(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20220225BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220225BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220225BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
G01N33/50 P ZNA
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2017167226
(22)【出願日】2017-08-31
【審査請求日】2020-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】590002389
【氏名又は名称】静岡県
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】蘆 田 良
(72)【発明者】
【氏名】岡 村 行 泰
(72)【発明者】
【氏名】大 島 啓 一
(72)【発明者】
【氏名】上 坂 克 彦
(72)【発明者】
【氏名】浦 上 研 一
(72)【発明者】
【氏名】楠 原 正 俊
(72)【発明者】
【氏名】山 口 建
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522993(JP,A)
【文献】特表2017-519488(JP,A)
【文献】Nature Genetics,2012年,Vol.44, No.7,pp760-764
【文献】Oncotarget,2011年,Vol.2, No.11,pp886-891
【文献】Gastroenterology,2015年,Vol.149, No.5,pp1226-1239
【文献】Cell,2017年06月15日,Vol.169, No.7,pp1327-1341
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ARID2変異遺伝子もしくはMUC17変異遺伝
子、またはARID2変異遺伝子およびMUC17変異遺伝子
の、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良又は不良を診断するためのバイオマーカーとしての使用であって、
ARID2変異遺伝子が下記変異(A-i)から(A-v)の一以上を含むものでありMUC17変異遺伝子が下記変異(M-i)から(M-ix)の一以上を含むものである、
使用:
(A-i)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の674番目のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異、
(A-ii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1322番のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、
(A-iii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1088番のチミンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(A-iv)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の5362番のアデニンがチミンに置換されたナンセンス変異、および
(A-v)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の792番のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異;
(M-i)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の1622番目のシトシンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(M-ii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3332番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(M-iii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の9692番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(M-iv)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2238番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(M-v)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の6595番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(M-vi)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2909番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(M-vii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の8919番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(M-viii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3533番目のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、および
(M-ix)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の7751番目のアデニンがチミンに置換されたミスセンス変異。
【請求項2】
腫瘍組織の外科的切除後の、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を診断するための、請求項1に記載の
使用。
【請求項3】
肝細胞癌が非B非C(NBNC)型肝細胞癌である、請求項1または2に記載の
使用。
【請求項4】
肝細胞癌に罹患した対象から得られた腫瘍組織中のARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を検出することを含み、
ARID2変異遺伝子が下記変異(A-i)から(A-v)の一以上を含むものでありMUC17変異遺伝子が下記変異(M-i)から(M-ix)の一以上を含むものである、肝細胞癌に罹患した該対象の予後の良または不良の診断を補助する方法:
(A-i)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の674番目のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異、
(A-ii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1322番のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、
(A-iii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1088番のチミンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(A-iv)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の5362番のアデニンがチミンに置換されたナンセンス変異、および
(A-v)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の792番のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異;
