(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/20 20060101AFI20220225BHJP
B23C 5/10 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/10 D
(21)【出願番号】P 2021023878
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2021-02-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 孝洋
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-135101(JP,U)
【文献】国際公開第2014/050438(WO,A1)
【文献】特表2021-504157(JP,A)
【文献】特表平11-513315(JP,A)
【文献】国際公開第2015/002310(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0111627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/20
B23C 5/10
B23C 5/22
B23B 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具であって、
切削インサートと、
前記切削インサートが固定される工具本体と、を有し、
前記切削インサートは、
互いに対向し、3つの角部を有する上面及び下面と、
前記上面と前記下面を接続し、前記上面との間と前記下面との間にそれぞれ交差稜線を形成する側面と、
上面から下面に向かう中心軸を有し、前記上面から前記下面に貫通する貫通孔と、を備え、
前記上面と前記側面との間の交差稜線には、前記上面の角部に対応する位置に配置されたコーナー切れ刃と、当該コーナー切れ刃の第1の端に接続された副切れ刃と、前記コーナー切れ刃の第2の端に接続された主切れ刃が形成され、
前記側面には、コーナー切れ刃の逃げ面と、当該コーナー切れ刃の逃げ面の前記下面側に位置する凹部が形成されており、
前記下面は、平坦面であり、
前記下面と前記側面との間に直線状の下縁交差稜線が形成され、
前記凹部の外縁は、前記下縁交差稜線と、前記コーナー切れ刃の逃げ面の下端に形成された頂縁部と、当該頂縁部から下縁交差稜線の第1の端に接続される第1の側縁部と、前記頂縁部から下縁交差稜線の第2の端に接続される第2の側縁部と、を有し、
前記下縁交差稜線は、前記コーナー切れ刃の逃げ面を当該逃げ面に沿って前記下面側に延ばし前記下面の同一平面上に投影してできた第1の延長投影線に対して、前記貫通孔の中心軸側に後退して
おり、
前記工具本体は、円柱形状を有し、その先端に先端端面を有し、前記先端端面の中心軸周りに2つの前記切削インサートが固定され、
前記工具本体を中心軸方向の先端側から見て、前記2つの切削インサートは、前記工具本体に対し、前記工具本体の中心軸を挟んだ反対側であって、一方の切削インサートの側面の一つの前記凹部と他方の切削インサートの側面の一つの前記逃げ面とが互いに対向するように固定され、
前記切削インサートは、前記工具本体に対し、前記切削インサートの一つの凹部の外縁の下縁交差稜線と前記工具本体の先端端面との間に段差がないように固定されている、
切削工具。
【請求項2】
前記切削インサートの前記側面には、副切れ刃の逃げ面が形成され、
前記凹部は、前記副切れ刃の逃げ面の前記下面側の位置まで及ぶように形成されている、請求項1に記載の
切削工具。
【請求項3】
前記切削インサートの前記側面には、主切れ刃の逃げ面が形成され、
前記主切れ刃の下面側に位置し前記側面と前記下面との間の第1の交差稜線は、前記主切れ刃の逃げ面を当該逃げ面に沿って前記下面側に延ばし前記下面と同一平面上に投影してできた第2の延長投影線に対して前記貫通孔の中心軸側に後退しており、
前記凹部の下縁交差稜線の前記第1の延長投影線に対する最大後退量は、前記第1の交差稜線の前記第2の延長投影線に対する最大後退量よりも大きい、請求項1又は2に記載の
切削工具。
【請求項4】
前記切削インサートの下面視において、前記凹部の下縁交差稜線を主切れ刃側に延長した仮想延長線と前記主切れ刃上の仮想線とがなす第1の内角の角度は、前記副切れ刃を前記コーナー切れ刃側に延長した仮想延長線と前記主切れ刃を前記コーナー切れ刃側に延長した仮想延長線とがなす第2の内角の角度よりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の
