフレーム部21は第2フレーム部22bに連結されている。したがって、第3フレーム部22cに対する第1フレーム部22aと第2フレーム部22bのスライド移動により、メインフレーム部22の長さが調節されると、一対のサイドフレーム部21の間の距離が調節される。
【0023】
図1図3に示すように、サイドフレーム部21にはアームカバー81が取り付けられ、メインフレーム部22にはインナーカバー82が取り付けられる。インナーカバー82の前面には背当てクッション83が設けられる。
【0024】
入浴介助装置1が浴槽100に設置された状態で、一対のサイドフレーム部21は長辺側のリム部102の上面に載置され、メインフレーム部22は短辺側のリム部101に沿って短手方向に延び、一対のサイドフレーム部21を連結している。
【0025】
着座台50は、図4(a)に示す取付部44によってフレーム本体20に支持される。入浴介助装置1は、着座台50を昇降させる昇降装置40を有する。
【0026】
昇降装置40は、モータ41と、ワインダ(またはドラム)42と、複数のプーリ61、62、63と、ワイヤ(またはケーブル)43とを有する。
【0027】
例えば、モータ41と、ワインダ42と、プーリ(テンションプーリ)61はメインフレーム部22に設けられている。プーリ(アームプーリ)62と、プーリ(アウトプーリ)63はサイドフレーム部21に設けられている。
【0028】
ワイヤ43は、ワインダ42に巻回されるとともに、プーリ61、62、63に通されている。ワインダ42は、モータ41によって回転駆動される。
【0029】
着座台50は、図1図2に示すシートフレーム53上に支持されている。シートフレーム53は、上側フレーム54と下側フレーム55とを有し、上側フレーム54と下側フレーム55とは短手方向に互いにスライド移動可能となっている。
【0030】
前述したワイヤ43は、シートフレーム53に設けられたワイヤフック57に係合される。ワインダ42によるワイヤ43の巻き取り/送り出し制御によって、着座台50はシートフレーム53ごと昇降される。
【0031】
図1に示すように、着座台50の一端部には、ヒンジ部52を介して、フラッププレート51が取り付けられている。フラッププレート51は、ヒンジ部52を支点にして、水平状態から上方に傾倒することができる。
【0032】
図2に示すように、一対の当接部材30が、一対のサイドフレーム部21のそれぞれの下方に設けられている。
【0033】
図5は、図1図2における右側のサイドフレーム部21、およびその下方に設けられた当接部材30の斜視図である。
図6は、図5に示すサイドフレーム部21および当接部材30の分解斜視図である。
【0034】
図6に示すように、当接部材30は、取付部31と当接部35とを有する。当接部35は、取付部31の下方に垂下している。取付部31の上面には突出部34が設けられている。当接部35は、硬質部32と軟質部33とを有する。軟質部33は、硬質部32よりも軟質の材料からなり、例えばゴム材料からなる。軟質部33は、硬質部32の表面を覆うように硬質部32に嵌め込まれる。
【0035】
サイドフレーム部21における外側部分には窪み部23が形成されている。その窪み部23に当接部材30の突出部34を嵌め込むことで、図5に示すように、当接部材30がサイドフレーム部21に取り付けられる。この状態で、当接部35はサイドフレーム部21の下方に垂下する。
【0036】
図2に示すように、サイドフレーム部21の下面には、軟質部材(例えばゴム部材)24が設けられている。サイドフレーム部21がリム部102の上面に載置されたときに、この軟質部材24によってリム部の上面に傷がつきにくくなる。また、軟質部材24は滑り止めを担う。
【0037】
入浴介助装置1は、さらに調節機構を有する。調節機構は、メインフレーム部22の長さを、浴槽100の短辺側のリム部101の長さ(一対の長辺側のリム部102の間の距離)に合わせて調節可能である。
【0038】
図7は、調節機構70の斜視図である。
【0039】
調節機構70は、幅調整ねじ71と、一対の送りねじ72とを有する。幅調整ねじ71の両端部71aには雄ねじが形成されている。送りねじ72はパイプ状に形成され、その内周に雌ねじが形成されている。幅調整ねじ71の両端部71aの雄ねじに、それぞれ、送りねじ72が結合している。
【0040】
幅調整ねじ71は、図4(b)に示すように、その軸方向がメインフレーム部22の延在方向に沿うように、メインフレーム部22に支持される。送りねじ72は、図5に示すサイドフレーム部21に形成された貫通孔25に嵌め込まれる。一対の送りねじ72の一方の送りねじ72はメインフレーム部22の第1フレーム部22aに連結され、他方の送りねじ72は第2フレーム部22bに連結されている。
【0041】
サイドフレーム部21の側方の外部から、例えば人がドライバーなどの工具を使って幅調整ねじ71を回転させることで、サイドフレーム部21が送りねじ72とともに幅調整ねじ71の軸方向に沿って移動する。これにより、メインフレーム部22の第1フレーム部22aまたは第2フレーム部22bが第3フレーム部22cに対してスライド移動し、一対のサイドフレーム部21の間の距離を調節することができる。