(M-i)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の1622番目のシトシンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(M-ii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3332番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(M-iii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の9692番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(M-iv)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2238番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(M-v)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の6595番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(M-vi)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2909番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(M-vii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の8919番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(M-viii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3533番目のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、および
(M-ix)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の7751番目のアデニンがチミンに置換されたミスセンス変異。
【請求項5】
肝細胞癌に罹患した対象から得られた腫瘍組織中のARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を検出することを含み、ARID2変異遺伝子が下記変異(A-i)から(A-v)の一以上を含むものでありMUC17変異遺伝子が下記変異(M-i)から(M-ix)の一以上を含むものである、肝細胞癌に罹患した該対象の予後の良または不良のインビトロ分析方法:
(A-i)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の674番目のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異、
(A-ii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1322番のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、
(A-iii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1088番のチミンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(A-iv)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の5362番のアデニンがチミンに置換されたナンセンス変異、および
(A-v)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の792番のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異;
(M-i)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の1622番目のシトシンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(M-ii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3332番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(M-iii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の9692番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(M-iv)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2238番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(M-v)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の6595番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(M-vi)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2909番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(M-vii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の8919番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(M-viii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3533番目のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、および
(M-ix)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の7751番目のアデニンがチミンに置換されたミスセンス変異。
【請求項6】
肝細胞癌が非B非C(NBNC)型肝細胞癌である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
検出が全エキソン解析により行われる、請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ARID2変異遺伝子および/またはMUC17変異遺伝子を含む、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を診断するためのバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞癌は、世界的に罹患者数が極めて多い癌であり、毎年約100万人の新たな発症例があるとされている。また、癌の進行度合(ステージ)により異なるものの、肝細胞癌に罹患した対象の5年生存率は悪い。
【0003】
肝細胞癌は、化学療法や放射線療法に抵抗性を示し、手術が唯一の完全寛解療法とされてきたが、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を的確に診断することができれば、手術以外の治療方法や、手術後の治療についてもより効果的な治療方法を選択し、過度な治療を避けることができる。
【0004】
これまでに、癌患者の予後を予測する方法は色々と試みられてきたが(例えば、特許文献1参照)、特に肝細胞癌患者の治療後の予後を予測する方法について満足できるものではなく、更なる改良や別のアプローチが求められている。
【0005】
また、癌抑制遺伝子はその遺伝子機能を不活化することにより癌の発生を誘引するものとして知られているが、癌の発生以外にも癌の治療後の予後に関与する因子は多岐に渡ることから、癌抑制遺伝子と治療後の予後との関係、特に特定の癌抑制遺伝子と肝細胞癌治療後の予後との関係についてはこれまでに全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ARID2変異遺伝子および/またはMUC17変異遺伝子を含む、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を診断するためのバイオマーカーを提供すること等を目的とする。
