(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ポータブル撮影装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20210101AFI20220225BHJP
【FI】
G03B17/56 E
G03B17/56 G
(21)【出願番号】P 2018090220
(22)【出願日】2018-05-08
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】岡田 果澄
(72)【発明者】
【氏名】立脇 由哲
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-087063(JP,A)
【文献】特開2005-099708(JP,A)
【文献】特開平10-173968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の場所に持ち運び可能なポータブル撮影装置であって、
少なくとも一の平板を有する一の筐体と、
少なくとも他の平板を有する他の筐体と、
前記一の筐体における端縁の一部と、前記他の筐体における端縁の一部を連結する第1のヒンジ構造と、
前記一の平板の両面のうち前記他の平板に向かい合わせとなる側の面に設けられ、カメラを支持するカメラ支持部と、
前記他の平板の両面のうち前記一の平板に向かい合わせとなる側の面に設けられ、紙様の被写体を保持する被写体保持枠と、
前記一の平板に対し、前記カメラ支持部を起立又は倒伏させる第2のヒンジ構造を備え、
前記カメラ支持部を起立させる場合に、前記一の平板に対する前記他の平板の開閉角の大きさと前記一の平板に対する前記カメラ支持部の開閉角の大きさは、前記カメラ支持部と前記被写体保持枠が互いに平行となるようにそれぞれ調整され
、
前記一の筐体は、前記一の平板と、この一の平板を囲む一の側板群からなる直方形状の箱体であり、
前記他の筐体は、前記他の平板と、この他の平板を囲む他の側板群からなる直方形状の蓋体であり、
前記一の平板の一端縁と、前記他の側板群のうちの一つの側板は、前記第1のヒンジ構造を介して接続され、
前記箱体は、肩掛け用のストラップの両端が一対の取付部を介してそれぞれ取り付けられ、
この一対の取付部は、前記一の側板群のうち、前記一の平板において前記一端縁と相対して位置する他端縁側に位置する第1の側板とこの第1の側板を挟んで両側に位置する第2及び第3の側板と、がなす一対の角部寄りにそれぞれ配置されることを特徴とするポータブル撮影装置。
【請求項2】
前記カメラ支持部は、下縁が前記第2のヒンジ構造を介して前記一の平板に対して回動可能に取り付けられる回動体と、この回動体の上縁に設けられ前記カメラを載置する載置台と、この載置台の前記被写体保持枠寄りの一端に立設されて前記載置台に載置された前記カメラの前面が当接可能な窓枠を備えることを特徴とする請求項1に記載のポータブル撮影装置。
【請求項3】
前記載置台は、他端に、第3のヒンジ構造を介して折り畳み可能に延設される補助台を備えることを特徴とする請求項2に記載のポータブル撮影装置。
【請求項4】
前記一の平板に対し、前記回動体を起立させた状態に保持する回動体保持部材と、
前記載置台と前記補助台が一様な平面を形成する状態に、前記補助台を保持する補助台保持部材を備えることを特徴とする請求項3に記載のポータブル撮影装置。
【請求項5】
前記載置台は、上面に前記カメラのスライド移動を抑制する滑り止め材を備えることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のポータブル撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の場所に持ち運んで撮影することが可能なポータブル撮影装置に係り、特に、屋内、屋外を問わず、手持ちのカメラを使用して複数の被写体の撮影を迅速に完了することができるポータブル撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所では、一時立入者が来所した際の本人確認をするために、コピー機やスキャナーを用いて運転免許証や住民票、パスポートといった本人確認用書類の写しを取得していた。しかし、このやり方では、コピー機等の設置場所付近でなければ写しの取得ができない上、複数枚の本人確認用書類をすべて複写等するのに時間がかかるという課題があった。
このような課題を解決するため、近年、現場に持ち運んで容易に被写体を撮影することのできる撮影装置が開発されており、それに関して既にいくつかの発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「補助情報撮影装置」という名称で、主被写体と補助情報を容易に同一外面内に撮像でき、かつ携帯性に優れた撮影装置に関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された発明は、上端に主被写体を撮像するカメラを着脱可能に保持するとともに下端に回動軸を備えるカメラ保持台と、この回動軸を介してカメラ保持台を折り畳んで収容する本体と、この本体の回動軸と反対側の端部に、主被写体に関係する補助情報が予め記入された補助情報記入シートをセットするセット部と、このセット部にセットされた補助情報記入シートの像をカメラへと導く補助光学系が設けられることを特徴とする。
このような特徴を有する発明においては、補助情報記入シートをセット部にセットして撮像することのみで、主被写体と補助情報がカメラの同一画面内に写し込まれることになる。したがって、従来、工事現場等でよく見られる黒板を使用した情報撮影の煩わしさを大幅に改善することができる。また、本体は、カメラを取り外した後のカメラ保持台を折り畳んで収容できるため、携行性に優れている。
【0004】