切削工具。
【請求項5】
前記切削インサートの下面視において、前記凹部の下縁交差稜線の第1の端と第2の端は、前記コーナー切れ刃の頂点と前記貫通孔の中心軸とを通る仮想線を挟んだ反対側に位置している、請求項1~4のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項6】
前記切削インサートの前記凹部は、前記貫通孔の中心軸側に凹む湾曲形状を有している、請求項1~5のいずれか一項に記載の
切削工具。
【請求項7】
前記切削インサートの上面視において、
前記切削インサートの最大寸法の2倍が、当該切削インサートが固定される
前記工具本体の工具径よりも大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載の
切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサート及び切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
被削材の直角部分を削る肩削りなどの転削加工には、切削インサートを有する切削工具が用いられている。
【0003】
上述のような切削工具は、円柱状の工具本体と、当該本体の先端に本体の回転軸周りの同一円周上に固定された複数の切削インサートを有している。そして、上記切削工具は、工具本体が回転軸周りに回転し、複数の切削インサートが回転しながら被削材に接触して、被削材を削ることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような切削工具を用いた切削加工では、より小さく細かい部分を切削するため、切削工具を小型化することが望まれている。しかしながら、上述のような切削工具では、例えば工具本体を細くする(径を小さくする)と、複数の切削インサートが互いに干渉してしまい、複数の切削インサートを取り付けることができなくなる。よって、切削工具を小型化できていない。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、切削工具を小型化することができる切削インサート及び切削工具を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る切削インサートは、互いに対向し、複数の角部を有する上面及び下面と、前記上面と前記下面を接続し、前記上面との間と前記下面との間にそれぞれ交差稜線を形成する側面と、上面から下面に向かう中心軸を有し、前記上面から前記下面に貫通する貫通孔と、を備え、前記上面と前記側面との間の交差稜線には、前記上面の角部に対応する位置に配置されたコーナー切れ刃と、当該コーナー切れ刃の第1の端に接続された副切れ刃と、前記コーナー切れ刃の第2の端に接続された主切れ刃が形成され、前記側面には、コーナー切れ刃の逃げ面と、当該コーナー切れ刃の逃げ面の前記下面側に位置する凹部が形成されている。
【0008】
上記態様によれば、複数の切削インサートを互いに干渉しないようにより近づけた状態で工具本体に固定することができるので、工具径を小さくして切削工具を小型化することができる。
【0009】
上記態様において、前記側面には、副切れ刃の逃げ面が形成され、前記凹部は、前記副切れ刃の逃げ面の前記下面側の位置まで及ぶように形成されていてもよい。
【0010】
上記態様において、前記凹部の外縁は、前記下面と前記側面との間の下縁交差稜線を含み、前記凹部の下縁交差稜線は、前記コーナー切れ刃の逃げ面を当該逃げ面に沿って前記下面側に延ばし前記下面の同一平面上に投影してできた第1の延長投影線に対して、前記貫通孔の中心軸側に後退していてもよい。
【0011】
上記態様において、前記側面には、主切れ刃の逃げ面が形成され、前記主切れ刃の下面側に位置し前記側面と前記下面との間の第1の交差稜線は、前記主切れ刃の逃げ面を当該逃げ面に沿って前記下面側に延ばし前記下面と同一平面上に投影してできた第2の延長投影線に対して前記貫通孔の中心軸側に後退しており、前記凹部の下縁交差稜線の前記第1の延長投影線に対する最大後退量は、前記第1の交差稜線の前記第2の延長投影線に対する最大後退量よりも大きくてもよい。
【0012】