【0008】
本発明者らは、肝細胞癌切除例において、全エキソン解析(WES; whole exome sequencing)の結果と、予後との関連について検討したところ、ARID2変異遺伝子およびMUC17変異遺伝子が、肝細胞癌(特に、非B非C(NBNC)型肝細胞癌)に罹患した対象の予後の良または不良を診断するためのバイオマーカーとなり得ることを見出した。本発明はこれらの知見によるものである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]ARID2変異遺伝子および/またはMUC17変異遺伝子を含む、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を診断するためのバイオマーカー。
[2]ARID2変異遺伝子が下記変異の一以上を含むものである、[1]に記載のバイオマーカー:
(i)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の674番目のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異、
(ii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1322番のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、
(iii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1088番のチミンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(iv)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の5362番のアデニンがチミンに置換されたナンセンス変異、および
(v)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の792番のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異。
[3]MUC17変異遺伝子が下記変異の一以上を含むものである、[1]または[2]に記載のバイオマーカー:
(i)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の1622番目のシトシンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(ii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3332番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(iii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の9692番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(iv)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2238番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(v)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の6595番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(vi)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2909番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(vii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の8919番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(viii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3533番目のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、および
(ix)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の7751番目のアデニンがチミンに置換されたミスセンス変異。
[4]腫瘍組織の外科的切除後の、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を診断するための、[1]~[3]のいずれかに記載のバイオマーカー。
[5]肝細胞癌が非B非C(NBNC)型肝細胞癌である、[1]~[4]のいずれかに記載のバイオマーカー。
[6]肝細胞癌に罹患した対象から得られた腫瘍組織中のARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を検出することを含む、肝細胞癌に罹患した該対象の予後の良または不良の診断方法。
[7]腫瘍組織の外科的切除後の、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良の診断を行う、[6]に記載の方法。
[8]無再発生存期間が2年以上の場合に肝細胞癌に罹患した対象の予後が良いと診断される、[6]または[7]に記載の方法。
[9]肝細胞癌が非B非C(NBNC)型肝細胞癌である、[6]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]検出が全エキソン解析により行われる、[6]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]肝細胞癌に罹患した対象から得られた腫瘍組織中のARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を検出することを含む、肝細胞癌に罹患した該対象の予後の良または不良の診断を補助する方法。
[12]肝細胞癌に罹患した対象から得られた腫瘍組織中のARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を検出することを含む、肝細胞癌に罹患した該対象の予後の良または不良のインビトロ分析方法。
[13]以下の工程を含む、肝細胞癌に罹患した対象の予後推定方法:
(1)対象から腫瘍組織および血球細胞を得る工程、
(2)血球細胞を正常組織として、腫瘍組織中のARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を全エキソン解析により検出する工程、および
(3)変異がある場合には肝細胞癌に罹患した該対象の予後が不良であると推定し、変異が無い場合には肝細胞癌に罹患した該対象の予後が良いと推定する工程。
【0010】
本発明によれば、ARID2変異遺伝子および/またはMUC17変異遺伝子を含むバイオマーカーを用いることにより、肝細胞癌、特に非B非C(NBNC)型肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、MUC17遺伝子における変異の有無による無再発生存期間(RFS)の比較を表す。縦軸は無再発生存率を表し、横軸は期間(月)を表す。
【
図2】
図2は、ARID2遺伝子における変異の有無による無再発生存期間(RFS)の比較を表す。縦軸は無再発生存率を表し、横軸は期間(月)を表す。
【発明の具体的説明】
【0012】