次に、特許文献2には「カメラスタンド」という名称で、市販のデジタルカメラを利用して書画原稿を撮像でき、かつ持ち運びが容易なカメラスタンドに関する発明が開示されている。
以下、特許文献2に開示された発明について説明する。特許文献2に開示された発明は、書画原稿が置かれる原稿台と、その後端部に基端を枢支され、前面が原稿台に対して倒伏又は起立するように回動するスタンド本体と、先端にデジタルカメラを着脱可能に支持するカメラホルダを有し、スタンド本体に対して倒伏又は前方に張り出すように回動するカメラ支持アームを備えることを特徴とする。
このような特徴を有する発明においては、原稿台に書画原稿を置くとともに、カメラ支持アームをスタンド本体に対して前方に張り出すように倒立させることによって、書画原稿が撮像される。不使用の際は、カメラ支持アームをスタンド本体に沿わせて格納し、かつスタンド本体を倒伏回動させることにより、平らに潰した形状に折り畳むことができるので、持ち運びが容易である。また、カメラホルダに市販のデジタルカメラを装着して撮像するように構成したため、カメラスタンドの価格を安価とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-87063号公報
【文献】特開2005-99708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、セット部のサイズが1種類に限定されているため、サイズの合致した1種類の本人確認用書類しかセット部に挿入することができない。そこで、挿入できなかった本人確認用書類を主被写体として撮影しようとした場合では、従来の黒板等の撮影と何ら変わりがないから、この発明の有利な効果が発揮されない。よって、この発明を本人確認用書類の撮影に適用することは、実用的でないと考えられる。
【0007】
次に、特許文献2に開示された発明においては、書画原稿とデジタルカメラの位置関係が一律であるから、常に一定画質の撮像が可能である。しかしながら、原稿台を水平な台上に設置する必要があるため、屋外では適切な設置台を探す必要がある。また、書画原稿は原稿台に単に置かれているだけなので、設置台がわずかに傾斜しただけで移動したり、落下したりするおそれもある。よって、この発明を屋外で使用することは困難であるものと考えられる。
さらに、原稿台は、書画原稿のサイズと同等のA4サイズに設計されているため、よりサイズの小さい運転免許証等のカード類を撮影する際には、カード類を原稿台の特定位置に置くことが必要である。よって、多くのカード類を撮影する場合には、そのための手間と時間が負担になることが考えられる。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、屋内、屋外を問わず、所望の場所に持ち運んで大きさの異なる複数の被写体の撮影を迅速に完了することができるポータブル撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、所望の場所に持ち運び可能なポータブル撮影装置であって、少なくとも一の平板を有する一の筐体と、少なくとも他の平板を有する他の筐体と、一の筐体における端縁の一部と、他の筐体における端縁の一部を連結する第1のヒンジ構造と、一の平板の両面のうち他の平板に向かい合わせとなる側の面に設けられ、カメラを支持するカメラ支持部と、他の平板の両面のうち一の平板に向かい合わせとなる側の面に設けられ、紙様の被写体を保持する被写体保持枠と、一の平板に対し、カメラ支持部を起立又は倒伏させる第2のヒンジ構造を備え、カメラ支持部を起立させる場合に、一の平板に対する他の平板の開閉角の大きさと一の平板に対するカメラ支持部の開閉角の大きさは、カメラ支持部と被写体保持枠が互いに平行となるようにそれぞれ調整されることを特徴とする。
【0010】
このような構成の発明において、一の筐体は、一の平板のみから構成されるほか、この一の平板を囲む側板を備えた箱構造であっても良い。他の筐体についても同様である。
また、第1のヒンジ構造は、例えば、ピンを中心として90度毎にロックされて停止可能なロック機構を備える平蝶番や、一対の腕同士が離れる方向に付勢するねじりばね、又はこのねじりばねを備える平蝶番等が考えられる。第2のヒンジ構造についても同様である。
さらに、カメラ支持部は、自在にカメラを載置又は取り外し可能な構造とし、被写体保持枠も、紙様の被写体、例えば、紙製のカードに加え、運転免許証等のIDカードを容易に挿入又は取り出し可能な構造とする。なお、被写体保持枠は、他の平板に対し、移動不能に固着されるほか、着脱可能に取り付けられて撮影の都度移動可能に、又は異なるサイズのものに交換可能に構成されても良い。
なお、紙様とは木材を原料とする植物繊維からなる紙に限定するものではなく、広く一般的に薄い板状の物を意味しており、その材質を問うものではない。
【0011】
上記構成の発明においては、撮影する際に、まず一の筐体に対し、他の筐体を第1のヒンジ構造を中心として回動させ起立させる。その後、一の平板に対し、カメラ支持部を第2のヒンジ構造を中心として回動させ起立させる。この状態で、カメラをカメラ支持部に載置する。同時に、被写体を被写体保持枠に保持させる。
なお、カメラ支持部を起立させる場合には、第1及び第2のヒンジ構造の各開閉角の調整によってカメラ支持部と被写体保持枠が互いに平行となることから、被写体保持枠に挿入された被写体が、カメラによって歪むことなく撮影される。この撮影は、一の平板が必ずしも水平姿勢を維持していない状態であっても可能である。
また、このような状態であっても、カメラと被写体は、それぞれカメラ支持部と被写体保持枠によって支持等されているので、カメラと被写体がそれぞれ横移動したり、落下したりすることが抑止される。
【0012】