【0042】
一対のサイドフレーム部21の間の距離を適切に調節して、一対のサイドフレーム部21をそれぞれ一対の長辺側のリム部102の上面に載置し、且つ、一対の当接部35の側面を、長手方向に沿った浴槽内壁に当接させる。これにより、入浴介助装置1は、浴槽100に対して突っ張り固定される。当接部35は、その軟質部33が浴槽内壁に当接することで、浴槽内壁に傷がつきにくくできる。
【0043】
調節機構70は、短手方向からメインフレーム部22に働いた外力によって、メインフレーム部22の長さ(一対のサイドフレーム部21の間の距離)が変わらないように、メインフレーム部22の長さ(一対のサイドフレーム部21の間の距離)を維持するロック手段を兼ねている。すなわち、幅調整ねじ71と送りねじ72との結合がロック手段を構成する。
【0044】
メインフレーム部22に対して短手方向から外力が働くと、メインフレーム部22の長さ、すなわち一対のサイドフレーム部21の間の距離が変動し得る。すると、当接部35によって突っ張り固定をしていたとしても、浴槽100に対する入浴介助装置1の位置がズレてしまうため使用者に不安を与えてしまうという課題がある。
【0045】
これに対して、実施形態によれば、例えば幅調整ねじ71と送りねじ72との結合によりメインフレーム部22の長さの変動がロックされ、一対のサイドフレーム部21の間の距離が変わることがないため、当接部35による突っ張り固定を解除してしまうおそれがない。
【0046】
また、実施形態によれば、調節機構70は、リミッタ機構74(図4(b)に図示)を有する。前述した外部から幅調整ねじ71を回転させる力はリミッタ機構74を介して幅調整ねじ71に伝達する。そして、リミッタ機構74は、メインフレーム部22の長さ(一対のサイドフレーム部21の間の距離)を調節する際に、当接部35が長手方向に沿う浴槽内壁に当接することによって幅調整ねじ71が受ける反力が所定以上の大きさとなった場合、一対のサイドフレーム部21の間の距離をそれ以上広げることができないように規制する。すなわち、リミッタ機構74は、上記幅調整ねじ71が受ける反力が所定以上の大きさとなった場合に空転して、幅調整ねじ71を回転させようとする外力を幅調整ねじ71に伝えない。
【0047】
突っ張り固定により強固な固定力で入浴介助装置1を浴槽100に設置する必要がある一方で、当接部35が強すぎる力で浴槽内壁に当接すると、浴槽内壁を傷つけてしまうという課題がある。これに対して、調節機構70にリミッタ機構74を設けることで、浴槽内壁を傷つけることを防止しつつ、最適な突っ張り固定力で入浴介助装置1を浴槽100に設置することができる。
【0048】
実施形態によれば、一対のサイドフレーム部21の内、少なくとも一方のサイドフレーム部21の下方に設けられた当接部35の位置を、サイドフレーム部21の外側端部21aに対して第1内側位置に配置される第1状態と、第1内側位置より内側の第2内側位置に配置される第2状態とに変更可能である。
【0049】
図8(a)は、当接部35が第1内側位置にある第1状態の模式図である。
図8(a)は、浴室の壁200側のリム部102の上面の幅が狭く形成された浴槽に対して入浴介助装置1を設置する場合を示す。
【0050】
このような上面の幅が狭く形成されたリム部102に対して、当接部35をサイドフレーム部21の外側端部21aに対して第1内側位置に配置することで、サイドフレーム部21が浴室の壁200に当たってしまうことなく、当接部35を浴槽内壁に当接させることが可能となり、突っ張り固定をすることができる。
【0051】
図8(b)は、当接部35が第2内側位置にある第2状態の模式図である。
図8(b)は、当接部35が当接する浴槽内壁の傾斜が大きい浴槽に対して入浴介助装置1を設置する場合を示す。
【0052】
当接部35は、第1内側位置より内側の第2内側位置に配置される。第2内側位置は、第1内側位置よりも、サイドフレーム部21の外側端部21aから上記短手方向に離れている。したがって、サイドフレーム部21において当接部35よりも外側端部21a側の下面の幅(短手方向の幅)は、当接部35が第1内側位置にある第1状態よりも第2内側位置にある第2状態の方が大きい。
【0053】
そのため、当接部35を第2内側位置にすることで、浴槽内壁の傾斜が大きい場合でも、リム部102上面にサイドフレーム部21が載置する面積を大きくすることが可能となり、安定した載置を行うことができる。
【0054】
このように実施形態によれば、リム部102の上面の幅や浴槽内壁の傾斜に応じて、当接部35の位置(第1内側位置か第2内側位置)を適切に選択することで、リム部102の上面の幅が狭く形成された浴槽に対して、サイドフレーム部21が壁200に当たることなく、当接部35を浴槽内壁に当接可能にすることができる共に、浴槽内壁の傾斜が大きい浴槽に対して、リム部102上面にサイドフレーム部21を載置可能にする。
【0055】