本発明によれば、ARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を調べることにより、肝細胞癌(好ましくは、NBNC型肝細胞癌)に罹患した対象の予後の良または不良を診断することができる。すなわち、ARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子に変異があれば、肝細胞癌(好ましくは、NBNC型肝細胞癌)に罹患した対象の予後が不良と推定することができ、ARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子に変異がなければ、肝細胞癌(好ましくは、NBNC型肝細胞癌)に罹患した対象の予後が良いと推定することができる。本発明において、対象とはヒト以外の動物(馬、牛などの家畜、犬、猫などの愛玩動物、動物園などで飼育されている鑑賞動物など)であってもよいが、好ましくはヒトである。
【0013】
本発明によれば、ARID2変異遺伝子(DNA)および/またはMUC17変異遺伝子(DNA)を含む、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を診断するためのバイオマーカーを提供することができる。
【0014】
本発明によれば、ARID2変異遺伝子(DNA)および/またはMUC17変異遺伝子(DNA)である、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を診断するためのバイオマーカーを提供することができる。
【0015】
本発明のバイオマーカーの好ましい態様によれば、ARID2変異遺伝子は下記変異の一以上を含むものである:
(i)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の674番目のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異、
(ii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1322番のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、
(iii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1088番のチミンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(iv)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の5362番のアデニンがチミンに置換されたナンセンス変異、および
(v)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の792番のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異。
【0016】
本発明のバイオマーカーのより好ましい態様によれば、ARID2変異遺伝子は下記変異のいずれか一つを含むものである:
(i)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の674番目のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異、
(ii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1322番のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、
(iii)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の1088番のチミンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(iv)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の5362番のアデニンがチミンに置換されたナンセンス変異、および
(v)ARID2遺伝子のコードされる配列番号1で示されるヌクレオチド配列の792番のグアニンがアデニンに置換されたナンセンス変異。
すなわち、本発明のバイオマーカーのより好ましい態様によれば、上記変異を一つ含むARID2変異遺伝子をバイオマーカーとして提供することができる。ここで、ミスセンス変異とは、遺伝子上のあるアミノ酸に対応するコドンの塩基配列が突然変異により変化し、別のアミノ酸に対応したコドン(missense codon)になることをいう。また、ナンセンス変異とはアミノ酸を指定しているコドンを停止コドンへ変化させる突然変異をいう。
【0017】
本発明のバイオマーカーの別の好ましい態様によれば、ARID2変異遺伝子は下記変異の一以上を含むものである:
(i)ARID2遺伝子の配列番号2のアミノ酸配列の225番のトリプトファン(Trp)が停止コドンに置換された変異、
(ii)ARID2遺伝子の配列番号2のアミノ酸配列の441番のリジン(Lys)がアルギニン(Arg)に置換された変異、
(iii)ARID2遺伝子の配列番号2のアミノ酸配列の363番のロイシン(Leu)がプロリン(Pro)に置換された変異、
(iv)ARID2遺伝子の配列番号2のアミノ酸配列の1788番のアルギニン(Arg)が停止コドンに置換された変異、および
(v)ARID2遺伝子の配列番号2のアミノ酸配列の264番のトリプトファン(Trp)が停止コドンに置換された変異。
【0018】
本発明のバイオマーカーの別のより好ましい態様によれば、ARID2変異遺伝子は下記変異のいずれか一つを含むものである:
(i)ARID2遺伝子の配列番号2のアミノ酸配列の225番のトリプトファン(Trp)が停止コドンに置換された変異、
(ii)ARID2遺伝子の配列番号2のアミノ酸配列の441番のリジン(Lys)がアルギニン(Arg)に置換された変異、
(iii)ARID2遺伝子の配列番号2のアミノ酸配列の363番のロイシン(Leu)がプロリン(Pro)に置換された変異、
(iv)ARID2遺伝子の配列番号2のアミノ酸配列の1788番のアルギニン(Arg)が停止コドンに置換された変異、および
(v)ARID2遺伝子の配列番号2のアミノ酸配列の264番のトリプトファン(Trp)が停止コドンに置換された変異。
【0019】
ここで、配列番号1で示されるヌクレオチド配列は、ARID2遺伝子のイントロン部分の配列を含まないcDNA配列である。また、配列番号2で示されるアミノ酸配列は、配列番号1のcDNA配列に対応するアミノ酸配列である。ARID2遺伝子中の変異は、例えば、肝細胞癌に罹患した対象から得られた腫瘍組織中のARID2遺伝子について、全エキソン解析を行うことにより、変異を検出することができる。この全エキソン解析はどのような方法を用いてもよいが、好ましくは、血球細胞を正常組織として腫瘍特異的遺伝子変異を特定して、腫瘍特異的一塩基変異数を算出することにより行うことができる。
【0020】
本発明のバイオマーカーの好ましい態様によれば、MUC17変異遺伝子は下記変異の一以上を含むものである:
(i)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の1622番目のシトシンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(ii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3332番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(iii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の9692番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(iv)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2238番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(v)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の6595番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(vi)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2909番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(vii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の8919番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(viii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3533番目のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、および