1枚目の被写体の撮影が終わると、順次被写体を入れ替えて撮影を行う。すべての被写体の撮影が完了したとき、カメラ支持部からカメラを取り上げ、一の平板に対し、カメラ支持部を倒伏させる。その後、一の筐体に対し、他の筐体を第1のヒンジ構造を中心として回動させ、一の筐体と他の筐体を互いに平行な状態にすることができる。
【0013】
次に、第2の発明は、第1の発明において、カメラ支持部は、下縁が第2のヒンジ構造を介して一の平板に対して回動可能に取り付けられる回動体と、この回動体の上縁に設けられカメラを載置する載置台と、この載置台の被写体保持枠寄りの一端に立設されて載置台に載置されたカメラの前面が当接可能な窓枠を備えることを特徴とする。
このような構成の発明において、窓枠は、被写体の像をカメラのレンズに入射させるための開放窓を備えた枠体であって、例えば、長方形状の開放窓を備えた長方形状の枠体が使用される。
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、撮影する際に、一の筐体に対し、他の筐体を第1のヒンジ構造を中心として回動させ起立させた後、一の平板に対し、回動体を第2のヒンジ構造を中心として回動させ起立させる。この状態で、カメラを載置台に載置し、カメラの前面を窓枠に当接させると、カメラと被写体の距離が常に一定となる。よって、撮影の都度、カメラが被写体の側に接近し過ぎることが防止される。
【0014】
続いて、第3の発明は、第2の発明において、載置台は、他端に、第3のヒンジ構造を介して折り畳み可能に延設される補助台を備えることを特徴とする。
このような構成の発明において、補助台は、被写体保持枠とは反対方向の載置台の他端に設けられる。また、第3のヒンジ構造は、第1のヒンジ構造と同様である。
上記構成の発明においては、第2の発明の作用に加えて、補助台は、窓枠から遠ざかる側に向かって伸展する。よって、薄型ではなく奥行きの長いカメラを使用する場合であっても、カメラが載置台に安定して載置される。
【0015】
さらに、第4の発明は、第3の発明において、一の平板に対し、回動体を起立させた状態に保持する回動体保持部材と、載置台と補助台が一様な平面を形成する状態に、補助台を保持する補助台保持部材を備えることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第3の発明の作用に加えて、第2及び第3のヒンジ構造が、例えばいずれも前述のロック機構を備えない平蝶番の場合に、回動体保持部材及び補助台保持部材は、それぞれ回動体及び補助台のロック機構として作用する。
具体的には、回動体保持部材は、例えば一方の羽根が回動体に固定されるが他方の羽根はピンを中心として自在に回動可能な平蝶番であって、他方の羽根の位置を手動で操作することにより、回動体を起立させた状態に保持可能に構成されるものが考えられる。また、補助台保持部材も、回動体保持部材と同様な平蝶番であって、他方の羽根の位置を操作することにより、補助台を保持可能に構成されるものが考えられる。
【0016】
次いで、第5の発明は、第2乃至第4のいずれかの発明において、載置台は、上面にカメラのスライド移動を抑制する滑り止め材を備えることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第2乃至第4のいずれかの発明の作用に加えて、載置台の上面の滑り止め材によって、撮影時にシャッター押動作や振動等でカメラの位置がずれるのを防止するという作用を有する。
【0017】
そして、第6の発明は、第1乃至第5のいずれかの発明において、一の筐体は、一の平板と、この一の平板を囲む一の側板群からなる直方形状の箱体であり、他の筐体は、他の平板と、この他の平板を囲む他の側板群からなる直方形状の蓋体であり、一の平板の一端縁と、他の側板群のうちの一つの側板は、第1のヒンジ構造を介して接続され、箱体は、肩掛け用のストラップの両端が一対の取付部を介してそれぞれ取り付けられ、この一対の取付部は、一の側板群のうち、一の平板において一端縁と相対して位置する他端縁側に位置する第1の側板とこの第1の側板を挟んで両側に位置する第2及び第3の側板と、がなす一対の角部寄りにそれぞれ配置されることを特徴とする。
【0018】
このような構成の発明においては、第1乃至第5のいずれかの発明の作用に加えて、肩掛け用のストラップによって箱体が第1のヒンジ構造に対向する側の一対の角部の位置で吊り下げられることと、箱体の第1の側板が職員の腹部に当接することにより、箱体が職員の手で把持されなくても略水平に保持される。また、箱体の傾斜と、カメラ支持部と被写体保持枠が互いに平行であることは無関係であるので、箱体が傾斜していても画質は良好なものに維持される。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、一の平板が必ずしも水平姿勢を維持していない状態であっても、カメラと被写体がそれぞれ横移動等することが抑止されるとともに、被写体が歪むことなく撮影されることから、屋内、屋外を問わず、所望の場所に持ち運んで被写体の撮影を行うことができる。
また、被写体保持枠も、紙様の被写体を容易に挿入又は取り出し可能であり、特に異なるサイズのものに交換可能に構成される場合には、大きさの異なる複数の被写体の撮影を迅速に完了することができる。
さらに、撮影が完了したとき、一の筐体と他の筐体を互いに平行な状態にすることができるので、嵩張らず持ち運びが容易である。
【0020】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、カメラの前面を窓枠に当接させることで、カメラが被写体の側に接近し過ぎることが防止されるため、最短撮影距離を確保できる。
【0021】
第3の発明によれば、第2の発明の効果に加えて、カメラの奥行き方向のサイズに関わらずカメラが載置台に安定して載置されるので、手持ちのカメラを使用することができる。よって、使い勝手が良好である。
【0022】