上記態様において、下面視において、前記凹部の下縁交差稜線を主切れ刃側に延長した仮想延長線と前記主切れ刃上の仮想線とがなす第1の内角の角度は、前記副切れ刃を前記コーナー切れ刃側に延長した仮想延長線と前記主切れ刃を前記コーナー切れ刃側に延長した仮想延長線とがなす第2の内角の角度よりも大きくてもよい。
【0013】
上記態様において、下面視において、前記凹部の下縁交差稜線の第1の端と第2の端は、前記コーナー刃の頂点と前記貫通孔の中心軸とを通る仮想線を挟んだ反対側に位置していてもよい。
【0014】
上記態様において、前記凹部の外縁は、前記コーナー切れ刃の逃げ面の下端に形成された頂縁部と、当該頂縁部から下縁交差稜線の第1の端に接続される第1の側縁部と、前記頂縁部から下縁交差稜線の第2の端に接続される第2の側縁部と、を有していてもよい。
【0015】
上記態様において、前記凹部は、前記貫通孔の中心軸側に凹む湾曲形状を有していてもよい。
【0016】
上記態様において、上面視において、切削インサートの最大寸法の2倍が、当該切削インサートが固定される切削工具の工具本体の工具径よりも大きくてもよい。
【0017】
本発明の別の態様に係る切削工具は、上記切削インサートと、切削インサートが固定される工具本体と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】角部を正面にした切削インサートの側面図である。
【
図11】切削工具における2つの切削インサートの位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る切削工具1の概略を示す説明図である。
図2は、切削インサート10の斜視図である。なお、本明細書では、「上」、「下」は、
図2に示す切削インサート10の姿勢を基準とする。
【0021】
図1に示す切削工具1は、刃先交換式の転削工具である。切削工具1は、特に限定されないが、例えば小径肩削り用の工具である。切削工具1は、複数の切削インサート10と、切削インサート10が固定される工具本体20を備えている。工具本体20は、例えば円柱状に形成され、その中心軸が回転軸Aとなる。工具本体20は、回転軸Aに対し垂直で平坦な先端端面21を有している。工具本体20は、その先端端面21の周りに、切削インサート10がねじ30により固定される複数の固定部22を有している。固定部22は、回転軸Aを中心とする回転軸Aの周りの複数個所、例えば2か所に等間隔で設けられている。固定部22には、切削インサート10をその上面50が回転方向Bに向くように固定することができる。
【0022】
図2に示すように切削インサート10は、例えば扁平な略三角柱形状を有している。
図3は、切削インサート10の上面図であり、
図4は、切削インサート10の下面図である。
図5は、切削インサート10の側面図である。
【0023】
図2に示すように切削インサート10は、互いに対向し、複数の角部を有する上面50及び下面51と、上面50と下面51とを接続し、上面50との間と下面51との間にそれぞれ交差稜線70、71を形成する3つの側面52と、上面50から下面51に貫通する貫通孔53を備えている。
【0024】
図3に示すように上面50は、例えば略三角形状を有し、3つの角部80を有している。貫通孔53は、上面50の中央に設けられ、上面50から下面51に向かう方向(上下方向)(
図3の紙面前後方向)に貫通している。貫通孔53は、上下方向に向かう中心軸Cを有している。
【0025】
図4に示すように下面51は、例えば略三角形状、或いは略六角形状を有しており、例えば主に3つの角部90を有している。下面51は、例えば平坦面である。貫通孔53の中心軸Cは、下面51に対し垂直である。下面51は、上面50よりも外径が小さく、下面視で、下面51の外形の辺は、上面50の外形の辺よりも内側(中心軸C側)に位置している。下面51と側面52との間にある交差稜線71は、下面51の外形の辺に形成され、上面50と側面52との間にある交差稜線70は、上面50の外形の辺に形成されている。
【0026】
図2、
図3及び
図4に示すように側面52は、例えば上面50の3つの角部80に対応する3つの面から構成されている。
【0027】
例えば
図2及び
図3に示すように上面50と各側面52との間の交差稜線70には、上面50の角部80に対応する位置に配置されたコーナー切れ刃100と、コーナー切れ刃100の第1の端100aに接続された副切れ刃101と、コーナー切れ刃100の第2の端100bに接続された主切れ刃102が形成されている。コーナー切れ刃100は、略円弧の曲線状に湾曲し、副切れ刃101の第1の端100a側の区間と、主切れ刃102の第2の端100b側の区間は、少なくとも直線状である。