前述した一方のサイドフレーム部21の下方に設けられた一方の当接部35に加えて、他方のサイドフレーム部21の下方に設けられた他方の当接部35の位置も、前記第1状態と前記第2状態とに変更可能である。さらに、一対のサイドフレーム部21に対する当接部35の位置は、一方のサイドフレーム部21と他方のサイドフレーム部21とでそれぞれ異なる位置に変更可能である。
【0056】
図9は、一対の当接部35の取付位置が左右で異なる状態の模式図である。
【0057】
図9は、一対の長辺側リム部102のうち一方側(右側)のリム部102の上面の幅が相対的に狭く、他方側(左側)のリム部102の上面の幅が相対的に広く形成された浴槽に対して入浴介助装置1を設置する場合を示す。
【0058】
一方側(右側)の当接部35の位置を第1内側位置としつつ、他方側(左側)の当接部35の位置を第2内側位置にすることができるため、リム部102上面に対するサイドフレーム部21の載置面積を両側で補い合うことができる。
【0059】
例えば、一対の当接部35のうち一方の当接部35は、サイドフレーム部21と壁との干渉を回避するために、第2内側位置はとれずに第1内側位置しかとれず、他方の当接部35は第1内側位置と第2内側位置の両方をとれる場合に、他方の当接部35を、サイドフレーム部21のリム部102上面に対する載置面積をより大きく確保できる第2内側位置にする選択をすることで、入浴介助装置1全体としての載置面積を広く取れ、安定する。様々な形態の浴槽に対して、最大限の載置面積の確保が可能になる。
【0060】
当接部35の位置は、リム部102の上面にサイドフレーム部21を安定して載置することが可能な範囲(サイドフレーム部21の外側端部21aを除く範囲)で、第二の方向(短手方向)に変更することができる。このサイドフレーム部21に対する当接部35の位置を変更可能な範囲は、サイドフレーム部21の外側端部21aから10mm離れた位置を始点とする。
【0061】
長手方向に沿った浴槽内壁は、水が溢れにくいように曲率をもったR形状を有していることが多い。このR形状の部分にはサイドフレーム部21は載らない。浴槽内壁に形成されるR形状は、サイドフレーム部21の外側端部21aから10mmまでの範囲に形成されることが多い。そのため、この範囲と被らないように当接部35の位置を変更することができるようにしている。
【0062】
図6に示す例では、当接部35は、サイドフレーム部21に対して着脱可能な別部材によって構成されている。そして、当接部35は、浴槽内壁に当接してサイドフレーム部21と浴槽内壁との間に挟まれて固定されると共に、サイドフレーム部21に対して向きを変えて着脱されることで、当接部35の位置を第1状態と第2状態とに変更可能である。
【0063】
当接部35は、取付部31の幅方向の一対の縁部のうちのどちらか一方の縁部に偏って位置している。したがって、当接部35が位置する縁部側から当接部材30をサイドフレーム部21に差し込むか、あるいは当接部35が位置する縁部の反対側の縁部側から当接部材30をサイドフレーム部21に差し込むかによって、当接部35の位置を、前者の場合の第2内側位置(図8(b))と、後者の場合の第1内側位置(図8(a))とに変更可能である。
【0064】
当接部35がサイドフレーム部21に対して着脱可能な別部材で構成されている場合、サイドフレーム部21に対する当接部35の位置をネジなどの固定手段を用いて変更することは面倒である。実施形態では、入浴介助装置1が浴槽100に対して突っ張り固定される力を利用し、当接部35がサイドフレーム部21に固定されるように構成されているため、ネジなどの固定手段を必要としていない。
【0065】
入浴介助装置1が浴槽100に突っ張り固定されていない状態で、当接部材30をサイドフレーム部21に対して簡単に着脱でき、そのときに当接部35の向きを変えて着脱することで、サイドフレーム部21に対する当接部35の位置を容易に変更可能である。
【0066】
または、サイドフレーム部21に対する当接部材30の取り付け向きを変えることに限らず、当接部材30の取り付け位置で当接部35の位置を変更してもよい。
【0067】
図10は、入浴介助装置1における着座台50が浴槽100内の上方位置にある状態の模式図である。
図11は、着座台50が浴槽100内の下方位置にある状態の模式図である。
【0068】
着座台50は、前述した昇降装置40によって、浴槽100内の上方位置と下方位置との間を昇降可能である。下方位置にある着座台50に着座した被介助者は体を浴槽100内のお湯に浸けることができる。
【0069】
着座台50は、シートフレーム53ごと、ワイヤ43によってフレーム本体20から吊り下げられた状態で昇降する。このとき、ガイドローラ56が浴槽内壁に接触しつつ転がり、着座台50の昇降を安定してガイドする。
【0070】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…入浴介助装置、20…フレーム本体、21…サイドフレーム部、22…メインフレーム部、30…当接部材、35…当接部、40…昇降装置、50…着座台、70…調節機構、74…リミッタ機構
図1
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