第4の発明によれば、第3の発明の効果に加えて、回動体保持部材及び補助台保持部材は、それぞれ回動体及び補助台のロック機構として作用するため、撮影時にカメラ支持部がカメラを確実に保持し得る。したがって、繰り返して行われるカメラのシャッター押動作による接触や被写体交換動作による振動の影響を受けることなく、複数回に亘る撮影を完了させることができる。
【0023】
第5の発明によれば、第2乃至第4のいずれかの発明の効果に加えて、載置台に滑り止め材を備えることにより、撮影時にカメラのずれが防止されるので、カメラの落下や再撮影の頻度を減少させることができる。
【0024】
第6の発明によれば、第1乃至第5のいずれかの発明の効果に加えて、肩掛け用のストラップによって、箱体が職員の手で把持されなくても略水平に保持されるので、撮影時に両手を使用でき、カメラのシャッター押動作と被写体交換動作を素早く行うことができる。したがって、複数回に亘る撮影を迅速に完了させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例に係るポータブル撮影装置を展開した際の斜視図である。
【
図2】(a)及び(b)はいずれも実施例に係るポータブル撮影装置の
図1におけるA方向矢視図であって、(a)は折り畳んだ場合、(b)は展開した場合を示したものである。
【
図3】実施例に係るポータブル撮影装置を展開し、
図1におけるB方向と同一の方向から視た場合の斜視図である。
【
図4】(a)は実施例に係るポータブル撮影装置を構成するカメラ支持部の一方の面を
図2(b)におけるC方向と同一の方向から視た場合の平面図であり、(b)は(a)で示した一方の面を斜め上方から視た場合の斜視図である。
【
図5】(a)は実施例に係るポータブル撮影装置を構成するカメラ支持部の他方の面を
図2(b)におけるD方向と同一の方向から視た場合の平面図であり、(b)は(a)で示した他方の面を斜め下方から視た場合の斜視図である。
【
図6】実施例に係るポータブル撮影装置の使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0026】
本発明の実施の形態に係るポータブル撮影装置について、
図1乃至
図6を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例に係るポータブル撮影装置を展開した際の斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るポータブル撮影装置1は、所望の場所に持ち運び可能なポータブル撮影装置であって、一の平板2aを有する一の筐体2と、他の平板3aを有する他の筐体3と、一の筐体2における端縁の一部と、他の筐体3における端縁の一部を連結する第1のヒンジ構造4と、一の平板2aの両面のうち他の平板3aに向かい合わせとなる側の面に設けられ、デジタルカメラ50(
図2(b)参照)を支持するカメラ支持部5と、他の平板3aの両面のうち一の平板2aに向かい合わせとなる側の面に設けられ、紙様の被写体51(
図2(b)参照)を保持する長方形状の被写体保持枠6と、一の平板2aに対し、カメラ支持部5を起立又は倒伏させる第2のヒンジ構造7(
図2参照)を備える。
【0027】
詳細には、一の筐体2は、一の平板2aと、この一の平板2aを囲む一の側板群2b~2dからなり、開放口2eを有する直方形状の箱体2Bである。一方、他の筐体3は、他の平板3aと、この他の平板3aを囲む他の側板群3b~3eからなり、開放口3fを有する直方形状の蓋体3Cである。
また、一の平板2aの一端縁に設けられる段部2S(
図2参照)と、他の側板群3b~3eのうちの一つの側板3eは、第1のヒンジ構造4を介して接続されている。
箱体2B及び蓋体3Cは、いずれもステンレス製の平板により形成されており、このうち一の平板2a、第2の側板2c、第3の側板2d、他の平板3a及び側板3eには、軽量化のための複数の小孔がそれぞれ穿設されている。また、他の平板3aは、A4サイズの用紙を横長に直接立て掛け可能な面積を有している。
【0028】
また、箱体2Bは、肩掛け用のストラップ14の両端14a,14aが一対の取付部15,15を介してそれぞれ取り付けられる。
この一対の取付部15,15は、一の側板群2b~2dのうち、一の平板2aにおいて段部2Sが設けられる一端縁と相対して位置する他端縁側に位置する第1の側板2bと、この第1の側板2bを挟んで両側に位置する第2の側板2c及び第3の側板2dと、がなす一対の角部16,16寄りにそれぞれ配置され、ビス留め等によって固定される。
さらに、第1の側板2bとこの第1の側板2bに対応する蓋体3Cの側板3bには、箱体2Bの開放口2eと、蓋体3Cの開放口3fとを向かい合わせて一体に固定しておくために使用するロック部材2fが取り付けられている。具体的には、このロック部材2fとして、側板3bに取り付けられたフックFと、このフックFに係止可能なリングRを備えるパチン錠が使用されている。
【0029】
そして、被写体保持枠6は、カード状の被写体51を定位置で保持できるように、ビス6e,6eにより平板3aの平面方向の位置に移動不能に固定されている。被写体保持枠6は、ステンレス製の薄厚平板の下縁6d及び一方の側縁6bを、被写体保持枠6の中心C
6方向へ折り曲げて形成されたものである。よって、被写体保持枠6は、その上縁6a及び他方の側縁6cの側から被写体51を容易に出し入れ可能である。
ただし、被写体保持枠6は、ビス6e,6eの代わりにマグネットや蝶ネジを使用して平板3aの平面方向の他の位置に移動可能に固定されても良く、その領域S
6(
図2(b),
図3参照)の面積も任意に設定されても良い。
【0030】
次に、第1のヒンジ構造4、第2のヒンジ構造7及びカメラ支持部5について、
図2を用いながら詳細に説明する。
図2(a)及び
図2(b)はいずれも実施例に係るポータブル撮影装置の
図1におけるA方向矢視図であって、