【0028】
各側面52は、
図5に示すように、コーナー切れ刃100に対応する第1の側面部110と、副切れ刃101に対応する第2の側面部111と、主切れ刃102に対応する第3の側面部112を有し、角部80毎に上面50との間で交差稜線70を形成している。隣り合う側面52は、一方の側面52の第2の側面部111と他方の側面52の第3の側面部112とが滑らかに接続されている。
【0029】
各側面52の第1の側面部110は、コーナー切れ刃100に連続する逃げ面120を有している。第2の側面部111は、副切れ刃101に連続する逃げ面121を有している。第3の側面部112は、主切れ刃102に連続する逃げ面122を有している。各逃げ面120、121、122は、交差稜線70から下面51の交差稜線71に向かって次第に中心軸C側に後退するように傾斜している。逃げ面120、121、122は、交差稜線70から下面51に向かう途中まで形成されている。
【0030】
各側面52には、コーナー切れ刃100の逃げ面120及び副切れ刃101の逃げ面121の下面51側に位置する凹部130が形成されている。凹部130は、例えば主切れ刃102の逃げ面122の下方にはほぼ達しておらず、達していたとしても最小限で消滅している。なお、凹部130は、例えば主切れ刃102の逃げ面122の下方に形成されていなくてもよい。
【0031】
凹部130は、貫通孔53の中心軸C側に凹む湾曲形状を有している。すなわち、凹部130は、上端部から下端部に向かうにあたり、中心軸C側に初め急激に(曲率半径が小さく)後退し(凹み)、その後次第に緩やかに(曲率半径が大きく)後退して(凹んで)いる。凹部130は、逃げ面120、121の下縁から下面51の交差稜線71まで達している。
【0032】
凹部130の外縁は、例えば下面51と側面52との間の交差稜線71の一部である下縁交差稜線140と、コーナー切れ刃100の逃げ面120の下端に形成された頂縁部141と、頂縁部141から凹部130の下縁交差稜線140の第1の端140aに接続される第1の側縁部142と、頂縁部141から下縁交差稜線140の第2の端140bに接続される第2の側縁部143とで構成されている。
【0033】
頂縁部141は、例えば鋭角の内角を有している。第1の側縁部142は、コーナー切れ刃100の第1の側面部110に対して副切れ刃101側に位置し、第2の側縁部143は、コーナー切れ刃100の第1の側面部110に対して主切れ刃102側に位置する。第1の側縁部142及び第2の側縁部143は、凹部130の正面視でそれぞれ外側に凸に湾曲している。
【0034】
下縁交差稜線140は、例えば直線状に形成されている。下縁交差稜線140は、
図6及び
図7に示すようにコーナー切れ刃100の逃げ面120を当該逃げ面120に沿って下面51側に延ばし下面51と同一平面上に投影してできた第1の延長投影線L1に対して貫通孔53の中心軸C側に後退している。
【0035】
また、側面52と下面51との間の交差稜線71は、主切れ刃102の下面51側に位置する第1の交差稜線150を有している。第1の交差稜線150は、
図6及び
図8に示すように主切れ刃102の逃げ面122を当該逃げ面122に沿って下面51側に延ばし下面51と同一平面上に投影してできた第2の延長投影線L2に対して貫通孔53の中心軸C側に後退している。そして、第1の延長投影線L1に対する凹部130の下縁交差稜線140の最大後退量D1は、第2の延長投影線L2に対する第1の交差稜線150の最大後退量D2よりも大きい。なお、後退量D1は、第1の延長投影線L1の任意の点と中心軸Cを結んだ線上の、第1の延長投影線L1から下縁交差稜線140までの距離であり、後退量D2は、第2の延長投影線L2の任意の点と中心軸Cを結んだ線上の、第2の延長投影線L2から第1の交差稜線150までの距離である。最大後退量D1は、最大後退量D2よりも0.05mm以上0.15mm以下、好ましくは、0.08mm以上0.12mm以下大きい。また、最大後退量D1は、0.3mm以上0.5mm以下、好ましくは、0.35mm以上0.45mm以下である。
【0036】
また、