(ix)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の7751番目のアデニンがチミンに置換されたミスセンス変異。
【0021】
本発明のバイオマーカーのより好ましい態様によれば、MUC17変異遺伝子は、下記変異のいずれか一つを含むものである:
(i)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の1622番目のシトシンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(ii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3332番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(iii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の9692番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(iv)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2238番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(v)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の6595番目のシトシンがアデニンに置換されたミスセンス変異、
(vi)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の2909番目のグアニンがチミンに置換されたミスセンス変異、
(vii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の8919番目のアデニンがシトシンに置換されたミスセンス変異、
(viii)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の3533番目のアデニンがグアニンに置換されたミスセンス変異、および
(ix)MUC17遺伝子のコードされる配列番号3で示されるヌクレオチド配列の7751番目のアデニンがチミンに置換されたミスセンス変異。
すなわち、本発明のバイオマーカーのより好ましい態様によれば、上記変異を一つ含むMUC17変異遺伝子を含むバイオマーカーを提供することができる。
【0022】
本発明のバイオマーカーの好ましい別の態様によれば、MUC17変異遺伝子は下記変異の一以上を含むものである:
(i)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の541番のプロリン(Pro)がロイシン(Leu)に置換された変異、
(ii)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の1111番のアルギニン(Arg)がメチオニン(Met)に置換された変異、
(iii)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の3231番のアスパラギン(Asn)がトレオニン(Thr)に置換された変異、
(iv)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の746番のセリン(Ser)がアルギニン(Arg)に置換された変異、
(v)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の2199番のアルギニン(Arg)がセリン(Ser)に置換された変異、
(vi)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の970番のグリシン(Gly)がバリン(Val)に置換された変異、
(vii)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の2973番のグルタミン酸(Glu)がアスパラギン酸(Asp)に置換された変異、
(viii)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の1178番のアスパラギン(Asn)がセリン(Ser)に置換された変異、および
(ix)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の2584番のリシン(Lys)がメチオニン(Met)に置換された変異。
【0023】
本発明のバイオマーカーの別の好ましい態様によれば、MUC17変異遺伝子は下記変異のいずれか一つを含むものである:
(i)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の541番のプロリン(Pro)がロイシン(Leu)に置換された変異、
(ii)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の1111番のアルギニン(Arg)がメチオニン(Met)に置換された変異、
(iii)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の3231番のアスパラギン(Asn)がトレオニン(Thr)に置換された変異、
(iv)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の746番のセリン(Ser)がアルギニン(Arg)に置換された変異、
(v)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の2199番のアルギニン(Arg)がセリン(Ser)に置換された変異、
(vi)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の970番のグリシン(Gly)がバリン(Val)に置換された変異、
(vii)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の2973番のグルタミン酸(Glu)がアスパラギン酸(Asp)に置換された変異、
(viii)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の1178番のアスパラギン(Asn)がセリン(Ser)に置換された変異、および
(ix)MUC17遺伝子の配列番号4のアミノ酸配列の2584番のリシン(Lys)がメチオニン(Met)に置換された変異。
【0024】
ここで、配列番号3で示されるヌクレオチド配列は、MUC17遺伝子のイントロン部分の配列を含まないcDNA配列である。また、配列番号4で示されるアミノ酸配列は、配列番号3のcDNA配列に対応するアミノ酸配列である。MUC17遺伝子中の変異は、例えば、肝細胞癌に罹患した対象から得られた腫瘍組織中のMUC17遺伝子について、全エキソン解析を行うことにより、変異を検出することができる。この全エキソン解析はどのような方法を用いてもよいが、好ましくは、血球細胞を正常組織として腫瘍特異的遺伝子変異を特定して、腫瘍特異的一塩基変異数(SNV: Single Nucleotide Variant)を算出することにより行うことができる。
【0025】
本明細書において、「予後が良い(予後の良)」とは、肝細胞癌の治療後の経過の見通しが良いことをいい、好ましくは無再発生存期間が長いことをいう。無再発生存期間は、長いほど良いが、2年以上であることが好ましい。
【0026】
本明細書において、「予後が不良(予後の不良)」とは、肝細胞癌の治療後の経過の見通しが悪いことをいい、好ましくは無再発生存期間が短いことをいう。