図2(a)は折り畳んだ場合、
図2(b)は展開した場合を示したものである。なお、
図1で示した構成要素については、
図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、ストラップ14やロック部材2f、後述する回動体保持部材18等の図示も省略する。
図2に示すように、一の平板2aの一端縁に設けられる段部2Sと、他の側板群3b~3eのうちの一つの側板3eは、第1のヒンジ構造4を介して接続されている。
この第1のヒンジ構造4は、ピン4aと、このピン4aを中心として開閉する一対の羽根4b,4cからなるステンレス製の平蝶番である。一方の羽根4bは段部2Sの上面にビス留めされ、他方の羽根4cは側板3eにビス留めされている。
同様に、第2のヒンジ構造7も、ピン7aと、このピン7aを中心として開閉する一対の羽根7b,7cからなるステンレス製の平蝶番であって、一方の羽根7bは一の平板2aの上面にビス留めされ、他方の羽根7cはカメラ支持部5を構成する回動体8にビス留めされている。この回動体8については、後述する。
【0031】
また、
図2(a)に示すように、箱体2Bの開放口2eを蓋体3Cによって被覆するには、一の平板2aに対し、カメラ支持部5を倒伏させることが必要である。この場合、一の平板2aと他の平板3aは、互いに平行しているから、一の平板2aに対する他の平板3aの開閉角D
1(
図2(b)参照)の大きさは0度である。このように、開閉角D
1の大きさは、一の平板2aと他の平板3aが互いに平行をなす状態を、基準の0度として概念している。
さらに、第2のヒンジ構造7においては、一の平板2aに対する回動体8の開閉角D
2の大きさは約10度である。なお、開閉角D
2の大きさは、羽根7b,7c同士が平行となるように間隔を空けて上下に重なった状態を、基準の0度として概念している。ただし、本実施例では、現実に羽根7b,7cがこのような状態になることはない。
【0032】
これに対し、
図2(b)のように、一の平板2aに対し、カメラ支持部5を起立させる場合、第1のヒンジ構造4のピン4aを中心として
図2(a)に示すα方向へ蓋体3Cを回動させ、この後、第2のヒンジ構造7のピン7aを中心としてカメラ支持部5を
図2(a)に示すβ方向へ回動させる。ただし、β方向はα方向とは逆向きである。このとき、開閉角D
1の大きさと開閉角D
2の大きさは、カメラ支持部5の窓枠10と被写体保持枠6が互いに略平行となり、かつ一の平板2aに対して窓枠10と被写体保持枠6がいずれも略直角をなすようにそれぞれ調整される。なお、本願発明において、「略平行」及び「略直角」とは、それぞれ、必ずしも厳密に「平行」及び「直角」であることに限定されず、およそ「平行」及び「直角」である場合も含まれるという意味である。よって、具体的には、この場合の開閉角D
1の大きさは約90度であり、開閉角D
2の大きさも約90度である。
したがって、開閉角D
1の大きさの最小値及び最大値は、それぞれ約0度及び約90度であり、開閉角D
2の大きさの最小値及び最大値は、それぞれ約10度及び約90度である。
【0033】
次に、カメラ支持部5は、下縁8bが第2のヒンジ構造7を介して一の平板2aに対して回動可能に取り付けられる回動体8と、この回動体8のうち、平坦面を形成するように屈曲された上縁8aに設けられデジタルカメラ50を載置する載置台9と、この載置台9の被写体保持枠6寄りの一端9aに立設されて載置台9に載置されたデジタルカメラ50の前面が当接可能な窓枠10と、回動体8と載置台9の間に跨って固着される補強用のリブ11,11を備える。これら回動体8、載置台9及び窓枠10は、いずれもステンレス製の平板により形成される。
さらに、回動体8は、軽量化のため、合計5箇所に孔部8e(
図4,5参照)がそれぞれ穿設されている。
【0034】
載置台9は、側面視で回動体8に対して略直角に屈曲された形状であって、他端9bに、第3のヒンジ構造12を介して折り畳み可能に延設される平板状の補助台13を備える。また、載置台9は、上面9cにデジタルカメラ50のスライド移動を抑制する滑り止め材17(斜線部)を備える。この滑り止め材17は、薄厚の平坦な表面を有するゴムシートであって、上面9cに接着剤によって貼着されている。さらに、補助台13もその上面13aに同様の滑り止め材17が接着剤によって貼着されている。
【0035】
そして、第3のヒンジ構造12は、ピン12aと、このピン12aを中心として開閉する一対の羽根12b,12cからなるステンレス製の平蝶番である。羽根12b,12cのうち、一方の羽根12bは回動体8へビス留めされており、他方の羽根12cは補助台13へビス留めされている。
また、窓枠10は、デジタルカメラ50のレンズ50aに、被写体保持枠6に保持された被写体51の像を入射させるための開放窓Wを備えた長方形状の正面枠10aと、この正面枠10aの両端縁にそれぞれ設けられる側方枠10b,10bからなる。側方枠10b,10bは、それぞれ正面枠10aに対して略直角をなす面に沿って、載置台9の上面9c側に立設される。
【0036】
さらに、載置台9に対する補助台13の開閉角D
3の大きさは、
図2(a)に示したような回動体8と補助台13が互いに略平行となっている状態、すなわち載置台9に対し補助台13が略直角をなす折り畳み状態を、基準の0度として概念している。
これに対し、
図2(b)に示すように、カメラ支持部5を起立させる場合には、載置台9と補助台13が一様な平面を形成する状態に、補助台13を窓枠10と反対側へ伸展させることができる。このとき、開閉角D
3の大きさは、略90度である。すなわち、開閉角D
3の大きさの最小値及び最大値は、それぞれ約0度及び約90度である。
【0037】
続いて、被写体保持枠6とカメラ支持部5の窓枠10の相対的位置について、
図2(b)と
図3を用いながら説明する。
図3は、実施例に係るポータブル撮影装置を展開し、