図4に示す下面視において、凹部130の下縁交差稜線140を主切れ刃102側に延長した仮想延長線L3と主切れ刃102上の仮想線L4とがなす第1の内角の角度α1は、副切れ刃101をコーナー切れ刃100側に延長した仮想延長線L5と主切れ刃102をコーナー切れ刃100側に延長した仮想延長線L6とがなす第2の内角の角度α2よりも大きい。例えば第1の内角の角度α1と第2の内角の角度α2との差は、例えば5°以上、30°以下であり、好ましくは10°以上、25°以下であり、さらに好ましくは15°以上、20°以下である。また第1の内角の角度α1は、例えば90°以上、130°以下であり、好ましくは100°以上、120°以下であり、さらに好ましくは105°以上、115°以下である。
【0037】
図4に示す下面視において、凹部130の下縁交差稜線140の第1の端140aと第2の端140bは、コーナー切れ刃100の頂点(中心軸Cから最も遠い点)Eと貫通孔53の中心軸Cとを通る仮想線L7を挟んだ反対側に位置している。
【0038】
切削インサート10は、
図3に示す上面視における切削インサート10の最大寸法Mの2倍が、
図9に示す当該切削インサート10が固定される切削工具1の工具本体20の工具径Rよりも大きくなる(M×2>R)ように形成されている。なお、上面視の切削インサート10における最大寸法Mとなる位置は、切削インサート10の形状により異なる。また、
図3のように切削インサート10の最大寸法Mは、上面視で、主切れ刃120を基準にし、当該主切れ刃120に対する直角方向の最大寸法であってもよい。
【0039】
以上のように構成された切削インサート10は、
図1に示すように切削工具1の工具本体20の固定部22にねじ30によって固定される。このとき、切削インサート10の上面50は、回転軸A周りの回転方向Bに向き、コーナー切れ刃100の角部80が工具先端に位置する。また
図1及び
図10に示すように凹部130は、工具本体20の平坦な先端端面21に大きな段差なくつながる。
【0040】
図9に示すように切削工具1の工具本体20には、2つの切削インサート10が固定される。2つの切削インサート10は、回転軸A周りに180°離れた、回転軸Aを点対象とする位置に固定される。このとき、
図11に示すように2つの切削インサート10は、上下逆に向きながら、コーナー切れ刃100のある第1の側面部110同士が互いに近接し、一方の切削インサート10の凹部130が他方の切削インサート10の逃げ面120に対向し、互いの凹凸が嵌り合う。これにより、2つの切削インサート10が互いに近づいた状態で固定される。
【0041】
本実施の形態によれば、切削インサート10の側面52には、コーナー切れ刃100の逃げ面120と、当該コーナー切れ刃100の逃げ面120の下面51側に位置する凹部130が形成されているので、例えば
図11に示すように複数の切削インサート10を互いに干渉しないようにより近づけた状態で工具本体20に固定することができる。その結果、工具径Rを小さくして切削工具1を小型化することができる。
【0042】
また、逃げ面120の下面51側に凹部130があるので、切削インサート10を工具本体20に取り付けて使用する際に、被削材から生じた切りくずが、被削材と切削工具1との間などに噛み込むことを抑制することができる。
【0043】
凹部130は、副切れ刃101の逃げ面121の下面51側の位置まで及ぶように形成されている。これにより、凹部130によってできるスペースが広がるため、工具本体20に固定される複数の切削インサート10を互いに干渉せずにさらに近づけることが可能になり、切削工具1の小型化を図ることができる。また、被削材と切削工具1との間の切りくずの噛み込みもさらに抑制することができる。
【0044】
図6に示すように凹部130の下縁交差稜線140は、コーナー切れ刃100の逃げ面120を当該逃げ面120に沿って下面51側に延ばし下面51の同一平面上に投影してできた第1の延長投影線L1に対して、貫通孔53の中心軸C側に後退している。これにより、凹部130によってできる逃げ面120の下面51側のスペースを十分に確保することができる。
【0045】
図6に示すように凹部130の下縁交差稜線140の第1の延長投影線L1に対する最大後退量D1は、主切れ刃102の第1の交差稜線150の第2の延長投影線L2に対する最大後退量D2よりも大きい。これにより、凹部130によってできる逃げ面120の下面51側の空間を十分に確保することができる。また、第1の交差稜線150の後退量が相対的に小さいため、下面51の面積(固定面の面積)が確保され、切削インサート10を工具本体20に対してしっかり固定することができる。
【0046】