肝細胞癌の治療後の無再発生存期間が短いと予後が悪く、とりわけ2年未満であると特に予後が悪いとされる。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のバイオマーカーは、腫瘍組織の外科的切除後の、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を診断するための用いることができる。
【0028】
また、本発明の好ましい態様によれば、本発明のバイオマーカーは、非B非C(NBNC)(Non B Non C Hepatocellular Carcinoma)型肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良を診断するための用いることができる。ここで、非B非C型肝細胞癌とは、B型肝炎やC型肝炎に基づかない肝細胞癌をいう。
【0029】
本発明の別の態様によれば、肝細胞癌に罹患した対象から得られた腫瘍組織中のARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を検出することを含む、肝細胞癌に罹患した該対象の予後の良または不良の診断方法が提供される。
【0030】
本発明の診断方法の好ましい態様によれば、腫瘍組織の外科的切除後の、肝細胞癌に罹患した対象の予後の良または不良の診断を行う。
【0031】
本発明の診断方法の好ましい態様によれば、無再発生存期間が2年以上の場合に肝細胞癌に罹患した対象の予後が良いと診断される。
【0032】
本発明の診断方法の好ましい態様によれば、肝細胞癌が非B非C(NBNC)型肝細胞癌である。
【0033】
本発明の診断方法の好ましい態様によれば、検出が全エキソン解析により行われる。この全エキソン解析はどのような方法を用いてもよいが、好ましくは、血球細胞を正常組織として腫瘍特異的遺伝子変異を特定して、腫瘍特異的一塩基変異数を算出することにより行うことができる。また、ARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異等は、本発明のバイオマーカーと同じであってもよい。
【0034】
本発明の別の態様によれば、肝細胞癌に罹患した対象から得られた腫瘍組織中のARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を検出することを含む、肝細胞癌に罹患した該対象の予後の良または不良の診断を補助する方法が提供される。ここで、補助とは、医師等の判断を補助することを意味する。また、ARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異等は、本発明のバイオマーカーと同じであってもよい。
【0035】
本発明の別の態様によれば、肝細胞癌に罹患した対象から得られた腫瘍組織中のARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を検出することを含む、肝細胞癌に罹患した該対象の予後の良または不良のインビトロ分析方法が提供される。また、ARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異等は、本発明のバイオマーカーと同じであってもよい。
【0036】
本発明の別の態様によれば、以下の工程を含む、肝細胞癌に罹患した対象の予後推定方法が提供される:
(1)対象から腫瘍組織および血球細胞を得る工程、
(2)血球細胞を正常組織として、腫瘍組織中のARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異の有無を全エキソン解析により検出する工程、および
(3)変異がある場合には肝細胞癌に罹患した該対象の予後が不良であると推定し、変異が無い場合には肝細胞癌に罹患した該対象の予後が良いと推定する工程。
【0037】
本発明の予後推定方法の好ましい態様によれば、非腫瘍組織が血球細胞であることが好ましい。また、ARID2遺伝子および/またはMUC17遺伝子の変異等は、本発明のバイオマーカーと同じであってもよい。
【実施例】
【0038】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0039】
試験例1
静岡県立静岡がんセンターにて、2014年1月~2016年5月までの間に肝細胞癌患者に対して根治切除が行われた106例のうち、非B非C(NBNC)型肝細胞癌患者の55例から得られたサンプルに基づいて以下の実験を行った。NBNC型肝細胞癌患者の患者背景については下記表1の通りである。
得られたサンプルから全エキソン解析(WES)により一塩基変異(SNV: Single Nucleotide Variant)が認められる遺伝子を抽出した。
腫瘍組織のWESにはLife Technologies社製のIon Protonを用い、血球細胞を正常組織として腫瘍特異的遺伝子変異を特定して、腫瘍特異的一塩基変異数の算定を行った。
【表1】
【0040】
上記において全エキソン解析(WES)により抽出した遺伝子と、病理学的因子とが、無再発生存率(RFS)に与える影響について検討し、その結果を下記表2~4に示す。
【0041】
【0042】
NBNC型肝細胞癌患者の55例中、MUC17変異遺伝子を有する9例では、野生型のMUC17遺伝子の以下の位置に変異を有することが分かった。
(1)コードされるDNAの位置:c.1622C>T・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Pro541Leu
(2)コードされるDNAの位置:c.3332G>T・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Arg1111Met
(3)コードされるDNAの位置:c.9692A>C・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Asn3231Thr
(4)コードされるDNAの位置:c.2238C>A・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Ser746Arg
(5)コードされるDNAの位置:c.6595C>A・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Arg2199Ser
(6)コードされるDNAの位置:c.2909G>T・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Gly970Val
(7)コードされるDNAの位置:c.8919A>C・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Glu2973Asp
(8)コードされるDNAの位置:c.3533A>G・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Asn1178Ser
(9)コードされるDNAの位置:c.7751A>T・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Lys2584Met
【0043】
NBNC型肝細胞癌患者の55例中、ARID2変異遺伝子を有する5例では、野生型のARID2遺伝子の以下の位置に変異を有することが分かった。
(1)コードされるDNAの位置:c.674G>A・・・ナンセンス、
蛋白コード:p.Lys441Arg
(2)コードされるDNAの位置:c.1322A>G・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Lys441Arg
(3)コードされるDNAの位置:c.1088T>C・・・ミスセンス、
蛋白コード:p.Leu363Pro
(4)コードされるDNAの位置:c.5362A>T・・・ナンセンス、
蛋白コード:p.Arg1788*
(5)コードされるDNAの位置:c.792G>A・・・ナンセンス、
蛋白コード:p.Trp264*
【0044】
【0045】
【0046】
上記表3および4における、単変量解析はログランク検定を用い、多変量解析はCox回帰分析を用いて行った。
【0047】
また、上記表2~4に加え、MUC17遺伝子およびARID2遺伝子における変異の有無による無再発生存期間(RFS)の比較を、それぞれ
図1および
図2に示す。
【0048】
以上の結果から、MUC17遺伝子またはARID2遺伝子に変異がある場合には、RFSが短くなることが分かった。
【配列表】