図1におけるB方向と同一の方向から視た場合の斜視図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、ストラップ14と滑り止め材17の図示も省略する。
まず
図2(b)に示すように、一の平板2aに対し、カメラ支持部5が完全に起立した場合、被写体保持枠6で囲まれた領域S
6の中心C
6と、窓枠10で囲まれた領域S
10の中心C
10が、被写体保持枠6の縦方向Yについて一致するように、被写体保持枠6と窓枠10の相対的位置が決定されている。
次に、
図3に示すように、領域S
6(破線斜線部)の中心C
6と、領域S
10(実線斜線部)の中心C
10が、被写体保持枠6の横方向Xについて一致するように、被写体保持枠6と窓枠10の相対的位置が決定されている。したがって、レンズ50a(
図2(b)参照)の中心を中心C
10にできるだけ一致させるようにデジタルカメラ50を載置することで、被写体51がレンズ50aの視野から大きくはみ出すことが防止される。なお、領域S
10の中心C
10は、他の平板3aの中心とも一致している。
【0038】
続いて、カメラ支持部5を構成する回動体8の姿勢を保持する回動体保持部材について、
図4を用いながら説明する。
図4(a)は実施例に係るポータブル撮影装置を構成するカメラ支持部の一方の面を
図2(b)におけるC方向と同一の方向から視た場合の平面図であり、
図4(b)は
図4(a)で示した一方の面を斜め上方から視た場合の斜視図である。なお、
図1乃至
図3で示した構成要素については、
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、回動体8の両面のうち、第2のヒンジ構造7,7の羽根7c,7cが固定される一方の面8cには、その左右両端に、一の平板2a(
図1~3参照)に対し、回動体8を起立させた状態に保持する回動体保持部材18をそれぞれ備える。回動体保持部材18は、ピン18aと、このピン18aを中心として開閉する一対の羽根18b,18cからなるステンレス製の平蝶番である。一方の羽根18bは一方の面8cにビス留めされているが、他方の羽根18cは特にビス留め等されず、ピン18aを中心として
図4(b)に示すように約90度の範囲内でP
1方向又はP
2方向へ手動にて回動可能である。
【0039】
このうち、羽根18cは、
図4(b)に示すように、ピン18aに沿った長辺の長さが回動体8の上縁8aから一の平板2aまでの間隔と同等の略長方形状をなす。よって、羽根18bと羽根18c同士が閉じ合わされる以外の場合において、羽根18cの上端部18Uが上縁8aの裏面に当接する。また、羽根18cの下端部18Lは、羽根18cの上記回動を阻害しない程度に、常に一の平板2aに当接している。なお、第2のヒンジ構造7は、羽根7bに対する羽根7cの回動を停止させるというロック機構を備えないため、回動体8を起立させた状態に保持するという作用を発揮しない。
したがって、回動体保持部材18においては、羽根18bと羽根18c同士が閉じ合わされる場合には羽根18cが回動体8の上縁8aを下方から支持しないことから、回動体8が一の平板2aに対して起立不能である。よって、この状態から羽根18cをP
1方向へ回動させると、上端部18Uが上縁8aの裏面に当接して回動体8を支持可能であるから、一の平板2aに対し、回動体8を起立させた状態に保持する。すなわち、回動体保持部材18は、回動体8を起立させた状態に保持するロック機構として作用する。
【0040】
さらに、カメラ支持部5を構成する補助台13の姿勢を保持する補助台保持部材について、
図5を用いながら説明する。
図5(a)は実施例に係るポータブル撮影装置を構成するカメラ支持部の他方の面を
図2(b)におけるD方向と同一の方向から視た場合の平面図であり、
図5(b)は
図5(a)で示した他方の面を斜め下方から視た場合の斜視図である。なお、
図1乃至
図4で示した構成要素については、
図5においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5に示すように、回動体8の両面のうち、他方の面8dには、第3のヒンジ構造12を挟んだ両側に、載置台9と補助台13が一様な平面を形成する状態に、補助台13を保持する補助台保持部材19,19を備える。各補助台保持部材19は、ピン19aと、このピン19aを中心として開閉する一対の羽根19b,19cからなるステンレス製の平蝶番である。一方の羽根19bは他方の面8dにビス留めされているが、他方の羽根19cは特にビス留め等されず、ピン19aを中心として
図5(b)に示すように約150度の範囲内でQ
1方向又はQ
2方向へ手動にて回動可能である。
【0041】
このうち、羽根19cは、羽根19bと羽根19c同士が閉じ合わされる以外の場合に、羽根19cの上端部19Uが補助台13の下面13bに当接する。なお、第3のヒンジ構造12は、羽根12bに対する羽根12cの回動を停止させるというロック機構を備えないため、載置台9と補助台13が一様な平面を形成する状態に補助台13を保持するという作用を発揮しない。
したがって、補助台保持部材19においては、羽根19bと羽根19c同士が閉じ合わされる場合では羽根19cが補助台13を下方から支持しないことから、補助台13は第3のヒンジ構造12の羽根12cを介し、回動体8に沿って折り畳まれた状態となる。よって、この状態から羽根19cをQ1方向へ回動させると、上端部19Uが下面13bに当接して補助台13を支持可能であるから、載置台9と補助台13が一様な平面を形成する状態に、補助台13が保持される。すなわち、補助台保持部材19は、補助台13を進展状態に保持するロック機構として作用する。
【0042】
最後に、実施例に係るポータブル撮影装置を使用する手順について、
図6を用いながら説明する。
図6は、実施例に係るポータブル撮影装置の使用状態図である。なお、