図4に示す下面視において、凹部130の下縁交差稜線140を主切れ刃102側に延長した仮想延長線L3と主切れ刃102上の仮想線L4とがなす第1の内角の角度α1が、副切れ刃101をコーナー切れ刃100側に延長した仮想延長線L5と主切れ刃102をコーナー切れ刃100側に延長した仮想延長線L6とがなす第2の内角の角度α2よりも大きい。これにより、上面50の交差稜線70に対する凹み130の下縁交差稜線140の後退量が、主切れ刃102に近づくにつれて大きくなる。これより、被削材と切削工具1との間の切りくずの噛み込みをさらに抑制することができる。
【0047】
図4に示す下面視において、凹部130の下縁交差稜線140の第1の端140aと第2の端140bは、コーナー切れ刃100の頂点Eと貫通孔53の中心軸Cとを通る仮想線L7を挟んだ反対側に位置している。これにより、凹部130によってできる逃げ面120の下面51側のスペースを十分に確保することができる。
【0048】
凹部130の外縁は、頂縁部141と、第1の側縁部142と、第2の側縁部143とを有する。これにより、凹部130が適切な範囲に形成され、切削インサート10の強度を維持することができる。
【0049】
凹部130は、貫通孔53の中心軸C側に凹む湾曲形状を有している。これにより、凹部130によってできる逃げ面120の下面51側の空間を十分に確保しつつ、下面51の面積の低下を抑え、切削インサート10を工具本体20にしっかり固定することができる。また、被削材と切削工具1との間の切りくずの噛み込みを十分に抑制することができる。
【0050】
上面視において、切削インサート10の最大寸法Mの2倍が、当該切削インサート10が固定される切削工具1の工具本体20の工具径Rよりも大きい。この結果、例えば従来と同じ寸法の切削インサート10を取り付ける際に、切削工具1の工具径Rが小さくて済むので、切削工具1を小型化することができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0052】
例えば切削インサート10の構成は上記実施の形態のものに限られない。例えば凹部130は、副切れ刃101の逃げ面121の下面51側に位置せず、コーナー切れ刃100の逃げ面120の下面51側にのみ位置していてもよい。また、凹部130は、主切れ刃102側の境界が、逃げ面122側にわずかに達していてもよい。例えば凹部130の主切れ刃102側の境界は、コーナー切れ刃100の逃げ面110と主切れ刃102の逃げ面112の境界に対し、例えば1.5mm以下程度主切れ刃102側にはみ出していてもよい。凹部130の外縁の形状も上記実施の形態のものに限られない。
【0053】
切削インサート10は、略三角形状に限られず、五角形状、六角形状、八角形状などの他の複数の角部を有するものであってもよい。コーナー切れ刃100、副切れ刃101、主切れ刃102の形状や数、寸法も上記実施の形態のものに限られない。
【0054】
本実施の形態で記載した切削工具1の用途は、特に限定されず、肩削り加工以外にも適用することができる。また、切削工具1は、エンドミル、フライス、ドリルなどであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、切削工具を小型化することができる切削インサート及び切削工具を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 切削工具
10 切削インサート
20 工具本体
50 上面
51 下面
52 側面
53 貫通孔
70 交差稜線
71 交差稜線
100 コーナー切れ刃
101 副切れ刃
102 主切れ刃
120 逃げ面
130 凹部
140 下縁交差稜線
C 中心軸
【要約】
【課題】切削工具を小型化することができる切削インサートを提供する。
【解決手段】切削インサート10は、互いに対向し、複数の角部を有する上面50及び下面51と、上面50と下面51を接続し、上面50との間と下面51との間にそれぞれ交差稜線70、71を形成する側面52と、上面50から下面51に向かう中心軸Cを有し、上面50から下面51に貫通する貫通孔53と、を備える。上面50と側面52との間の交差稜線70には、上面50の角部に対応する位置に配置されたコーナー切れ刃100と、コーナー切れ刃100の第1の端に接続された副切れ刃101と、コーナー切れ刃100の第2の端に接続された主切れ刃102が形成されている。側面52には、コーナー切れ刃100の逃げ面120と、コーナー切れ刃100の逃げ面120の下面51側に位置する凹部130が形成されている。
【選択図】
図2