図1乃至
図5で示した構成要素については、
図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図6に示すように、実施例に係るポータブル撮影装置1を使用する手順として、まず職員52が肩にストラップ14を掛けることにより、箱体2Bが一対の角部16,16の位置で吊り下げられるとともに、第1の側板2bが職員52の腹部に当接する。よって、ポータブル撮影装置1は職員52の手で把持されなくても略水平に保持される。
ただし、
図6は、箱体2Bにおいて、第1の側板2bが配される側が、蓋体3Cが配されている側よりも鉛直上方に位置した一場面を捉えて示しており、一の平板2aは、水平方向Hに対して傾斜している。しかし、この場合であっても、カメラ支持部5の窓枠10と被写体保持枠6が互いに平行となった状態は維持されていることから、歪みのない被写体51の正面画像が撮影される。しかし、ストラップ14の長さを調節することで、一の平板2aを水平方向Hに沿って維持することも勿論可能である。
【0043】
次に、第1のヒンジ構造4の開閉角D
1(
図2(b)参照)を略180度として開放口2e,3fを開放し、さらにカメラ支持部5の回動体8を、第2のヒンジ構造7の開閉角D
2(
図2(b)参照)を略90度として一の平板2aに対して起立させる。これとともに、回動体保持部材18,18の各羽根18c(
図4参照)を手で摘まんで第1の側板2bと第3の側板2dへ沿うようにそれぞれP
1方向へ移動させる。
これにより、回動体8の起立状態が保持されるため、載置台9にデジタルカメラ50を安定的に載置することができる。同時に、カード状の被写体51を被写体保持枠6へ差し込むと撮影を開始することができる。
【0044】
なお、デジタルカメラ50として薄型のコンパクトカメラを使用している場合には補助台13を折り畳んだままでも良いが、奥行きのあるカメラを使用する場合には、補助台13を進展させると良い。そして、補助台保持部材19の羽根19c(
図5参照)を手で摘まんで補助台13の下面13bの下方へ移動させる。これにより、載置台9と補助台13が一様な平面を形成した状態が保持されるので、補助台13にも上記のようなカメラを載置することができる。
【0045】
また、
図2(b)及び
図3で説明したように、一の平板2aに対し、カメラ支持部5が完全に起立した場合、被写体保持枠6で囲まれた領域S
6の中心C
6と、窓枠10で囲まれた領域S
10の中心C
10が、被写体保持枠6の縦方向Y及び横方向Xについて一致するように、被写体保持枠6と窓枠10の相対的位置が決定されているから、デジタルカメラ50のレンズ50aの中心をできるだけ中心C
10に寄せることで、被写体保持枠6によって保持された被写体51の全体がレンズの視野から大きくはみ出すことが防止される。
【0046】
さらに、載置台9や補助台13にデジタルカメラ50を載置した際には、載置台9の上面9cと補助台13の上面13aに滑り止め材17としてゴムシートが貼着されているため、職員52の動きやシャッター押動作によってデジタルカメラ50が上面9c,13aをスライド移動することが抑制される。
加えて、デジタルカメラ50の前面を窓枠10の正面枠10aに当接させて載置すると、窓枠10には側方枠10b,10bが備えられているため、一の平板2aが第1の側板2bの側を上昇させて傾斜したり、ポータブル撮影装置1全体が横ブレしたりする場合でも、デジタルカメラ50の落下が防止される。また、デジタルカメラ50を正面枠10aに当接させることで、デジタルカメラ50と被写体51の距離が常に一定以上確保されることから、撮影の都度、デジタルカメラ50が被写体51の側に接近し過ぎることが防止される。
【0047】
1枚目の被写体51の撮影が終わると、順次被写体51を入れ替えて撮影を行う。このとき、ポータブル撮影装置1は職員52の手で把持されなくても略水平に保持されるため、職員52は両手を使って撮影と被写体51の入れ替えを繰り返すことができる。
なお、他の平板3aは、A4サイズの用紙を横長に立て掛け可能な形状に設計されているので、IDカードよりも大きいサイズの住民票やパスポート等の被写体51を撮影するには、これらを被写体保持枠6に保持させる代わりに、他の平板3aへ保持させると良い。この場合であっても、窓枠10で囲まれた領域S10の中心C10は他の平板3aの中心と一致していることから、被写体51の中心をできるだけ他の平板3aの中心に寄せることで、被写体51の全体がレンズ50aの視野から大きくはみ出すことが防止される。
【0048】
このようにしてすべての被写体51の撮影が完了したときは、まず載置台9からデジタルカメラ50を取り上げ、
図5で説明したように、補助台保持部材19を構成する羽根19bと羽根19c同士を閉じ合わせて補助台13を折り畳む。そして、
図4で説明したように、回動体保持部材18を構成する羽根18bと羽根18c同士を閉じ合わせる。
続いて、
図2(a)で説明したように回動体8を一の平板2aに対し倒伏させる。その後、第1のヒンジ構造4の開閉角D
1(
図2(b)参照)を0度として開放口2e,3fを閉止し、さらにロック部材2fのリングRを蓋体3Cの側板3bに取り付けられたフックFに係止すると、蓋体3Cが箱体2Bに被さった状態でロックされる。
【0049】
以上説明したように、実施例に係るポータブル撮影装置1によれば、ストラップ14を利用することで、ポータブル撮影装置1は手で把持されなくても略水平に保持されるので、デジタルカメラ50や被写体51の落下を防止できるとともに、撮影時に両手を使用でき、シャッター押動作と被写体51の交換動作を素早く行うことができる。したがって、複数回に亘る撮影を迅速に完了させることが可能である。
また、一の平板2aが水平方向Hに対してやや傾斜している場合であっても、被写体51の正面画像が歪むことなく撮影されるため、屋内、屋外を問わず、ポータブル撮影装置1を所望の場所に持ち運んで被写体51の撮影を行うことができる。
さらに、撮影が完了したとき、
図2(a)で説明したように、一の平板2aと他の平板3aを互いに平行な状態にすることができるため、嵩張らず容易な持ち運びが可能となる。
【0050】
さらに、被写体51がIDカードである場合には、被写体保持枠6の上縁6a及び他方の側縁6cの側から被写体51を容易に出し入れ可能であり、また被写体51がIDカードよりも大きいサイズである場合には、これらを他の平板3aへ保持させることができるので、大きさの異なる複数の被写体51の撮影を迅速に完了することができる。
したがって、ポータブル撮影装置1は、コピー機等の設置場所付近でなければ写しの取得ができない上、複数枚の本人確認用書類をすべて複写等するのに時間がかかるという従来の課題を十分に解決するものである。
【0051】
なお、載置台9におけるデジタルカメラ50のレンズを窓枠10の中心C10に寄せ、かつ他の平板3aに立て掛ける際には被写体51の中心を他の平板3aの中心に寄せることによって、被写体51のサイズに関わらず、その全体がレンズ50aの視野から大きくはみ出すことが防止されるので、被写体51を入れ替えてからシャッターを押すまでの時間と手間を軽減させることができる。
さらに、デジタルカメラ50の前面を窓枠10の正面枠10aに当接させることで、デジタルカメラ50が被写体51の側に接近し過ぎることが防止されるため、正面枠10aと被写体保持枠6との間隔を適切に設定することにより、最短撮影距離を確保できる。
加えて、ポータブル撮影装置1によれば、補助台13が折り畳み可能であるため、デジタルカメラ50の奥行き方向のサイズに関わらずデジタルカメラ50を載置台9や補助台13に安定して載置できる。よって、各種の手持ちのカメラを使用することが可能であり、使い勝手が良好である。
【0052】
また、載置台9と補助台13にデジタルカメラ50を載置する際には、回動体保持部材18が回動体8を起立させた状態に保持するロック機構として作用し、補助台保持部材19が補助台13を伸展状態に保持するロック機構として作用するから、撮影時にカメラ支持部5がデジタルカメラ50を確実に保持し得る。したがって、繰り返して行われるシャッター押動作による接触や被写体交換動作による振動の影響を受けることなく、複数回に亘る撮影を完了させることができる。
加えて、滑り止め材17によって、撮影時にデジタルカメラ50がずれることが防止されるので、カメラの落下や再撮影の頻度を減少させることができる。
【0053】
なお、本発明に係るポータブル撮影装置は、実施例に示すものに限定されない。例えば、一の筐体2及び他の筐体3は、それぞれ一の平板2a及び他の平板3aで構成されてもよい。この場合、一の側板群2b~2d及び他の二の側板3b,3cは省略される。さらに、一の筐体2及び他の筐体3の材質もステンレス以外の金属でもよく、より軽量化するためにはアルミニウムやアルミニウム合金等でもよい。
また、第1のヒンジ構造4、第2のヒンジ構造7及び第3のヒンジ構造12は、それぞれ平蝶番の代わりに、両腕を開く方向に付勢されるねじりばねが用いられても良い。この場合、開放口2e,3fが開放されるように付勢され、カメラ支持部5の回動体8が一の平板2aに対し起立するように付勢され、さらに載置台9と補助台13が一様な平面を形成する状態に、補助台13が付勢される。したがって、開放口2e,3fを開放しない状態に保持するには、ロック部材が備えられると便利である。
このほか、滑り止め材17として、平坦な表面を有するゴムシートの代わりに、微小な凹凸表面を有するゴムシートや合成樹脂が使用されても良く、一方で、滑り止め材17は省略されてもよい。また、ストラップ14を箱体2Bに取り付けることなくポータブル撮影装置1を使用することも可能であり、このとき箱体2Bを手で保持しても良いが、適宜台上又は三脚に設置すると安定性がより向上する。さらに、窓枠10の形状は、長方形以外の、例えば円形、楕円形でも良く、デジタルカメラ50としてコンパクトカメラが使用される代わりに、撮像素子が内蔵された携帯電話機が使用されても良い。加えて、窓枠10の側方枠10b,10b同士に架け渡し可能なベルト等の紐状体を備えても良く、この場合、デジタルカメラ50は紐状体によって窓枠10に固定されるので、デジタルカメラ50の落下を確実に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、所望の場所に持ち運んで撮影することが可能なポータブル撮影装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…ポータブル撮影装置 2…一の筐体 2B…箱体 2a…一の平板 2b~2d…一の側板群 2b…第1の側板 2c…第2の側板 2d…第3の側板 2e…開放口 2f…ロック部材 F…フック R…リング 2S…段部 3…他の筐体 3C…蓋体 3a…他の平板 3b~3e…他の側板群 3f…開放口 4…第1のヒンジ構造 4a…ピン 4b,4c…羽根 5…カメラ支持部 6…被写体保持枠 6a…上縁 6b…一方の側縁 6c…他方の側縁 6d…下縁 6e…ビス 7…第2のヒンジ構造 7a…ピン 7b,7c…羽根 8…回動体 8a…上縁 8b…下縁 8c…一方の面 8d…他方の面 8e…孔部 9…載置台 9a…一端 9b…他端 9c…上面 10…窓枠 10a…正面枠 10b…側方枠 W…開放窓 11…リブ 12…第3のヒンジ構造 12a…ピン 12b,12c…羽根 13…補助台 13a…上面 13b…下面 14…ストラップ 14a…両端 15…取付部 16…角部 17…滑り止め材 18…回動体保持部材 18a…ピン 18b,18c…羽根 18U…上端部 18L…下端部 19…補助台保持部材 19a…ピン 19b,19c…羽根 19U…上端部 50…デジタルカメラ 50a…レンズ 51…被写体 52…職員